説明

熱硬化性樹脂組成物並びにこれを用いた樹脂ワニス、プリプレグ及び金属張積層板

【課題】高周波用途で高多層プリント配線板の内層接着剤として使用し、低熱膨張率、低比誘電率、低誘電損失、低吸湿性及び良好な高多層成形性を満足する印刷配線板用熱硬化性樹脂組成物、並びにそれを用いた樹脂ワニス、プリプレグ及び金属張積層板を提供する。
【解決手段】未硬化のセミIPN型複合体と、(D)ラジカル反応開始剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、未硬化のセミIPN型複合体が、(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有し、かつ化学変性されていないブタジエンポリマー及び(C)架橋剤から形成されるプレポリマーと、が相容化した未硬化のセミIPN型複合体であり、(D)成分がジアルキルパーオキサイド系ラジカル反応開始剤及びハイドロパーオキサイド系ラジカル反応開始剤を含む、熱硬化性樹脂組成物、並びにそれを用いた樹脂ワニス、プリプレグ及び、金属張積層板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物、並びにこれを用いたプリント配線板用樹脂ワニス、プリプレグ及び金属張積層板に関し、特に二種類以上の特定のラジカル反応開始剤を含有する組成物に関する。より詳しくは、動作周波数が1GHzを超えるような電子機器に使用される新規なセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物、並びにこれを用いたプリント配線板用樹脂ワニス、プリプレグ及び金属張積層板に関するものである。なお、セミIPN型複合体とは、架橋型重合体と直鎖状重合体とが相互にからみあうことによって相互網目侵入構造を有する複合体である。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信機器、その基地局装置、サーバー及びルーター等のネットワーク関連電子機器、並びに大型コンピュータ等では、低損失かつ高速で、大容量の情報を伝送・処理することが要求されている。大容量の情報を伝送・処理する場合、電気信号が高周波数の方が高速に伝送・処理できる。ところが、電気信号は、基本的に高周波になればなるほど減衰しやすくなる、すなわちより短い伝送距離で出力が弱くなりやすく、損失が大きくなりやすい性質を有する。したがって、上述の低損失かつ高速との要求を満たすためには、機器に搭載された伝送・処理を行うプリント配線板自体の特性において、伝送損失、特に高周波帯域での伝送損失を一層低くする必要がある。
【0003】
低伝送損失のプリント配線板を得るために、従来、比誘電率及び誘電正接の低いフッ素系樹脂を使用した基板材料が使用されてきた。しかしながら、フッ素系樹脂は一般に溶融温度及び溶融粘度が高く、その流動性が比較的低いため、プレス成形時に高温高圧条件を設定する必要があるという問題点がある。しかも、上記の通信機器、ネットワーク関連電子機器及び大型コンピュータ等に使用される高多層のプリント配線板用途として使用するには、加工性、寸法安定性及び金属めっきとの接着性が不充分であるという問題点がある。
【0004】
そこで、フッ素系樹脂に替わる、高周波用途に対応するためのプリント配線板用樹脂材料が研究されている。そのうち、耐熱性ポリマーの中で最も誘電特性が優れる樹脂の1つとして知られるポリフェニレンエーテルを使用することが注目されている。しかし、ポリフェニレンエーテルは、上記フッ素樹脂同様に溶融温度及び溶融粘度が高い熱可塑性樹脂である。そのため、従来からプリント配線板用途には、溶融温度及び溶融粘度を低くさせ、プレス成形時に温度圧力条件を低く設定させるため、あるいは、ポリフェニレンエーテルの溶融温度(230〜250℃)以上の耐熱性を付与する目的で、ポリフェニレンエーテルと、熱硬化性樹脂とを併用した樹脂組成物として用いられてきた。
【0005】
例えば、エポキシ樹脂を併用した樹脂組成物(特許文献1参照)、ビスマレイミドを併用した樹脂組成物(特許文献2参照)、シアネートエステルを併用した樹脂組成物(特許文献3参照)、スチレン−ブタジエン共重合体又はポリスチレンと、トリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレートを併用した樹脂組成物(特許文献4〜5参照)、ポリブタジエンを併用した樹脂組成物(特許文献6及び特許文献7参照)、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基等の官能基を有する変性ポリブタジエンとビスマレイミド及び/又はシアネートエステルを予備反応させた樹脂組成物(特許文献8参照)、不飽和二重結合基を有する化合物を付与又はグラフトさせたポリフェニレンエーテルに上記トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートや上記ポリブタジエン等を併用した樹脂組成物(特許文献9及び特許文献10参照)、あるいはポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸又は不飽和酸無水物との反応生成物と上記ビスマレイミド等を併用した樹脂組成物(特許文献11参照)等が提案されている。これらの文献によれば、ポリフェニレンエーテルの低伝送損失性を保ちつつ、上述した熱可塑性の欠点を改善するには、硬化後の樹脂が極性基を多く有していないことが好ましいと開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−69046号公報
【特許文献2】特開昭56−133355号公報
【特許文献3】特公昭61−18937号公報
【特許文献4】特開昭61−286130号公報
【特許文献5】特開平3−275760号公報
【特許文献6】特開昭62−148512号公報
【特許文献7】特開昭59−193929号公報
【特許文献8】特開昭58−164638号公報
【特許文献9】特開平2−208355号公報
【特許文献10】特開平6−184213号公報
【特許文献11】特開平6−179734号公報
【特許文献12】特開2009−35710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、特許文献1〜11に記載されたものを始めとする、ポリフェニレンエーテルと熱硬化性樹脂を併用した樹脂組成物など、そのプリント配線板用積層板用途への適用性について詳細に検討した。
その結果、特許文献1、特許文献2及び特許文献11に示されている樹脂組成物では、極性の高いエポキシ樹脂やビスマレイミドの影響によって硬化後の誘電特性が悪化し、高周波用途には不適であった。
特許文献3に示されているシアネートエステルを併用した組成物では、誘電特性は優れるものの、吸湿後の耐熱性が低下した。
特許文献4〜5、特許文献9及び特許文献10に示されているトリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレートを併用した組成物では、比誘電率がやや高いことに加え、吸湿に伴う誘電特性のドリフトが大きいという傾向が見られた。
特許文献4〜7及び特許文献10に示されているポリブタジエンを併用した樹脂組成物では、誘電特性は優れるものの、樹脂自体の強度が低いことや熱膨張係数が高いという問題があるため、高多層用のプリント配線板用途には不適切であった。
特許文献8は、金属、ガラス基材との接着性を改善するためにか、変性ポリブタジエンを併用した樹脂組成物である。しかし、変性されてないポリブタジエンを用いた場合に比べて誘電特性が、特に1GHz以上の高周波領域においては大幅に悪化するという問題があった。
さらに、特許文献11に示されているポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸又は不飽和酸無水物との反応生成物を用いた組成物では、極性の高い不飽和カルボン酸や不飽和酸無水物の影響により通常のポリフェニレンエーテルを用いた場合よりも誘電特性が悪化する。
そのため、上述した熱可塑性の欠点が改善され、かつ誘電特性にも優れた、ポリフェニレンエーテルを含有する熱硬化性樹脂組成物が要望されている。
一方、特許文献12に示されているラジカル反応開始剤を一種類のみ含有した樹脂組成物では、溶融粘度が大きく、硬化開始温度が低いため、特に段数の多い高多層プリント配線板を製造する際には更なる樹脂フロー性の向上による多層化成形性の改善が求められる。
【0008】
また、本発明者らは、誘電特性、特に伝送損失の低減という点に注目して、研究を行ったところ、低誘電率、低誘電正接の樹脂を用いるのみでは、近年の電気信号の更なる高周波化への対応として不充分であることを見出した。電気信号の伝送損失は、絶縁層に起因する損失(誘電体損失)と導体層に起因する損失(導体損失)に分類されるため、低誘電率、低誘電正接の樹脂を用いる場合、誘電体損失のみが低減される。さらに伝送損失を低減させるためには、導体損失をも低減することが必要である。
【0009】
この導体損失の低減を図る方法として、導体層と絶縁層との接着面である粗化処理面(以下、「M面」という。)側の表面凹凸が小さい金属箔、具体的には、M面の表面粗さ(十点平均粗さ;Rz)が5μm以下の金属箔(以下、「ロープロファイル箔」という。)を用いた金属張積層板を採用する方法等を用いることができる。
そこで、本発明者らは、高周波用途のプリント配線板用材料として、低誘電率、低誘電正接である熱硬化性樹脂を用い、かつ金属箔にはロープロファイル箔を用いることについて検討した。
【0010】
ところが、本発明者らが研究した結果、特許文献1〜11に記載された樹脂組成物を用いて、ロープロファイル箔により積層板とした場合、絶縁(樹脂)層と導体(金属箔)層間の接着力(接合力)が弱くなり、金属箔との間で要求される引き剥がし強さを確保できないことが分かった。これは、樹脂の極性が低く、しかも金属箔のM面の凹凸に起因するアンカー効果が低下するためと考えられる。また、これらの積層板における吸湿後の耐熱性試験では、樹脂と金属箔との間に剥離が生じるという不具合が発生した。これは、樹脂と金属箔との接着力が低いためと考えられる。このような結果から、本発明者らはこれらの特許文献1〜11に記載された樹脂組成物は、先に示した問題に加えて、ロープロファイル箔のような表面粗さの小さい金属箔で適用することが難しいという問題を見出した。
【0011】
特に、ポリフェニレンエーテルとブタジエンホモポリマーの系では、以下のことが顕著であった。これらの樹脂は本来、互いに非相溶であり、均一な樹脂とすることが困難である。そのため、これらを含有する樹脂組成物をそのまま用いた場合、未硬化の状態では、ブタジエンホモポリマー系の欠点であるタック(粘着性)の問題があるため、外観が均一で、かつ取り扱い性の良好なプリプレグを得ることが非常に困難である。また、このプリプレグと金属箔とを用いて金属張積層板とした場合は、樹脂が不均一な状態(マクロな相分離状態)で硬化されてしまうために、外観上の問題に加えて、吸湿時の耐熱性が低下し、さらにはブタジエンホモポリマー系の欠点が強調されてしまい、破壊強度が低いことや熱膨張係数が大きいこと等の様々な不具合を生じる。そのため、プリント配線板用途に要求される水準を満たす、ポリフェニレンエーテルとブタジエンホモポリマー系の樹脂組成物は見出されていなかった。
【0012】
また、ポリフェニレンエーテルとブタジエンホモポリマー系の樹脂組成物では、金属箔との間の引き剥がし強さが低く、ロープロファイル箔を適用しうるだけの強度がなかった。これにはブタジエンホモポリマーと金属箔との界面接着力の低さよりも、引き剥がし時の金属箔近傍における樹脂の凝集破壊強度の低さの方が、より大きな要因として影響しているものと考えられる。
【0013】
また、ポリフェニレンエーテルの耐衝撃性向上や、上述のようなポリフェニレンエーテルとブタジエンポリマー、トリアリルシアヌレート及びトリアリルイソシアヌレート等の不飽和二重結合基を有する熱硬化性樹脂との相溶性の課題に対する改善策として、上記特許文献4〜6に示されているようなスチレン−ブタジエン共重合体等の相溶化剤としても機能する不飽和の架橋性ポリマーを併用する場合があるが、このような樹脂組成物は、上記熱硬化性樹脂とスチレン−ブタジエン共重合体とが相溶系であるため、ガラス転移温度(Tg)の低いスチレン−ブタジエン共重合体と熱硬化性樹脂との共硬化反応によるTgの低下が避けられない。
