説明

水晶発振器

【課題】水晶発振器において、パッケージの低背化の流れに逆らうことなく、また、特別にそのための製造工程数を増やすことなく、浮遊容量が水晶発振器の発振周波数に及ぼす影響を低減する。
【解決手段】水晶発振器は、水晶振動子3、水晶振動子3の励振電極31、32に繋がる水晶端子33、34に接続され、水晶振動子3と協働して発振回路を形成する発振回路用IC4、水晶振動子3と発振回路用IC4とを密閉収納するための収納室を備えた絶縁性のパッケージ、及び、パッケージの下面に形成され、発振回路のアース端、発振回路に電力を供給する電力供給端、及び、発振回路の出力端がそれぞれ接続された複数の表面実装用端子であって、実装用半田がブリッジを形成しない程度の狭い相互間隙Gを有して配置されているとともに、単独あるいは複合して、実質的にパッケージの下面全面を覆う表面実装用端子6を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に実装するための水晶発振器、特に表面実装用端子を下面に備えた水晶発振器の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化への要求に伴い、この電子機器に使用されるあらゆる素子に対して小型化が要求されている。水晶発振器も例外ではなく、表面実装に要する面積(プリント基板への投影面積)の縮小だけでなく、厚さ縮小への要求、つまり、低背化要求も強くなってきている。
【0003】
水晶発振器が実装されるプリント基板側にはプリント配線が縦横に巡らされている。水晶発振器のパッケージは絶縁性であるから、パッケージ内の導線、例えば、水晶振動子に形成された励振電極やこれに接続された水晶端子電極、その他、とプリント基板側の配線との間には静電容量が形成され、電気的な結合が生じる。
【0004】
そして、プリント基板側の配線パターンは様々であり、このパターンの有り様によって容量結合の大きさが異なるだけでなく、水晶発振器の導線のどれがプリント基板側の配線のどれとどの程度の強さで結合するかも異なってくる。この容量結合は水晶発振器の発振周波数に少なからず影響を与えるので、水晶発振器が現実のプリント基板に実装されたときには、その発振周波数は、出荷時のものから、プリント基板のパターンの有り様に応じて変動することになる。加えて、低背化によりプリント基板のパターンと水晶発振器の配線同士がますます接近するようになったため、容量結合の度合いが強まり、発振周波数に及ぼす影響がいっそう大きくなってきている。
【0005】
このような浮遊容量が水晶発振器の発振周波数に及ぼすという問題に対処するため、特許文献1の従来技術に示すような、水晶発振器のパッケージの底壁にベタアース層を形成し、プリント基板側配線と水晶発振器内の配線とをシールドする等の技術も開発されている。
【0006】
このような従来例を図4により簡単に説明する。水晶発振器1は、そのパッケージ2の底壁21が外側底壁211と内側底壁212からなる二重構造になっている。回路のアース端に接続されるベタアース5がこれらの2つの底壁の間に形成されている。ベタアース5がプリント基板側配線と水晶発振器内の配線とをシールドすることになり浮遊容量による周波数変化は低減できる。
【0007】
しかしながら、このような問題解決法は、底壁21に関してみたとき、その底壁全体はどうしてもその厚さが増すことになり、上述のパッケージ2の低背化の流れに沿った様々の技術開発の成果を滅却してしまうことにもなりかねないという別の問題をはらんでいる。
【0008】
また、パッケージ2の底壁21を二重にするために、更に2つ目の底壁を形成する工程、及び、ベタアース5自体を形成するあるいはベタアースをアース線に内部で接続する工程をそれぞれ別途に設ける必要があることから、製造コストが嵩むという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−193965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、水晶発振器において、パッケージの低背化の流れに逆らうことなく、また、特別にそのための製造工程数を増やすことなく、上記浮遊容量の問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明は、水晶振動子、上記水晶振動子の励振電極に繋がる水晶端子に接続され、水晶振動子と協働して発振回路を形成する発振回路用IC、上記水晶振動子と上記発振回路用ICとを密閉収納するための収納室を備えた絶縁性のパッケージ、及び、上記パッケージの下面に形成され、上記発振回路のアース端、上記発振回路に電力を供給する電力供給端、及び、上記発振回路の出力端がそれぞれ接続された複数の表面実装用端子であって、実装用半田がブリッジを形成しない程度の狭い相互間隙を有して配置されているとともに、単独あるいは複合して、実質的に上記パッケージの下面全面を覆う表面実装用端子を備えたことを特徴とする水晶発振器である。
【0012】
第2番目の発明は、第1番目の発明の水晶発振器において、上記複数の表面実装用端子には、更に、上記3つの端子の他、上記アース端又は上記電力供給端の一方に接続されたダミー端子が含まれ、それぞれが上記パッケージの下面四隅に配置されていることを特徴とする水晶発振器である。
【0013】
第3番目の発明は、第1番目又は第2番目のいずれかの発明の水晶発振器において、上記収納室が単一の空間からなる収納室であることを特徴とする水晶発振器である。
【0014】
第4番目の発明は、第1番目乃至第3番目のいずれかの発明の水晶発振器において、上記パッケージが積層型セラミック基板で形成されていることを特徴とする水晶発振器である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水晶発振器では、上記発明特定事項によって、パッケージの高さを増加させることなく、また、特別に製造工程数を増やすことなく、浮遊容量の問題、すなわち、プリント基板側の配線とパッケージ内の導線との間の静電容量によって、表面実装されたときの水晶発振器の発振周波数が影響を受けることを防止することができる。加えて、端子寸法が大きくなることから、半田付け特性(引き剥がし強度)が向上するという効果も生じる。
【0016】
