説明

治療部位の拡張および薬物送達のための機械的装置および方法

拡大して治療物質または薬剤(40)を送達することにより血管の閉塞した血流路を拡張するための機械的拡張薬剤送達装置(11)である。本発明は、実質的に円筒状の拡張部材(31)を備え、拡張部材の基端側端部と末端側端部の距離を変えて、最縮小状態と最拡張状態に拡張部材を変化させる手段が拡張部材に組込まれている。治療物質(40)は、拡張部材(31)上に被覆するかそれを被覆する基質(43)に組込まれる。本方法では、被覆した拡張部材を血管の閉塞に前進させ、拡張部材に反対の力を軸方向に加えて、閉塞を拡大する拡張形態となるよう拡張部材を動かし、拡張部材が受動的または能動的に治療物質を閉塞に送達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、閉塞性病変(硬化)のあるヒト血管内腔の治療に使用する経皮経血管手術用装置ならびに方法に関するものである。つまり、本発明は、血管中の閉塞を拡張するとともに、同時にまたは引き続いて特定の治療物質または薬剤を送達するための機械的装置および方法に関連したものである。本発明は、治療物質または薬剤を閉塞に送達するために時間延長が必要な場合も含め、処置中を通して血流の維持を可能とする。
【背景技術】
【0002】
心血管疾患が、現代社会の直面している最も深刻な健康上の危険の一つであることは、一般に認められている。病変のある閉塞性の冠動脈の血流が制限され、組織の虚血や壊死が引き起こされる。硬化性冠動脈疾患の明確な発生原因はまだ解明されていないが、狭窄した冠動脈に対する治療法は明確になってきている。冠動脈バイパスグラフト(CABG)による外科的再建術は、1本または複数の冠動脈に病変部が数箇所認められる場合、しばしば第一選択の治療になる。当然ながら、開胸心臓手術は患者にとって外傷による負担が大きい。多くの場合、心血管疾患の経皮的な治療による外傷の少ない代替法を利用することが可能である。これらの代替法は、一般的に、病変のある血管部分を修正または切削するのに経皮経血管的血管形成術(PTCA)用の様々なタイプのバルーンや切除器具(アテレクトミー)を利用している。その他に経皮経血管的に病変部に拡張式管状ステントまたはプロテーゼを配置する代替治療法もある。
【0003】
従来の装置やPTCA手技には、傷ついた血管組織の増殖のために血管通過性を維持することができなくなる再血流問題の発生という欠点がある。これは「再狭窄」として知られており、おそらく血管形成術中に生じた血管壁の損傷が原因である。再狭窄は病理学的に、血管平滑筋の過形成に特徴付けられる新生内皮細胞の増殖機転により起こり、血管内腔を再び狭めるために手術患者の35〜50%でPTCAの再施行が必要となる原因となっている。ある種の治療物質または薬剤は、血管平滑筋の増殖を選択的に抑制し、最初の介入処置後の再狭窄率を低下させる効果があることが、一般に認められている。
【0004】
これまでに、血管形成術中に治療物質または薬剤を血管に送達するために使用する様々な装置が開示されてきた。バルーン血管形成術用カテーテルが治療物質または薬剤をヒト血管に付着させ送達するために使用されてきた。例えば、米国特許5112,305、5,746,716、5,681,281、5,873,852、5,713,863、6,102,904では、動脈に薬物を送達するためにバルーンに注入装置を取り付けた様々なバルーンカテーテルシステムが開示され特許を得ている。
【0005】
一方、標準型血管形成術用バルーンをポリマー素材で被覆し、ある種の薬剤や治療物質を組み込んだものもある。血管の治療目的部位でバルーンを膨張させて、薬剤または治療物質を血管壁に放散させることにより、これらの物質を血管壁に送達する。しかし、バルーンを配置するまでに薬物が血流中に洗い落とされたり、バルーンによる血流遮断で虚血状態が生じるためバルーンを膨張させておくことができる時間に制限があり、ごく限られた量の治療物質しか送達できない。
【0006】
さらに、これまでに開示されてきた薬物を治療部位に送達する方法には、特許番号5499971で開示されているように、イオン泳動法または電気穿孔法を利用するものがある。イオン泳動法または電気穿孔法を利用して、薬剤または治療物質を処置する部位近くに付着させた後、電気的に薬物の組織や細胞への移動を増幅することにより、受動的な薬物または薬剤の放散を増大させる。これらの方法では、通常、カテーテルの末端側に取り付けた、薬物を放散させることが可能な半有孔性のバルーン中に薬物が入れられている。
【0007】
一方、電極そのものを、イオン泳動法または電気穿孔法(method for ionphoretic or electroporetic)による薬物の送達に使用することもできる。その一つが特許番号6219577で開示されており、バンド様電極の表面をポリマーで被覆し、それに薬物を結合させて処置する部位まで運ぶようにしている。この方法には、薬物を送達する前、あるいは同時に、閉塞性病変部を拡大するという機能がない欠点がある。さらに、電極のバンドが血管壁に接触する表面部分は、弓状のバンドの中央部のみに限られている。このため、薬物を被覆した電極の接触面積の大きさには限界がある。この方法にはさらに、治療部位が血管内であることから、末梢の経皮挿入部から病変部末端側端部に経血管的に到達するまでに、薬物の大部分が電極から血液中に洗い落とされるか溶出してしまうという宿命的な欠点がある。これにより病変部に送達される薬物の量には限界があり、患者の全身が有害または毒性のある物質にさらされる可能性もある。
【0008】
その他に、バルーン素材の小さな孔から血管壁に向かって薬物溶液に圧力を加えることにより組織内へ到達する深さの改善を試みた装置も開示されている。しかし、血管内腔に近づけた小さな孔から“ジェットように(jetting)”高圧で薬物溶液を噴出させることにより血管壁が実際に損傷されることを示す証拠がある。二重壁構造の微小孔(または滲出性)バルーンの開発により、この買Wェット 効果はある程度除外できたが、血管壁への薬物の放散はゆっくりであり、薬物の多くがその後の”洗い落とし効果”で失われてしまう。この方法でも組織や細胞に送達される薬物や治療物質の量に限界がある。さらに、これらの方法すべてでバルーンを膨らませることが必要であり、バルーンが膨張している間末梢側への血流が制限されるため、薬物送達バルーンを臨床的に利用できる時間に限界がある。
【0009】
特定の血管へ治療物質または薬剤を送達するためにステントやバルーンカテーテルを使用することにも、いくつかの欠点がある。治療物質溶出ステントについては、一旦ステントを展開すると、その部分から溶出ステントを摘出するのに侵襲的な外科手術以外には方法がないことがある。したがって、ステントを展開した部位の血管壁に正確な量の治療物質または薬剤を送達するためには、治療物質溶出性のステントまたは埋植プロテーゼを精密にキャリブレーションする必要がある。血管壁へ治療物質または薬剤を送達するためにバルーンカテーテルを使用することには、バルーン破裂の危険性および膨張したバルーンが末梢側動脈への血流を制限することによる虚血などの限界がある。これは組織の虚血および壊死を引き起こす。治療物質または薬剤を障害のある血管部分に送達するのに使用される「灌流」式血管形成術用バルーンは、バルーンを膨らませている間、生理学的に必要な量よりもはるかに少ない血流しか通さず、虚血や組織壊死のために膨張時間に制約がある。
【0010】
このように、治療物質または薬剤を特定の血管部分に選択的に送達し、ここに示した欠点を克服する新規の改善された装置の必要性があることは明白である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここに示す発明の目的は、概して、治療物質または薬剤を血管の特定部分に受動的にあるいは電気的に能動的に送達しながら閉塞性の血管を拡張することを可能にする、機械的拡張装置と方法を提供することである。
【0012】
この発明の別の目的は、治療する血管部分の末梢側の血流を維持しながら、治療物質または薬剤を血管の特定の部分に曝露させる、あるいは送達する時間を延長して使用することができる、上記特性を有する経皮的装置と方法を提供することである。
【0013】
この発明の別の目的は、全身への影響を最小限にし、局所への薬剤または治療物質の放散または送達を最大にするために薬剤または治療物質を制御しながら放出あるいは放散することができる装置を提供することである。
【0014】
さらにこの発明の別の目的は、構造的損傷(バルーンの破裂)とそれに続く治療物質または薬物の血管への放出が起こり難い装置を提供することである。
【0015】