【0014】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決するため、特に高周波帯域での良好な誘電特性を備え、伝送損失を有意に低減可能であり、また、吸湿耐熱性、熱膨張特性に優れ、高多層時における成形性が良好であるプリント配線板を製造可能な熱硬化性樹脂組成物、並びにそれを用いた樹脂ワニス、プリプレグ及び金属張積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、ポリフェニレンエーテルを含有する樹脂組成物について、上記課題を解決できるよう鋭意研究を重ねた結果、相容化した未硬化のセミIPN型複合体に、特定の飽和型熱可塑性エラストマを組み合わせた熱硬化性樹脂組成物という新規な構成、特にポリフェニレンエーテルと化学変性されていないブタジエンポリマー及び架橋剤とのプレポリマーが相容化した新規な構成を有する未硬化のセミIPN型複合体と、飽和型熱可塑性エラストマを含有する熱硬化性樹脂組成物である。さらに、新規な独自の相容方法で製造される相容化した未硬化のポリフェニレンエーテル変性ブタジエンポリマーと、飽和型熱可塑性エラストマとを含有するセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物である。さらに、1時間半減期温度の異なる二種類以上のラジカル反応開始剤を含有することでプレス成形時の溶融粘度の低減及び硬化開始温度の制御による樹脂フロー性の制御が可能であり、それにより更に高多層時における成形性を十分に高いレベルで達成させられることを本発明者らは見出した。
【0016】
すなわち、本発明は、以下に関する。
(1) 未硬化のセミIPN型複合体と、(D)ラジカル反応開始剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、未硬化のセミIPN型複合体が、(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有し、かつ化学変性されていないブタジエンポリマー及び(C)架橋剤から形成されるプレポリマーと、が相容化した未硬化のセミIPN型複合体であり、(D)成分がジアルキルパーオキサイド系ラジカル反応開始剤及びハイドロパーオキサイド系ラジカル反応開始剤を含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
(2) (D)成分のジアルキルパーオキサイド系ラジカル反応開始剤の1分間半減期温度が175.4℃以上であり,かつハイドロパーオキサイド系ラジカル反応開始剤の1分間半減期温度が232.5℃以上であることを特徴とする前記の熱硬化性樹脂組成物。
(3) (D)成分中のジアルキルパーオキサイド系ラジカル反応開始剤がα,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンであることを特徴とする前記の熱硬化性樹脂組成物。
(4) (D)成分中のハイドロパーオキサイド系ラジカル反応開始剤が、p−メンタハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイドから選ばれた一種以上のラジカル反応開始剤であることを特徴とする前記の熱硬化性樹脂組成物。
(5) (A)ポリフェニレンエーテルの存在下で、(B)側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有する化学変性されていないブタジエンポリマーと、(C)架橋剤と、を予備反応させて得られる、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを含有する未硬化のセミIPN型複合体と、(D)ラジカル反応開始剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、(D)成分がジアルキルパーオキサイド系ラジカル反応開始剤及びハイドロパーオキサイド系ラジカル反応開始剤とを含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
(6) (A)成分の配合割合が、(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して2〜200質量部の範囲であり、(C)成分の配合割合が、(B)成分100質量部に対して2〜200質量部の範囲であり、(D)成分の配合割合(ジアルキルパーオキサイド系ラジカル反応開始剤とハイドロパーオキサイド系ラジカル反応開始剤の合計量)が、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して0.05〜10質量部の範囲であり、かつ、(a)ジアルキルパーオキサイドと(b)ハイドロパーオキサイドの配合比率がそれぞれ(a):(b)=20:80〜50:50であることを特徴とする前記の熱硬化性樹脂組成物。
(7) ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを、(C)成分の転化率が5〜100%の範囲となるように予備反応させて得る、前記の熱硬化性樹脂組成物。
(8) (C)成分として、一般式(1)で表される少なくとも一種以上のマレイミド化合物を含有する、前記の熱硬化性樹脂組成物。
【0017】
【化1】

(式中、Rは、m価の脂肪族性又は芳香族性の有機基であり、Xa及びXbは、水素原子、ハロゲン原子及び脂肪族性の有機基から選ばれた同一又は異なっていてもよい一価の原子又は有機基であり、そしてmは、1以上の整数を示す。)
【0018】
(9) (C)成分が、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド及びN−シクロヘキシルマレイミドからなる群より選ばれる少なくとも一種以上のマレイミド化合物である、前記の熱硬化性樹脂組成物。
(10) (C)成分が、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンを含有する少なくとも一種以上のマレイミド化合物である、前記の熱硬化性樹脂組成物。
(11) (C)成分が、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンを含有する少なくとも一種以上のマレイミド化合物である、前記の熱硬化性樹脂組成物。
(12) (C)成分が、ジビニルビフェニルを含有する少なくとも一種以上のビニル化合物である、前記の熱硬化性樹脂組成物。
(13) さらに(E)飽和型熱可塑性エラストマを含有する、前記の熱硬化性樹脂組成物。
(14) (E)成分が、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体を含む少なくとも一種類以上の飽和型熱可塑性エラストマであることを特徴とする前記の熱硬化性樹脂組成物。
(15) (E)成分が、スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエン部分の不飽和二重結合基を水素添加して得られる飽和型熱可塑性エラストマを含む少なくとも一種類以上の飽和型熱可塑性エラストマであることを特徴とする前記の熱硬化性樹脂組成物。
(16) (E)成分が、化学変性された飽和型熱可塑性エラストマを含む少なくとも一種類以上の飽和型熱可塑性エラストマであることを特徴とする前記の熱硬化性樹脂組成物。
(17) (E)成分が、分子中にスチレンブロックを含み、かつスチレンブロックの含有比率が20〜70%である飽和型熱可塑性エラストマを含む少なくとも一種類以上の飽和型熱可塑性エラストマであることを特徴とする前記の熱硬化性樹脂組成物。
(18) さらに(F)未硬化のセミIPN型複合体を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー又は架橋性ポリマーを含有する、前記の熱硬化性樹脂組成物。
(19) (F)成分が、化学変性されていないブタジエンポリマー及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種以上のエチレン性不飽和二重結合基含有の架橋性モノマー又は架橋性ポリマーである、前記の熱硬化性樹脂組成物。
(20) さらに(G)臭素系難燃剤及びリン系難燃剤の少なくとも何れかを含有する、前記の熱硬化性樹脂組成物。
(21) さらに(H)無機充填剤を含有する、前記の熱硬化性樹脂組成物。
(22) 前記の熱硬化性樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させて得られるプリント配線板用樹脂ワニス。
(23) 前記のプリント配線板用樹脂ワニスを基材に含浸後、乾燥させて得られるプリプレグ。
(24) 前記のプリプレグを1枚以上重ね、その片面又は両面に金属箔を配置し、加熱加圧して得られる金属張積層板。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、本発明の樹脂組成物等を用いてプリント配線板とした場合に、優れた高周波特性と良好な耐熱性(特に吸湿耐熱性)及び低熱膨張特性を達成でき、かつ高多層時における成形性を十分に高いレベルで達成させられる樹脂組成物並びに樹脂ワニス、プリプレグ及び金属張積層板を提供することができる。したがって、本発明は、1GHz以上の高周波信号を扱う移動体通信機器やその基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワーク関連電子機器及び大型コンピュータ等の各種電気・電子機器に使用されるプリント配線板の部材・部品用途として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】未硬化のセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の新規なセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物が、上述の目的を達成できる要因は、現在のところ詳細には明らかになっていない。本発明者らは以下のように推測しているが、他の要素の関わりを除外するものではない。
【0022】
本発明では、誘電特性が良好な熱可塑性樹脂であるポリフェニレンエーテルと、硬化後、最も優れた誘電特性を発現する熱硬化性樹脂の一つとして知られる化学変性されていないブタジエンポリマーと、を成分として含有することにより、誘電特性を格段に向上させることを目的としている。上述のように、ポリフェニレンエーテルと化学変性されていないブタジエンポリマーとは本来、互いに非相溶であり、均一な樹脂とすることが困難であった。ところが、本発明の予備反応を用いる手法により、均一に相容化した新規な構成の樹脂を得ることができる。
【0023】
本発明において、予備反応とは、反応温度、例えば60〜170℃でラジカルを発生させて、(B)成分と(C)成分とを反応させることであり、(B)成分中の所定量が架橋し、(C)成分の所定量が転化する。すなわち、この状態はゲル化には至っていない未硬化状態のことである。この予備反応の前後の、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の混合液と、セミIPNポリマーとは、粘度、濁度、液体クロマトグラフィー等の特性ピークの変化により容易に区別することができる。なお、一般に言われる硬化反応とは、熱プレス又は溶剤揮発温度以上でラジカルを発生させて硬化させることであり、本発明における予備反応との違いは明白である。
【0024】
本発明では、(A)成分であるポリフェニレンエーテルの存在下、又は(A)成分及び(E)成分である飽和型熱可塑性エラストマの存在下で、(B)成分の、側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有する化学変性されていないブタジエンポリマーと、(C)成分の架橋剤とを、(C)成分を適正な転化率(反応率)で予備反応させることにより、完全に硬化させる前の未硬化状態で、一旦、一方のリニアポリマー成分(ここでは、(A)成分、又は(A)成分と(E)成分、実線部分)と、もう片方の架橋性成分(ここでは、(B)及び(C)成分、点線部分)との間に、いわゆる“セミIPN”を形成させたポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーとすることで均一な樹脂組成物を得ている(未硬化のセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物;図1参照)。この際の均一化(相容化)は、(A)成分とそれ以外の成分((B)成分と(C)成分との部分架橋物)とが化学的結合を形成するのではなく、(A)成分とそれ以外の成分との分子鎖同士が互いに、部分的かつ物理的に絡み合いながらオリゴマー化するためミクロ相分離構造を形成し、見かけ上均一化(相容化)できるものと考えられる。
【0025】
このポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを含有する樹脂組成物(未硬化のセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物)は、外観が見かけ上均一な樹脂膜が得られる。従来知られているような、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーは、セミIPNを形成しておらず、また、構成成分が相容化していないため、いわば相分離した状態である。そのために、本願発明の組成物とは異なり、従来のポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーは見かけ上不均一なマクロ相分離を起こす。
【0026】
