説明

流体圧力調整装置

【課題】新規な構造と機構を有する、精密制御で、誤作動のない、供給能力が十分でなかったり、供給側の圧力変動が大きい場合でも、安定した供給が可能になる流体圧力調整装置を提供することである。
【解決手段】体流路の一次側と二次側の間に設けられ、二次側流体圧力を所定範囲に保持するための流体圧力調整装置において、二次圧力又は一次圧力を測定するために二次側又は一次側の流路に圧力センサを設け、該圧力センサで測定した圧力信号を、演算部を有する制御回路に送り、一次側と二次側の間に、ソレノイドに直結した圧力調整弁を設け、その流路特性に適するように、流路特性を配慮して演算して得た制御信号により該ソレノイドを制御する制御回路を有することを特徴とする電子式流体圧力調整装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次側と二次側の間に設けられ、二次側の流体圧力を調整する電子式圧力調整装置、特に、ガス、水などの流体の圧力を調整するための電子式圧力調整装置に関する。即ち、本発明は、特に、新規な構造と機構を有する、精密制御で、誤作動のない電子式圧力調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の流体圧力調整装置では、流体通路の一次側と二次側の間の圧力差から調整されていた。すなわち、二次側の流体圧力をダイヤフラムなどに作用する二次側圧力の変動に追従してバルブの開度を調整し、二次側の流体圧力を所定範囲に保つものであった(特許文献1参照)。
このような構成の圧力調整装置では、ロックアップ、シフト、オフセット(以下に図1により説明する)について構造上克服できないことがある。そのために、例えば、ガス供給施設において、季節やピ−ク時間帯により、供給能力が十分でない場合には、要求される特性が確保できなくなり、対応コストの増加に結び付くものとなる。
【0003】
例えば、図1は、流体の流量(Q)と調節出口圧力(二次圧力P)の関係を グラフに表示したものである。オフセットは、基準流量Qsのときに二次圧力を Psに設定したとして、流量が増加すると、二次圧力が低くなることをオフセッ トと称する。また、流量が0になった時の締切圧力が基準圧力より高くなることをロックアップと称する。そして、一次圧力が何らかにより変化することにより、二次圧力に変化が生ずることをシフトと称する。従来の圧力調整装置では、これらがつきものであった。
【特許文献1】特開2004−310289
【特許文献2】特許3563829号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、以上のような従来の圧力調整装置の短所を解消することである。すなわち、上記のようなロックアップ、シフト、オフセットの問題が生じないようにした圧力調整装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、次のような解決手段により、圧力調整特性のすぐれた、安価に製造できる、電子式圧力調整装置を提供する。
(1) 流体流路の一次側と二次側の間に設けられ、二次側流体圧力を所定範囲に保持するための流体圧力調整装置において、二次圧力又は一次圧力の測定のために各々二次側又は一次側の流路に圧力センサを設け、該圧力センサで測定した圧力信号を、演算部を有する制御回路に送り、一次側と二次側の間に、ソレノイドに直結した圧力調整弁を設け、その流路特性に適するように、流路特性を配慮して演算して得た制御信号により該ソレノイドを制御する制御回路を有することを特徴とする電子式流体圧力調整装置である。
(2)そのソレノイドには、その位置を測定する位置測定センサを備え、それにより得られた位置信号も該制御回路の演算部に送り、ソレノイド位置をフィ−ドバック制御を行う(1)の電子式流体圧力調整装置。
【0006】
