説明

樹脂封止装置及び樹脂封止方法

【課題】樹脂封止品質を保ちつつ樹脂封止装置における樹脂封止作業の高速化を可能とする。
【解決手段】粉粒体状樹脂102を用いて金型160で被成形品の樹脂封止をする樹脂封止装置100であって、粉粒体状樹脂102が搭載される離型フィルム116と、離型フィルム116を保持する吸着機構132と、吸着機構132を離型フィルムと一緒に搬送して金型160に離型フィルム116を配置させる搬送ハンド130と、搬送ハンド130に設けられると共に、搬送ハンド130の搬送経路において搬送中の離型フィルム116に搭載された粉粒体状樹脂102(予備的融着樹脂106)に対して熱を付与可能な赤外線ヒータ134と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被成形品を樹脂封止する樹脂封止装置及びその樹脂封止方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
被成形品である半導体チップ等を配置した基板を金型に配置して樹脂封止する樹脂封止装置において、樹脂封止の材料として、例えば特許文献1では粉粒体状樹脂(顆粒樹脂)を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−120880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で用いられる粉粒体状樹脂は、室温状態に置かれた粒子形状の樹脂である。このため、金型のキャビティに投入された直後は粉粒体状樹脂、即ち樹脂が粒子の形状を保ったままであり、樹脂粒子の間に空気の層(以降、空気の層が孔形状を有さなくても空孔と称する)が多く存在するので温度上昇をすばやく行うことできず、樹脂封止作業の時間短縮が十分に図れないという問題点を有していた。これに対して、キャビティ自体の温度を高くするといったことが考えられる。しかし、その場合には樹脂封止作業の全体の温度管理に影響を与えるため、温度管理が複雑になると共に、粉粒体状樹脂の溶融した部分だけが温度が上がりすぎるおそれもある。このため、結果的に樹脂封止の品質を落とし、歩留りの低下を招くおそれが出てくる。
【0005】
本発明は、前記問題点を解決すべくなされたもので、樹脂封止品質を保ちつつ樹脂封止装置における樹脂封止作業の高速化が可能な樹脂封止装置及びその樹脂封止方法を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、粉粒体状樹脂を用いて金型で被成形品の樹脂封止をする樹脂封止装置であって、前記粉粒体状樹脂が搭載される離型フィルムと、該離型フィルムを保持する保持手段と、該保持手段を該離型フィルムと一緒に搬送して前記金型に該離型フィルムを配置させる搬送手段と、該搬送手段に設けられると共に、該搬送手段の搬送経路において搬送中の離型フィルムに搭載された前記粉粒体状樹脂に対して熱を付与可能な第1加熱手段と、を備えることで、上記課題を解決するものである。
【0007】
本発明では、樹脂封止作業の高速化という目的のもと、離型フィルム上に粉粒体状樹脂が搭載されたときから該離型フィルムを金型に配置するまでの時間を有効に活用して、粉粒体状樹脂を予め加熱しておく。即ち、本発明は、粉粒体状樹脂の搬送手段に離型フィルムの保持手段と第1加熱手段とを設けて、その搬送手段で搬送経路において搬送中に粉粒体状樹脂の加熱を行う。このため、金型に離型フィルムを配置した時点で、粉粒体状樹脂の温度は与えた熱の分だけ温度が上昇している。或いは、後述するように、もし、搬送前から熱を与え始めている場合には、その状態を維持(温度が下がらないように)することができる。いずれの場合でも、粉粒体状樹脂を室温状態で投入した場合と比べて、樹脂封止のための成形温度に粉粒体状樹脂を加熱する時間を短縮することができる。
【0008】
更に、この第1加熱手段による加熱は、粉粒体状樹脂が樹脂粒子の状態であれば、粉粒体状樹脂を構成する樹脂粒子の少なくとも一部を軟化状態とすることもできる。このため、例えばその軟化状態の樹脂粒子が融着した状態の樹脂(予備的融着樹脂)となり、断熱層となる樹脂粒子間の空孔数と空孔サイズを減少させて熱伝導性を向上させることも可能となる。又、熱伝導性の向上により、樹脂封止工程における成形温度に達するまでの昇温時間が短縮されるため、粉粒体状樹脂を室温状態で金型に投入した場合と比べて、樹脂封止工程にかかる時間を一層短くすることができ、成形品の生産性を向上させることができる。即ち、第1加熱手段は移動しながら加熱できるため、スループットの向上が図れる。
【0009】
又、離型フィルムは粉粒体状樹脂の搭載から樹脂封止の際まで使用されることとなるので、途中で剥離工程などもなく、高価な離型フィルムを効率よく使用することができる。このため、樹脂封止作業の高速化とランニングコストの低減化とを促進することができる。
【0010】
又、更に、前記離型フィルムに搭載された前記粉粒体状樹脂であって前記搬送手段による搬送前の粉粒体状樹脂に対して熱を付与可能な第2加熱手段を備える場合には、前記搬送手段による搬送前に、粉粒体状樹脂を予備的融着樹脂に仮成形することができる。このため、第2加熱手段によって予備的融着樹脂が既に軟化状態にある場合にはその保温を目的として第1加熱手段による加熱を行うことが可能である。この場合には、第1加熱手段で消費される電力を少なくすることができる。或いは、第1加熱手段の加熱で予備的融着樹脂の軟化状態を促進させて更に樹脂粒子同士を融着させることもでき、その場合には、断熱層となる樹脂粒子間の空孔数と空孔サイズを元々の予備的融着樹脂から更に減少させて熱伝導性を向上させることが可能となる。いずれの場合でも、予備的融着樹脂の熱伝導性は、樹脂粒子からなる粉粒体状樹脂に比べて高いので、樹脂封止工程にかかる時間を一層短くすることができ、成形品の生産性をより向上させることができる。又、第2加熱手段の加熱補助として、第2加熱手段と共に第1加熱手段で搬送前の粉粒体状樹脂を加熱することもでき、その場合は第1加熱手段による加熱時間を短縮することができる。
