説明

気化装置、成膜装置、成膜方法及び記憶媒体

【課題】基板に対して液体材料を気化させた気体材料を供給して成膜処理を行うにあたり、高い効率で液体材料を気化して、パーティクルの発生を抑えること。
【解決手段】基板に対して成膜処理を行うための液体材料中に、正及び負の一方に帯電した粒径がナノレベルの気泡を発生させ、この液体材料を霧化して更にそのミストを加熱して気化させる。液体材料中には、予め極めて微少な気泡が高い均一性をもって分散するため、この液体材料を霧化すると、極微細で均一なミストが得られので、熱交換しやすい状態となる。従って、このミストを気化すると、気化効率が高くなり、パーティクルの発生が抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理体に対して液体材料を気化させた気体材料を供給して、成膜処理を行う技術に関し、特に液体材料を気化させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスの一つとして、半導体ウェハ(以下「ウェハ」という)Wの表面に所定の膜を形成する成膜工程があり、この成膜工程において液体材料を気化して得た原料ガスを成膜ガスとして装置内に導入する場合がある。
前記液体材料を気化して得た原料ガスを用いた成膜処理の例としては、TEOS(Tetra Ethoxy Silane)を気化して得た処理ガスと酸素(O2)ガスとを用いてSiO2膜を成膜する例や、Si2Cl6を気化して得た処理ガスとアンモニア(NH3)ガスとを用いてシリコンナイトライド(Si3N4)膜を成膜する例がある。
【0003】
このように液体材料を気化させるための気化器としては、図5に示すように、従来から気化室を構成する縦型の筒状体100の上部にノズル101を設け、このノズル101の先端部にて液体材料とキャリアガスとを混合して、いわば霧吹きの原理で筒状体100内に霧状に液体材料を吐出し、筒状体100内を加熱しておくことで、ミストを蒸発させて気体材料を得るものが知られている。
【0004】
ところで最近では、デバイスの多様化、改良により、液体材料として蒸気圧の低いものが用いられるようになってきた。その一例としては、ハフニウム(Hf)の化合物である成膜材料等が挙げられる。例えばTetrakis(N−Ethyl−N−Methylamino)Hafnium(TEMAH)は、約85℃での蒸気圧が0.11kPa(0.85Torr)程度であり、Hafnium Tetra−t−Butoxide(HTB)は、約85℃での蒸気圧が0.55kPa(4.12Torr)程度である。これらのハフニウム系の材料は、TEOSの約85℃での蒸気圧が5.6kPa(42Torr)であるのに対して、かなり蒸気圧が低い。
【0005】
このような低蒸気圧材料は、気化されにくく、例えば筒状体100の内壁にミストが付着した場合には、この内壁において乾燥して固化し、その後内壁から剥離して、パーティクルの原因となってしまう。一方、このようなミストを速やかに気化させるために加熱温度を上げると、筒状体100内を均一に加熱するのが困難であることから、加熱によりミストが分解し、変質してしまうおそれがある。そして、この問題は、液体材料の供給流量を大きくしようとすると顕著になってくる。このように、特に低蒸気圧材料を気化させることは非常に難しく、新しい材料を用いた成膜処理における課題の一つとなっている。
そこで、特許文献1では、気液混合流体を気化器に供給して、またノズルの構造を工夫して気化効率を向上させることにより、大流量の気体材料を得る技術が記載されているが、更に気体材料の流量を増やす技術が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−100737((0023)〜(0026))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、被処理体に対して液体材料を気化させた気体材料を供給して成膜処理を行うにあたり、高い効率で液体材料を気化させることができる気化装置、成膜装置、成膜方法及びこの成膜方法を実施できるプログラムを格納した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の気化装置は、
成膜用の液体材料中に気泡発生用のキャリアガスを供給して、正及び負の一方に帯電すると共に粒径が1000nm以下の気泡を発生させるための気泡発生手段と、
前記液体材料を気化させるための気化室と、前記気泡を含む液体材料を霧化して前記気化室内に供給するための霧化部と、この霧化部から前記気化室内に供給された液体材料のミストを気化するために前記気化室内を加熱するための加熱手段と、を含む気化器と、
この気化器にて気化された材料を取り出すための気体材料取出しポートと、を備えたことを特徴とする。
前記気泡は、前記キャリアガスの旋回流を形成することにより発生することが好ましい。
