説明

気化供給装置および気化供給方法

【課題】固体成膜原料を、従来からのCVD法やALD法による成膜方法に使用できる形態で安定的に供給する。
【解決手段】固体成膜原料21を気化させて供給する気化供給装置1であって、超臨界流体を生成して供給する超臨界流体供給部10と、超臨界流体供給部10から供給される超臨界流体を固体成膜原料21に接触させて、超臨界流体に固体成膜原料21を溶解させる超臨界流体調整部20と、固体成膜原料21が溶解した超臨界流体を気体に相転移させて、気体中に固体成膜原料21を析出させるとともに、析出した固体成膜原料21を気化させる気化部30と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化供給装置および気化供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造においては、微細加工を行った下地表面上に所定の機能を有する薄膜を形成するために、CVD(Chemical Vapor Deposition)法や、ALD(Atomic Layer Deposition)法等の成膜方法が用いられている。
【0003】
一方、半導体装置の高性能化の要求に対応するために、例えば高い誘電率を有する絶縁膜のように、蒸気圧の低い固体状態の原料(固体成膜原料)を用いて形成される薄膜が必要とされており、そのための形成方法を確立することが求められている。
【0004】
固体成膜原料を用いて成膜を行う場合には、その原料を気化させ、気化した原料を、成膜反応を起こすための成膜チャンバ内へ導入する必要がある。このための手段として、以下のような方法が知られている。
(1)貯蔵容器内で、固体成膜原料を加熱することによって昇華させ、昇華した原料を別のキャリアガスと混合して成膜チャンバに導入する。
(2)固体成膜原料を溶媒(例えば、テトラヒドラフラン(THF)等)に溶解させ、その溶液を気化器を介して気化させるか、あるいはその溶液中にキャリアガスを通すことで気化させる。このようにして気化した原料を成膜チャンバに導入する。
【0005】
しかしながら、いずれの方法に対しても、量産技術として広く適用していくことが困難であるという問題点が指摘されている。すなわち、上述の(1)の方法では、昇華に伴う固体成膜原料の表面積の変化によって気化量が安定しないだけでなく、気化が進むにつれて、固体成膜原料の表面状態が変化し、気化量が徐々に減少してしまう。このため、工業的に十分な原料の供給量を確保することが困難となる。
【0006】
また、上述の(2)の方法では、成膜原料と同時に大量の溶媒も成膜チャンバへ導入され、そのことが、膜中に残留する不純物の原因となる。そのため、所望の膜特性を得ることが難しくなる。また、成膜原料を含む溶媒が十分に気化せず、ミスト状態で成膜チャンバへ送り込まれることもある。その場合、パーティクルが発生し、製造歩留まり低下につながってしまう。
【0007】
そこで、このような方法とは別に、成膜原料を成膜チャンバ内へ導入する方法として、超臨界状態の流体を用いる方法が提案されている。
【0008】
特許文献1には、超臨界流体に成膜原料を溶解させ、その超臨界流体をノズルから基板上に噴霧することで成膜を行う方法が記載されている。また、特許文献2には、本願発明者により先に提案された、固体成膜原料を超臨界流体に溶解させる際に使用するカラム型の装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−213425号公報
【特許文献2】特開2009−094276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、基板上に局所的な析出核が形成されやすく、均一な薄膜を形成することが困難である。このため、この方法を固体成膜原料に対して適用することはできない。
【0011】
一方、特許文献2に記載のカラム型装置を用いることで、固体成膜原料であっても、超臨界流体に容易に溶解させることが可能となる。これにより、固体成膜原料を含有した超臨界流体を成膜チャンバまで搬送することができ、すなわち、固体成膜原料を成膜チャンバに安定的に供給することが可能となる。しかしながら、超臨界流体に溶解した固体成膜原料を成膜チャンバに安定的に供給できたとしても、そのような状態の固体成膜原料から均一な膜を形成する方法が確立されていないのが現状である。
【0012】
