説明

液状飲食物用の加熱保温具

【課題】液状の飲食物を簡単に加熱して保温することができ、そして取り扱いも容易な液状飲食物用の加熱保温具を提供すること。
【解決手段】開口を備える断熱性容器、この容器に収容され且つ容器の開口から外部に突き出ている注ぎ口を持つ耐熱性保水容器、そして断熱性容器内にて耐熱性保水容器の外側に配置されている、水との接触により発熱する発熱剤を含む、上記の耐水性保水容器内に液状飲食物を入れて加熱、そして保温する液状飲食物用加熱保温具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料水やみそ汁などの液状の飲食物を加熱して保温するために用いる液状飲食物用の加熱保温具に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や洪水などの災害が発生した際に、被災者への電気、ガス、そして水道水の供給が絶たれる場合がある。このような災害の発生に備えて、長期にわたって保存することができる食品の開発が行なわれている。また災害が発生した場合、特に冬季に災害が発生した場合には、被災者に温かい食事や飲料を供給できる備えがあることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、耐熱性フィルムからなり、上端が開口し且つ底片が平板状の再加熱用袋体の中に、気密性フィルム製の内袋に調理済み脱水食品を封入した調理済み脱水食品袋と、水密性内袋の中に上記脱水食品を脱水前の状態に還元するのに要する量の還元用水を封入した還元用水袋と、水密性内袋の中にアルミニウム粉末と生石灰とを混ぜてなる発熱剤を封入した透水性内袋を封入した発熱剤袋と、水密性内袋の中に上記発熱剤の発熱反応に要する量の反応水を封入した反応水袋とを封入してなる調理済み再加熱還元食品が開示されている。そして、この調理済み再加熱還元食品は長期の保存が可能で、緊急時に速やかに食べることができる状態に含水還元するための水、熱、用具の全てを適切な量で備えているので、容易かつ簡単に加熱調理された温かい食品が得られるとされている。
【特許文献1】特開2001−299248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の調理済み再加熱還元食品は、災害が発生した後に電気、ガス、および水道水の全ての供給が絶たれている場合にも被災者に温かい食事を供給することができる有用なものである。一方、災害が発生した際には、先ず被災者の生命を維持するための飲料水や食べ物が、車両により輸送そして供給され、その後に遅れて水道、電気及びガスの設備の復旧工事が始まる場合が多い。このため、被災者に、飲料水を温かいお湯の状態で供給することは一般には困難な場合が多い。従って、飲料水の供給が開始されても、電気やガスの供給が絶たれている場合には、乳児用の粉ミルクを溶かすためのお湯、あるいは温かいお茶などを簡単に供給することは難しい。また、みそ汁などの液状の食べ物は温かい状態で供給される場合が多いが、これを被災者が後に食べるために一時的に保管した場合には、被災者は冷たい食べ物を食べなければならない。このような場合に、供給された飲料水やみそ汁などの液状飲食物を簡単に加熱して保温することができ、そして取り扱いも容易な加熱保温具があることが望ましい。
【0005】
本発明の課題は、液状の飲食物を簡単に加熱して保温することができ、そして取り扱いも容易な液状飲食物用の加熱保温具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、開口を備える断熱性容器、この容器に収容され且つ容器の開口から外部に突き出ている注ぎ口を持つ耐熱性保水容器、そして断熱性容器内にて耐熱性保水容器の外側に配置されている、水との接触により発熱する発熱剤を含む、上記の耐熱性保水容器内に液状飲食物を入れて加熱、そして保温する液状飲食物用加熱保温具にある。
【0007】
本発明の加熱保温具の好ましい態様は、次の通りである。