本願発明のポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを含有する樹脂組成物(未硬化のセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物)を用いて製造されるプリプレグは、外観が均一であり、かつ、ある程度架橋したブタジエンプレポリマーと元々タックのないポリフェニレンエーテルが分子レベルで相容化しているためにタックの問題が解消される。さらに、このプリプレグを用いて製造される金属張積層板は、プリプレグ同様に外観上の問題もなく、また、分子鎖同士が部分的かつ物理的に絡み合いながら硬化するため、不均一状態の樹脂組成物を硬化させた場合よりも、疑似的に架橋密度が高くなるため弾性率が向上し、熱膨張係数が低くなる。さらに、弾性率の向上と均一なミクロ相分離構造の形成により、樹脂の破壊強度や耐熱性(特に吸湿時)を大幅に高めることができる。さらに、樹脂の破壊強度の向上により、ロープロファイル箔を適用できるレベルまでの高い金属箔引き剥がし強さを発現し得る。さらに、(C)成分として、硬化物とした時の樹脂強度や靭性を高める、あるいは分子運動を拘束させる等の特徴を持たせるような特定の架橋剤を選択することにより、金属箔引き剥がし強さ及び熱膨張特性のレベルを向上できることを見出している。
【0027】
本発明の新規なセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物は、(A)成分のポリフェニレンエーテルの存在下で、(B)成分の側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有するブタジエンホモポリマーと(C)成分の架橋剤とを予備反応させて得られるポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー、(E)飽和型熱可塑性エラストマを含有する。以下、樹脂組成物の各成分及びポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの好適な製造方法について説明する。
【0028】
本発明の新規なセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物において、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造に用いられる(A)成分は、例えば、2,6−ジメチルフェノールや2,3,6−トリメチルフェノールの単独重合で得られるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルやポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン)エーテルや2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体等が挙げられる。また、これらとポリスチレンやスチレン−ブタジエンコポリマー等とのアロイ化ポリマー等、いわゆる変性ポリフェニレンエーテルも用いることができるが、この場合はポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル成分、ポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン)エーテル成分及び2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体成分を50%以上含有するポリマーであることがより好ましい。
【0029】
また、(A)成分の分子量については、特に限定されないが、プリント配線板とした時の誘電特性や耐熱性と、プリプレグとした時の樹脂の流動性とのバランスを考慮すると、数平均分子量で7000〜30000の範囲であることが好ましい。なお、ここでいう数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算したものである。
【0030】
本発明において、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造に用いられる(B)成分は、側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有する化学変性されていないブタジエンポリマーであれば、特に特に限定されるものではなく、分子中の側鎖1,2−ビニル基や末端の両方又は片方を、エポキシ化、グリコール化、フェノール化、マレイン化、(メタ)アクリル化及びウレタン化等の化学変性された変性ポリブタジエンではなく、未変性のブタジエンポリマーである。変性ポリブタジエンを用いると、誘電特性、耐湿性及び吸湿後の耐熱性が悪化するため望ましくない。
【0031】
(B)成分の分子中の側鎖1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位の含有量は、樹脂組成物の硬化性を考慮すると、50%以上がより好ましく、65%以上が更に好ましい。また、(B)成分の数平均分子量は、500〜10000の範囲であることが好ましい。10000を超えるとプリプレグとした時に樹脂の流動性が劣るので好ましくない。500未満だと樹脂組成物の硬化性や硬化物とした時の誘電特性が劣るので好ましくない。樹脂組成物の硬化性や硬化物とした時の誘電特性と、プリプレグとした時の樹脂の流動性とのバランスを考慮すると、700〜8000の範囲であることがより好ましく、1000〜5000の範囲であることが更に好ましい。なお、数平均分子量とは、(A)成分における数平均分子量の定義記載と同様である。
【0032】
(B)成分として、−〔CH−CH=CH−CH〕−単位(j)及び−〔CH−CH(CH=CH)〕−単位(k)からなる化学変性されていないブタジエンポリマーであり、j:kの比が60〜5:40〜95であるものを用いることができる。
【0033】
本発明において好適に用いられる(B)成分の具体例としては、B−1000、B−2000、B−3000(日本曹達株式会社製、商品名)、B−1000、B−2000、B−3000(新日本石油化学株式会社製、商品名)、Ricon142、Ricon150、Ricon152、Ricon153、Ricon154(SARTOMER株式会社製、商品名)等を商業的に入手可能である。
【0034】
本発明において、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造に用いられる(C)成分は、分子中に(B)成分との反応性を有する官能基を有する化合物であり、例えば分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー又は架橋性ポリマーが挙げられる。(C)成分としては、具体的には、ビニル化合物、マレイミド化合物、ジアリルフタレート、(メタ)アクリロイル化合物、不飽和ポリエステル等が挙げられる。この中でも好適に用いられる(C)成分としては、少なくとも一種以上のマレイミド化合物、或いは少なくとも一種以上のビニル化合物を含有すると、(B)成分との共架橋性に優れるため樹脂組成物とした時の硬化性や保存安定性が良好であることや、プリント配線板とした時の成形性、誘電特性、吸湿後の誘電特性、熱膨張特性、金属箔引き剥がし強さ、Tg、吸湿時の耐熱性及び難燃性等のトータルバランスが優れるという観点から望ましい。
【0035】
本発明の(C)成分として好適に用いられるマレイミド化合物は、下記一般式(1)で表される分子中に1個以上のマレイミド基を含有する化合物であれば特に限定されない。モノマレイミド化合物や下記の一般式(2)で表されるポリマレイミド化合物が好適に使用できる。
【0036】
【化2】

(式中、Rはm価の脂肪族性、脂環式、芳香族性、複素環式のいずれかである一価又は多価の有機基であり、Xa及びXbは水素原子、ハロゲン原子及び脂肪族性の有機基から選ばれた同一又は異なっていてもよい一価の原子又は有機基であり、mは1以上の整数を示す。)
【0037】
【化3】

(式中、Rは、−C(Xc)−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、又は連結する結合であり、それぞれ同一又は異なっていてもよい、Xcは炭素数1〜4のアルキル基、−CF、−OCH、−NH、ハロゲン原子又は水素原子を示し、それぞれ同一又は異なっていてもよい、それぞれベンゼン環の置換位置は相互に独立であり、n及びpは、0〜10の整数を示す。)
【0038】
上述のモノマレイミド化合物の具体例としては、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド及びN−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0039】
一般式(2)で表されるポリマレイミド化合物の具体例としては、1,2−ジマレイミドエタン、1,3−ジマレイミドプロパン、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,7−ジマレイミドフルオレン、N,N′−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N′−(1,3−(4−メチルフェニレン))ビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)エ−テル、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−(3−マレイミドフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ) フェニル] スルホキシド、4,4′−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(2−(3−マレイミドフェニル)プロピル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル)−1−プロピル)ベンゼン、ビス(マレイミドシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(マレイミドフェニル)チオフェン、下記の一般式(3)及び下記の一般式(4)等のような脂肪族性、脂環式、芳香族性及び複素環式のポリマレイミド等(ただし、各々異性体を含む)が挙げられる。プリント配線板とした時の耐湿性、耐熱性、破壊強度、金属箔引き剥がし強さ及び低熱膨張特性の観点からは、芳香族性のポリマレイミドが好ましく、その中でも、特に熱膨張係数を更に低める点では、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンを用いることがより好ましく、破壊強度及び金属箔引き剥がし強さを更に高める点では、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンを用いることがより好ましい。また、プレプリグとした時の成形性を高める点では、緩やかな硬化反応となるモノマレイミドが好ましく、その中でもコストの点でN−フェニルマレイミドを用いることがより好ましい。そして、上記マレイミド化合物は単独でも、二種類以上を組み合わせて用いてもよく、又はこれら少なくとも一種以上のマレイミド化合物と上記に示した架橋剤を一種以上とを併用して用いてもよい。
【0040】
(C)成分において、マレイミド化合物とその他の架橋剤とを併用して用いる場合は、(C)成分中のマレイミド化合物の割合が50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上であるが、他の架橋剤と併用して用いるよりも、マレイミド化合物を単独で用いるほうがより好ましい。
【0041】
【化4】

(式中、qは平均値で0〜10である。)
【0042】
【化5】

(式中、rは平均値で0〜10である。)
【0043】
(C)成分として好適に用いられるビニル化合物は、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ジビニルビフェニルが挙げられる。ジビニルビフェニルが好ましい。本発明において好適に用いられる(B)成分の具体例としては、ジビニルビフェニル(新日鐵化学株式会社製)が商業的に入手可能である。
【0044】
本発明の新規なセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物におけるポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーは、好ましくは媒体中に展開させた(A)成分の存在下で、(B)成分と、(C)成分とをゲル化しない程度に予備反応させることにより製造される。これにより、本来非相溶系である(A)成分と(B)成分及び(C)成分との間に、分子鎖同士が互いに物理的に絡み合ったセミIPNポリマーが形成され、完全に硬化させる前段階の未硬化の状態で、見かけ上均一化(相容化)したプレポリマーが得られる。
【0045】
