説明

検査装置及び検査方法

【課題】パターンのムラと、欠陥等の検査を1台の検査装置により実現すること。
【解決手段】本発明の一態様にかかる検査装置10は、試料30上に形成されたパターンを検査する検査装置であって、試料30に照明光を照射する光源11と、試料30のパターンに対する光学的なフーリエ変換面に配置され、試料30からの回折光又は散乱光を反射するデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)13と、DMD13と共役な位置に配置され、DMD13で反射された光を受光する光検出器17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程で利用されるウエハ、マスク等のパターンを検査するための検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程で利用されるフォトマスクや半導体ウエハ等においては、基板上に所定のパターンが繰返し形成されている。従来から、これらのマスク等(以下、「試料」という)の表面に形成された繰り返しパターンから発生する回折光(例えば1次回折光)を利用して、パターンのムラや異物、欠陥等を検査する検査装置が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。試料表面の欠陥箇所と正常箇所では回折効率が異なるため、繰り返しパターンからの回折光に基づく画像には明るさの相違が現れ、その明暗により欠陥箇所を特定できる。
【0003】
また、特許文献3には、試料に形成されたパターンに合わせて照明方法を変更するため、対物レンズの瞳位置との共役点にミラーアレイデバイスを配置した検査装置が開示されている。特許文献3に記載の検査装置では、試料と共役な位置に撮像装置が配置されており、対物レンズにより投影された試料の像を撮像装置にて撮像することによりパターンの欠陥の検査を行っている。
【特許文献1】特開平10−232122号公報
【特許文献2】特開2001−141657号公報
【特許文献3】特開2006−23221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、欠陥あるいは異物検査の場合は、パターンからの回折光の角度以外の特定の角度範囲に散乱された光を検出していた。一方、パターン線幅のムラを検査する場合には、パターンからの回折光のうち、特定の次数の回折光の強度変化をモニタすることにより、パターン線幅のムラを検出していた。このため、パターンの欠陥と線幅のムラの検査とを1台の検査装置により実現することはできなかった。
【0005】
本発明は、このような事情を背景としてなされたものであり、本発明の目的は、パターンのムラの検査と、欠陥あるいは異物等の検査とを1台の検査装置により実現することができる検査装置及び検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る検査装置は、試料上に形成されたパターンを検査する検査装置であって、前記試料に照明光を照射する光源と、前記試料のパターンに対する光学的なフーリエ変換面に配置され、前記試料からの回折光又は散乱光を反射するデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)と、前記DMDと共役な位置に配置され、前記DMDで反射された光を受光する光検出器とを備えるものである。これにより、1台の装置でパターンのムラ検査と、欠陥等の検査とを実現することができる。
【0007】
本発明の第2の態様に係る検査装置は、上記の検査装置において、前記光検出器は、複数の次数の回折光を受光し、当該複数の回折光の次数に応じて、受光する画素が異なっていることを特徴とするものである。これにより、ムラ等に起因する回折光強度の変化が大きい次数の回折光を決定することができる。
【0008】
本発明の第3の態様に係る検査装置は、上記の検査装置において、前記試料のパターンのムラを検査する場合には、前記複数の次数の回折光のうち、強度が大きい次数の回折光が入射する前記DMDの画素は、オフ状態であることを特徴とするものである。これにより、検査感度を向上させることができる。
【0009】
本発明の第4の態様に係る検査装置は、上記の検査装置において、前記試料のパターンのムラを検査する場合には、前記複数の次数の回折光のうち、ムラに起因した強度変化が大きい次数の回折光以外の次数の回折光が入射する前記DMDの画素は、オフ状態であることを特徴とするものである。これにより、検査感度を向上させることができる。
【0010】