(1)断熱性容器が段ボールシート製の箱である。
(2)断熱性容器内にて上記の耐熱性保水容器と発熱剤とを収容している断熱性の内箱が備えられている。
(3)断熱性容器内にて上記の耐熱性保水容器と発熱剤とを収容している金属製の袋が備えられている。
(4)発熱剤が水不透性容器に水密的に収容されている。
(5)耐熱性保水容器が注ぎ口を備える樹脂製の袋である。
【0008】
本発明はまた、開口を備える断熱性容器、この容器に収容でき且つ容器の開口から外部に突き出すことができる注ぎ口を持つ耐熱性保水容器、そして水との接触により発熱する発熱剤を含む、液状飲食物用加熱保温具の組み立てキットにある。
【0009】
本発明の加熱保温具組み立てキットの好ましい態様は下記の通りである。
(1)断熱性容器内に収容でき且つ上記の耐熱性保水容器と発熱剤とを収容することができる断熱性の内箱が備えられている。
(2)断熱性容器内に収容でき且つ上記の耐熱性保水容器と発熱剤とを収容することができる金属製の袋が備えられている。
【0010】
本明細書において、「液状飲食物」には、水、お茶、みそ汁、カレーソースなどの液体の飲食物のみでなく、液体の飲食物に耐熱性保水容器の注ぎ口のサイズよりも小さく切られた固形物(例、野菜や肉などの具材)が含まれたもの(例、具入りのみそ汁や具入りのカレーソースなど)も含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の加熱保温具は、断熱性容器の内部に発熱剤と、液状飲食物を入れた耐熱性保水容器とを収容し、そして発熱剤の発熱に必要な水を加えることにより、液状飲食物を簡単に加熱して保温することができる。また、本発明の加熱保温具においては、発熱剤が断熱性容器内に収容されているために断熱性容器の外側表面が高温になることがなく、そして断熱性容器の開口からは液状飲食物を入れる耐熱性保水容器の注ぎ口が外部に突き出されている。このため、本発明の加熱保温具は、液状飲食物が加熱され保温された状態にて、断熱性容器を火傷などすることなく直接に手で持って、そして温められた液状飲食物を耐熱性保水容器の注ぎ口からコップや皿などの器に注ぐことができるために取り扱いが容易である。
【0012】
本発明の加熱保温具は、災害時に電気やガスの供給が絶たれている場合に、乳児用の粉ミルクを溶かすためのお湯、温かいお茶を入れるためのお湯、あるいはインスタントラーメンに代表される乾燥食品を調理するためのお湯として飲料水を加熱して保温するために特に有利に用いることができる。
【0013】
さらに、本発明の加熱保温具の断熱性容器(更には断熱性の内箱)として段ボールシート製の箱を用いることにより、安価、軽量、そしてリサイクルも容易な加熱保温具が得られる。また、断熱性容器(更には断熱性の内箱)として用いる段ボールシート製の箱を折り畳み可能に構成することにより、加熱保温具を災害時に備えて非常用持ち出し袋に入れて保管しておいたり、大量の加熱保温具を省スペースの場所に重ねて保管しておいたりすることが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の液状飲食物用の加熱保温具を、添付の図面を用いて説明する。図1は、本発明の加熱保温具の構成例を示す斜視図であり、そして図2は、図1の加熱保温具10の分解斜視図である。
【0015】
図1及び図2に示す加熱保温具10は、開口11を備える断熱性容器12、容器12に収容され且つ容器12の開口11から外部に突き出ている注ぎ口13を持つ耐熱性保水容器14、そして断熱性容器12の内部にて耐熱性保水容器14の外側に配置されている、水との接触により発熱する発熱剤15などから構成され、上記の耐熱性保水容器14の内部に液状飲食物を入れて加熱、そして保温するために用いられる。
【0016】
