説明

液晶表示パネル

【課題】バックライトを使用する液晶表示パネルにおいて、対向基板のブラックマトリク
スないしカラーフィルタからの反射光に起因するTFTの光リーク電流を減少させてフリ
ッカを抑制するとともに良好なコントラストが得られる液晶表示パネルを提供すること。
【解決手段】マトリクス状に配列した走査線と信号線とで囲まれる各画素領域に画素電極
16及び薄膜トランジスタTFTを配置したアレイAR基板と、ブラックマトリクスBM
及びカラーフィルタ26を備えたカラーフィルタ基板CFとを有する液晶表示パネル10
Aにおいて、前記薄膜トランジスタTFTの表面に絶縁膜20を介して光吸収層30を形
成したことを特徴とする。この光吸収層30としては、各画素領域の画素電極が対向する
カラーフィルタの色とは異なる色のカラーフィルタ層30、30、30又はアモル
ファスシリコン層とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルに関し、特にブラックマトリクスないしカラーフィルタから
の反射光に起因する薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)の光リーク電流
を減少させてフリッカを抑制するとともに良好なコントラストが得られる液晶表示パネル
に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信機器のみならず一般の電子機器においても液晶表示パネルの適用が急速
に普及している。この液晶表示パネルは自ら発光することがないので、基板の裏面側にバ
ックライトを設けた透過型の液晶表示パネルが多く用いられている。
【0003】
以下では、従来から用いられている一般的な透過型液晶表示パネルについて図4及び図
5を参照して説明する。なお、図4は従来の液晶表示パネル10Cにおけるアレイ基板の
1サブ画素分部分を拡大して表した概略平面図、図5は図4のA−A線で切断した断面図
である。
【0004】
この液晶表示パネル10Cは、アレイ基板ARと、このアレイ基板ARに対向配置され
たカラーフィルタ基板CFと、両基板間に封入された液晶LCとから構成されている。こ
のうち、アレイ基板ARは、ガラス基板等の透明基板11の表面にマトリクス状に形成さ
れた複数本の走査線12及び信号線13と、これらの複数本の走査線12間に設けられた
走査線12と平行な複数本の補助容量線14及び補助容量電極14aと、ソース電極S、
ゲート電極G、ドレイン電極D、及び半導体層15とからなるTFTと、走査線12と信
号線13とで囲まれた領域を覆う画素電極16と、が設けられている。
【0005】
そして、走査線12、ゲート電極G、補助容量線14及び露出している透明基板11の
表面は第1層目の絶縁膜18及び第1の絶縁膜18よりも薄い第2の絶縁膜19によって
被覆され、補助容量電極14aは第2の絶縁膜19によってのみ被覆されている。このよ
うな構成を採用すると、補助容量電極14aとドレイン電極Dとの間で補助容量が形成さ
れるが、この補助容量は薄い第2層目の絶縁膜19のみが誘電体として機能するため、補
助容量が極めて大きくなる。
【0006】
第2の絶縁膜19の表面には、半導体層15、ソース電極S及びドレイン電極Dからな
るTFTが形成されているとともに、信号線13も形成されており、更にこれらの表面全
体が保護絶縁膜20によって被覆されている。この保護絶縁膜20の表面には層間膜(平
坦化膜ともいわれる)21が形成され、補助容量電極14a上に位置する保護絶縁膜20
及び平坦化膜21の表面にはコンタクトホール22が形成され、このコンタクトホール2
2を介して平坦化膜21上に形成されたITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Z
inc Oxide)等の透明電極からなる画素電極16がドレイン電極Dと電気的に接続されて
いる。
【0007】
一方、カラーフィルタ基板CFは、ガラス等の透明基板25上に形成されたブラックマ
トリクスBMと、カラーフィルタ26と共通電極27とを備えている。このうち、ブラッ
クマトリクスBMは、各画素の境界に沿って設けられ、例えば透明基板25側に低反射性
クロム層により形成されている。
【0008】
このような構成の液晶表示パネル10Cは、別途図示しないバックライトと組み合わさ
れ、バックライトからの光の透過を画素電極16によって制御することによって所定の画
像を表示するようになっている。
【0009】
