説明

渋滞予測装置及びそれを用いた経路案内装置

【課題】イベント情報を摘出するためのデータ通信を不要とする。
【解決手段】文字多重放送を受信する受信手段30を備え、受信した文字多重放送に含まれるデータに基づいてイベントの開催地と進捗状況を含むイベント情報を摘出し、摘出したイベント情報に基づいて、今後の発生が予測される渋滞に関する渋滞予測情報を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツの試合や音楽コンサートなどのイベントに関する情報に基づいて渋滞を予測する渋滞予測装置、及び渋滞予測装置が作成した渋滞予測情報に基づいて渋滞を回避した経路案内を行う経路案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用の経路案内装置において、道路交通情報通信システム(Vehicle Information and Communication System:VICS)から渋滞などの交通情報(VICS情報)を受信し、受信した渋滞情報に基づいて経路案内を行うものがよく知られている。車両にVICS情報を提供する方法には、センターから広域エリアの道路交通情報をFM文字多重放送の送信機を用いて提供する多重放送型と、車両直近のエリアの詳細な交通情報などを道路上に設置されたビーコンを用いて提供するビーコン型がある。
このうち、多重放送型に対応した経路案内装置では、車両に取り付けられる受信アンテナを用いて文字多重放送を受信し、受信した文字多重放送に含まれるテキストデータ、図形データ等にしたがって、文字表示型、図形表示型、地図表示型のいずれかの方法により、現在発生している渋滞や規制情報を画面上に表示したり、渋滞を回避するように経路案内を行ったりすることができる。
一方、大勢の人が集まる野球などのイベントに関する実際の開催情報に基づいて渋滞予測を行うことにより、渋滞を回避した経路案内を行う経路案内装置がある。例えば、特許文献1の経路案内装置は、交通情報を受信するVICS受信機と、イベントの開催情報およびイベント開催時に混雑が予想される混雑情報を事前に記憶するデータベースと、イベントのリアルタイムな進捗状況に関するイベント情報を受信するデータ通信制御部と、進捗状況情報と事前に記憶された開催情報が異なる場合に混雑情報を更新し、混雑情報に基づいて渋滞予測情報を作成する手段と、渋滞予測情報を考慮して目的地までのルート探索を行う手段とを有する。イベント情報は、無線または有線によりデータ通信を可能とするデータ通信制御部を用いて、インターネット経由で、イベント運営会社のウェブサイトやイベントに関する情報配信を行っているサーバ、イベントに関するキーワード検索をしたウェブサイト等から受信することができる。かかる構成によれば、イベント情報をインターネット経由で取得して渋滞予測を行うため、既に発生している渋滞だけでなく、今後発生することが予測される渋滞をも回避した経路案内を行うことができる。
【特許文献1】特開2006−226977
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記構成によれば、イベント情報をインターネット上のウェブサイトにアクセスして摘出しなくてはならないため、摘出のためのデータ通信が必要となり、イベント情報を摘出するまでに多くの時間を費やす可能性がある。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、文字放送から受信したデータに基づきイベント情報を摘出し、摘出したイベント情報に基づいて渋滞を予測することにより、インターネットを介したイベント情報の摘出を不要とした渋滞予測装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】

請求項1にかかる渋滞予測装置は、文字放送を受信する受信手段と、受信した前記文字放送に含まれるテキストデータに基づいてイベントの開催地と進捗状況を含むイベント情報を摘出するイベント情報摘出手段と、摘出した前記イベント情報に基づいて、発生が予測される渋滞に関する渋滞予測情報を作成する渋滞予測情報作成手段と、を備えたことを特徴とする。
請求項2にかかる渋滞予測装置では、請求項1の構成において、渋滞予測情報作成手段は、前記進捗状況に応じて、前記開催地周辺の所定区域で渋滞が発生することを予測する渋滞予測情報を作成することを特徴とする。