治療物質による治療により急速に成長している細胞の増殖を抑えられることが知られている。本発明は、閉塞性の血管を拡張し治療物質または薬剤を送達することにより血管の血流路を拡大する目的で、機械的拡張装置による様々な送達手段を適用している。治療物質または薬剤は増殖中の細胞の成長を選択的に抑制することから、本発明は血管の短期的な通過性を達成するのみならず、再狭窄を予防して長期的な通過性を維持するための薬物治療を行うものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、実質的に円筒形の拡張部材からなり、拡張部材の基端側端部と末端側端部の距離を変えて、縮小した状態と拡張した状態の全く異なる形態間で拡張部材を変容させる手段が拡張部材に組み込まれている。治療物質または薬剤を拡張部材に直接被覆するか、または拡張部材のメッシュに被覆したポリマーないしその他の基質に治療物質または薬剤を組み込むことができる。希望するならば、同じまたは別の治療物質または薬剤を、拡張メッシュに位置するカテーテル上のマーカーバンドに被覆したり、拡張部材内に末端側のポートのある送達ルーメンを通して注入することも可能である。この独特の設計により、本発明は十分に大きな灌流能力を有しており、カテーテルおよび末端の拡張部材またはメッシュを拡張状態にして血管壁に長い時間押し付けておくことを可能にしている。これにより、虚血に伴う事象を引き起こすことなく、長時間にわたって治療物質または薬剤を血管または器官に受動的にあるいは電気的に能動的に移行させることが可能である。カテーテルにはワイヤーガイド式と迅速交換式がある。
【0017】
本発明には、末端部の拡張メッシュから薬剤または治療物質を処置部位へ放出または送達するのを制御し促進するための、カテーテル基端側端部のコネクタから電導フレキシブル伸張エレメントへの電気的通信を提供する電導系を含めることもできる。この実施形態では、本発明は、イオン泳動法のみ、電気穿孔法のみ、または両者の組み合わせにより、薬剤および他の治療物質の拡張部材から組織および細胞への移行速度を高めることができる電気的駆動力を提供するカテーテルを基本とした装置に関連している。さらに、治療物質の拡張メッシュへの結合性を高めるために、拡張部材に治療物質または薬剤と反対の荷電、または治療物質または薬剤を組み込んでいる基質と反対の荷電をかけることができる。
【0018】
本方法はまた、カテーテルおよび拡張部材を血管の閉塞性病変部まで前進させる段階、および拡張部材を拡張状態にして閉塞性病変部を拡張するとともにカテーテル/拡張部材アセンブリから閉塞性病変部に治療物質または薬剤を能動的に(または受動的に)送達するために、拡張部材に軸方向への対応する力をかける段階が含まれる。
【0019】
一つの望ましいアプローチの仕方は、1)カテーテルにエネルギーを与えて治療物質と拡張メッシュの間の結合を高めてから、治療部位(treatment segment)までシステムを前進させる、2)拡張部材を拡張させて治療部位を拡大する、3)血流を妨げないで治療物質を組織中へ受動的に移行させる。
【0020】
もう一つの望ましいアプローチの仕方は、1)カテーテルにエネルギーを与えて治療物質と拡張メッシュの間の結合を高めてから、治療部位までシステムを前進させる、2) 血流を維持しながら拡張部材を拡張させて治療部位を拡大する、3) 電気エネルギーを供給してイオン泳動法で治療物質を組織中に移行させる、および/または、4) 電気エネルギーを供給して電気穿孔法を適用し、細胞の膜透過性を高める。カテーテルは位置を変えることなく手順2、3、4を連続して実施できることが望ましい。さらに望ましいのは、カテーテルが細胞間隙の組織中の薬物を高濃度に維持(例えば、イオン泳動法により)できるように設計されていることで、その後の電気穿孔パルスで細胞膜に移動のための孔を開けることにより、薬剤または治療物質の細胞内への送達を大きく改善することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
一般的に、本発明は血管狭窄部の閉塞性病変部ないしは閉塞(obstruction)を拡大しその部に薬剤または治療物質を放散させるために使用する装置に関連している。装置は血流が残っている閉塞に配置する拡張部材から構成されている。拡張部材には第一端と第二端があり、第一端と第二端の間に中間部分が位置する。拡張部材にはまた、全長にわたって中心に長軸に沿って血液が流れる通路がある。この血流路の直径は第一端および第二端の中心長軸方向の互いの位置関係の動きに伴って、最も収縮した状態から正反対の拡張状態まで変化する。円筒状の拡張部材は多数のフレキシブル伸張エレメントから構成され、各エレメントは中心軸方向に螺旋状に伸びている。フレキシブル伸張エレメントは、一つまたは複数の薬剤、治療物質、薬物、医薬品、プラスミッド、遺伝子、その他で被覆される。本出願の目的において、薬剤と治療物質の用語は、ここに記載する特定の物質すべてに対して使用するものとする。薬剤または治療物質は、フレキシブル伸張エレメントの上に前もってまたは同時に被覆されている非薬剤の基質に組み込むように意図されている。さらに、1) 治療物質をメッシュに電気的に結合させる、2)物質を血管組織へ能動的移動/放散させるために、電気的方法もカテーテルシステムに組み込むことができる。また、本発明には、拡張メッシュ中の中心カテーテルエレメントに固定した一つまたは複数のバンドを一つ以上の治療物質で被覆することも含まれる。
【0022】
拡張メッシュのフレキシブル伸張エレメントの多数は第一回転方向を有しており、それらの軸は互いにずれており、第一回転方向とは反対向きの第二回転方向を有し、互いに軸がずれている多数のフレキシブル伸張エレメントと交差して、円筒状の編み込み拡張エレメントを形作っている。フレキシブル伸張エレメントはフレキシブル伸張エレメント間の接触部分で交差している。
【0023】
第一および第二の仕組みが、上記の第一端および第二端を縮小した形に留めるために、上記の円筒状拡張部材のそれぞれ第一端および第二端に組み込まれている。仕組みは、第一端および第二端が互いに近づく軸方向への相対的な移動によって、円筒状拡張部材の中央部が長軸方向にわたって接触し、円筒状部品の中央部のフレキシブル伸張エレメントが互いに近づいて、円筒状の拡張部材が正反対の大きさに拡張し、血管壁と接触するようにして、血管閉塞を拡大する。円筒状拡張部材の第一端および第二端のフレキシブル伸張エレメントは、第一および第二エレメント内で縮小した状態を保ち、近づき過ぎないようにフレキシブル伸張部品の間にスペースを保つことにより、血液が第一端および第二端を通って、また円筒状拡張部材の血流路を通って流れ続けるようにし、一方で、円筒状拡張部材が血管壁に接触して血管の閉塞を拡大するようにする。
【0024】
図1〜7に特に示すように、機械的拡張薬剤送達装置(図中11)は、基端および末端側先端13および14を持つ第一または外側フレキシブル伸張管状部品12からなる。これには基端側先端13から末端側先端14まで血流路16が通じている。図2a、3a、5a、および6aは、基端コネクタから伸び、末端の拡張部材31に結びついている電導路を含めて、本品を示している。第二または内側フレキシブル伸張管状部品21は、第一または外側フレキシブル伸張管状部品12の血流路16内に同軸性にスライドするように配置され、基端および末端側先端22および23を設けている。これには基端側先端22から末端側先端23まで血流路24が通じている。拡張部材のフレキシブル伸張エレメントがステンレス鋼、エルギロイ(elgiloy)、または他の電導物質のような金属で作られている場合、電気リード線をメッシュに接続して回路の一部にすることができる。電気リード線はカテーテルのルーメンの一つに沿ってまたはルーメンの中を通すか、電導物質となりまたカテーテルシャフトを強化することもできる編み込みの形にすることができる。カテーテルの基端側端部まで電気リード線をルーメンの一つに通すことにより、小さなバンドを介して2番目の電極をカテーテル末端側端部に取り付けることができる。一方、電気リード線は患者の皮膚に取り付けるか、または通常カテーテルの挿入に使用するガイドワイヤーとすることもできる。
【0025】
カテーテルのフレキシブル伸張エレメントは、ポリマー素材または同様の基質で被覆し、被覆に薬剤または治療物質を吸収させることができる。アミノ酸ポリマー、多糖類などの合成ポリマーまたは天然ポリマーを使用することができる。必要な治療物質、ポリマーの患者への適合性、希望する最終的な薬品効果を鑑みてポリマーを選択する。これらのポリマーには、水溶液を吸収する性質があることから使用される親水性ポリマーを含んでもよい。フレキシブル伸張エレメントは、被覆がしてあってもなくても、特定の荷電を有する治療物質や薬剤の溶液に浸し、フレキシブル伸張部品が治療物質または薬剤の荷電状態と反対になるように電気的に荷電することができる。こうすることにより、物質または薬剤をフレキシブル伸張エレメントに大量に結合させることができる。典型的には、メッシュのフレキシブル伸張エレメントは、カテーテルを患者に挿入する直前に付けられた治療物質または薬剤で荷電され、薬物が血流中に多量に喪失されることなくカテーテルは拡張と治療の目的血管部位まで血管内を前進させることが可能である。閉塞または治療部位に到達したら、同じ電極使ってメッシュの荷電状態を逆にし、治療物質または薬剤を目標の組織中に移動させるようにすることができる。この場合、患者の皮膚に電極を貼り付けて、治療物質または薬剤を目標の組織中に能動的に放散させる、すなわちイオン泳動することができる。図8a〜8fに示すように、本発明はイオン泳動法および/または電気穿孔法を実施するために様々な波形で電流を流すことができる。本発明に含められる波形には、正方形波、長方形波、鋸歯状波、極性が逆転しない擬似サイン波、極性が逆転するが正味の電流は一定の方向に向かう整流擬似サイン波などがある。
