説明

検査表面の光学検査

1つの側面においては、強度における決定される変化に基づき、格子の異なる領域において強度データと共に使用される解像度を変化させることにより、Parousiameterのような散乱計100から得られる画像強度データを格納するのに必要なデータの量が削減される。別の側面においては、散乱計が、テストサンプルに対する鏡のオフセンタ変位によりもたらされる歪みを訂正するため、テストサンプル180を画像化する非球面鏡170,900,1000を具備する。別の側面においては、光学表面検査装置が、テスト表面上にパターン化格子1610を投影するため、テスト表面1420と照らし出されるパターン化格子1410との間の補助レンズ1440を用いる。カメラ1450は、実画像としてテスト表面上の格子に焦点が合わされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品質及び均一性を評価するための例えば製造された物品における検査表面の光学検査に一般的に関連し、より詳細には、ダイナミックレンジを大きくし、歪みを少なくした散乱計側(scatterometric)技術に関する。更に、測定範囲を拡大する技術にも関する。
【背景技術】
【0002】
製品及び包装の外観は、購入者に対するアピールという点で重要である。例えば、製造工程の最終段階においては、製品の色及び光沢を注意深く制御することが重要である。一般的に、物品(item)の表面テクスチャは、光が表面でどのように反射され、見る者にどのように受け取られるかに影響を与える。散乱計は、対象物からの光の反射を測定するツールとして開発された。例えば、本書では参照により含まれる、S.Wadmanによる米国特許第6,577,397号は、半球状の散乱計側(scatterometry)を実行するためのParousiameterとして知られるデバイスを説明する。そのデバイスは、光学的に制御された態様で検査表面を照らし、完全な半球スクリーン又は球面の他の部分における反射及び/又は透過率(transmission)を測定する。斯かるデバイスは、例えば、輝度の正確な測定、及び、異なる方向から表面が見られる又は照らし出されるとき明らかな輝度又は色における変化といったフロップ効果(flop effect)の正確な測定を可能にする。図1を参照して、サンプル180は、拡散グレイ表面を有する場合がある反射ドーム又はスクリーン130の下、例えば拡散ブラック表面(diffuse black surface)といった表面150の中央に置かれ、及び1つ又は複数の入射角度で光源145から平行化された(collimated)光ビーム140により照らされる。光ビーム140は、スクリーン130のアパーチャ142を通過する。サンプル180で散乱される光120は、半球スクリーンで捕捉される。スクリーン130は、例えば球状ミラー170のような広角光学部品を用いて、CCDカメラといったデジタルカメラ110で画像化される。そして、捕捉された画像は、テクスチャ及び色測定用のメリット係数(merit factor)を提供するため、データ処理112(ブロック112は「データ処理」と読む)及び数値表面特徴化114(ブロック114は、「数値表面特徴化」と読む)を実行することで解析を行うコンピュータに送られる。光は、人間の視力を模倣するため、3-10 mmスポット上の白色又は着色光とすることができる。通常フラットなサンプルが使用されるが、例えば0.5 mmといった非常に薄いビームで曲面が測定されることもできる。大きな製品同様に小さなサンプルが測定されることができる。特に、半球全体の画像を生み出すカメラと共に機能することにより、Parousiameterは、例えば移動型検出器ゴニオフォトメータのような他のデバイスと比べて、表面反射の測定に必要な時間が少なくて済むことが分かった。光ビーム190は、半透明のプローブビーム(probe beam)である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、Parousiameterにより取得されるデータの量は、極端に大きい場合がある。例えば、取得される(本実施例ではプラスチック製品表面から作られる)通常の画像が図2に示される。画像の中央は、半球の頂点であり、その周は水平である。暗いスポットは、照明及びカメラポート(port)のアーチファクトである。特に、最も左の暗いスポットは、カメラポートが位置する場所であり、交互に配置される異なるスポットは、光ビームが与えられるポートである。半球状のドームは、拡散光で満たされ、中間において明るく、水平に近づくにつれ次第に弱まる。中央の下の明るいスポットは直接の表面反射を表す。画像におけるどのポイントも、異なる反射角を表し、異なる強度を持つ。ここでの作業は、この強度分布を表形式で表すことである。通常の画像は、規則的なグリッドに存在する百万のデータポイントを容易に含むことができる。その結果、存在するすべての角度が考慮に入れられると、極端に大きなファイルが形成される。