(3) 一次側及び二次側の圧力を測定する圧力センサからの信号、該圧力調整弁の位置を測定する位置測定センサからの信号から流量を演算し遠隔へ送り、および圧力調整のためのソレノイド操作のための信号を遠隔され受け取り、操作状況を監視し、圧力調整弁を遠隔操作し、所定の適切な圧力での運転を遠隔設定する遠隔操作通信手段を備えることを特徴とする電子式流体圧力調整装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の流体圧力調整装置は、以上のようなロックアップ、シフト、オフセットのようなことのない圧力調整装置を提供する。
即ち、供給能力が十分でなかったり、供給側の圧力変動が大きい場合でも、安定した供給が可能になる流体圧力調整装置が得られる。
【0008】
更に、本発明の流体圧力調整装置により、次のような技術的効果が得られた。(1)二次圧力を制御する調整弁位置を測定することにより、更に、二次圧力調整にフィ−ドバック制御を加えることができる。そのために、目標の設定値に二次圧力を更に、精度よく制御できる。
(2)二次圧力の変化速度に応じて圧力調整弁の開閉速度をスピ−ド制御することができ、そのために、応答性を高め、圧力調整特性を更に、改善することができる。
(3)高温や低温のような厳しい環境下でも動作特性を安定することができる。
(4)大気圧以外の環境でも対応できる。
(5)遠隔監視、遠隔操作が可能になる。使用流量に対応して、遠隔で操作出力することができ、また、遠隔で弁を締め切ることができ、その状態を監視できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の流体圧力調整装置は、流体流路の一次側と二次側の間に設けられ、二次側流体圧力を所定範囲に保持するための流体圧力調整装置であり、先ず、二次圧力又は一次圧力を測定するために二次側又は一次側の流路に圧力センサを設け、該圧力センサで測定した圧力信号を、演算部を有する制御回路に送り、一次側と二次側の間に、ソレノイドに直結した圧力調整弁を設け、その流路特性に適するように、流路特性を配慮して演算して得た制御信号により該ソレノイドを制御する制御回路を有することを特徴とする電子式流体圧力調整装置を提供する。
そして、そのソレノイドには、ソレノイドの位置を測定する位置測定センサを備え、それにより得られた位置信号も該制御回路の演算部に送り、ソレノイド位置をフィ−ドバック制御を更に行うことができる。そして、本発明の流体圧力調整装置は、同時に、一次側及び二次側の圧力を測定する圧力センサからの信号、該圧力調整弁の位置を測定する位置測定センサからの信号から流量を演算し遠隔へ送り、および圧力調整のためのソレノイド操作のための信号を遠隔され受け取り、操作状況を監視し、圧力調整弁を遠隔操作し、所定の適切な圧力での運転を遠隔設定する遠隔操作通信手段を備えることができる電子式流体圧力調整装置となる
【0010】
以下、図2〜4を参照して、本発明の流体圧力調整装置を説明するが、本発明はそれに限定されないものである。以下、ガスを例にして説明するが、水、水道などの他の流体の圧力調整するシステムでも同様である。
図2は、本発明の流体圧力調整装置のための操作制御回路のブロック図である。すなわち、図3のAに示す圧力センサ(13)により測定して得られた圧力センサ信号は、信号変換されて、先ず、所定により設定された圧力に相当する信号値と比較器により比較され、制御回路に入力される。
一方、バルブ、即ち、ソレノイド鉄心の位置を検知する位置センサからの信号は、図示のようにフィ−ドバックされて制御回路に入力される。
【0011】
即ち、これらの圧力検知信号と所定の圧力(範囲)とバルブの位置信号が制御器に入力され、演算されて、ソレノイドを操作するための信号が出力され、或いはパワ−コントロールとして出力されて、ソレノイドを操作する。
【0012】
従って、前記に説明した信号変換、比較器、制御器、フィ−ドバック、パワ−コントロールなどにより、本発明による制御回路が構成されることは明らかである。
これらからなる制御回路は、電気回路であり、データの入力と出力を行えばよいのだから、遠隔操作、遠隔設定、遠隔監視が可能である。その1例として、遠隔からの操作、設定、監視の出力と入力と様子を括弧書きで図2に加えた。
【0013】
