説明

温度調節装置及びこれを有する基板処理装置、前記基板処理装置の温度を制御する方法

【課題】冷却水の温度を調節するチラの作動条件を容易に調節できる基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置の支持部材に接続されるチラは循環回路304と調節器302とを有し、循環回路304は圧縮器310、凝縮器320、膨脹器330、及び蒸発器340を有し、膨脹器330は互いに並列に連結された複数の膨脹バルブ332を有する。また、循環回路は圧縮された冷媒蒸気を蒸発器340に直接供給するように互いに並列に連結された複数の冷媒蒸気ライン352を有する。工程進行時に使用される膨脹バルブ332及び冷媒蒸気ライン352の数または種類は調節器302によって調節され、制御器はこれらに対する制御情報を調節器302に送る。制御器には複数の設定データが貯蔵され、作業者が処理室で実行される工程に関する情報である工程データを入力すれば、ここに該当する設定データが検索されて調節器302に送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板を製造する装置及び方法に係り、詳細には、冷却流体の温度を調節する温度調節装置及びこれを有する基板処理装置、前記基板処理装置の温度を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを製造するためにウェーハのような半導体基板上に蒸着、露光、エッチング、及び研磨などのような多くの工程が繰り返して行われている。各工程は、その工程に適する工程条件を有する。ここで、工程条件は、処理室内または工程進行中のウェーハの工程環境を意味する。主要な工程条件としては、工程進行時、ウェーハの温度、処理室内の温度、処理室内の圧力、電極板に加えられる高周波電力、処理室内に供給される工程ガスの量などがある。各々の工程条件が安定的に提供された状態で工程が実行されなければ、ウェーハの不良率が高くなる。例えば、乾式エッチング工程の場合、設定された工程条件から外れた状態で工程が実行されれば、エッチング率とエッチング均一度などが低下する。
【0003】
これら工程条件のうち、温度に関する工程条件を満たすために、チラ(chiller)のような温度調節装置が用いられる。チラは冷却水の温度を調節して、工程進行のうち過度な熱が発生される電極板や処理室におけるチャンバを冷却することによってウェーハの温度を一定に維持し、高温によってウェーハが破損されたり、工程不良が発生されたりすることを防止する。
【0004】
チラは、圧縮器、凝縮器、膨脹バルブ、及び蒸発器を有し、蒸発器で冷媒と冷却水との間で熱交換が行われる。膨脹バルブの種類に応じて蒸発器に供給される冷媒の供給量が異なっており、冷媒の供給量は冷却水の温度に多大な影響を及ぼす。また、工程の種類に応じて処理室で要求される工程温度は異なっている。例えば、エッチング工程を実行する場合、エッチングされる物質膜の種類に応じて工程温度は異なる。エッチングされる物質膜が酸化膜の場合、ウェーハは約−30℃の低温で維持されなければならず、エッチングされる物質膜がポリシリコン膜の場合、ウェーハは約20℃の中温で維持されなければならず、エッチングされる物質膜が金属膜の場合、ウェーハは約60℃の高温で維持されなければならない。
【0005】
また、上述のように、一つの完成したチップを製造するために各々の酸化膜、ポリシリコン膜、金属膜などは複数回に分けて蒸着され、エッチングされる物質膜の種類が同一の場合であっても、その物質膜が蒸着された段階及び下部膜との関係などによってエッチングのための工程温度が異なる。また、露光、蒸着、エッチングなどのような工程の種類に応じて処理室で要求される工程温度は大きく異なる。
【0006】
一般的な装置使用時、エッチングしようとする物質膜の種類が変化すれば、作業者はチラの調整作業(tuning)を通じて、これに該当する工程温度を満たすことができるように膨脹バルブを制御しなければならない。しかし、調整作業が作業者の経験などによって異なり、一貫性がなく、信頼度が低下する。したがって、調整作業において工程が要求する条件に適するように行われたか否かを検査した後、実際に工程を実行しなければならず、これにより設備の稼動率が低下するという問題がある。
【0007】
また、処理室内に高周波電力が印加される場合、処理室内の温度は高周波電力によって影響を受ける。しかし、チラ内の調整作業はこれら工程に影響を及ぼす因子を考慮せずに実行されるので、ウェーハは設定された工程温度を維持することができない状態で工程が実行されてしまうという問題がある。
【0008】
また、工程進行時、膨脹バルブを通じて蒸発器に供給される冷媒量の変化のみによって温度調節が行われるので、冷却水の温度を調節することが難しいという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記問題を解決するために成されたものであり、処理室で実行される工程の工程条件に適するように循環回路の作動条件を容易に、かつ迅速に調節することができる温度調節装置を備えた基板処理装置とその温度制御方法とを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、同一工程条件に対して常に同一の条件で作動され、工程の信頼性を向上させることができる温度調節装置を備えた基板処理装置とその温度制御方法とを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、冷却水の温度を微調節することができる温度調節装置を備えた基板処理装置とその温度制御方法とを提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は多様な工程温度範囲を有する複数の工程に対して互換性を有する温度調節装置を備えた基板処理装置とその温度制御方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するための本発明に係る基板処理装置は、半導体基板を収容し、所定の工程を実行するための処理室と、冷却流体を運搬し、前記処理室を冷却する冷却ユニットと、前記冷却ユニットに供給される冷却流体の温度を調節する温度調節装置と、を含み、前記温度調節装置は、前記温度調節装置内を循環する冷媒、前記冷媒を圧縮する圧縮器、前記圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器、前記凝縮した冷媒を膨脹させ、並列に連結された複数の膨脹バルブを有する膨脹器、及び前記冷却ユニットを流れる冷却流体との熱交換を通じて前記膨脹された冷媒を蒸発させる蒸発器を有する循環サイクルを備える循環回路を具備することを特徴とする。
【0014】