このバックライトとしては、近年は液晶表示パネルにおいても明るい表示が求められる
ようになってきていることから、高輝度(例えば10000cd)のものが使用されるよ
うになってきている。しかしながら、このような高輝度のバックライトを使用すると、そ
れに伴ってTFTがカラーフィルタ基板側のブラックマトリクスやカラーフィルタからの
反射光を受けて光リーク電流が流れることが見出されている。
【0010】
このような光リーク電流は、特に明るい光源を使用する液晶プロジェクタの場合に顕著
に見られ、例えば、下記特許文献1及び2に開示されている液晶プロジェクタ用の液晶表
示パネルにおいてもこのような光リーク電流に対処するための構成が開示されている。
【0011】
このうち、下記特許文献1に開示されている発明においては、液晶表示パネルの駆動用
のTFTを光から保護するための遮光膜として、クロム金属と反射率増加用の誘電体の薄
膜により構成されているものを使用した例が示されている。このうち、クロム金属は、光
の吸収性が良好であるが、高強度の光で照射されると温度が上昇して周囲の部材に悪影響
を与えるため、TiO、ZrO等の高屈折率の誘電体とMgF、SiO等の低屈
折率の誘電体を組み合わせて使用することにより干渉作用によってクロム金属に入射する
光の大部分を光源側に反射させるようにしている。
【0012】
また、下記特許文献2には、図6に示したように、第1基板51と第2基板52との間
に液晶層53が設けられた液晶プロジェクタ用の液晶表示パネル50において、照明光学
系から入射した光hによる光リーク電流を抑制するようになした液晶表示パネル50が示
されている。なお、図6は下記特許文献2に開示されている液晶表示パネル50の要部断
面図である。この液晶表示パネル50の第1基板51は、ガラスや石英などの光透過性を
有する透明基板54の一主面上に、下層側から順に、第1遮光膜55、第1層間膜56、
TFT57及び容量素子58、第2層間膜59、データ線60、第3層間膜61、第2遮
光膜62、第4層間膜64が設けられている。
【0013】
このうち、第1遮光膜55は、光照射による発熱を防止するためWSi、Ti、Mo、
Cr、又はこれら金属材料の合金等の光反射性を有する材料を用いて構成されており、T
FT57を透明基板54側から覆っている。また、第1遮光膜55上の第1層間膜56は
、膜厚600〜800nmの酸化シリコンからなり、第1遮光膜55を覆う状態で透明基
板54上に成膜されている。
【0014】
そして、この第1層間膜56上に形成されたTFT57は、第1層間膜56上にパター
ン形成された第1ポリシリコン層65中のソース/ドレイン66、この上部のゲート酸化
膜67、及び第2ポリシリコンをパターニングしてなるゲート電極68からなり、第1遮
光膜55によって完全に覆われる位置に配置されている。一方、容量素子58は、第1ポ
リシリコン層65を下部電極とし、第2ポリシリコンをパターニングして上部電極69と
し、第1遮光膜55及び第2遮光膜62の外側となる位置に設けられている。なお、これ
らのTFT57及び容量素子58を覆う第2層間膜59は、膜厚500nmの酸化シリコ
ン等の絶縁性材料からなる。
【0015】
また、この第2層間膜59上に形成されたAlのような導電性材料からなるデータ線6
0は、TFT57に対しての遮光膜を兼ねるように形成されている。そして、このデータ
線60を覆う第3層間膜61は第2層間膜59上に成膜された例えば酸化シリコン等の絶
縁性材料膜からなる。このような第3層間膜61上に形成された第2遮光膜62は、光照
射による発熱を防止するためにTi、W、Cr、Al又はこれら金属材料の合金等の光反
射性を有する材料を用いて構成される。この第2遮光膜62は、TFT57を第2基板5
2側から覆い、その端縁が、第1遮光膜55の端縁よりも画素開口領域a側に延設された
形状にパターン形成されている。また、この第2遮光膜62を覆う第4層間膜64は、例
えば酸化シリコンのような絶縁性材料膜からなる。
【0016】
そして、以上のような各構成要素で構成された第1基板51におけるTFT57形成面
側に、第2基板52を対向配置し、両基板間に液晶層53を充填保持させて、液晶表示パ
ネル50が構成されている。このような構成の液晶表示パネル50は、液晶プロジェクタ
装置の液晶ライトバルブとして用いられるものである。
【0017】
上述した構成の液晶表示パネル50を有する液晶プロジェクタ装置では、TFT57に
対して透明基板54側に設けられた第1遮光膜55よりもTFT57に対して第2基板5