【0004】
特に、カメラにより得られるデータは、結果として生じる画像を生み出すために、通常、例えば、双方向反射率分布関数(BRDF)のような数学的な関数を用いて処理される。この種の関数は、表面が光を反射及び/又は透過する態様を記述する。例えば、BRDFは、照明付属物(lighting appendage)等の光学製品、発光体又はレンズ等の光学システムのデザインのためのレイトレーシング(ray-tracing)プログラムにおいて使用される。しかしながら、上述されたように、BRDFを規定するのに必要なデータは、しばしば、例えば製造用アプリケーションに必要とされる速さで処理されることができないほど極端に大きなファイルを生じさせる。
【0005】
Parousiameterを含む散乱計に関する追加的な問題は、半球状の視野における画像歪みが目立つ場合がある点である。
【0006】
更に、たわみ計測(deflectometric)検査の関連する分野においては、たわみ計測原理が、自動車用パーツ(automotive part)といった滑らかな形状における小さな歪みに対して非常に感度が良い。他方、テストサンプルにおいて大きな外乱(disturbance)が測定されると、反射される格子の変形が複雑になる場合があり、また、くぼんだ形状の光学指数(optical power:屈折力)が原因で、カメラのフォーカス外になってしまう場合がある。従って、斯かる検査に関する問題が、測定されることができる変形における測定ダイナミックレンジを制限することになる。
【0007】
本発明は、上述及びその他の問題に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの側面において、本発明は、重要なデータの損失なく、半球における異なる点でのターゲット物質の光分布の強度を表す散乱計側関数を規定するのに必要なデータの量を削減する技術を提供する。
【0009】
特に、散乱計側データを処理するためのコンピュータ実現による方法が、散乱計におけるターゲット物質に光を向けるステップと、光がそのターゲット物質から反射された後、遠視野(far field)における光の強度を測定するステップであって、その強度が、視野を横切る強度を表すデータを取得するため、散乱計のスクリーンに与えられる視野における格子点を横切って測定される、ステップと、視野を横切る強度における変動を決定するステップと、強度における決定された変化に基づき、格子の異なる領域において強度データと共に使用される解像度を変化させることにより、視野を横切る光分布の強度を表す少なくとも1つの関数を表形式又は数学的な態様で規定するステップとを含む。異なる領域はそれぞれ、少なくとも1つの格子点を有する。
【0010】
本発明の追加的な側面において、散乱計における半球状の視野の画像歪みを減らす技術が提供される。
【0011】
特に、散乱計は、ターゲット物質に光を向かわせる光源と、ターゲットサンプルから反射された後光を受信する球状のスクリーンと、球状スクリーンで反射された光の像をカメラに与えるよう配置される、凸状球面鏡又は非球面鏡とを含む。
【0012】
本発明の更に追加的な側面において、テストサンプルにおける小さな及び大きな外乱(disturbance)が両方とも正確に計測されるよう、光学検査システムにおける測定のダイナミックレンジを増加する技術が提供される。たわみ計測(deflectmetory)により提供される非常に感度の良い遠視野検出が、照明光学経路に余分なレンズ群を追加することにより大きなスケールの外観を与える近視野構造光装置(facility)にまで拡張される。
【0013】
特に、光学表面検査装置は、検査表面と、照らし出されるパターン化格子と、テスト表面上の照らし出されるパターン化格子を投影するよう、テスト表面と照らし出されるパターン化格子との間に与えられる補助レンズと、テスト表面の少なくとも第1の画像を得るため、実画像としてテスト表面上の照らし出されるパターン化格子に焦点が合わされるカメラとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
すべての図面において、対応する部分は、同じ参照番号により参照される。
【0015】
I.高ダイナミックレンジを備える散乱計側関数のための可変密度格子
冒頭で述べられたように、Parousiameterのような散乱計から得られる画像化データは、製造といった多くの用途において必要とされるように迅速に処理されることができないほどの極端に大きなファイルを形成することができる。例えば、斯かる用途において、製造される製品の品質を評価するため、テストサンプルが製造ラインから周期的に得られることができる。製造ラインにおける不必要な遅延を避けるために、迅速な結果が得られなければならない。更に、増加されたデータストレージと処理要求とが、結果としてコストを増加させる。