本発明の第5の態様に係る検査装置は、上記の検査装置において、前記光検出器で受光される前記複数の次数の回折光には、前記試料のパターンのムラの特徴を強調するように、次数に応じて異なる重み付け係数が設定されていることを特徴とするものである。これにより、検査感度を向上させることができる。
【0011】
本発明の第6の態様に係る検査装置は、上記の検査装置において、前記光検出器で受光される前記複数の次数の回折光のそれぞれに、異なる重み付け係数が設定された複数のフィルタマトリクスを備えるものである。これにより、必要に応じてフィルタマトリクスを変更することができる。
【0012】
本発明の第7の態様に係る検査装置は、上記の検査装置において、前記光検出器に入射する回折光の次数を変更できるように、前記DMD及び前記光検出器を含む受光系の前記試料に対する角度を変更することができるものである。これにより、検査感度を向上させることができる。
【0013】
本発明の第8の態様に係る検査装置は、上記の検査装置において、前試料のパターンの欠陥を検査する場合には、前記DMDの前記試料のパターンからの回折光が照射されている画素は、オフ状態であることを特徴とするものである。これにより、試料の欠陥等の検査を精度よく行うことができる。
【0014】
本発命の第9の態様に係る検査方法は、試料上に形成されたパターンを検査する検査方法であって、前記試料に照明光を照射し、前記試料からの回折光又は散乱光を、前記試料のパターンに対する光学的なフーリエ変換面に配置されたデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)で反射し、前記DMDで反射された光を、前記DMDと共役な位置に配置された光検出器で受光する。これにより、パターンのムラの検査と、欠陥等の検査とを実現できる。
【0015】
本発明の第10の態様に係る検査方法は、上記の検査方法において、前記光検出器は、複数の次数の回折光を受光し、当該複数の回折光の次数に応じて、異なる画素で受光するする。これにより、検査感度を高めることができる。
【0016】
本発明の第11の態様に係る検査方法は、上記の検査方法において、前記試料のパターンのムラを検査する場合には、前記複数の次数の回折光のうち、強度が大きい次数の回折光が入射する前記DMDの画素をオフ状態とすることを特徴とする。これにより、検査感度を向上させることができる。
【0017】
本発明の第12の態様に係る検査方法は、上記の検査方法において、前記試料のパターンのムラを検査する場合には、前記複数の次数の回折光のうち、ムラに起因した強度変化が大きい次数の回折光以外の次数の回折光が入射する前記DMDの画素をオフ状態とする。これにより、検査感度を向上させることができる。
【0018】
本発明の第13の態様に係る検査方法は、上記の検査方法において、前記光検出器で受光される前記複数の次数の回折光には、前記試料のパターンのムラの特徴を強調するように、次数に応じて異なる重み付け係数を設定する。これにより、検査感度を向上させることができる。
【0019】
本発明の第14の態様に係る検査方法は、上記の検査方法において、前記光検出器で受光される前記複数の次数の回折光のそれぞれに、異なる重み付け係数を用いて前記回折光の強度変化を強調する。これにより、検査感度を向上させることができる。
【0020】
本発明の第15の態様に係る検査方法は、上記の検査方法において、前記DMD及び前記光検出器を含む受光系の前記試料に対する位置を変更し、前記光検出器に入射する回折光の次数を変更する。これにより、検査感度を向上させることができる。
【0021】
本発明の第16の態様に係る検査方法は、上記の検査方法において、前試料のパターンの欠陥を検査する場合には、前記DMDの前記試料のパターンからの回折光が照射されている画素をオフ状態とする。これにより、試料の欠陥等の検査を精度よく行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、パターンのムラの検査と、欠陥あるいは異物等の検査とを1台の検査装置により実現することができる検査装置及び検査方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施例の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0024】