ところで、均一な薄膜を形成する方法としては、従来からのCVD法やALD法を用いることが好ましい。そのため、超臨界流体に溶解した固体成膜原料を、このような方法による成膜に使用できる形態(すなわち、気化した状態)に処理して、成膜チャンバに安定的に供給することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するために、本発明の気化供給装置は、固体成膜原料を気化させて供給する気化供給装置であって、超臨界流体を生成して供給する超臨界流体供給部と、超臨界流体供給部から供給される超臨界流体を固体成膜原料に接触させて、超臨界流体に固体成膜原料を溶解させる超臨界流体調整部と、固体成膜原料が溶解した超臨界流体を気体に相転移させて、この気体中に固体成膜原料を析出させるとともに、析出した固体成膜原料を気化させる気化部と、を有している。
【0014】
また、本発明の気化供給方法は、固体成膜原料を気化させて供給する気化供給方法であって、超臨界流体を生成する工程と、超臨界流体を固体成膜原料に接触させて、超臨界流体に固体成膜原料を溶解させる工程と、固体成膜原料が溶解した超臨界流体を気体に相転移させて、この気体中に固体成膜原料を析出させるとともに、析出した固体成膜原料を気化させる工程と、を含んでいる。
【0015】
このような気化供給装置および気化供給方法では、超臨界流体に溶解した固体成膜原料は、超臨界流体が気体に相転移する際に、表面積が大きく、熱が伝わりやすい微細な粒子として析出することになる。このように、固体成膜原料を微細な粒子にしてから気化させることで、従来からのCVD法やALD法による成膜方法に使用できる固体成膜原料の安定的な供給が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上、本発明によれば、固体成膜原料を、従来からのCVD法やALD法による成膜方法に使用できる形態で安定的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の気化供給装置を備えた成膜装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における気化供給装置の構成を示す概略図である。
【図3】図2に示す気化供給装置の気化部の構成を示す概略図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における気化供給装置の構成を示す概略図である。
【図5】図4に示す気化供給装置の溶解カラムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の気化供給装置を備えた成膜装置の構成を示す概略図である。
【0020】
本発明の気化供給装置1は、超臨界流体供給部10と、超臨界流体調整部20と、気化部30とから構成され、これらは、それぞれ金属製の配管で接続されている。
【0021】
気化供給装置1で気化される固体成膜原料は、半導体基板3が設置された成膜チャンバ2内に供給されるようになっている。このときのキャリアガスには、気体状態に相転移した超臨界流体が使用される。成膜チャンバ2では、通常のALD法やCVD法を用いて成膜を行うことができ、いずれの成膜方法を用いるかは、所望する膜の特性に応じて選択可能である。
【0022】
図1に示す成膜装置では、2種類の成膜原料をそれぞれ気化させて成膜チャンバ2に供給できるように、別の気化供給装置1’がさらに設けられている。別の気化供給装置1’は、上述した本発明の気化供給装置1と同じ構成を有することで、固体成膜原料を気化させて成膜チャンバ2に供給することができる。あるいは、液体成膜原料を用いる場合には、別の気化供給装置1’は従来型の気化供給装置であってもよい。また、3種類以上の成膜原料を使用する場合には、使用する成膜原料の数に応じて、さらに別の気化供給装置を設けることができる。その際に、固体成膜原料を気化させて供給するための気化供給装置には、本発明の気化供給装置を適用することができる。さらに、図示していないが、成膜する膜の種類に応じて、成膜チャンバ2に酸素(O2)やオゾン(O3)などの酸化剤を供給する手段が備えられていてもよい。
【0023】
なお、図1には、枚葉式の成膜チャンバ2が例示的に示されているが、本発明の気化供給装置と共に使用される成膜チャンバとしては、複数の半導体基板に同時に成膜可能なバッチ式のものであってもよい。すなわち、成膜チャンバ2での成膜方法には、CVD法とALD法、および、枚葉式とバッチ式をそれぞれ組み合わせた方法が適用可能である。
