説明

減衰中間層を有する複合積層板及びその作製方法

減衰作用によって騒音と振動を低減する柔軟性材料の中間層を含む構造応用に使用される複合積層板である。中間層は、衝撃、騒音又は振動によって発生する応力下で変形する粘弾性材料を含むことができる。粘弾性材料に強化材を組み込んで積層板の機械的強度と剛性を維持することができる。強化材は、中間層に剛性を付与する単繊維又は織り繊維あるいは隆起チューブを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、構造応用、特に航空機に使用される複合積層板に関し、更に具体的には構造減衰性を付与する強化中間層を有する複合積層板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボン繊維強化エポキシ樹脂等の複合材料は、アルミニウム等の金属に比べ、その軽量性及び高強度から航空機への応用に使用されている。更に最近では、これらの複合材料は航空機内の内部キャビンを囲む胴体構造に使用されている。胴体構造への複合材料の使用により、エンジン及び空気力学的騒音だけでなく、航空機の内部への振動の伝達を低減できる可能性がある。
【0003】
騒音及び振動を低減するために、振動及び騒音を少なくとも部分的に減衰させて内部キャビンへの伝播を防ぐ機能を持つ「増設」パーツを航空機に設置することができる。騒音及び振動を十分低減するために、材料及び設置作業にかかる費用両方の視点から高価である比較的多数のこの増設パーツが必要となる可能性がある。さらに、この追加パーツにより航空機の重量が増す。
【0004】
複合材料を使用する場合、特有の高い減衰度を有する胴体等の航空機の構造を設計するのは特に難しい。複合材料は通常、胴体外板が一般的な飛行高度において華氏マイナス60度以下に達する温度に通常曝される航空機の稼働状態とは対照的に、比較的高温及び高圧で硬化される。したがって、低温でうまく機能する(普通非常に柔軟な材料が要求される)が、基板と同時に硬化される際の熱と圧力に耐えることができる減衰材料システムを設計するのは特に難しい可能性がある。上記のような低い稼働温度でうまく機能する理想的な材料は、非常に低いガラス転移温度(Tg)を有するため、稼働温度においては柔軟な移行段階にある。さらに、低重量への応用のために、このような低温において薄い減衰材料の膜を使用するには、材料の弾性率が通常カーボン/エポキシ複合材料と比べて非常に低くなる。このため、複合材料構造内に固有の減衰性を付与するために比較的柔らかい材料を使用することによって剛性が下がる可能性があり、これは、比較的柔軟な減衰材料が、しばしば有機複合材料とも呼ばれる通常のカーボン繊維強化プラスチック(CFRP)の層よりも実質的に柔らかいためである。
【発明の概要】
【0005】
したがって、実質的に剛性及び構造の他の機械性能特性を低減することなく比較的高い固有の減衰性を持つ複合材料構造が必要とされている。本開示の実施形態はこの必要を満たすためのものである。
【0006】
本開示の一実施形態は、減衰複合積層板を提供し、この減衰複合積層板は、強化樹脂材料の少なくとも第1層及び第2層、及び第1層及び第2層に同時硬化された減衰材料の第3層を含むことができる。減衰材料の第3層は、粘弾性材料を堅くするための強化媒体を有する粘弾性材料を含むことができる。強化媒体は粘弾性材料に組み込まれた繊維を含むことができる。この繊維の長さは第1層及び第2層の面に対して概して直角の方向に延びていてよい。この繊維は粘弾性材料を含浸させた又は粘弾性材料でコーティングしたガラス又はカーボン束又は軽量合成布からできていてよい。この繊維は、繊維が組み込まれた粘弾性材料のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する第2粘弾性材料でできていてよい。第3層は、グラファイトナノ繊維又はナノチューブ(多重壁(MWNT)又は単一壁(SWNT))又は粘弾性材料内に分散されたナノ又はマイクロサイズの粒子を含むことができる。ナノ繊維又はナノチューブ又は粒子は、熱可塑性ポリウレタン等の粘弾性材料の膜に含まれていてよい。