本発明の実施の形態に係る検査装置について、図1を参照して説明する。図1は、検査装置10の基本構成を示した図である。本実施の形態に係る検査装置10は、基板上に繰り返しパターンが形成された試料の欠陥あるいは異物の検査及びパターンの線幅のムラの検査を行うものである。なお、パターンのムラとは、欠陥検査等のミクロ検査では良品と判定されても、パターンの僅かな寸法ズレが発生し、目視によるマクロ検査で不良品として判断されるものである。
【0025】
以下の説明では、ウエハ上に繰り返しパターンが形成された試料30を検査する検査装置を例として説明する。また、繰り返しパターンは、一方向に長く平行なラインとスペース(凹部と凸部)が一定間隔で配列されたL/S(ライン・アンド・スペース)パターンとする。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、フォトマスクや液晶表示パネルなどのパターン検査にも適用可能である。
【0026】
図1に示すように、検査装置10は、光源11、レンズ12、14、16、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)13、ミラー15、光検出器17、処理装置20を備えている。ムラの検査を行う場合には、本実施の形態に係る検査装置10は、試料30上に形成された繰り返しパターンにコヒーレント光を照射し、レンズによって得られるフーリエ変換面における回折光パターン(フーリエパターン)の解析を行うことにより、パターンのムラの検査を行う。一方、欠陥、異物等の検査を行う場合は、試料30のパターンによる回折光を検出しないようにして、欠陥等からの散乱光を検出することにより行われる。
【0027】
なお、ここでは図示していないが、試料30は、X−Yステージ上に吸着固定されている。X−Yステージをモーター等により駆動させることにより、光源11から出射される光ビームにより、試料30上をスキャンすることができる。
【0028】
光源11は、試料30にコヒーレント光である照明光L01を出射する。光源11としては、コヒーレントな光を出射するレーザー等を用いることができる。例えば、波長405nmのレーザー光を、試料30に対してほぼ垂直に落射照明する。本実施の形態では、照明光L01のビーム径としては、例えば、0.2〜0.3mmとする。照明光L01の光ビーム内に、試料30のパターンが10個程度入ることとなる。なお、本発明においては、試料30に略平行光を照射しているため、フォーカス位置に関係なく精度よくムラ等の検査を行うことができる。
【0029】
試料30上の繰り返しパターンのピッチをd、照明光の入射角とθi、回折光の次数がmの場合の回折角をθm、入射光の波長をλとすると、以下の式が成り立つことが一般的に知られている。
d(sinθm±sinθi)=mλ(m=0、±1、・・・)
ここで、0次回折光(直接光)は、微細な欠陥情報が相対的に少ない。このため、0次回折光よりも絶対値の大きな次数の回折光を検出する必要がある。従って、図1に示すように、ここでは、4次〜6次の回折光がレンズ12に入射するようにする。試料30の繰り返しパターンからの回折光L02は互いに干渉しあい、レンズ12を通過することにより、フーリエ変換面に繰り返し周期に依存した回折光パターン(フーリエパターン)が形成される。
【0030】
なお、上記の式から分かるように、繰り返しパターンのピッチdにより、回折次数mと回折角度θmは変動する。また、図1の例では、4次〜6次の回折光がレンズ12に入射するようにしているが、より低い次数(1次〜3次)のほうがより感度よく検査できる場合、あるいは、高い次数のほうがより感度よく検査できる場合がある。このため、図2に示すように、DMD13、光検出器17等の受光系は、試料30の検査領域Oを中心として回転可能に設けられている。すなわち、DMD13、光検出器17等を含む受光系は、試料30に対する角度を変更可能に設けられている。これにより、受光する回折光の次数を選択することができ、より感度よく試料30の検査を行うことが可能である。なお、図2においては、受光系と光源11とが干渉しないように、例えば、光源11から出射される照明光L01をミラー等で曲げて、試料30に照射するようにしてもよい。
【0031】
試料30のパターンに対する光学的なフーリエ変換面には、DMD13が配置されている。すなわち、DMD13は、受光系の瞳位置に配置されている。従って、試料30の繰り返しパターンによる回折光パターンが、DMD13上に形成される。DMD13は、多数の微小鏡面(マイクロミラー)を平面に配列した構成を有している。DMD13としては、例えば、テキサス・インスツルメンツ社製のものを用いることができる。各マイクロミラーは、それぞれ画素に対応する。DMD13は、画素ごとに各マイクロミラーのオン/オフを高速に制御できる反射ミラーとして用いられる。DMD13の各マイクロミラーを、その反射光がレンズ14に入射する向きに制御した状態がオン状態、レンズ14に入射しない向きに制御した状態がオフ状態である。従って、マイクロミラーがオンのときには、試料30からの回折光はレンズ14に入射する方向に反射される。一方、マイクロミラーがオフのときには、試料30からの回折光はレンズ14に入射しない方向へ反射される。