換言すれば、本発明によれば、表面実装端子とパッケージ内の導線との間の静電容量が、プリント基板側の配線とパッケージ内の導線との間の静電容量と比較して、遙かに大きくなっている。このため、発振周波数への影響は、ほとんど前者(表面実装端子とパッケージ内の導線との間の静電容量)に基づいて決まることになる、つまり、発振周波数に影響を及ぼす静電容量の大半はパッケージが製造されたとき既に決まってしまっていることになるから、仮に、この水晶発振器が実装されるプリント基板の種類が異なって、直下の配線パターンが大きく異なったとしても、そのことが発振周波数に及ぼす余地がほとんど無いことになり、結果としてプリント基板側からの影響がきわめて小さいことになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例の水晶発振器1の縦断面図である。
【図2】本発明の実施例の水晶発振器1をその下方から見た図であって、パッケージの下面を実施的に全面にわたって表面実装用端子が覆うパターンの例を示す。
【図3】本発明の実施例の水晶発振器1をその下方から見た図であって、パッケージの下面を実施的に全面にわたって表面実装用端子が覆うパターンの他の例を示す。
【図4】従来技術の一例としての水晶発振器1の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施例を示して説明する。
【実施例1】
【0019】
それぞれ、図1には、本発明の実施例の水晶発振器1の縦断面図が、また、図2には、水晶発振器1パッケージの下面を下方から見たとき、表面実装用端子が実質的に全面にわたって覆っている様子が示されている。
【0020】
水晶発振器1は、パッケージ2、水晶振動子3、発振回路用IC4、及び、表面実装用端子6からなる。水晶振動子3は、表裏に励振電極31、32及びこれに繋がる水晶端子33、34を備えており、導電性接着剤35を通して発振回路用IC4に接続されて発振回路が形成される。
【0021】
パッケージ2は、上記水晶振動子3と発振回路用IC4とを密閉収納するための収納室を備えており、本体が絶縁性の材料でできている。そして、例えばセラミック基板を何層も積層する、つまり、底壁21を形成する基板、単一の空間からなる収納室を形成するための穴あきの下枠壁22、上枠壁23のそれぞれに対応する各基板が積み重ねられること等によって、パッケージ2が形成されている。
【0022】
上枠壁23の上面(端面)には、通称、リング24と呼ばれるリング状の金属製の層が形成され、水晶振動子3、発振回路用IC4を組み込んだ後、この金属製のリング24に金属カバー25が溶接される。
【0023】
上記パッケージ2の下面には、上記発振回路のアース端、上記発振回路に電力を供給する電力供給端、及び、上記発振回路の出力端がそれぞれ接続された複数の表面実装用端子6が形成される。その際、各表面実装用端子6は、実装用半田がブリッジを形成しない程度の狭い相互間隙Gを有して配置されるとともに、単独あるいは複合して、実質的に上記パッケージ2の下面全面を覆うように形成される。
【0024】
図2に示されるものは3端子回路の例であり、発振回路のアース端に繋がるGND端子6−1、発振回路に電力を供給する電力供給端に繋がるVcc端子6−2、発振回路の出力端に繋がるOUT端子6−3、及び、ダミー端子6−4が実質的に同じ面積を占めながら下面を覆っている例である。
【0025】
4つの表面実装用端子6はそれぞれパッケージ2の下面の四隅を占め、これら端子相互の間には、上記間隙Gが形成される。なお、ダミー端子は機械的支持のために設けられた端子であるが、電気的に浮かしておくのは動作の不安定化を招きやすいので、内部あるいは外部で、例えばアース端あるいは電力供給端の一方に接続するのが好ましい。
【0026】
図3は、各表面実装用端子が、割合の異る面積を占め、相互に狭い間隙をもってパッケージの下面全体を覆っている例である。このような例からわかるとおり、本願発明で重要なのは、各表面実装用端子単独の面積や形状ではなく、各表面実装用端子が、実装用半田がブリッジを形成しない程度の狭い相互間隙を有しながら、全体として単独あるいは複合して、実質的にパッケージの下面全面を覆っていることである。
【符号の説明】
【0027】
1 水晶発振器
2 パッケージ
21 底壁
211 外側底壁
212 内側底壁
22 下枠壁
23 上枠壁
24 リング
25 金属カバー
3 水晶振動子
31、32 励振電極
33、34 水晶端子
35 導電性接着剤
4 発振回路用IC
5 ベタアース
6 表面実装用端子
6−1 GND端子
6−2 Vcc端子
6−3 OUT端子
6−4 ダミー端子
G 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子、
上記水晶振動子の励振電極に繋がる水晶端子に接続され、水晶振動子と協働して発振回路を形成する発振回路用IC、
上記水晶振動子と上記発振回路用ICとを密閉収納するための収納室を備えた絶縁性のパッケージ、及び、
上記パッケージの下面に形成され、上記発振回路のアース端、上記発振回路に電力を供給する電力供給端、及び、上記発振回路の出力端がそれぞれ接続された複数の表面実装用端子であって、実装用半田がブリッジを形成しない程度の狭い相互間隙を有して配置されているとともに、単独あるいは複合して、実質的に上記パッケージの下面全面を覆う表面実装用端子
を備えたことを特徴とする水晶発振器。
【請求項2】
請求項1に記載された水晶発振器において、
上記複数の表面実装用端子には、更に、上記3つの端子の他、上記アース端又は上記電力供給端の一方に接続されたダミー端子が含まれ、それぞれが上記パッケージの下面四隅に配置されていること
を特徴とする水晶発振器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された水晶発振器において、
上記収納室は単一の空間からなる収納室であること
を特徴とする水晶発振器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された水晶発振器において、
上記パッケージが積層型セラミック基板で形成されていること
を特徴とする水晶発振器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−142685(P2012−142685A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292329(P2010−292329)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】