本発明によれば、例えば、(A)成分を溶媒に溶解させる等により媒体中に展開させた後、この溶液中に(B)成分及び(C)成分を溶解又は分散させて、60〜170℃で、0.1〜20時間、加熱・撹拌させることにより製造することができる。溶液中でポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを製造する場合、溶液中の固形分(不揮発分)濃度が通常5〜80質量%となるように溶媒の使用量を調節することが好ましい。そして、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを製造した後は、濃縮等により溶媒を完全に除去して無溶媒の樹脂組成物としてもよく、又はそのまま溶媒に溶解又は分散させたポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液としてもよい。また、溶液とする場合においても、濃縮等により固形分(不揮発分)濃度を高くした溶液としてもよい。
【0046】
本発明の樹脂組成物において、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造に用いられる(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合割合は、(A)成分の配合割合が、(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して2〜200質量部の範囲とするのが好ましく、10〜100質量部とすることがより好ましく、15〜50質量部とすることが更に好ましい。(A)成分の配合割合は、熱膨張係数、誘電特性と樹脂ワニスの粘度に起因する塗工作業性及びプリプレグとした時の溶融粘度に起因するプリント配線板とした時の成形性とのバランスを考慮して、(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して配合することが好ましい。また、(C)成分の配合割合が、(B)成分100質量部に対して2〜200質量部の範囲とするのが好ましく、5〜100質量部とすることがより好ましく、10〜75質量部とすることが更に好ましい。(C)成分の配合割合は、熱膨張係数、Tg及び金属箔引き剥がし強さと誘電特性とのバランスを考慮して、(B)成分100質量部に対して配合することが好ましい。
【0047】
本発明のポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーは、その製造の際に、(C)成分の転化率(反応率)が5〜100%の範囲となるように予備反応させて得られる。より好ましい範囲としては、上記(B)成分及び(C)成分の配合割合によって異なり、(C)成分の配合割合が、(B)成分100質量部に対して2〜10質量部の範囲の場合は、(C)成分の転化率(反応率)が10〜100%の範囲とするのがより好ましく、10〜100質量部の範囲の場合は、(C)成分の転化率(反応率)が7〜90%の範囲とするのがより好ましく、100〜200質量部の範囲の場合は、(C)成分の転化率(反応率)が5〜80%の範囲とするのがより好ましい。(C)成分の転化率(反応率)は、樹脂組成物やプリプレグで外観が均一でかつタックなしであること、プリント配線板で、吸湿時の耐熱性や金属箔引き剥がし強さ、熱膨張係数を考慮すると、5%以上であることが好ましい。
【0048】
なお、本発明におけるポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーとは、(C)成分が100%転化した状態を含む。また、(C)成分の転化が100%未満であり、反応しない、未転化の(C)成分が残存する状態も含む。
【0049】
(C)成分の転化率(反応率)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー中の(C)成分の残存量と予め作成した(C)成分の検量線とから換算したものである。
【0050】
本発明の樹脂組成物において、金属張積層板や多層プリント配線板を製造する際に樹脂組成物の硬化物の硬化反応を開始又は促進させる目的として、(D)ラジカル反応開始剤を含有する。(D)成分の具体例としては、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド系ラジカル反応開始剤や、p−メンタハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3,−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド系ラジカル反応開始剤が挙げられるが、これらに限定されない。また、プレプリグとした時の成形性を高める点では、半減期温度の異なるラジカル反応開始剤を組み合わせるのが好ましく、その中でも誘電特性、耐吸湿性及び熱膨張率等の観点より、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等のジアルキルパーオキサイド系ラジカル反応開始剤と、それらよりも高い反応開始温度をもったp−メンタハイドロパーオキサイド,ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドまたはt−ヘキシルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド系ラジカル反応開始剤から選ばれた一種以上のラジカル反応開始剤を用いることがより好ましい。
【0051】
本発明の樹脂組成物には、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造の際に(B)成分と(C)成分との予備反応を開始又は促進させる目的として、ラジカル反応開始剤を含有していることが好ましい。その場合、(D)成分と同種のものを用いても、異なる種類のものを用いても良く、(D)成分であげられた具体例以外では、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、イソブチリルパーオキサイド、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物や2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾインメチルエーテル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらラジカル反応開始剤は、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0052】
本発明の樹脂組成物における上記(D)成分の配合割合は、(B)成分及び(C)成分の配合割合に応じて決定することができ、(B)成分と(C)成分の合計量100質量部に対して、0.05〜10質量部とすることが好ましい。この数値範囲内で(D)成分のラジカル反応開始剤を配合すると、金属張積層板や多層プリント配線板を製造する際の硬化反応において、良好な硬化性が得られる。
【0053】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において用いられる(E)成分は、飽和型の熱可塑性エラストマであれば、特に限定されるものではないが、(A)成分との相溶性の良いスチレン系飽和型熱可塑性エラストマが望ましい。本発明において好適に用いられる(E)成分の具体例としては、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体が挙げられ、スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエンブロックの不飽和二重結合部分を水素添加する方法等により得ることができる。また、スチレン系飽和型熱可塑性エラストマを用いる場合、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーとの相溶性と、樹脂組成物を硬化させた場合の熱膨張特性とのバランスから、スチレンブロックの含有比率が20〜70%であることが好ましい。さらに、(E)成分は、分子中にエポキシ基、水酸基、カロボキシル基、アミノ基、酸無水物等の官能基を付与した化学変性飽和型熱可塑性エラストマを用いることもできる。また、(E)成分は単独でも、二種類以上を組み合わせて用いてもよく、スチレン系飽和型熱可塑性エラストマを用いる場合、スチレン含有量の異なる二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
本発明の樹脂組成物における(E)成分の配合割合は、特に限定されないが、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対して、1〜100質量部とすることが好ましく、2〜50質量部とすることがより好ましく、5〜30質量部とすることが更に好ましい。(E)成分の配合割合が1質量部未満では誘電特性の向上効果が不充分となる傾向があり、100質量部を超えると硬化物の熱膨張特性が悪化する傾向にある。
【0055】
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて(F)未硬化のセミIPN型複合体を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー又は架橋性ポリマー、(G)臭素系難燃剤及びリン系難燃剤の少なくとも何れか、(H)無機充填剤及び各種熱硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂、各種添加剤をプリント配線板とした時の誘電特性、耐熱性、接着性(金属箔引き剥がし強さ、ガラス等の基材との接着性等)、耐湿性、Tg、熱膨張特性等の特性を悪化させない範囲の配合量で、更に配合してもよい。
【0056】
上記(F)成分の未硬化のセミIPN型複合体を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー又は架橋性ポリマーとしては、特に限定されない。具体的には化学変性されていないブタジエンポリマー及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる。上記(B)成分及び上記(C)成分として挙げられた化合物を、未硬化のセミIPN型複合体を構成しない限り用いることができる。また、化学変性されていないブタジエンポリマーとして、数平均分子量が10000を超える化学変性されていないブタジエンポリマーも挙げられる。これらの化合物は、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0057】
上記の(B)成分及び(C)成分として例示されたものと同じ化合物を(F)成分として配合する場合は、未硬化のセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物(ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー)の製造後に配合し、その場合の(F)成分の配合量は、(B)成分及び(C)成分の配合量とは区別され、下記に好ましい配合量が別途記述される。上記の(B)成分及び(C)成分として例示されたものと同じ化合物を(F)成分として配合する場合は、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー製造時に用いたものと、それぞれ同種のものを用いても、異なる種類のものを用いてもよい。
【0058】
上記(F)成分として、数平均分子量が10000を超える化学変性されていないブタジエンポリマーを配合する場合、液状タイプでも固形タイプでも用いることができ、1,2−ビニル結合比率及び1,4−結合比率についても特に制限されない。
【0059】
本発明の樹脂組成物における上記(F)成分の配合割合は、特に限定されないが、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対して、2〜100質量部とすることが好ましく、2〜80質量部とすることがより好ましく、2〜60質量部とすることが更に好ましい。
【0060】
上記(G)成分の難燃剤としては、特に限定されないが、臭素系、リン系、金属水酸化物等の難燃剤が好適に用いられる。より具体的には、臭素系難燃剤としては、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン及び2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン等の臭素化添加型難燃剤、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート及び臭素化スチレン等の不飽和二重結合基含有の臭素化反応型難燃剤等が挙げられる。
【0061】