【0032】
DMD13によってレンズ14側に反射された回折光L03は、レンズ14に入射し、ミラー15に集光される。ミラー15によって反射された光L04は、レンズ16を通過して光検出器17に入射する。光検出器17は、DMD13で反射された光を受光し、電気的な信号に変換する。光検出器17は、DMD13と共役な位置に配置されている。すなわち、DMD13と光検出器17とは、いずれも受光系の瞳位置に配置されている。光検出器17としては、例えば、1次元のNMOSラインセンサを用いることが好適である。
【0033】
上述したように本実施の形態においては、試料30に形成されたパターンは、ライン・アンド・スペースパターンである。このため、試料30のパターンによる複数の次数の回折光は、それぞれ特定の方向に進む。光検出器17の画素は、試料30のパターンからの複数の次数の回折光が出ている方向に配列される。また、DMD13の画素と光検出器17の画素とがそれぞれ対応するように配置される。すなわち、ある次数の回折光は、DMD13の特定の画素で反射され、光検出器17の特定の画素で検出される。光検出器17によって検出された複数の次数の回折光の強度変化を測定することにより、ムラ検査を行う。例えば、基準となるリファレンスのパターンからの回折光強度と、測定した試料30のパターンからの回折光強度との差に基づいて、パターン線幅のムラを検査する。このように、ラインセンサを回折光が出ている方向に配列することにより受光画素が少なくて済むため、検査速度を早くすることができる。なお、光検出器17として、2次元CCD素子を用いたエリアセンサなどを使用することも可能である。
【0034】
一方、欠陥あるいは異物検査を行う場合には、試料30のパターンからの回折光が投影される位置のDMD13の画素をオフ状態とする。これにより、光検出器17には、試料30のパターンによる回折光は入射しない。このため、パターン以外の欠陥あるいは異物等がある場合には、当該欠陥等による散乱光がオン状態となっているDMD13の画素でレンズ14の方向へ反射される。従って、欠陥等による散乱光が、光検出器17で検出され、欠陥等の検査が行われる。
【0035】
処理装置20に、光検出器17で受光された光に対応する信号が供給される。図3に、処理装置20の構成を模式的に示す。図3に示すように、処理装置20は、スキャン制御部21、DMD制御部22、欠陥判定部23、フィルタマトリクス選択部24、演算部25、ムラ判定部26を備えている。スキャン制御部21は、試料30が載置されるステージと、光源11から照射される光の相対位置を制御する。DMD制御部22は、DMD13の各画素のオン/オフを切替える。欠陥判定部23は、欠陥あるいは異物等を検査する場合に、光検出器17により受光された光信号に基づいて、欠陥の有無を判定する。
【0036】
フィルタマトリクス選択部24には、各次数の回折光に対する重み付けのための複数のフィルタマトリクスが設定されている。フィルタマトリクス選択部24では、光検出器17からの光信号に基づいて、最適なフィルタマトリクスが選択される。例えば、ムラの検出を行う場合に、線幅に対して強度変化の大きい次数の回折光に対し重み付けを行うため、係数が大きいフィルタマトリクスが選択される。また、光検出器17に入射する回折光の1つが強すぎて飽和してしまうような場合には、当該回折光に対応する光検出器17の画素からの信号に対応する係数が0のものを選択することができる。これにより、受光レンジを拡大することができ、より高感度にムラの検出を行うことができる。演算部25は、フィルタマトリクス選択部24において選択されたフィルタマトリクスを用いて、演算処理を行う。ムラ判定部26は、演算部25において重み付けされた信号に基づいて、試料30のムラの判定を行う。
【0037】
ここで、上述の検査装置10を用いた試料30の検査方法について説明する。上述したように、本実施の形態に係る検査装置10は、試料30に形成されたパターンのムラの検査と、欠陥あるいは異物等の検査を1台の装置で実現するものである。まず、試料30のパターンのムラを検査する方法について説明する。本発明に係るムラ検出方式は、フーリエパターンの特徴抽出である。
【0038】