【0024】
次に、図2および図3を参照して、本発明の気化供給装置の詳細な構成について説明する。
【0025】
本発明の気化供給装置では、超臨界流体として、臨界温度Tc=31.0℃以上の温度および臨界圧力Pc=7.38MPa以上の圧力で超臨界状態に相転移することが知られている二酸化炭素(CO2)が好適に用いられる。以下、本明細書では、超臨界流体として二酸化炭素を用いる場合を例に挙げて、本発明の気化供給装置について具体的に説明する。なお、本発明の気化供給装置に用いられる超臨界流体は、二酸化炭素に限定されず、通常の室温および大気圧状態で気体として存在し、超臨界状態への転移が容易な他の物質であってもよい。
【0026】
図2は、本発明の第1の実施形態における気化供給装置の構成を示す概略図である。図3は、本実施形態の気化供給装置の気化部の詳細な構成を示す概略図である。
【0027】
本実施形態の気化供給装置1は、二酸化炭素の超臨界流体を生成して供給する超臨界流体供給部10を有している。超臨界流体供給部10は、液化した二酸化炭素が充填されたボンベ11と、ボンベ11から供給される液化二酸化炭素を臨界圧力以上に加圧して送出する送液ポンプ12と、送液ポンプ12によって加圧された二酸化炭素を臨界温度以上に加熱する熱交換器13と、を有している。このような構成により、超臨界流体供給部10は、熱交換器13を通過した二酸化炭素を超臨界流体として供給することが可能となる。
【0028】
さらに、本実施形態の気化供給装置1は、臨界流体供給部10から超臨界状態の二酸化炭素が供給される超臨界流体調整部20を有している。超臨界流体調整部20と臨界流体供給部10とは、図2の細い実線で示すように、例えばステンレス鋼からなる配管41によって接続されている。
【0029】
超臨界流体調整部20は、固体成膜原料21を収容し、超臨界流体が導入される高圧溶解チャンバ22と、高圧溶解チャンバ22の外側を覆うように配置され、高圧溶解チャンバ22を加熱するヒータ23と、を有している。高圧溶解チャンバ22の内部は、二酸化炭素が超臨界状態を維持できるように、臨界圧力以上の圧力に保持可能であるとともに、ヒータ23によって臨界温度以上の温度に保持可能である。これにより、臨界流体調整部20では、高圧溶解チャンバ22に収容された固体成膜原料21に超臨界流体を接触させることで、超臨界流体に固体成膜原料21を溶解させることが可能となる。また、超臨界流体調整部20には、固体成膜原料21を超臨界流体に効率的に溶解させるために、高圧溶解チャンバ22内の固体成膜原料21と超臨界状態の二酸化炭素とを攪拌するスターラーなどの攪拌機構24が設けられている。
【0030】
さらに、本実施形態の気化供給装置1は、超臨界流体調整部20から固体成膜原料が溶解した超臨界流体が供給される気化部30を有している。気化部30と超臨界流体調整部20とは、超臨界流体調整部20と超臨界流体供給部10との間と同様に、図2の細い実線で示すように、例えばステンレス鋼からなる配管42によって接続されている。
【0031】
気化部30は、固体成膜原料が溶解した超臨界流体が導入される気化チャンバ31と、気化チャンバ31の外側を覆うように配置され、気化チャンバ31の内部を固体成膜原料の気化温度以上に加熱するヒータ(加熱手段)32と、を有している。また、気化部30は、超臨界流体調整部20と気化部30との間の配管42上に設けられ、気化チャンバ31に導入される超臨界流体の圧力を調整することができる背圧調整器(圧力調整手段)33を有している。
【0032】
背圧調整器33は、超臨界流体を気化チャンバ31に導入する際に、気化チャンバ31の内部を超臨界流体の臨界圧力よりも低い圧力に保持するように設定されている。このような構成により、気化部30では、固体成膜原料が溶解した超臨界流体を気体に相転移させることができ、その結果、この気体中に固体成膜原料を析出させるとともに、析出した固体成膜原料を気化させることが可能となる。このプロセスの詳細については後述する。
【0033】
気化器30の後段には、例えばステンレス鋼からなる配管43を介して、上述の成膜チャンバ2と、余剰な成膜原料を回収するための回収容器4とが接続されている。なお、図2の太い実線で示すように、気化部30と成膜チャンバ2との間の配管43と、超臨界流体調整部20と気化部30との間の配管42の一部(背圧調整器33の下流側)とは、内部を移動する物質の気化状態を維持するために、室温以上の所定の温度に保持されるようになっている。