【0007】
別の実施形態によると、複合積層板構造が提供されており、この複合積層板構造はカーボン繊維強化プラスチック(CFRP)の少なくとも第1及び第2層と、第1及び第2層の間の強化粘弾性材料の第3層を含むことができる。粘弾性材料は熱可塑性ポリウレタン、又はアクリル又はラテックスゴム等の別の高減衰ポリマーであってよい。第3層は連続的でなく、第1及び第2層の間を橋渡しする非連続的な層であってよい。この橋渡しは、高弾性率のカーボン有機樹脂プリプレグ、又はスリットテープの幅の狭い一片によって達成することができる。スリットテープは航空機の胴体部分の縦型補強材に対し直角の方向に延びる長さ部分を有することができる。この橋渡しはまた、硬化中に第1及び第2層から移動する樹脂で充填された粘弾性材料に目打ちを行うことによって達成できる。この橋渡しは、第1及び第2層に直交し第3層の厚さ方向に延びる繊維糸状体(Z繊維)を採用することにより達成できる。これらの繊維糸状体の長さが第3層の厚みを超えて、端部が第1及び第2層まで延びる可能性もある。これらの繊維糸状体はカーボン又はガラス繊維でできていてよく、エポキシ又は好適な有機樹脂を予め含浸させておいてよい。第3層は第1及び第2層と同時硬化させて、複合積層板に構造の固有減衰性を付与する強化中間層を形成する。
【0008】
本開示の別の実施形態では、減衰複合積層板構造の作製方法が提供されている。本方法は、カーボン繊維強化プラスチック(CFRP)材料の第1及び第2層の間に減衰材料の層を置き、減衰材料の層を第1及び第2層とともに同時硬化させるステップを含むことができる。同時硬化は、第1及び第2層を減衰材料の層と共に圧縮し、第1及び第2層を減衰材料の層とともに同時硬化させることで達成される。減衰材料の層を第1層に付着させ、その後に減衰材料の層の上に第2層が形成することができる。本方法は、同時硬化が行われる前に減衰材料の層に強化材を導入するステップを更に含む。減衰材料の層に強化材を導入するには、強化媒体を供給し、強化媒体に粘弾性材料を注入するステップを含むことができる。
【0009】
本開示の更なる実施形態では、第1及び第2プリプレグを形成するステップと、構造に減衰特性を付与する減衰材料の層を形成するステップと、第1及び第2プリプレグの間に減衰材料の層を配置することによって積層体を形成するステップと、積層体を同時硬化させるステップを含むことができる複合積層板構造を作製する方法が提供される。第1及び第2プリプレグは、減衰層とともに同時硬化中に圧縮される。第1及び第2プリプレグは、カーボンエポキシ複合材料等のカーボン繊維強化プラスチック材料の複数の層を積み重ねることにより、形成することができる。減衰材料の層は、単繊維又は強化繊維ウェブのいずれかを含む熱可塑性物質でコーティングされた強化繊維のプリプレグを形成することにより形成することができる。
実施形態のこれらの及び更なる特徴、態様及び利点は、下記の図面、説明及び請求項を参照することにより、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本開示の一実施形態による減衰中間層を有する複合積層板構造の断面図である。
【図2】図2は本開示の別の実施形態による減衰中間層を有する複合積層板構造の断面図である。
【図3】図3は本開示の別の実施形態による減衰中間層を有する複合積層板構造の断面図である。
【図4】図4は本開示の別の実施形態による減衰中間層を有する複合積層板構造の断面図である。
【図5】図5は図4に示す複合積層板構造に使用できる湿潤強化繊維の断面図である。
【図6】図6は本開示の別の実施形態による減衰中間層を有する複合積層板構造の断面図である。
【図7】図7は図6に示す複合積層板構造の一部の部分拡大図である。
【図8】図8は図6及び7に示す中間層に使用される単一Z繊維の斜視図である。
【図9】図9はZ繊維が予め挿入されたVEM中間層の側面立面図である。
【図10】図10は図9と同様の図だが、VEM中間層の反対側にプレスされた積層を示す図である。
【図11】図11はVEM中間層の周囲に分布しているZ繊維を有する複合積層板構造の平面断面図である。
