説明

溶液の塗布装置及び塗布方法

【課題】この発明は塗布ヘッドのノズルから吐出される溶液の量を精度よく測定することができる塗布装置を提供することにある。
【解決手段】基板に溶液を供給塗布する溶液の塗布装置であって、
溶液を吐出するノズルを有する塗布ヘッド22と、塗布ヘッドに設けられ電圧が印加されることで作動してノズルから上記溶液を吐出させる圧電素子と、ノズルから吐出された溶液の長さを検出する測定装置41とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は基板に溶液を塗布する溶液の塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、液晶表示装置の製造工程においては、ガラス製の基板に回路パターンを形成するための成膜プロセスがある。この成膜プロセスでは、基板の板面にたとえば配向膜やレジストなどの機能性薄膜が形成される。
【0003】
基板に機能性薄膜を形成する場合、この機能性薄膜を形成する溶液をノズルから吐出して基板の板面に塗布する、いわゆるインクジェット方式の塗布装置が用いられることがある。
【0004】
上記塗布装置は基板を搬送する載置テーブルを有しており、この載置テーブルの上方には、上記ノズルが形成された複数の塗布ヘッドが基板の搬送方向に対してほぼ直交する方向に沿って配置されている。それによって、搬送される基板の上面には複数の塗布ヘッドのノズルから吐出された溶液が搬送方向と交差する方向に所定間隔で塗布されるようになっている。
【0005】
各塗布ヘッドには各ノズルに対向して圧電素子が可撓板を介して設けられている。圧電素子に電圧を印加すると、上記可撓板が変形し、上記ノズルから溶液が吐出供給されるようになっている。
【0006】
各塗布ヘッドの圧電素子に同じ大きさの電圧を印加しても、それぞれの塗布ヘッドは溶液の供給源からの配管抵抗や製作精度、組み立て精度などによって特性が異なるため、供給される溶液の量に差異が生じる。その結果、基板に形成される機能性薄膜の厚さが均一にならないということがある。
【0007】
そこで、従来はノズルから吐出された溶液を高速度カメラで撮像し、撮像された溶液の投影面積から溶液の体積(量)を算出し、この体積によって各ノズルから吐出される溶液の量が均一になるように各圧電素子に印加する電圧を調整していた。
【0008】
特許文献1には塗布ヘッドのノズルから吐出された溶液を高速度カメラで撮像し、その投影面積から体積、つまり量を求めることが示されている。
【特許文献1】特開2005−40690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、塗布ヘッドのノズルから吐出された溶液を高速度カメラで撮像し、撮像された溶液の当液面積を求める場合、次のような理由から算出誤差が生じる。
【0010】
すなわち、高速度カメラには、吐出された溶液の飛翔経路を挟んで光源が対向配置される。ノズルから吐出された溶液が光源から照射される光を受けると、その像が高速度カメラの撮像面に配置され縦横行列状に数百の受光素子が配列されてなる固体撮像素子上に結像される。このとき、各受光素子は、受講料に応じた信号を出力する。すなわち、溶液部分から外れて位置する(背景部分に位置する)受光素子からは光源から照射された光を受けてその光量に応じた大きさの出力信号aを出力し、溶液部分に対応する受光素子は光源からの光が溶液によって弱められるので、出力信号aよりも小さい出力信号bを出力する。
【0011】
また、溶液の輪郭部分に対応する受光素子は光の回折などもあるので出力信号aと出力信号bとの間の大きさの出力信号cを出力する。
【0012】
ここで、二値化によって溶液の当液面積を求める場合、各受光素子からの出力信号は出力信号aと出力信号bとの間の大きさに設定された閾値と比較され、溶液部分に対応する信号と背景部分に対応する信号とに分けられる。具体的には、閾値よりも小さい信号は溶液部分に対応する信号、閾値よりも大きい信号は背景部分に対応する信号とされる。
【0013】