断熱性容器12は、発熱剤15によって耐熱性保水容器14に入れた液状飲食物を加熱した際に、容器12の外側表面を人が素手で触れても火傷しない程度に(あるいは熱さで不快感を持つことがない程度に)、発熱剤にて発生した熱の容器12の外側表面への伝達を抑制する断熱性を有している必要がある。断熱性容器12の断熱性は、容器12の材料の選定あるいは容器12の壁体の厚みの増減によって容易に調節することができる。具体的には、加熱保温具を試作して、液状飲食物を加熱した際の断熱性容器の外側表面の温度が好ましくは60℃以下、更に好ましくは50℃以下の温度を示すように断熱性容器の材料や壁体の厚みを決定する。また、断熱性容器12の断熱性を高くするほど、耐熱性保水容器14の内部で加熱された液状飲食物を長時間にわたって保温できるようになる。そして断熱性容器12には開口11が備えられ、この開口11からは液状飲食物を入れる耐熱性保水容器14の注ぎ口13が外部に突き出される。
【0017】
このように、本発明の加熱保温具10は、発熱剤15が断熱性容器12の内部に収容されているために容器12の外側表面が高温になることがなく、そして容器12の開口からは液状飲食物を入れる耐熱性保水容器14の注ぎ口13が外部に突き出されているため、液状飲食物が加熱され保温された状態にて、断熱性容器12を火傷などすることなく直接に手で持って、そして温められた液状飲食物を耐熱性保水容器14の注ぎ口13からコップや皿などの器に注ぐことができるために取り扱いが容易である。
【0018】
図1に示す断熱性容器12は、例えば、その幅が148mmに、奥行きが80mmに、そして高さが165mmに設定され、その内部に収容されている耐熱性保水容器14に約1リットルの液状飲食物を収容でき、かつ断熱性容器12を片手で持って液状飲食物を注ぎ易いサイズに設定されている。
【0019】
また、図1に示すように、断熱性容器12の開口11を、容器12の上面の中央でなく端部の側に形成することにより、液状飲食物を容器12の外側表面に付着させることなく注ぎ口13からコップや皿などの器に注ぐことが容易になる。なお、断熱性容器の開口は、断熱性容器の上面でなく、例えば、側面上方に備えられていてもよい。この場合には、耐熱性保水容器の注ぎ口を設ける位置を、注ぎ口が断熱性容器の側面上方の開口から外部に突き出る位置に変更する必要がある。
【0020】
断熱性容器の材料の代表例としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂シート(好ましくは発泡樹脂シート)、および段ボールシートなどの厚紙が挙げられる。
【0021】
図1及び図2に示す加熱保温具10の断熱性容器12としては、段ボールシート製の箱が用いられている。これにより加熱保温具10が安価で軽量なものとなり、使用後のリサイクルも容易になるからである。断熱性容器12の材料として用いる段ボールシートは、その厚みが0.5〜3.0mmの範囲にあることが好ましい。厚みが薄すぎると断熱性容器の断熱性が低下し、厚すぎると断熱性容器の作製に手間がかかるからである。
【0022】
断熱性容器12の材料として段ボールシートを用いる場合には、耐水性段ボールシートを用いることが好ましい。これは、断熱性容器12の内部にある発熱剤15を発熱させるために水が使用され、この水が発熱剤の発熱により蒸発して容器12の内部にて水蒸気が発生するため、この水あるいは水蒸気との接触による段ボールシートの強度の低下を抑制するためである。
【0023】
耐水性段ボールシートとしては、日本工業規格(Z1537)の「はっ水段ボール」、「しゃ水段ボール」あるいは「耐水段ボール」の規格を満足する段ボールシートを用いることが好ましい。通常、耐水性段ボールシートは、段ボールシートの片面あるいは両面にワックスを塗布する、あるいは段ボールシートをワックスに浸漬するなどの耐水処理をして得られる。また耐水性段ボールシートとして、段ボールシートの表面に発泡紙や耐水性のライナーが積層された構成の段ボールシートを用いることも好ましい。発泡紙を備える段ボールシートを用いることにより、断熱性容器の断熱性や保温性を高くすることができる。発泡紙やその製造方法は、例えば、特開2001−98494号公報に詳しく記載されている。なお、断熱性容器の内側表面となる面にのみ耐水処理が施された耐水性段ボールシート、あるいは内側表面となる面にのみ発泡紙や耐水性ライナーが積層された構成の段ボールシートを用いることにより、断熱性容器の製造コストを低くすることができる。