請求項3にかかる渋滞予測装置では、請求項2の構成において、イベント情報摘出手段がイベントの開始時刻または終了時刻を摘出した時に、渋滞予測情報作成手段は、開始時刻または終了時刻を基準とした所定の時間帯に渋滞が発生することを予測する渋滞予測情報を作成することを特徴とする。
請求項4にかかる渋滞予測装置では、請求項1乃至3の構成において、イベントはスポーツイベントまたは音楽イベントであることを特徴とする。
請求項5にかかる渋滞予測装置では、請求項4の構成において、イベント情報摘出手段は、イベントの途中経過情報を摘出し、渋滞予測情報作成手段は、途中経過情報に含まれる途中経過の時刻からイベントの終了時刻を予測し、予測した終了時刻に基づいて渋滞の発生を予測する渋滞予測情報を作成することを特徴とする。
請求項6にかかる渋滞予測装置では、請求項1乃至5の構成において、受信した文字放送に含まれるデータに基づいて、受信した文字放送を構成するチャンネルのうち、イベント情報を含むと予測されるチャンネルを選択するチャンネル選択手段を備え、イベント情報摘出手段は、チャンネル選択手段により選択されたチャンネルのデータからイベント情報を摘出することを特徴とする。
請求項7にかかる渋滞予測装置では、請求項1乃至6の構成において、現在位置を検知する現在位置検知手段と、現在位置検知手段により検知された現在位置に基づいて文字放送の放送局を選局する選局手段を備え、受信手段は、選局手段により選局された放送局からの文字放送を受信することを特徴とする。
請求項8にかかる経路案内装置では請求項1乃至7に記載の渋滞予測装置を用いた経路案内装置であって、渋滞予測情報作成手段により作成した渋滞予測情報を表示部に表示することを特徴とする。
請求項9にかかる経路案内装置では、請求項8の構成において、車両に搭載されて、受信した文字放送に含まれるデータに基づいて現在発生している渋滞に関する渋滞情報を摘出する渋滞情報摘出手段を備え、摘出された渋滞情報を表示部に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
請求項1乃至7に係る渋滞予測装置及び請求項8乃至9に係る経路案内装置によれば、イベント情報を文字多重放送経由で受信したデータから摘出することができるので、インターネットにアクセスしてウェブサイト上からイベント情報を探す必要がなくなり、イベント情報を摘出するためのデータ通信を不要とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】

以下に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の渋滞予測装置1及び経路案内装置2におけるシステムの構成を示す。渋滞予測装置1及び経路案内装置2としては、例えば車載型や、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)、携帯型パーソナルコンピュータなどの携帯型の地図表示装置、ナビゲーションシステムが例示できる。
渋滞予測装置1は、文字多重放送を介して受信したデータや、渋滞予測装置1に予め記憶しているデータなどに基づいて、渋滞の予測を行う。渋滞予測装置1は、各種制御を実行するためのCPUを有する制御部10、車両の現在位置と現在方位を測定するGPS受信部20、アンテナを介して文字多重放送を受信する文字多重放送受信部30、各種データを含むデータベースを記憶するハードディスク40、各種制御を実行させるためのプログラムを記憶するROM50、及び文字多重放送受信部30によって取得されたデータや各種プログラムにより作成されたデータを一時的に記憶するRAM60を備える。
経路案内装置2は、現在位置や目的地に関する情報、目的地までの経路探索や経路の表示、現在地周辺の店舗の検索やその表示、あるいは店舗のサービス内容に関する情報の表示などを実施する。経路案内装置2の構成は、上記の渋滞予測装置1に加えて、さらに、ユーザが表示画面をタッチ操作して入力を行うパネル操作部71、ユーザの発話を認識して入力を受け付ける音声入力部72、及びユーザがリモコンによって入力操作を行うことができるリモコン操作部73などを含む、ユーザが目的地などの入力を行うための入力部70、画像を表示する表示部80、スピーカから音声を出力する音声出力部90を備えることで実現される。
