説明

樹脂モールド装置

【課題】樹脂モールド部の厚さを基板の厚さ範囲内に収めて封止する樹脂モールド装置を提供する。
【解決手段】モールド金型のクランプ動作により基板凹部8に供給された所定量の封止樹脂9を可動ブロック18により押圧して当該基板凹部8に配置された半導体チップ7を基板板厚範囲で封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド金型の樹脂モールド領域をリリースフィルムにより被覆し、封止樹脂とともに被成形品を圧縮成形して樹脂モールドする樹脂モールド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リードフレームや配線基板に半導体チップが搭載された被成形品を樹脂モールドする樹脂モールド方法としては、ポットに供給された封止樹脂を金型ランナゲートを通じてキャビティへ充填するトランスファーモールド方法やキャビティの所定量の封止樹脂を供給して圧縮成形する方法などがある。金型構造が簡易で、多数個取りが可能であり、しかもスクラップとなる不要樹脂を減らして成形できる圧縮成形用の樹脂モールド装置が好適に用いられている。
【特許文献1】特開平2002−36270号公報
【特許文献2】特開平2003−133350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、半導体装置の小型化、高密度実装化が進行し、POP(Package・On・Package)タイプの半導体装置が製造されている。この半導体装置は、半導体チップが搭載された基板どうしを積層して電気的導通をとるため、端子間の接続を考慮すると樹脂モールド部の厚さをできるだけ薄くなるように成形したいというニーズがある。
【0004】
本発明は上記従来技術の課題を解決し、樹脂モールド部の厚さを基板の厚さ範囲内に収めて封止する樹脂モールド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
即ち、第1の手段は、モールド金型に封止樹脂とともに被成形品を搬入して圧縮成形する樹脂モールド装置において、被成形品の基板周縁部を支持して前記モールド金型内に搬入されるキャリアと、金型クランプ面の樹脂モールド領域がリリースフィルムにより被覆され、半導体チップが搭載された基板凹部に所定量の封止樹脂が供給された被成形品をクランプする前記モールド金型を備え、前記モールド金型のクランプ動作により基板凹部に供給された所定量の封止樹脂を押圧して当該基板凹部に配置された半導体チップを基板板厚範囲で封止することを特徴とする。
尚、被成形品は、樹脂基板に基板凹部が形成されたものであってもよいし、リードフレームの裏面側に粘着フィルムが粘着されて半導体チップが搭載されるダイパッドからインナーリード部にわたって基板凹部が形成されているものでもいずれでもよい。
【0006】
また、第2の手段は、モールド金型に封止樹脂とともに被成形品を搬入して圧縮成形する樹脂モールド装置において、被成形品の基板周縁部を支持して前記モールド金型内に搬入されるキャリアと、金型クランプ面の樹脂モールド領域がリリースフィルムにより被覆され、対向する金型クランプ面にシール材が設けられ、半導体チップが搭載された基板凹部に所定量の封止樹脂が供給された被成形品をクランプする前記モールド金型と、前記モールド金型のクランプ動作に伴ってシール材に閉止された樹脂モールド領域を減圧する減圧機構を備え、前記モールド金型のクランプ動作によりシール材に閉止された樹脂モールド領域を減圧機構により減圧しながら基板凹部に供給された所定量の封止樹脂を押圧して当該基板凹部に配置された半導体チップを基板板厚範囲で封止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述した樹脂モールド装置を用いれば、モールド金型は、クランプ動作により基板凹部に供給された所定量の封止樹脂を押圧して当該基板凹部に配置された半導体チップを基板板厚範囲で封止するので、半導体装置の樹脂モールド部の厚さを基板と略同等まで薄型化することができる。よって、POPタイプの半導体装置の小型化に寄与することができる。
また、モールド金型は、被成形品をクランプする前にシール材に閉止された樹脂モールド領域を減圧機構により減圧しながら基板凹部に供給された所定量の封止樹脂を押圧して当該基板凹部に配置された半導体チップを基板板厚範囲で封止するので、封止樹脂にボイドが発生することなく成形品質を向上させることができる。