【0024】
図3は、図2に示す断熱性容器12として用いる段ボールシート製の箱の展開図である。図3の展開図に示された段ボールシートの表面は断熱性容器の外側表面となる。この段ボールシートとしては、例えば、厚みが1mmで片面(断熱性容器の内側表面となる面)に発泡紙が積層された構成の段ボールシートが用いられる。
【0025】
図2に示す断熱性容器12は、例えば、次の手順により組み立てられる。先ず図3に示す段ボールシートを、その四つの側面部12a、12a、12a、12aの互いに隣接する側面部の間にある折り目線にて折り曲げて筒体を形成し、そして接着部12bを図3において左端にある側面部12aと接着する。次に底板12c、底板12d、12d、そして底板12eを、この順に筒体の内側に折り曲げる。そして差し込み部12fを段ボールシートに形成された切り込み12gに差し込んで断熱性容器の底を組み立てる。このように、断熱性容器の底においては三枚の段ボールシートが重ねられ、断熱性容器の断熱性(保温性)を高くするための工夫がされている。そして内蓋材12h、耐熱性保水容器の注ぎ口(図1:13)を通す開口を備えた内蓋材12i、上記注ぎ口を通す開口11を備えた外蓋材12j、そして差込部12kの各々を折り曲げることにより、図2に示す状態にて断熱性容器12が組み立てられる。
【0026】
この断熱性容器12を、例えば、図4に示す状態に折り畳むことにより、加熱保温具を災害時に備えて非常用持ち出し袋に入れて保管しておいたり、大量の加熱保温具を省スペースの場所に重ねて保管しておいたりすることが容易になる。
【0027】
次に、図2に示す断熱性容器12に収容される耐熱性保水容器14について説明する。耐熱性保水容器14には、注ぎ口13から、例えば、災害時に車両により供給される飲料水、お茶、カレーなどの液状の飲食物が入れられる。固形物を含む液状飲食物、例えば、具入りのみそ汁や具入りのカレーソースは、予め具材を注ぎ口のサイズよりも小さなサイズに切っておくことが好ましい。また、具材が通ることのできる大きなサイズの注ぎ口を持つ耐熱性保水容器を用いることもできる。図2に示す耐熱性保水容器14の注ぎ口13には、ねじ込み式のキャップが備えられている。
【0028】
耐熱性保水容器14は、その内部に液状飲食物を入れた状態にて発熱剤15により加熱される。本発明の加熱保温具は、使用する発熱剤15の量を調節することで、液状飲食物を必要な温度にまで加熱することができる。従って、耐熱性保水容器14は、液状飲食物の加熱温度(飲料水をお湯にする場合には80〜100℃程度、そしてみそ汁やカレーソースを温める場合には50〜80℃程度の温度)にて容器14に塑性変形や穴あきなどを生じない程度の耐熱性を有する必要がある。
【0029】
耐熱性保水容器14としては、注ぎ口を備える樹脂製の袋を用いることが好ましい。樹脂の代表例としては、ポリエチレンあるいはポリプロピレンなどのポリオレフィン、およびポリエステルが挙げられる。また、耐熱性保水容器として注ぎ口を備える樹脂製の袋を用いる場合には、耐熱性保水容器に入れた液状飲食物に十分に熱を伝えるために、袋の厚みは500μm以下であることが好ましく、20〜300μmの範囲にあることが更に好ましい。このような樹脂製の袋は折り畳むことができるため、加熱保温具を災害時に備えて非常用持ち出し袋に入れて保管しておいたり、大量の加熱保温具を省スペースの場所に重ねて保管しておいたりすることが容易になる。
【0030】
