特に自動車用の多層音波吸収軽量部材
本発明は、特に自動車用の多層音波吸収軽量部材に関する。本発明の目的は、比較的軽いと同時に吸音効果がこのタイプの従来の部材と比べて大きいか改善されている自動車用の音波吸収部材を作ることである。この目的を実現するため、熱可塑性ファイバーからなる空気透過カバー層(17)と少なくとも1つの空気透過フリース層(10")を備え、音波が透過できる状態でカバー層(17)がフリース層(10")に接合されている多層部材を提供する。本発明の部材は、フリース層(10")が、単位面積当たりの重さが500〜1,500g/m2の範囲のときに厚さが2〜7mmの範囲であり、カバー層(17)に接合されていないか、カバー層(2、16、17)と向かい合っている面積の20%未満の面積にだけ接合されていることをさらに特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ファイバーからなる空気透過カバー層と少なくとも1つの空気透過フリース層を備え、音波が透過できる状態でカバー層がフリース層に接合されている、特に自動車用の多層音波吸収軽量部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車から出る音、中でも乗客スペースでのノイズレベルを小さくするための多数の材料とシステムがすでに開発されている。
【0003】
乗用車における遮音には、いわゆる共鳴吸収装置がしばしば用いられている。これは、励起されて共鳴し、特定の共鳴範囲で最適な効果を発揮する選択的なバネ質量システムである。質量としての重いゴム層またはエラストマーに接合された弾性フリース材料および/またはフォーム材料が、バネとして一般に用いられる。従来のバネ質量システムは、狭い帯域でしか有効でない。しかし重い質量層であるために単位面積当たりの重量が比較的大きいことが特に不利な点である。その結果、自動車の全重量と許容できる最大負荷のほか、燃料消費をできるだけ少なくすることに関して不利になる。
【0004】
ドイツ国特許第199 60 945 A1号には、遮音効果を損なうことなく単位面積当たりの重量を特に小さくしたと称する自動車用床カバーが記載されている。この公知のカバーは、主として、カーペット層と、その下にある遮音部材と、柔らかいポリウレタンフォーム層からなる。なお遮音部材は、二層フリース、すなわちポリエステルフリースとその下にあるポリプロピレンフリースで形成されている。この二層フリースは、単位面積当たりの重量が600〜1,000g/m2である。カーペット層は、ポリアミド製タフテッドベロアカーペットであり、ポリアミドステープルファイバー層と、ベースとなるフリースと、結合剤とで構成されている。二層フリースは、カーペット層の裏当て層の表面全体を覆っているポリエチレン焼結層を通じて焼結させる。裏面フォーミングプロセスの間に形成されるポリウレタンフォーム層のフォームが二層フリースに侵入するのを封じるため、ポリエチレン/ポリアミド密閉フィルムを二層フリースの裏側に層にして取り付ける。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、冒頭に記したタイプの部材で、比較的軽いと同時に遮音効果が大きいか改善されているものを作ることである。
【0006】
本発明によれば、この目的は、請求項1に示した特徴を有する部材によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の音波吸収部材は、熱可塑性ファイバーからなる空気透過カバー層と少なくとも1つの空気透過フリース層を備え、音波が透過できる状態でカバー層がフリース層に接合されている。この部材はさらに、フリース層が、単位面積当たりの重さが500〜1,500g/m2の範囲のときに厚さが2〜7mmの範囲であり、カバー層と接合されていないか、カバー層と向かい合っている面積の20%未満の面積にだけ接合されていることを主な特徴とする。
【0008】
本発明の部材は、重い気密層を有するバネ質量システムを形成する従来の遮音カバーと比べて非常に軽い。本発明によれば、フリース層は、カバー層に付着していないか、一部だけが付着している。本質的に拘束されない状態で積層させるこの操作により、少なくともいくつかの領域で層間に1つ以上の薄い空気層ができる。それに対応する密度差、したがってインピーダンスの比較的大きな不連続性が、層から空気層への移行部に存在するため、優れた遮音特性を有する本発明の軽量部材が提供される。測定によると、本発明の部材は、単位面積当たりの全重量が小さいにもかかわらず、重い層を有する従来の部材と比較して遮音特性が良好で、いくつかの特別な実施態様では遮音特性が向上していさえする。特に、本発明の部材は、測定により、中程度の周波数と高周波数で比較的大きな音波吸収効果と遮音効果を有することがわかった。
【0009】
本発明の部材いおいて音波を吸収して遮音するフリース層は、ポリテレフタル酸エチレンファイバーおよび/またはポリプロピレンファイバーで形成されていることが好ましい。フリース層の空気透過率または流体抵抗は、最適な音波吸収効果と遮音効果が実現するように圧縮することによって決まる。フリース層の厚さは、単位面積当たりの重さが500〜1,300g/m2の範囲のときに厚さが2〜5mmの範囲であることが好ましい。
【0010】
本発明による軽量部材の好ましい一実施態様では、熱可塑性ファイバーからなるさらに別の空気透過フリース層が、上記フリース層のカバー層とは反対側に配置されており、両方のフリース層は、厚さが2〜5mm、単位面積当たりの重さが500〜700g/m2の範囲である。2つのフリース層は、厚さと単位面積当たりの重さを同じにすることができる(例えば単位面積当たりの重さが600g/m2で、厚さが約3mm)。2つのフリース層は、対向している層の境界に薄い空気層または密度差ができるよう、実質的に互いに拘束されない状態で載るか接するかしているため、それに対応して密度が不連続になっている。
【0011】