前記霧化部は、前記気泡を含む液体材料を霧化用のキャリアガスと共に吐出させるノズルにより構成されていることが好ましい。
【0009】
本発明の成膜装置は、
上記気化装置と、
この気化装置にて取り出された気化材料が供給され、被処理体が搬入される処理容器を含み、この被処理体に対して前記気体材料により成膜処理を行うための成膜処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の成膜方法は、
成膜用の液体材料中に気泡発生用のキャリアガスを供給して、正及び負の一方に帯電すると共に粒径が1000nm以下の気泡を発生させる工程と、
前記気泡が消失する前に、前記気泡を含む液体材料を霧化して、ミストを得る工程と、
次いで、前記ミストを加熱して、このミストを気化させることにより、気体材料を得る工程と、
前記気体材料を処理容器内の被処理体に供給して、この被処理体に対して前記気体材料により成膜処理を行う工程と、を含むことを特徴とする。
前記気泡を発生させる工程は、前記キャリアガスの旋回流を形成させる工程を含むことが好ましい。
前記ミストを得る工程は、前記気泡を含む液体材料と霧化用のキャリアガスとをノズルから霧化する工程を含むことが好ましい。
【0011】
本発明の記憶媒体は、
コンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、上記成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、被処理体に対して成膜処理を行うための液体材料中に、正及び負の一方に帯電した粒径が1000nm以下の気泡を発生させ、この液体材料を霧化して更にそのミストを加熱して気化させている。従って、液体材料中には、予め極めて微少な気泡が高い均一性をもって分散しているため、この液体材料を霧化した時には、極微細で均一なミストが得られて、熱交換しやすい状態になる。この結果、気化効率(熱交換率)が高くなり、パーティクルの発生を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の成膜方法を実施するための成膜装置の一例について、図1〜図3を参照して説明する。図1は、被処理体である基板例えば半導体ウェハ(以下「ウェハ」という)Wに対して成膜処理を行うための成膜装置の全体の構成を示している。この成膜装置は、成膜用の液体材料例えば既述のハフニウムを含む化合物例えばTEMAHが貯留された液体材料貯留源10、この液体材料貯留源10の液体材料を気化するための気化器20及びこの気化器20において気化された液体材料をウェハW表面において反応させ、成膜処理を行うための成膜処理部50を備えている。
【0014】
液体材料貯留源10には、内部の液体材料の液面よりも高い位置にガス供給路14の一端側が開口しており、このガス供給路14の他端側には、バルブ15を介して不活性ガス例えば窒素ガスを供給するための窒素ガス源16が接続されている。この液体材料貯留源10内の液面よりも低い位置には、液体材料供給路11の一端側が開口しており、この液体材料供給路11の他端側には、流量制御部12とバルブ13とを介して、微少な気泡であるナノバブルを生成するための気泡発生手段であるナノバブル生成装置30が接続されている。尚、この液体材料貯留源10には、ヒータ17が設けられており、内部の液体材料を例えば50℃に加熱できるように構成されている。
【0015】
ここで、「ナノバブル」とは、例えば粒径が10nm以下の微少な気泡である。この気泡は粒径が数nmに限られるものではないが、あまり大きいと浮力が働いて液中における分散性が悪くなり、均一な気液混合流体が得られないことから、1000nmよりも小さいことが要求されると考えられる。また、これら気泡は、凝集しないように、正及び負の一方に帯電していることが必要であり、この例では、負に帯電している。このナノバブルを生成するナノバブル生成装置30について、図2を参照して説明する。
【0016】
このナノバブル生成装置30は、例えばナノプラネット研究所製のマイクロナノバブル発生装置などであり、図2(a)に示すように、円筒状の筐体31を備えている。この筐体31の側面(周面)の上側には、既述の液体材料供給路11が接続されている。また、筐体31の一端側の面には、ナノバブル発生用のキャリアガスを供給するためのガス供給路33が接続されている。このガス供給路33の上流側には、図1に示すように、バルブ36と流量制御部37とを介して、例えばアルゴンガスなどの不活性ガスが貯留された不活性ガス供給源34が接続されている。筐体31のガス供給路33が接続された面の他端側の面には、液体材料通流管35が接続されている。
【0017】