2側に設けられた第2遮光膜62の端縁が画素開口領域a側に張り出した構成となってい
るため、第2基板52側から入射した光hが、第1遮光膜55に照射され難くなり、また
、遮光膜を兼ねるデータ線60も第1遮光膜55の端縁と第2遮光膜62の端縁とを結ぶ
線よりも内側に配置されているため、第2基板52側から画素開口領域に入射した光hは
データ線60に対しても照射され難くなる。
【0018】
このため、光hが、第1遮光膜55と第2遮光膜62との間において乱反射することが
防止され、この乱反射による光hがこれらの遮光膜55,62間に配置されたTFT57
に達することを防止でき、TFT57に光が照射されることによって生じる光リーク電流
を防止することが可能になり、フリッカやコントラストの低下などのない高画質な液晶表
示パネル及び液晶プロジェクタ装置を得ることが可能になるというものである。
【特許文献1】特開平 6−301023号公報(特許請求の範囲、段落[0010]〜[0011]、図2)
【特許文献2】特開2004−045783号公報(特許請求の範囲、段落[0012]〜[0035]、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述のように上記特許文献1及び2には、液晶表示パネルにおけるTFTの光リーク電
流を減少させるための構成が示されている。しかしながら、上記特許文献1及び2に開示
されている液晶表示パネルは、何れも液晶プロジェクタ用の液晶表示パネルであって、T
FTが形成されているアレイ基板側とは反対側の対向基板側から入射する光に基づくTF
Tの光リーク電流を抑制する技術に関するものであって、一般的なバックライトを使用す
る液晶表示パネルとは光の入射方向が反対側となっていることから、遮光部材は何れもT
FT側に入射する光を光源側に反射する機能を有するものが使用されている。
【0020】
そのため、上記特許文献1及び2には、これらの特許文献に示されている液晶プロジェ
クタ用の液晶表示パネルにカラーフィルタが存在していないこともあり、一般的なバック
ライトを使用する液晶表示パネルにおける対向基板側のブラックマトリクスやカラーフィ
ルタからの反射光に起因するTFTの光リーク電流について示唆する記載はない。しかし
ながら、上記特許文献1ないし2に示されている液晶プロジェクタ用の液晶表示パネルで
採用されているTFTの光リーク電流抑制技術を、一般的なバックライトを使用する液晶
表示パネルのブラックマトリクスやカラーフィルタからの反射光に起因するTFTの光リ
ーク電流抑制技術として採用することも考えられる。しかし、これはTFTの光リーク電
流の発生原因が両者間で相違していること、及び、遮光部材として反射部材を用いると外
部からの入射光を観察者側に反射することとなるために表示画質に悪影響を与えるので、
直ちには採用し難い。
【0021】
また、従来の液晶表示パネルは、対向基板側からの反射光が直接TFTに当たり、光リ
ークが生じていた。例えば、画素電極が対向するカラーフィルタの色が緑の場合、このカ
ラーフィルタからの反射光は緑色領域の光が多くなる。特に、人間の視感度が最も高い緑
領域の光は、僅かな発色でも人間の目に感じられる色である。そのため、TFTが光リー
クを起こすと、視感度の高い緑色領域の光が顕著に現れので、黒表示の際に緑がかった黒
の表示になり、表示不良等の原因となる。
【0022】
また、白表示の場合R,G,Bの3原色のカラーフィルタを使用した液晶表示パネルに
おいては、白表示をさせた際に緑の発色が相対的に少なくなるため、人の目には青と赤が
顕著になり紫色がかった白色の表示不良として現れる。
【0023】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、一般的
なバックライトを使用する液晶表示パネルにおいて、対向基板のブラックマトリクスない
しカラーフィルタからの反射光に起因するTFTの光リーク電流を減少させてフリッカを
抑制するとともに良好なコントラストが得られる液晶表示パネルを提供することを目的と
する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するため、本発明の液晶表示パネルは、マトリクス状に配列した走査線
と信号線とで囲まれる各画素領域に画素電極及び薄膜トランジスタを配置したアレイ基板
と、ブラックマトリクス及びカラーフィルタを備えたカラーフィルタ基板とを有する液晶
表示パネルにおいて、前記薄膜トランジスタの表面に絶縁膜を介して光吸収層を形成した