このとき、溶液の輪郭部分に対応する受光素子からの出力信号cは、その大きさによって、溶液部分とされたり、背景部分とされたりする。そのため、実際には溶液の輪郭部分に対応していたとしても、溶液に対応していないと判定される信号cが生じる。このような、判定は溶液の輪郭部分において多数生じるので、このような判定結果から算出される溶液の投影面積は誤差を含んだものとなり、測定精度が低くなる。したがって、投影面積から算出される体積も精度が低いものとなり、ノズルから吐出された溶液の量を精確に測定することができないということになる。
【0014】
この発明は、ノズルから吐出される溶液の量を、溶液の面積によらず、長さによって精度よく求めることができるようにした溶液の塗布装置及び塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、基板に溶液を供給塗布する溶液の塗布装置であって、
上記溶液を吐出するノズルを有する塗布ヘッドと、
この塗布ヘッドに設けられ電圧が印加されることで作動して上記ノズルから上記溶液を吐出させる駆動手段と、
上記ノズルから吐出された溶液の吐出方向における長さを検出する検出手段と
を具備したことを特徴とする溶液の塗布装置にある。
【0016】
上記検出手段が検出する溶液の長さによって上記駆動手段に印加する電圧値を制御する制御手段を有することが好ましい。
【0017】
上記駆動手段に駆動信号を印加するタイミングと、上記検出手段によって上記溶液の長さを検出するタイミングを設定するタイミング設定手段を有することが好ましい。
【0018】
この発明は、基板に溶液を供給塗布する溶液の塗布方法であって、
塗布ヘッドに設けられたノズルから上記溶液を吐出させる工程と、
上記ノズルから吐出された溶液の吐出方向の長さを検出する工程と、
検出された溶液の長さを予め設定された長さと比較する工程と、
この比較に基いて上記ノズルから吐出された溶液の長さを制御する工程と
を具備したことを特徴とする溶液の塗布方法にある。
【0019】
上記溶液の長さの検出は、上記ノズルから吐出された溶液を撮像カメラで撮像するとともに、その撮像カメラによって撮像される複数のノズルから吐出された溶液に対して行なうことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、ノズルから吐出された溶液の長さを検出するようにした。そのため、その長さによってノズルから吐出された溶液の量を求めることができるから、溶液の投影面積から量を求める場合に比べて測定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1と図2に示すこの発明に係る塗布装置は直方体状のベース1を有する。このベース1の下面の所定位置にはそれぞれ脚2が設けられ、これら脚2によって上記ベース1は水平に支持されている。
【0023】
図2に示すように、上記ベース1の上面の幅方向両端部には、所定の幅寸法の取付け板3が長手方向に沿ってそれぞれ設けられている。これら取付け板3の上面の幅方向一端部には長手方向に沿ってそれぞれガイド部材4が設けられている。これらガイド部材4の上面には、矩形板状のXテーブル5が、その下面の幅方向両側に平行に設けられた断面ほぼ逆U字状の一対の第1の受け部材6をスライド可能に係合させて支持されている。Xテーブル5の上面には、このXテーブル5よりも小さい載置テーブル7が設けられている。つまり、載置テーブル7は上記Xテーブル5を介して上記ガイド部材4に沿うX方向に移動可能となっている。
【0024】
上記ガイド部材4には固定子4aが設けられ、上記第1の受け部材6には可動子6aが設けられ、上記固定子4aと可動子6aとで駆動手段となるリニアモータ8を形成している。
【0025】
上記載置テーブル7には、たとえばアクティブマトリックス方式の液晶表示装置に用いられるガラス製の基板Wが供給される。この基板Wは、上記載置テーブル7に真空吸着や静電吸着などの手段によって吸着保持される。したがって、載置テーブル7に保持された基板Wは上記Xテーブル5によってX方向に駆動されるようになっている。
【0026】
上記ベース1の長手方向中途部には上記一対のガイド部材4を跨ぐように門型の支持体11が立設されている。この支持体11の両側上部には角柱からなる取付け部材12が水平に架設されている。