以上の樹脂モールド装置を用いれば、成形品質の高い成形品の多数個取りに適しているため生産性が向上し、封止樹脂に成形品ゲートランナなどの不要樹脂が発生しないので金型メンテナンスや離型後の後処理工程も簡略化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る樹脂モールド装置の好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。樹脂モールド装置は、モールド金型に封止樹脂とともに被成形品を搬入して圧縮成形する装置を例示して説明する。
【0009】
[第1実施例]
図1において、キャリア1は被成形品(ワーク)Wの基板周縁部を支持してモールド金型内に搬入される。キャリア1は基板を支持する段付部2が設けられたセットプレート3と、基板周縁部及びセットプレート3に重ね合わせてワークWを挟み込む押さえプレート4を有する。ワークWは、例えばリードフレーム5の裏面側に粘着テープ(ポリイミドテープなど)6が粘着されたものや樹脂基板が用いられる。リードフレーム5の場合には、半導体チップ7が搭載されるダイパッドからインナーリード部5aにわたって段付部がプレス加工或いはエッチング加工により形成されている。このリードフレーム5の形状と粘着テープ6により全体として基板凹部8が形成されている。半導体チップ7はインナーリード部5aとワイヤボンディング接続されている。また、樹脂基板の場合にはエッチング加工或いは切削加工などにより基板凹部が形成されたものであってもよい。
【0010】
ワークWは、キャリア1と共にモールド金型に搬入される前に、基板凹部8に所定量の封止樹脂9が供給される。封止樹脂9は固形樹脂、粉状樹脂、顆粒状樹脂、液状樹脂のいずれでもよく、基板凹部8を封止する容量分が供給される。固形樹脂以外は、予め基板凹部8に応じて計量されて供給される。封止樹脂9のワークWへの供給は、当該ワークWをモールド金型へ搬入する前であっても、搬入した後のいずれであってもよい。
【0011】
モールド金型は上型10と下型11を備えている。上型10は、上型ベース12に上型ブロック13が設けられている。上型ブロック13には押圧ブロック14がスプリング15によりフローティング支持されている。押圧ブロック14と上型ブロック13との間にはシール材16が設けられている。スプリング15は、押圧ブロック14が上型ブロック13と常時当接するように付勢している。
【0012】
押圧ブロック14のクランプ面にはキャリア1との干渉を回避するセット凹部17が設けられている。また、押圧ブロック14に設けられた摺動孔14aには、可動ブロック18が設けられている。この可動ブロック18はワークWの基板凹部8に対向してフローティング支持されている。即ち、可動ブロック18は、上型ブロック13の型開閉方向に移動可能に支持されたガイドロッド19の下端に固定されている。ガイドロッド19の上端には可動ブロック18の下降位置を規制するフランジ20が一体に設けられている。フランジ20と上型ブロック13との間にはスプリング21が挿入されており、ガイドロッド19及び可動ブロック18は常時下方に向けて付勢されている。可動ブロック18は封止樹脂9が供給された基板凹部8へ進入して押圧し、樹脂量のばらつきをスプリング21の撓みにより吸収するようになっている。
【0013】
上型10のクランプ面、即ち押圧ブロック14、可動ブロック18のクランプ面には樹脂モールド領域を覆うリリースフィルム22が吸着支持されている。リリースフィルム22は、所定の耐熱性及び封止樹脂9との剥離性、柔軟性を備えたフィルム材が用いられる。
上型ブロック13にはシール材16によって囲まれた領域内と金型外部とを連通する流路23が形成されており、押圧ブロック14のクランプ面と金型外部とを連通する流路24が各々設けられている。各流路23、24は金型外に設けられる真空吸引装置25、26に接続されている。真空吸引装置25、26を作動させることで、可動ブロック18と摺動孔14aの隙間や流路24を通じてエア吸引され、リリースフィルム22は、上型10のクランプ面、即ち押圧ブロック14、可動ブロック18のクランプ面に吸着保持されるようになっている。
【0014】
下型11は、下型ベース27に下型支持ブロック28が設けられている。下型支持ブロック28は、キャリア1に挟み込まれたワークWが図示しないガイドピンによって位置決めされて支持される。下型支持ブロック28のクランプ面には、キャリア1との干渉を回避するセット凹部29が設けられている。また、下型支持ブロック28のクランプ面と金型外部とを連通する流路30が設けられている。流路30は金型外に設けられる真空吸引装置31に接続されている。真空吸引装置31を作動させることで、流路30を通じてワークWがエア吸引されて位置決めされる。
【0015】