【0034】
なお、各配管41,42上には、配管41,42内を通過する超臨界流体の流量を調節するためのバルブ51が設けられている。
【0035】
次に、引き続き図2および図3を参照しながら、本実施形態の気化供給装置を用いて固体成膜原料を供給する気化供給方法について説明する。
【0036】
例えば、成膜チャンバの半導体基板上にチタン酸ストロンチウム膜(SrTiO3)を成膜する場合には、2種類の固体成膜原料が用いられる。すなわち、SrおよびTi供給源として、それぞれ固体原料であるSr(THD)2およびTi(MPD)(THD)2が用いられる。このような場合、実際の成膜装置には、本実施形態の気化供給装置が2つ設けられ、さらに、例えばオゾン(O3)などの酸化剤を供給する手段が設けられている。
【0037】
(固体成膜原料準備ステップ)
まず、固体成膜原料を高圧溶解チャンバ22に収容する。このとき、高圧溶解チャンバ22の内部は密閉された状態に保持される。
【0038】
(超臨界流体生成ステップ)
次に、ボンベ11に充填された液化二酸化炭素を送液ポンプ12に供給し、臨界圧力以上に加圧する。送液ポンプ12で加圧された二酸化炭素は熱交換器13に送出され、そこで臨界温度以上に加熱される。こうして、超臨界流体供給部10において、二酸化炭素の超臨界流体が生成される。超臨界状態の二酸化炭素は、配管41を通じて、後段の超臨界流体調整部20に供給される。
【0039】
(固体成膜原料溶解ステップ)
超臨界流体調整部20に供給された超臨界流体は、予め固体成膜原料21が収容された高圧溶解チャンバ22に導入される。このとき、高圧溶解チャンバ22は、ヒータ23によって加熱され、したがって、高圧溶解チャンバ22の内部は、上述したように、超臨界流体の臨界点以上の高温高圧に保持可能となる。それにより、高圧溶解チャンバ22に導入される二酸化炭素の超臨界状態は維持されることになる。
【0040】
高圧溶解チャンバ22に導入された超臨界流体は、固体成膜原料21と接触し、それにより、固体成膜原料21が超臨界流体に溶解する。このとき、スターラーなどの攪拌機構24によって、固体成膜原料21と超臨界流体とを攪拌することが好ましく、これにより、固体成膜原料21を超臨界流体中へ効率的に溶解させることができる。
【0041】
また、溶解後に超臨界流体中の成膜原料の濃度が常に飽和濃度になるように、高圧溶解チャンバ22には十分な量の固体成膜原料21を収容しておくことが好ましい。そのため、連続して成膜を行う際には、成膜原料の濃度が飽和濃度以下になる前に、高圧溶解チャンバ22への成膜原料の追加あるいは新たな成膜原料への交換を適宜行うことが好ましい。
【0042】
こうして成膜原料を含有するように調整された超臨界流体は、配管42を通じて、気化部30に供給される。このときの流量は、送液ポンプ12と配管41,42上のバルブ51とによって制御される。
【0043】
(固体成膜原料気化ステップ)
固体成膜原料が溶解した超臨界流体は、気化チャンバ31の内部が大気圧になるように、背圧調整器33を通過する際に圧力が調整されて、気化チャンバ31内に導入される。すなわち、本実施形態では、大気圧、すなわち超臨界流体の臨界圧力よりも低い圧力に保持された気化チャンバ31内に、高圧の超臨界流体が導入される。
【0044】
高圧の超臨界流体は、大気圧の気化チャンバ31に導入される際に大きく膨張するため、噴射された状態で気化チャンバ31へと導入される。このとき、超臨界流体は、圧力の減少に伴い、一瞬で、物質を溶解することができない気体状態(ガス状態)に相転移する。これにより、超臨界流体に溶解していた成膜原料も一瞬で析出する。析出したばかりの成膜原料は、凝集せずに微細な粒子として気体中に存在する。この微細な粒子は、もともとの固体の状態(より大きな粉、結晶、塊の状態)と比べると、表面積が大きく、熱が伝わりやすいため、効率的に気化されやすくなっている。その結果、微細な粒子として析出した固体成膜原料は、ヒータ32によって気化チャンバ31内が適切な条件、すなわち固体成膜原料の気化温度以上に保持されていることで、粒子間の凝集が起こる前に気化することになる。
【0045】
(固体成膜原料供給ステップ)
こうして気化した成膜原料は、所定の温度に加熱された配管43を通じて、気化状態を維持したまま、成膜チャンバ2に供給される。このとき、ガス状態の超臨界流体源(二酸化炭素ガス)がキャリアガスとして用いられる。
