説明

検査装置

【課題】ウェハを外周で保持する機構では、ウェハが自重で撓む場合がある。そこで平面度を保持するためにウェハとウェハ下の保持台との間に空気を供給する方法がある。しかし、この方法では異物がウェハに付着する場合がある。
【解決手段】ウェハの平面度を保持するためにウェハ、及びウェハ下の保持台に負電圧をかける。この静電力によってウェハに上向きの力を与え、平面を保持する。また、この方法により負に帯電した異物の付着を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上の異物,傷等の欠陥を検出する検査装置、及びそれに用いられる基板支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハ検査装置はシリコンウェハ表面にレーザ光を照射し、その表面の欠陥や異物の存在を検査するものである。
【0003】
シリコンウェハの表面は研磨され鏡面仕上げとなっている。これにレーザ光を照射しその反射光を検出器で受ける。この検出器で受けた信号を閾値と比較することによりウェハ表面の欠陥有無を検査する。
【0004】
検査の手順を大まかに述べる。まずウェハを複数枚収納したカセットを装置の所定の部位にセットする。装置はウェハ搬送アームによりカセットからウェハを1枚取り出し、所定のウェハ保持台に載せる。ウェハは保持台に設けられたチャックにより固定され、保持台は所定の検査位置まで移動する。ウェハを所定の速さで回転させ、レーザを照射し検査を行う。ウェハの回転およびレーザの半径方向走査によりウェハ全面を検査する。
【0005】
ウェハ検査装置では、ウェハの裏面も検査することがある。そのためウェハ裏面への異物の付着が無いように、ウェハは周囲(エッジ部)でのみ固定(チャック)し、ウェハ裏面と保持台の間に隙間ができるようにしている。この方式は、サイドチャック方式と言われることもある。サイドチャック方式では、ウェハを外周のみで保持するため、ウェハに自重による撓みが生ずる。撓みが生ずることによって、次のような不都合が発生する。
1.下向きに撓むことでウェハ裏面と保持台が接触し、これがウェハ裏面への異物の付
着となることがある。
2.ウェハ表面の平面度が損なわれることにより、検査時に照射したレーザ光の反射光
の方向が変化し、正しく検査できなくなる。
【0006】
以上の不都合を防ぐためには、ウェハの平面度を保つことが必要である。従来技術として、特許文献1では、ウェハ裏面と保持台の間に空気を供給し、その空気圧(ウェハを押し上げる方向)によりウェハの平面度を保つようにしている。
【0007】
特許文献2では、静電気力を用いた浮上力発生機構を開示している。
【0008】
特許文献3では、撓み調整手段が、ウェハを裏面側から負圧や静電気等を利用して吸引する仕方も含むことを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−225480号公報
【特許文献2】特開平10−229685号公報
【特許文献3】特開2007−225480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の特許文献2、及び3では、静電気力を用いることは開示している。
【0011】
しかし、この方法ではウェハや保持台周辺に漂う異物にまで静電気力の影響を与えてしまい、結果的に帯電した異物を積極的にウェハに引き寄せ、ウェハを汚染してしまうことも考えられる。この点については従来技術では何ら配慮がなされていなかった。
【0012】
そこで、本発明は、この課題に配慮してなされたものであり、静電気力を利用してウェハの平面度を保ちつつ、周囲の異物の付着を防止する検査装置、及び基板支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、空気中に漂う異物は通常その大部分は負に帯電しているという点に着目した。より具体的には、本発明は、空気中にわずかではあるが存在している自由電子が異物表面に付着するという点に着目した。
【0014】
つまり、本発明では、ウェハを負に帯電させておけば、例え異物が負に帯電したとしても、異物はウェハに付着しないということを見出した。
【0015】
また、ウェハを負に帯電させた場合、保持台との間に静電気による反発力を発生させるには、保持台もまた負に帯電させておくのが有効であることを本発明では見出した。
【0016】
本発明はこれらの点を利用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば異物を付着させることなく、ウェハの平面度を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の検査装置の全体図。
【図2】実施例1の基板支持装置を説明する図。
【図3】実施例2を説明する図。
【図4】膜付きウェハの断面を説明する図。
【図5】実施例3を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0020】
図1に実施例1の検査装置の全体図を示す。ウェハ101は搬送系1011に保持されている。この搬送系1011は、後述する基板支持装置を有する。照明光学系1001はレーザビーム等の光1002をウェハ101に照明する。検出光学系1004は、光電子増倍管等の光電変換素子を有するものであり、光1002の照明によって発生した光1003(反射光,散乱光等)は検出光学系1004によって光電変換され、検出される。検出光学系1004によって、検出された信号はさらに、A/D変換され、A/D変換された信号は、信号処理系1005に送られる。A/D変換された信号は、パルス成分1007と、直流成分1008とを含む。信号処理系1005は、このA/D変換された信号と閾値1006とを比較し、閾値以上の信号を欠陥として検出する。信号処理系1005によって検出された欠陥は、マウス等の入力部とディスプレイ等の表示部とを有する入出力部1012に、検出された位置と併せてマップとして表示されることもある。搬送系1011は、後述する基板支持装置によって支持されたウェハ101をスピンドルモータ等で回転させながら、矢印1013の方向に直線的に移動させるものである。搬送系1011の動作は全体制御部1009によって制御される。以上の動作によって、ウェハ101の全面の検査が行われる。
【0021】