【0026】
心臓が脱分極したときにのみメッシュに電流が流れるようにするなど、電流は患者の心電図と協調させることができる。この電流の「ゲイティング(gating)」により、患者の心臓が脱分極という不安定な状態にあるときに心臓に向かって放電する危険性を避けることができる。そのような放電は心臓の不整脈を来すことがある。
【0027】
イオン泳動的に送達を促進するには、治療物質が生理学的条件下で正味の荷電を帯びていることが必要である。一方、組織に向かってイオン泳動するのに十分イオン化していない処置物質を送達するときは電気穿孔法のみを使用する。全身的に投与された治療物質の限局した標的細胞への送達を促進させるには、電気穿孔法が望ましい方法である。
【0028】
ここで用いられているように、「イオン注入なしはイオン泳動(iontophoresis)」とはイオン化した分子が低レベルの電気ポテンシャルをかけた溶媒を介して移動することである。この分子の組織への電気を介した移動は、濃度勾配依存性の放散プロセスに一致する。分子がその中を移動する溶媒または組織も荷電していると、電気浸透的な流れが生じる。しかし、一般的に、正味陰性に荷電している分子の陽極への移動速度、またはその逆の場合の移動速度は、移動する分子の正味の荷電とかける電圧によって決まる。この駆動力は静電気反発力と考えることができる。イオン泳動法では、通常、約2〜5mAの範囲の比較的低い一定の直流電流が必要である。確立されたイオン泳動法の例には皮膚からの薬物送達を促進するもの(経皮イオン泳動法)があり、電極の一つを治療する皮膚の上、他の電極を離れた部位、普通は皮膚に貼り付ける。本発明では、リターン電極はやはり皮膚に貼り付ける。また、カテーテルの末端側端部から出ているガイドワイヤーの末端部をリターン電極として使用することもできる。
【0029】
ここで用いられているように、「電気穿孔(electroporation)」とは電気ポテンシャルをかけることによって細胞膜に一時的に穴または水性孔を作ることである。その穴を通って治療物質が細胞の中に入ることができる。電気穿孔法は、現在では、生物学分野、とくにプラスミッド、DNA断片、その他の遺伝物質を生きている細胞に導入するトランスフェクション研究で広く応用されている。電気穿孔パルスをかけると、可逆的に膜透過性が促進している間に、普通は細胞膜を通過しない分子が細胞外から細胞内へ入ることができる。透過性促進状態は、細胞浮遊液または組織に細胞膜のタンパク脂質の構造を不安定にするのに十分な大きさの電界を作ることにより作成される。この不安定性(誘電破壊とも呼ばれる)は、構造荷電の分離および細胞膜とその近接の細胞骨格構造の粘弾性圧縮力効果の両方によると考えられている。その結果、膜が局所的に薄くなる。外部の電界が極癌に達すると、タンパク脂質二層構造の細胞膜に孔または透過性が促進した部分が形成される。
【0030】
後述するように、ガイドワイヤー式の機械的拡張薬剤送達装置11のガイドとして使用するため、通常タイプのガイドワイヤー26を内部フレキシブル伸張管状部品の血流路24を通して導入する。ガイドワイヤー26は、例えば0.010〜0.035インチ(0.25〜0.89mm)の適当なサイズで、150〜300cmの範囲の適当な長さのものを使用する。例えば、第一または外側フレキシブル伸張管状部品12は、外径が0.6〜3mm、壁の厚さが0.12mmで、直径が0.75mmの血流路を持っている。同様に、第二または内側フレキシブル伸張管状部品21には、例えば0.6mmの適切な外径、壁の厚さが0.12mm、直径が0.45mmの血流路24である。フレキシブル伸張管状部品12および21は、適切なプラスチック、例えばポリイミド、ポリエチレン、ナイロン、ポリブチルテレフタレート(PBT)から作られる。
【0031】
本発明によれば、本質的に円筒形の拡張部材31には、第一端または基端側端部32および第二端または末端側端部33があり、中心長軸に沿って基端側端部32から末端側端部33まで続く中心または内部血流路34を有している。この血流路の直径はこれ以降記載するように様々である。円筒形の拡張部材31は、多数のフレキシブル伸張エレメントまたはフィラメント36からなり、各エレメントは中心長軸に対して螺旋状に伸びている。このフレキシブル伸張エレメント36は、ヒト血液に使用できる適切な素材、例えばステンレス鋼、ニチノール(Nitinol)、Aerme(登録商標)、Elgiloy(登録商標)、その他のプラスチックファイバーからできている。フレキシブル伸張エレメント36は、適切な直径、例えば0.001〜0.010インチ(0.025〜0.25mm)で、円形、楕円形、平坦、三角形のワイヤーリボンに形作ることができる。フレキシブル伸張エレメント36の多数は、図1および図7に示すように中心軸に対して第一回転方向を有しており、それらの軸は互いにずれており、これらはさらに第一回転方向とは反対向きの第二回転方向を有し、互いに軸がずれている多数のフレキシブル伸張エレメント36と交差して、二重螺旋状または編み込み状またはメッシュ様の円筒状拡張部材を形作る。フレキシブル伸張エレメント36はフレキシブル伸張エレメント間の接触部分で交差して、その間に広がりまたは隙間37を形成している。このようにして、フレキシブル伸張エレメント36は拡張部材31を形成し、拡張部材31の第一および第二端の中心長軸方向への互いの相対的な動きに伴って直径の大きさが変化する中心または内部の血流路34がある。
【0032】
拡張部材31の第一端および第二端または基端側端部および末端側端部32および33を押さえる仕組みがあり、それは第一または基端カラー41および第二または末端カラー42からなる。第一および第二カラー41および42は、ポリイミドのような適切な素材からできている。第一または基端カラー41は適切な長さ、例えば1.0〜5.0mmで、拡張部材が収縮した状態で第一または外側フレキシブル伸張部品12の末端側先端14にかぶさっているとき、拡張部材31の第一または基端側端部32の上にぴったりはまる大きさである。第一または基端側先端32の伸張エレメントまたはフィラメント36が第一または外側フレキシブル伸張部品12の末端側先端14にしっかり固定されていることを確証するために、接着剤で第一または基端側端部32をカラー41および第一または外側フレキシブル伸張管状部品12の末端側先端14に結合させることができる。第二または末端カラー42は適切な長さで、拡張部材31の末端側端部33の伸張エレメントまたはフィラメント36を第二または内側フレキシブル伸張管状部品21の末端側先端23に単に固定する必要があるため、典型的には直径は少し小さめである。接着剤(図には示していない)は拡張部材31の第二端または末端側端部33を第二または末端カラー42と内側フレキシブル伸張管状部品21の末端側先端の間で固く固定するために提供されている。このようにして、円筒状拡張部材31の基端側端部は湾曲し内方に円錐状で、外側フレキシブル伸張管状部品12の末端側先端に固定され、拡張部材31の第二端または末端側端部33も湾曲し内方に円錐状で、第二または内側フレキシブル伸張管状部品21の末端側先端に固定されている。
【0033】
典型的には、第一および第二カラー41および42間の距離は、5〜150mmの範囲である。典型的には、第二または内側フレキシブル伸張管状部品21の末端側端部23は、第一または外側フレキシブル伸張管状部品12の末端側先端14から約5〜170mm延伸している。
【0034】
第一または外側フレキシブル伸張管状部品12および第二または内側フレキシブル伸張管状部品21を軸に沿って互いに対して動かすことによって、拡張部材31の第一および第二端が互いに向かって動き、第一および第二端の間にある円筒状拡張部材の中間部分の伸張エレメントまたはフィラメント36が互いに近づいて、フレキシブル伸張エレメントが近接位置に並び、円筒状拡張部材31が第一放射方向に拡張し(図7)、中心血流路34の直径が増大するのが認められる。第一および第二カラー41および42に隣接する拡張部材31の位置はカラー41および42に拘束されたままで、カラー41および42に隣接しているフレキシブル伸張エレメント36は円錐状に湾曲し交差したままで近接位置に並ぶことはできず、その間に広がりまたは隙間37を形成する。この隙間は比較的一定の形態と大きさを保ち、これ以降記載するように、血液が第一および第二端32および33から中心または内部血流路34を通って流れることができる。
【0035】
拡張部材の本質的に円筒状の形態は、放射方向に拡張したとき、拡張部材と血管壁ないし閉塞の接触面積を大きくする。このように接触面積が大きいことにより、拡張部材を構成しているフレキシブル伸張エレメントの表面に付いている薬剤または治療物質の送達量を多くすることができる。この薬剤または治療物質は、受動的または電気的に能動的な放散、圧力、イオン泳動、電気穿孔のような以前に記載された、よく知られている様々な方法によって送達することができる。
【0036】