発熱剤15の代表例としては、生石灰粉末、アルミニウム粉末、および生石灰粉末とアルミニウム粉末との混合物が挙げられる。これらの発熱剤の中でも、生石灰粉末とアルミニウム粉末との混合物は、水との接触により発生する熱量が大きく、そして比較的長い時間にわたって発熱を続けるため、本発明の加熱保温具に特に好ましく用いることができる。生石灰粉末と酸化アルミニウム粉末との混合物からなる発熱剤については、例えば、特許第3467729号に記載されている。発熱剤は、断熱性容器の内部に粉末の状態で入れてもよいし、透水性の袋(例、不織布や和紙から形成された袋)に封入された状態で入れてもよい。発熱剤は、使用前には水不透性容器(例えば、アルミニウム箔から形成された袋)に水密的に収容されていることが好ましい。
【0031】
図2に示すように、加熱保温具10には、断熱性容器12の内部にて耐熱性保水容器14と発熱剤15とを収容している断熱性の内箱16が備えられていることが好ましい。この内箱16によって、発熱剤15の発生した熱により温度が上昇し易い断熱性容器12の外側表面下方の温度上昇を抑制できるからである。内箱16の材料としては、断熱性容器12の場合と同様の材料を用いることができ、段ボールシートを用いることが好ましい。
【0032】
図2に示す内箱16の材料としては、厚みが2mmで片面(内箱の内側表面となる面)に発泡紙が積層された構成の段ボールシートが用いられている。図5は、図2に示す断熱性の内箱16として用いる段ボールシート製の箱の展開図である。図5の展開図に示された段ボールシートの表面は、図2に示す内箱16の内側表面となる。
【0033】
図2に示す内箱16は、例えば、次の手順により組み立てられる。先ず図5に示す段ボールシートの左右の各々の端部の側の部分を、折り目線17a、17aの各々にて図の手前側に折り曲げ、そして図に斜線を記入して示した接着部16a、16a、16a、16aの各々を側面部16b、16bの各々と接着する。次に、折り目線17b、17bの各々にて、折り返し部16c、16cの各々を、側面部16d、16dの各々に重なるように折り曲げることにより、段ボールシートは図6に示す状態(図2に示す内箱16が折り畳まれた状態)に組み立てられる。そして図7に示すように、側面部16b、16bと側面部16d、16dを上方に立ち上げることにより、図2に示す状態にて断熱性の内箱16が組み立てられる。
【0034】
また、図7に記入した矢印18は、内箱16を形成する段ボールシートのフルートの長さ方向を示している。そして、内箱16に折り返し部16cが備えられていると、側面部16dの頂部にて段ボールシートのフルートの長さ方向18に垂直な端面が露出されないため、発熱剤を発熱させるために用いる水あるいは発熱により生じた水蒸気が段ボールシート端面から侵入することで生ずる内箱の強度の低下を抑制することができる。なお、側面部16bの頂部では、段ボールシートのフルートの長さ方向18に平行な端面が露出されているため、この端面からは上記の水や水蒸気が侵入し難い。
【0035】
本発明の加熱保温具には、上記の断熱性の内箱に代えて、断熱性容器内にて耐熱性保水容器と発熱剤とを収容する金属製の袋が備えられていてもよい。図8は、金属製の袋の構成例を示す斜視図である。図8に示す金属製の袋19は、例えば、アルミニウムから形成される。このような金属製の袋を用いると、発熱剤にて発生した熱が金属製の袋を効率良く伝わるため、耐熱性保水容器に入れた液状飲食物をより短時間で高温に加熱することができるようになる。この金属製の袋の内側表面には、樹脂層が形成されていてもよい。
【0036】
次に、図1及び図2に示す加熱保温具を用いる場合、液状飲食物は、例えば、次のような手順により加熱し、そして保温される。まず図2に示す状態にまで組み立てられた断熱性容器12の内部に、耐熱性の内箱16と発熱剤15とをこの順に収容する。この際に、一対の側面部16b、16bの上方の部位をその外側から手で挟むようにして内箱16を持つと、内箱16を断熱性容器12の内部に収容し易い。次に、耐熱性保水容器14の内部に、注ぎ口13から液状飲食物を入れる。そして液状飲食物を入れた耐熱性容器14を内箱16の内部に収容する。