キャリア1の構成について、図3(a)(b)を参照して説明する。図3(a)はセットプレート3の平面図である。図3(b)はその側面図、図3(c)は押さえプレート4の平面図である。セットプレート3は矩形枠体状に形成されており、内周側縁部に基板厚さ分(リードフレーム5及びポリイミドテープ6の厚さ分)の段付部2が形成されている。図3(a)において、樹脂モールド領域が破線Mによって表示されている。押さえプレート4は平板状の枠体に形成されており、コーナー部にガイド孔32が設けられている。セットプレート3のコーナー部にはガイド孔32に挿入するガイドピン33が突設されている。セットプレート3の段付部2にワークWが支持された状態で押さえプレート4を重ね合わせ、ガイドピン33がガイド孔32に嵌め込まれてワークWが保持される。
【0016】
尚、ワークWとしては、図4(a)(b)のように、リードフレーム5に半導体チップ7が搭載され、インナーリード部5aとワイヤボンディング接続された個片化された基板であってもよいし、図5(a)(b)のようにリードフレーム5に半導体チップ7がマトリクス状に配置され、各半導体チップ7がインナーリード部5aとワイヤボンディング接続された基板のいずれであってもよい。
【0017】
次にワークWを樹脂モールドするモールド動作の一例について説明する。
図1において、型開きしたモールド金型の上型クランプ面には、リリースフィルム22が吸着保持されている。キャリア1に支持されたワークWは、基板凹部8に例えば液状樹脂が計量されてポッティングにより供給されて、モールド金型へ搬入される。ワークWは下型11の下型支持ブロック28に位置決めされて載置され、真空吸引装置31を作動させて吸着保持される。このとき、キャリア1は、上型10のセット凹部17及び下型11のセット凹部29に収容されて、金型クランプ面と干渉することがない。
【0018】
次に、図2において、上型10が下降して押圧ブロック14と支持ブロック28とでワークWをクランプする。このとき、可動ブロック18は半導体チップ7に所定量の封止樹脂9が供給された基板凹部8を押圧して当該基板凹部8に配置された半導体チップ7を基板板厚範囲で封止する。このとき、封止樹脂9の樹脂量のばらつきはスプリング21の撓みにより吸収される。封止樹脂9が熱硬化した後、型開きし、キャリア1と共にワークを取り出す。
このように、半導体装置の樹脂モールド部の厚さを基板と略同等まで薄型化することができる。よって、POPタイプの半導体装置の小型化に寄与することができる。また、封止樹脂9に成形品ゲートランナなどの不要樹脂が発生しないので金型メンテナンスや離型後の後処理工程も簡略化できる。
【0019】
[第2実施例]
次に樹脂モールド装置の他例について図6及び図7を参照して説明する。
図6において、モールド金型の概略構成は、第1実施例と同様であるので、以下では異なる構成を中心に説明する。本実施例は、モールド金型のクランプ動作に伴ってシール材に閉止された樹脂モールド領域を減圧する減圧機構を備えている。具体的には、ワークWが位置決めされて支持される下型支持ブロック28のクランプ面に、当該ワークWの周囲を囲んでシール材34が設けられている。また、下型支持ブロック28のクランプ面と金型外部とを連通する流路35が設けられている。流路35は金型外に設けられる真空吸引装置36に接続されている。押圧ブロック14がシール材34を押接して樹脂モールド領域が閉止された状態で真空吸引装置36を作動させることで樹脂モールド空間を減圧するようになっている。
【0020】
図7(a)(b)において、モールド金型の上型クランプ面には、リリースフィルム22が吸着保持されている。キャリア1に支持されたワークWは、基板凹部8に例えば液状樹脂が計量されてポッティングにより供給されて、モールド金型へ搬入される。ワークWとしては、図7(a)のように、リードフレーム5に半導体チップ7が搭載され、インナーリード部5aとワイヤボンディング接続された個片化された基板であってもよいし、マトリクス基板であってもよい。
【0021】
図7(b)において、押圧ブロック14がシール材34を押接して閉止された状態で真空吸引装置36を作動させることで樹脂モールド空間を減圧しながら、可動ブロック18が所定量の封止樹脂9が供給された基板凹部8を押圧して樹脂モールドされる。これによって、基板凹部8に配置された半導体チップ7を基板板厚範囲で封止することができるうえに、封止樹脂9にボイドが発生することなく成形品質を向上させることができる。
【0022】