第一または外側フレキシブル伸張管状部品12および第二または内側フレキシブル伸張管状部品21の間の相対的な動きを起こすために機械的拡張薬剤送達装置11に備えられている仕組みの例の一つは、直線移動機構46である。直線移動機構46には、第二または内側フレキシブル伸張管状部品21につながるルーメン52を持つ中心アーム51とともに供給されるYアダプター49が含まれている。このルーメンまたは血流路52は、第一または外側フレキシブル伸張管状部品12のルーメン16およびサイドアーム54内の血流路53と交通している。サイドアームにシリンジ(図には示していない)を取り付けて、生理食塩水、放射性造影剤、薬剤/治療物質を、サイドアーム54を通してYアダプター49内の血流路52からさらに外側拡張部材12のルーメン16に注入することができる。ネジ構造46のある末端側端部には、内部にルーメン57のあるフィッティング56が付いており、そのルーメンはフレキシブル伸張管状部品12の基端側端部13を入れて、フィッティング56の末端側端部で接着剤58で固定されている。これによってルーメン57は、中心アーム51の血流路52およびサイドアーム54の血流路53と交通している。第二または内側フレキシブル伸張管状部品21において液漏れ防止用シールを形成するOリング59が中心アーム51のルーメン52に配置されている。内側にネジ溝のあるギザギザ付きのノブ66が、内側フレキシブル伸張管状部品21の基端側先端22に固定されている、外側にネジ溝の付いた部品67にねじ込まれている。このノブ66には、中心アーム51の輪状のくぼみ69に収まっている、内方へ伸びたフランジ68が付いている。こうして、ノブ66を回すと、ネジ溝付き部品67および第二または内側フレキシブル伸張管状部品21がフィッティング56に対して前進したり後退する。長軸方向に間隔を開けて配置されたリング70からなる印68が部品67に付いており、第二または内側フレキシブル伸張管状部品21が第一または外側フレキシブル伸張管状部品12に対して前進または後退した距離を示すために用いられる。
【0037】
ルアタイプのフィッティング71が内側フレキシブル伸張管状部品21の基端側先端22に取り付けられており、手の指でつなぐようになっている。ガイドワイヤー26がフィッティング71を通って内側フレキシブル伸張管状部品21のルーメン24に伸びている。
【0038】
フレキシブル伸張部品12および21を互いに対して前進あるいは後退させるために一つの直線移動機構46が付いているが、必要であればそのような相対的な動きのために他の機構も利用できることは高く評価できる。適用可能な他の機構には、シザージャック、ラチェット型、直線スライド機構がある。
【0039】
本発明に含まれている拡張薬剤送達装置のもう一つの実施形態が、図9および図9aに示されている。ここに示されているように、迅速交換設計の機械的拡張薬剤送達装置101は、迅速交換機能が付いていること以外は機械的拡張薬剤送達装置11と同様に作られている。これは、ルーメン103を有する外側フレキシブル伸張管状部品102およびルーメン107を有する内側フレキシブル伸張管状部品106により完成されており、これらには基端および末端カラー41および42でそこに固定されている拡張部材31が付いている。外側フレキシブル伸張管状部品102には、拡張部材の31の末端側先端32から13〜60cmのところに、対応するルーメン103につながるポートまたは開口部111が付いている。対応するルーメン107につながる対応するポートまたは開口部112が内側フレキシブル伸張管状部品106の中に付いている。これらのポート111および112は、これらの部品102および106の末端側先端が互いに基端で最も近接し開口部111および112が互いに合わさって、拡張部材31が拡張状態になるように位置している。この位置で、最初にガイドワイヤー26の最も基端部を内側フレキシブル伸張管状部品106の末端側先端のルーメン107に入れて前進させ、それから合わさっているポートまたは開口部112およびポート111から出してフレキシブル伸張管状部品102から出すことにより、機械的拡張薬剤送達装置101をガイドワイヤー16に装着することができる。拡張部材31は次に、ネジ機構46を操作して外側および内側フレキシブル伸張管状部品102および106の末端側先端をさらに離れるように動かすことにより、最も拡張している状態から縮小している状態に収縮する。この手順は、ガイドワイヤー26の外部に出ている部分がポート111に対して動かない状態に維持しながら実施する。ガイドワイヤー26をルーメン107内に維持し、フレキシブル伸張管状部品106の末端側先端をガイドワイヤー26に沿って前進させると、フレキシブル管状部品106の末端側先端がフレキシブル伸張管状部品102の末端側先端から離れるように動くにつれ、ポート112はポート111と合っていた状態から動く。拡張部材31が最も縮小しているこの状態にて、機械的拡張薬剤送達装置101を血管の狭窄部分を通してガイドワイヤー26に沿って前進させることができ、先に記述したようにネジ機構46を使って拡張部材31を拡大させることができる。拡張と薬剤送達が完了したら、拡張部材31は最も縮小した状態にすることができ、ガイドワイヤー26を血管に対して動かない位置に維持しながら内側フレキシブル部品106の末端側先端が患者の体内から出るまでガイドワイヤー26に沿って装置101を牽引することにより、機械的拡張薬剤送達装置101と案内カテーテルを血管から抜去することができる。ここで機械的拡張薬剤送達装置101は、例えば長さ175〜185cmの標準ガイドワイヤー26上でさらに大きな直径まで拡張することができる拡張部材31を持っているものなど、他の機械的装置101に迅速に交換することができる。
【0040】
拡張部材31は、中心長軸の周りに螺旋状に巻かれた直径が0.001〜0.005インチ(0.025〜0.125mm)のステンレス鋼などの適切な金属のワイヤー16〜64個の個別のエレメントから構成されている。螺旋は反対の方向に巻かれている。円筒状拡張部材31を引き伸ばすまたは伸張することにより、拡張部材31の直径が小さくなる。拡張部材31の基端および末端側先端22および23を機械的に固定することにより、これらの末端部の直径が縮小された形態を保つ。これらの末端部のエレメント21の互いに対する位置は変わらない。したがって、エレメント36の交差角度は一定に保たれる。断端が固定された円筒状拡張部材31を短くすると、エレメント36が互いに隣接した状態で円筒状中心部が非常に硬くなる。拡張部材31の先細りした基端および末端側先端が、バランスを保つために個々のエレメント36に圧力を与える。図10に示すように、拡張部材31が短くなったとき、基端および末端側先端22および23の先細りの位置が維持されるため、円筒状中心部からの血液の出入りができるようにエレメント間の隙間が保たれる。拡張部材31が短くなると、拡張部材31の中心部の単位長あたりの金属の密度が有意に上昇する一方、断端部の金属の密度は比較的一定である。エレメント36が長軸方向に縮小するにつれ中心部の金属密度が上昇し、放射方向の大きな力を生み出す。
【0041】
図11に見られるように、フレキシブル伸張エレメント36は、治療物質または薬剤40が受動的あるいは電気的のいずれかにより血管壁17に放散あるいは移動するように設計されている。図13は、治療物質または薬剤40を伸張エレメント36から受動的あるいは電気的のいずれかにより放散するように設計されている拡張メッシュ31のフレキシブル伸張エレメント36の一つをより詳細に示す横断面図である。図12は、拡張メッシュ31内にある内側管状部品に取り付けられているバンド12からの治療物質または薬剤の放散を示す横断面図である。
【0042】
図14は拡張メッシュ31のフレキシブル伸張エレメント36の一つの別の横断面図で、伸張エレメントに付けた基質43に組み入れた治療物質または薬剤40の放散を示している。基質43は薬剤40をフレキシブル伸張エレメント36の表面によく接着させ、薬剤を血管壁17に放出するタイミングを図り、薬剤40が受動的または圧力を介してまたはイオン泳動法または電気穿孔法で能動的に、またはそれらの組み合わせで細胞膜という境界を越えて移動させるための物質として作用する。図15は、拡張メッシュ31のフレキシブル伸張エレメント36の一つの別の横断面図で、フレキシブル伸張エレメントにかけられた電流の助けの下での治療物質または薬剤40の放散を示している。
【0043】
図16はフレキシブル伸張エレメント36の側面断面図で、治療物質または薬剤40の血管壁17への受動的または電気的能動的な放散を示している。
【0044】
本発明の治療物質または薬剤源40として使用するために、以下に詳しく述べるようにフレキシブル伸張エレメント36自身に被覆することができる。
【0045】
治療物質または薬剤40は、ポリマーまたは他の基質43の上に被覆したり、その中に組み込んだり、拡張部材31および/または拡張メッシュの中にあるカテーテルの上に取り付けた特別なバンド62に被覆することができる。一つの特定の治療物質または薬剤40を上記のコンポーネントのいずれか、例えば拡張メッシュの上に被覆し、他の治療物質または薬剤40を別のコンポーネント、例えばマーカーバンドの上に被覆することができる。一方、拡張部材の内部に末端ポートを持っている治療物質の送達ルーメンは、特定の治療物質または薬剤を選択的に放出し、送達するのに使用することができる。
【0046】