【0016】
特に、例えばBRDFといった画像を描写するのに使用される関数は、反射又は送信される光強度における小さな及び大きな変動が両方とも経験される広いダイナミックレンジにわたる、テストサンプルの突出した特徴を正確に説明しなければならない多くの係数又は成分を持つ。実際には、強度測定は、半球状又は他の視野における格子点において得られる。1つの可能なソリューションは、粗い格子を用いることで関数の解像度を低くすることである。しかしながら、これは結果として、画像のぼけを生じさせ、重大な情報の損失をもたらす。視野の拡散外部フィールド(diffuse outer field)において、強度における鋭敏な差は、多くの場合において存在しない。つまり、高い空間周波数は存在しない。従って、そうした領域において解像度を減らすことは問題がない。しかしながら、削減された解像度が、強度における高速な変化が原因による高い空間周波数を持つ視野の領域に適用されると、重大な詳細が失われる場合があるという問題を生じさせる。特に、細部がないような領域においてはこれは問題とならないが、正反射の周囲で(又は非常に複雑なホログラムのparousiagramにおいて)、画像がぼけ、重大な情報が失われる。これは、格子を粗くすることによりデータの量を削減することを受け入れられないものとする。
【0017】
本発明によれば、格子の構成は、測定の内容に依存するものとされる。即ち、視野を横切る強度を表す関数において使用される格子点間の距離が、細部を持たない領域において大きくされ、細部領域の近くでは小さくされる。格子点間の距離を可変にするいくつか可能性のある方法が存在する。例えば、格子密度が、強度分布の導関数に逆比例するようにされることができる。従って、例えば隣接点間又は格子における点の領域間で強度分布において高い変動があるとき、より高い格子密度が使用される。別の手法において、次のデータ点は、例えば、10%、係数2.5又は都合のよい他の値といった定数係数により強度が変化されるような位置に置かれることができる。相対又は絶対差が使用されることができる。例えば、(x1,10.0)、(x2,10.2)、(x3,10.4)、(x4,10.7)、(x5,10.9)、(x6,11.1)、...といった視野における経路に沿った(位置、強度値)のペアのシーケンスが存在する場合、10%変化基準を用いて、これは、(x1,10.0)、(x6,11.1)、...にまで削減されることができる。従ってBRDFは、固定の解像度格子を仮定するのではなく、データ点の位置から始まるデータ線とその強度とを含むことができる。原則的に、その関数は、スクリーン130の異なる領域/位置において強度データと共に使用される分解能を変化させることにより光分布の強度を表す。
【0018】
変化するデータ格子の一般的な概念が図3に与えられる。それは、強度対スクリーン位置を示す。特に、曲線グラフは、強度プロファイルであり、垂直矢印は、変化する格子の仮想(imaginary)位置を指し示す。垂直な矢印間の変化する余白は、変化するデータ解像度を示す。データ圧縮は、データの内容に依存する。係数100のデータ圧縮は、容易に実現されることができることが推定される。原則的に、関数を規定するのに必要なデータの量が、その関数が最大解像度のみを用いて光分布の強度を表す場合に対して減らされるよう、異なる領域において強度データと共に使用される解像度が、最大解像度と最小解像度との間で変化させられる。
【0019】
図4は、圧縮を伴う視野における強度変化を用いて表す方法である。ブロック400は、「ターゲット物質に光を向ける」と読む;ブロック410は、「スクリーンにおけるすべての格子点で反射光の強度を測定する」と読む;ブロック420は、「強度分布における変化を決定する」と読む;ブロック430は、「強度分布における変化に基づき、格子点の異なる領域に対する変化する解像度を決定する」と読む;及び、ブロック440は、「変化する解像度に基づき強度分布を表す関数を規定する」と読む。
【0020】