文字多重放送受信部30は、図示しない放送局から送信されるFM多重放送により、渋滞情報、交通事故情報、工事情報、交通規制情報、故障車情報、駐車場情報などの交通情報や、スポーツ、音楽イベントなどの催し物に関するイベント情報を受信する。渋滞情報は、現在発生している渋滞に関するテキストデータまたは図形データを含むものである。イベント情報は、イベントが開催される開催地、進捗状況を含むテキストデータを含むものである。制御部10は、文字多重放送受信部30により受信した交通情報やイベント情報などをRAM60に記憶する。なお、本実施例では、請求項中の「文字放送」に対応するものとしてFM文字多重放送を例示するが、デジタル放送などテキストデータを含む多重放送であれば、これに限定されるものではない。
ハードディスク40は、渋滞予測装置1及び経路案内装置2の各種機能を実行するための、地図データ、施設データ、検索用データ、放送局データなどを含むデータベースを記憶する。
地図データは、道路に関するリンクID、交差点ノード及び道路の種別(国道、一般道、県道など)を示す種別データなどを含んでいる。
施設データは、少なくともスポーツ、音楽イベントなどのイベントが行われる施設に関するイベント施設情報を含む。イベント施設情報は、施設の名称、施設の位置、イベント開催時に渋滞が予測される渋滞発生予測箇所の道路データ(リンクID、交差点ノード)、渋滞の時間的長さを示す渋滞時間、及び渋滞の程度の大小を示す渋滞レベルを含む。イベント施設情報が含む渋滞発生予測箇所、渋滞時間、渋滞レベルなどは、ナゴヤドーム、国立競技場、日本武道館といった施設毎に異なるように設定されている。あるいは、同じ施設に関するイベント施設情報であっても、野球の試合、サッカーの試合、音楽コンサートといったイベントの種別毎に渋滞発生予測箇所、渋滞時間、渋滞レベルなどが設定されている。施設データは、経路案内装置2がユーザに販売される前にハードディスク40にあらかじめ記憶されていても良いし、あるいは、ユーザが経路案内装置2を入手した後に、図示しない読取部からCDやDVDなどの記憶媒体に記憶された情報を読み取ってハードディスク40に記憶してもよい。
検索用データは、後述するイベント情報の摘出に用いられる、キーワード検索のための語句を含む。例えば、キーワード検索のための語句としては、「スポーツ」、「ニュース」、プロ野球のチーム名、サッカーのチーム名、スタジアム名、アーティスト名、コンサートに用いられる会場名などが該当する。制御部10は、これらの語句を直接キーワードとするか、これらの語句をもとに、ROM50に含まれるキーワード作成プログラムにより作成した文字列をキーワードとして、後述するキーワード検索を行う。
放送局データは、文字多重放送受信部30が受信可能な各放送局のデータを含む。各放送局のデータは、各放送局が文字多重放送を送信可能なエリアに関する送信エリアデータを含む。各放送局のデータは、各放送局の送信する文字多重放送のチャンネルがスポーツや音楽イベントに関するイベント情報を含んでいるか否かを、制御部10が判別できるように構成されていてもよい。
ROM50には、車両の現在位置に基づいて文字多重放送の放送局を選局する選局プログラム、文字多重放送のデータからイベント情報を摘出するためのイベント情報摘出プログラム、イベント情報に基づき渋滞予測を行う渋滞予測プログラム、文字多重放送のデータから渋滞情報を摘出するための渋滞情報摘出プログラム、検索用データに含まれる語句を特定の順序に並べるためのキーワード作成プログラム、経路設定を行う経路設定プログラム、経路案内を行う経路案内プログラム、表示部80に地図や映像を表示するための複数の画面表示モードを選択可能な表示モード選択プログラム、テキストデータを音声出力部90から出力される音声に変換するためのテキスト読み上げプログラムなど、制御部10が実行する各種プログラムが格納されている。
RAM60には、文字多重放送受信部30が受信した交通情報やイベント情報、ハードディスク40から読み出した地図データ、施設データ及び検索用データ、経路設定プログラムにより作成された経路データ、渋滞予測プログラムにより作成された渋滞予測情報などが一時的に記憶される。
GPS受信部20は、図示しない複数の人工衛星から送信される電波を受信し、車両の現在位置と移動方向を測定する。測定された車両の現在位置と移動方向は、制御部10へ送信される。
入力部70は、表示部80と一体となって、ユーザがタッチ操作を行うことができるパネル操作部71、ユーザが発話する音声を認識して入力を受け付けるための音声入力部72、ユーザがリモコンに備えられた操作ボタンや操作つまみによって入力操作を行うことができるリモコン操作部73を含む。入力操作によって設定できる内容は、目的地の設定、情報の検索、車両の現在位置と現在方位の表示、一般道優先、距離優先などに例示される経路の探索方法や、地図表示モード、オーディオモード、見えるラジオモードを含む画面表示モードの選択などである。なお、入力部70の構成としては、パネル操作部71、音声入力部72、リモコン操作部73のいずれか一つでも良く、また、各種設定事項を入力可能な構成であれば、これらに限定されるものではない。