次に、図3は、本発明の電子式圧力調整装置の制御機能の説明と運転スキ−ムを示す図である。すなわち、図3のAは、制御方式を説明するための制御ブロック図である。すなわち、圧力センサ(11)又は点線で示した圧力センサ(11‘)により測定して得られた信号は、信号変換器−比較器を介して(以上は図2で説明した)、制御器(12)に送られる。制御器(12)は、図4の圧力調整弁に結合されたソレノイドを操作する適切な信号を出力し、ソレノイド(13)を操作し、ソレノイド可動鉄心、即ち、バルブを摺動させて、圧力調整弁を適切な位置に移動させる。
【0014】
更に、移動されたソレノイド可動鉄心(図4の3)の位置を位置センサにより検知して、その信号をフィ−ドバックさせて、より正確に、圧力調整弁の位置を操作することができる。
例えば、都市ガスを供給する場合、通常、1.0MPa未満の圧力で一 次側にガスが供給され、本発明の圧力調整装置を介して、圧力が落とされて、各需要家に供給される。そして、このようなシステムにおいて、需要家のガス使用量が急増すると、圧力が低下し、圧力センサ(11)によりその圧力低下が検知され、その信号を介して制御回路が信号を、ソレノイド(13)に送り、圧力調整弁を開き、二次側の圧力を高めることができる。
【0015】
そして、図3Bは、本発明の流体圧力調整装置の運転様式を説明するものである。すなわち、都市ガス供給システムにおいて、例えば、需要家のガス使用状況が、冬季節の大寒などに、急に使用量が増加したとすると、二次圧力は当然低下していく。すると、本発明の流体圧力調整装置に設けた圧力センサが検知する出力は、低下する。そして、制御回路は、その出力信号電圧を高めると、圧力調整弁を開く。すると、二次側の圧力が高まり、所定の圧力の範囲に戻ることができる。
【0016】
反対に、都市ガスの需要家のガス使用状況が変化し、使用量が急に減少すると、二次圧力は上昇し、すると、圧力センサの出力は上昇する。そして、圧力センサからの出力の上昇が、制御器に届くと、制御器からの制御信号が減少される。すると、ソレノイドにより電子圧力調整弁が締まる方向に動く。すると、二次圧力は減少していく。そして、二次側の圧力は元に戻り、所定範囲の圧力で運転することができる。
【0017】
図3Aでの圧力調整弁の具体的な構造は、図4に示される。先ず、一次側Aから二次側Bに流体は流れる。その間に、4と5により、調整弁を形成する。4の部材は、ソレノイドの可動鉄心(3)に直結されている。ソレノイドは、この可動鉄心(3)すなわち、磁石と、その周りのソレノイドコイル(2)からなり、鉄心( 3)には、図示のように、スプリング(6)が設けられる。即ち、そのソレノイド コイル(2)、鉄心(3)、スプリング(6)がバルブを構成することとなる。このバルブを、測定した圧力、測定したバルブの位置、設定した圧力、所定の圧力範囲などのデータに従って、摺動され、二次側圧力を調整することができる。ソレノイドすなわち、バルブを操作する電線は、7で示される。可動鉄心(3)は、図示のように、調整弁(4)に結合されており、即ち、バルブを成す、それが上下に摺動することにより、調整弁を閉めたり、開けたりすることができる。
【0018】
ソレノイド鉄心、即ち、バルブの位置は、図の8で示される位置センサにより測定される。測定された信号は、制御部に送られ、ソレノイドを操作する信号に合体され、より正確に、バルブの位置を操作することができる。即ち、制御回路は、位置制御コントローラーでもある。このような構造のバルブなので、バルブを全開にできるし、同時に全閉にも、図示のスプリング(6)により可能である。
この摺動するソレノイド鉄心の重量とリタ−ンスプリングのバランスを考えて設計することが好適である。
【0019】
使用するソレノイドは、リニア型が好適である。即ち、任意位置制御が可能になるからである。開閉速度をより迅速にでき、圧力調整が一次圧力の急速な変化に対応できるからである。これは、二次圧力の変化速度に応じて圧力調整弁の開閉速度をスピ−ド制御しなければならない場合に、圧力調整装置の応答性を高めることができ、本発明の圧力調整装置の圧力調整特性を更に、改善する。
【0020】