このナノバブル生成装置30におけるナノバブルの生成過程について説明する。先ず、筐体31内に液体材料が供給されると、この液体材料は、筐体31をガス供給路33側に向かって流れた後、筐体31の内周面に沿って激しく旋回すると共に、筐体31内を液体材料通流管35側に向かって流れる。そして、この液体材料の流れにより、いわゆるアスピレーターのように、例えば0.06MPa(450Torr)の負圧が発生するので、ガス供給路33から供給されるナノバブル発生用のガスは、この負圧により吸引されて、液体材料の旋回流の中心部において液体材料通流管35に向かって流れていく。液体材料の旋回流は、液体材料通流管35に向かうにつれて旋回半径が徐々に狭まるように構成されているため、筐体31の他端側のある点において、図2(b)に示すように、液体材料とガスとが激しく混合されてナノバブルが生成する。
このナノバブルは、液体材料の旋回流との摩擦によって例えば40〜100mVの負電荷を帯びることとなる(参照:都並結依,大成博文,マイクロバブルの収縮過程と収縮パターン,第1回マイクロ・ナノバブル技術シンポジウム)。尚、このような生成方法以外にも、例えば電気分解などによりナノバブルを生成するようにしても良い。
【0018】
図1に示すように、ナノバブル生成装置30の下流側には、液体材料通流管35を介して気化器20が接続されている。また、バルブ21と流量制御部22とが介設されたキャリアガス供給管23により、この気化器20には既述の不活性ガス供給源34が接続されている。
この気化器20は、図3に示すように、その軸が上下方向に伸びるように配置された円筒状の気化室24を備えており、その側壁面には加熱手段であるヒータ25が埋め込まれている。気化室24の上側には、接液部が非金属材料により被覆された例えば2流体ノズルである霧化ノズル26が霧化部として設けられている。この霧化ノズル26は、霧化ノズル26内の中央部において液体材料が下側に向かって通流する液体材料通流路40と、この液体材料通流路40の周囲を覆うように形成された不活性ガスからなるキャリアガスが通流するキャリアガス通流路41と、を備えた二重管構造となっている。これらの液体材料通流路40とキャリアガス通流路41とには、それぞれ既述の液体材料通流管35とキャリアガス供給管23とが接続されている。また、霧化ノズル26の先端部42は、キャリアガス通流路41の外径が急激に狭まっている。この先端部42において、液体材料がキャリアガスの圧力により破砕されて微細なミストとなり、このミストが霧化ノズル26の先端に形成された微少な吐出孔43から気化室24内に噴霧されるように構成されている。このキャリアガス供給管23には、第1のヒータ27が設けられている。気化室24の下側の側面には、気体材料取り出しポート24aが設けられており、この気体材料取り出しポート24aには、気体材料取り出し路29が接続されている。気体材料取り出しポート24a及び気体材料取り出し路29には、気体材料が再凝縮しないように、第2のヒータ28が設けられている。
【0019】
気化室24の底面には、バルブ71が介設された排液路72により吸引ポンプ73が接続されており、例えば気化室24の底面に付着した未気化のミストは、この排液路72を介して排出される。尚、霧化ノズル26の構造については、簡略化して示している。
この気体材料取り出し路29の下流側には、バルブ29aを介して既述の成膜処理部50が接続されている。この成膜処理部50は、上側の大径円筒部60aとその下側の小径円筒部60bとが連設されたいわばキノコ形状に形成された処理容器60を備えている。処理容器60内には、ウェハWを水平に載置するための載置部であるステージ61が設けられており、このステージ61は小径円筒部60bの底部に支持部材62を介して支持されている。
【0020】
ステージ61内には、ヒータ61aと、ウェハWを吸着するための図示しない静電チャックと、が設けられている。更にステージ61には、ウェハWを昇降させて、図示しない搬送手段との間でウェハWの受け渡しを行うための例えば3本の昇降ピン63(便宜上2本のみ図示)がステージ61の表面に対して突没自在に設けられている。この昇降ピン63は、支持部材64を介して処理容器60の外部の昇降機構65に接続されている。処理容器60の底部には排気管66の一端側が接続され、この排気管66の他端側には真空ポンプと圧力調整部とからなる真空排気装置67が接続されている。また処理容器60の大径円筒部60aの側壁には、ゲートバルブGにより開閉される搬送口68が形成されている。
【0021】
処理容器60の天壁部の中央部には、ステージ61に対向するようにガス供給部であるガスシャワーヘッド69が設けられている。ガスシャワーヘッド69の下面には、ウェハWに対してガスシャワーヘッド69内を通流するガスを供給するためのガス供給口69aが多数開口している。このガスシャワーヘッド69の上面には、既述の気体材料取り出し路29が接続されている。また、このガスシャワーヘッド69の上面には、バルブ90と流量制御部91とを介して、酸化性ガス供給路92により酸化性ガス例えば酸素ガスの貯留された酸化性ガス源93が接続されている。ガスシャワーヘッド69内には、この酸化性ガス源93から供給される酸素ガスと既述の気体材料とが混じり合わないようにそれぞれのガス流路が設けられており、酸素ガスは、このガスシャワーヘッド69の下面に形成された酸素ガス供給口94からウェハWに供給されるように構成されている。