表示部80は、制御部10によって制御され、制御部10からの画像データを画面表示させる。画像データとしては、地図情報や検索情報などの画像データのほか、図示しない読取部によって読み出されたCDやDVDなどの記憶媒体に記憶された映画などの映像データ、文字多重放送に含まれる図形データなどが含まれる。表示部80のパネルとしては、液晶パネル、プラズマディスプレイパネル、有機EL(Electro Luminescence)パネルなどが用いられる。
音声出力部90は、制御部10によって制御され、図示しないスピーカなどによって、車両の走行状況、交通状況、渋滞状況、乗員への操作指示、経路の音声案内などを音声により出力する。
次に、文字多重放送を受信し、渋滞予測装置1によって渋滞を予測する際の動作について、図2のフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップ1において、制御部10は、ROM50に記憶された選局プログラムを用いて、GPS受信部20により測定した車両の現在位置に基づき、受信可能な文字多重放送を送信している放送局を、ハードディスク40に記憶された放送局データから選局する。あるいは、受信可能な文字多重放送を送信している放送局のうち、スポーツ、音楽などのイベントに関する内容を文字放送により送信する放送局を放送局データから選局する。
次に、ステップ2において、文字多重放送受信部30は、制御部10により選局された放送局から送信される文字多重放送を受信する。文字多重放送に含まれるデータとしては、音声放送に用いられる音声情報と、渋滞情報、交通事故情報、工事情報、交通規制情報、故障車情報、駐車場情報などの交通情報や、スポーツ、音楽イベントなどのイベントに関するイベント情報、ニュース情報などを、テキストデータを用いて文字放送するための文字放送用データがある。なお、受信の頻度は、放送局が文字多重放送を送信する頻度に合わせて様々に設定することができる。
文字多重放送が含むデータのうち文字放送用データは、図3に示すFM***局の例のように、目次データ(0)、ニュースデータ(1)、スポーツデータ(2)、天気データ(3)、交通データ(4)などの、チャンネル番号に対応した各チャンネルデータから構成される。この例の場合、文字放送用データは、文字放送の目次を表示するための目次データ(0)、国内外の主要な出来事を放送するニュースデータ(1)、野球やサッカーなどのスポーツの試合情報を放送するスポーツデータ(2)、全国各地の気象情報を放送する天気データ(3)、放送局の周辺地域の交通情報を放送する交通データ(4)の5つのチャンネルデータから構成されている。チャンネルデータは、チャンネル内容と対応したチャンネル番号を含む、チャンネルを管理するための情報を含むチャンネル管理データと、チャンネルを1ページ分表示するための情報を含む少なくとも一つのページデータから構成される。上記の例の場合には、目次データ(0)は、チャンネル番号「0」を含むチャンネル管理データと、見えるラジオ表示時にニュースデータ(1)から交通データ(4)までのチャンネルを目次として、図4のように表示部80にチャンネル名などを表示するためのテキストデータを含む、ページデータにより構成される。チャンネル「1」〜「4」のチャンネルデータは、チャンネル番号「1」〜「4」までのチャンネル番号を含むチャンネル管理データと、各内容に相当するテキストデータを含むページデータにより構成される。制御部10は、これらの受信したデータをRAM60に記憶し、各データの更新を行う。
次に、ステップ3において、制御部10は、RAM60に記憶した文字多重放送に含まれるデータから、イベント情報の摘出に用いるチャンネルデータを選択する。チャンネルの選択は、各チャンネルデータの中から、スポーツや音楽などのイベント情報を含む可能性が高いものが選択されるように行われる。例えば、目次を表示するためのページデータに含まれるテキストデータから、キーワード検索によって文字列を摘出し、摘出した文字列に対応するチャンネル番号を持つチャンネルデータを選択することによって行われる。上記の例では、ニュース(1)、スポーツ(2)、天気(3)、交通(4)という、目次データ(0)データの含むテキストデータに対して、「スポーツ」「野球」「サッカー」「音楽」といったキーワードを用いて制御部10が検索を行うことにより、スポーツデータ(2)に対応するチャンネルデータが摘出される。そして、ステップ4でのイベント情報の摘出が行われる。上記のキーワード検索によって、指定した文字列を摘出できない場合には、選局された放送局の全チャンネルデータの中からイベント情報の摘出が行われる。