【0027】
上記取付け部材12にはヘッドテーブル19が上記Xテーブル5の駆動方向であるX方向と直交するY方向(図2に矢印で示す)に沿って移動可能に設けられている。上記支持体11の幅方向一側にはパルスモータからなる第1のY駆動源21が設けられている。このY駆動源21は上記ヘッドテーブル19をY方向に沿って駆動するようになっている。なお、ヘッドテーブル19のY方向の駆動はパルスモータに代わり、リニアモータで行うようにしてもよい。
【0028】
上記ヘッドテーブル19の一側面にはインクジェット方式によって機能性薄膜である、たとえば配向膜を形成する溶液(ポリイミド溶液)をドット状に吐出する複数の塗布ヘッド22がY方向に沿って配置されている。この実施の形態では、たとえば7つの塗布ヘッド22が千鳥状に二列で配置されている。
【0029】
図3と図4に示すように、上記各塗布ヘッド22はヘッド本体28を備えている。ヘッド本体28は筒状に形成され、その下面開口は可撓板29によって閉塞されている。この可撓板29はノズルプレート31によって覆われており、このノズルプレート31と上記可撓板29との間には複数の液室32が形成されている。
【0030】
各液室32は、ノズルプレート31内に形成された主管路31Aに図示しない枝管路を介してそれぞれ連通していて、上記主管路31Aから上記枝管路を介して溶液が各液室32に供給される。主管路31Aは、一端が後述する給液孔33に接続され、他端が後述する回収孔37に接続される。
【0031】
上記ヘッド本体28の長手方向一端部には上記液室32に連通する上記給液孔33が形成されている。この給液孔33から上記各液室32には機能性薄膜を形成する上記溶液が供給される。それによって、上記液室32内は溶液で満たされるようになっている。
【0032】
図4に示すように、上記ノズルプレート31には、基板Wの搬送方向に直交する方向である、Y方向に沿って複数のノズル34が千鳥状に穿設されている。上記可撓板29の上面には、図3に示すように上記各ノズル34にそれぞれ対向して駆動手段としての複数の圧電素子35が設けられている。
【0033】
各圧電素子35は上記ヘッド本体28内に設けられた駆動部36によって駆動電圧が供給される。それによって、圧電素子35は伸縮し、可撓板29を部分的に変形させるから、その圧電素子35に対向位置するノズル34から溶液がドット状に吐出され、搬送される基板Wの上面に供給塗布される。したがって、基板Wの上面には、ドット状の溶液が行列状に配列されてなる塗布パターンが形成される。そして、この塗布パターンは、ドット状の各溶液が流動して濡れ広がることにより、付着し合って1つの膜となる。
【0034】
上記ヘッド本体28の長手方向他端部には上記液室32に連通する上記回収孔37が形成されている。上記給液孔33から液室32に供給された溶液は、上記回収孔37から回収することができるようになっている。すなわち、各ヘッド22は上記液室32に供給された溶液をノズル34から吐出させるだけでなく、上記液室32を通じて上記回収孔37から回収することが可能となっている。
【0035】
図1に示すように、上記ガイド部材4の一端部には上記塗布ヘッド22のノズル34から吐出される溶液の量を測定するための測定装置41が設けられている。この測定装置41は第1の可動部材42を有する。この第1の可動部材42は下面の幅方向両端部に一対の第2の受け部材43(1つのみ図示)が設けられ、この受け部材43を上記ガイド部材4にスライド可能に係合させて設けられている。そして、上記ノズル34から吐出される溶液の量を測定しないときには図1に示すように上記ガイド部材4の長手方向一端部の待機位置、つまり載置テーブル7の往復動の邪魔にならない位置で待機している。
【0036】
なお、第1の可動部材42は上記リニアモータ8によって上記ガイド部材4に沿うX方向に駆動することができ、上記ガイド部材4に設けられた載置テーブル7と上記第1の可動部材42を選択的に駆動することが可能となっている。
【0037】