【図12】図12は図11に同様の図であるが、VEM中間層全体に均一に分布しているZ繊維を示す図である。
【図13】図13は中間層にスリットテープ強化材を採用している複合積層板構造の別の実施形態を示す平面図である。
【図14】図14は図13の線14−14に沿った断面図である。
【図15】図15は穿孔中間層を有する複合積層板減衰構造の別の実施形態の平面図である。
【図16】図16は図15の線16−16に沿った断面図である。
【図17】図17a〜17cは図15及び16に示す穿孔中間層に利用可能な穿孔形状の例図である。
【図18】図18は網で強化した中間層を有する複合積層板構造の別の実施形態の平面図である。
【図19】図19は図18の線19−19に沿った断面図である。
【図20】図20は減衰中間層が粒子で強化されている複合積層板構造の別の実施形態の部分拡大図である。
【図21】図21は減衰中間層を有する複合積層板構造の加工に使用されるプリプレグに強化膜を転写する装置を示す図である。
【0011】
図1にそれぞれ第1層12及び第2層14と、第1層12と第2層14との間に配置され第1層12と第2層14に同時硬化される中間層16を備える減衰複合積層板構造10を示す。各層12、14は例えばカーボン繊維強化エポキシ樹脂及びカーボン繊維強化プラスチック材料等の強化合成材料の複数の層を含むことができる。中間層16は強化材17を含むことができる。強化材17は粘弾性材料を含浸させた、編み糸、繊維糸状体、粗糸、テープ、又は樹脂の形状の連続的な繊維性糸状体を含む織物又は編物であってよい。強化材17はまた、繊維状の第2粘弾性材料を含むこともできる。強化材17を形作っている強化繊維は、1つの層の中の全ての繊維が互いに平行に延びている配向方向を有し、隣接する層の配向方向が異なる角度を有することができ、これにより機械特性、特に積層板構造10の剛性を改善することができる。
【0012】
中間層16は第1層12及び第2層14と比べて比較的柔らかい材料、例えば非限定的に粘弾性材料(VEM)でできていてよい。VEMは、熱可塑性物質、熱可塑性エラストマー又は熱硬化性樹脂として分類される様々な材料を含んでいる。VEMは積層板構造10に減衰特性を付与するために高い損失正接又は損失弾性率の貯蔵弾性率に対する比を有する必要がある。VEM材料のガラス転移温度(Tg)は、VEMが柔らかい転移期に稼働するように、稼働温度よりも低くあるべきである。Tgはガラスの転移が起きる温度範囲のほぼ中間点であり、分子運動性を増加させて硬化樹脂システムの特性を大幅に変化させる温度である。通常、ポリマーはガラス転移温度以下では、効果的に延性である又は柔らかいとはいえないが、この温度以上では、大幅な弾性/可塑性の変形を起こすことができる。
【0013】
VEMは、第1層12及び第2層14の層内に使用される樹脂の弾性率よりもほぼ2桁以上小さい弾性率を有し得る。中間層16を形成しているVEMの相対的な柔軟さにより、中間層16は比較的薄くなるが、非常に低い温度においても効果的であるため重量効率のよい設計となる。更に具体的には、中間層16の相対的な柔軟さにより、第1層12及び第2層14がそれぞれの面内で互いに相対的に移動することが可能になり、これにより中間層16のVEMが歪んでずれが生じる。中間層16内部のVEMのせん断歪みは高い損失正接特性を伴って、衝撃、振動及び音響励起によって積層板構造10に生じるエネルギーを消散させることが可能になる。積層板構造10の例えば剛性等の機械特性が、中間層16の比較的柔らかいVEMの存在によって衰えることがないように、強化材17によって中間層16を強化する。
【0014】
積層板構造10の減衰作用は、VEMの負荷応力及び歪み応答の間の位相差から生じる。減衰性又は損失正接は応力と歪みの間の位相角であり、材料固有の特性である。位相差は、長い鎖状の分子の弛緩から生じる。減衰又は弛緩は、事前荷重(静的)が高いと減るが、(動的)交互応力が高いと増加する。積層板構造10の設計には、中間層16内のVEMの歪みを増加させることが望ましい。VEMのせん断歪みはカーボンエポキシ積層板構造10の位置に基づいて最適化することができる。この歪みはまた、例えば非限定的に粒子又は細断したカーボン繊維等の局所的含有物を使用して増加させることもできる。これらの含有物はポリマー中間層16の歪みを増加させ、これにより積層板構造10におけるエネルギー消散作用を増加させる。