【0022】
この成膜装置には、図1に示すように、例えばコンピュータからなる制御部2Aが設けられている。この制御部2Aはプログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部などを備えており、前記プログラムには制御部2Aから成膜装置の各部に制御信号を送り、既述の各ステップを進行させるように命令(各ステップ)が組み込まれている。また、例えばメモリには処理圧力、処理温度、処理時間、ガス流量または電力値などの処理パラメータの値が書き込まれる領域を備えており、CPUがプログラムの各命令を実行する際これらの処理パラメータが読み出され、そのパラメータ値に応じた制御信号がこの成膜装置の各部位に送られることになる。このプログラム(処理パラメータの入力操作や表示に関するプログラムも含む)は、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)などの記憶部2Bに格納されて制御部2Aにインストールされる。
【0023】
続いて、本発明の成膜方法について、以下に説明する。先ず、ヒータ17により内部の液体材料が例えば50℃となるように設定された液体材料貯留源10に対して、窒素ガス源16から窒素ガスを供給すると、この窒素ガスの圧力により液体材料の液面が押圧され、液体材料供給路11を介して液体材料がナノバブル生成装置30に流れていく。また、不活性ガス供給源34から不活性ガスをナノバブル生成装置30に供給すると、既に詳述したようにして、液体材料中にナノバブルが生成する。
【0024】
このナノバブルは、既述のように、負電荷を帯びているので、相互に反発して、液体材料中に均一に分散する。そして、このナノバブルが分散した液体材料が気化器20の霧化ノズル26の中心部の液体材料通流路40を下方に流れ、前記液体材料通流路40の外側のキャリアガス通流路41から流れてきたキャリアガスにより、霧化ノズル26の先端部42にて液体材料が破砕される。この時、図4に示すように、液体材料中にはナノバブルが均一に分散して均一な気液混合流体になっているため、キャリアガスにより液体材料が破砕されると、その破砕面がナノバブルに達してそこで途切れて、当該ナノバブルを基点として新たな破砕面が作られていく。この結果、液体材料は、微細に且つ均一に分断され、霧化ノズル26の吐出孔43から均一で微細な大きさのミスト80が拡散し、こうして液体材料が霧化されて霧状に気化室24内に供給される。また、ナノバブルがミスト80の表面に露出することにより、ナノバブルが見かけ上消失してしまうので、ナノバブルが帯びていた負電荷は、ミスト80や気化室24内の大気に伝達されることとなる。そして、ミスト80が負電荷を帯びた場合には、ミスト80同士が互いに反発し合い、気化後の凝集が抑えられる。大気が負電荷を帯びた場合には、その後大気中の正イオンと結合して中和する。
【0025】
一方、気化室24の側壁のヒータ25の熱とキャリアガスの熱とにより、ミスト80が例えば150℃に加熱される。このミスト80は、粒径が均一で微細なため、速やかに熱交換が行われて確実に気化して、気体材料が得られる。また、ナノバブルの負電荷がミスト80に伝達されて、ミスト80が負電荷を帯びている場合には、ミスト80の凝集が抑えられるので、粗大な液滴の生成が抑えられて、より一層速やかに熱交換が行われる。この気体材料は、気化室24内の底部付近で屈曲して気体材料取り出し路29内に入り、一方において気化されなかったミスト80は、そのまま重力により気化室24の底部に衝突して溜まっていく。こうして気化室24において気液分離が行われるが、ミスト80の熱交換率が高いことから、結果として気体材料取り出し路29内に入った気体材料中には、ミスト80がほとんど含まれないこととなる。尚、気化室24の下面に溜まったミスト80は、定期的にバルブ71を開いて吸引ポンプ73により排液路72から排出される。
【0026】
そして、前記気体材料は、第2のヒータ28の熱により凝縮が抑えられた状態で成膜処理部50の処理容器60内にガスシャワーヘッド69を介して供給される。成膜処理部50では、ウェハWが予め設定温度に加熱され、かつ処理容器60内が減圧雰囲気とされており、ガスシャワーヘッド69を介して供給された酸素ガスとこの気体材料とがウェハW表面において反応して成膜種を生成し、この成膜種がウェハWに堆積していくことで、例えば酸化ハフニウム膜の成膜処理が行われる。
【0027】
上述の実施の形態によれば、ウェハWに対して成膜処理を行うための液体材料中に、負に帯電した粒径が1000nm以下のナノバブルを発生させ、この液体材料を霧化して更にそのミスト80を加熱して気化させている。従って、液体材料中には、予め極めて微少な気泡が高い均一性をもって分散しているため、この液体材料を霧化した時には、極微細で均一なミスト80が得られて、熱交換しやすい状態になる。この結果、気化効率(熱交換率)が高くなり、パーティクルの発生を低減することができる。