ことを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、上記液晶表示パネルにおいて、前記光吸収層は反射光を吸収する層で
あることを特徴とする
【0026】
また、本発明は、上記液晶表示パネルにおいて、前記光吸収層は前記各画素領域の画素
電極が対向するカラーフィルタの色とは異なる色のカラーフィルタ層からなることを特徴
とする。
【0027】
また、本発明は、上記液晶表示パネルにおいて、前記光吸収層はアモルファスシリコン
層からなることを特徴とする。
【0028】
また、本発明は、上記液晶表示パネルにおいて、前記光吸収層の表面には平坦化膜を介
して前記画素電極が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明は上記の構成を備えることにより、以下に述べるような優れた効果を奏する。す
なわち、本発明の液晶表示パネルによれば、TFTの表面が絶縁膜を介して少なくとも光
吸収層を形成したため、バックライトから入射した光がブラックマトリクスやカラーフィ
ルタによって反射することがあっても、この反射光はTFTの表面に設けられた光吸収層
によって吸収されるので、反射光によるTFTの光リーク電流は低下する。したがって、
ブラックマトリクスやカラーフィルタからの反射光に起因する発色が少なくなり、フリッ
カが少なく、コントラストが良好で、高表示画質の液晶表示パネルが得られる。
【0030】
また、本発明の液晶表示パネルの課題に挙げた、黒表示の際に緑がかった黒を表示する
表示不良の対策として、光吸収層を配置することにより、反射光に起因する緑色の発色が
少なくなる。
【0031】
したがって、本発明によれば、反射光がTFTの表面に設けられた光を吸収する層によ
って吸収されるため、光リーク電流に起因する緑色の画素領域の発光が少なくなり、より
フリッカが少なくなるとともに、コントラストが高く、色の純度が高い良好な表示画質の
液晶表示パネルが得られる。
【0032】
また、本発明によれば、各画素領域の画素電極が対向するカラーフィルタの色とは異な
る色のカラーフィルタ層をTFTの表面に設けるという簡単な構成で、上記本発明の効果
を奏する液晶表示パネルが得られる。すなわち、例えば、RGBの3原色のカラーフィル
タを使用した液晶表示パネルでは、Rのフィルタは赤色領域の光を透過させるが緑色領域
及び青色領域の光は吸収する。また、Gのフィルタは緑色領域の光を透過させるが赤色領
域及び青色領域の光は吸収する。同じく、Bのフィルタは青色領域の光を透過させるが赤
色領域及び緑色領域の光は吸収する。
【0033】
このように、TFTの表面に設ける光吸収層を各画素領域の画素電極が対向するカラー
フィルタの色とは異なる色のカラーフィルタ層で形成すれば、各画素領域の画素電極が対
向するカラーフィルタからの反射光は、光吸収層に効率的に吸収されるため、TFTの表
面には達しなくなるので、光リーク電流に起因する各画素領域の発光が少なくなる。なお
、本発明は、上述のように3原色のカラーフィルタを使用した液晶表示パネルの場合だけ
でなく、4色ないしはそれ以上のカラーフィルタを使用した液晶表示パネルの場合にも適
用できる。
【0034】
また、本発明によれば、アモルファスシリコン層をTFTの表面に設けるという簡単な
構成で上記本発明の効果を奏する液晶表示パネルが得られる。すなわちアモルファスシリ
コンは、青色領域及び緑色領域の光を選択的に吸収するから、光の吸収性に関しては実質
的に赤のカラーフィルタと類似の挙動をするため、TFTの表に赤のカラーフィルタ層を
設けた場合と同様の効果が得られる。
【0035】
また、本発明によれば、光吸収層の表面には平坦化膜を介して前記画素電極を形成した
ので、セルギャップが均一となるため、表示画質が良好な液晶表示パネルが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための最良の形態をRGBの3原色のカラーフィルタを使用し
た透過型の液晶表示パネルの場合を例にとって図面を参照しながら詳細に説明する。また
、以下に述べる各実施形態は本発明をここに記載したものに限定することを意図するもの
ではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行
ったものにも均しく適用し得るものである。なお、以下の各実施例の液晶表示パネルにお
ける1サブ画素分部分を拡大して表した概略平面図は実質的に図4に示した従来例のもの