リン系難燃剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ−2,6−キシレニルホスフェート及びレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族系リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル及びフェニルホスホン酸ビス(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、リン含有ビニルベンジル化合物及び赤リン等のリン系難燃剤を例示でき、金属水酸化物難燃剤としては水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等が例示される。また、上述の難燃剤は一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
本発明の樹脂組成物における(G)成分の配合割合は、特に限定されないが、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(E)成分の合計量100質量部に対して、5〜200質量部とすることが好ましく、5〜150質量部とすることがより好ましく、5〜100質量部とすることが更に好ましい。難燃剤の配合割合が5質量部未満では耐燃性が不充分となる傾向があり、200質量部を超えるとプリント配線板とした時の耐熱性や金属箔引き剥がし強さが低下する傾向にある。
【0063】
上記(H)成分の無機充填剤としては、特に限定されないが、具体的には、アルミナ、酸化チタン、マイカ、シリカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が用いられる。これらの無機充填剤は単独で用いてもよいし、二種類以上併用してもよい。また、無機充填剤の形状及び粒径についても特に制限はなく、通常、粒径0.01〜50μm、好ましくは0.1〜15μmのものが好適に用いられる。
【0064】
本発明の樹脂組成物における(H)成分の配合割合は、特に限定されないが、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(E)成分の合計量100質量部に対して、1〜1000質量部が好ましく、5〜500質量部がより好ましい。
【0065】
本発明における溶媒としては、特に限定するものではないが、具体例としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素類等の溶媒が挙げられる。また、これらは一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよく、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類や、芳香族炭化水素類とアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類との混合溶媒がより好ましい。これらの溶媒のうち、芳香族炭化水素類及びケトン類を混合溶媒として用いる場合のそれらの配合割合は、芳香族炭化水素類100質量部に対してケトン類を5〜100質量部であると好ましく、10〜80質量部であるとより好ましく、15〜60質量部であると更に好ましい。
【0066】
また、本発明の樹脂組成物において、必要に応じて配合される各種熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、具体例としては、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられ、これらの硬化剤や硬化促進剤等を用いてもよい。また、必要に応じて配合される各種熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−ペンテン)等のポリオレフィン類及びその誘導体、ポリエステル類及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、(メタ)アクリル酸エステル共重合体類、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン共重合体類、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体類、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール類、ポリビニルアルコール類、ポリブタジエンの完全水素添加物類、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイト、ポリアミドイミド、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー等が挙げられる。各種添加剤としては、特に限定されないが、具体例としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、滑剤等が挙げられる。また、これら各種熱硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂及び各種添加剤は、それぞれ、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0067】
本発明の樹脂組成物は、上述した(A)成分、(B)成分及び(C)成分とで得られるポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー、(D)成分、(E)成分、必要に応じて配合される(F)未硬化のセミIPN型複合体を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー又は架橋性ポリマー、(G)難燃剤、(H)無機充填剤及び各種熱硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂、各種添加剤を、公知の方法で配合、撹拌・混合することにより製造することができる。なお、予め(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(E)成分とで得られる飽和型熱可塑性エラストマ併用ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーとした場合も、同様の方法で配合、撹拌・混合することにより製造することができる。
【0068】
上述した本発明の樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させることにより、本発明の樹脂ワニスを得ることができる。また、溶液中でポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを製造した場合は、一旦、溶媒を除去して無溶媒のポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーと、上述のその他の配合剤とを溶媒に溶解又は分散させて樹脂ワニスとしてもよく、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液に、(D)成分や(E)成分及び必要に応じて(F)成分、(G)成分、(H)成分、上述のその他の配合剤と、必要に応じて追加の溶媒を更に配合して樹脂ワニスとしてもよい。なお、予め飽和型熱可塑性エラストマ併用ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーとした場合も、同様の方法でワニス化することができる。
【0069】
上述の樹脂組成物をワニス化する際に用いられる溶媒は、特に限定するものではないが、具体例や好ましい溶媒の例としては、上記ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー又は飽和型熱可塑性エラストマ併用ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造の際に用いられる溶媒について記載したものを用いることができ、これらは一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよく、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類や、芳香族炭化素類とアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類との混合溶媒がより好ましい。なお、ワニス化する際の溶媒は、上記ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造の際に用いられる溶媒と同種のものでも、異なる種類の溶媒を用いてもよい。
【0070】
また、ワニス化する際は、ワニス中の固形分(不揮発分)濃度が、5〜80質量%となるように溶媒の使用量を調節することが好ましいが、本発明の樹脂ワニスを用いてプリプレグ等を製造する際、溶媒量を調節することにより、塗工作業に最適な(例えば、良好な外観及び適正な樹脂付着量となるように)固形分(不揮発分)濃度やワニス粘度に調製することができる。
【0071】
上述した本発明の樹脂組成物及び樹脂ワニスを用いて、公知の方法により、本発明のプリプレグや金属張積層板を製造することができる。例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物及び樹脂ワニスを、ガラス繊維や有機繊維等の強化繊維基材に含浸させた後、乾燥炉中等で通常、60〜200℃、好ましくは80〜170℃の温度で、2〜30分間、好ましくは3〜15分間乾燥させることによってプリプレグが得られる。次いで、このプリプレグを1枚又は複数枚重ねた、その片面又は両面に金属箔を配置し、所定の条件で加熱及び/又は加圧することにより両面又は片面の金属張積層板が得られる。この場合の加熱は、好ましくは100℃〜250℃の温度範囲で実施することができ、加圧は、好ましくは0.5〜10.0MPaの圧力範囲で実施することができる。加熱及び加圧は真空プレス等を用いて同時に行うことが好ましく、この場合、これらの処理を30分〜10時間実施することが好ましい。また、上述のようにして製造されたプリプレグや金属張積層板を用いて、公知の方法によって、穴開け加工、金属めっき加工、金属箔をエッチング等による回路形成加工及び多層化接着加工を行うことによって、片面、両面又は多層プリント配線板が得られる。
【0072】
本発明は、上記の形態に限定されず、その発明の目的から逸脱しない範囲内において、任意の変更、改変を行うことができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0074】
樹脂ワニス(樹脂組成物)の調製
調製例1
温度計、還流冷却器、減圧濃縮装置及び撹拌装置を備えた1リットル容のセパラブルフラスコに、トルエン350質量部と、成分(A)としてのポリフェニレンエーテル(S202A、旭化成ケミカルズ株式会社製、Mn:16000)50質量部を投入し、フラスコ内の温度を90℃に設定して撹拌溶解した。次いで、成分(B)としての化学変性されていないブタジエンポリマー(B−3000、日本曹達株式会社製、Mn:3000、1,2−ビニル構造:90%)100質量部と、成分(C)としてのビス(4−マレイミドフェニル)メタン(BMI−1000、大和化成工業株式会社製)30質量部と、溶液中の固形分(不揮発分)濃度が30質量%となるように、溶媒としてのメチルイソブチルケトン(MIBK)を投入し、撹拌を続け、これらが溶解又は均一分散したことを確認した。その後、液温を110℃に上昇させ、その温度を保ったまま、反応開始剤として、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(パーヘキサTMH、日本油脂株式会社製)0.5質量部を配合し、撹拌しながら約1時間予備反応させて、(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)化学変性されていないブタジエンポリマーと、(C)架橋剤とが相容化したポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液を得た。このポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液中のビス(4−マレイミドフェニル)メタンの転化率をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、転化率33%であった。転化率は、100からビス(4−マレイミドフェニル)メタンの未転化分(測定値)を引いた値である。
【0075】
次いで、フラスコ内の液温を80℃に設定後、撹拌しながら溶液の固形分濃度が45質量%となるように濃縮した。次に、溶液を室温まで冷却した後、成分(E)としてスチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(タフテックH1053、スチレン含有比率:29%、旭化成ケミカルズ株式会社製)20質量部を配合し、溶解を確認後、成分(D)としてα,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日油株式会社製)3.5質量部及びp−メンタハイドロパーオキサイド(パーメンタH、日油株式会社製)1.5質量部を添加した後、メチルエチルケトン(MEK)を配合して、調製例1の樹脂ワニス(固形分濃度約41質量%)を調製した。