また、霧化後のミスト80にナノバブルの負電荷が伝達された場合には、ミスト80が互いに反発し合うので、ミスト80の凝集を抑えることができる。従って、更に気化効率が高くなり、パーティクルの発生を抑えることができる。
【0028】
成膜処理としては、上記の加熱による成膜以外にも、プラズマにより気体材料をプラズマ化して成膜するようにしても良い。また、縦型熱処理炉などのバッチ炉で成膜処理を行う場合にも、本発明の成膜方法を適用でき、この場合には液体材料の流量を枚葉の成膜装置に比べて大きくする必要があるが、既述のように気化効率が高いので、本発明を適用することは特に有効である。
上記の例では、ナノバブル発生用のガスとしてArガスを用いたが、他の窒素ガスなどの不活性ガスを用いても良いし、あるいはO2ガスなどの活性ガスを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の基板処理方法を実施するための成膜装置の全体構成の一例を示す構成図である。
【図2】上記の成膜装置におけるナノバブル生成装置の一例を示す説明図である。
【図3】上記の成膜装置の一部をなす気化器の一例を示す縦断面図である。
【図4】上記の気化器において液体材料がミスト化されていく様子を示す概略図である。
【図5】従来の気化器を模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0030】
20 気化器
24 気化室
25 ヒータ
26 霧化ノズル
29 気体材料取り出し路
30 ナノバブル生成装置
33 ガス供給路
35 液体材料供給管
50 成膜処理部
80 ミスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜用の液体材料中に気泡発生用のキャリアガスを供給して、正及び負の一方に帯電すると共に粒径が1000nm以下の気泡を発生させるための気泡発生手段と、
前記液体材料を気化させるための気化室と、前記気泡を含む液体材料を霧化して前記気化室内に供給するための霧化部と、この霧化部から前記気化室内に供給された液体材料のミストを気化するために前記気化室内を加熱するための加熱手段と、を含む気化器と、
この気化器にて気化された材料を取り出すための気体材料取出しポートと、を備えたことを特徴とする気化装置。
【請求項2】
前記気泡は、前記キャリアガスの旋回流を形成することにより発生することを特徴とする請求項1記載の気化装置。
【請求項3】
前記霧化部は、前記気泡を含む液体材料を霧化用のキャリアガスと共に吐出させるノズルにより構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の気化装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一つに記載の気化装置と、
この気化装置にて取り出された気化材料が供給され、被処理体が搬入される処理容器を含み、この被処理体に対して前記気体材料により成膜処理を行うための成膜処理部と、を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
成膜用の液体材料中に気泡発生用のキャリアガスを供給して、正及び負の一方に帯電すると共に粒径が1000nm以下の気泡を発生させる工程と、
前記気泡が消失する前に、前記気泡を含む液体材料を霧化して、ミストを得る工程と、
次いで、前記ミストを加熱して、このミストを気化させることにより、気体材料を得る工程と、
前記気体材料を処理容器内の被処理体に供給して、この被処理体に対して前記気体材料により成膜処理を行う工程と、を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項6】
前記気泡を発生させる工程は、前記キャリアガスの旋回流を形成させる工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記ミストを得る工程は、前記気泡を含む液体材料と霧化用のキャリアガスとをノズルから霧化する工程を含むことを特徴とする請求項5または6に記載の成膜方法。
【請求項8】
コンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、請求項5ないし7のいずれか一つに記載の成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−74108(P2009−74108A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241364(P2007−241364)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】