また、前記温度調節装置は、前記凝縮器と各々の前記膨脹バルブとの間に位置する複数の調節バルブと、前記調節バルブを調節する調節器と、をさらに含むことができる。
【0015】
また、前記循環回路は、前記圧縮された冷媒の蒸気の一部を前記蒸発器に直接供給するように前記圧縮器と前記凝縮器とを連結するラインから分岐して、前記膨脹器と前記蒸発器とを連結するラインを直接連結し互いに並列に配置される複数の冷媒蒸気ラインと、前記凝縮器と各々の前記膨脹バルブとの間に位置し、各々の前記冷媒蒸気ラインに位置する複数の調節バルブと、前記調節バルブを調節する調節器と、をさらに含むことができる。
【0016】
また、前記調節器を制御する制御器をさらに含み、前記制御器は、前記工程における工程条件に対応する前記循環回路の動作を制御するための設定データが記憶された設定部と、前記処理室で実行される前記工程に関する工程データを入力するための入力部と、前記工程条件のうち、前記工程データに対応する工程条件が記憶された工程条件データを検索する検索部と、を含むことができる。
【0017】
また、前記処理室は、半導体基板が収容される空間を提供するチャンバと、前記冷却ユニット及び高周波電力を印加するための電極に連結され、半導体基板を配置する支持部材と、前記冷却ユニット及び高周波電力を印加する上部電極に連結され、前記チャンバ内に工程ガスを噴射する噴射部材と、を含み、前記温度調節装置は、前記支持部材に提供される冷却流体の温度を調節する第1温度調節装置と、前記噴射部材に提供される冷却流体の温度を調節する第2温度調節装置と、を含むことができる。
【0018】
また、前記処理室は、半導体基板が収容される空間を提供するチャンバと、前記冷却ユニット及び高周波電力を印加するための電極に連結され、半導体基板を配置する支持部材と、前記冷却ユニット及び高周波電力を印加する上部電極に連結され、前記チャンバ内に工程ガスを噴射する噴射部材と、を含み、前記温度調節装置は、前記支持部材に提供される冷却流体の温度を調節する第1温度調節装置と、前記噴射部材に提供される冷却流体の温度を調節する第2温度調節装置と、を含むことができる。そして、各前記膨脹バルブは、前記冷媒の供給量範囲が互いに異なることが好ましい。また、各前記冷媒蒸気ラインは、前記冷媒の蒸気の供給量が同一であることが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る他の基板処理装置は、半導体基板を収容して所定の工程が実行される処理室と、冷却流体を運搬し、前記処理室を冷却する冷却ユニットと、前記冷却ユニットの温度を調節し、冷媒を圧縮、凝縮、膨脹、及び蒸発させるように循環サイクルを実行するための循環回路と、前記循環回路の動作条件を調節する調節器と、前記処理室の工程条件に対応する前記循環回路の動作を制御するための制御情報を含む設定データが記憶された設定部を有し、前記設定データの制御情報を前記調節器に送る制御器と、を含むことができる。
【0020】
前記制御器は、前記処理室で実行される工程に関する情報である工程データを入力する入力部と、前記工程データに対応する設定データを検索する検索部と、を含むことができる。
【0021】
前記循環回路は、冷媒を圧縮する圧縮器と、前記圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮した冷媒を膨脹させ、互いに並列に連結された複数の膨脹バルブを有する膨脹器と、前記冷却流体との熱交換を通じて前記膨脹された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を含み、前記工程条件は前記処理室内の工程温度を含み、前記制御情報は前記複数の膨脹バルブのうち、前記工程の進行時に使用する膨脹バルブに関する情報を含むことができる。
【0022】
また、前記循環回路は、前記圧縮された冷媒蒸気の一部を前記蒸発器に直接供給するように、前記圧縮器と前記凝縮器とを連結するラインから分岐して、前記膨脹器と前記蒸発器とを連結するラインを直接連結し、互いに並列に連結される複数の冷媒蒸気ラインをさらに含み、前記制御情報は、前記冷媒蒸気ラインのうち工程進行時に使用する冷媒蒸気ラインに関する情報を含むことができる。
【0023】
前記冷却ユニットと連結されて冷却流体を収容するタンクと、前記タンクに熱を提供するヒータと、をさらに含み、前記蒸発器は前記タンク内にまたは前記タンクと隣接して配置され、前記制御情報は工程に応じて、前記ヒータから前記タンクに提供される熱量に関する情報をさらに含むことができる。
【0024】
前記処理室は、前記冷却ユニット及び高周波電力を印加するための電極に連結され、半導体基板を配置する支持部材と、前記支持部材に配置された半導体基板の温度を測定する温度センサと、をさらに含み、前記調節器は、前記温度センサが測定した値に基づいて前記半導体基板が前記工程に応じた温度を維持するように閉ループ制御方式によって前記ヒータを制御する。そして、前記閉ループ制御方式は、比例微積分制御方式であることが好ましい。
【0025】
前記処理室は、その内部に配置された電極に高周波電力を印加する電力供給ユニットをさらに含み、前記工程条件は、工程の進行時に印加される高周波電力に関する情報を含むことができる。
【0026】
前記高周波電力に関する情報は、高周波電力の大きさ、高周波電力の印加回数、及び高周波電力の総印加時間のうち少なくともいずれか一つに関する情報を含むことができる。
【0027】
前記膨脹バルブは、前記蒸発器に供給される冷媒の供給流量範囲がそれぞれ異なることができる。
【0028】
前記処理室内の工程温度を測定する温度センサをさらに含み、前記制御情報は、工程許容温度の範囲に関する情報を含むことができる。
【0029】
また、本発明に係る基板処理装置の温度制御方法は、工程条件に基づき処理室に供給される冷却流体の温度を調節する循環回路の動作条件に関する制御情報が記憶された設定データを設定する段階と、前記処理室で実行される工程に使用する工程データを入力する段階と、前記設定データのうち、前記工程データと対応する工程条件が記憶された設定データを検索する段階と、前記検索された設定データの制御情報を前記循環回路を調節する調節器に送信する段階と、前記送信した制御情報に基づき前記循環回路の動作条件を調節する段階と、前記循環回路の冷媒と熱交換が行われた前記冷却流体を前記処理室に供給して、前記処理室内で半導体基板に対して工程を実行する段階と、を含むことを特徴とする。
【0030】
前記循環回路は、圧縮器、凝縮器、膨脹器、及び蒸発器を含み、前記膨脹器は互いに並列に連結された複数の膨脹バルブを含み、前記工程条件は、前記工程の進行時、前記工程に応じた温度に関する条件を含み、前記制御情報は、前記膨脹バルブを制御するための情報を含むことができる。そして、前記膨脹バルブは、前記蒸発器に供給される冷媒の供給流量範囲がそれぞれ異なることが好ましい。