ブロック400において、光はターゲット物質に向けられる。ブロック410において、視野における散乱計のスクリーンにおけるすべての格子点で反射光分布の強度が測定される。ブロック420において、視野を横切る強度分布における変化が決定される。これは、例えば、点対点変動、n=1,2,3,...とするときの各n番目の点間での変動を見ることにより、又は、その強度データが変化する周波数を決定する強度データにおける空間変形を行うことにより達成されることができる。ブロック430において、変化する解像度は、強度分布における変化に基づき、格子の異なる領域に対して決定される。解像度又は密度は、その領域におけるいかに多くの点が、関数においてフィルタアウト(filtered out)されることになり、使用されないことになるかを示す。高解像度は、フィルタアウトされることになる点がないか、あるとしても少数であることを示す。低解像度は、多くの点がフィルタアウトされることになることを示す。従って、圧縮過程は、比較的少ないデータを冗長な格子点を表すのに割り当てつつ、比較的多くのデータを格子点における高速な変化を捕捉するのに割り当てることにより行われる。ブロック440において、変化する解像度を用いて、視野の異なる領域を横切る強度分布を表すBRDFといった関数が規定される。
【0021】
その概念は、例えば、レイ・トレーシング・ソフトウェアにおいて読み出し可能なBRDFを直接生み出す機能をParousiameterに与えるため、レイ・トレーシング・ソフトウェアを含む様々なアプリケーションにおいて実現されることができる。斯かるアプリケーションにおいては、本書に述べられるデータ削減技術を用いないと、ファイルサイズに関する深刻な問題が生じる場合がある。データに依存し柔軟に変化する格子が実現されるとき、すべての重要な情報を大部分残したまま、例えば係数100でファイルサイズは削減されることができる。他の例示的な使用領域は、光学測定、製品デザイン、機能的な光学製品デザイン、並びにビデオゲーム、映画、他のグラフィカル用途、及びデザイン用途におけるCADレンダリングといったものを含む。
【0022】
Parousiameterは、例示としてのみ論じられ、本発明は、他のタイプの散乱計及び他のタイプの光学測定デバイスでの使用にも適していることに留意されたい。更に、半球状の視野が例において与えられる一方、他の形状が使用されることもできる。更に、例えば、本書で説明される機能を実現するためプロセッサにより実行されるソフトウェア命令を含む、例えばメモリ、ハードディスク又は他の携帯型記憶媒体といったプログラムストレージデバイスを提供することにより、本発明は、汎用コンピュータ又は他の処理資源において実現されることができる。ASICとしての専用回路が同様に使用されることもできる。
【0023】
II.改善された半球画像化のための非球面鏡
本発明のこの側面は、半球状の(又はそれより大きな)視野の画像化、特にparousiameter又は他の散乱計のスクリーンを含む異なる用途において使用されることができる。再度図1を参照するに、散乱計における半球状(180度又はそれ以上)の視野を画像化するために、通常サンプル180の周りに配置される例えばレンズ又は鏡170のような、いわゆる魚眼対象物(fish-eye objective)と呼ばれる広角光学システムが必要とされる。しかしながら、全天空カメラ又は従来のParousiameterにおいて使用されるのと同じ球状凸面鏡のような球面鏡のタイプは、深刻な画像歪み、非点収差及び視野のエッジに対するコマ収差に苦しむ。全天空カメラは、一度に全天空の画像を得るために魚眼レンズ又は球面鏡といった特殊な光学要素を用いる。
【0024】
特に、鏡170の非中心(c-centric)(偏心(off center))変位及びその球面形状が原因で、避けられない深刻な画像歪みが形成される。画像歪みは、器械定数であり、ドーム、鏡及びカメラの所与の幾何学的レイアウトに関して典型的である。この画像歪みは、知られた位置にあるマーキングを備える較正半球状ドームを用いて測定され、続くすべて測定画像において、コンピュータにおけるソフトウェア画像処理により訂正されることができる。
【0025】
画像歪み訂正は、従来は以下の方法で実現される。較正測定から生じる通常のParousiameter位置較正画像が、図5に与えられる。その画像は、ドームにあるマーキングをはっきり取り出すよう事前処理されている。周におけるかすかな円が90°水平である。この画像は回転され、30°距離半径(distant radii)と15°距離同心円(distant parallel circle)とを備える歪んだ格子を示すよう更に処理される。図6はこの歪んだ格子を示す。測定が明らかにするように、画像化鏡の球面形状によりもたらされる、半径に沿う緯度(高度)の圧縮が存在する。これは、コサイン効果であり、それは、画像スケールのエッジに沿って最強となる。
【0026】