【0011】
更に、第2加熱手段のみで離型フィルムの下面より加熱する場合は、搭載された粉粒体状樹脂の上面と下面との間に大きな温度差が生じるが、第1加熱手段との連携によってその温度差を小さくすることができる。粉粒体状樹脂を離型フィルムに搭載する際に完全に均一な高さとすることは困難であるが、第1加熱手段を用いることで、搭載された粉粒体状樹脂の下面から離れている粉粒体状樹脂の樹脂粒子を効果的に加熱することができる。即ち、第1加熱手段との連携によって、第2加熱手段のみの加熱で生じうる、搭載された粉粒体状樹脂の下面から離れた上面にある樹脂粒子温度が低いままとなってサイクルタイムを十分に短縮できないといった状態を回避することができる。
【0012】
又、更に、前記離型フィルムに搭載された前記粉粒体状樹脂であって前記搬送手段による搬送前の粉粒体状樹脂に対して熱を付与して軟化状態として、且つ所定の形状に成形する第3加熱手段と、該第3加熱手段で成形された該粉粒体状樹脂を冷却する冷却手段と、を備える場合には、前記搬送手段による搬送前に、粉粒体状樹脂を、加熱成形工程と冷却工程を経て所定の形状に成形された樹脂(予備成形樹脂と称する)とすることができる。このため、空孔数と空孔サイズとは予備的融着樹脂に比べて、更に減少させることができて熱伝導性を高くすることができる。そして、第1加熱手段で軟化状態とするように加熱するので、金型に離型フィルムを配置した時点で、既に予備成形樹脂の温度は加熱した分だけ温度が上昇している。このため、樹脂封止工程にかかる時間を更に一層短くすることができ、成形品の生産性を向上させることができる。
【0013】
又、更に、前記搬送手段は、前記保持手段で前記離型フィルムを保持した際に、該離型フィルム上の該粉粒体状樹脂を密封可能な構造とされている場合には、第1加熱手段が空気を介して間接的に加熱することを可能とし、且つ、その温度を均一に効率的に行うことができる。密封とすることで、搬送時に熱せられた空気が逃げない(冷たい空気が入ってこない)ため、保温効果が高い。更に、密封容器自体が高温であれば、内部の空気が冷えることを防ぐことができる。又、密封状態であることから、搬送途中に不純物の付着・混入を防ぐことができる。
【0014】
又、更に、前記搬送手段は、前記搬送中の粉粒体状樹脂の温度を測定する温度センサを備える場合には、搬送途中の粉粒体状樹脂の温度を監視することができる。即ち、第1加熱手段による加熱状況を制御できると共に、粉粒体状樹脂の品質を保つことが可能となる。
【0015】
なお、本発明は、粉粒体状樹脂を用いて金型で被成形品の樹脂封止をする樹脂封止方法であって、前記粉粒体状樹脂を離型フィルム上に搭載する搭載工程と、該離型フィルムを保持する保持工程と、該離型フィルムを搬送して前記金型に配置させる搬送工程と、該搬送工程の際に、前記離型フィルムに搭載された前記粉粒体状樹脂に熱を付与する工程と、を含むことを特徴とする樹脂封止方法とも捉えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明を適用することにより、離型フィルムに搭載された粉粒体状樹脂の少なくとも一部を融着させると共に、金型への投入までに樹脂温度を上昇させておくので、樹脂封止品質を保ちつつ樹脂封止装置における樹脂封止作業の高速化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係わる樹脂封止装置の一例を示す模式図
【図2】同じく搬送ハンドを示す斜視図
【図3】同じく搬送ハンドの一部断面を示す模式図
【図4】同じく樹脂封止に使われる樹脂の硬化度と時間との関係を示すグラフ
【図5】同じく予備的融着樹脂の仮成形工程と保持工程とを示す模式図
【図6】同じく時間短縮の効果を示すグラフ
【図7】本発明の第2実施形態に係わる搬送ハンドを示す斜視図
【図8】本発明の第3実施形態に係わる樹脂封止装置の一例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。なお、以下で、粉粒体状樹脂が加熱により形態が変化して、粉粒体の形態をとどめていない状態の樹脂であっても、粉粒体状樹脂とも称することとする。
【0019】
最初に、本発明の第1実施形態に係わる樹脂封止装置の構成について図1を用いて以下に説明する。
【0020】
樹脂封止装置100は、原料となる粉粒体状樹脂102を平板形状の予備的融着樹脂106に仮成形する予備的融着部112と、予備的融着樹脂106を用いて金型160で被成形品の樹脂封止をする圧縮成形部114と、を有する。予備的融着部112と圧縮成形部114とは、離型フィルム116を兼用している。離型フィルム116は、個片とされた状態(短冊形状)で使用され、搬送手段である搬送ハンド130で、予備的融着部112から圧縮成形部114に搬送される。以下、詳細に説明する。
【0021】
予備的融着部112には、原料供給機126と第2加熱手段であるホットプレート128とが配置されている。なお、第2加熱手段は、ホットプレートに限られるものではなく、赤外線ヒータやマイクロ波、熱風等を用いてもよい。