なお、上記の例では、目次を表示するためのページデータからキーワード検索を行うことによりチャンネルデータを選択する構成としたが、イベント情報を含む可能性の高いチャンネルデータに対応するチャンネル番号をハードディスク40に記憶し、記憶したチャンネル番号に該当するチャンネルデータを制御部10が選択する構成としてもよい。例えば、上記したFM***局について、スポーツチャンネルに対応するチャンネル番号「3」を記憶しておけばよい。また、上記の例では、文字放送用データが音声放送に対応していないものとして記載したが、音声放送と対応した文字放送を行う「番組連動」のチャンネルデータを含む場合もある。
制御部10は、ステップ4において、ステップ3で摘出したチャンネルデータ中のページデータからイベント情報を摘出する。イベント情報を摘出した場合は、ステップ5に進む。イベント情報を摘出できなかった場合には、今回の渋滞予測のための動作を終了する。イベント情報の摘出は、ページデータが含むテキストデータの中から、キーワード検索によってイベント情報を示す文字列を摘出することによって可能である。スポーツ関連のイベント情報であれば、チーム名と施設名などを、音楽関連のイベントであれば、アーティスト名と施設名などをキーワードとして検索を行う。自車の走行に影響を及ぼすイベント情報のみを摘出するために、検索に用いる施設名を、イベント施設情報を参照して、車両の現在位置から所定距離内にある施設名や、渋滞発生予測箇所が車両の現在位置から所定距離内にある施設名のみに限定してもよい。
イベント情報の摘出例として、プロ野球の試合に関するイベント情報を摘出する場合を以下に示す。制御部10は、「チーム名・点数−点数・チーム名(球場名)・イニング」、「チーム名−チーム名(球場名)時刻」などの文字列をキーワードとして検索を行う。例えば、東京ドームで行われている中日対巨人の試合において、6回裏の時点で中日が4点、巨人が2点を得点しているパターンを検索する際には、「中4−2巨(東ド)6回裏」をキーワードとする。同様にして、全てのプロ野球の試合に関する情報を漏れなく検索するため、全てのチーム同士の対戦パターンと、0点から30点までの点数パターンと、プロ野球の試合に用いられる全ての施設名と、1回表から15回裏までの組み合わせを順序立てて並べた文字列がキーワードとされる。
また、東京ドームで18時に開始が予定されている中日対巨人の試合を検索する際には、「中―巨(東ド)18:00」をキーワードとする。イベント情報が摘出された場合には、ステップ5に進む。なお、キーワード検索を行うための文字列は、プロ野球の試合が行われる施設名と進捗状況を判別することができるものであれば、これらの様式に限定されるものではない。
次に、ステップ5において、制御部10は、摘出された施設名とイベントの種別に基づいて、その施設名と種別に対応するイベント施設情報をハードディスク40から読み出す。この時、自車の走行に影響を及ぼすイベント施設情報のみを読み出すために、摘出された施設名全てではなく、車両の現在位置から所定距離内にある施設名や、施設名に対応するイベント施設情報中の渋滞発生予測箇所が車両の現在位置から所定距離内にある施設名に対応するイベント施設情報を読み出してもよい。そして、イベントの進捗状況と、イベント施設データに含まれる渋滞発生予測箇所、渋滞時間及び渋滞レベルに基づいて、制御部10が渋滞予測情報を作成する。具体的には、制御部10によって、渋滞が発生する時刻及び解消する時刻がイベントの進捗状況に応じて設定され、イベント施設情報に含まれる渋滞時間と設定された時刻に基づいて、渋滞が発生する時刻から解消する時刻までの渋滞時間帯が設定される。この渋滞時間帯に、イベント施設情報に含まれる渋滞レベルの渋滞が、渋滞発生予測箇所において発生すると予測するように、渋滞予測情報を作成する。渋滞時間帯は、開始時刻を基準にした一定の時間帯と、イベントの進捗状況に応じて設定されたイベント終了予測時刻を基準にした一定の時間帯に設定される。