治療物質40には、アスパラギン酸−フェニルアラニン−プロリン−アルギニン−クロロメチルケトン(D-Phe-Pro-Arg-Chloromethyl ketone)、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗物質、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害物質、血小板阻害物質、ダニ抗血小板ペプチドなどの抗凝固剤がある。
【0047】
治療物質40には、成長因子刺激物質、成長因子受容体作動物質、転写活性化物質、翻訳促進物質などの血管細胞成長促進物質がある。代わりに治療物質40には、成長因子阻害物質、成長因子受容体拮抗物質、転写抑制物質、翻訳抑制物質、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、複製阻害物質、抑制に働く抗体、成長因子に対する抗体、成長因子と細胞毒性因子からなる二重機能分子、抗体と細胞毒性因子からなる二重機能分子などの血管細胞成長抑制物質がある。
【0048】
治療物質40には、コレステロール低下物質、血管拡張物質、内因性血管作用機構を阻害するその他の物質がある。さらに、治療物質40には、細胞内カルシウム結合タンパクを修飾する物質、収縮作動物質に対する受容体遮断物質、ナトリウム/水素交互輸送機構の阻害物質、プロテアーゼ阻害物質、ニトロ血管拡張物質、ホスホジエステラーゼ阻害物質、フェノチアジン、成長因子受容体作動物質、抗細胞分裂物質、免疫抑制物質、プロテインキナーゼ阻害物質などの平滑筋阻害物質がある。
【0049】
一方、治療物質40は、それ自身は体内で分解され、治療物質40の緩徐な放出を可能にする基質またはポリマー43の上または中に組み込むこともできる。一つまたは複数の治療物質を組み込んだ基質またはポリマー43は、バンドに付けるか、フレキシブル伸張エレメント36に被覆することができる。
【0050】
体内で分解される基質またはポリマー43として、例えばポリラクタイド、ポリアンハイドライド、ポリオルソエステル、ポリグリコライドなどを使用できる。合成ポリマーに加えて、アミノ酸ポリマー、多糖類などの天然ポリマーも使用できる。ポリマー50は、使用する治療物質、ポリマー43の患者への適合性、希望する最終薬理効果に応じて選択する。例えば、短期間の持続効果だけが必要な場合は、ポリマー50から血管壁または血管内へ限定された量の治療物質を放散させる菲薄なポリマー43を使用する。他方、体液に近い層だけに治療物質40を含ませることもできる。また、長い期間をかけて体内で分解されるポリマー43を使用することもできる。当然ながら、長期間の放出を希望する場合に、この相反する性質のものを選択する。
【0051】
一般に、基質またはポリマー43は、約0.001μg/cm2/min〜約100μg/cm2/min、特に約0.01μg/cm2/min〜約10μg/cm2/minの治療物質40放出速度を持っている。さらに、基質またはポリマー43は一般的に0.01mm〜10mm、特に0.1mm〜1.0mmの厚さを持っている。高く評価できることに、希望する効果および放出レートを得るために、装置10には2つ以上の異なる治療物質40あるいは2つ以上の異なるポリマー43を使用することができる。さらに、治療物質40の画一的ではない放出を可能にするため、ポリマー43には異なる溶解性または放散性のものがある。
【0052】
拡張部材のバンドやフレキシブル伸張エレメントにポリマーおよび/または治療物質または薬剤を被覆する方法は、よく知られた洗練された技術で、標準的な参考文献を参照して決定できる。さらに、この目的のための特定の基質またはポリマー43の性質は、当業者にはよく知られており、標準的な参考文献、例えば以下を参照して決定できる。薬剤送達システムとしての生分解性高分子,アール・レンジャーおよびエム・チェイシン,マーセル・デッカー社,ニューヨーク,米国,1990年(Biodegradable Polymers as Therapeutic agent Delivery Systems, R. Langer and M. Chasin, Eds., Marcel Dekker Inc., New York, NY, USA (1990));エングレバーグおよびコーン,「医療応用における生分解性高分子の物理機械的特性:比較研究」,バイオニューテリアルズ 12:292−304,1991年(Engleberg and Kohn, 撤hysico-mechanical properties of degradable polymers used in medical appreciations: a comparative study Bionuzterials 12: 292-304 (1991));制御放出送達システム,ティー・ジェイ・ロスマンおよびエス・ディ・マンスドルフ編,マーセル・デッカー社,ニューヨーク,米国,1983年(Controlled Release Delivery Systems, T. J. Roseman and S. D. Mansdorf, Eds., Marcel Dekker Inc., New York, NY, USA (1983));「制御放出技術,医薬応用」,ACSシンポジウムシリーズ第348巻,ピー・アイ・リーおよびダブリュ・アール・グッド編,米国化学学会,ワシントンDC,米国,1987年(鼎ontrolled Release Technology, Pharmaceutical Applications, ACS Symposium Series Vol. 348, P. I. Lee and W. R. Good, Eds., American Chemical Society, Washington, D. C. USA (1987))。
【0053】
機械的拡張薬剤送達装置11の操作および使用方法を以下に簡単に記述する。ここでは、機械的拡張薬剤送達装置11を使用して医療処置を実施しようとしている患者には、心臓に血液を供給している動脈の1本または複数に少なくとも部分的に閉塞性の1個または複数の狭窄部があり、これらの狭窄部を通過する血流路を拡張したいと希望していると想定する。典型的には、機械的拡張薬剤送達装置11は、円筒状拡張部材31が最も縮小した状態、すなわち直径が最も小さくなり外側フレキシブル伸張管状部品12の直径にほぼ等しくなった状態で、また治療物質または薬剤40を予め被覆した状態で製造元から供給される。機械的拡張薬剤送達装置は、被覆されていない、または拡張メッシュに治療物質または薬剤40が付けられていなくて拡張部材の上にポリマーだけが被覆されているいずれかの状態で供給される。この例には、治療物質40溶液を入れた容器を別に用意して、機械的拡張薬剤送達装置を患者に挿入する前のある時に、拡張メッシュ31を容器に浸しておくか、または短時間沈めてフレキシブル伸張部品36に被覆を施すこともできる。時間および/または温度が適切であれば、薬剤溶液はポリマーを被覆した拡張メッシュに吸収、乾燥、付着される。別の方法として、荷電をかけることにより薬剤または治療物質のポリマーを被覆した拡張部材への結合を促進することができる。
【0054】
被覆された拡張部材35は、管状部品12より直径が少しだけ、例えば1.0〜2.3mmだけ大きいことが望ましい。第一および第二カラー41および42もまた、外側フレキシブル伸張管状部品12の外径より少しだけ大きい直径を持っているようにする。円筒状拡張部材31が最も縮小した状態にするため、内側フレキシブル伸張管状部品21の末端側先端23と外側フレキシブル伸張管状部品12の末端側先端14の間の間隔が最大になるように直線移動機構46を調整する。拡張部材31のこの位置で、フレキシブル伸張エレメント36が互いにほぼ直角に交差して、その間の隙間または広がり37が長軸方向に大きくなるようにする。
【0055】
治療物質または薬剤に適用できる場合、本発明にはカテーテルのうち、フレキシブル伸張エレメントが治療物質または薬剤とは反対の荷電を持つように電流を流すことができる、薬剤または治療物質を被覆したフレキシブル伸張エレメントが含まれる。適用できる治療物質または薬剤は、拡張部材に反対の荷電がかけられたとき、拡張部材の表面と治療物質または薬剤の間に電気的結合が確立されるという生来の荷電ポテンシャルを有するものである。電気エネルギーまたは電流は、カテーテルの基端側端部にある電気コネクタからリード線45を通して被覆された拡張部材35に流される。これによって、治療物質または薬剤40がフレキシブル伸張エレメント36に多量に結合する。治療物質または薬剤40を付けたメッシュを継続的に荷電させることにより、血流中に薬剤をそれほど失うことなく、装置を拡張し治療する部位まで患者の血管内を前進させることができる。
【0056】
続いて機械的拡張薬剤送達装置11を、通常そのような処置に使用され、大腿動脈から導入され、末端側端部が選択した冠動脈口に適合している案内カテーテル(図には示していない)に挿入する。
【0057】