まず、最初にフィルタマトリクスの設定を行う。フィルタマトリクスは、複数設定することが可能である。フィルタマトリクスの設定方法について、(1)CD(critical dimension)を振ったサンプルウエハがある場合、(2)CDを振ったサンプルウエハがない場合に分けて説明する。
(1)CDを振ったサンプルウエハがある場合
初めに、ショット間でわずかにドーズ(露光量)を変化させて露光したサンプルウエハを準備する。ウエハ上にポジ型のレジストが形成されているとすると、ドーズを変化させることにより、現像した後のパターン線幅が変わる。
【0039】
そして、サンプルウエハの全面をスキャンし、回折光強度のデータを取り込む。このとき、DMD13の全画素はオン状態とする。そして、パターン線幅が異なるダイを指定して、パターンを比較する。これらの回折光強度の差を取ると、特定の次数の回折光で差が大きくなる。従って、この次数の回折光の強度変化を監視することにより、感度よくムラ検査を行うことができる。この次数の回折光が入射する光検出器17の画素からのデータに対し重み付けを行うためのフィルタマトリクスを設定する。すなわち、パターン線幅のエラーの特徴を強調するフィルタマトリクスを自動的に決定する。
【0040】
パターン線幅が変化すると、ある次数の回折光強度が大きく強くなる場合、あるいは、弱くなる場合がある。従って、このように変化の大きい回折光に対して、その変化を強調するように、正又は負の係数をかける。例えば、4次の回折光強度がパターン線幅を変えても変化しないような場合には、当該4次の回折光に対する係数を0にする。また、5次の回折光強度がパターン線幅を変えると大きく変化する場合には、当該5次の回折光にそれに相当する大きな係数をかける。これにより、受光レンジを拡大することができ、検査感度を向上させることができる。
【0041】
(2)CDを振ったサンプルウエハがない場合
回折光の各次数からの回折光の強度マップを作成する。すなわち、光検出器17の各画素で受光される試料30からの回折光の強度分布を求める。さらに、各回折光の強度マップ間の和、差などを補助的に利用して、異常領域と正常領域をマニュアルで検出する。つまり、回折光強度が試料30の他の観察領域と比較して変化していない領域を正常領域とし、変化している領域を異常領域と判定する。そして、上述のように、異常領域の特徴を強調するようなフィルタマトリクスを自動的に設定する。
【0042】
上述のようにフィルタマトリクスを決定した後に、実際の試料30のムラ検査を行う。具体的には、まず試料30及びリファレンスウエハの全面をスキャンし、それぞれの回折光パターンを取り込む。そして、試料30の回折光強度と、リファレンスウエハの回折光強度との差を求める。その後、処理装置20のフィルタマトリクス選択部24で選択されたフィルタマトリクスを用いて演算処理を行い、検出すべき特徴を強調する。そして、ムラ判定部26において、リファレンスからの回折光強度の差が大きい部分、特異点等を異常個所と判断する。このように、本発明では、リファレンスウエハと試料30の回折光強度を比較するため、従来のDie to Dieや、Die to Databaseの検査法と比較すると、アライメント誤差の影響が少ない。
【0043】
なお、実際の半導体ウエハの場合、周辺回路部と検査対象領域である繰り返しパターン領域がある。従って、半導体ウエハの全面をスキャンした後、フィルタ処理を行う前に、プロジェクションあるいはヒストグラム等を利用して、周辺回路部と検査対象領域とを分離することができる。また、リファレンスウエハの回折光パターンを取り込む際に、特定の次数の回折光強度が強すぎて、対応する光検出器17の画素の飽和してしまう場合がある。この場合には、対応するDMD13の画素をオフ状態とし、フィルタマトリクスの係数を0とすることができる。この場合には、試料30の検査を行う際にも当該DMD13の画素をオフ状態としたまま、試料30のムラ検査を開始する。また、リファレンスの回折光パターンを測定する際に光検出器17の感度を変更して飽和しない状態とし、この状態で試料30の回折光パターンを測定するようにしてもよい。
【0044】
また、光検出器17に複数の次数の回折光を入射させ、ムラに起因した強度変化が大きい次数の回折光を決定し、当該次数の回折光以外の次数の回折光が入射するDMD13の画素をオフ状態としてもよい。
【0045】