例えば、プロ野球の試合が18時に開始予定の場合には、開始時刻である18時を基準とした一定の時間帯である17時30分から18時15分に、渋滞発生予測箇所において渋滞が発生すると制御部10が予測する。また、この場合、開始時刻である18時を基準にして、21時00分に試合が終了すると予測し、イベント終了予測時刻である21時00分を基準とした一定の時間帯である20時45分から21時30分に、渋滞発生予測箇所において渋滞が発生すると予測する。
また、プロ野球の試合が、19時30分に受信した情報において7回裏まで進行している場合には、残る7回裏から9回裏までの5つの半イニングを終えなくてはならないため、半イニングを終えるまでの時間を例えば10分として、19時30分+10分×5=20時20分をイベント終了予測時刻であると制御部10が予測する。そして、イベント終了予測時刻である20時20分を基準とした一定の時間帯として、20時05分から20時50分に、渋滞発生予測箇所において渋滞が発生すると予測する。なお、上記の例では渋滞時間の長さを一定としたが、施設の収容人員数やイベントの種別に応じて渋滞時間の長さを調整してもよい。
渋滞予測情報における渋滞レベルは、制御部10により、リンク毎及び所定の時間単位毎に設定される。例えば、開催地から所定距離内の駐車場に隣接したリンクの渋滞レベルを高く設定したり、イベント終了予測時刻後10分間の渋滞レベルをピークとして、その前後10分毎に渋滞レベルを1レベルずつ低くしたりする。また、同じ野球の試合であっても、試合が昼間に行われる場合より夜に行われる場合の渋滞レベルを高く設定するなど、渋滞時間帯に応じて設定されてもよい。
このようにして渋滞発生予測箇所、渋滞予測時間帯、渋滞レベルを含む渋滞予測情報が作成されると、ステップ6において、制御部10は、作成された渋滞予測情報をRAM60に記憶し、更新する。以上で、渋滞予測装置1がルーチンとして行う動作を一通り終了する。
次に、渋滞予測装置1を用いた経路案内装置2において、渋滞情報及び渋滞予測情報に基づいて地図表示及び経路設定を行う際の動作について、図5のフローチャートを参照して説明する。なお、渋滞情報と渋滞予測情報は、受信した文字多重放送のデータから既に摘出されているものとする。
まず、制御部10は、ステップ11において、目的地が設定されているか否かを判別する。目的地の設定は、入力部70などによって行われ、設定された目的地はRAM60に記憶されている。
目的地の設定がされていれば、ステップ12において、制御部10は、GPS受信部20により測定した車両の現在位置情報、移動方向情報と、RAM60に記憶された目的地、渋滞情報及び渋滞予測情報に基づき経路設定を行う。目的地の設定がされていない場合には、経路設定は行わない。経路設定を行う場合には、渋滞情報及び渋滞予測情報を参照して、最適な経路を探索する。具体的には、経路探索時のリンク計算において、前記したようなリンクの重み付けがなされるため、渋滞を回避するようなリンクコストの小さい経路が探索される。なお、リンクコストによる重み付けを行う代わりに、渋滞情報に含まれる渋滞箇所及び渋滞予測情報に含まれる渋滞発生予測箇所を必ず回避するよう経路を探索してもよい。
次に、制御部10は、設定可能な複数の画面表示モードのうち、ユーザにより地図表示モードが選択されているか否かを判別する(ステップ13)。画面表示モードとしては、現在地周辺の地図や設定された経路を表示部80に表示する地図表示モード、図示しない読取部に挿入されたCD/DVDやハードディスク40から読み取られた音楽データに関する情報を表示部80に表示するオーディオモード、図示しないテレビアンテナや文字多重放送受信部30がテレビや見えるラジオなどの放送局から受信した映像や文字などの情報を表示部80に表示する受信情報表示モードなどが例示できる。地図表示モードが選択されている場合にはステップ14に進む。地図表示モードが選択されていない場合には今回の処理を終了する。
制御部10は、表示部80により、RAM60に記憶された渋滞情報及び渋滞予測情報を表示する(ステップ14)。情報の表示タイプは、経路案内装置2に応じて、文字表示型(レベル1)、簡易図形表示型(レベル2)、地図表示型(レベル3)の3タイプのいずれかに設定される。なお、ステップ12で経路設定が行われた場合には、設定された経路も表示部80に表示される。表示する経路としては、距離、時間、一般道路などのいずれかを優先する複数の経路の設定が可能である。あるいは、渋滞情報または渋滞予測情報のテキストデータを音声に変換し、音声出力部90を用いてスピーカから音声により乗員に報知してもよい。渋滞情報及び渋滞予測情報を表示すると、今回の処理を終了する。