上記第1の可動部材42の上面には、この第1の可動部材42の長手方向に沿って移動可能な第2の可動部材45が長手方向を上記第1の可動部材42に対して直交させて設けられている。
【0038】
図5と図6に示すように、上記第1の可動部材42の長手方向一端にはパルスモータからなる第2のY駆動源46が設けられ、この第2のY駆動源46によって上記第2の可動部材45を上記X方向と交差するY方向、つまり上記塗布ヘッド22の並設方向に沿って駆動することができるようになっている。
【0039】
上記第2の可動部材45のX方向に沿う長手方向一端部には高速度カメラ48が設けられ、他端にはこの高速度カメラ48に向けて照明光を出射する光源49が設けられている。上記高速度カメラ48と光源49とで検出手段を構成している。
なお、上記第2の可動部材45の長手方向中央部分の上面には後述するように各塗布ヘッド22のノズル34から吐出される溶液を受ける受け皿51が設けられている。
【0040】
図7は、上記測定装置41によって塗布ヘッド22のノズル34から吐出される溶液の量を測定するときの制御回路を示す。同図中52は制御装置である。この制御装置52にはタイミング設定装置53が接続されている。
【0041】
上記タイミング設定装置53は、上記制御装置52から駆動信号D1が入力されると、上記塗布ヘッド22に設けられた駆動部36を介してそれぞれの圧電素子35に電圧を印加する吐出信号S1と、光源コントローラ54を介して上記光源49から照明光を出射させる発光信号S2と、上記高速度カメラ48を作動させる撮像信号S3とを所定のタイミングで同期して出力する。吐出信号S1を受けた駆動部36は、制御装置52から送られる電圧指令信号S11に応じた電圧Vを圧電素子35に供給するようになっている。
【0042】
それによって、所定の塗布ヘッド22のノズル34から溶液が吐出されるとともに、光源49から照明光が出射され、上記高速度カメラ48によって上記ノズル34から吐出され基板Wに到達する前の溶液が撮像されるようになっている。なお、発光信号S2と撮像信号S3は同じ信号であってもよく、別々の信号であってもよい。
【0043】
溶液を撮像した上記高速度カメラ48は、その撮像信号S4を画像処理装置55に出力する。画像処理装置55は上記高速度カメラ48からの撮像信号S4を処理し、その撮像信号S4によってノズル34から吐出された溶液の長さL(吐出方向における長さ)を算出する。
【0044】
なお、高速度カメラ48によって溶液の長さLを撮像する場合、ノズル34から吐出される溶液がそのノズル34から出きった時点で撮像するよう、その撮像タイミングをタイミング設定装置53によって設定すれば、溶液の長さLの全長を撮像することができる。
【0045】
上記高速度カメラ48は,図12に示すように一度に複数のノズル34から吐出された溶液を撮像することができる視野範囲Aを有する。この実施の形態では高速度カメラ48はその視野範囲Aに5つのノズル34及び5つのノズル34から吐出される溶液Yを撮像することができるようになっている。したがって、上記画像処理装置55は上記高速度カメラ48が一度に撮像した視野範囲Aの画像から5つのノズル34から吐出された溶液Yの長さLを算出することができる。
【0046】
上記画像処理装置55によって算出された算出信号S5は上記制御装置52に出力される。算出信号S5を受けた制御装置52はノズル34から溶液を吐出させる圧電素子35に印加する電圧Vを制御する。
【0047】
図8は圧電素子35に印加する電圧Vと、ノズル34から吐出される溶液の量との関係を予め測定したグラフであって、印加電圧Vを増加させると溶液の吐出量が直線的に増加する関係にあることが分かる。
【0048】
図9は圧電素子35に印加する電圧Vと、ノズル34から吐出される溶液の長さLとの関係を測定したグラフであって、印加電圧を増加させると、吐出される溶液の長さLが直線的に増加する関係にあることが分かる。図10はノズル34から吐出される溶液の量と長さLとの関係を測定したグラフであって、吐出量が増加すると、溶液の長さLが直線的に増加する関係にあることが分かる。
【0049】