このように、本発明によれば、ムラに起因する回折光強度の変化が大きく、感度の高い次数の回折光を用いてムラの検査を行う。このため、非常に敏感なムラ検査を行うことができる。また、フィルタマトリクスにより、特定の次数の回折光強度に大きな値の係数をかけることができるため、より感度を向上させることができる。さらに、回折光強度が強く、光検出器17の出力が飽和してしまう画素に対応するDMD13の画素をオフ状態にすることができる。これにより、ダイナミックレンジを拡大することが可能である。なお、オフ状態としたDMD13の画素に対応する光検出器17の画素からの出力に対するフィルタマトリクスの係数を0にしてもよい。
【0046】
次に、検査装置10を用いた欠陥、異物等の検査方法について説明する。本発明に係る欠陥検査の方式は、暗視野散乱光検出方式である。まず、欠陥等のないウエハを光源11から略垂直に照明する。そして、このウエハのパターンで回折され、DMD13で反射された光を光検出器17で受光する。このとき、ウエハの繰り返しパターンからの回折光が入射するDMD13の画素をオフ状態とする。すなわち、ウエハの繰り返しパターンからの強い回折光が入射する部分の光検出器17の画素を、オフ状態となっているDMDの画素によりマスクする。つまり、DMD13を制御して、試料30のパターンからの回折光が入射する画素を遮断する空間フィルタとして機能させる。具体的には、試料30のパターンからの回折光が入射する画素を、その反射光がレンズ14に入射しない向きに制御し、それ以外の画素をその反射光がレンズ14に入射する向きに制御する。従って、欠陥等のないウエハの正常なパターンからの回折光は、光検出器17で検出されない。
【0047】
そして、正常なパターンからの回折光が入射するDMD13の画素をオフ状態としたまま、試料30に同様に光源11から略垂直に照明する。試料30の全面をスキャンし、DMD13のオフ状態の画素でマスクされていない光検出器17の画素で受光した光の強度の総和のマップを得る。パターン欠陥あるいは異物が試料30上にある場合、欠陥等から散乱された光は、パターンからの回折光とずれた角度で散乱される。このため、欠陥等からの散乱光が、光検出器17で受光されることとなる。従って、信号強度が大きい部分をパターン欠陥又は異物と判定する。なお、上述したように、半導体ウエハの全面をスキャンした後に、プロジェクションあるいはヒストグラム等を利用して、周辺回路部と検査対象領域とを分離することができる。
【0048】
このように、本発明によれば、1台の検査装置で、パターンのムラの検査と、欠陥あるいは異物等の検査とを実現することができる。また、受光系の瞳位置に配置したDMD13のオン/オフを制御することにより、ダイナミックレンジを拡大させることができ、検査精度を向上させることができる。本発明は、繰り返しパターンを有する半導体ウエハや半導体メモリ用フォトマスク、液晶表示パネルなどを検査する外観検査装置に利用可能である。
【0049】
なお、上述の説明では、パターン線幅のムラを検出する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、あらかじめ形成したパターンにより回折光強度の変化を調べておき、強度変化の大きい次数の回折光に対応する係数が大きいフィルタマトリクスを選択することにより、基板上に形成したレジストの膜厚や、プロファイルの変化等ムラの種別を判定することも可能である。
【0050】
また、上述の実施の形態では、試料30のパターンに対するフーリエ変換面にDMD13を配置したが、これに限定されるものではない。例えば、反射光の方向を容易にコントロールすることができる液晶光スイッチ等を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施の形態に係る検査装置10の構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る検査装置10の受光系を移動させたときの状態を示す図である。
【図3】実施の形態に係る処理装置20の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
10 検査装置
11 光源
12、14、16 レンズ
13 DMD
15 ミラー
17 光検出器
20 処理装置
21 スキャン制御部
22 DMD制御部
23 欠陥判定部
24 フィルタマトリクス選択部
25 演算部
26 ムラ判定部
30 試料
L01 照明光
L02、L03、L04 回折光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料上に形成されたパターンを検査する検査装置であって、
前記試料に照明光を照射する光源と、
前記試料のパターンに対する光学的なフーリエ変換面に配置され、前記試料からの回折光又は散乱光を反射するデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)と、