【0076】
調製例2
調製例1において、成分(C)としてのビス(4−マレイミドフェニル)メタンの代わりに、ポリフェニルメタンマレイミド(BMI−2000、大和化成工業株式会社製)30質量部を用いたこと以外は、調製例1と同様にしてポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを得た。このポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液中のBMI−2000の転化率をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ35%であった。続いて、この溶液を用いて、成分(E)としてのタフテックH1053の代わりに、スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(タフテックH1051、スチレン含有比率:42%、旭化成ケミカルズ株式会社製)20質量部を配合し、溶解を確認後、成分(D)としてα,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日油株式会社製)3.5質量部及びp−メンタンハイドロパーオキサイド(パーメンタH、日油株式会社製)1.5質量部の代わりにそれぞれを2.5質量部ずつ添加した以外は調製例1と同様にして調製例2の樹脂ワニス(固形分濃度約41質量%)を調製した。
【0077】
調製例3
調製例1において、成分(C)としてのビス(4−マレイミドフェニル)メタンの代わりに、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(BMI−5100、大和化成工業株式会社製)35質量部を用いたこと以外は、調製例1と同様にしてポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを得た。このポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液中のBMI−5100の転化率をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ25%であった。続いて、この溶液を用いて、成分(E)としてのタフテックH1053の代わりに、スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(タフテックH1043、スチレン含有比率:67%、旭化成ケミカルズ株式会社製)20質量部を配合し、溶解を確認後、成分(D)としてα,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日油株式会社製)3.5質量部及びp−メンタハイドロパーオキサイド(パーメンタH、日油株式会社製)1.5質量部の代わりにそれぞれ1.5質量部及び3.5質量部添加した以外は調製例1と同様にして調製例3の樹脂ワニス(固形分濃度約41質量%)を調製した。
【0078】
調製例4
調製例1において、成分(C)としてのビス(4−マレイミドフェニル)メタンの代わりに、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン(BMI−4000、大和化成工業株式会社製)40質量部を用いたこと以外は、調製例1と同様にしてポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを得た。このポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液中のBMI−4000の転化率をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ30%であった。続いて、この溶液を用いて、成分(E)としてのタフテックH1053の代わりに、スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(タフテックH1081、スチレン含有比率:60%、旭化成ケミカルズ株式会社製)20質量部を配合し、溶解を確認後、成分(D)としてα,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日油株式会社製)3.5質量部及びp−メンタハイドロパーオキサイド(パーメンタH、日油株式会社製)1.5質量部の代わりに、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日油株式会社製)2.5質量部及びジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(パークミルP、日油株式会社製)1.5質量部添加した以外は調製例1と同様にして調製例4の樹脂ワニス(固形分濃度約41質量%)を調製した。
【0079】
調製例5
(a) 調製例1において、成分(C)としてのビス(4−マレイミドフェニル)メタンの代わりに、N−フェニルマレイミド(イミレックス−P、日本触媒株式会社製)15質量部を用いたこと以外は、調製例1と同様にしてポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを得た。このポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液中のイミレックス−Pの転化率をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ26%であった。
【0080】
(b) 続いて、この溶液を調製例1と同様にして濃縮した後、液温を80℃に保ったまま、成分(F)としての2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン(BMI−4000、大和化成工業株式会社製)25質量部を配合した。次いで、撹拌しながら室温まで冷却後、成分(E)としての二種類のスチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(タフテックH1043及びH1081)をそれぞれ10質量部配合し、溶解を確認後、成分(D)としてα,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日油株式会社製)3.5質量部及びp−メンタハイドロパーオキサイド(パーメンタH、日油株式会社製)1.5質量部の代わりにα,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日油株式会社製)2.5質量部及びジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(パークミルP、日油株式会社製)2.5質量部、メチルエチルケトン(MEK)を配合して、調製例5の樹脂ワニス(固形分濃度約41質量%)を調製した。
【0081】
調製例6
調製例5(a)において、成分(C)としてのN−フェニルマレイミドの代わりに、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン(BMI−1000、大和化成工業株式会社製)15質量部を用いたこと以外は、調製例5と同様にしてポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを得た。このポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液中のBMI−1000の転化率をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ32%であった。 続いて、この溶液を用いて、成分(E)としてのタフテックH1081の代わりに、タフテックH1051を10質量部配合し、溶解を確認後、成分(D)としてα,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日油株式会社製)3.5質量部及びp−メンタハイドロパーオキサイド(パーメンタH、日油株式会社製)1.5質量部の代わりに、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日油株式会社製)2.5質量部及びジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(パークミルP、日油株式会社製)3.5質量部添加した以外は調製例5(b)と同様にして調製例6の樹脂ワニス(固形分濃度約41質量%)を調製した。
【0082】
調製例7
(a) 調製例5(a)において、成分(C)としてのN−フェニルマレイミドの代わりに、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン(BMI−4000、大和化成工業株式会社製)25質量部を用いたこと以外は、調製例5と同様にしてポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを得た。このポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液中のBMI−4000の転化率をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ31%であった。
【0083】
(b) 続いて、この溶液を用いて調製例5(b)における成分(F)としての2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンの代わりに、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(BMI−5100、大和化成工業株式会社製)15質量部と、成分(E)としてのタフテックH1043及びH1081の代わりに、スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物の酸無水物変性エラストマ(タフテックM1913、スチレン含有比率:30%、旭化成ケミカルズ株式会社製)を20質量部と、難燃剤としてエチレンビス(ペンタブロモフェニル)(SAYTEX8010、アルベマール株式会社製)70質量部を配合し、溶解を確認後、成分(D)としてα,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日油株式会社製)3.5質量部及びp−メンタハイドロパーオキサイド(パーメンタH、日油株式会社製)1.5質量部の代わりに、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日油株式会社製)2.5質量部及びt−ヘキシルハイドロパーオキサイド(パークミルH、日油株式会社製)1.5質量部添加した以外は調製例5と同様にして調製例7の樹脂ワニス(固形分濃度約41質量%)を調製した。
【0084】
調製例8
調製例1において、成分(C)としてのビス(4−マレイミドフェニル)メタンの代わりに、ジビニルビフェニル(新日鐵化学株式会社製)20質量部を用いたこと以外は、調製例1と同様にしてポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを得た。このポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液中のジビニルビフェニルの転化率をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ28%であった。
続いて、この溶液を用い、難燃剤として臭素化ポリスチレン(PBS64HW、グレートレイクス株式会社製)70質量部を配合し、溶解を確認後、成分(D)としてα,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日油株式会社製)3.5質量部及びp−メンタハイドロパーオキサイド(パーメンタH、日油株式会社製)1.5質量部の代わりに、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日油株式会社製)2.5質量部及びt−ヘキシルハイドロパーオキサイド(パークミルH、日油株式会社製)3.5質量部添加した以外は調製例1と同様にして調製例8の樹脂ワニス(固形分濃度約41質量%)を調製した。
【0085】
比較調製例1
温度計、還流冷却器、撹拌装置を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、トルエン200質量部とポリフェニレンエーテル(S202A、旭化成ケミカルズ株式会社製、Mn:16000)50質量部を投入し、フラスコ内の温度を90℃に設定して撹拌溶解した。次いで、トリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成株式会社製)100質量部を投入し、溶解又は均一分散したことを確認後、室温まで冷却した。次いで、撹拌しながら室温まで冷却後、反応開始剤としてα,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂株式会社製)5質量部を添加した後、メチルエチルケトン(MEK)を配合して、比較調製例1の樹脂ワニス(固形分濃度約40質量%)を調製した。