【0022】
原料供給機126は、離型フィルム116の通過する予備的融着部112の所定の位置で、離型フィルム116上の所定の面積に粉粒体状樹脂102を投下(搭載)する。原料供給機126は、図5(A)に示す如く、原料供給機126の供給口126Aから投下される粉粒体状樹脂102を所定の面積に制限するための筒形状の枠126Bを備えている。枠126B内には、図示せぬフレーム形状の構造体が配置されており、投下された粉粒体状樹脂102を該所定の面積内で均一に分散させる。なお、枠126Bの最下端には、粉粒体状樹脂102を加熱した際に枠126Bに融着しないような幅と高さの凹部126BBが設けられている。
【0023】
ホットプレート128は、離型フィルム116に搭載された粉粒体状樹脂102であって搬送ハンド130による搬送前の粉粒体状樹脂102に対して熱を付与する(加熱する)ために、予備的融着部112において、原料供給機126に対向して離型フィルム116の下側に配置される。即ち、ホットプレート128は、搬送ハンド130とは別に(搬送ハンド130の外部に)設けられて、搬送ハンド130に搬送されずに固定配置される。ホットプレート128は、図示せぬ制御部により制御され、離型フィルム116上の粉粒体状樹脂102の樹脂粒子を軟化状態とするように、離型フィルム116の下から加熱(約100度)を行う。このため、粉粒体状樹脂102は、加熱により軟化状態となった樹脂粒子の少なくとも一部が互いに融着することで、平板状に成形された形態の樹脂(予備的融着樹脂106)となる。予備的融着樹脂106の離型フィルム側の面は、離型フィルム116の面に倣い大きな凸凹のない平坦な面に形成される。同時に、粉粒体状樹脂102の樹脂粒子の多くが互いに融着するので、樹脂粒子間に存在する空孔数と空孔サイズは少なくなる。一方、予備的融着樹脂106の反離型フィルム側の表面は、離型フィルム側よりも伝わる熱が少なく且つ有体物で押圧しないので、粉粒体状樹脂102の樹脂粒子の形状に倣う状態で凸凹が残る。同時に、予備的融着樹脂106の反離型フィルム側の面では、空孔数と空孔サイズは離型フィルム側の面と比較して、多く且つ大きく残ることとなる。
【0024】
なお、ホットプレート128に対峙して、予備的融着樹脂106の反離型フィルム側の表面から圧縮空気を吹き付けて軟化状態の粉粒体状樹脂に非接触で加圧・収縮させるような非接触収縮手段を、予備的融着部112に設けておいてもよい。その場合には、確実に軟化した樹脂粒子を融着できるので、安定して熱伝導性の高い予備的融着樹脂を仮成形することができる。
【0025】
搬送ハンド130には、図2に示す如く、保持手段である吸着機構132と第1加熱手段である赤外線ヒータ134と支持板138と温度センサ140と3軸移動機構142とが設けられている。
【0026】
吸着機構132は、図示せぬ真空機構に繋がれており、その端面132Aに図示せぬ吸着口が複数設けられている。真空機構が動作することで端面132Aに離型フィルム116を吸着・保持することができる。なお、図2では、吸着機構132は、離型フィルム116の対向する2辺のみを吸着・保持する態様であるが、離型フィルム116の4辺全てを吸着・保持するように吸着機構を構成してもよい。本実施形態では、保持手段として吸着機構132を用いたが、離型フィルムの2辺以上を上下方向から把持するような把持機構を保持手段として用いてもよい。
【0027】
吸着機構132は、支持板138に支持されている。又、赤外線ヒータ134は、吸着機構132の間であって、図3に示す如く、断熱部材136を介して支持板138に支持されている。赤外線ヒータ134は離型フィルム116に対峙して配置されている。赤外線ヒータ134は、熱の輻射を利用するので空隙を介して、直接予備的融着樹脂106を効率よく加熱する(熱を付与する)ことができる。このため、赤外線ヒータ134と加熱対象である予備的融着樹脂106を密封しておくことを必要としないので、搬送ハンド130の構成を簡易的にすることができる。なお、断熱部材136の凹部136Aに赤外線ヒータ134が配置されているので、予備的融着樹脂106以外の加熱を防止することができる。断熱部材136として赤外線反射板を用いた場合には、効率的に予備的融着樹脂106を加熱して軟化状態を維持することができる。本実施形態では、第1加熱手段として赤外線ヒータを用いているが、マイクロ波を用いた加熱機構や熱風などであってもよく、その場合も直接予備的融着樹脂106を加熱することができ、密封を要しない。
【0028】
支持板138は、又、温度センサ140を支持している。温度センサ140は、非接触温度計であり、非接触で正確に予備的融着樹脂106の温度を計測することができる。計測に際しての配置は、温度センサ140の計測窓と予備的融着樹脂106との間に遮蔽物のない状態が必要となる。具体的には、温度センサ140で使用される波長を遮らないように支持板138に貫通開口を設けてそこに温度センサ140の計測窓が来るように配置する、若しくは透明板、若しくは半透明板を設けてそこに温度センサ140の計測窓が来るように配置する。このため、赤外線ヒータ134は、温度センサ140で計測された値を元にして図示せぬ制御部からの制御信号で、赤外線ヒータ134の通電状況を自動的に制御される。赤外線ヒータ134への通電制御は単純なオン・オフでもよいし、アナログ的に連続的に変化させてもよい。
【0029】