と同様であるので、適宜図4を援用して説明することとする。また、図4及び図5に示さ
れた従来例の液晶表示パネル10Cと同一の構成部分には同一の参照符号を付与して説明
する。
【実施例1】
【0037】
実施例1の液晶表示パネルを図1及び図2を用いて説明する。なお、図1は実施例1に
係る液晶表示パネル10Aの図4のA−A線に対応する部分で切断した断面図であり、図
2は図4のA−A線に対応する部分で切断した1画素(3サブ画素)分の模式断面図であ
る。
【0038】
この実施例1の液晶表示パネル10Aが上述した従来例の液晶表示パネル10Cと構成
が相違する点は、TFTの表面に設けられている保護絶縁膜20と層間膜21との間に特
定の光吸収層30が設けられている点である。
【0039】
すなわち、実施例1の液晶表示パネル10Aは、従来例の液晶表示パネル10Cの場合
と同様に、アレイ基板ARと、このアレイ基板ARに対向配置されたカラーフィルタ基板
CFと、両基板間に封入された液晶LCとから構成されている。このうち、アレイ基板A
Rは、ガラス基板等の透明基板11の表面にマトリクス状に形成された複数本の走査線1
2及び信号線13と、これらの複数本の走査線12間に設けられた走査線12と平行な複
数本の補助容量線14及び補助容量電極14aと、ソース電極S、ゲート電極G、ドレイ
ン電極D、及び半導体層15とからなるTFTと、走査線12と信号線13とで囲まれた
領域を覆う画素電極16と、が設けられている。
【0040】
そして、走査線12、ゲート電極G、補助容量線14及び露出している透明基板11の
表面は第1層目の絶縁膜18及び第1の絶縁膜18よりも薄い第2の絶縁膜19によって
被覆され、補助容量電極14aは第2の絶縁膜19によってのみ被覆されている。そして
、第2の絶縁膜19の表面には、半導体層15、ソース電極S及びドレイン電極Dからな
るTFTが形成されているとともに、信号線13も形成されており、更にこれらの表面全
体が保護絶縁膜20によって被覆されている。
【0041】
そして、この保護絶縁膜20の表面には、TFT部分を被覆するように特定のカラーフ
ィルタ層からなる光吸収層30が形成されており、この光吸収層30の表面及び露出して
いる保護絶縁膜20の表面には層間膜21が形成され、補助容量電極14a上に位置する
保護絶縁膜20及び平坦化膜21の表面にはコンタクトホール22が形成され、このコン
タクトホール22を介して平坦化膜21上に形成されたITOやIZO等の透明電極から
なる画素電極16がドレイン電極Dと電気的に接続されている。なお、実施例1の液晶表
示パネル10Aにおける特定の色のカラーフィルタ層からなる光吸収層30の詳細につい
ては後述する。
【0042】
この実施例1の液晶表示パネル10Aのアレイ基板ARは、以下のようにして作製され
る。先ず、透明基板11上に所定厚のアルミニウムあるいはこれらの合金等からなる導電
物質層を成膜した後、パターニングして横方向に伸びる複数本の走査線12と、これら複
数本の走査線12の間の補助容量線14と、走査線12から伸びるゲート電極Gと、補助
容量線14の一部を幅広とすることにより補助容量電極14aとを形成する。
【0043】
次に、走査線12と補助容量線14が形成された透明基板11上を覆うように所定厚さ
の窒化硅素等からなる第1層目の絶縁膜18を成膜し、次いで、この第1層目の絶縁膜1
8の補助容量電極14a上に位置する部分のみエッチングにより除去する。その後、透明
基板11上を覆うように窒化硅素ないし酸化硅素から形成される第1層目の絶縁膜18よ
り薄肉な第2層目の絶縁膜19を成膜する。そうすると、走査線12及びゲート電極Gは
第1層目の絶縁膜18と第2層目の絶縁膜19の両方によって被覆され、この2層の絶縁
膜はゲート絶縁膜を構成する。また、補助容量電極14a上は第2層目の絶縁膜19によ
ってのみ被覆される。
【0044】
次に、この第2層目の絶縁膜19上に例えばa−Siを成膜した後、ゲート電極Gを覆
う部分のa−Si層を残してTFTの一部となる半導体層15を形成する。次いで、透明
基板11上にアルミニウムあるいはこれらの合金等からなる導電物質層を成膜した後、走
査線12に直交する方向に延びる複数本の信号線13、この信号線13から延設され半導
体層15に接続されるソース電極S、及び、補助容量電極14a上を覆うとともに一端が
半導体層15に接続されるドレイン電極Dをパターニングする。これにより、透明基板1
1の走査線12と信号線13との交差部近傍にはスイッチング素子となるTFTが形成さ