前記DMDと共役な位置に配置され、前記DMDで反射された光を受光する光検出器と、
を備える検査装置。
【請求項2】
前記光検出器は、複数の次数の回折光を受光し、
当該複数の回折光の次数に応じて、受光する画素が異なっていることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記試料のパターンのムラを検査する場合には、
前記複数の次数の回折光のうち、強度が大きい次数の回折光が入射する前記DMDの画素は、オフ状態であることを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記試料のパターンのムラを検査する場合には、
前記複数の次数の回折光のうち、ムラに起因した強度変化が大きい次数の回折光以外の次数の回折光が入射する前記DMDの画素は、オフ状態であることを特徴とする請求項2又は3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記光検出器で受光される前記複数の次数の回折光には、前記試料のパターンのムラの特徴を強調するように、次数に応じて異なる重み付け係数が設定されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記光検出器で受光される前記複数の次数の回折光のそれぞれに、異なる重み付け係数が設定された複数のフィルタマトリクスを備える請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記光検出器に入射する回折光の次数を変更できるように、前記DMD及び前記光検出器を含む受光系の前記試料に対する角度を変更することができる請求項1〜6に記載の検査装置。
【請求項8】
前試料のパターンの欠陥を検査する場合には、
前記DMDの前記試料のパターンからの回折光が照射されている画素は、オフ状態であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項9】
試料上に形成されたパターンを検査する検査方法であって、
前記試料に照明光を照射し、
前記試料からの回折光又は散乱光を、前記試料のパターンに対する光学的なフーリエ変換面に配置されたデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)で反射し、
前記DMDで反射された光を、前記DMDと共役な位置に配置された光検出器で受光する検査方法。
【請求項10】
前記光検出器は、複数の次数の回折光を受光し、
当該複数の回折光の次数に応じて、異なる画素で受光する請求項9に記載の検査方法。
【請求項11】
前記試料のパターンのムラを検査する場合には、前記複数の次数の回折光のうち、強度が大きい次数の回折光が入射する前記DMDの画素をオフ状態とすることを特徴とする請求項10に記載の検査方法。
【請求項12】
前記試料のパターンのムラを検査する場合には、前記複数の次数の回折光のうち、ムラに起因した強度変化が大きい次数の回折光以外の次数の回折光が入射する前記DMDの画素をオフ状態とする請求項10又は11に記載の検査方法。
【請求項13】
前記光検出器で受光される前記複数の次数の回折光には、前記試料のパターンのムラの特徴を強調するように、次数に応じて異なる重み付け係数を設定する請求項10〜12のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項14】
前記光検出器で受光される前記複数の次数の回折光のそれぞれに、異なる重み付け係数を用いて前記回折光の強度変化を強調する請求項13に記載の検査方法。
【請求項15】
前記DMD及び前記光検出器を含む受光系の前記試料に対する位置を変更し、前記光検出器に入射する回折光の次数を変更する請求項9〜15に記載の検査方法。
【請求項16】
前試料のパターンの欠陥を検査する場合には、前記DMDの前記試料のパターンからの回折光が照射されている画素をオフ状態とすることを特徴とする請求項9〜15のいずれか1項に記載の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−109263(P2009−109263A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280051(P2007−280051)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【Fターム(参考)】