支持板138は3軸移動機構142に固定されている。このため、吸着機構132と赤外線ヒータ134と共に温度センサ140も、3軸移動機構142で離型フィルム116と一緒に搬送される。即ち、離型フィルム116上の予備的融着樹脂106が搬送中でも、加熱が継続可能であり、且つその温度を測定して温度管理も可能である。
【0030】
なお、赤外線ヒータ134の加熱によって予備的融着樹脂106の温度がなるべく樹脂封止における成形温度に近づくことが樹脂封止作業の高速化には望ましいが、搬送ハンド130による搬送時の樹脂温度は搬送時間と許容される反応硬化率(単に硬化率若しくは硬化度と称する)によって決定される。即ち、硬化率は予備的融着樹脂106の熱履歴により決まる。ここで、αを硬化度、dα/dtを反応速度、A、Aを定数、E、Eを活性化エネルギー、Rを気体定数、Tを温度とすると、エポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)の反応硬化度を以下に示すKamalのモデル式により算出できる。
【0031】
dα/dt=(k+kα)(1−α) (1)
=Aexp(−E/R*T) (2)
=Aexp(−E/R*T) (3)
【0032】
式(1)に基づいた樹脂硬化特性と樹脂温度との関係を図4に示す。図4において、例えば、予備的融着樹脂106の融着時の硬化率を2.5%、許容される硬化率を5%とすると、樹脂温度100℃では60秒間の保温が可能となる。逆に言えば搬送時間が60秒かかるならば、樹脂温度は100℃以下で無ければならないことを意味している。搬送時間が30秒なら樹脂温度110℃、搬送時間が15秒なら樹脂温度120℃といったように搬送時間の長短によって樹脂温度を決定することができる(この硬化率は使用する樹脂毎に異なる)。本実施形態では、搬送ハンド130で搬送中に予備的融着樹脂106の軟化状態を維持する(保温)ように、赤外線ヒータ134により加熱がされる。なお、樹脂封止品質の維持のために、この熱履歴を記録して硬化率を積算することで、規格内の硬化度と比較して、規格外となった場合にはその樹脂を廃棄することもできる(例として、樹脂封止作業が何らかの原因で短時間停止した、樹脂温度が異常に上昇したなどの場合)。
【0033】
圧縮成形部114は、図1に示す如く、圧縮成形機150を有する。なお、圧縮成形機150は、図1では1つであるが、複数備えられてもよい。圧縮成形機150は、本体152と、本体152に立設される複数の支柱であるタイバ154に支えられる固定プラテン156と、を有する。固定プラテン156の下面には上型162が取り付けられている。本体152は、固定プラテン156に対して、接近・離反できるように移動可能な可動プラテン158を備えている。可動プラテン158の上面には下型164が取り付けられている。下型164には、図示せぬ吸着機構が設けられており、離型フィルム116を吸着・固定することができる。下型164は、可動プラテン158の移動に伴い、固定プラテン156に取り付けられた上型162に対して接近・離反する。即ち、可動プラテン158の移動により、上型162と下型164とで構成される金型160の型締め・型開きを行うことができる。
【0034】
金型160にはキャビティが形成されており、予備的融着樹脂106を載せた離型フィルム116を下型164に吸着・固定することで、予備的融着樹脂106の金型160への投入を完了する。
【0035】
次に、樹脂封止装置100の動作(予備的融着部112における予備的融着樹脂106の仮成形工程と圧縮成形部114における樹脂封止工程、樹脂封止作業とも称する)について図1、図5を用いて説明する。
【0036】
まず、原料供給機126をホットプレート128上の離型フィルム116に接近させる。そして、供給口126Aから粉粒体状樹脂102を投下させて、ホットプレート128上の離型フィルム116に載せる(搭載工程、図5(A))。このとき、枠126Bは、その上端の位置Uで供給口126A下端の位置Bを覆い、且つ枠126Bの下端の位置Dで離型フィルム116の極近傍に配置される長さを有するので、粉粒体状樹脂102の枠126B外部への飛散を防止できる。同時に、離型フィルム116の枠126Bで定められた所定の面積に正確に粉粒体状樹脂102を投下することができる。このとき、供給口126Aと離型フィルム116との間の図示せぬフレーム形状の構造体により、該所定の面積に均等の厚みで粉粒体状樹脂102を撒くことができる。このため、粉粒体状樹脂102の加熱の均一性と加熱時間の短縮とを確保し、樹脂封止工程時の樹脂流動を少なくすることができる。
【0037】
ホットプレート128の温度を、粉粒体状樹脂102の樹脂粒子を軟化状態とする程度の温度(100度程度)に上昇させておき、離型フィルム116を介して原料供給機126から投下された粉粒体状樹脂102を加熱する(熱を付与する)。原料供給機126に対向する位置において、ホットプレート128は、投下された粉粒体状樹脂102を軟化して互いに融着可能な状態とする。すると、粉粒体状樹脂102の樹脂粒子は加熱により軟化することで変形して、互いの接触面積が増大する。このため、樹脂粒子間の空孔サイズが小さくなると共に粉粒体状樹脂102の厚みは粉粒体状樹脂102の投下直後の厚みよりも少なくなる。同時に、軟化した樹脂粒子は温度による粘度の変化と相まって互いに拘束力が増大して、特にホットプレート128に近い離型フィルム側における樹脂粒子は一部で融着状態となる。このため、元々粒子形状の集合体の形態であった粉粒体状樹脂102は、空孔数と空孔サイズが減少して、厚み方向に収縮させられた形態の予備的融着樹脂106に仮成形される(図5(B))。このとき、ホットプレート128は、離型フィルム116の下側に配置されて、下から粉粒体状樹脂102を加熱している。このため、予備的融着樹脂106の離型フィルム側の面(下面)では、反離型フィルム側の表面に比べて、より多くの樹脂粒子の融着がなされて、予備的融着樹脂106の間に存在する空孔数が少なく且つ空孔サイズが小さくなる。