【0031】
前記循環回路は、前記圧縮された冷媒蒸気の一部を前記蒸発器に直接供給するように、前記圧縮器から前記凝縮器に冷媒が供給されるラインから分岐して、前記膨脹器から前記蒸発器に冷媒が供給されるラインと連結される複数の冷媒蒸気ラインをさらに含み、前記制御情報は、前記複数の冷媒蒸気ラインのうち使用する冷媒蒸気ラインの種類に関する情報を含むことができる。そして、前記冷媒蒸気ラインの直径は互いに同一であり、前記冷媒蒸気ラインの種類に関する情報は、冷媒蒸気ラインの数に関する情報を含むことが好ましい。
【0032】
前記工程条件は、前記処理室内に提供される高周波電力に関する情報をさらに含むことが好ましい。また、前記高周波電力に関する情報は、高周波電力の大きさ、高周波電力の印加回数、及び高周波電力の総印加時間のうち少なくともいずれか一つを含むこと好ましい。
【0033】
また、本発明に係る基板処理装置に使われる温度調節装置は、冷媒を圧縮する圧縮器と、前記圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、互いに並列に連結され、前記凝縮した冷媒を膨張させる複数の膨脹バルブと、前記基板処理装置に供給される冷却水と熱交換を行い、前記膨脹された冷媒を蒸発させる蒸発器とを含み、前記膨張バルブは、冷却水の温度に応じて選択されることを特徴とする。
【0034】
前記温度調節装置は、前記圧縮された冷媒蒸気の一部を前記蒸発器に直接供給するように、前記圧縮器と前記凝縮器とを連結するラインから分岐して、前記膨脹器と前記蒸発器とを連結するラインを直接連結する少なくとも一つの冷媒蒸気ラインをさらに含むことができる。
【0035】
前記温度調節装置は、互いに並列に連結された前記冷媒蒸気ラインを複数個具備し、前記冷媒蒸気ラインは、冷却水の温度に応じて選択される。前記冷媒蒸気ラインは、同一の直径を有することが好ましい。前記膨脹バルブは、冷媒供給量が互いに異なることが好ましい。
【発明の効果】
【0036】
上記のように構成された本発明に係る基板処理装置によれば、膨脹バルブの数及び種類を多様に選択することができるので、広い温度範囲(すなわち、高温領域、中温領域、低温領域の全部)で使用することができる。この結果、処理室内で多様な工程を実行することができる。例えば、要求される工程の温度の範囲が異なる多様な種類の物質膜エッチングなどの工程総てに使用することができるので、工程の互換性に優れる。
【0037】
また、本発明の温度調節装置は、広い温度範囲で温度調節が可能なので、エッチング、蒸着、フォトなどのような多様な種類の工程を実行する装置に適用可能である。
【0038】
また、本発明によれば、エッチングが行われる物質膜の変化などによって処理室で要求される工程温度が変化する場合にも作業者が膨脹バルブの入れ替えなどのような調整作業(tuning)を直接実行する必要がなく、設備稼動率が向上して信頼性を向上させることができる。
【0039】
また、本発明によれば、複数の冷媒蒸気ラインの使用によって冷却水の温度の調節が可能なので、冷却水の温度をさらに精密に調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の一実施形態に係る基板処理装置および基板処理装置の温度制御方法を添付した図面を参照しながら詳細に説明する。本発明の実施形態は様々な形態に変形可能であり、本発明の範囲が実施形態によって限定されると解釈されてはならない。本実施形態は、当業界で平均的な知識を持った者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面の要素の形状はより明確な説明を強調するために誇張されたものである。
【0041】
半導体処理装置には多様な形態があるが、本実施形態においては基板処理装置1としてエッチング装置を例にとって説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されず、チャンバ110またはウェーハWを所望の工程温度に維持するために冷却流体を使用する露光工程、蒸着工程など、他の種類の工程を実行する装置にも使用することができる。
【0042】
図1は、本発明の実施形態に係る基板処理装置1を概略的に示す断面図である。図1を参照すれば、本発明の基板処理装置1は、処理室100、冷却ユニット200、及び温度調節装置300を有する。
【0043】
処理室100はウェーハWのような半導体基板から物質膜をエッチングするエッチング工程(以下、必要に応じて「工程」と称するが、本明細書中では、エッチング工程に限らず、他の種類の工程を「工程」と称する場合がある。)を実行するものである。処理室100はチャンバ110、支持部材120、及び噴射部材140を有する。チャンバ110は内部に外部から密閉されてウェーハWが収容される空間を有している。
【0044】
支持部材120はチャンバ110内の下部に配置され、工程進行時、ウェーハWを固定するものである。支持部材120は、ウェーハWが置かれる支持板122と、その下部面から下(図面下側)に延長され、モータによって回転可能な支持軸124を有する。支持板122は円板形状を有し、ウェーハWはクランプのような機械的メカニズム、真空吸着、または静電気力などのような多様な方法によって支持板122に固定されることができる。
【0045】
噴射部材140は、チャンバ110内の上部に支持部材120と対向する位置に配置され、チャンバ110内に工程に応じたガスを噴射するものである。噴射部材140は、チャンバ110の上部壁との間にガス導入空間146を設けるようにチャンバ110と結合される。例えば、噴射部材140は、チャンバ110の上部壁と結合するリング形状の側壁142と、側壁142の下端に位置して、複数の噴射口144aが形成された噴射板144とを有する。
【0046】
支持部材120内には下部電極162が配置され、噴射部材140には高周波電力が印加される上部電極164が配置される。下部電極162では板形状の金属板が使用することができ、上部電極164では上述の噴射板を使用することができる。電力供給源172、174は下部電極162と上部電極164の各々に高周波電力を印加して、チャンバ110内に供給された工程ガスからプラズマを生成する。そして、生成されたプラズマをウェーハWに誘導する。高周波電力ではラジオ周波数が使用することができる。
【0047】
エッチング工程進行におけるエッチングされる物質膜の特性によって、要求されるウェーハWの温度、上部電極164と下部電極162との各々に印加される高周波電力の大きさ、印加回数、及び総印加時間は異なる。ここでエッチングされる物質膜の特性は、物質膜の種類によって異なり、同一種類の物質膜の場合には、物質膜が形成された段階及び下部膜の種類などによって異なる。例えば、物質膜は、酸化膜、ポリシリコン膜、または金属膜などを使用されることができる。同一種類の物質膜の場合であっても、ウェーハW上に形成された多層の物質膜のうち形成段階が互いに異なることができる。