次に搬送系1011が有する基板支持装置について詳細に説明する。図2は実施例1の基板支持装置の構成を説明する図である。基板支持装置は、後述するチャック203を配置するための金属製の保持台202、ウェハ101をその端部から保持するチャック203、保持台202とチャックとの間に配置された絶縁体204、保持台202に接続された直流電源、チャック203に接続された直流電源とを有する。実施例1の基板支持装置は、チャック203がウェハ101をその端部から保持するサイドチャック方式である。
【0022】
さらに詳細に説明する。図2において、ウェハ101は金属製の保持台202の上で、金属製のチャック203により端部から固定される。これにより、ウェハ101は保持台202に対して浮上することとなる。そして、チャック203と保持台202の間には絶縁体204が設置されている。さらに、保持台202およびチャック203はそれぞれ別個の直流電源205によってアース206に対して負の電圧となるように構成されている。
【0023】
この構成において、ウェハ101ならびに保持台202は共に負電位となるため、互いに反発しあいその結果ウェハ101には上向きの力が働く。全体制御部1009は、この上向きの力をウェハ101の自重(重さ,質量と表現することもできる)と釣り合わせるように直流電源205の電圧を制御する。
【0024】
この動作によって、ウェハ101・保持台間の力はウェハ101の自重と等しくなるため、ウェハ101の平面度を保つことができる。また、ウェハ101はアースに対して負電位となっているため、負に帯電した異物(微粒子)の付着は少なくなる。
【実施例2】
【0025】
次に実施例2を、図3を用いて説明する。実施例1と同じ部分は省略する。実施例2は、保持台302を同心円上に複数の領域308,309,310として分割し、それらの間に絶縁体307を配置したものである。そして、実施例2では、領域308,309,310に対して、別個に直流電源305を接続しており、全体制御部1009は、領域308,309,310に印加する負電位を独立に設定ができる。この構成により、実施例1で述べたウェハ201と保持台202の間に働く静電気力に半径方向の分布を付けることができる。なお、領域の分割の仕方は、同心円上でなくても良い。
【0026】
この構成によって、たとえばウェハ201の平面度をより精密に制御でき、また異なる種類のウェハに対してもその平面度を保つことができる。例えば、図4に示すように、ウェハ101上に何らかの膜401をスピンコーティングにより作成した場合、この膜401の表面は、スピンコーティングにより発生した遠心力によって窪んでいる場合もある、このような場合に実施例2は特に有効である。本実施例2では、全体制御部1009は、膜401が作成されたウェハ101の自重による撓みに、膜401表面窪み量を考慮した値に釣り合うように直流電源305を制御する。
【実施例3】
【0027】
次に図5を用いて実施例3を説明する。実施例3は主に表示に関するものである。
【0028】
全体制御部1009が制御する電圧量は、ウェハ101の自重や撓み量と共に調整データとして全体制御部1009内のメモリに記憶しておくこともできる。そして、検査装置は、検査の際にはウェハ101を格納するウェハポッドからウェハ101の種類,自重等に関する情報を受け取り、調整データを読み出すことで自動的にウェハ101の平面度を制御することができる。
【0029】
しかし、作業者が手動で電圧を設定したい場合も考えられる。その場合は、図5に示すように、前述した入出力部1012のディスプレイ500にウェハのマップ505と電圧設定ウィンドウ501,502,503を設けて、キーボード等から電圧を設定できるようにしても良い。
【0030】
さらに、電圧を変更した際に予測される撓みの変化を確認できるように、ウェハ101の半径方向と撓みとの関係を示した確認画面504を設けても良い。このようにすれば容易に電圧を変更した際の撓みの変化を確認することができる。
【0031】
本発明は、実施例に限定されない。本発明は、検出光学系を複数有する検査装置にも適用できる。本発明の適用対象は、ウェハでなくても良い、例えば液晶パネル基板,ハードディスク基板等の基板であれば良い。また検査装置だけでなく、様々な製造装置へ適用することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
101 ウェハ
202 保持台
203 チャック
204,307 絶縁体
206 アース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の欠陥を検出する検査装置において、
前記基板を支持する基板支持装置と、
前記基板に光を照明する照明光学系と、
前記基板からの光を検出する検出光学系と、
前記検出光学系の結果を使って欠陥を検出する処理系と、
前記基板に負の電圧を印加する第1の直流電源と、
前記第1の直流電源の電圧を変える制御部と、を有することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
前記基板支持装置は、
前記基板を、前記基板の端部から支持する金属製のチャックを有し、
さらに、
前記第1の直流電源は、前記チャックを介して前記基板に負の電圧を印加することを特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置において、
前記チャックを配置するための金属製の保持台と、
前記チャックと前記保持台との間に配置された絶縁体と、
前記保持台に負の電圧を印加する第2の直流電源と、を有し、
前記制御部は、前記第2の直流電源の電圧を変えることを特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検査装置において、
前記制御部は、前記基板と前記保持台との間の力が、前記基板の自重と等しくなるように前記第1の直流電源の電圧、及び前記第2の直流電源の電圧を変えることを特徴とする検査装置。
【請求項5】
請求項2に記載の検査装置において、
前記チャックを配置するための金属製の保持台と、
前記保持台を複数の領域に分割するための絶縁体と、
前記複数の領域にそれぞれ負の電圧を印加する複数の直流電源と、を有し、
前記制御部は、前記複数の直流電源の電圧を変えることを特徴とする検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−242225(P2012−242225A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111975(P2011−111975)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】