【0038】
次に、原料供給機126を枠126Bと共に、離型フィルム116から離反させる。枠126Bには凹部126BBが設けられている。このため、枠126B側面に樹脂粒子が融着した状態とならないので、投下された当初の粉粒体状樹脂102の量を変化させることなく、容易に枠126Bを離反させることができる。
【0039】
次に、搬送ハンド130をホットプレート128上の離型フィルム116に当接させて、予備的融着樹脂106の搭載された離型フィルム116の外側の部分を搬送ハンド130の吸着機構132で吸着・保持する(保持工程、図5(C))。
【0040】
次に、搬送ハンド130は、3軸移動機構142で、予備的融着樹脂106を離型フィルム116に貼り付けた状態のままで、吸着機構132で吸着・上昇させて(図5(D))、圧縮成形部114の金型160に移動・配置させる(搬送工程)。この搬送工程の際(搬送経路における搬送中)に、図4に示された関係に従い、予備的融着樹脂106に対して赤外線ヒータ134による加熱(熱の付与)を開始する(加熱工程)。本実施形態では、予備的融着樹脂106の保温を目的として軟化状態を維持して、搬送時間において許容硬化率(本実施例では5%)以下となるように、温度センサ140により赤外線ヒータ134の通電状況が制御される。即ち、予備的融着樹脂106は仮成形時の温度とほぼ同じ100度に保持される。このため、赤外線ヒータ134で消費される電力を最小限とすることができる。
【0041】
次に、金型160の下型164の吸着機構で、予備的融着樹脂106の貼り付いた離型フィルム116を、そのままの状態で吸着・固定する。そして、予備的融着樹脂106を樹脂封止に適した成形温度まで加熱する。
【0042】
そして、被成形品を取り付けた上型162に対して下型164を接近させる。又、キャビティ内の減圧動作も開始させる。そして、所定のタイミングで型締めして、被成形品を圧縮成形して樹脂封止を行う。
【0043】
本実施形態では、離型フィルム116に搭載された粉粒体状樹脂102を軟化状態とするように加熱するホットプレート128を備えているので、粉粒体状樹脂102が、平板形状の予備的融着樹脂106に仮成形されている。そして、予備的融着樹脂106が仮成形時の温度に保温されているので、赤外線ヒータ134で消費される電力を少なくすることができる。そして、その予備的融着樹脂106が樹脂封止の際に金型160に投入されるので、金型160への搬送時に樹脂粒子が飛散するといったことによる金型160のへの樹脂投入量の変化を防止することができる。
【0044】
又、本実施形態では、ホットプレート128が離型フィルム116の下側に配置されているので、離型フィルム側の粉粒体状樹脂102の樹脂粒子の軟化の程度が大きくなり、予備的融着樹脂106の離型フィルム側の空孔数と空孔サイズを反離型フィルム側に比べて少なくできる。即ち、予備的融着樹脂106の表面側(反離型フィルム側)に空孔が多く残ることとなる。このため、樹脂封止工程の際には、金型160のキャビティ空間への予備的融着樹脂106の空孔の排出(空孔数と空孔サイズの減少)が容易であり、樹脂封止された成形品にボイド等が発生することを効率よく防止することができる(歩止りと樹脂封止品質の向上)。
【0045】
又、本実施形態では、離型フィルム116が個片とされた状態で用いられている。このため、ロールで供給される離型フィルムの場合に比べて、予備的融着部112と圧縮成形部114の配置は、大きな自由度を取ることができる。又、予備的融着部112と圧縮成形部114とのいずれかを複数とすることも容易である。更には、離型フィルム116がロールで供給される場合に比べて粉粒体状樹脂102が載せられていない面積を削減することも可能なので、離型フィルム116を無駄なく使用することもできる。同時に、樹脂封止装置100が大掛かりになることを防止することもできる。
【0046】
又、本実施形態は、搬送ハンド130に離型フィルム116の吸着機構132と赤外線ヒータ134とを設けて、搬送ハンド130で搬送中に予備的融着樹脂106の加熱を行う。このため、金型160に離型フィルム116を配置した時点で、予備的融着樹脂106の温度は付与した熱の分だけ温度が上昇している(本実施形態では、予備的融着樹脂106の仮成形時の温度を保った状態の温度となっている)。即ち、予備的融着樹脂106を室温状態で投入した場合と比べて、樹脂封止のための成形温度に予備的融着樹脂106を加熱する時間を短縮することができる。図6を用いて説明すると、例えば、赤外線ヒータを使わない場合には、予備的融着樹脂106が仮成形されて搬送中に室温まで下がってしまう(破線のグラフ)おそれがある。しかし、赤外線ヒータ134で加熱しておくことで、実線のグラフの如く、成形温度に達するまでの時間を短縮することができる。逆に言えば、投入される予備的融着樹脂106の温度がある程度の温度(予熱温度)となっているので、予備的融着樹脂106が投入された際の金型160の温度の低下を緩和することもできる。このため、予備的融着樹脂106を室温状態で金型に投入した場合と比べて、樹脂封止工程にかかる時間を一層短くすることができ、サイクルタイムを短縮できるので、成形品の生産性を向上させることができる(スループットの向上)。