本発明の流体圧力調整装置においては、二次側の圧力を測定して、それをフィ−ドバック制御するばかりでなく、さらに、バルブ即ち、調整弁の位置を測定することにより、フィ−ドバック制御を加えることにより、更に精度よく制御するものである。更に、圧力調整圧力を高温や低温のような厳しい環境下で使用する場合でも、耐温性や耐寒性の装置に容易にすることができるために、そのような場合でも、圧力調整装置の動作特性を安定できる。
また、従来は、圧力調整装置は、原則的に大気圧下で使用することが前提であるが、本発明の圧力調整装置でも、電気的な制御であるために、大気圧以外の環境でも対応する。
【産業上の利用可能性】
【0021】
産業上の利用可能性は、供給能力が十分でなかったり、供給側の圧力変動が大きい場合でも、安定した供給が可能になる流体圧力調整装置が得られることである。
更に、本発明の流体圧力調整装置により、次のような産業上の利用可能性がある。即ち、二次圧力を制御する弁の現在置を測定することにより、二次圧力調整にフィ−ドバック制御を加え、より正確に、目標の設定値に二次圧力を制御できる。また、二次圧力の変化速度に応じて圧力調整弁の開閉速度をスピ−ド制御することができ、そのために、応答性を高め、圧力調整特性を更に、改善することができる。更に、装置を使用環境が高温や低温のような厳しい場合でも動作特性を安定することができる。従来の圧力調整装置と異なり大気圧以外の環境でも対応できる。そして、遠隔監視、遠隔操作が可能になり、使用流量に対応して、遠隔で操作出力することができ、また、遠隔で弁を締め切ることができ、その状態を監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来技術による流体圧力調整装置でのよく見られる二次側の圧力と流量の関係を示すグラフである。
【図2】本発明の流体圧力調整装置の制御回路のブロック図を示す。
【図3】本発明の流体圧力調整装置に使用される具体的な制御ブロック図と運転サイクルの一例を示す。
【図4】本発明の流体圧力調整装置に使用される圧力調整弁即ち、バルブの一例の断面を示す。
【符号の説明】
【0023】
1 流体圧力調整弁 2 ソレノイドコイル
3 ソレノイド可動鉄心 4 バルブ
5 対応するバルブブロック 6 スプリング
7 ソレノイド操作ワイヤ 8 位置センサのためのワイア
A 一次側 B 二次側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流路の一次側と二次側の間に設けられ、二次側流体圧力を所定範囲に保持するための流体圧力調整装置において、
二次圧力又は一次圧力の測定のために、各々二次側又は一次側の流路に圧力センサを設け、
該圧力センサで測定した圧力信号を、演算部を有する制御回路に送り、
一次側と二次側の間に、ソレノイドに直結した圧力調整弁を設け、
その流路特性に適するように、流路特性を配慮して演算して得た制御信号により該ソレノイドを制御する制御回路を有することを特徴とする電子式流体圧力調整装置。
【請求項2】
該ソレノイドには、該ソレノイドの位置を測定する位置測定センサを備え、それにより得られた位置信号を該制御回路に送り、ソレノイド位置をフィ−ドバック制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の電子式流体圧力調整装置。
【請求項3】
一次側及び二次側の圧力を測定する圧力センサからの信号、該圧力調整弁の位置を測定する位置測定センサからの信号から流量を演算し遠隔へ送り、および圧力調整のためのソレノイド操作のための信号を遠隔され受け取り、操作状況を監視し、圧力調整弁を遠隔操作し、所定の適切な圧力での運転を遠隔設定する遠隔操作通信手段を備えることを特徴とする請求項1或いは2に記載の電子式圧力調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−26056(P2007−26056A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206911(P2005−206911)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000151759)株式会社東邦製作所 (3)
【出願人】(000142078)株式会社協成 (21)
【Fターム(参考)】