そして内箱16と耐熱性保水容器14との隙間に発熱剤用の水を入れ、速やかに内蓋材12hを折り曲げ、内蓋材12iをその開口に注ぎ口13を通しながら折り曲げ、外蓋材12jをその開口11に注ぎ口13を通しながら折り曲げ、そして差し込み部12kを断熱性容器12の側面部12aの内側に差し込んで容器12に蓋をする。これにより断熱性容器12の内部にて発熱剤15が発熱を始めて耐熱性保水容器14に入れた液状飲食物が加熱され、そして保温される。なお、加熱保温具に断熱性の内箱を使用しない場合には、断熱性容器の底から発熱剤用の水が漏れないように、断熱性容器として、図2に示す内箱16と同様に底に隙間がない構成で且つ開口を備える段ボールシート製の箱、あるいは底に隙間がない構成で且つ開口を備える樹脂製の箱を用いることが好ましい。
【0037】
図9は、本発明の加熱保温具の別の構成例とその使用の態様を示す図である。図9の加熱保温具30の構成は、内箱16と耐熱性保水容器14との間に発熱剤用の水を供給するための筒体20が備えられ、この筒体上端の開口に発熱剤用の水を入れるために断熱性容器12の上面に蓋21を有する開口22が備えられていること以外は図1の加熱保温具10と同様である。このような筒体20を用いることにより、断熱性容器12の内部に、断熱性の内箱16、発熱剤15、そして液状飲食物を入れた耐熱性保水容器14を順に収容して断熱性容器に蓋をした後に、筒体20を通して発熱剤用の水を供給することができる。すなわち発熱剤用の水を入れてから速やかに断熱性容器の蓋をする必要がないので、加熱保温具の取り扱いが更に容易となる。筒体20の材料に特に制限はないが、その代表例としては、樹脂及び段ボールシートなどの厚紙が挙げられる。
【0038】
次に、本発明の液状飲食物用の加熱保温具組み立てキットについて説明する。本発明の加熱保温具組み立てキットは、開口を備える断熱性容器、この容器に収容でき且つ容器の開口から外部に突き出すことができる注ぎ口を持つ耐熱性保水容器、そして水との接触により発熱する発熱剤などから構成される。この加熱保温具組み立てキットには、例えば、図2に示す断熱性容器12、耐熱性保水容器14、そして発熱剤15が用いられる。
【0039】
この加熱保温具組み立てキットには、断熱性容器内に収容でき且つ耐熱性保水容器と発熱剤とを収容することができる断熱性の内箱(例えば、図2に示す内箱16)が備えられていることが好ましい。また、断熱性の内箱に代えて、断熱性容器の内部に収容でき且つ耐熱性保水容器と発熱剤とを収容することができる金属製の袋(例えば、図8に示す金属製の袋19)が備えられていてもよい。
【0040】
そして断熱性容器や断熱性の内箱としては、段ボールシート製の箱を用いることが好ましい。例えば、図2に示す断熱性容器12及び断熱性の内箱16の各々として用いる段ボールシート製の箱は、それぞれ図4及び図6に示す状態に折り畳むことが可能であり、これにより加熱保温具組み立てキットを災害時に備えて非常用持ち出し袋に入れて保管しておいたり、省スペースの場所に大量に重ねて保管しておいたりすることが容易になるからである。
【0041】
上記の本発明の加熱保温具(あるいは加熱保温具の組み立てキット)は、災害時に電気やガスの供給が絶たれている場合に、乳児用の粉ミルクを溶かすためのお湯、温かいお茶を入れるためのお湯、あるいはインスタントラーメンに代表される乾燥食品を調理するためのお湯として飲料水を加熱して保温するために特に有利に用いることができる。なお、災害時には、発熱剤を発熱させるための水として、風呂の残り湯や雨水などを用いることが好ましい。また本発明の加熱保温具は、登山などのレジャーにおいてお茶やコーヒーを入れるためのお湯、あるいはインスタントラーメンに代表される乾燥食品を調理するためのお湯を得るために使用することもできる。
【0042】
また、本発明の加熱保温具(あるいは加熱保温具の組み立てキット)に、濾過により飲料水を製造する携帯用浄水器を付随させることも好ましい。この携帯用浄水器としては公知のものを用いることができる。濾過により飲料水を製造する携帯用浄水器の構成などについては、例えば、特許第3468568号に詳しい記載がある。