【0086】
比較調製例2
比較調製例1において、トリアリルイソシアヌレートの代わりに、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(BMI−5100、大和化成工業株式会社製)100質量部を用いたこと以外は、比較調製例1と同様にして比較調製例2の樹脂ワニス(固形分濃度約40質量%)を調製した。
【0087】
比較調製例3
比較調製例1において、トリアリルイソシアヌレートの代わりに、化学変性されていないブタジエンポリマー(B−3000、日本曹達株式会社製、Mn:3000、1,2−ビニル構造:90%)100質量部を用いたこと以外は、比較調製例1と同様にして比較調製例3の樹脂ワニス(固形分濃度約40質量%)を調製した。
【0088】
比較調製例4
比較調製例3において、更にトリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成株式会社製)50質量部を加えたこと以外は、比較調製例3と同様にして比較調製例4の樹脂ワニス(固形分濃度約40質量%)を調製した。
【0089】
比較調製例5
比較調製例4において、トリアリルイソシアヌレートの代わりに、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン(BMI−1000、大和化成工業株式会社製)30質量部を加えたこと以外は、比較調製例4と同様にして比較調製例5の樹脂ワニス(固形分濃度約40質量%)を調製した。
【0090】
比較調製例6
温度計、還流冷却器、減圧濃縮装置及び撹拌装置を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、トルエン350質量部とポリフェニレンエーテル(S202A、旭化成ケミカルズ株式会社製、Mn:16000)50質量部を投入し、フラスコ内の温度を90℃に設定して撹拌溶解した。次いで、末端に水酸基を有するグリコール変性1,2−ポリブタジエン(G−3000、日本曹達株式会社製、Mn:3000、1,2−ビニル構造:90%)100質量部、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン(BMI−1000、大和化成工業株式会社製)30質量部及び溶液中の固形分(不揮発分)濃度が30質量%となるようにメチルイソブチルケトン(MIBK)を投入し、溶解又は均一分散したことを確認後に液温を110℃に保ったまま、反応開始剤として1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(パーヘキサTMH、日本油脂株式会社製)0.5質量部を配合し、撹拌しながら約10分間予備反応させた。この予備反応物中のBMI−1000の転化率をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ4%であった。次いで、フラスコ内の液温を80℃に設定後、撹拌しながら溶液の固形分(不揮発分)濃度が45質量%となるように濃縮した。次に、溶液を室温まで冷却した後、反応開始剤としてα,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂株式会社製)5質量部を添加した後、メチルエチルケトン(MEK)を配合して、比較調製例6の樹脂ワニス(固形分濃度約40質量%)を調製した。
【0091】
比較調製例7
比較調製例6において、グリコール変性1,2−ポリブタジエンの代わりに、末端にカルボキシル基を有するカルボン酸変性1,2−ポリブタジエン(C−1000、日本曹達株式会社製、Mn:1400、1,2−ビニル構造:89%)を100質量部用いたこと以外は、比較調製例6と同様にして予備反応物を得た。この予備反応物のBMI−1000の転化率をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ19%であった。続いて、この溶液を用いて比較調製例6と同様にして比較調製例7の樹脂ワニス(固形分濃度約40質量%)を調製した。
【0092】
比較調製例8
比較調製例3において、更に不飽和(架橋性)エラストマであるスチレン−ブタジエン共重合体(タフプレン125、旭化成ケミカルズ株式会社製)20質量部を加えたこと以外は、比較調製例3と同様にして比較調製例8の樹脂ワニス(固形分濃度約41質量%)を調製した。
【0093】
比較調製例9
調整例1において、スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(タフテックH1053、スチレン含有比率:29%、旭化成ケミカルズ株式会社製)を除いた以外は調製例1と同様にして比較調製例9の樹脂ワニス(固形分濃度約40質量%)を調製した。
【0094】
プリプレグの作製
調製例1〜8及び比較調製例1〜9で得られた樹脂ワニスを、厚さ0.1mmのガラス布(Eガラス、日東紡績株式会社製)に含浸した後、100℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有割合50質量%の作製例1〜8及び比較作製例1〜9のプリプレグを作製した。なお、調製例1〜8の樹脂ワニスを用いた場合がそれぞれ作製例1〜8に該当し、また比較調製例1〜9の樹脂ワニスを用いた場合がそれぞれ比較作製例1〜9に該当する。
【0095】
プリプレグの評価
上述の作製例1〜8及び比較作製例1〜9のプリプレグの外観及びタック性を評価した。評価結果を表1に示す。外観は目視により評価し、プリプレグ表面に多少なりともムラ、スジ等があり、表面平滑性に欠けるものを×、ムラ、スジ等がなく、均一なものを○とした。また,プリプレグのタック性は,25℃においてプリプレグ表面に多少なりともべたつき(タック)があるものを×、それ以外を○とした。
【0096】
両面銅張積層板の作製
上述の作製例1〜8及び比較作製例1〜9で作製したプリプレグ4枚を重ねた構成品を設け、その上下両面に、厚さ18μmのロープロファイル銅箔(F3−WS、M面Rz:3μm、古河電気工業株式会社製)のM面が接するように、銅箔を各1枚配置し、200℃、2.9MPa、70分のプレス条件で加熱加圧成形して、両面銅張積層板(厚さ:0.5mm)を作製した。また、作製例1及び比較作製例1のプリプレグについて、銅箔として厚さ18μmの一般銅箔(GTS、M面Rz:8μm、古河電気工業株式会社製)を用いて、両面銅張積層板を、ロープロファイル銅箔を用いた場合と同一プレス条件で、それぞれ別に作製した。なお、実施例1〜9及び比較例1〜10の銅張積層板における作製例1〜8及び比較作製例1〜9のプリプレグと使用銅箔との組合せについては、表1に示す。
【0097】
両面銅張積層板の特性評価
上述の実施例1〜9及び比較例1〜10の銅張積層板について、伝送損失、誘電特性、銅箔引きはがし強さ、はんだ耐熱性、熱膨張係数、Tgを評価した。その評価結果を表1に示す。銅張積層板の特性評価方法は以下の通りである。
【0098】
伝送損失及び誘電特性の測定
銅張積層板の伝送損失は、ベクトル型ネットワークアナライザを用いたトリプレート線路共振器法により測定した。なお、測定条件はライン幅:0.6mm、上下グランド導体間絶縁層距離:約1.0mm、ライン長:200mm、特性インピーダンス:約50Ω、周波数:3GHz、測定温度:25℃とした。また、得られた伝送損失から3GHzの誘電特性(比誘電率、誘電正接)を算出した。
【0099】
銅箔引きはがし強さの測定
銅張積層板の銅箔引きはがし強さは、プリント配線板用銅張積層板試験方法の規格JIS−C−6481に準拠して測定した(測定は、常態の試料を用いた)。
【0100】
銅張積層板のはんだ耐熱性の評価
50mm角に切断した上述の銅張積層板の両面及び片側の銅箔をエッチングし、その常態及びプレッシャークッカーテスト(PCT)用装置(条件:121℃、2.2気圧)中に所定時間(1、3及び5時間)保持した後のものを、288℃の溶融はんだに20秒間浸漬し、得られた銅張積層板(3枚)の外観を目視で調べた。なお、表中の数字は、はんだ浸漬後の銅張積層板3枚のうち、基材内(絶縁層内)及び基材と銅箔間に膨れやミーズリングの発生が認められなかったものの枚数を意味する。
【0101】
銅張積層板の熱膨張係数及びTgの測定
両面の銅箔をエッチングし、5mm角に切断した上述の銅張積層板における熱膨張係数(板厚方向、30〜130℃)及びTgは、TMAにより測定した。
【0102】
【表1】

【0103】
同じ樹脂組成物由来の樹脂ワニス及びプリプレグを用いた場合、実施例1及び2、又は比較例1及び2から分かるように、ロープロファイル箔と一般箔と比較すると、ロープロファイル箔は伝送損失に優れ、逆に金属箔との間の引き剥がし強さ(引き剥がし強さ)は、ロープロファイル箔が劣る。特に、従来の樹脂組成物にロープロファイル箔を用いた比較例1では、伝送損失は一般箔5.72からロープロファイル箔5.02dB/mと若干の改善は見られたものの、引き剥がし強さは一般箔0.92に対してロープロファイル箔0.58kN/mと劣り、実用に不充分な値である。このことは、上述の課題において述べたように、伝送損失の低減には、一般箔よりもロープロファイル箔の方が優れるが、金属箔との間の引き剥がし強さでは逆であり、そのために伝送損失の低減と所要な金属箔との間の引き剥がし強さとの両立が困難であったことを裏付けるものである。
【0104】
そして、表1から明らかなように、本発明の樹脂組成物を用いた実施例1〜9は、いずれのプリプレグも、外観にムラ、スジ等がなく均一であり,かつタック(表面のべとつき)もないことからプリプレグとしての特性に優れている。積層板としての特性では、比誘電率3.25以下、誘電正接0.0029以下と優れ、はんだ耐熱性は測定サンプル全3枚において膨れやミーズリングの発生が認められないので良好な結果であり、熱膨張係数は66ppm/℃以下と良好な熱膨張特性を有し、かつ172℃以上の高いTgも兼ね備えているので、積層板としての特性に優れている。
【0105】
そして、表1から明らかなように、本発明の樹脂組成物を用いた実施例1〜9は、異なる種及び配合量のラジカル反応開始剤を併用添加した樹脂組成物によるものであり、比較例1〜10と比較してプリプレグの反応開始温度が上がり、最低溶融粘度が減少している。また、良好な誘電特性、銅箔引き剥がし強さ、はんだ耐熱性、熱膨張特性と高多層時の良好な成形性を兼ね備えているので、特に高多層銅張積層板用途としての特性に優れている。
【0106】
そして、伝送損失と引き剥がし強さに関しては、本発明の樹脂組成物と一般箔を用いた実施例2は、同様に一般箔を用いた比較例2と比較して、伝送損失4.12と格段に優れ、引き剥がし強さも1.16kN/mと優れる。
【0107】
本発明の樹脂組成物とロープロファイル箔を用いた実施例1、3〜9の銅張積層板は、伝送損失3.49以下と特に優れ、ロープロファイル箔を用いているにも係らず、引き剥がし強さ0.80以上と優れ、伝送損失の低減と引き剥がし強さの両立に極めて有効な樹脂組成物であることが明らかである。
【0108】
比較例1、2は、ポリフェニレンエーテルとトリアリルイソシアヌレートの系であり、比較例1は、一般箔に代えてロープロファイル箔を用いた場合の特許文献4、5に相当し、一般箔を用いた比較例2は特許文献4、5に相当する。この系は、プリプレグ特性及び熱膨張係数は良好であるが、比誘電率、誘電正接、伝送損失に劣る。また、ロープロファイル箔を用いた場合、引き剥がし強さが劣り、はんだ耐熱性に劣り、総合した性能は不充分である。
【0109】
比較例3は、ポリフェニレンエーテルとビスマレイミド化合物の系であり、一般箔に代えてロープロファイル箔を用いた場合の特許文献2に相当する。この系は、プリプレグ特性及び熱膨張係数は良好であるが、比誘電率、誘電正接、伝送損失に劣り、また引き剥がし強さが劣り、総合した性能は不充分である。
【0110】
比較例4は、相容化していない従来のポリフェニレンエーテルとブタジエンホモポリマーの系であり、一般箔に代えてロープロファイル箔を用いた場合の特許文献6、7に相当する。この系は、比誘電率、誘電正接、伝送損失は比較的良好であるが、プリプレグ特性、引き剥がし強さ、はんだ耐熱性、熱膨張係数に劣り、総合した性能は不充分である。この系は、マクロに相分離していることが目視確認できるため、本願発明の相容化した組成物を用いた試料から目視で容易に判別することができる。
【0111】
比較例5は、相容化していない従来のポリフェニレンエーテルとブタジエンホモポリマーとトリアリルイソシアヌレートの系である。この系は、比誘電率、誘電正接、伝送損失は不充分であり、プリプレグ特性、引き剥がし強さ、はんだ耐熱性、熱膨張係数に劣り、全般的に性能が劣る。この系は、マクロに相分離しているため、本願発明の相容化した組成物を用いた試料から目視で容易に判別することができる。
【0112】