【0048】
噴射部材140及び支持部材120には、冷却流体が流れる冷却ライン182、184が配置される。冷却ライン182、184は、工程進行時、ウェーハWまたはチャンバ110が要求する工程温度を満足するように、冷却流体を通過させるものである。冷却流体は、一般的なものであれば特に限定はされないが、簡易さなどから冷却水を使用することが好ましい(以下、必要に応じて「冷却流体」を「冷却水」と称する)。なお、噴射部材140または支持部材120に冷却ラインが配置されるという意味は、冷却ラインが噴射部材140または支持部材120内に位置したり、噴射部材140または支持部材120と隣接して位置したりすることを含む意味である。例えば、噴射部材140と共にガス導入空間146を形成するチャンバ110の上部壁に冷却ライン184が配置され、支持部材120内で下部電極162の上部に冷却ライン182が配置されることができる。冷却水は、工程温度を満たすために、一定の温度で調節された後、冷却ライン182、184に供給される。
【0049】
温度調節装置300は、冷却水の温度を調節するものである。温度調節装置300は、支持部材120に配置された冷却ラインに供給される冷却水の温度を調節する第1温度調節装置300aと、噴射部材140に配置された冷却ライン184に供給される冷却水の温度を調節する第2温度調節装置300bとを有する。さらに、チャンバ110の外壁の温度を調節するための冷却ラインが配置され、その内部に供給される冷却水の温度を調節する第3温度調節装置を配置することもできる。このように、冷却ラインの本数や温度調節装置は、目的に応じて複数配置することができる
第2温度調節装置300bと第1温度調節装置300aとは、各々同一の構造・機能を有することができる。温度調節装置300としては、チラ(chiller)を使用することができる。以下に、本実施形態に係る基板処理装置におけるチラの構造を説明する。
【0050】
図2は、本発明の好ましい一実施形態に係る温度調節装置300の構造を概略的に示したものである。温度調節装置300は、調節器302と循環回路304とを有する。循環回路304は、圧縮器310、凝縮器320、膨脹器330、及び蒸発器340を有する。圧縮器310、凝縮器320、膨脹器330、及び蒸発器340は順次に閉ループ(closed loop)を提供するように配列され、冷媒はこれらを連結するライン372、374、376、378を通じて圧縮器310、凝縮器320、膨脹器330、蒸発器340を循環する。冷媒は、圧縮器310で外部から熱を受けて高温高圧で圧縮され、圧縮器310から来た高温高圧の冷媒ガスは凝縮器320から凝縮熱を放出して液化される。以後、凝縮した冷媒は膨脹バルブ332を通りながら絞り作用(throttling)によって冷媒の一部が気化して低温低圧の冷媒液になる。以後、蒸発器340で冷媒液が気化しながら周りの潜熱を奪うことによって冷却効果を発揮し、圧縮器310に流入される。なお、冷媒としては、本発明に適用できるものであれば特に限定はされないが、例えば、HFC(fluorohydrocarbon)などを使用することができる。
【0051】
冷却水は、冷却ユニット200を通じて冷却ライン182、184に供給され、冷却ユニット200にはタンク260が連結される。蒸発器340は、タンク260内の冷却水から潜熱を奪うためにタンク260に配置される。蒸発器340は、タンク260内またはタンク260と隣接して配置される。蒸発器340を通じて流れる冷媒との熱交換によってタンク260内の冷却水の温度が大きく低下する場合、冷却水の温度を調節するためにタンク260内の冷却水に熱を加えるヒータ360を配置することができる。
【0052】
ヒータ360は、処理室100内の工程温度が一定に維持されるように熱を供給するものである。ヒータ360は、処理室100内の工程温度に応じて熱を供給する。このため、処理室100には実際に処理室100内の工程温度を測定する温度センサ190が設置されている。例えば、工程温度としては、ウェーハWの温度を使用することができるが、この場合、温度センサ190はウェーハWの温度を測定するために支持部材120内のウェーハWと隣接した位置に配置される。温度センサ190は、ウェーハWの領域別(例えば、中央部と端部)温度を各々測定するように複数個の温度センサ190を配置することができる。ヒータ360の制御は、例えば、一般的な閉ループ制御方式によって制御されることができ、閉ループ制御方式では比例微積分制御方式が使用されることが好ましいが、これに限定されず、開ループ制御方式であっても良い。
【0053】
圧縮器310、凝縮器320、及び蒸発器340の構造は、一般的なものを使用することができ、圧縮器310、凝縮器320、及び蒸発器340については、当業界に広く知られているのでここでの詳細な説明は省略する。本実施形態によれば、膨脹器330は互いに並列に連結された複数の膨脹バルブ332を有している。各々の膨脹バルブ332と凝縮器320とを連結する分岐管336にはその内部通路を開閉するバルブ334が配置される。バルブ334は電気的信号によって調節可能なソレノイドバルブ(solenoid valve)が使用されることが好ましい。例えば、蒸発器340に供給することができる冷媒の流量範囲が異なる種類の膨脹バルブ332を使用することができる。この場合、工程進行時、処理室100でエッチングされる物質膜の特性に従って使用される膨脹バルブ332の種類が異なることができる。工程進行時、膨脹バルブ332は一つのみ使用されることができるし、選択的に複数個が同時に使用されることもできる。
【0054】
例えば、膨脹器330は多量の冷媒を供給することができる第1膨脹バルブ332aと、中間量の冷媒を供給することができる能力を有する第2膨脹バルブ332bと、少量の冷媒を供給することができる能力を有する第3膨脹バルブ332cとを有していても良い。酸化膜のエッチングのように低温範囲で工程が実行される場合、多量の冷媒を供給することができる第1膨脹バルブ332aが使用され、ポリシリコン物質膜のエッチングのように中温範囲で工程が実行される場合、中間量の冷媒を供給することができる第2膨脹バルブ332bが使用され、金属膜のように高温範囲で工程が実行される場合、多量の冷媒を供給することができる第3膨脹バルブ332cを使用することができる。
【0055】
選択的に蒸発器340に供給することができる冷媒の流量範囲に同一の種類の膨脹バルブ332を使うことができる。この場合、工程進行時、物質膜の特性に従って使用される膨脹バルブ332の数は異なる。
【0056】