はっきりした横向きの変形が、Parousiameter装置(set-up)の生まれつきの非中心性によりもたらされる。この効果は、parousiameterの場合だと、画像化される半球の中央又はドームスクリーンの中央に鏡が置かれる場合、小さくなるか又は完全になくなることになる。しかしながら、鏡及びテストサンプル180は同じ位置に置くことができない。すべての結合された歪みは、画像スケール又は倍率がその画像の異なる領域にわたりかなり(例えば2倍)変化することをもたらす。これは、カメラ画素スケールに対してと同様、画像輝度分布に対する結果を持つ。追加的な画像処理(歪み矯正(undistortion))により、画像は、図7に示されるように、立体的な投影へともたらされなければならない。しかしながら、この訂正処理の間、画像をぼやけさせ又は画像を乱す平均化誤差が生じ、情報の損失をもたらす。非常に球状に近いドーム形状用の測定された較正に対する代替としての歪み矯正法は、もとの「理想的な」半球へと戻るようすべての画像要素を再計算し、それらを鏡のバンテージ点(vantage point)へ投影することにより、最初から歪み矯正を用いる。
【0027】
本発明によれば、画像スケールにおける変化が削減されることができるよう、非球面プロファイルを正しく選択することが画像歪みを削減することがわかった。従って、より小さな(非可逆な)画像訂正が必要とされ、従って、全体の情報損失を削減する。特に、画像歪み訂正の一部は、ソフトウェアからハードウェアへとシフトされる。ソフトウェア画像訂正は、非可逆であり時間を要する。一方で、ハードウェア訂正は、損失がなく瞬間的である。画像歪み及び他の収差は、凸面鏡の形状により影響されることができる。多くの場合において、parousiameter画像化鏡は、プログラム可能なCNC軌道制御を用いる高精度旋盤(表面粗さ 1-3 nm)を起動することにより、ダイヤモンドで製造されるフルメタルミラーである。その鏡は、酸化マグネシウム(MgO)又は酸化ケイ素(SiO2)のハードレイヤから作られる「強化コーティング」により保護されていないむき出しの金属(bare metal)である。なぜなら、それらは、波長依存性を持ち、従って、測定において色シフトをもたらすことになるからである。これは、ソフトウェアプログラムだけで済むので、鏡のいかなる形状をも作り出すことを非常に簡単にする。追加的な光学デザインの自由度は、鏡の取り付けの位置及び角度調整にある。こうしてハードウェアによる画像歪みの部分を訂正することにより、コンピュータにおける画像処理によって残存する必要な訂正が、非常に少なくなり、その結果少ない誤差がもたらされる。
【0028】
図8は、結果としてかなりの歪みを生じさせる球面鏡800を示し、一方図9及び10は、非球面鏡900及び傾いた非球面鏡1000をそれぞれ示す。それらは、本発明によれば歪みを減らすものである。その鏡は、球面形状の振舞いと比べてそのエッジにおいて画像を拡大するよう、その周に向かって大きな曲率半径を一般に持つ形状であると考えられる。最適な非球面形状は、所与の構成の光学系全体をレイトレーシングすることにより正確に計算されることができる。この最適な形状は、例えば、逆コサイン、円錐曲線若しくは多項式、又は他の都合の良い形状といった一般的な形状により実現(approach)されることができる。更に、同じ又は別の処理により、この鏡の形状は、非中心的に(a-centric)作られる、及び/又は傾いた軸を用いて上述の定性的な例において示されるのと同じように作られることができる。完全に歪みのない画像が形成されるよう鏡を構成することも可能であるが、このオプションは、比較的製造にコストのかかる、複雑な非球面及び非対称な鏡の形状を必要とする。
【0029】
図11は、図8の球面鏡を用いる変形された画像格子を示す。図12及び図13は、本発明によるより変形の少ない画像格子の効果の計算例である。特に、図12は、図9の非球面鏡を用いて訂正される画像を示す。図13は、図10の傾いた非球面鏡を用いて訂正される画像を示す。図からわかるように、非球面鏡の使用は明らかに散乱計のスクリーンを画像化する際の歪みを減らす。
【0030】
III.遠視野たわみ計と近視野構造光プロファイル計との組み合わせ
光学表面検査システム(OSIS)は、ターゲット物質の表面を評価するのに、例えば、自動車用の品質監視及び修理などの様々な用途において有益である。特に、表面における欠陥を発見するのにたわみ計の原理がよく知られている。たわみ計を用いる構成は、「deukometer」として知られる。図14は、テスト表面において反射する、照らし出されるパターン化格子を備えるOSIS1400に対する構成を提供する。特に、光源(図示省略)は、パターン化格子1410を照らし、その結果格子の画像が、格子の反射画像1430を仮想的な画像として与えるよう、テスト表面1420で反射される。補助レンズ1440は、インアクティブ(inactive)な位置にある。カメラ1450は、テスト表面1420の画像を与えるよう仮想画像1430に焦点をあてる。しかしながら、この手法では、テスト表面1420における任意の変形が、照らし出される格子1410の反射1430を強く変形してしまう。例えば、この変形の例が、図15に示され、それは、自動車用パネルにおける小さなへこみを示す。パネルの一般的な形状がパネルの大きな曲率の中に示されることがはっきり見て取れる。一方、小さな外乱(disturbance)が等高線におけるグリッチ(glitch:不具合)をもたらす。