れる。そして補助容量電極14aとドレイン電極Dとの間で補助容量が形成されるが、こ
の補助容量は薄い第2層目の絶縁膜19のみが誘電体として機能するため、補助容量が極
めて大きくなる。
【0045】
更にまた、これらの各種配線を覆うように透明基板11上に表面の安定化のための窒化
硅素等からなる保護絶縁膜20を成膜する。次いで、それぞれのTFTの表面を被覆する
ように特定の色のカラーフィルタ層30、30、30からなる光吸収層30を形成
する。この特定の色のカラーフィルタ層30、30、30はカラーフィルタ基板C
Fのカラーフィルタ26の形成方法と同様の形成方法を採用して形成し得る。
【0046】
実施例1の液晶表示パネル10Aにおいては、この特定の色のカラーフィルタ層30
、30、30を各画素領域の画素電極16に対向する位置のカラーフィルタ基板C
Fに設けられているカラーフィルタ26の色とは異なっているものとすることが必須であ
る。すなわち、図2に示した例では、各画素領域の画素電極16に対向する位置のカラー
フィルタ基板CFに設けられているカラーフィルタ26の色は左側から右側に向かって赤
R、緑G、青Bの順に並んでいるが、特定の色のカラーフィルタ層30、30、30
としては例えば左側から右側に向かって青B、赤R、緑Gの順に並ぶようにする。ある
いは、逆に左側から右側に向かって緑G、赤R、青Bの順に並ぶようにしてもよい。
【0047】
前述している構成により、それぞれの色のカラーフィルタ層は、対応する色の領域の
光を透過させるが、対応する色とは異なる色の光は吸収する性質を有している。そのため
、各画素電極に対向する位置のカラーフィルタ基板に設けられているカラーフィルタから
の反射光は、そのカラーフィルタに対応する色の領域の光が主成分であって、この対応す
る色とは異なる色の光は少なくなっている。したがって、この反射光がTFTに達しない
ようにするためには、各画素電極に対向する位置のカラーフィルタ基板に設けられている
カラーフィルタに対応する色とは異なる色のカラーフィルタ層をTFTの表面に設けて、
反射光を吸収すればよいことになる。
【0048】
次いで、アレイ基板ARの表面を平坦化するための有機絶縁材料からなる層間膜21を
成膜する。そして、この層間膜21の補助容量電極14a上に位置する部分に画素電極1
6とドレイン電極Dとを電気的に接続するためのコンタクトホール22を形成するととも
に、露出している保護絶縁膜20を取り除く。次いで、表面全体にITOやIZOからな
る透明導電性膜を形成した後に走査線12及び信号線13によって囲まれた1画素領域ご
とに画素電極16を形成する。以上の工程によりアレイ基板ARが製造される。
【0049】
一方、カラーフィルタ基板CFは、ガラス等の透明基板25上に形成されたブラックマ
トリクスBMと、カラーフィルタ26と共通電極27とを備えている。このうち、ブラッ
クマトリクスBMは、各画素の境界に沿って透明基板25側に設けられるが、BMにおけ
る反射率を少なくするためには樹脂ブラックマトリクスとした方がよい。
【0050】
このような構成の液晶表示パネル10Aは別途図示しないバックライトと組み合わされ
、バックライトからの光の透過を画素電極16によって制御することによって所定の画像
が表示される。しかし、この液晶表示パネル10Aは、各TFTの表面に設けられている
光吸収層30としてのカラーフィルタ層30、30、30が、各画素領域の画素電
極16に対向する位置のカラーフィルタ基板CFに設けられているカラーフィルタの色と
は異なっている。そのため、各画素電極16に対向する位置のカラーフィルタ基板CFに
設けられているカラーフィルタ26からの反射光は、TFTの表面に設けられているカラ
ーフィルタ層30、30、30によって吸収される。
【0051】
したがって、各画素領域のTFTはカラーフィルタ基板CFのブラックマトリクスBM
ないしカラーフィルタ26からの反射光に起因する光リーク電流が減少する。そのため、
この反射光によってTFTが駆動されることが少なくなるので、フリッカの発生が少なく
なるとともにコントラストが良好で、表示画質が優れた液晶表示パネル10Aが得られる

【実施例2】
【0052】
実施例1の液晶表示パネル10Aでは、各画素領域のTFTの表面に設ける光吸収層3
0として特定の色のカラーフィルタ層30、30、30を設けた例を示したが、他
の光吸収性物質も使用し得る。そこで、実施例2の液晶表示パネル10Bとしては、光吸