【0047】
又、本実施形態では、樹脂封止のための成形温度に達するまでの昇温時間が短縮されることにより、予備的融着樹脂106の硬化反応を抑制できるので、樹脂封止品質を向上させて、歩留りを向上させることができる。このため、成形温度を通常より高くした場合でも、樹脂封止品質を損なうことなく硬化時間を短縮することができ、生産性を更に向上させることができる。
【0048】
又、本実施形態では、赤外線ヒータ134が、予備的融着樹脂106を搬送時に反離型フィルム側の表面から加熱しているので、予備的融着樹脂106の反離型フィルム側の面の成形温度に達する時間を、赤外線ヒータ134で加熱しない場合に比べて、短くすることができる。このため、樹脂封止工程で離型フィルム側の樹脂の硬化反応が反離型フィルム側の樹脂より先に進むことで生じる不具合(例えば、離型フィルム側の樹脂の粘度の上昇により被成形品内を接続するボンディングワイヤを変形・ショートさせるといった問題)を低減・回避することが可能となる。
【0049】
又、離型フィルム116は粉粒体状樹脂102の搭載から樹脂封止の際まで使用されることとなるので、予備的融着樹脂106を離型フィルム116から剥がす必要がない。このため、予備的融着樹脂106が薄くても剥がすことによる樹脂の割れや欠けを防止できる。つまり、被成形品の封止厚みが薄くなるような場合であっても容易に対応することができ、予備的融着部112と圧縮成形部114とで樹脂の計量誤差を最小限にすることが可能である。同時に、冷却工程もなく、使用装置と工数を少なくできる。それと共に、高価な離型フィルム116を効率よく使用することができる。このため、赤外線ヒータ134を備えた搬送ハンド130を用いる構成でありながら、樹脂封止作業の高速化とランニングコストの低減化とを促進することができる。
【0050】
又、搬送ハンド130は、予備的融着樹脂106の温度を測定する温度センサ140を備えているので、搬送ハンド130で搬送途中の予備的融着樹脂106の温度を監視することができる。即ち、赤外線ヒータ134による加熱状況を制御できると共に、予備的融着樹脂106の品質を保つことが可能となる。
【0051】
即ち、本実施形態によれば、粉粒体状樹脂102の少なくとも一部を融着させると共に、金型160への投入までに樹脂温度を上昇させておくので、樹脂封止品質を保ちつつ樹脂封止装置100における樹脂封止作業の高速化、言い換えれば樹脂封止された成形品の製造のスループット・サイクルタイムを改善・向上させることが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態では、予備的融着樹脂106を仮成形した際の温度を保つような保温(予備的融着樹脂106の軟化状態の維持)を目的として、赤外線ヒータ134で加熱したが、本発明はこれに限定されず、予備的融着樹脂の融着を促すように加熱してもよい。即ち、赤外線ヒータで予備的融着樹脂の軟化状態を維持する以上の加熱を行ってもよい。その場合には、予備的融着樹脂の反離型フィルム側の表面が離型フィルム側の面に比べてより加熱されるので、反離型フィルム側の融着状態が促進されて、断熱層となる樹脂粒子間の空孔数と空孔サイズを元々の予備的融着樹脂から更に減少させて熱伝導性を向上させることができる。このため、更に樹脂封止工程にかかる時間を短縮でき、成形品の生産性を向上させることができる。なお、その際に、金型への投入後の予備的融着樹脂の離型フィルム側の面の昇温特性に合わせて、予備的融着樹脂の反離型フィルム側の表面を予め赤外線ヒータで昇温させておいてもよい。
【0053】
又、本実施形態では、予備的融着樹脂106を仮成形した後に、赤外線ヒータ134の通電を開始していたが、本発明はこれに限定されず、ホットプレートによる加熱と同時に、反離型フィルム側に配置された赤外線ヒータの通電を行ってもよい。その場合には、ホットプレートと赤外線ヒータとで粉粒体状樹脂を挟み込むようにして加熱を行うこととなるので、予備的融着樹脂の仮成形の時間を更に短縮できる。このため、樹脂封止工程にかかる時間を更に短縮でき、成形品の生産性を向上させることができる。
【0054】
又、本実施形態では、ホットプレート128、赤外線ヒータ134いずれも樹脂を軟化状態とするように加熱していたが、本発明はこれに限定されず、いずれも樹脂を軟化状態までせずに単に熱を付与するだけでもよい。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態について、図7を用いて説明する。
【0056】
本実施形態は、第1実施形態とは、第1加熱手段として電熱線式ヒータ234を用いて予備的融着樹脂206を密封したことで異なり、それ以外は同一であるので、符号下2桁を同一として、説明を省略する。
【0057】
本実施形態では、吸着機構232は、支持板238の全ての辺に設けられて、離型フィルム216の4辺を吸着・保持する形態をとっている。このため、吸着機構232で、離型フィルム216を吸着・保持した際には、離型フィルム216上の予備的融着樹脂206を密封することができる。なお、支持板238には、空気弁238Aが設けられている。空気弁238Aは、離型フィルム216を吸着・保持後に電熱線式ヒータ234の加熱で内部の空気を加熱した際に当該空気が膨張して、離型フィルム216を撓ませて予備的融着樹脂206を変形・破損させることを防止するためである。電熱線式ヒータ234は、第1実施形態の赤外線ヒータ134と同様に離型フィルム216上の予備的融着樹脂206に対峙して配置されている。電熱線式ヒータ234は、内部の空気を加熱することで、間接的に予備的融着樹脂206を加熱する。なお、熱電対などの温度センサで電熱線式ヒータ234の温度を測定しておくことで、電熱線式ヒータ234の温度を計測・制御することができ、間接的に予備的融着樹脂206の温度調整を行うことができる。