次に、ガイドワイヤー26を機械的拡張薬剤送達装置11とは個別に挿入する。必要に応じて、ガイドワイヤー26は、その末端側先端を装置11の末端側先端を超えて延伸させた状態で機械的拡張薬剤送達装置11とともに挿入することができる。その後ガイドワイヤー26を手技を実施している医師の常用の方法で挿入し、狭窄のある血管部位まで前進させる。ガイドワイヤー26の末端側先端が前進するのをX線透視装置で観察し、末端側先端が狭窄部の末端側に到達するまで挿入する。薬剤または治療物質で被覆した拡張部材31を最も縮小した状態にして、機械的拡張薬剤送達装置11をガイドワイヤー26の上に沿って前進させる。第二または内側フレキシブル伸張管状部品21の末端側先端23をガイドワイヤー26の上に沿って狭窄部を通して、末端部が狭窄部の末端側に届き、第一または外側フレキシブル伸張管状部品12の末端側先端14が狭窄部のすぐ基端側に来るまで前進させる。
【0058】
拡張部材31が狭窄部の希望する部位に位置したら、ネジ機構46を操作することにより末端側先端14および23を互いに近づけるように動かして、拡張部材31を最も縮小した状態から拡張した状態に拡張する。これは、一方の末端側先端を動かないように保持しながら、他方の末端側先端をそれに近づけるように動かすことにより、または両方の末端側先端を同時に互いに近づけるように動かすことにより達成することができる。このような末端側先端14および23の動きにより、カラー41および42が互いに近づくように移動し、フレキシブル伸張エレメント36の中央部にフレキシブル円筒状拡張部材31の中間部31aの二重螺旋メッシュ構造が形成され、二重螺旋状に巻かれたフレキシブル伸張エレメント36の軸方向交差角度が伸展状態の約140°〜170°から軸方向に縮小した状態の5°〜20°に徐々に減少するように互いに関連して動き、隙間または広がり部分37が次第に拡張状態の長軸がカテーテルの中心長軸に対して平行になっている菱形の隙間から中程度縮小した状態のしっかりとした正方形の隙間へ、さらにフレキシブル伸張エレメント36が互いに近づいて並列し同時に伸張部品が放射方向へ拡張した状態で隙間の長軸が中心長軸に直角の方向に長くなった菱形の隙間または広がりへと徐々に変化し、中心血流路34の直径が次第に大きくなる。拡張部材31の拡張は、X線透視による観察に加えてネジ溝の付いた部品67に付いている印68によっても確認できる。
【0059】
十分に拡張したときの円筒状拡張部材31の中間部31aは、狭窄部を十分に広げる外方への強さを有するまさに硬い円筒状の塊状物、あるいはステントまたはプロテーゼのようになる。さらに、拡大した拡張部材にはフレキシブル伸張エレメント36を螺旋状に巻こうとするばねの性質があるため、拡張部材31は狭窄部に対し外方への強い力、あるいはステントまたはプロテーゼのような力を発揮し、標準的な直線式血管形成バルーンシステムで通常起こるような屈曲している血管を直線にするようなことなく狭窄部を押し広げながら血管の中で湾曲することができる。拡張部材あるいは代替のステントまたはプロテーゼは治療物質または薬剤で被覆されており、閉塞することなく末端の血管に血流を保ちながら装置を拡張することにより、一つまたは複数の治療物質または薬剤を血管に送達できる(図11〜16)。
【0060】
さらに、電気的荷電を拡張部材またはメッシュに供給して、薬剤をメッシュまたは拡張部材に結合させるために拡張部材またはメッシュが反対の荷電を持つようにすることができる。この荷電はそれから、イオン泳動法によって薬剤または治療物質を組織内に導入しやすくする。イオン泳動法は、薬剤または治療物質が選択的透過膜を超えて移動するのを容易にし組織に浸透するのを促進することが知られている。本発明には電気エネルギーの使用が含まれており、使用を意図している可能性のある多くの波形がある。図8a〜8fに示すように、正方形波61、長方形波63、鋸歯状波64、極性が逆転しない擬似サイン波65、整流擬似サイン波72、修正長方形または他の波形73がある。好ましい波形の主要は性質となっているのは、これらすべてが被覆された拡張部材35に正味の電流を流すことである。周波数とデューティサイクルを備えたこれらの波形が、拡張部材35が遭遇する様々なインピーダンス、周囲の血管壁17および体液の下で必要な電流の送達を可能にすることは、この手技に熟練している者から高く評価されるに違いない。
【0061】
予め決められた時間が経過した後、電流は他の目的を達成するために変更するか、終了することができる。拡張および薬剤送達の操作中も血液は拡張薬剤送達装置11を通って持続的に流れ、虚血が起こる危険性は最小限である。これは、必要な場合には時間を延長して閉塞の拡張薬剤送達11を継続することを可能にする。機械的拡張薬剤送達装置11のとくに有利な点の一つは、虚血を招くことがなく恒久的な損傷やショックを患者に及ぼさないような比較的短時間のバルーン拡張にも耐えることができない危機的な性質の閉塞性病変を有する患者にも使用できることである。本発明のもう一つの有利な点は、円筒状拡張部材の血管壁との接触面が大きいことにより、組織による薬剤または治療物質の吸収が増大したことである。
【0062】
病変部の拡張と薬剤送達が適切な時間内に終了した後、拡張部材31は、例えばネジ機構46を反対方向に操作して末端側先端14および23を互いに離れさせ、拡張部材31を伸張させると同時に直径を小さくして拡張状態から縮小状態にすることができる。
【0063】
拡張部材31が縮小し最小直径になった後、機械的拡張薬剤送達装置11はガイドワイヤー26に沿って抜去することができ、その後案内カテーテル(図に示していない)を抜去し、大腿動脈につながる穿刺部を通常の方法で閉鎖する。
【0064】
ここに記述した手順は狭窄部が1箇所の場合の治療であるが、必要であれば機械的拡張薬剤送達装置11が案内カテーテルに入っている同じ時に、その患者の狭窄のある別の血管を同じように単に機械的拡張薬剤送達装置11の末端側先端を処置した狭窄部から引き出し別の血管の狭窄部に同じように前進させ治療することができることは高く評価できる。
【0065】
本発明を使用することの利点は、治療部位の末端側に持続的に血液を流しながら、血管のある部分に長い時間にわたって治療物質または薬剤を送達できることである。
【0066】
前述のことから、インターベンション手順で部分的な血管の拡大またはステントの展開にバルーンカテーテルと同じように使用でき、手順中に末端側血管に血液を継続的に流す一方で、薬剤または治療物質の送達を達成できるという際立った利点を持つ機械的拡張薬剤送達装置が生まれた背景を知ることができる。このことは、組織の虚血を生じることなく長時間の血管拡張と薬剤送達を可能にしている。さらに、拡張薬剤送達装置は、被覆された拡張部材を介してまたはそのような物質を被覆したステントまたはプロテーゼを介して、冒された血管壁へ薬剤または治療物質を受動的もしくは能動的な送達のいずれかを提供する。さらに、機械的拡張薬剤送達装置は、既知の拡張時直径は状況に影響されないため、正確なサイズにすることができるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明を組み込んだ機械的拡張薬剤送達装置を部分的に断面で示した側面図である。
【図2】図1の線2−2での断面図である。
【図2a】図1の線2−2での断面図で、電気的接続手段も示している。
【図3】図1の線3−3での断面図である。
【図3a】図1の線3−3での断面図で、電気的接続手段も示している。
【図4】図1の線4−4での断面図である。
【図5】図1の線5−5での断面図である。
【図5a】図1の線5−5の部分での断面図で、電気的接続手段も示している。
【図6】図1の線6−6の部分の断面図である。
【図6a】図1の線6−6の部分の断面図で、電気的接続手段も示している。
【図7】部分的に拡張した状態の機械的拡張薬剤送達装置の部分の拡大図である。
【図8a】発明のカテーテルおよび末端メッシュでイオン泳動法および電気穿孔法に使用する様々な電気波形を示す。
【図8b】発明のカテーテルおよび末端メッシュでイオン泳動法および電気穿孔法に使用する様々な電気波形を示す。
【図8c】発明のカテーテルおよび末端メッシュでイオン泳動法および電気穿孔法に使用する様々な電気波形を示す。
【図8d】発明のカテーテルおよび末端メッシュでイオン泳動法および電気穿孔法に使用する様々な電気波形を示す。
【図8e】発明のカテーテルおよび末端メッシュでイオン泳動法および電気穿孔法に使用する様々な電気波形を示す。
【図8f】発明のカテーテルおよび末端メッシュでイオン泳動法および電気穿孔法に使用する様々な電気波形を示す。
【図9】迅速交換技術とともに使用することができる、本発明を組み込んだ機械的拡張薬剤送達装置の別の実施形態の部分側面図。
【図9A】機械的拡張薬剤送達装置の迅速交換の実施形態の拡大側面図で、内部および外部伸張チューブが通っているガイドワイヤー挿入ポートを示している。
【図10】図1から図9に示す装置の末端側先端の側面図で、末端側先端の拡張部材が拡張した状態を示している。
【図11】フレキシブル伸張エレメントの断面図で、治療物質または薬剤が血管壁に受動的または電気的に能動的に放散しているところを示している。
【図12】拡張メッシュ内の内部チューブに取り付けられているバンドから治療物質または薬剤が放散しているところを示す断面図である。
【図13】拡張メッシュのフレキシブル伸張エレメントの一つの断面図で、伸張エレメントから治療物質または薬剤が受動的または電気的に能動的に放散しているところを示している。