例えば、膨脹器330は同一量の冷媒を供給することができる3個の膨脹バルブ332を有することができる。低温範囲で工程が実行される場合、3個の膨脹バルブ332が全部使用され、中温範囲で工程が実行される場合、2個の膨脹バルブ332が同時に使用され、高温範囲で工程が実行される場合、1個の膨脹バルブ332のみが使用されることができる。
【0057】
また、本実施形態においては、圧縮器310と凝縮器320とを連結するライン372、及び膨脹器330と蒸発器340とを連結するライン376を直接連結する冷媒蒸気ライン352が配置されている。冷媒蒸気ライン352は、圧縮器310で圧縮された冷媒蒸気の一部が凝縮器320及び膨脹器330を通過せず、直接、蒸発器340に供給されるようにする。冷媒蒸気ライン352を通じて供給される冷媒蒸気の量は、蒸発器340で冷媒と熱交換された冷却水の温度に影響を及ぼす。すなわち、蒸発器340に供給される冷媒蒸気の量が多いほど、冷却水から冷媒に提供される潜熱は減少するようになるので、熱交換後、冷却水の温度の低下は小さい。
【0058】
冷媒蒸気ライン352は複数個が配置され、これらは互いに並列に配置されている。各々の冷媒蒸気ライン352にはその内部通路を開閉するバルブ354が設置される。バルブ354は電気的に調節可能なソレノイドバルブが使用されることが好ましい。
【0059】
一例としては、各々の冷媒蒸気ライン352は総て同一の直径を有し、工程の種類に応じて使用される冷媒蒸気ライン352の数を調節することができる。具体的には、冷却水の温度を低下させる必要がある場合(すなわち、要求される工程温度が高い場合)には使用される冷媒蒸気ライン352の数を減らす。一方、冷却水の温度を上昇させる必要がある場合(すなわち、要求される工程温度が低い場合)には使用される冷媒蒸気ライン352の数を増加させる。
【0060】
他の例としては、各々の冷媒蒸気ライン352は互いに異なっている直径を有し、工程の種類に応じて使用される冷媒蒸気ライン352の種類を調節する。冷媒蒸気ライン352は、工程の種類に応じて使用しなくても良いし、工程の種類に応じて一つまたは複数個が同時に使用しても良い。例えば、冷却水の温度を低める必要がある場合には、直径が小さい冷媒蒸気ライン352を使用することができ、一方、冷却水の温度を上げる必要がある場合には、直径が大きい冷媒蒸気ライン352を使用することができる。
【0061】
使用される膨脹バルブ332の数または種類にしたがって冷却水の温度を大きい範囲で調節することができ、使用される冷媒蒸気ライン352の数または種類に従って冷却水の温度を小さい範囲で調節することができる。
【0062】
調節器302は、各々の膨脹バルブ332と凝縮器320とを連結する分岐管336に設置されたバルブ334及び冷媒蒸気ライン352に設置されたバルブ354の開閉を制御するものである。また、調節器302は、タンク260に収容された冷却水を加熱するためにヒータ360からタンク260に供給される熱量を制御することができる。
【0063】
上述の構造によって本発明のチラは広い温度範囲(すなわち、高温領域、中温領域、低温領域の全部)で使用することができるので、要求される工程温度の範囲が異なる多様な種類の物質膜エッチングに使用することができる。したがって、工程の互換性が優れている。
【0064】
また、本発明に係る基板処理装置は、処理室100で要求される工程温度、または工程の種類にしたがって循環回路304の動作条件を自動に選択することができる手段を含むことができる。工程温度は、チャンバ110の温度またはウェーハWの温度などを含み、工程の種類はエッチングされる物質膜の特性などに関するデータを含む。また、循環回路304の動作条件は蒸発器340に供給される冷媒の量または蒸発器340に供給される冷媒の特性(property)を含む。このため、後述するが、工程温度にしたがって循環回路304の動作条件に関する制御情報422b(図4参照)を調節器302に送る制御器400が配置される。制御器400は、第2温度調節装置300bに配置された調節器302と第1温度調節装置300aに配置された調節器302とに該当する制御情報422bを送信する。
【0065】
図3は、制御器400の一例を概略的に示したものである。図3を参照すれば、制御器400は、設定部420、入力部440、及び検索部460を有する。
【0066】
設定部420は、複数の設定データ422(を有し、各々の設定データ422には工程条件422aと、工程条件422aで循環回路の動作条件調節のための循環回路304の制御情報422bが記憶されているものである。図4及び図5は、各々設定データ422、422’の構造を概略的に示したものである。
【0067】
工程条件422aは、工程進行時、工程温度と関する情報を含む。工程温度は、工程チャンバ110内の特定位置の温度または特定の構成要素の温度であることができる。本実施形態では、工程温度としてウェーハWの温度を採用している。工程条件422aは、工程進行時に要求されるウェーハWの温度に関する項目(情報)と工程進行時に供給される高周波電力に関する項目とを含む。高周波電力に関する項目は印加される高周波電力の大きさに関する項目、工程進行の間高周波電力の印加回数に対する項目、及び工程進行の間高周波電力の総印加時間に関する項目を含む。上述の項目は処理室100内で工程進行時、処理室100内の温度に影響を及ぼす項目の一例を示したものであって、工程の種類に応じて新しい項目が追加したり、一部項目が除去したりすることもできる。高周波電力に関する情報は上部電極164に印加される高周波電力と下部電極162に印加される高周波電力に関する情報をそれぞれ含むことができる。
【0068】
制御情報422bは、第2温度調節装置300b及び第1温度調節装置300aの各々で使われる膨脹バルブ332に関する項目、使われる冷媒蒸気ライン352に関する項目、ヒータ360から加えられる熱量に関する項目を含むことができる。
【0069】
高周波電力は、処理室100においてオン/オフ回数が繰り返される。高周波電力がオフされた間、処理室100内の温度が低下する。この場合、ウェーハWの温度を一定に維持するために冷却水の温度を増加することが好ましい。温度センサ190によって測定された処理室100の実際の工程温度にしたがってヒータ360が上述の制御方式によって制御されるので、ウェーハWの温度は要求される温度に調節される。しかし、高周波電力がオフされる瞬間、処理室100内の実際の工程温度は、要求される工程温度から大きく逸脱して、ウェーハWの温度が設定温度で維持されるまで時間を要する。ヒータ360から加えられる熱量に関する項目は上述の問題を防止するためのものであって、工程の進行の経過にしたがってヒータ360から供給される熱量の大きさの変化に関する情報を取得する。すなわち、ヒータ360から加えられる熱量は、高周波電力がオン/オフされる時点の前にあらかじめ調節されて、高周波電力のオン/オフによってウェーハWの温度が高い幅に変化されることを防止する。種々の工程条件422aと対応する制御情報422bは、実験などを通じてあらかじめ決められる。