比較例6は、ポリフェニレンエーテルとブタジエンホモポリマーとマレイミド化合物の系であり、本発明と同成分の相容化されていない樹脂組成物に相当する。この系は、比誘電率、誘電正接、伝送損失はやや不充分であり、プリプレグ特性、引き剥がし強さ、はんだ耐熱性、熱膨張係数に劣り、全般的に性能が劣る。この系は、マクロに相分離しているため、本願発明の相容化した組成物を用いた試料から目視で容易に判別することができる。
【0113】
比較例7は、相容化していない従来のポリフェニレンエーテルとグリコール変性ポリブタジエンとマレイミド化合物の系であり、一般箔に代えてロープロファイル箔を用いた場合の特許文献8に相当する。この系は、比誘電率、誘電正接、伝送損失に劣り、プリプレグ特性、引き剥がし強さ、はんだ耐熱性、熱膨張係数に劣り、全般的に性能が劣る。この系は、マクロに相分離しているため、本願発明の相容化した組成物を用いた試料から目視で容易に判別することができる。
【0114】
比較例8は、ポリフェニレンエーテルとカルボン酸変性ポリブタジエンとマレイミド化合物の系であり、一般箔に代えてロープロファイル箔を用いた場合の特許文献8に相当する。この系は、プリプレグ特性及び引き剥がし強さは良好であるが、比誘電率、誘電正接、伝送損失に劣り、はんだ耐熱性、熱膨張係数に劣り、総合した性能は不充分である。
【0115】
比較例9は、相容化していない従来のポリフェニレンエーテルとブタジエンホモポリマーの樹脂系(比較例4)に、不飽和(架橋性)エラストマを加えた系であり、一般箔に代えてロープロファイル箔を用いた場合の特許文献6に相当する。この系は、比誘電率、誘電正接、伝送損失は比較的良好であるが、プリプレグ特性、引き剥がし強さ、はんだ耐熱性、熱膨張係数に劣り、またTgが低下し、総合した性能は不充分である。この系は、マクロに相分離しているため、本願発明の相容化した組成物を用いた試料から目視で容易に判別することができる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の樹脂組成物は、相容化した未硬化のセミIPN型複合体に、飽和型熱可塑性エラストマを組み合わせた熱硬化性樹脂組成物という新規な構成により、更なる誘電特性の向上を達成したものである。本願発明の樹脂組成物を用いたプリント配線板は、Tgの低下を抑えつつ、高周波帯域での良好な誘電特性、伝送損失を低減する特性という優れた電気特性に加え、高耐熱性(特に吸湿耐熱性)、低熱膨張特性かつ金属箔、特にロープロファイル箔との間の引き剥がし強さが充分に高いという優れた特性を兼ね備える。
【0117】
本発明の樹脂組成物を用いて、樹脂ワニス、プリプレグ及び金属張積層板を形成することができ、本発明の樹脂組成物及びこれを用いた樹脂ワニス、プリプレグ、金属張積層板は、樹脂組成物自体の誘電特性の向上による誘電体損失を低減する面と、表面粗さの小さい金属箔に適用可能としたことによる導体損失を低減する面との両面から、電気特性の改善にアプローチした。そのために、高周波帯域での伝送損失をプリント配線板業界の極めて高い要求水準を満たす程度までに低減することを達成しており、高周波分野で使用されるプリント配線板の製造において好適に用いることができる。
【0118】
本発明の樹脂組成物及びこれを用いた樹脂ワニス、プリプレグ、金属張積層板は、上述の特性を達成するので、高周波帯域、例えば1GHz以上の高周波信号を扱う移動体通信機器やその基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワーク関連電子機器及び大型コンピュータ等の各種電気・電子機器に使用されるプリント配線板の部材・部品用途として有用である。
【0119】
そして、本発明の樹脂組成物を用いた樹脂ワニスは、溶融粘度が小さく、硬化開始温度が高いため、それを用いたプリプレグは高多層化時における良好な成形性を実現可能であり、なおかつ良好な誘電特性、銅箔引き剥がし強さ、はんだ耐熱性、熱膨張特性を兼ね備えているので特に高多層用のプリント配線板用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未硬化のセミIPN型複合体と、(D)ラジカル反応開始剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、未硬化のセミIPN型複合体が、(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有し、かつ化学変性されていないブタジエンポリマー及び(C)架橋剤から形成されるプレポリマーと、が相容化した未硬化のセミIPN型複合体であり、(D)成分がジアルキルパーオキサイド系ラジカル反応開始剤及びハイドロパーオキサイド系ラジカル反応開始剤を含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(D)成分のジアルキルパーオキサイド系ラジカル反応開始剤の1分間半減期温度が175.4℃以上であり,かつハイドロパーオキサイド系ラジカル反応開始剤の1分間半減期温度が232.5℃以上であることを特徴とする請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(D)成分中のジアルキルパーオキサイド系ラジカル反応開始剤がα,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンであることを特徴とする請求項1又は2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(D)成分中のハイドロパーオキサイド系ラジカル反応開始剤が,p−メンタハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイドから選ばれた一種以上のラジカル反応開始剤であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)ポリフェニレンエーテルの存在下で、(B)側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有する化学変性されていないブタジエンポリマーと、(C)架橋剤と、を予備反応させて得られる、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを含有する未硬化のセミIPN型複合体と、(D)ラジカル反応開始剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、(D)成分がジアルキルパーオキサイド系ラジカル反応開始剤及びハイドロパーオキサイド系ラジカル反応開始剤とを含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
(A)成分の配合割合が、(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して2〜200質量部の範囲であり、(C)成分の配合割合が、(B)成分100質量部に対して2〜200質量部の範囲であり、(D)成分の配合割合(ジアルキルパーオキサイド系ラジカル反応開始剤とハイドロパーオキサイド系ラジカル反応開始剤の合計量)が、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して0.05〜10質量部の範囲であり、かつ、(a)ジアルキルパーオキサイドと(b)ハイドロパーオキサイドの配合比率がそれぞれ(a):(b)=20:80〜50:50であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを、(C)成分の転化率が5〜100%の範囲となるように予備反応させて得る、請求項6記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
(C)成分として、一般式(1)で表される少なくとも一種以上のマレイミド化合物を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rは、m価の脂肪族性又は芳香族性の有機基であり、Xa及びXbは、水素原子、ハロゲン原子及び脂肪族性の有機基から選ばれた同一又は異なっていてもよい一価の原子又は有機基であり、そしてmは、1以上の整数を示す。)
【請求項9】
(C)成分が、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド及びN−シクロヘキシルマレイミドからなる群より選ばれる少なくとも一種以上のマレイミド化合物である、請求項1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
(C)成分が、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンを含有する少なくとも一種以上のマレイミド化合物である、請求項1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
(C)成分が、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンを含有する少なくとも一種以上のマレイミド化合物である、請求項1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
(C)成分が、ジビニルビフェニルを含有する少なくとも一種以上のビニル化合物である、請求項1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
さらに(E)飽和型熱可塑性エラストマを含有する、請求項1〜12のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
(E)成分が、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体を含む少なくとも一種類以上の飽和型熱可塑性エラストマであることを特徴とする請求項13記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
(E)成分が、スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエン部分の不飽和二重結合基を水素添加して得られる飽和型熱可塑性エラストマを含む少なくとも一種類以上の飽和型熱可塑性エラストマであることを特徴とする請求項13記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
(E)成分が、化学変性された飽和型熱可塑性エラストマを含む少なくとも一種類以上の飽和型熱可塑性エラストマであることを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項17】
(E)成分が、分子中にスチレンブロックを含み、かつスチレンブロックの含有比率が20〜70%である飽和型熱可塑性エラストマを含む少なくとも一種類以上の飽和型熱可塑性エラストマであることを特徴とする請求項13記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項18】
さらに(F)未硬化のセミIPN型複合体を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー又は架橋性ポリマーを含有する、請求項1〜17のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項19】
(F)成分が、化学変性されていないブタジエンポリマー及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種以上のエチレン性不飽和二重結合基含有の架橋性モノマー又は架橋性ポリマーである、請求項18記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項20】
さらに(G)臭素系難燃剤及びリン系難燃剤の少なくとも何れかを含有する、請求項1〜19のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項21】
さらに(H)無機充填剤を含有する、請求項1〜20のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させて得られるプリント配線板用樹脂ワニス。
【請求項23】
請求項22記載のプリント配線板用樹脂ワニスを基材に含浸後、乾燥させて得られるプリプレグ。
【請求項24】
請求項23記載のプリプレグを1枚以上重ね、その片面又は両面に金属箔を配置し、加熱加圧して得られる金属張積層板。

【図1】
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【公開番号】特開2011−225639(P2011−225639A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94009(P2010−94009)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】