本発明のさらに別の好ましい一実施態様では、熱可塑性ファイバーからなる少なくとも1つのフリース層の中にスペーサが形成されている。スペーサは、フリース層と隣接層または隣接シートパネルとの間に空気が充填された薄い中空空間を形成している。特にこの実施態様は、フリース層と空気層の間にインピーダンスの不連続が存在するために遮音に特に効果がある。
【0012】
本発明の軽量部材を用いて比較的大きな音波吸収を実現できるのは、熱可塑性ファイバーからなる空気透過カバー層とフリース層の間に連続気泡フォーム層を配置し、そのフォーム層が、単位面積当たりの重さが好ましくはほんの100〜200g/m2の範囲のときに厚さが7〜15mmの範囲であるようにしたときである。特にフォーム層は、ポリウレタンフォームまたはメラミン樹脂フォームからなるようにするとよい。
【0013】
本発明の好ましい一実施態様では、本発明による軽量部材のカバー層を、単位面積当たりの重さが70〜110g/m2の範囲のポリエステルファイバー製フリース、または単位面積当たりの重さが60〜100g/m2の範囲のスパンボンドファブリックで形成することができる。単位面積当たりの重さが70〜110g/m2の範囲のポリエステルファイバー製フリースをスパンボンドファブリックの真裏に配置した実施態様において、特に大きな音波吸収係数が実現された。この場合にスパンボンドファブリックの空気抵抗は、ポリエステルファイバー製フリースの空気抵抗よりも大きいことが好ましい。
【0014】
本発明の軽量部材は、自動車において特にエンジン横にあるダッシュボードのカバーとして使用することができる。その代わりに、あるいはそれに加えて、その軽量部材は、ダッシュボードの乗客スペース側を覆うのに使用することもできる。そのときカバー層はカーペット層で形成することが好ましい。
【0015】
特に好ましい一実施態様では、カーペット層は、音響的に開放されたタフト裏当て材と空気透過性のネット状タフト結合剤を有するタフテッドカーペットによって形成されている。この場合のさらに好ましい実施態様では、タフト結合剤が、無機微小粒体および/または中空無機微小粒体を含んでいる。このようにすると、タフテッドカーペットの単位面積当たりの重さを比較的小さくすると同時に、タフテッドカーペットに優れた形態安定性を持たせることができる。カーペット層の単位面積当たりの重さは、例えば200〜400g/m2の範囲である。
【0016】
本発明による軽量部材のさらに別の好ましくて有利な一実施態様は、従属項に記載されている。
【0017】
いくつかの実施態様を示した添付の図面を参照して以下に本発明を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、遮音材としての重い層をバネ-質量システムの形態で備える自動車の従来の床用カーペット構造と比較するため、本発明による軽量部材が自動車の床用カーペット構造1になった場合の断面図である。本発明の床用カーペット構造1は、タフテッドベロアカーペット構造から形成されている。参照番号3は、パイル糸4またはパイルループ5が挿入されたタフト裏当て材を示している。タフト裏当て材3は、フリース(例えばポリエステル製スパンボンドファブリック)からなる。タフト裏当て材3は、パイル糸なしタフト針によってできる複数の孔7を有するため、その孔7によってパイルギャップ6ができていることがわかる。パイルギャップ6は、ベロアカーペット層2の中に遮音に有効な空気の体積を増やす。ベロアカーペット層2は、その全面にわたってパイル密度が非常に均一になっている。
【0019】
タフト裏当て材3に挿入したパイルループ5を留めるため、まず最初に第1の接着剤8を下側に付着させる。この接着剤は、付着させたときに主としてパイルループ5にだけ付着し、パイル糸なしタフト針によってできる孔7はそのまま残るようにする。この接着剤の表面に別の粉末接着剤9を焼結させる。第1の接着剤8および/または焼結した粉末接着剤9は、無機微小粒体および/または中空無機微小粒体(図示せず)を含んでいることが好ましい。カーペット層2は、単位面積当たりの重さが200〜400g/m2の範囲である(例えば350g/m2)。
【0020】
熱可塑性ファイバーからなる空気透過フリース層10をカーペット層2の隣に配置する。このフリース層の空気抵抗は、PETファイバーおよび/またはPPファイバーによって生じることが好ましく、その程度は、圧縮を通じて決定または最適化する。単位面積当たりの重さが500〜1,300g/m2の範囲である場合には、フリース層10の厚さは2〜7mmの範囲である。特に、単位面積当たりの重さが約600〜約1,000g/m2の範囲では2〜5mmである。
【0021】
フリース層10は、カーペット層2に付着していないか、一部だけが付着している。この部分的付着は、熱融着によって実現され、縁部領域に限定される。しかし場合によっては、ケーブル、ホース、機械式制御部材のための1つ以上の開口部の縁部領域にも部分的に付着している。カーペット層2に物質−物質結合で接合されているフリース層10の面積は、向かい合うカーペット層2の面積の最大で20%であるが、この値は20%よりも有意に少ないことが好ましい。
【0022】
綿ファイバーフリースでできていて自動車の床パネル12の上に載っている層11が、フリース層10の下に配置されている。綿ファイバーフリース層11は、単位面積当たりの重さが約600〜1,100g/m2の範囲、さらに特定するならば約700〜1,000g/m2の範囲である。単位面積当たりの重さが約600〜700g/m2の範囲だと、厚さは約6mmである。単位面積当たりの重さが1,000〜1,100g/m2の範囲だと、綿ファイバーフリース層の厚さは約15〜20mmである。
【0023】
フリース層10は綿ファイバーフリース層11の上に実質的に拘束されない状態で積層させてあるため、薄い空気層または空気室13がフリース層10とフリース層11の間に存在していることがわかる。この2つの層10と11は互いに接合されていないか、一部だけが接合されている。接合部は、層2、10、11によって形成される軽量部材の縁部領域、および/またはその軽量部材の中に形成される開口部の縁部領域(図示せず)に位置する。
【0024】