尚、上述した実施例では、ワークWは半導体チップ7が基板とワイヤボンディング接続された場合を例示したが、半導体チップ7が基板とフリップチップ接続したワークWについても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施例に係る樹脂モールド装置の断面図である。
【図2】図1の樹脂モールド装置の金型クランプ状態の断面図である。
【図3】キャリアを構成するセットプレートの平面図及び右側面図、押さえプレートの平面図である。
【図4】個片化されたワークの平面図及び正面図である。
【図5】マトリクスタイプのワークの平面図及び正面図である。
【図6】第2実施例に係る樹脂モールド装置の断面図である。
【図7】ワークの平面図及びモールド金型の要部の動作説明図である。
【符号の説明】
【0024】
W ワーク
1 キャリア
2 段付部
3 セットプレート
4 押さえプレート
5 リードフレーム
5a インナーリード部
6 粘着テープ
7 半導体チップ
8 基板凹部
9 封止樹脂
10 上型
11 下型
12 上型ベース
13 上型ブロック
14 押圧ブロック
14a 摺動孔
15、21 スプリング
16 シール材
17、29 セット凹部
18 可動ブロック
19 ガイドロッド
20 フランジ
22 リリースフィルム
23、24、30 流路
25、26、31 真空吸引装置
27 下型ベース
28 下型支持ブロック
32 ガイド孔
33 ガイドピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールド金型に封止樹脂とともに被成形品を搬入して圧縮成形する樹脂モールド装置において、
被成形品の基板周縁部を支持して前記モールド金型内に搬入されるキャリアと、
金型クランプ面の樹脂モールド領域がリリースフィルムにより被覆され、半導体チップが搭載された基板凹部に所定量の封止樹脂が供給された被成形品をクランプする前記モールド金型を備え、
前記モールド金型のクランプ動作により基板凹部に供給された所定量の封止樹脂を押圧して当該基板凹部に配置された半導体チップを基板板厚範囲で封止することを特徴とする樹脂モールド装置。
【請求項2】
前記モールド金型は、金型ブロックにフローティング支持され前記キャリアと金型クランプ面との干渉を回避するセット凹部が形成された押圧ブロックと、該押圧ブロックの摺動孔に基板凹部に対向してフローティング支持された可動ブロックと、被成形品が位置決め支持される支持ブロックを備え、
前記モールド金型のクランプ動作により可動ブロックが所定量の封止樹脂が供給された基板凹部を押圧して封止することを特徴とする請求項1記載の樹脂モールド装置。
【請求項3】
モールド金型に封止樹脂とともに被成形品を搬入して圧縮成形する樹脂モールド装置において、
被成形品の基板周縁部を支持して前記モールド金型内に搬入されるキャリアと、
金型クランプ面の樹脂モールド領域がリリースフィルムにより被覆され、対向する金型クランプ面にシール材が設けられ、半導体チップが搭載された基板凹部に所定量の封止樹脂が供給された被成形品をクランプする前記モールド金型と、
前記モールド金型のクランプ動作に伴ってシール材に閉止された樹脂モールド領域を減圧する減圧機構を備え、
前記モールド金型のクランプ動作によりシール材に閉止された樹脂モールド領域を減圧機構により減圧しながら基板凹部に供給された所定量の封止樹脂を押圧して当該基板凹部に配置された半導体チップを基板板厚範囲で封止することを特徴とする樹脂モールド装置。
【請求項4】
前記モールド金型は、金型ブロックにフローティング支持され前記キャリアと金型クランプ面との干渉を回避するセット凹部が形成された押圧ブロックと、該押圧ブロックの摺動孔に基板凹部に対向してフローティング支持された可動ブロックと、被成形品が位置決め支持され当該被成形品の周囲を囲むシール材が設けられた支持ブロックと、該支持ブロックのクランプ面と金型外部を連通する流路の該金型外部へ接続する真空吸引装置を備え、
前記モールド金型のクランプ動作により押圧ブロックがシール材に押接して樹脂モールド領域が閉止された状態で真空吸引装置を作動させ、樹脂モールド空間を減圧しながら可動ブロックが基板凹部に供給された封止樹脂を押圧して封止することを特徴とする請求項3記載の樹脂モールド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−320222(P2007−320222A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154508(P2006−154508)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000144821)アピックヤマダ株式会社 (194)
【Fターム(参考)】