収層30としてアモルファスシリコン層30aを形成した。この実施例2の液晶表示パネ
ル10Bの1画素(3サブ画素)分の図2に対応する断面図を図3として示す。なお、実
施例2の液晶表示パネル10Bが実施例1の液晶表示パネル10Aと構成が相違する部分
は光吸収層30の構成材料のみであって他の構成は同一であるため、実施例1の液晶表示
パネル10Aと同一の構成部分には同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する

【0053】
この実施例2で使用した光吸収層30としてのアモルファスシリコン層30aは、TF
Tを構成する半導体層15と同じ材料を用いて作製できるため、別途新たな材料を用意す
る必要はない。また、このアモルファスシリコン層30aは、半導体層15に悪影響を与
える波長を未然に吸収するため、光リークを抑制できる効果を持っている。
【0054】
この液晶表示パネル10Bは、各TFTの表面に設けられている光吸収層30としての
アモルファスシリコン層30aが各画素領域の画素電極16に対向する位置のカラーフィ
ルタ基板CFに設けられているカラーフィルタからの反射光を良好に吸収できる。そのた
め、実施例1の液晶表示パネル10Aと実質的に同等の作用・効果を奏する。
【0055】
なお、実施例1及び2では、カラーフィルタ基板CFに設けるカラーフィルタとしてR
、G、Bの3原色からなるものを用いた例を示したが、これに限らずシアンC、マゼンタ
Mの少なくとも1色を加えた4色ないし6色からなるものも使用でき、更に多色からなる
ものとすることもできる。また、バックライトの輝度を上げる際、使用される色の全領域
をカバーできるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1に係る液晶表示パネルの図4のA−A線に対応する部分で切断した断面図である。
【図2】実施例1に係る液晶表示パネルの図4のA−A線に対応する部分で切断した3サブ画素分の模式断面図である。
【図3】図2に対応する実施例2の液晶表示パネルの3サブ画素分の断面図である。
【図4】従来の液晶表示パネルにおけるアレイ基板の1サブ画素分部分を拡大して表した概略平面図である。
【図5】図4のA−A線で切断した断面図である。
【図6】別の従来例の液晶表示パネルの要部断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10A〜10C 液晶表示パネル
11、25 透明基板
12 走査線
13 信号線
14 補助用稜線
14a 補助容量電極
15 半導体層
16 画素電極
18、19、20 絶縁膜
21 層間膜(平坦化膜)
22 コンタクトホール
26 カラーフィルタ
27 共通電極
30 光吸収層
30、30、30 カラーフィルタ層
30a アモルファスシリコン層
CF カラーフィルタ基板
AR アレイ基板
LC 液晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配列した走査線と信号線とで囲まれる各画素領域に画素電極及び薄膜ト
ランジスタを配置したアレイ基板と、ブラックマトリクス及びカラーフィルタを備えたカ
ラーフィルタ基板とを有する液晶表示パネルにおいて、前記薄膜トランジスタの表面に絶
縁膜を介して光吸収層を形成したことを特徴とする液晶表示パネル。
【請求項2】
前記光吸収層は反射光を吸収する層であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示
パネル。
【請求項3】
前記光吸収層は前記各画素領域の画素電極が対向するカラーフィルタの色とは異なる色
のカラーフィルタ層からなることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項4】
前記光吸収層はアモルファスシリコン層からなることを特徴とする請求項1に記載の液
晶表示パネル。
【請求項5】
前記光吸収層の表面には平坦化膜を介して前記画素電極が形成されていることを特徴と
する請求項1〜4のいずれかに記載の液晶表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−89867(P2008−89867A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269556(P2006−269556)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】