図2には、本発明による自動車の別の床用カーペット構造が示してある。この構造は、図1の床用カーペット構造にほぼ対応している。図1の床用カーペット構造と異なるのは、主に、綿ファイバーフリース層の代わりにフォーム層11'がフリース層10の下に配置されていることである。この床用カーペット構造では、カーペット層2、フリース層10、フォーム層11'も実質的に互いに拘束されない状態で積層している。薄い空気室13を形成するための凹部または突起部14もフリース層10に形成することができる。フォーム層11'は、連続気泡軟質ポリウレタンフォーム、特にコールドフォームからなることが好ましい。フォーム層11'は、単位面積当たりの重さが900〜1,300g/m2の範囲だと約15〜22mmになる。
【0025】
図3〜図8は、やはり軽量部材として設計した、エンジンの横にあるダッシュボード用カバーの断面図である。参照番号12'は、ダッシュボードシートパネルを表わす。ダッシュボードシートパネル12'の内側は、少なくとも一部が、図1と図2にそれぞれ示した床用カーペット構造1または1'(図3〜図8には示さず)によって覆われている。
【0026】
図3と図4に示したダッシュボード用カバーは、ダッシュボードシートパネル12'の上に実質的に拘束されない状態で積層させた空気透過フリース層10を備えている。このフリース層10は、熱可塑性ファイバー(PETファイバーおよび/またはポリプロピレンファイバーが好ましい)で形成されている。
【0027】
フリース層10の空気抵抗は、ここでもそのファイバーフリースの圧縮度によって決まる。フリース層10は、単位面積当たりの重さが約500〜1,100g/m2の範囲だと厚さが約2〜5mm(例えば約3mm)になる。フリース層10は連続気泡フォーム層15によって覆われている。フォームは、例えばポリウレタンフォームまたはメラミン樹脂フォームである。フォーム層15は、単位面積当たりの重さが約100〜200g/m2の範囲であり、厚さが約7〜15mmの範囲(例えば約9mm)である。
【0028】
ダッシュボード用カバーは、エンジン室の側に、比較的薄い空気透過フリース層16をカバー層として備えている。図3に示した実施態様では、カバー層は、単位面積当たりの重さが約70〜110g/m2の範囲のポリエステルファイバーフリース16でできている。ポリエステルファイバーフリース16の厚さは1mm未満であり、0.8mm未満であることが好ましい。
【0029】
図4の実施態様では、カバー層は薄いスパンボンドファブリック17で構成されており、図3のポリエステルファイバーフリース16がスパンボンドファブリック17の真裏に配置されている。スパンボンドファブリック17は、単位面積当たりの重さが60〜100g/m2の範囲(例えば約80g/m2)であり、空気抵抗がポリエステルファイバーフリース16よりも大きくなっている。
【0030】
図5と図6に示した本発明によるダッシュボード用カバーの断面が図3と図4に示した実施態様と異なるのは、熱可塑性ファイバーからなる別の空気透過フリース層10'が、フリース層10のカバー層とは反対側に配置されている点である。両方のフリース層10、10'は、厚さが2〜5mmの範囲、単位面積当たりの重さが500〜700g/m2の範囲である。
【0031】
図7と図8に示したように、フリース層10"の中にはスペーサ18も(特に型押しによって)形成し、層10"と層15の間と、フリース層10"とダッシュボードシートパネル12'の間に薄い空気室19、19'をそれぞれ作り出すことが好ましい。
【0032】
図3〜図8に示したダッシュボード用カバーの層10、10'、10"、15、16は、そして場合によってはそれに加えて層17は、互いに拘束されない状態で積層しているため、層の間に薄い空気層を形成している。層10、10'、10"、15、16、17は、ダッシュボードシートパネル12'にいくつかの点または場所で接合されているだけである。例えば冷暖房システム、電線、ボーデンケーブル、リンクシステム、レバー、ハンドルのシャフトのためにダッシュボードシートパネル12'に存在する開口部(図示せず)は、音が漏れないよう、本発明による軽量部材の可撓性のある調節可能な層10、10'、10"、15、16、17によって閉じられている。
【0033】
図9は、本発明の軽量部材で使用する空気透過フリース層にカバー層として空気透過スパンボンドファブリックがない場合とある場合の遮音状態を、厚さが0.8mmの鋼鉄シートおよび単位面積当たりの重さが約3.25kg/m2の重い層と比較して周波数の関数として示した測定結果である。測定曲線M1は、鋼鉄シートで得られた遮音状態を示している。一般に周波数が大きいほどより多く遮音されていることがわかる。測定曲線M2は、重い層に関する測定値を示している。重い層の遮音は、共鳴効果のため、約700〜2,500Hzの周波数範囲で裸の鋼鉄シートによる遮音効果よりも悪かった。測定曲線M3は、約3mmの厚さに圧縮して単位面積当たりの重さが約600g/m2になったフリース層での測定値である。この空気透過フリース層を用いて実現される遮音が重い層よりも相対的に優れているのは驚くべきことである。点線で示した測定曲線M4は、対応するフリース層の音源側を単位面積当たりの重さが約80g/m2のスパンボンドファブリックでさらに覆った場合の測定値である。
【0034】
図10は、エンジンの横にあるダッシュボードのカバーとして用いた本発明によるさまざまな軽量部材の音波吸収状態を、単位面積当たりの重さが約3.2kg/m2あってダッシュボードのカバーに適した重い層を有する2層構造と比較して周波数の関数として示したグラフである。
【0035】
曲線K1は、3.2kg/m2の重い気密層からなる層構造と、厚さが約9mmの連続気泡PURフォーム層と、空気透過PESフリースからなる層構造についての測定値である。点線の曲線K2は、対応する層構造が、PESフリースのカバー層として単位面積当たりの重さが約80g/m2のスパンボンドファブリックをさらに有する場合の測定値である。
【0036】
曲線K3は、厚さ約3mmに圧縮して単位面積当たりの重さが約600g/m2になった空気透過フリース層を上記の重い層の代わりに用いた本発明の層構造での吸収測定に対応する。三角形で示した曲線K4は、同様の層構造において、圧縮した空気透過フリース層の単位面積当たりの重さを約1,000g/m2にした場合である。