【図14】拡張メッシュのフレキシブル伸張エレメントの一つの断面図で、伸張エレメントに被覆された基質中の治療物質または薬剤が受動的または電気的に能動的に放散しているところを示している。
【図15】拡張メッシュのフレキシブル伸張エレメントの一つの断面図で、電気的な力で治療物質または薬剤が放散しているところを示している。
【図16】図16は、フレキシブル伸張エレメントの断面図で、治療物質または薬剤が血管壁に受動的または電気的に能動的に放散しているところを示している。
【符号の説明】
【0068】
11 機械的拡張薬剤送達装置
31 拡張部材
32 基端側端部
33 末端側端部
36 フレキシブル伸張エレメント
40 薬剤
43 基質
52 ルーメン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管または体内流路の閉塞の拡張および薬剤送達のための装置であって、
末端側端部および基端側端部を有するカテーテルと、
上記カテーテルの末端側端部に位置する実質的に円筒形の拡張部材で、第一端および第二端を有し、上記第一端は上記第二端から距離が離れている拡張部材と、
上記第一の距離を変えるための上記拡張部材の第一端および第二端に係合可能な変更手段であって、上記拡張部材が第一直径で特徴付けられる第一形態と、上記拡張部材が上記第一直径よりも大きい第二直径で特徴付けられる第二形態の間で上記拡張部材を動かす変更手段と、
上記拡張部材の少なくとも一部を被覆した治療物質または薬剤と
を備える、装置。
【請求項2】
上記拡張部材は、上記拡張部材の上記第一端と上記第二端の間で流路を画定する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
上記拡張部材は、第一の方向に螺旋状に巻回された複数の第一可撓性長尺部材と、第二の方向に螺旋状に巻回された複数の第一可撓性長尺部材とを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
上記拡張部材は上記拡張部材が上記第一直径または上記第二直径のいずれの状態にあっても血液灌流を許可する請求項1に記載の装置。
【請求項5】
上記治療物質または薬剤は治療作用のない基質に組み込まれている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
上記治療物質または薬剤は、アスパラギン酸−フェニルアラニン−プロリン−アルギニン−クロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗物質、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、ヒルジン(hirudin)、ヒルログ(hirulog)、アェニルアラニン−プロリン−アルギニン−クロロメチルケトン(Pパック(Ppack))、第VIIa因子、第Xa因子、アスピリン、クロプリドグレル、チクロピリジン、プロスタグランジン阻害物質、血小板阻害物質、ダニ抗血小板ペプチド、それらの組み合わせの群から選択した抗凝固剤である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
上記治療物質または薬剤は、成長因子刺激物質、成長因子受容体作動物質、転写活性化物質、翻訳促進物質、それらの組み合わせの群から選択した血管細胞成長促進因子である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
上記治療物質または薬剤は、成長因子阻害物質、成長因子受容体拮抗物質、転写抑制物質、翻訳抑制物質、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、複製阻害物質、抑制に働く抗体、成長因子に対する抗体、成長因子と細胞毒性因子からなる二重機能分子、抗体と細胞毒性因子からなる二重機能分子、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、それらの組み合わせの群から選択した血管細胞成長抑制因子である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
上記治療物質または薬剤は、コレステロール低下物質、血管拡張物質、内因性血管作用機構を阻害するエストロゲン、テストステロン、ステロイドホルモン、コルチゾール、デキサメサゾン、コルチコステロイド、甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモン類似物質、甲状腺ホルモン拮抗物質、副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、甲状腺放出因子、甲状腺放出因子類似物質、甲状腺放出因子拮抗物質、それらの組み合わせの群から選択したものである、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
上記治療物質または薬剤は、細胞内カルシウム結合タンパクを修飾する物質、収縮作動物質に対する受容体遮断物質、ナトリウム/水素交互輸送機構の阻害物質、プロテアーゼ阻害物質、ニトロ血管拡張物質、ホスホジエステラーゼ阻害物質、フェノチアジン、成長因子受容体作動物質、抗細胞分裂物質、免疫抑制物質、プロテインキナーゼ阻害物質、それらの組み合わせの群から選択した平滑筋阻害物質である、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
上記治療物質または薬剤は、細胞増殖を抑制する化合物であるパクリタクセル、ラパマイシン、シロリムス、アクチノマイシンD、メソトレキセート、ドキソルビシン、シクロフォスファミド、5−フルオロウラシル、それらの組み合わせの群から選択したものである、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも上記拡張部材の一部を被覆する複数の治療物質または薬剤を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
上記カテーテルの長軸方向全体にわたって存在するルーメンをさらに備え、上記ルーメンは、前記拡張部材内に終端がある末端側端部を備え、かつ薬剤を送達可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
血管または体内流路の閉塞の拡張および薬剤送達のための装置であって、
末端側端部および基端側端部を有するカテーテルと、
上記カテーテルの末端側端部に位置する実質的に円筒形の拡張部材で、第一端および第二端を有し、上記第一端は上記第二端から距離が離れている拡張部材と、
上記第一の距離を変えるための上記拡張部材の第一端および第二端に係合可能な変更手段であって、上記拡張部材が第一直径で特徴付けられる第一形態と、上記拡張部材が上記第一直径よりも大きい第二直径で特徴付けられる第二形態の間で上記拡張部材を動かす変更手段と、
上記カテーテルを長手方向に貫通して延び、上記拡張部材に係合する一つまたは複数の電気リード線と、
上記拡張部材を被覆する薬剤と
を備える、装置。
【請求項15】
上記拡張部材は、上記拡張部材の上記第一端と上記第二端の間で流路を画定する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
上記拡張部材は、第一の方向に螺旋状に巻回された複数の第一可撓性長尺部材と、第二の方向に螺旋状に巻回された複数の第一可撓性長尺部材とを備える、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
上記拡張部材は上記拡張部材が上記第一直径または上記第二直径のいずれの状態にあっても血液灌流を許可する請求項14に記載の装置。
【請求項18】
上記拡張部材は上記拡張部材が上記第一直径または上記第二直径のいずれの状態にあっても血液灌流を許可する請求項14に記載の装置。
【請求項19】
上記治療物質または薬剤は、アスパラギン酸−フェイルアラニン−プロリン−アルギニンクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗物質、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、ヒルジン、ヒルログ、フェイルアラニン−プロリン−アルギニン(Pパック)、第VIIa因子、第Xa因子、アスピリン、クロプリドグレル、チクロピリジン、プロスタグランジン阻害物質、血小板阻害物質、ダニ抗血小板ペプチド、それらの組み合わせの群から選択した抗凝固剤である、請求項14に記載の装置。
【請求項20】
上記治療物質または薬剤は、成長因子刺激物質、成長因子受容体作動物質、転写活性化物質、翻訳促進物質、それらの組み合わせの群から選択した血管細胞成長促進因子である、請求項14に記載の装置。
【請求項21】