【0058】
本実施形態では、温度センサは非接触温度ではなく、小型で低コストの熱電対を用いるので、搬送ハンド230を低コスト・小型にすることができる。また、搬送時に予備的融着樹脂206が密封されるので、加熱は均一に効率的に行うことができ、搬送途中に不純物の付着・混入を防ぐことができる。更に、密封されているので、搬送時に熱せられた空気が逃げないし冷たい空気が入ってこないため、保温効果が高い。このような構成は、予備的融着樹脂206の保温と再融着の促進と両方で適用することができる。
【0059】
なお、上記実施形態では、温度センサを用いていたが、本発明はこれに限定されず、予め第1加熱手段(赤外線ヒータ、電熱線式ヒータ)への投入電力と予備的融着樹脂の温度との相関を把握しておき、温度センサを使わずにその相関に基づいて第1加熱手段への通電状況を制御するようにしてもよい。その場合には、温度センサを使用しない分、上記実施形態に比べて、樹脂封止装置の低コスト化を実現することができる。
【0060】
次に、本発明の第3実施形態について、図8を用いて説明する。
【0061】
本実施形態は、第1実施形態とは予備的融着部の代わりに予備成形部312が配置されて、そこに主に第3加熱手段である加熱成形機構321Aと冷却手段である冷却機構321Bとを備えることで異なり、それ以外は同一であるので、符号下2桁を同一として、説明を省略する。
【0062】
予備成形部312は、離型フィルム供給機構318と加熱成形機構321Aと冷却機構321Bと移動機構322とトレイ323と原料供給機326とを備える。
【0063】
離型フィルム供給機構318は、供給ロール318Aと回収ロール318Bと複数のローラ318Cとを備える。離型フィルム供給機構318は、予備成形部312の加熱成形機構321Aと冷却機構321Bの所定の位置に連続した上離型フィルム317を供給する。上離型フィルム317は、離型フィルム316と同一の素材であり、耐熱性に優れ、熱伝導が良好で、伸縮性に富み、形状の復元が容易な材料で適切な厚みに成形されている。加熱成形機構321Aは、離型フィルム316に搭載された粉粒体状樹脂であって搬送ハンド330による搬送前の粉粒体状樹脂に対して熱を付与して軟化状態とし、且つ所定の形状に成形する。粉粒体状樹脂の成形は、上離型フィルム317を介して粉粒体状樹脂を加圧することでなされる。冷却機構321Bは、加熱成形機構321Aで成形された粉粒体状樹脂に、冷却された板を上離型フィルム317上から当接させて、冷却を行う。移動機構322は、トレイ323を原料供給機326と加熱成形機構321Aと冷却機構321Bの所定の位置に移動させる機構である。トレイ323は、加熱と冷却を急激に受けて、高い温度状態と低い温度状態にすばやく移行する必要があり、熱伝導率がよく比熱が小さい材質であることが望ましい。なお、原料供給機326は、第一実施形態と同一なので説明を省略する。
【0064】
次に、予備成形部312における動作を説明する。
【0065】
まず、個片にされた離型フィルム316をトレイ323上に配置させて、移動機構322により原料供給機326の直下の位置X1に移動させる。
【0066】
次に、原料供給機326から粉粒体状樹脂を離型フィルム316に搭載後、トレイ323を加熱成形機構321Aの直下の位置X2に移動させる。そこで、加熱成形機構321Aは、上離型フィルム317を粉粒体状樹脂の表面に当接させて、離型フィルム316上の粉粒体状樹脂302を加熱・軟化させて樹脂粒子同士を融着可能な状態とする。そして、加熱成形機構321Aは、トレイ323との間で軟化状態の粉粒体状樹脂に圧力をかけて平板形状に加圧成形する(加熱成形工程)。
【0067】
次に、上離型フィルム317が貼り付いた状態のままの加圧成形された粉粒体状樹脂(予備成形樹脂306)をトレイ323で冷却機構321Bの位置X3に移動させる。そこで、上離型フィルム317を介して予備成形樹脂306が冷却される(冷却工程)。
【0068】
次に、上離型フィルム317を予備成形樹脂306から剥がして(剥離工程)、位置X4にトレイ323で予備成形樹脂306を移動させる。そこで、搬送ハンド330によって、予備成形樹脂306を離型フィルム316に貼り付けた状態のままで、離型フィルム316を吸着・保持して予備成形樹脂306を圧縮成形部の金型に移動・配置させる。この動作時に、赤外線ヒータ334を通電して予備成形樹脂306の温度を上昇させる。
【0069】
本実施形態においても、離型フィルム316が予備成形部312と圧縮成形部とで兼用に使用されるので、高価な離型フィルム316を効率よく使用することができる。同時に、離型フィルム316の剥離工程は必要ではないため、離型フィルム316の剥離工程を必要とする場合に比べて、冷却工程と剥離工程を短時間で行うことができる。このため、樹脂封止作業の高速化とランニングコストの低減化とを促進することができる。
【0070】
又、本実施形態では、粉粒体状樹脂302が、加熱成形工程と冷却工程を経て所定の形状に成形された予備成形樹脂となる。このため、空孔数と空孔サイズとは予備的融着樹脂に比べて、更に減少させることができて熱伝導性を高くすることができるい。そして、赤外線ヒータ334で軟化状態とするように加熱するので、金型に離型フィルムを配置した時点で、既に予備成形樹脂306の温度は加熱した分だけ温度が上昇している。このため、樹脂封止工程にかかる時間を更に一層短くすることができ、成形品の生産性をより向上させることができる。