【0046】
気化した成膜原料の成膜チャンバ2への導入は、配管43に設けられたバルブ52,53の開閉操作によって制御される。すなわち、バルブ52を開放するとともに、バルブ53を閉鎖することで、気化した成膜原料は成膜チャンバ2へ導入される。また、バルブ52を閉鎖するとともに、バルブ53を開放することで、成膜原料の導入が停止され、固体成膜原料は回収容器4に回収される。成膜チャンバ2でALD法を用いた成膜が行われる場合、原料導入時に開放されるバルブ52として、高速で開閉可能なALDバルブ(ダイヤフラムバルブ)が使用されることが好ましい。
【0047】
なお、例えばALD法を用いてSrTiO3膜を形成する場合には、Sr原料(Sr(THD)2)およびTi原料(Ti(MPD)(THD)2)を、本実施形態の気化供給装置を用いてそれぞれ成膜チャンバに順次供給し、半導体基板上に吸着させる。そして、酸化剤として機能するオゾンガスの供給によって、吸着させた成膜原料の酸化を行う。このサイクルを繰り返すことで、SrTiO3膜が形成される。このように成膜されたSrTiO3膜は、DRAM素子のキャパシタを構成する容量絶縁膜などに適用可能である。
【0048】
以上のように、本実施形態の気化供給装置および気化供給方法では、超臨界流体に固体成膜原料を溶解させ、この超臨界流体を気体に相転移させることで、この気体中に固体成膜原料を析出させることが可能となる。このとき、析出したばかりの固体成膜原料は、表面積が大きく、熱が伝わりやすい微細な粒子として存在するため、固体成膜原料を安定的に気化させることが可能となる。これにより、気化した固体成膜原料を一定の速度で安定して成膜チャンバに供給することができ、液体成膜材料を気化させて用いる場合と同様に、成膜チャンバにおいてCVD法やALD法を用いて均一な薄膜を形成することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態では、固体成膜原料を気化させる際に超臨界流体を用いており、THFなどの溶剤を用いる必要がないため、形成される膜中に溶剤由来の不純物が蓄積することがない。さらに、溶剤がミスト状態で成膜チャンバに送り込まれることもなく、その結果、パーティクルの発生を抑制することもできる。なお、超臨界流体も同様に、最終的には気体(ガス)に相転移するため、形成される膜中に不純物として取り込まれることがなく、ミストを発生させることで、パーティクル発生の原因になることもない。このようにして、所定の特性を有する、均一で高品質の膜を形成することが可能となる。
【0050】
なお、本実施形態の高圧溶解チャンバの代わりに、本願発明者によって先に提案された溶解カラム(特開2009−094276号公報)を使用することもできる。
【0051】
図4は、このような溶解カラムが設けられた、本発明の第2の実施形態における気化供給装置の構成を示す概略図である。図5(a)は、本実施形態の溶解カラムを概略的に示す平面図である。図5(b)および図5(c)は、図5(a)において円で囲まれた領域付近の拡大図であり、それぞれ、超臨界流体が導入される前(図5(b))および導入された後(図5(c))を概略的に示している。
【0052】
溶解カラム25は、図5に示すように、カラム状の高圧容器内に、ガラスビーズ26のような超臨界流体に対して不活性な充填材が充填され、そのガラスビーズ26間の微小な間隙に、固体成膜原料21が充填された構造を有している。また、溶解カラム25は、内部の温度が制御できるように、外側が加熱ジャケット27で覆われている(図4参照)。これにより、本実施形態の溶解カラム25も、第1の実施形態の高圧溶解チャンバと同様に、内部が超臨界流体の臨界温度以上の温度および臨界圧力以上の圧力に保持可能となる。
【0053】
このような構成によって、本実施形態の溶解カラム25では、固体成膜原料と超臨界流体との接触面積が大きくなっているため、図2に示すような機械的な攪拌機構が設けられていなくても、固体成膜原料の超臨界流体への溶解が迅速に行われる。すなわち、カラム原理を利用することによって、固体成膜原料21は、溶解カラム25の上流側から順に超臨界流体に溶解し、飽和溶液としてカラム25下流側から排出される。これにより、本実施形態では、固体成膜原料をより効率的に超臨界流体に溶解させることが可能となる。
【0054】