以上のことから、圧電素子35に印加する電圧Vによってノズル34から吐出される溶液の長さLを変えることができるから、その長さLを変えることでノズル34から吐出される溶液の量を制御することができる。
【0050】
上記制御装置52は、画像処理装置55からの算出信号S5を処理して、圧電素子35に印加する電圧Vを制御すると同時に、測定装置41のY方向の駆動を制御する駆動コントローラ56に移動信号S6を出力する。
【0051】
移動信号S6を受けた駆動コントローラ56は第2のY駆動源46に駆動信号D2を出力する。それによって、高速度カメラ48と光源49が設けられた第2の可動部材45がY方向に所定距離駆動され、上記塗布ヘッド22のY方向に位置するつぎの5つのノズル34を上記高速度カメラ48によって撮像できるよう、上記第2の可動部材45をY方向に対して位置決めする。
【0052】
図11はノズル34から吐出される溶液の長さを設定する動作を説明したフローチャートである。まず、測定装置41が測定される塗布ヘッド22に対して位置決めされた状態、すなわち高速度カメラ48と光源49との間を塗布ヘッド22の測定対象のノズル34から吐出された溶液が通過する状態で、P1で示す第1の工程で動作が開始されると、P2で示す第2の工程では上記塗布ヘッド22の全てのノズル34から溶液が吐出される。各ノズル34からの溶液の吐出は1回だけでなく、測定が完了するまで繰り返して行なわれる。そして、ノズル34から吐出された溶液は受け皿51によって受けられる。
【0053】
溶液の吐出は、図7に示すように制御装置52からタイミング設定装置53に出力される駆動信号D1に基いて行なわれる。ノズル34から溶液が吐出されると、P3で示す第3の工程では上記タイミング設定装置53によって設定された所定のタイミングで、光源49から照明光が出射されると同時に、高速度カメラ48によってその視野範囲A内に収めることができる5つのノズル34から吐出された溶液が撮像される。
【0054】
P4で示す第4の工程では、上記高速度カメラ48からの画像信号S4によってノズル34から吐出された溶液の長さLを画像処理装置55によって算出し、P5で示す第5の工程では各ノズル34から吐出された溶液の長さLが上記制御装置52に設けられた図示しない比較部に設定された上限値と比較される。
【0055】
なお、溶液の長さLの算出は、図12に一点鎖線で示すように、視野範囲A内においてノズル34毎に対応して設定された測定エリアR毎に行なわれる。
また、画像処理装置は、測定エリアR内において公知のエッジ抽出による処理を行い、溶液の長さLの算出をする。
【0056】
比較の結果、溶液の長さが上限値よりも長い場合には、P6で示す第6の工程でその溶液を吐出したノズル34に対応する圧電素子35に印加する電圧値が図9に示す測定グラフに基いて下げられる。
【0057】
第5の工程P5での比較の結果、溶液の長さが上限値よりも小さい場合には、その長さがP7で示す第7の工程で上記比較部に設定された下限値と比較される。比較の結果、溶液の長さが下限値よりも小さい場合には、Pで示す第8の工程でその溶液を吐出したノズル34に対応する圧電素子35に印加する電圧値が図9に示す測定グラフに基いて上げられる。
【0058】
P6で示す第6の工程又はP8で示す第8の工程で圧電素子35に印加する電圧値を制御したならば、各ノズル34から溶液を吐出させて撮像するという工程が視野範囲A内の5つのノズル34に対して順次行なわれる。それによって、高速度カメラ48によって撮像された5つのノズル34から吐出される溶液の長さL、つまり量が所定の範囲に設定されることになる。
【0059】
第7の工程P7で比較の結果、溶液の長さが下限値よりも大きい場合、P9で示す第9の工程で高速度カメラ48によって撮像された、その視野範囲A内の5つのノズル34から吐出される溶液の長さLの測定が終了したか否かが確認される。終了していない場合には、P10で示す第10の工程で測定エリアRの切り替えが行なわれ、5つのノズル34のうち、測定が終了していないノズル34から吐出される溶液の長さLが測定される。
【0060】