【0015】
図2に、中間層16を有する積層板構造10aの別の実施形態を示す。中間層16はVEM繊維あるいはVEM帯の粗目織りの網又は布19から形成されていてよく、VEM繊維あるいはVEM帯の粗目織りの網又は布19は、航空機のあらゆる稼働温度においても十分な剛性を発揮するが、せん断される際に高い減衰性を呈するようなガラス転移温度Tgを有している。
【0016】
VEM網19は、比較的低いTgを有するVEM樹脂を含浸させてあるため、VEM網19を囲むVEMマトリックスは航空機のあらゆる稼働温度においても比較的柔らかいままである。VEMマトリックスは、例えば非限定的に低いTgと高い損失正接を有する熱可塑性物質又は熱可塑性エラストマーを含むことができ、VEM網19は、VEMを含浸させた熱可塑性ポリウレタン又は他の合成繊維布を含むことが出来る。
【0017】
図2に示す実施形態においては、任意のバリア層20、22を中間層16、及び第1層12と第2層14の間にそれぞれ形成する。バリア層20、22は、例えば非限定的にエポキシ樹脂と化学的及び熱的に混合可能である別の熱可塑性物質、又はナイロン布(Cerex)等の材料を含むことができる。このバリア層20、22は、中間層16におけるVEMの移動及び層12、14でのエポキシ樹脂の移動を制限するように機能することにより、これら2つの材料が分離され混合が避けられる。VEMとエポキシ樹脂の混合により、中間層16の減衰特性が低下する可能性がある。満足な結果をもたらす一実施形態では、バリア層20、22の厚さは0.0005〜0.002インチの間であってよい。バリア層20、22はまた、VEM膜が自動テープ敷設装置を使用して取り出されるのに好適になるように働く。各バリア層20、22は比較的剛性であるため、自動の繊維配置製造工程で使用される際に、マルチヘッドテープレイヤー(MHTL)装置を使用して1本のロールからVEM膜をはがすことが可能になる。
【0018】
図3に、中間層16がカーボン繊維の織布又は編布21から形成されている積層板構造10bの別の実施形態を示す。このカーボン繊維の織布又は編布21では、繊維房が交互に配置されクロスプライ(すなわち、0/90°)又はアングルプライ(+□/−□)形状となっている。カーボン繊維布21には低TgVEMを含浸させている。このVEMはカーボン繊維布21に加熱プレスされた熱可塑性ポリウレタン又は他の樹脂マトリックス等の材料膜を含むことができる。
【0019】
図4及び5に、積層板構造10cの更なる実施形態を示す。この積層板構造10cでは、中間層16がVEM32でコーティングされた単向性のカーボン繊維糸状体30でできている。図6に示すように、繊維糸状体30の中のカーボン繊維はVEM32で完全に湿潤していてよい。応用形態によっては、ガラス繊維をカーボン繊維糸状体30と置き換えることができる。図4及び5に示す実施形態では、カーボン又はガラス繊維30によって、中間層16に必要な機械的剛性及び強度が付与され、VEM32を繊維30にコーティングすることにより、所望の減衰性が得られる。VEM材料32によって付与される減衰メカニズムは図4及び5の実施形態におけるせん断よりも主として伸張から起こるため、中間層16を積層板構造10cの様々な位置に配置させることができる。例えば、各層12、14が複数の複合材料層を含むところでは、中間層16を層12又は層14のいずれか、あるいは両方の層のいずれかの間に配置させることができる。応用形態によっては一以上の中間層16が使用され、これら複数の中間層16は互いに隣接して、又は層12、14内のいずれかの層の間に位置づけされる。
【0020】