【0031】
上述されたように、たわみ計測原理(deflectometric principle)は、例えば自動車用部品といった滑らかな形状における小さな外乱に対して非常に感度がよい。他方、テストサンプルにおける大きな外乱が測定される場合、反射される格子の変形は、窪んだ形状の光学指数が原因で、複雑になり、カメラに対して焦点外になる場合がある。従って、たわみ計測での問題は、測定の際のダイナミックレンジの限界にある。
【0032】
本発明によれば、図16の修正されたOSIS1600は、測定レンジを拡大する効果的な方法を提供する。特に、装置1400は、仮想格子画像1430をテスト表面1420に持ち込むことにより、つまり、無限点における仮想反射画像の代わりに、表面1420に実格子画像1610を投影することにより修正される。これは、感度を制限するが、レンジを広げる。有利なことに、この修正は、カメラ1450の再焦点化を行うと共に、照明経路における簡単な追加(extra)レンズ群を用いることにより実現されることができる。特に、もとのOSIS構成1400への追加は、照らし出されるパターン化格子1410をテスト表面1420に投影するために、照らし出されるパターン化格子1410とテスト表面1420における照らし出されるパターン化格子1410を投影するテスト表面1420との間のアクティブ位置に補助レンズ1440を動かすことを含む。もしレンズ1440がアクティブ位置に配置されると、格子1410は、表面1420で画像化され、カメラ1450は、テスト表面で再び焦点が合わせられる。この再焦点合わせは、カメラのレンズにおいて及び/又はカメラの光学経路における第2の補助レンズを追加することにより行われることができる。装置1600において、表面1420における実際の投影格子ストライプの曲率が三角測量により測定される。この方法は、装置1400より感度が落ちるが、結果としてより大きなレンジを生じさせる。
【0033】
図17は、図14の装置により、たわみ計測を用いて得られる図15と同じ自動車用パネルにおける小さな凹みの画像である。凹みは、約1 cm幅で0.5 mm深さである。図18は、図16の装置により、三角測量を用いて得られる対応画像である。そこでは、凹みがよりはっきり見られる。図19は、図14及び図16の装置を用いて得られる画像を結合した画像である。データ処理関数112は、結合された画像を提供するのに必要な処理を実行することができる。更に、自動化されたデバイスが、結合されることができる両方の技術により画像を得るため、レンズ1440をインアクティブな位置とアクティブな位置との間に移動させるのに使用されることができる。図14のインアクティブな位置において、レンズ1440はアクティブではない。図19において、暗帯が投影パターンであって、ほとんど真っ直ぐ走る等高線を伴っている。しかしながら反射される格子はかなりの変形を示す。
【0034】
深い凹みは、純粋にたわみ計測装置を用いてプロファイルすることが困難となる。なぜなら、たわみ計測反射は、閉ループを、又はある場合においてはひどく焦点が合っていない画像を形成する傾向にあるからである。その構成におけるジオメトリ及び入射角を変化させることにより、深い凹みがプロファイルされることができるが、高い感度の損失を伴うよう、感度を低くすることが可能である。例えば、図20及び図21は、約6 cm幅及び6 mm深さを持つ凹みを備える自動車用パネルの画像である。図20は、仮想反射画像を備える「粗い」たわみ計測装置1400を用いる変形を示す。一方、図21は、装置1600を用いる表面に投影される格子の実画像を備える同じ凹みの三角測量法を示す。
【0035】
本発明の好ましい実施形態と考えられるものが示され説明されてきたが、もちろん、本発明の精神から逸脱することなく、形態又は詳細における様々な変形及び変更が容易になされることができることが理解されるであろう。従って、本発明は、説明され図示された正確な形態に制限されるものではなく、添付された請求項の範囲に含まれることになるすべての変形を覆うものと解釈されるべきことが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】テストサンプルを測定する散乱計を示す図である。
【図2】図1の散乱計を用いて得られるテストサンプルの画像を示す図である。
【図3】本発明による、強度に基づき変化する格子強度を示す図である。
【図4】本発明による、圧縮を伴う、視野における強度変化を表す方法を示す図である。