【0070】
また、工程進行時に様々な原因によって、実際のウェーハWの温度は、要求されるウェーハWの温度と大きく差があり、工程の不良が発生してしまう可能性がある。この場合、制御情報422bは、工程進行を停止(インターロック(inter lock))させるための工程進行温度範囲に関する項目をさらに含むことができる。
【0071】
各々の設定データ422は、互いに異なる工程条件422aを有することができる。例えば、膨脹器330が3個の膨脹バルブ332を具備して、冷媒蒸気ライン352が4個配置される場合、設定データ422のうちのいずれか一つは、図4のような工程条件422aと制御情報422bとを記憶することができる。図4では、制御情報422bのうち、使用される膨脹バルブ332および使用される冷媒蒸気ライン352のみを具体的に記載したが、実質的には工程条件422a及び工程許容温度も記憶されることができる。図4の設定データ422に貯蔵された工程条件422aの範囲で工程が実行される場合、第1温度調節装置300aでは第2膨脹バルブ332bのみを通じて冷媒が膨脹され、第1冷媒蒸気ラインと第2冷媒蒸気ラインとを通じて圧縮器310を通過した冷媒の一部が直接蒸発器340に供給される。また、第2温度調節装置300bでは第3膨脹バルブ332cのみを通じて冷媒が膨脹され、第1冷媒蒸気ライン、第2冷媒蒸気ライン、及び第3冷媒蒸気ラインを通じて圧縮器310を通過した冷媒の一部が直接蒸発器340に供給される。工程進行のうち工程温度がTminより小さいか、Tmaxより大きければ工程の進行が中断される。
【0072】
図4に示すように、設定データ422は、一定範囲として提供された工程条件422aを記憶することができる。しかし、これと異なり、図5に示すように、設定データ422’は、所定の値として提供された工程条件422a’を記憶することができる。
【0073】
入力部440は、エッチングされる物質膜の変化によって処理室100内の工程条件422aが変化した場合、変化した工程条件422aに関するデータ(以下、工程データ)が入力される。工程データは、設定データ422の工程条件422aに含まれた項目を含む。工程データは、設定データ422の工程条件422aに含まれた項目を全部含むことが好ましいが、一部のみを含むこともできる。上述の例の場合、工程条件422aの変化が生じた場合、作業者は変化した工程条件422aにしたがって工程温度、高周波電力の大きさ、高周波電力印加回数、高周波電力総印加時間に関する工程データを入力部440に入力する。なお、前記入力は、一般的なコンピュータなどを介して自動的に行っても良く、例えば、変化した工程条件422aに応じて、工程データを変換するための変換テーブルなどを参照して、上記のような工程データを自動入力させることもできる。
【0074】
検索部460は、入力部440に入力された工程データにしたがって複数の設定データ422のうち、循環回路304調節に使われる設定データ422を検索する。ここで、工程条件422aの工程温度、RF電力などの項目が図4に示すような範囲を指定して入力された場合、検索部460は、前記指定した範囲を含む工程データを有する工程条件422aが記憶された設定データ422を検索する。前記指定した範囲の工程データが存在しない場合、入力された工程データと最も近似する工程条件422aが記憶された設定データ422を検索する。また、選択的に検索部460は、検索した結果を表示する表示部(図示はしない)を含むことができる。前記表示部は、「該当の工程条件422aを有する設定データ422はありません」などのメッセージを表示部に表示することができる。また、上記のように、特定の範囲を指定するのではなく、特定の値を指定することもできる。具体的には、図5に示すように、工程条件422aの項目が特定の値として入力された場合、検索部460は入力された工程データと一致する工程条件422aが記憶された設定データ422を検索して、一致する工程条件422aがない場合、最も近似した工程条件422aが記憶された設定データ422を検索する。
【0075】
作業者は、エッチングが行われる物質膜の特性に応じて設定データ422の数を増加することができる。これと共に、工程温度範囲の拡大及び各々の工程温度範囲で微妙な温度調節のために膨脹バルブ332及び冷媒蒸気ライン352の数または種類を増加させることができる。
【0076】
以上のように構成される本発明における基板処理装置では、エッチングが行われる物質膜の変化などによって処理室100で要求される工程温度が変化する場合でも、作業者が膨脹バルブ332の入れ替えなどのような調整作業(tuning)を直接実行する必要がなくなる。
【0077】
以下に、図6を参照して、本実施形態に係る基板処理装置1の温度を制御する方法を説明する。まず、実験などを通じて工程条件422a及び各々の工程条件422aに対応する制御情報422bが記憶された複数の設定データ422を設定する(ステップS10)。
【0078】
次に、作業者は工程進行時、処理室100で実行される工程の工程情報に関するデータを入力する(ステップS20)。
【0079】
次に、検索部460は、作業者が入力した工程データと一致するか、最も近似した工程条件422aが記憶された設定データ422を検索する(ステップS30)。そして、検索された設定データ422に貯蔵された制御情報422bは第1温度調節装置300aと第2温度調節装置300bの調節器302に送信される(ステップS40)。
【0080】
調節器302は、受信した制御情報422bにしたがって膨脹バルブ332の種類と冷媒蒸気ライン352の種類を選択して循環回路304を調節する(ステップS50)。そして、処理室100内でウェーハWに対してエッチング工程が実行される(ステップS60)。温度センサ190は、ウェーハWの温度をリアルタイムで測定して、測定されたデータは調節器302に送信される。調節器302は、ウェーハWの温度が工程温度を維持するように冷却水に供給されるヒータ360の熱量を変化させる。工程進行のうち、ウェーハWの温度が工程許容温度を逸脱した場合、工程進行を中断させる。これと共に警告音、エラーメッセージを作業者に知らせることができる。
【0081】
一つのウェーハWまたは複数のウェーハWからなる一つのグループに対してエッチング工程が完了した場合、次のウェーハWまたは他のグループのウェーハWに対して工程データの変化があるか否かを判断する(ステップS70)。工程データの変化がない場合(ステップS70:NO)、循環回路304の作動条件の変化させることなく処理(工程進行)を続いて実行し(ステップS80)、工程データの変化がある場合(ステップS70:Yes)、上述のステップS10以下の処理を再び実行する(ステップS20の工程データ入力過程を実行する)。そして、総てのウェーハWに対して工程を完了すれば処理を終了する。