更なる実施形態10dを図6〜12に示す。この実施形態10dでは、中間層16はVEMマトリックス43内に保持される複数のZ繊維34(繊維の厚みを通る)でできている。繊維34は、これらが挿入される向きが従来のいわゆる幾何学的Z方向であり、層12、14の面に対して垂直であるために、「Z」繊維と呼ばれている。各Z繊維34は、例えばガラス又はカーボン繊維等の強化繊維糸状体37を含み、繊維糸状体37の端部39、41は繊維糸状体37の本体に対して垂直に配向した単繊維として扇形に広がっている。図7から分かるように、繊維糸状体37の本体はおおむね層12、14に対して垂直に延びており、端部39、41の単繊維房はそれぞれ積層12、14とともに同時硬化される。
【0021】
Z繊維34は、周知の挿入方法で膜であってよいVEMマトリックス43に、端部39、41がVEM43の両側から突き出すように組み込まれる。図7から良くわかるように、繊維糸状体37の端部39、41によってVEM43の両側の層12、14のより剛性の材料に、及び/又はその中に繊維34が固定され、これにより荷重が「Z」方向40aに移動する。したがって、Z繊維34の間の空間は、中間層16に必要な減衰性を付与するVEM材料43で充填されている。Z繊維34により積層12、14が効率的に機械的に接続され、これにより中間層16に必要な剛性を付与し、中間層16の曲げ剛性が増加する。
【0022】
図9に示すように、Z繊維34を従来の挿入器具を用いてVEM膜43に挿入することにより中間層16を形成することができる。Z繊維34が膜43に予め挿入されたあとに、膜43が図10に示すように積層体45の層12、14の間に配置される。積層体45は次に従来技術を用いて高温で圧縮及び硬化される。
【0023】
Z繊維34は中間層16内に様々なレイアウトで配置させることができる。例えば、図11はVEM43の中間層16を含む航空機の外板部分44を示している。Z繊維34はVEM層44のVEM膜43周囲の周りに挿入される。Z繊維34はまた、図12に示すZ繊維34のマトリックスレイアウトで図示されるように、中間層16全体に一定のパターンで挿入することもできる。
【0024】
図13及び14に、複合積層板構造10eの更なる実施形態を示す。航空機の外板部分46は、カーボン繊維強化エポキシ等の強化材料のスリットテープ50の一片を含む中間層16パッチを含んでいる。テープ50はVEMマトリックス48に配置される。中間層16は、中間層16の幅が外板部分46の幅よりも狭く、中間層16の長さが外板部分46の長さよりも短いため、「パッチ」と呼ばれる。中間層16は複数の層54の間に完全に配置されている。層54の外側表面はカーボン繊維強化エポキシ含浸布の層52で覆われている。
【0025】
ここで、胴体の外板部分64等の複合積層板構造10fの別の実施形態を図示する図15及び16を参照する。胴体の外板部分64では、中間層16は、積層12、14の間に延在する複数の穿孔58が形成される好適なVEM膜60によって形成されている。膜60は例えばフランス、ツーロンのSMACから入手可能な商品名SMACTANE(登録商標)で特定されるような粘弾性ゴム等を含むことができる。穿孔58の数と大きさは特定の応用形態によって変わる。中間層16を完全に貫通する穿孔58によって、樹脂が層12、14の間を移動可能になり、硬化するとVEM膜マトリックス60で囲まれる層12、14の間に堅い接続部を形成する。穿孔58を充填する樹脂による層12、14の間の直接的な接続により、中間層16が柔らかすぎるときに積層板構造10fが分割積層板として機能する可能性が低減される。
【0026】
穿孔58は中間層16全体に不規則に又は一定のパターンで形成することができる。穿孔58はいずれかの様々な断面形状を有することができる。例えば、穿孔58の断面形状は図17aに示すように丸くてもよく、図17bに示すように細長くてもよく、又は図17cに示すように四角くてもよく、又は一以上のこれらのあるいは他の形状との組み合わせであってよい。
【0027】
図18及び19に、外板部分66を備える複合積層板構造10gの別の実施形態を示す。外板部分66は、図2の積層板構造10aとおおむね同様の、VEM樹脂70を含浸させた単一層のVEM網68を含む中間層16を備えている。VEM網68のガラス転移温度TgはVEM樹脂70のTgよりも高いため、航空機の全ての稼働範囲にわたって、VEM網68により適切な剛性が付与され、VEM樹脂70は比較的柔軟に保たれる。この実施形態においては、中間層16が積み重ねられた層12、14によって完全に包囲されて覆われることにより、外板部分66に減衰パッチを形成する。