【図5】歪んだparousiameter位置較正画像を示す図である。
【図6】図5の歪み画像を、反時計回りに90度回転し、30度の半径距離と、15度の同心円とを加えたことを示す図である。
【図7】ソフトウェア訂正後の図6の画像を示す図である。
【図8】散乱計において使用する球面鏡を示す図である。
【図9】本発明による、散乱計において使用する非球面鏡を示す図である。
【図10】本発明による、散乱計において使用する傾いた非球面鏡を示す図である。
【図11】図8の球面鏡を用いて得られる歪み画像を示す図である。
【図12】本発明による、図9の非球面鏡を用いて得られる画像を示す図である。
【図13】本発明による、図10の傾いた非球面鏡を用いて得られる画像を示す図である。
【図14】カメラがパターン化格子の仮想画像に焦点を合わされるような、たわみ計として構成される光学表面検査装置を示す図である。
【図15】図14の装置を用いて得られる、小さな窪みを持つ自動車用パネルの画像を示す図である。
【図16】カメラの焦点がパターン化格子の実画像に合わされるようにされ、三角測量により画像化するよう構成される本発明による光学表面検査装置を示す図である。
【図17】図14の装置を用いて得られる、小さな窪みを持つ自動車用パネルの画像を示す図である。
【図18】本発明による、図16の装置を用いて得られる、小さな窪みを持つ自動車用パネルの画像を示す図である。
【図19】本発明による、図14及び図16のように構成される装置を用いて得られる、小さな窪みを持つ自動車用パネルの結合画像を示す図である。
【図20】図14の装置を用いて得られる、大きな窪みを持つ自動車用パネルの画像を示す図である。
【図21】本発明による、図16の装置を用いて得られる、大きな窪みを持つ自動車用パネルの画像を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
散乱計側データを処理するためのコンピュータ実現による方法において、
散乱計におけるターゲット物質の方へ光を向かわせるステップと、
前記光が前記ターゲット物質から反射された後、該光の強度を測定するステップであって、視野を横切る前記強度を表すデータを得るために、前記散乱計のスクリーンに与えられる前記視野における格子点を横切る前記強度が測定される、ステップと、
前記視野を横切る前記強度における変動を決定するステップと、
前記強度における前記決定される変動に基づき、前記格子の異なる領域において前記強度データと共に使用される解像度を変化させることにより、前記視野を横切る光分布の前記強度を表す少なくとも1つの関数を規定するステップとを有し、
前記異なる領域がそれぞれ、前記格子点の少なくとも1つを有する、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの関数を規定するステップが、前記強度における低い変動を持つ領域に対して低い解像度が使用されるよう、前記異なる領域において前記強度データと共に使用される前記解像度を変化させることにより、前記光分布の前記強度を表すステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの関数を規定するステップが、前記少なくとも1つの関数を規定するのに必要とされるデータの量が、前記少なくとも1つの関数が前記最大解像度のみを用いる前記光分布の前記強度を表す場合より少なくなるよう、前記異なる領域において前記強度データと共に使用される前記解像度を最大解像度と最小解像度との間で変化させることにより、前記光分布の前記強度を表すステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの関数を規定するステップが、前記異なる領域のそれぞれに対して使用される前記解像度が、前記領域における前記強度の変化率に逆比例するよう、前記異なる領域において前記強度データと共に使用される前記解像度を変化させることにより、前記光分布の前記強度を表すステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの関数を規定するステップが、前記視野の経路に沿って、該経路に沿う1点から別の点までの前記光分布の前記強度を、異なる点の部分集合を用いて表すステップを有し、前記異なる点は、前記経路上にあり、かつ、強度において所定の変化を示す点である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
強度における前記所定の変化が、絶対強度差を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