P9で視野範囲A内の5つのノズル34から吐出される溶液の長さLの測定が終了したことが確認されると、P11で示す第11の工程では、1つの塗布ヘッド22の全てのノズル34から吐出される溶液の長さLの測定が完了したか否かが確認される。完了していない場合には、P12で示す第12の工程で第2のY駆動源46によって測定装置41がY方向に所定距離駆動される。それによって、上記高速度カメラ48の視野範囲Aは未測定の複数のノズル34を撮像する位置になり、それらノズル34から吐出される溶液の長さが測定される。
【0061】
そして、塗布ヘッド22の全てのノズル34から吐出される溶液の測定及びその測定に基く溶液の長さLの設定が終了すると、P13で示す第13の工程で1つの塗布ヘッド22に対する測定が終了となる。同様の作業が複数の塗布ヘッド22に対して順次行なわれる。
【0062】
このように、この実施の形態においては、塗布ヘッド22のノズル34から吐出される溶液の長さLを測定し、その長さから吐出量を算出するようにした。図10に示すように、ノズル34から吐出される溶液の長さは吐出量が増加すると直線的に増加する関係にあるから、この関係より溶液の長さLから吐出量を正確に知ることができる。
【0063】
溶液の長さLを高速度カメラ48の画像信号S4から求める場合、誤差要因となる溶液の画像の輪郭部分に対応する受光素子(高速度カメラ48が備える固体撮像素子の受光素子)の画素は、溶液の上端と下端にそれぞれ1つずつあるだけである。そのため、たとえばノズル34から吐出される溶液の長さLが受光素子100個分の長さであるとすると、誤差要因は受光素子100個中の2つ分になる。
【0064】
これに対して溶液の量を投影面積で求める従来の場合、ノズル34から吐出される溶液が受光素子に対し長さ方向に100個分、幅方向にn個分に対応するとすれば、溶液の輪郭部分に対応する受光素子は(200+2n)個であることになるから、この分、溶液の投影面積を算出する上での誤差要因となる。
【0065】
したがって、溶液の長さLから吐出量を求めるこの実施の形態によれば、溶液の投影面積から求める従来に比べて誤差要因となる画素数が極めてわずかになるから、その分、溶液の吐出量を精度よく測定することができることになる。
【0066】
溶液はノズル34から吐出された時点では細長い線状であるが、溶液自体の表面張力によって吐出されてから時間が経過するにつれて球形状に変形してゆく。したがって、測定精度を向上させるためには、溶液の長さLの測定を、ノズル34から吐出された直後、或いはそれに近いタイミングで撮像することが好ましい。
【0067】
しかも、ノズル34から吐出される溶液の吐出長さLを精度よく測定できれば、その吐出長さLを基準にしてノズル34からの溶液の吐出量を高精度に設定することが可能となる。すなわち、塗布ヘッド22の複数のノズル34から吐出される溶液の吐出量が同じになるよう高精度に設定することができるから、基板Wに機能性薄膜を均一な厚さで形成することが可能となる。
【0068】
上記一実施の形態では駆動手段としての圧電素子に電圧を印加して溶液を吐出させるインクジェット方式の塗布装置を例に挙げて説明したが、塗布装置としては溶液を加熱して溶液中の気泡を膨張させることで、その圧力で溶液を吐出させる方式であってもよく、その場合は駆動手段としては圧電素子に代わり、電圧値によって発熱量が変化するヒータが用いられることになる。
【0069】
また、測定装置の高速度カメラと光源をベースのガイド部材に設けるようにしたが、ベースに立設された支持体に設けるようにしてもよい。
【0070】
さらに、塗布ヘッドが設けられたヘッドテーブルはY方向に駆動可能であるから、測定装置はX方向だけ駆動可能に設け、Y方向は塗布ヘッドを駆動することで、その塗布ヘッドのY方向に沿って設けられた複数のノズルから吐出される溶液の長さを順次測定するようにしてもよい。
【0071】
さらに、測定装置として高速度カメラと光源を用いた例を挙げて説明したが、測定装置はノズルから吐出される溶液の長さを測定できる手段であればよく、例えば溶液の吐出方向と交差する方向に沿ってレーザ装置と、このレーザ装置から発振されたレーザ光を受光する受光器とを所定の間隔で配置し、ノズルから吐出された溶液がレーザ装置から発振されたレーザ光を遮る時間を測定し、その時間から溶液の長さを求める構成であってもよい。