【0028】
上述した各積層板構造10−10gの場合、中間層16は第1層12及び第2層14とともに積層体として形成され、真空バッグ処理又はオートクレーブ法等の従来技術を用いて同時硬化されることにより、中間層16は第1層16及び第2層18に同時硬化されて連結積層板構造10−10gが作製される。
【0029】
上述した減衰積層板構造の他の変形例も可能である。例えば、図20に示すように、VEMマトリックス材料43を含む中間層16は、比較的剛性の材料をVEM材料43に混合させることにより強化することができる。この強化材料は、細断したカーボン又はセラミックマイクロバルーンのマイクロ(メートル)サイズの粒子77であってよい。また、粒子77は多重壁及び単一壁のナノチューブ又はナノ繊維を用いてナノ(メートル)の大きさにすることもできる。これらの粒子77又は含有物はまだ水相状態にある時(薄膜に形成される前)に減衰ポリマーに混合させることができる。マイクロメートルサイズの粒子77はVEM43よりもかなり硬く、VEM43に分散された時に2つの材料の組み合わせは(混合の法則によれば)滑らかなVEM43よりもより硬くより強くなる、つまりVEM43はいずれの強化材料も含んでいない。ナノサイズの粒子77は主に分子の原子レベルで機能して分子間のイオン結合の強度を上げるのに役立ち、これによりVEM43とカーボンエポキシ層12、14の間の結合の強度が上がる。
【0030】
図21に、繊維強化エポキシ樹脂マトリックス78とVEM膜74のプリプレグを形成するための装置を示す。VEM膜74は連続ロール76から繊維強化エポキシ樹脂材料のプリプレグ78と共に、加熱素子80に供給される。加熱素子80によりプリプレグ78と膜74が予熱されたあとに、膜74をプリプレグ78に結合させる連結ローラー82に通して処理される。連続ロール86から剥離紙84がプリプレグ78の表面に供給され、その結果、最終的なプリプレグ88がロール90上に堆積する。
【0031】
本開示の実施形態を特定の例示の実施形態に関連させて説明してきたが、当然ながら特定の実施形態は説明を目的とした非限定的なものであり、当業者であれば他の変形例を発想することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン繊維強化プラスチック材料の少なくとも第1及び第2層、及び
第1及び第2層の間に配置され第1及び第2層に同時硬化される、減衰材料及び強化媒体を含む第3層
を含む減衰複合積層板。
【請求項2】
減衰材料が粘弾性材料を含む、請求項1に記載の減衰複合積層板。
【請求項3】
第3層の全ての側面が第1及び第2層で囲まれている、請求項1に記載の減衰複合積層板。
【請求項4】
強化媒体が粘弾性材料に組み込まれた繊維を含む、請求項2に記載の減衰複合積層板。
【請求項5】
繊維の長さが第1及び第2層の面に対しておおむね直角の方向に延びている、請求項4に記載の減衰複合積層板。
【請求項6】
繊維がZ繊維である、請求項5に記載の減衰複合積層板。
【請求項7】
繊維が第1及び第2層に同時硬化される、請求項4に記載の減衰複合積層板。
【請求項8】
減衰材料が、第1ガラス転移温度を有する第1粘弾性材料を含み、
強化媒体が、第1ガラス転移温度よりも高い第2ガラス転移温度を有する第2粘弾性材料で含浸された繊維を含む
請求項1に記載の減衰複合積層板。
【請求項9】
減衰材料が、第1ガラス転移温度を有する第1粘弾性材料を含み、
強化媒体が、第1粘弾性材料の中に組み込まれた第2粘弾性材料の粗目織物を含み、第2粘弾性材料のガラス転移温度が、第1粘弾性材料のガラス転移温度よりも高い、
請求項1に記載の減衰複合積層板。
【請求項10】
強化媒体が減衰材料の中に含まれる含有物を含む、請求項1に記載の減衰複合積層板。
【請求項11】
含有物が、
細断したカーボン繊維、
繊維房、
Z繊維、
繊維強化樹脂の分割テープ、
セラミックマイクロバルーン、
ナノ繊維、
ナノチューブ