上記治療物質または薬剤は、成長因子阻害物質、成長因子受容体拮抗物質、転写抑制物質、翻訳抑制物質、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、複製阻害物質、抑制に働く抗体、成長因子に対する抗体、成長因子と細胞毒性因子からなる二重機能分子、抗体と細胞毒性因子からなる二重機能分子、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、それらの組み合わせの群から選択した血管細胞成長抑制因子である、請求項14に記載の装置。
【請求項22】
上記治療物質または薬剤は、コレステロール低下物質、血管拡張物質、内因性血管作用機構を阻害するエストロゲン、テストステロン、ステロイドホルモン、コルチゾール、デキサメサゾン、コルチコステロイド、甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモン類似物質、甲状腺ホルモン拮抗物質、副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、甲状腺放出因子、甲状腺放出因子類似物質、甲状腺放出因子拮抗物質、それらの組み合わせの群から選択したものである、請求項14に記載の装置。
【請求項23】
上記治療物質または薬剤は、細胞内カルシウム結合タンパクを修飾する物質、収縮作動物質に対する受容体遮断物質、ナトリウム/水素交互輸送機構の阻害物質、プロテアーゼ阻害物質、ニトロ血管拡張物質、ホスホジエステラーゼ阻害物質、フェノチアジン、成長因子受容体作動物質、抗細胞分裂物質、免疫抑制物質、プロテインキナーゼ阻害物質、それらの組み合わせの群から選択した平滑筋阻害物質である、請求項14に記載の装置。
【請求項24】
上記治療物質または薬剤は、細胞増殖を抑制する化合物であるパクリタクセル、ラパマイシン、シロリムス、アクチノマイシンD、メソトレキセート、ドキソルビシン、シクロフォスファミド、5−フルオロウラシル、それらの組み合わせの群から選択したものである、請求項14に記載の装置。
【請求項25】
上記カテーテルの長軸方向全体にわたって存在するルーメンをさらに備え、上記ルーメンは、前記拡張部材内に終端がある末端側端部を備え、かつ薬剤を送達可能である、請求項14に記載の装置。
【請求項26】
少なくとも上記拡張部材の一部を被覆する複数の治療物質または薬剤を備える、請求項14に記載の装置。
【請求項27】
上記電気リード線は、イオン泳動法により上記薬剤または治療物質を標的の組織内に移動させるために、上記拡張部材に電気エネルギーを送ることができる、請求項14に記載の装置。
【請求項28】
上記電気リード線は、電気穿孔法により上記薬剤または治療物質を標的の組織内に移動させるために、上記拡張部材に電気エネルギーを送ることができる、請求項14に記載の装置。
【請求項29】
上記電気リード線は、イオン泳動法および電気穿孔法の両方により上記薬剤または治療物質を標的組織内に移動させるために、上記拡張部材に電気エネルギーを送ることができる、請求項14に記載の装置。
【請求項30】
上記電気リード線は、上記薬剤または治療物質を電気的に上記拡張部材に結合させるために、上記拡張部材に電気エネルギーを送ることができる、請求項14に記載の装置。
【請求項31】
機械的拡張および薬剤送達装置であって、
末端側端部および基端側端部を有し、かつ一つまたは複数のルーメンを有するカテーテルと、
上記末端側端部に位置し血管の閉塞を拡張する拡張可能なメッシュであって、第一収縮直径および第二拡張直径を有し、この第二拡張直径は第一収縮直径よりも大きいものであるメッシュと
を備え、
血液または体液を上記拡張可能なメッシュを通って流れさせながら、上記閉塞を拡張し、薬剤に上記閉塞を曝露させる、装置。
【請求項32】
体内流路の閉塞の拡張と薬剤送達のための方法であって、
機械的拡張カテーテルを予め定めた体内流路の部位まで前進させ、このカテーテルは薬剤で被覆された実質的に円筒状の拡張部材を有し、この拡張部材はこの拡張部材が径方向への第一寸法により画定される第一収縮形態と、この拡張部材が径方向への第二寸法により画定される第二拡張形態の間を移動可能である段階と、
上記被覆された拡張部材に軸方向の力を加えて、上記拡張部材を第一収縮状態と第二拡張状態の間で移動させ、第二拡張状態で拡張部材が上記閉塞または体内流路を拡張し、薬剤を上記閉塞または体内流路に送達する段階と
を備える方法。
【請求項33】
体内流路中でガイドワイヤーを位置決めする段階をさらに備え、上記の前進の段階は上記拡張部材を上記ガイドワイヤーに通すことによってなされる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記拡張の段階の後に、上記拡張部材が予め決められた時間だけ第二拡張形態を保ち閉塞性病変部に薬剤をさらに曝露させる段階をさらに備える、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
体内流路の閉塞の拡張と薬剤送達のための方法であって、
機械的拡張カテーテルを予め定めた体内流路の部位まで前進させ、上記カテーテルは薬剤で被覆された拡張部材とイオン泳動輸送手段を有し、この拡張部材はこの拡張部材が径方向への第一寸法により画定される第一収縮形態と、この拡張部材が径方向への第二寸法により画定される第二拡張形態の間を移動可能である段階と、
上記被覆された拡張部材に軸方向の力を加えて、上記拡張部材を第一収縮状態と第二拡張状態の間で移動させ、第二拡張状態で上記閉が拡張される段階と、
上記イオン泳動手段に電流を流し、薬剤を上記閉塞または体内流路に送達する段階と
を備える方法。
【請求項36】
体内流路中でガイドワイヤーを位置決めする段階をさらに備え、上記の前進の段階は上記拡張部材を上記ガイドワイヤーに通すことによってなされる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
上記拡張部材が予め決められた時間だけ第二拡張形態を保ち閉塞性病変部に薬剤をさらに曝露させる段階をさらに備える、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
イオン泳動法にて上記薬剤が移動する速度を制御する波形を提供するため、時間とともに電流を変動させる段階をさらに備える、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
上記カテーテルを前進させる前に、上記薬剤または治療物質を拡張部材に電気的に結合させるため、上記拡張部材に電気エネルギーを供給する段階をさらに備える、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
体内流路の閉塞の拡張と薬剤送達のための方法であって、
機械的拡張カテーテルを予め定めた体内流路の部位まで前進させ、上記カテーテルは薬剤で被覆された拡張部材と電気穿孔法輸送手段を有し、この拡張部材はこの拡張部材が径方向への第一寸法により画定される第一収縮形態と、この拡張部材が径方向への第二寸法により画定される第二拡張形態の間を移動可能である段階と、
上記被覆された拡張部材に軸方向の力を加えて、上記拡張部材を第一収縮状態と第二拡張状態の間で移動させ、第二拡張状態で上記閉が拡張される段階と、
上記電気穿孔法輸送手段に電流を流し、薬剤を上記閉塞または体内流路に送達する段階と
を備える方法。
【請求項41】
体内流路中でガイドワイヤーを位置決めする段階をさらに備え、上記の前進の段階は上記拡張部材を上記ガイドワイヤーに通すことによってなされる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
上記拡張部材が予め決められた時間だけ第二拡張形態を保ち閉塞性病変部に薬剤をさらに曝露させる段階をさらに備える、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
電気穿孔法にて上記薬剤が移動する速度を制御する波形を提供するため、時間とともに電流を変動させる段階をさらに備える、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
上記カテーテルを前進させる前に、上記薬剤または治療物質を拡張部材に電気的に結合させるため、上記拡張部材に電気エネルギーを供給する段階をさらに備える、請求項40に記載の方法。

【図1】
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【図4】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2006−511270(P2006−511270A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563561(P2004−563561)
【出願日】平成14年6月26日(2002.6.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/035414
【国際公開番号】WO2004/058320
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(504206230)
【氏名又は名称原語表記】Jerome Segal
【出願人】(504206241)
【氏名又は名称原語表記】Neal Scott
【Fターム(参考)】