【0072】
また、溶液を5つのノズル分ずつ測定したが、測定するノズルの数は5つよりも多くても少なくてもよく、その数は限定されるものでない。
【0073】
また、高速度カメラの視野範囲Aに撮像される溶液の数は、溶液の長さと高速度カメラのレンズ倍率との関係で設定すればよい。つまり、高速度カメラの視野範囲Aの総画素数は決まっている。そのため、溶液を視野範囲Aにおいて、できるだけ大きく撮像した方が溶液の長さLの算出に多くの画素を用いることができるから、それによって分解能が向上するから、測定精度を上げることができる。
【0074】
溶液は、吐出方向に長い、縦長であるから、視野範囲Aの縦方向の長さのほぼ一杯に溶液が撮像されるよう、高速度カメラのレンズ倍率を設定する。それによって、それによって分解能が向上するから、測定精度を上げることができる。この場合、設定した高速度カメラの倍率の視野範囲Aの横方向に収まる数の溶液を一度に撮像すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】この発明の一実施の形態の塗布装置の概略的構成を示す正面図。
【図2】図1に示す塗布装置の側面図。
【図3】塗布ヘッドの縦断面図。
【図4】塗布ヘッドのノズルが形成された下面を示す図。
【図5】測定装置の側面図。
【図6】上記測定装置の平面図
【図7】制御系統を示すブロック図。
【図8】圧電素子に印加する電圧と、ノズルから吐出される溶液の量の関係を示すグラフ。
【図9】圧電素子に印加する電圧と、ノズルから吐出される溶液の長さの関係を示すグラフ。
【図10】ノズルから吐出される溶液の量と、ノズルから吐出される溶液の長さの関係を示すグラフ。
【図11】塗布ヘッドの各ノズルから吐出される溶液の量を設定する手順を説明したフローチャート。
【図12】高速度カメラによって撮像された5つのノズルから吐出された溶液を示す説明図。
【符号の説明】
【0076】
22…塗布ヘッド、35…圧電素子(駆動手段)、41…測定装置(検出手段)、48…高速度カメラ(検出手段)、49…光源(検出手段)、52…制御装置、53…タイミング設定装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に溶液を供給塗布する溶液の塗布装置であって、
上記溶液を吐出するノズルを有する塗布ヘッドと、
この塗布ヘッドに設けられ電圧が印加されることで作動して上記ノズルから上記溶液を吐出させる駆動手段と、
上記ノズルから吐出された溶液の吐出方向における長さを検出する検出手段と
を具備したことを特徴とする溶液の塗布装置。
【請求項2】
上記検出手段が検出する溶液の長さによって上記駆動手段に印加する電圧値を制御する制御手段を有することを特徴とする請求項1記載の溶液の塗布装置。
【請求項3】
上記駆動手段に駆動信号を印加するタイミングと、上記検出手段によって上記溶液の長さを検出するタイミングを設定するタイミング設定手段を有することを特徴とする請求項1記載の溶液の塗布装置。
【請求項4】
基板に溶液を供給塗布する溶液の塗布方法であって、
塗布ヘッドに設けられたノズルから上記溶液を吐出させる工程と、
上記ノズルから吐出された溶液の長さを検出する工程と、
検出された溶液の長さを予め設定された長さと比較する工程と、
この比較に基いて上記ノズルから吐出された溶液の吐出方向における長さを制御する工程と
を具備したことを特徴とする溶液の塗布方法。
【請求項5】
上記溶液の長さの検出は、上記ノズルから吐出された溶液を撮像カメラで撮像するとともに、その撮像カメラによって撮像される複数のノズルから吐出された溶液に対して行なうことを特徴とする請求項4記載の溶液の塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−149239(P2008−149239A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338664(P2006−338664)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】