【0037】
曲線K5とK6は、圧縮した空気透過フリース層と、厚さが約9mmの連続気泡PURフォーム層と、比較的薄い空気透過PESフリースを有する本発明の層構造についての測定値である。曲線K5に対応する層構造は、カバー層として単位面積当たりの重さが約80g/m2の薄いスパンボンドファブリックも含んでいる。圧縮した空気透過フリース層は、厚さが約3mm、単位面積当たりの重さが約600g/m2である。曲線K6は、対応する層構造において、カバー層として単位面積当たりの重さが約80g/m2の薄いスパンボンドファブリックをやはり有するが、この層構造の圧縮されて厚さが約3mmになった空気透過フリース層の単位面積当たりの重さが約1,000g/m2になっている場合である。
【0038】
曲線K7とK8は、曲線K3とK5の層構造とは異なり、同様の別のフリース層が、圧縮した空気透過フリース層のカバー層とは反対側に配置されている層構造に関係している。すなわち互いに拘束されない状態で積層している両方のフリース層は、厚さが約3mmで単位面積当たりの重さが約600g/m2である。曲線K8は、カバー層として単位面積当たりの重さが約80g/m2である薄いスパンボンドファブリックを有する層構造に対応する。
【0039】
曲線K3、K5、K7、K8からわかるように、薄くて非常に軽いスパンボンドファブリックと、互いに拘束されない状態で積層している2つの空気透過フリース層の使用により、音波吸収に有意な改善が見られる。
【0040】
最後に図11は、カバー層としてのカーペット層と、空気透過ベース層とを有する本発明のさまざまなダッシュボードまたは床カバーの音波吸収状態を、同様の床用カーペット構造だが気密なカーペット裏当て材を備えた床用カーペット構造と比較して周波数の関数として示したグラフである。
【0041】
曲線V10は、重い層の裏当て材を有するカーペット上部ファブリックとその下に位置するコールドフォーム層から形成した床用カーペット構造に対応する。なおコールドフォーム層は、単位面積当たりの重さが約1,200g/m2である。測定曲線V9は、同様のコールドフォーム層だけでなく、フォイル裏当て材を有する別のカーペット上部ファブリックも備える床用カーペット構造に基づいている。
【0042】
曲線V1は、重い層の裏当て材を有するカーペット上部ファブリックと、その上に載っていて単位面積当たりの重さが1,000g/m2であるフリース層と、その上に載っていて単位面積当たりの重さが700g/m2である綿ファイバーフリースとから形成した床用カーペット構造の測定結果を示している。曲線V2は、単位面積当たりの重さが1,000g/m2であるフリース層と、単位面積当たりの重さが700g/m2である、綿ファイバーフリース補助層とをやはり備えているが、フィルム裏当て材を有する別のカーペット上部ファブリックを備える点が異なる床用カーペット構造の測定結果を示している。
【0043】
曲線V3とV8は、単位面積当たりの重さが350g/m2ある、図1と図2に示した上部ファブリックとしての音響的に開放されたベロアカーペット層と、厚さ約3mmに圧縮して単位面積当たりの重さが1,000g/m2になった空気透過フリース層とを備える床用カーペット構造に関係している。曲線V3とV4に対応する床用カーペット構造は、底部層として単位面積当たりの重さが約700g/m2である綿ファイバーフリースも含んでいる。しかし曲線V5とV6のもとになっている床用カーペット構造の場合には、単位面積当たりの重さが約1,000g/m2である綿ファイバーフリースを底部層として用い、曲線V7とV8のもとになっている床用カーペット構造の場合には、単位面積当たりの重さが約1,200g/m2であるコールドフォームを底部層として用いる。最後に、測定した床用カーペット構造は、曲線V4、V6、V8のもとになっている床用カーペット構造の場合には、厚さ約40μmのプラスチックフィルムを、カーペット上部ファブリックと厚さが約3mmの空気透過フリース層の間に配置してある点が異なっている。曲線V4、V6、V8を曲線V3、V5、V7と比較すると、プラスチックフィルムを備えた床用カーペット構造は、プラスチックフィルムなしの本発明による床用カーペット構造よりも、高い周波数において音波吸収係数が有意に小さいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】自動車の床用カーペットの形態にした本発明による第1の軽量部材の概略断面図である。
【図2】自動車の床用カーペットの形態にした本発明による第2の軽量部材の概略断面図である。
【図3】エンジン横にあるダッシュボード用カバーの形態にした本発明による第3の軽量部材の概略断面図である。
【図4】エンジン横にあるダッシュボード用カバーの形態にした本発明による第4の軽量部材の概略断面図である。
【図5】エンジン横にあるダッシュボード用カバーの形態にした本発明による第5の軽量部材の概略断面図である。
【図6】エンジン横にあるダッシュボード用カバーの形態にした本発明による第6の軽量部材の概略断面図である。
【図7】エンジン横にあるダッシュボード用カバーの形態にした本発明による第7の軽量部材の概略断面図である。
【図8】エンジン横にあるダッシュボード用カバーの形態にした本発明による第8の軽量部材の概略断面図である。
【図9】本発明の軽量部材で使用する空気透過フリース層にカバー層として空気透過スパンボンドファブリックがない場合とある場合の遮音状態を、鋼鉄シートおよび重い気密エラストマー層と比較して周波数の関数として示したグラフである。
【図10】エンジン横にあるダッシュボードのカバーとして用いた本発明によるさまざまな軽量部材の音波吸収状態を、ダッシュボードのカバーとして適した重い気密エラストマー層を有する2層構造と比較して周波数の関数として示したグラフである。