【0043】
携帯用浄水器を付随させることにより、災害により電気、ガス、そして水道水の全ての供給が絶たれている場合にも、例えば、携帯用浄水器を用いて風呂場の浴槽に残された水などを濾過して飲料水を製造し、この飲料水を加熱保温具を用いて加熱して、例えば、乳児用のミルクを溶かすためのお湯を簡単に作り、そして保温することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の加熱保温具の構成例を示す斜視図である。
【図2】図1の加熱保温具10の分解斜視図である。
【図3】図2に示す断熱性容器12として用いる段ボールシート製の箱の展開図である。
【図4】図2に示す断熱性容器12として用いる段ボールシート製の箱が折り畳まれた状態を示す図である。
【図5】図2に示す内箱16として用いる段ボールシート製の箱の展開図である。
【図6】図2に示す内箱16として用いる段ボールシート製の箱が折り畳まれた状態を示す図である。
【図7】図2に示す内箱16の組み立て方法を説明するための図である。
【図8】本発明の加熱保温具に用いることのできる金属製の袋の構成例を示す斜視図である。
【図9】本発明の加熱保温具の別の構成例とその使用の態様とを示す一部切り欠き正面図である。
【符号の説明】
【0045】
10、30 加熱保温具
11 開口
12 断熱性容器
12a 側面部
12b 接着部
12c、12d、12e 底板
12f 差し込み部
12g 切り込み
12h、12i 内蓋材
12j 外蓋材
12k 差し込み部
13 注ぎ口
14 耐熱性保水容器
15 発熱剤
16 内箱
16a 接着部
16b 側面部
16c 折り返し部
16d 側面部
17a、17b 折り目線
18 段ボールのフルートの長さ方向を示す矢印
19 金属製の袋
20 筒体
21 蓋
22 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を備える断熱性容器、該容器に収容され且つ容器の開口から外部に突き出ている注ぎ口を持つ耐熱性保水容器、そして断熱性容器内にて耐熱性保水容器の外側に配置されている、水との接触により発熱する発熱剤を含む、該耐熱性保水容器内に液状飲食物を入れて加熱、そして保温する液状飲食物用加熱保温具。
【請求項2】
断熱性容器が段ボールシート製の箱である請求項1に記載の加熱保温具。
【請求項3】
断熱性容器内にて上記の耐熱性保水容器と発熱剤とを収容している断熱性の内箱が備えられている請求項1に記載の加熱保温具。
【請求項4】
断熱性容器内にて上記の耐熱性保水容器と発熱剤とを収容している金属製の袋が備えられている請求項1に記載の加熱保温具。
【請求項5】
発熱剤が水不透性容器に水密的に収容されている請求項1に記載の加熱保温具。
【請求項6】
耐熱性保水容器が注ぎ口を備える樹脂製の袋である請求項1に記載の加熱保温具。
【請求項7】
開口を備える断熱性容器、該容器に収容でき且つ容器の開口から外部に突き出すことができる注ぎ口を持つ耐熱性保水容器、そして水との接触により発熱する発熱剤を含む、液状飲食物用加熱保温具の組み立てキット。
【請求項8】
断熱性容器内に収容でき且つ上記の耐熱性保水容器と発熱剤とを収容することができる断熱性の内箱が備えられている請求項7に記載の加熱保温具組み立てキット。
【請求項9】
断熱性容器内に収容でき且つ上記の耐熱性保水容器と発熱剤とを収容することができる金属製の袋が備えられている請求項7に記載の加熱保温具組み立てキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−111174(P2007−111174A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304434(P2005−304434)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(596064857)株式会社ヨシザワ (11)
【Fターム(参考)】