のいずれか1つを含む、請求項10に記載の減衰複合積層板。
【請求項12】
第1層及び第3層の間に配置される第1バリアと、第2層及び第3層の間に配置される第2バリアとを更に含む、請求項1に記載の減衰複合積層板。
【請求項13】
強化媒体が第1粘弾性材料からできた網を含む、請求項1に記載の減衰複合積層板。
【請求項14】
減衰材料が第2粘弾性材料からできており、網に第2粘弾性材料を含浸させている、請求項13に記載の減衰複合積層板。
【請求項15】
強化媒体が第2及び第3層の間の硬い結合部を含んでいる、請求項1に記載の減衰複合積層板。
【請求項16】
第3層が穿孔を含み、
硬い接続部が、穿孔内に配置され第1及び第2層の間に延びている樹脂を含む、
請求項15に記載の減衰複合積層板。
【請求項17】
繊維強化樹脂の少なくとも第1及び第2層、
第1及び第2層の間の粘弾性材料の第3層、ならびに
第3層の中の繊維強化材
を含む、複合積層板構造。
【請求項18】
粘弾性材料が熱可塑性ポリウレタンである、請求項17に記載の複合積層板構造。
【請求項19】
繊維強化材が、第1及び第2層に対しておおむね平行である粘弾性材料を通って延びる繊維網を含む、請求項17に記載の複合積層板構造。
【請求項20】
繊維網に粘弾性材料及びエポキシ樹脂の内の1つを含浸させている、請求項19に記載の複合積層板構造。
【請求項21】
繊維強化材が、粘弾性材料の中に分散された単繊維を含む、請求項17に記載の複合積層板構造。
【請求項22】
繊維強化材が、粘弾性材料を強化するための、第1及び第2層の間に延びている複数のZ繊維を含む、請求項17に記載の複合積層板構造。
【請求項23】
繊維強化材が、第1及び第2層に同時硬化される、請求項17に記載の複合積層板構造。
【請求項24】
粘弾性材料が第1ガラス転移温度を有し、
繊維強化材が、第1ガラス転移温度よりも高い第2ガラス転移温度を有する粘弾性材料を含む、
請求項17に記載の複合積層板構造。
【請求項25】
第3層が第1及び第2層に同時硬化される、請求項17に記載の複合積層板構造。
【請求項26】
第1及び第3層の間に配置される第1バリア層と、第2及び第3層の間に配置される第2バリア層を更に備える、請求項17に記載の複合積層板構造。
【請求項27】
下記のステップ:
(A)強化媒体を減衰材料の層に組み込むステップ
(B)繊維強化樹脂材料の第1及び第2層の間に減衰材料の層を配置するステップ
(C)減衰材料の層を第1及び第2層と共に同時硬化させるステップ
を含む、減衰複合積層板構造を作製する方法。
【請求項28】
ステップ(C)が、第1及び第2層と、減衰材料の層を圧縮するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ステップ(B)が、
減衰材料の層を第1層に付着させるステップ、及び
その後に、第2層を減衰材料の層の上に形成するステップ
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(A)が、強化含有物を液状の粘弾性材料の中に混合させるステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
ステップ(A)が、強化媒体に粘弾性材料を注入するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
ステップ(A)が、
強化合成繊維ウェブを提供するステップ、及び
粘弾性材料膜をウェブにプレスするステップ
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(A)が、
強化合成繊維を提供するステップ、及び
繊維に粘弾性材料をコーティングするステップ
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
ステップ(A)が、
第1ガラス転移温度を有する粘弾性材料ウェブを提供するステップ、及び
ウェブに第1ガラス転移温度よりも低い第2ガラス転移温度を有する粘弾性材料を含浸させるステップ
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