なお、本実施形態の超臨界流体調整部以外の他の構成は、第1の実施形態と同様であり、本実施形態の気化供給装置を用いた気化供給方法についても、第1の実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0055】
1 気化供給装置
1’ 別の気化供給装置
2 成膜チャンバ
3 半導体基板
4 回収容器
10 超臨界流体供給部
11 ボンベ
12 送液ポンプ
13 熱交換器
20 超臨界流体調整部
21 固体成膜原料
22 高圧溶解チャンバ
23 ヒータ
24 攪拌機構
25 溶解カラム
26 充填材
27 加熱ジャケット
30 気化部
31 気化チャンバ
32 ヒータ(加熱手段)
33 背圧調整器(圧力調整手段)
41−43 配管
51−53 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体成膜原料を気化させて供給する気化供給装置であって、
超臨界流体を生成して供給する超臨界流体供給部と、
前記超臨界流体供給部から供給される前記超臨界流体を前記固体成膜原料に接触させて、前記超臨界流体に前記固体成膜原料を溶解させる超臨界流体調整部と、
前記固体成膜原料が溶解した前記超臨界流体を気体に相転移させて、該気体中に前記固体成膜原料を析出させるとともに、析出した該固体成膜原料を気化させる気化部と、
を有する気化供給装置。
【請求項2】
前記気化部が、前記超臨界流体が導入される気化チャンバと、該気化チャンバの内部を前記固体成膜原料の気化温度以上に加熱する加熱手段と、を有し、
前記気化チャンバの内部が、前記超臨界流体の臨界圧力よりも低い圧力に保持されている、請求項1に記載の気化供給装置。
【請求項3】
前記気化部が、前記気化チャンバに導入される前記超臨界流体の圧力を調整する圧力調整手段を有する、請求項2に記載の気化供給装置。
【請求項4】
前記超臨界流体調整部が、前記固体成膜原料を収容し、前記超臨界流体が導入される高圧溶解チャンバを有し、
前記高圧溶解チャンバの内部が、前記超臨界流体の臨界温度以上の温度および臨界圧力以上の圧力に保持可能である、請求項1から3のいずれか1項に記載の気化供給装置。
【請求項5】
前記超臨界流体調整部が、前記固体成膜原料と前記超臨界流体に対して不活性な充填材とが充填されたカラムを有し、
前記カラムの内部が、前記超臨界流体の臨界温度以上の温度および臨界圧力以上の圧力に保持されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の気化供給装置。
【請求項6】
前記超臨界流体が二酸化炭素である、請求項1から5のいずれか1項に記載の気化供給装置。
【請求項7】
固体成膜原料を気化させて供給する気化供給方法であって、
超臨界流体を生成する工程と、
前記超臨界流体を前記固体成膜原料に接触させて、前記超臨界流体に前記固体成膜原料を溶解させる工程と、
前記固体成膜原料が溶解した前記超臨界流体を気体に相転移させて、該気体中に前記固体成膜原料を析出させるとともに、析出した該固体成膜原料を気化させる工程と、
を含む気化供給方法。
【請求項8】
前記固体成膜原料を気化させる工程が、内部が前記超臨界流体の臨界圧力よりも低い圧力に保持されるとともに、前記固体成膜原料の気化温度以上に加熱された空間内に、前記超臨界流体を導入することを含む、請求項7に記載の気化供給方法。
【請求項9】
前記固体成膜原料を溶解させる工程が、前記固体成膜原料を収容し、内部が前記超臨界流体の臨界温度以上の温度および臨界圧力以上の圧力に保持可能な空間内に、前記超臨界流体を導入することを含む、請求項7または8に記載の気化供給方法。
【請求項10】
前記固体成膜原料を溶解させる工程が、前記固体成膜原料と前記超臨界流体に対して不活性な充填材とが充填され、内部が前記超臨界流体の臨界温度以上の温度および臨界圧力以上の圧力に保持可能な空間内に、前記超臨界流体を導入することを含む、請求項7または8に記載の気化供給方法。
【請求項11】
前記超臨界流体が二酸化炭素である、請求項7から10のいずれか1項に記載の気化供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−74477(P2012−74477A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217284(P2010−217284)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】