【産業上の利用可能性】
【0082】
半導体基板処理に関する技術分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る基板処理装置を概略的に示す断面図である。
【図2】図1の温度調節装置の一例を概略的に示す図である。
【図3】図1の制御器の一例を概略的に示す図である。
【図4】図3の設定データの一例を示す図である。
【図5】図3の設定データの他の例を示す図である。
【図6】基板処理装置の温度を制御する方法の好ましい一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
100 処理室、
110 チャンバ、
120 支持部材、
140 噴射部材、
182,184 冷却ライン、
200 冷却ユニット、
300 温度調節装置、
302 調節器、
304 循環回路、
332 膨脹バルブ、
352 冷媒蒸気ライン、
400 制御器、
420 設定部、
422 設定データ、
440 入力部、
460 検索部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板を収容し、所定の工程を実行するための処理室と、
冷却流体を運搬し、前記処理室を冷却する冷却ユニットと、
前記冷却ユニットに供給される冷却流体の温度を調節する温度調節装置と、を含み、
前記温度調節装置は、
前記温度調節装置内を循環する冷媒、前記冷媒を圧縮する圧縮器、前記圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器、前記凝縮した冷媒を膨脹させ、並列に連結された複数の膨脹バルブを有する膨脹器、及び前記冷却ユニットを流れる冷却流体との熱交換を通じて前記膨脹された冷媒を蒸発させる蒸発器を有する循環サイクルを備える循環回路を具備することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記温度調節装置は、
前記凝縮器と各々の前記膨脹バルブとの間に位置する複数の調節バルブと、
前記調節バルブを調節する調節器と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記循環回路は、
前記圧縮された冷媒の蒸気の一部を前記蒸発器に直接供給するように前記圧縮器と前記凝縮器とを連結するラインから分岐して、前記膨脹器と前記蒸発器とを連結するラインを直接連結し互いに並列に配置される複数の冷媒蒸気ラインと、
前記凝縮器と各々の前記膨脹バルブとの間に位置し、各々の前記冷媒蒸気ラインに位置する複数の調節バルブと、
前記調節バルブを調節する調節器と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記調節器を制御する制御器をさらに含み、
前記制御器は、
前記工程における工程条件に対応する前記循環回路の動作を制御するための設定データが記憶された設定部と、
前記処理室で実行される前記工程に関する工程データを入力するための入力部と、
前記工程条件のうち、前記工程データに対応する工程条件が記憶された工程条件データを検索する検索部と、
を含むことを特徴とする請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理室は、
半導体基板が収容される空間を提供するチャンバと、
前記冷却ユニット及び高周波電力を印加するための電極に連結され、半導体基板を配置する支持部材と、
前記冷却ユニット及び高周波電力を印加する上部電極に連結され、前記チャンバ内に工程ガスを噴射する噴射部材と、を含み、
前記温度調節装置は、
前記支持部材に提供される冷却流体の温度を調節する第1温度調節装置と、
前記噴射部材に提供される冷却流体の温度を調節する第2温度調節装置と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
各前記膨脹バルブは、前記冷媒の供給量範囲が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
各前記冷媒蒸気ラインは、前記冷媒の蒸気の供給量が同一であることを特徴とする請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記処理室で実行される工程は、エッチング工程であることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
半導体基板を収容して所定の工程が実行される処理室と、
冷却流体を運搬し、前記処理室を冷却する冷却ユニットと、
前記冷却ユニットの温度を調節し、冷媒を圧縮、凝縮、膨脹、及び蒸発させるように循環サイクルを実行するための循環回路と、
前記循環回路の動作条件を調節する調節器と、
前記処理室の工程条件に対応する前記循環回路の動作を制御するための制御情報を含む設定データが記憶された設定部を有し、前記設定データの制御情報を前記調節器に送る制御器と、
を含むことを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
前記制御器は、
前記処理室で実行される工程に関する情報である工程データを入力する入力部と、
前記工程データに対応する設定データを検索する検索部と、
を含むことを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記循環回路は、
冷媒を圧縮する圧縮器と、
前記圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮した冷媒を膨脹させ、互いに並列に連結された複数の膨脹バルブを有する膨脹器と、
前記冷却流体との熱交換を通じて前記膨脹された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を含み、
前記工程条件は前記処理室内の工程温度を含み、前記制御情報は前記複数の膨脹バルブのうち、前記工程の進行時に使用する膨脹バルブに関する情報を含むことを特徴とする請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記工程温度は、前記工程が進行される半導体基板の温度であることを特徴とする請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記循環回路は、前記圧縮された冷媒蒸気の一部を前記蒸発器に直接供給するように、前記圧縮器と前記凝縮器とを連結するラインから分岐して、前記膨脹器と前記蒸発器とを連結するラインを直接連結し、互いに並列に連結される複数の冷媒蒸気ラインをさらに含み、