以上、本発明を実施するための最良の形態について記載したが、本発明は上記した実施形態のみに限定されるものではなく、その他、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
以上のように、本発明の渋滞予測装置によれば、イベント情報を文字放送経由で受信したデータの中から摘出することができるので、インターネットにアクセスしてウェブサイト上からイベント情報を摘出する必要がなくなり、イベント情報摘出のためのデータ通信を不要とすることができる。
また、受信する文字放送の放送局を選局することによって、現在位置で受信可能な放送局やイベント情報を含む放送局のみから文字放送を受信することができるので、渋滞を予測するために適切な文字放送を容易に受信することができる。
また、イベント情報の摘出対象を、選局された放送局の文字放送チャンネルの中から、イベント情報を含む可能性が高いチャンネルに関するチャンネルデータに絞り込むことができるので、イベント情報の摘出を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】

【図1】渋滞予測装置及びそれを用いた経路案内装置のシステム構成図。
【図2】渋滞予測装置によって渋滞を予測する際の動作を示すフローチャート。
【図3】文字放送データの構成例と目次の階層例。
【図4】表示部による文字放送の目次の表示例。
【図5】渋滞情報及び渋滞予測情報に基づく地図表示及び経路設定の動作を示すフローチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字放送を受信する受信手段と、受信した前記文字放送に含まれるデータに基づいてイベントの開催地と進捗状況を含むイベント情報を摘出するイベント情報摘出手段と、摘出した前記イベント情報に基づいて、発生が予測される渋滞に関する渋滞予測情報を作成する渋滞予測情報作成手段と、を備えた渋滞予測装置。
【請求項2】
前記渋滞予測情報作成手段は、前記進捗状況に応じて、前記開催地周辺の所定区域で渋滞が発生することを予測する渋滞予測情報を作成することを特徴とする、請求項1に記載の渋滞予測装置。
【請求項3】
前記イベント情報摘出手段が前記イベントの開始時刻または終了時刻を摘出した時に、前記渋滞予測情報作成手段は、摘出した前記開始時刻または終了時刻を基準とした所定の時間帯に渋滞が発生するように渋滞予測情報を作成することを特徴とする、請求項2に記載の渋滞予測装置。
【請求項4】
前記イベントは、スポーツイベントまたは音楽イベントであることを特徴とする、請求項1乃至3に記載の渋滞予測装置。
【請求項5】
前記イベント情報摘出手段は、前記イベントの途中経過情報を摘出し、前記渋滞予測情報作成手段は、前記途中経過情報に含まれる途中経過の時刻からイベントの終了時刻を予測し、予測した前記終了時刻に基づいて渋滞の発生を予測する渋滞予測情報を作成することを特徴とする、請求項4に記載の渋滞予測装置。
【請求項6】
前記受信した文字放送に含まれるデータに基づいて、前記受信した文字放送を構成するチャンネルのうち、前記イベント情報を含むと予測されるチャンネルを選択するチャンネル選択手段を備え、前記イベント情報摘出手段は、前記チャンネル選択手段により選択されたチャンネルのデータから前記イベント情報を摘出することを特徴とする、請求項1乃至5に記載の渋滞予測装置。
【請求項7】
現在位置を検知する現在位置検知手段と、前記現在位置検知手段により検知された現在位置に基づいて文字放送の放送局を選局する選局手段を備え、前記受信手段は、前記選局手段により選局された放送局からの文字放送を受信することを特徴とする、請求項1乃至6に記載の渋滞予測装置。
【請求項8】
請求項1乃至7に記載の渋滞予測装置を用いた経路案内装置であって、前記渋滞予測情報作成手段により作成した渋滞予測情報を表示部に表示することを特徴とする、経路案内装置。
【請求項9】
車両に搭載されて、受信した前記文字放送に含まれるデータに基づいて現在発生している渋滞に関する渋滞情報を摘出する渋滞情報摘出手段を備え、摘出された前記渋滞情報を表示部に表示することを特徴とする、請求項8に記載の経路案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−250942(P2009−250942A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103042(P2008−103042)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】