ステップ(A)が、ナノ粒子を液状の粘弾性材料に取り入れるステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
ステップ(A)が、Z繊維を第1及び第2層の間に配置して曲げ剛性を増加させるステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
ステップ(A)が、ステップ(A)を行う前に、Z繊維を粘弾性膜に挿入するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
(A)第1及び第2プリプレグを形成するステップ、
(B)構造に減衰特性を付与する減衰材料層を形成するステップ、
(C)強化媒体を減衰材料層に取り入れるステップ、
(D)第1及び第2プリプレグの間に強化減衰材料の層を配置することによって積層体を形成するステップ
(E)積層体を同時硬化させるステップ
を含む、複合積層板構造を作製する方法。
【請求項39】
(F)ステップ(E)が行われている間に、第1及び第2プリプレグと減衰層を圧縮させる
ステップを更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ステップ(A)が、カーボン繊維強化樹脂材料の複数の層を積み重ねるステップを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
ステップ(B)と(C)が、熱可塑性物質をコーティングした強化繊維のプリプレグを形成することによって行われる、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
強化繊維のプリプレグが、強化繊維ウェブを形成し、このウェブを液状の熱可塑性材料の槽に通すことにより形成される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ステップ(C)が、分散した強化粒子を含む膜を提供するステップを含み、
ステップ(B)が、膜を第1プリプレグと直接接触させて、膜を第1プリプレグと結合させるステップを含む、
請求項38に記載の方法。
【請求項44】
ステップ(C)が、粘弾性材料膜を強化合成繊維ウェブ上にプレスするステップを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
ステップ(C)が、
強化合成繊維を提供し、
繊維を粘弾性材料でコーティングする
ステップを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
ステップ(C)が、
第1ガラス転移温度を有する粘弾性材料ウェブを提供し、
ウェブに、第1ガラス転移温度よりも低い第2ガラス転移温度を有する粘弾性材料を含浸させる
ステップを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
ステップ(C)が、Z繊維で第1及び第2プリプレグの間を橋渡しするステップを含む、請求項38に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17a】
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【図17b】
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【図17c】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2010−516512(P2010−516512A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547244(P2009−547244)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/087267
【国際公開番号】WO2008/115301
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】