前記制御情報は、前記冷媒蒸気ラインのうち工程進行時に使用する冷媒蒸気ラインに関する情報を含むことを特徴とする請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記冷却ユニットと連結されて冷却流体を収容するタンクと、
前記タンクに熱を提供するヒータと、をさらに含み、
前記蒸発器は前記タンク内にまたは前記タンクと隣接して配置され、
前記制御情報は工程に応じて、前記ヒータから前記タンクに提供される熱量に関する情報をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記処理室は、前記冷却ユニット及び高周波電力を印加するための電極に連結され、半導体基板を配置する支持部材と、
前記支持部材に配置された半導体基板の温度を測定する温度センサと、をさらに含み、
前記調節器は、前記温度センサが測定した値に基づいて前記半導体基板が前記工程に応じた温度を維持するように閉ループ制御方式によって前記ヒータを制御することを特徴とする請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記閉ループ制御方式は、比例微積分制御方式であることを特徴とする請求項15に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記処理室は、その内部に配置された電極に高周波電力を印加する電力供給ユニットをさらに含み、
前記工程条件は、工程の進行時に印加される高周波電力に関する情報を含むことを特徴とする請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記高周波電力に関する情報は、高周波電力の大きさ、高周波電力の印加回数、及び高周波電力の総印加時間のうち少なくともいずれか一つに関する情報を含むことを特徴とする請求項17に記載の基板処理装置。
【請求項19】
前記膨脹バルブは、前記蒸発器に供給される冷媒の供給流量範囲がそれぞれ異なることを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項20】
前記処理室内の工程温度を測定する温度センサをさらに含み、
前記制御情報は、工程許容温度の範囲に関する情報を含むことを特徴とする請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項21】
工程条件に基づき処理室に供給される冷却流体の温度を調節する循環回路の動作条件に関する制御情報が記憶された設定データを設定する段階と、
前記処理室で実行される工程に使用する工程データを入力する段階と、
前記設定データのうち、前記工程データと対応する工程条件が記憶された設定データを検索する段階と、
前記検索された設定データの制御情報を前記循環回路を調節する調節器に送信する段階と、
前記送信した制御情報に基づき前記循環回路の動作条件を調節する段階と、
前記循環回路の冷媒と熱交換が行われた前記冷却流体を前記処理室に供給して、前記処理室内で半導体基板に対して工程を実行する段階と、
を含むことを特徴とする基板処理装置の温度制御方法。
【請求項22】
前記循環回路は、圧縮器、凝縮器、膨脹器、及び蒸発器を含み、前記膨脹器は互いに並列に連結された複数の膨脹バルブを含み、
前記工程条件は、前記工程の進行時、前記工程に応じた温度に関する条件を含み、
前記制御情報は、前記膨脹バルブを制御するための情報を含むことを特徴とする請求項21に記載の基板処理装置の温度制御方法。
【請求項23】
前記膨脹バルブは、前記蒸発器に供給される冷媒の供給流量範囲がそれぞれ異なることを特徴とする請求項22に記載の基板処理装置の温度制御方法。
【請求項24】
前記循環回路は、前記圧縮された冷媒蒸気の一部を前記蒸発器に直接供給するように、前記圧縮器から前記凝縮器に冷媒が供給されるラインから分岐して、前記膨脹器から前記蒸発器に冷媒が供給されるラインと連結される複数の冷媒蒸気ラインをさらに含み、
前記制御情報は、前記複数の冷媒蒸気ラインのうち使用する冷媒蒸気ラインの種類に関する情報を含むことを特徴とする請求項22に記載の基板処理装置の温度制御方法。
【請求項25】
前記冷媒蒸気ラインの直径は互いに同一であり、
前記冷媒蒸気ラインの種類に関する情報は、冷媒蒸気ラインの数に関する情報を含むことを特徴とする請求項24に記載の基板処理装置の温度制御方法。
【請求項26】
前記工程条件は、前記処理室内に提供される高周波電力に関する情報をさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の基板処理装置の温度制御方法。
【請求項27】
前記高周波電力に関する情報は、高周波電力の大きさ、高周波電力の印加回数、及び高周波電力の総印加時間のうち少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする請求項26に記載の基板処理装置の温度制御方法。
【請求項28】
基板処理装置に使われる温度調節装置において、
冷媒を圧縮する圧縮器と、
前記圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、 互いに並列に連結され、前記凝縮した冷媒を膨張させる複数の膨脹バルブと、
前記基板処理装置に供給される冷却水と熱交換を行い、前記膨脹された冷媒を蒸発させる蒸発器とを含み、
前記膨張バルブは、冷却水の温度に応じて選択されることを特徴とする温度調節装置。
【請求項29】
前記温度調節装置は、前記圧縮された冷媒蒸気の一部を前記蒸発器に直接供給するように、前記圧縮器と前記凝縮器とを連結するラインから分岐して、前記膨脹器と前記蒸発器とを連結するラインを直接連結する少なくとも一つの冷媒蒸気ラインをさらに含むことを特徴とする請求項28に記載の温度調節装置。
【請求項30】
前記温度調節装置は、互いに並列に連結された前記冷媒蒸気ラインを複数個具備し、
前記冷媒蒸気ラインは、冷却水の温度に応じて選択されることを特徴とする請求項29に記載の温度調節装置。
【請求項31】
前記冷媒蒸気ラインは、同一の直径を有することを特徴とする請求項30に記載の温度調節装置。
【請求項32】
前記膨脹バルブは、冷媒供給量が互いに異なることを特徴とする請求項28に記載の温度調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−344944(P2006−344944A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144579(P2006−144579)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】