【0071】
なお、本実施形態では、トレイ323は離型フィルム316を移動・支持するために用いられているが、トレイに加熱機能や冷却機能を設けてもよい。その場合には、更に予備成形樹脂を短時間で成形でき、結果的に、更に樹脂封止作業の高速化を促進することができる。
【0072】
本発明について上記実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでも無い。
【0073】
例えば、上記実施形態では、搬送ハンドで離型フィルムが吸着・保持される際には、粉粒体状樹脂は、予備的融着樹脂若しくは予備成形樹脂とされていたが、本発明はこれに限定されずに、粉粒体状樹脂のままであってもよい。即ち、原料供給機で粉粒体状樹脂が離型フィルムに投下された段階で、直ちに搬送ハンドで離型フィルムを保持してもよい。その場合には、赤外線ヒータなどの第1加熱手段で、離型フィルム上の粉粒体状樹脂を構成する樹脂粒子の少なくとも一部が軟化状態とされる。このため、その軟化状態の樹脂粒子が融着した状態の樹脂(予備的融着樹脂)となり、断熱層となる樹脂粒子間の空孔数と空孔サイズが減少して熱伝導性を向上させる。即ち、搬送時間内に、粉粒体状樹脂は予備的融着樹脂の状態に仮成形されることとなる。このため、上記実施形態よりも更に簡素な形態とすることができ、この場合においても本発明の相応の作用効果を生ずることとなる。
【0074】
又、上記実施形態においては、粉粒体状樹脂として特に説明をしなかったが、当該樹脂は粉状や、粒状であってもよいし、小径のタブレットでもよい。若しくはそれらの混合物であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
100…樹脂封止装置
102、202…粉粒体状樹脂
106、206…予備的融着樹脂
112…予備的融着部
114…圧縮成形部
116、216、316…離型フィルム
126、326…原料供給機
128、228…ホットプレート
130、230、330…搬送ハンド
132、232、332…吸着機構
134、334…赤外線ヒータ
136…断熱部材
138、238…支持板
140…温度センサ
142…3軸移動機構
150…圧縮成形機
160…金型
162…上型
164…下型
234…電熱線式ヒータ
306…予備成形樹脂
312…予備成形部
317…上離型フィルム
318…離型フィルム供給機構
321A…加熱成形機構
321B…冷却機構
322…移動機構
323…トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体状樹脂を用いて金型で被成形品の樹脂封止をする樹脂封止装置であって、
前記粉粒体状樹脂が搭載される離型フィルムと、
該離型フィルムを保持する保持手段と、
該保持手段を該離型フィルムと一緒に搬送して前記金型に該離型フィルムを配置させる搬送手段と、
該搬送手段に設けられると共に、該搬送手段の搬送経路において搬送中の離型フィルムに搭載された前記粉粒体状樹脂に対して熱を付与可能な第1加熱手段と、
を備えることを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
請求項1において、更に、
前記離型フィルムに搭載された前記粉粒体状樹脂であって前記搬送手段による搬送前の粉粒体状樹脂に対して熱を付与可能な第2加熱手段を備える
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項3】
請求項1において、更に、
前記離型フィルムに搭載された前記粉粒体状樹脂であって前記搬送手段による搬送前の粉粒体状樹脂に対して熱を付与して軟化状態とし、且つ所定の形状に成形する第3加熱手段と、
該第3加熱手段で成形された該粉粒体状樹脂を冷却する冷却手段と、
を備えることを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、更に、
前記搬送手段は、前記保持手段で前記離型フィルムを保持した際に、該離型フィルム上の該粉粒体状樹脂を密封可能な構造とされている
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、更に、
前記搬送手段は、前記搬送中の粉粒体状樹脂の温度を測定する温度センサを備える
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項6】
粉粒体状樹脂を用いて金型で被成形品の樹脂封止をする樹脂封止方法であって、
前記粉粒体状樹脂を離型フィルム上に搭載する搭載工程と、
該離型フィルムを保持する保持工程と、
該離型フィルムを搬送して前記金型に配置させる搬送工程と、
該搬送工程の際に、前記離型フィルムに搭載された前記粉粒体状樹脂に熱を付与する加熱工程と、
を含むことを特徴とする樹脂封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−37032(P2011−37032A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183810(P2009−183810)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】