【図11】乗客スペースの横にあるダッシュボードとして用いた、あるいはカバー層としてカーペット層を有する床用カバーとして用いた本発明によるさまざまな軽量部材の音波吸収状態を、同様の床用カーペット構造だが気密なカーペット裏当て材を有するものと比較して周波数の関数として示したグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ファイバーからなる空気透過カバー層と少なくとも1つの空気透過フリース層を備え、音波が透過できる状態でカバー層がフリース層に接合されている、特に自動車用の多層音波吸収軽量部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車から出る音、中でも乗客スペースでのノイズレベルを小さくするための多数の材料とシステムがすでに開発されている。
【0003】
乗用車における遮音には、いわゆる共鳴吸収装置がしばしば用いられている。これは、励起されて共鳴し、特定の共鳴範囲で最適な効果を発揮する選択的なバネ質量システムである。質量としての重いゴム層またはエラストマーに接合された弾性フリース材料および/またはフォーム材料が、バネとして一般に用いられる。従来のバネ質量システムは、狭い帯域でしか有効でない。しかし重い質量層であるために単位面積当たりの重量が比較的大きいことが特に不利な点である。その結果、自動車の全重量と許容できる最大負荷のほか、燃料消費をできるだけ少なくすることに関して不利になる。
【0004】
ドイツ国特許第199 60 945 A1号には、遮音効果を損なうことなく単位面積当たりの重量を特に小さくしたと称する自動車用床カバーが記載されている。この公知のカバーは、主として、カーペット層と、その下にある遮音部材と、柔らかいポリウレタンフォーム層からなる。なお遮音部材は、二層フリース、すなわちポリエステルフリースとその下にあるポリプロピレンフリースで形成されている。この二層フリースは、単位面積当たりの重量が600〜1,000g/m2である。カーペット層は、ポリアミド製タフテッドベロアカーペットであり、ポリアミドステープルファイバー層と、ベースとなるフリースと、結合剤とで構成されている。二層フリースは、カーペット層の裏当て層の表面全体を覆っているポリエチレン焼結層を通じて焼結させる。裏面フォーミングプロセスの間に形成されるポリウレタンフォーム層のフォームが二層フリースに侵入するのを封じるため、ポリエチレン/ポリアミド密閉フィルムを二層フリースの裏側に層にして取り付ける。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、冒頭に記したタイプの部材で、比較的軽いと同時に遮音効果が大きいか改善されているものを作ることである。
【0006】
本発明によれば、この目的は、請求項1に示した特徴を有する部材によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の音波吸収部材は、熱可塑性ファイバーからなる空気透過カバー層と少なくとも1つの空気透過フリース層を備え、音波が透過できる状態でカバー層がフリース層に接合されている。この部材はさらに、フリース層が、単位面積当たりの重さが500〜1,500g/m2の範囲のときに厚さが2〜7mmの範囲であり、カバー層と接合されていないか、カバー層と向かい合っている面積の20%未満の面積にだけ接合されていることを主な特徴とする。
【0008】
本発明の部材は、重い気密層を有するバネ質量システムを形成する従来の遮音カバーと比べて非常に軽い。本発明によれば、フリース層は、カバー層に付着していないか、一部だけが付着している。本質的に拘束されない状態で積層させるこの操作により、少なくともいくつかの領域で層間に1つ以上の薄い空気層ができる。それに対応する密度差、したがってインピーダンスの比較的大きな不連続性が、層から空気層への移行部に存在するため、優れた遮音特性を有する本発明の軽量部材が提供される。測定によると、本発明の部材は、単位面積当たりの全重量が小さいにもかかわらず、重い層を有する従来の部材と比較して遮音特性が良好で、いくつかの特別な実施態様では遮音特性が向上していさえする。特に、本発明の部材は、測定により、中程度の周波数と高周波数で比較的大きな音波吸収効果と遮音効果を有することがわかった。
【0009】
本発明の部材いおいて音波を吸収して遮音するフリース層は、ポリテレフタル酸エチレンファイバーおよび/またはポリプロピレンファイバーで形成されていることが好ましい。フリース層の空気透過率または流体抵抗は、最適な音波吸収効果と遮音効果が実現するように圧縮することによって決まる。フリース層の厚さは、単位面積当たりの重さが500〜1,300g/m2の範囲のときに厚さが2〜5mmの範囲であることが好ましい。
【0010】
本発明による軽量部材の好ましい一実施態様では、熱可塑性ファイバーからなるさらに別の空気透過フリース層が、上記フリース層のカバー層とは反対側に配置されており、両方のフリース層は、厚さが2〜5mm、単位面積当たりの重さが500〜700g/m2の範囲である。2つのフリース層は、厚さと単位面積当たりの重さを同じにすることができる(例えば単位面積当たりの重さが600g/m2で、厚さが約3mm)。2つのフリース層は、対向している層の境界に薄い空気層または密度差ができるよう、実質的に互いに拘束されない状態で載るか接するかしているため、それに対応して密度が不連続になっている。
【0011】
本発明のさらに別の好ましい一実施態様では、熱可塑性ファイバーからなる少なくとも1つのフリース層の中にスペーサが形成されている。スペーサは、フリース層と隣接層または隣接シートパネルとの間に空気が充填された薄い中空空間を形成している。特にこの実施態様は、フリース層と空気層の間にインピーダンスの不連続が存在するために遮音に特に効果がある。
【0012】
本発明の軽量部材を用いて比較的大きな音波吸収を実現できるのは、熱可塑性ファイバーからなる空気透過カバー層とフリース層の間に連続気泡フォーム層を配置し、そのフォーム層が、単位面積当たりの重さが好ましくはほんの100〜200g/m2の範囲のときに厚さが7〜15mmの範囲であるようにしたときである。特にフォーム層は、ポリウレタンフォームまたはメラミン樹脂フォームからなるようにするとよい。
【0013】