強度における前記所定の変化が、相対強度差を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの関数が、双方向反射分布関数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記視野が、2つの別々の半球から構成されることができる球面状の視野を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記視野が、半球状の視野を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
散乱計側データを処理する方法を実行するプロセッサにより実行される命令を有するプログラム格納デバイスであって、散乱計において光がターゲット物質に向けられており、前記方法は、
前記光が前記ターゲット物質から反射された後、該光の強度を測定するステップであって、視野を横切る前記強度を表すデータを得るために、前記散乱計のスクリーンに与えられる前記視野における格子点を横切る前記強度が測定される、ステップと、
前記視野を横切る前記強度における変動を決定するステップと、
前記強度における前記決定される変動に基づき、前記格子の異なる領域において前記強度データと共に使用される解像度を変化させることにより、前記視野を横切る光分布の前記強度を表す少なくとも1つの関数を規定するステップとを有し、
前記異なる領域がそれぞれ、前記格子点の少なくとも1つを有する、プログラム格納デバイス。
【請求項12】
光をターゲット物質に向かわせる光源と、
前記光が前記ターゲットサンプルから反射された後、該光を受信する球面スクリーンと、
前記球面スクリーン上の反射光の画像をカメラに与えるよう配置される非球面鏡とを有する、散乱計。
【請求項13】
前記非球面鏡が、傾いた非球面鏡を有する、請求項12に記載の散乱計。
【請求項14】
前記球面スクリーンが、半球状のスクリーンを有する、請求項12に記載の散乱計。
【請求項15】
前記ターゲット物質が、前記散乱計の中央に配置され、
前記非球面鏡は、前記散乱計の非中心に、前記ターゲット物質からオフセットされて配置される、請求項12に記載の散乱計。
【請求項16】
テスト表面と、
照らし出されるパターン格子と、
前記照らし出されるパターン化格子を前記テスト表面に投影するため、前記テスト表面と前記照らし出されるパターン格子との間に与えられる補助レンズと、
前記テスト表面の少なくとも第1の画像を実画像として得るため、前記テスト表面における前記照らし出されるパターン化格子に焦点が合わされるカメラとを有する、光学表面検査装置。
【請求項17】
前記カメラが、前記少なくとも第1の画像を得るため、前記テスト表面に投影される前記照らし出されるパターン化格子における格子ストライプの曲率を三角測量により測定する、請求項16に記載の光学表面検査装置。
【請求項18】
前記補助レンズが、前記照らし出されるパターン化格子の反射画像を形成するよう、前記テスト表面と前記照らし出されるパターン化格子との間の位置から、前記照らし出されるパターン化格子からの光が前記テスト表面に反射することを可能にする位置へと移動可能であり、
前記カメラは、前記テスト表面の少なくとも第2の画像を仮想画像として得るために、前記反射画像に再び焦点合わせされる、請求項16に記載の光学表面検査装置。
【請求項19】
結合画像を提供するため、前記少なくとも第1の画像と前記少なくとも第2の画像とを結合する手段を更に有する、請求項16に記載の光学表面検査装置。
【請求項20】
光学表面検査を提供する方法において、
前記照らし出されるパターン化格子を前記テスト表面に投影するため、前記テスト表面と前記照らし出されるパターン化格子との間に補助レンズを配置するステップと、
前記テスト表面の少なくとも第1の画像を実画像として得るため、前記テスト表面において前記照らし出されるパターン化格子にカメラの焦点を合わせるステップとを有する、方法。
【請求項21】
前記照らし出されるパターン化格子からの光が前記テスト表面に反射することを可能にすることにより、前記照らし出されるパターン化格子の反射画像を形成するステップと、
前記テスト表面の少なくとも第2の画像を仮想画像として得るために、前記反射画像に前記カメラを焦点合わせするステップとを更に有する、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2008−516224(P2008−516224A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535314(P2007−535314)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053277
【国際公開番号】WO2006/038196
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】