本発明の好ましい一実施態様では、本発明による軽量部材のカバー層を、単位面積当たりの重さが70〜110g/m2の範囲のポリエステルファイバー製フリース、または単位面積当たりの重さが60〜100g/m2の範囲のスパンボンドファブリックで形成することができる。単位面積当たりの重さが70〜110g/m2の範囲のポリエステルファイバー製フリースをスパンボンドファブリックの真裏に配置した実施態様において、特に大きな音波吸収係数が実現された。この場合にスパンボンドファブリックの空気抵抗は、ポリエステルファイバー製フリースの空気抵抗よりも大きいことが好ましい。
【0014】
本発明の軽量部材は、自動車において特にエンジン横にあるダッシュボードのカバーとして使用することができる。その代わりに、あるいはそれに加えて、その軽量部材は、ダッシュボードの乗客スペース側を覆うのに使用することもできる。そのときカバー層はカーペット層で形成することが好ましい。
【0015】
特に好ましい一実施態様では、カーペット層は、音響的に開放されたタフト裏当て材と空気透過性のネット状タフト結合剤を有するタフテッドカーペットによって形成されている。この場合のさらに好ましい実施態様では、タフト結合剤が、無機微小粒体および/または中空無機微小粒体を含んでいる。このようにすると、タフテッドカーペットの単位面積当たりの重さを比較的小さくすると同時に、タフテッドカーペットに優れた形態安定性を持たせることができる。カーペット層の単位面積当たりの重さは、例えば200〜400g/m2の範囲である。
【0016】
本発明による軽量部材のさらに別の好ましくて有利な一実施態様は、従属項に記載されている。
【0017】
いくつかの実施態様を示した添付の図面を参照して以下に本発明を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、遮音材としての重い層をバネ-質量システムの形態で備える自動車の従来の床用カーペット構造と比較するため、本発明による軽量部材が自動車の床用カーペット構造1になった場合の断面図である。本発明の床用カーペット構造1は、タフテッドベロアカーペット構造から形成されている。参照番号3は、パイル糸4またはパイルループ5が挿入されたタフト裏当て材を示している。タフト裏当て材3は、フリース(例えばポリエステル製スパンボンドファブリック)からなる。タフト裏当て材3は、パイル糸なしタフト針によってできる複数の孔7を有するため、その孔7によってパイルギャップ6ができていることがわかる。パイルギャップ6は、ベロアカーペット層2の中に遮音に有効な空気の体積を増やす。ベロアカーペット層2は、その全面にわたってパイル密度が非常に均一になっている。
【0019】
タフト裏当て材3に挿入したパイルループ5を留めるため、まず最初に第1の接着剤8を下側に付着させる。この接着剤は、付着させたときに主としてパイルループ5にだけ付着し、パイル糸なしタフト針によってできる孔7はそのまま残るようにする。この接着剤の表面に別の粉末接着剤9を焼結させる。第1の接着剤8および/または焼結した粉末接着剤9は、無機微小粒体および/または中空無機微小粒体(図示せず)を含んでいることが好ましい。カーペット層2は、単位面積当たりの重さが200〜400g/m2の範囲である(例えば350g/m2)。
【0020】
熱可塑性ファイバーからなる空気透過フリース層10をカーペット層2の隣に配置する。このフリース層の空気抵抗は、PETファイバーおよび/またはPPファイバーによって生じることが好ましく、その程度は、圧縮を通じて決定または最適化する。単位面積当たりの重さが500〜1,300g/m2の範囲である場合には、フリース層10の厚さは2〜7mmの範囲である。特に、単位面積当たりの重さが約600〜約1,000g/m2の範囲では2〜5mmである。
【0021】
フリース層10は、カーペット層2に付着していないか、一部だけが付着している。この部分的付着は、熱融着によって実現され、縁部領域に限定される。しかし場合によっては、ケーブル、ホース、機械式制御部材のための1つ以上の開口部の縁部領域にも部分的に付着している。カーペット層2に物質−物質結合で接合されているフリース層10の面積は、向かい合うカーペット層2の面積の最大で20%であるが、この値は20%よりも有意に少ないことが好ましい。
【0022】
綿ファイバーフリースでできていて自動車の床パネル12の上に載っている層11が、フリース層10の下に配置されている。綿ファイバーフリース層11は、単位面積当たりの重さが約600〜1,100g/m2の範囲、さらに特定するならば約700〜1,000g/m2の範囲である。単位面積当たりの重さが約600〜700g/m2の範囲だと、厚さは約6mmである。単位面積当たりの重さが1,000〜1,100g/m2の範囲だと、綿ファイバーフリース層の厚さは約15〜20mmである。
【0023】
フリース層10は綿ファイバーフリース層11の上に実質的に拘束されない状態で積層させてあるため、薄い空気層または空気室13がフリース層10とフリース層11の間に存在していることがわかる。この2つの層10と11は互いに接合されていないか、一部だけが接合されている。接合部は、層2、10、11によって形成される軽量部材の縁部領域、および/またはその軽量部材の中に形成される開口部の縁部領域(図示せず)に位置する。
【0024】
図2には、本発明による自動車の別の床用カーペット構造が示してある。この構造は、図1の床用カーペット構造にほぼ対応している。図1の床用カーペット構造と異なるのは、主に、綿ファイバーフリース層の代わりにフォーム層11'がフリース層10の下に配置されていることである。この床用カーペット構造では、カーペット層2、フリース層10、フォーム層11'も実質的に互いに拘束されない状態で積層している。薄い空気室13を形成するための凹部または突起部14もフリース層10に形成することができる。フォーム層11'は、連続気泡軟質ポリウレタンフォーム、特にコールドフォームからなることが好ましい。フォーム層11'は、単位面積当たりの重さが900〜1,300g/m2の範囲だと約15〜22mmになる。
【0025】
図3〜図8は、やはり軽量部材として設計した、エンジンの横にあるダッシュボード用カバーの断面図である。参照番号12'は、ダッシュボードシートパネルを表わす。ダッシュボードシートパネル12'の内側は、少なくとも一部が、図1と図2にそれぞれ示した床用カーペット構造1または1'(図3〜図8には示さず)によって覆われている。
【0026】
図3と図4に示したダッシュボード用カバーは、ダッシュボードシートパネル12'の上に実質的に拘束されない状態で積層させた空気透過フリース層10を備えている。このフリース層10は、熱可塑性ファイバー(PETファイバーおよび/またはポリプロピレンファイバーが好ましい)で形成されている。
【0027】
フリース層10の空気抵抗は、ここでもそのファイバーフリースの圧縮度によって決まる。フリース層10は、単位面積当たりの重さが約500〜1,100g/m2の範囲だと厚さが約2〜5mm(例えば約3mm)になる。フリース層10は連続気泡フォーム層15によって覆われている。フォームは、例えばポリウレタンフォームまたはメラミン樹脂フォームである。フォーム層15は、単位面積当たりの重さが約100〜200g/m2の範囲であり、厚さが約7〜15mmの範囲(例えば約9mm)である。
【0028】
ダッシュボード用カバーは、エンジン室の側に、比較的薄い空気透過フリース層16をカバー層として備えている。図3に示した実施態様では、カバー層は、単位面積当たりの重さが約70〜110g/m2の範囲のポリエステルファイバーフリース16でできている。ポリエステルファイバーフリース16の厚さは1mm未満であり、0.8mm未満であることが好ましい。
【0029】
図4の実施態様では、カバー層は薄いスパンボンドファブリック17で構成されており、図3のポリエステルファイバーフリース16がスパンボンドファブリック17の真裏に配置されている。スパンボンドファブリック17は、単位面積当たりの重さが60〜100g/m2の範囲(例えば約80g/m2)であり、空気抵抗がポリエステルファイバーフリース16よりも大きくなっている。
【0030】
図5と図6に示した本発明によるダッシュボード用カバーの断面が図3と図4に示した実施態様と異なるのは、熱可塑性ファイバーからなる別の空気透過フリース層10'が、フリース層10のカバー層とは反対側に配置されている点である。両方のフリース層10、10'は、厚さが2〜5mmの範囲、単位面積当たりの重さが500〜700g/m2の範囲である。
【0031】
図7と図8に示したように、フリース層10"の中にはスペーサ18も(特に型押しによって)形成し、層10"と層15の間と、フリース層10"とダッシュボードシートパネル12'の間に薄い空気室19、19'をそれぞれ作り出すことが好ましい。
【0032】
図3〜図8に示したダッシュボード用カバーの層10、10'、10"、15、16は、そして場合によってはそれに加えて層17は、互いに拘束されない状態で積層しているため、層の間に薄い空気層を形成している。層10、10'、10"、15、16、17は、ダッシュボードシートパネル12'にいくつかの点または場所で接合されているだけである。例えば冷暖房システム、電線、ボーデンケーブル、リンクシステム、レバー、ハンドルのシャフトのためにダッシュボードシートパネル12'に存在する開口部(図示せず)は、音が漏れないよう、本発明による軽量部材の可撓性のある調節可能な層10、10'、10"、15、16、17によって閉じられている。
【0033】
図9は、本発明の軽量部材で使用する空気透過フリース層にカバー層として空気透過スパンボンドファブリックがない場合とある場合の遮音状態を、厚さが0.8mmの鋼鉄シートおよび単位面積当たりの重さが約3.25kg/m2の重い層と比較して周波数の関数として示した測定結果である。測定曲線M1は、鋼鉄シートで得られた遮音状態を示している。一般に周波数が大きいほどより多く遮音されていることがわかる。測定曲線M2は、重い層に関する測定値を示している。重い層の遮音は、共鳴効果のため、約700〜2,500Hzの周波数範囲で裸の鋼鉄シートによる遮音効果よりも悪かった。測定曲線M3は、約3mmの厚さに圧縮して単位面積当たりの重さが約600g/m2になったフリース層での測定値である。この空気透過フリース層を用いて実現される遮音が重い層よりも相対的に優れているのは驚くべきことである。点線で示した測定曲線M4は、対応するフリース層の音源側を単位面積当たりの重さが約80g/m2のスパンボンドファブリックでさらに覆った場合の測定値である。
【0034】
図10は、エンジンの横にあるダッシュボードのカバーとして用いた本発明によるさまざまな軽量部材の音波吸収状態を、単位面積当たりの重さが約3.2kg/m2あってダッシュボードのカバーに適した重い層を有する2層構造と比較して周波数の関数として示したグラフである。
【0035】
曲線K1は、3.2kg/m2の重い気密層からなる層構造と、厚さが約9mmの連続気泡PURフォーム層と、空気透過PESフリースからなる層構造についての測定値である。点線の曲線K2は、対応する層構造が、PESフリースのカバー層として単位面積当たりの重さが約80g/m2のスパンボンドファブリックをさらに有する場合の測定値である。
【0036】
曲線K3は、厚さ約3mmに圧縮して単位面積当たりの重さが約600g/m2になった空気透過フリース層を上記の重い層の代わりに用いた本発明の層構造での吸収測定に対応する。三角形で示した曲線K4は、同様の層構造において、圧縮した空気透過フリース層の単位面積当たりの重さを約1,000g/m2にした場合である。
【0037】
曲線K5とK6は、圧縮した空気透過フリース層と、厚さが約9mmの連続気泡PURフォーム層と、比較的薄い空気透過PESフリースを有する本発明の層構造についての測定値である。曲線K5に対応する層構造は、カバー層として単位面積当たりの重さが約80g/m2の薄いスパンボンドファブリックも含んでいる。圧縮した空気透過フリース層は、厚さが約3mm、単位面積当たりの重さが約600g/m2である。曲線K6は、対応する層構造において、カバー層として単位面積当たりの重さが約80g/m2の薄いスパンボンドファブリックをやはり有するが、この層構造の圧縮されて厚さが約3mmになった空気透過フリース層の単位面積当たりの重さが約1,000g/m2になっている場合である。
【0038】
曲線K7とK8は、曲線K3とK5の層構造とは異なり、同様の別のフリース層が、圧縮した空気透過フリース層のカバー層とは反対側に配置されている層構造に関係している。すなわち互いに拘束されない状態で積層している両方のフリース層は、厚さが約3mmで単位面積当たりの重さが約600g/m2である。曲線K8は、カバー層として単位面積当たりの重さが約80g/m2である薄いスパンボンドファブリックを有する層構造に対応する。
【0039】
曲線K3、K5、K7、K8からわかるように、薄くて非常に軽いスパンボンドファブリックと、互いに拘束されない状態で積層している2つの空気透過フリース層の使用により、音波吸収に有意な改善が見られる。
【0040】
最後に図11は、カバー層としてのカーペット層と、空気透過ベース層とを有する本発明のさまざまなダッシュボードまたは床カバーの音波吸収状態を、同様の床用カーペット構造だが気密なカーペット裏当て材を備えた床用カーペット構造と比較して周波数の関数として示したグラフである。
【0041】
曲線V10は、重い層の裏当て材を有するカーペット上部ファブリックとその下に位置するコールドフォーム層から形成した床用カーペット構造に対応する。なおコールドフォーム層は、単位面積当たりの重さが約1,200g/m2である。測定曲線V9は、同様のコールドフォーム層だけでなく、フォイル裏当て材を有する別のカーペット上部ファブリックも備える床用カーペット構造に基づいている。
【0042】
曲線V1は、重い層の裏当て材を有するカーペット上部ファブリックと、その上に載っていて単位面積当たりの重さが1,000g/m2であるフリース層と、その上に載っていて単位面積当たりの重さが700g/m2である綿ファイバーフリースとから形成した床用カーペット構造の測定結果を示している。曲線V2は、単位面積当たりの重さが1,000g/m2であるフリース層と、単位面積当たりの重さが700g/m2である、綿ファイバーフリース補助層とをやはり備えているが、フィルム裏当て材を有する別のカーペット上部ファブリックを備える点が異なる床用カーペット構造の測定結果を示している。
【0043】
曲線V3とV8は、単位面積当たりの重さが350g/m2ある、図1と図2に示した上部ファブリックとしての音響的に開放されたベロアカーペット層と、厚さ約3mmに圧縮して単位面積当たりの重さが1,000g/m2になった空気透過フリース層とを備える床用カーペット構造に関係している。曲線V3とV4に対応する床用カーペット構造は、底部層として単位面積当たりの重さが約700g/m2である綿ファイバーフリースも含んでいる。しかし曲線V5とV6のもとになっている床用カーペット構造の場合には、単位面積当たりの重さが約1,000g/m2である綿ファイバーフリースを底部層として用い、曲線V7とV8のもとになっている床用カーペット構造の場合には、単位面積当たりの重さが約1,200g/m2であるコールドフォームを底部層として用いる。最後に、測定した床用カーペット構造は、曲線V4、V6、V8のもとになっている床用カーペット構造の場合には、厚さ約40μmのプラスチックフィルムを、カーペット上部ファブリックと厚さが約3mmの空気透過フリース層の間に配置してある点が異なっている。曲線V4、V6、V8を曲線V3、V5、V7と比較すると、プラスチックフィルムを備えた床用カーペット構造は、プラスチックフィルムなしの本発明による床用カーペット構造よりも、高い周波数において音波吸収係数が有意に小さいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】自動車の床用カーペットの形態にした本発明による第1の軽量部材の概略断面図である。
【図2】自動車の床用カーペットの形態にした本発明による第2の軽量部材の概略断面図である。
【図3】エンジン横にあるダッシュボード用カバーの形態にした本発明による第3の軽量部材の概略断面図である。
【図4】エンジン横にあるダッシュボード用カバーの形態にした本発明による第4の軽量部材の概略断面図である。
【図5】エンジン横にあるダッシュボード用カバーの形態にした本発明による第5の軽量部材の概略断面図である。
【図6】エンジン横にあるダッシュボード用カバーの形態にした本発明による第6の軽量部材の概略断面図である。
【図7】エンジン横にあるダッシュボード用カバーの形態にした本発明による第7の軽量部材の概略断面図である。
【図8】エンジン横にあるダッシュボード用カバーの形態にした本発明による第8の軽量部材の概略断面図である。
【図9】本発明の軽量部材で使用する空気透過フリース層にカバー層として空気透過スパンボンドファブリックがない場合とある場合の遮音状態を、鋼鉄シートおよび重い気密エラストマー層と比較して周波数の関数として示したグラフである。
【図10】エンジン横にあるダッシュボードのカバーとして用いた本発明によるさまざまな軽量部材の音波吸収状態を、ダッシュボードのカバーとして適した重い気密エラストマー層を有する2層構造と比較して周波数の関数として示したグラフである。
【図11】乗客スペースの横にあるダッシュボードとして用いた、あるいはカバー層としてカーペット層を有する床用カバーとして用いた本発明によるさまざまな軽量部材の音波吸収状態を、同様の床用カーペット構造だが気密なカーペット裏当て材を有するものと比較して周波数の関数として示したグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ファイバーからなる空気透過カバー層(2、16、17)と少なくとも1つの空気透過フリース層(10、10'、10")を備え、カバー層(2、16、17)が音波が透過できる状態でフリース層(10、10'、10")に接合されている、特に自動車用の多層音波吸収部材において、
フリース層(10、10'、10")が、単位面積当たりの重さが500〜1,500g/m2の範囲のときに厚さが2〜7mmの範囲であり、カバー層(2、16、17)に接合されていないか、カバー層(2、16、17)と向かい合っている面積の20%未満の面積にだけ接合されていることを特徴とする部材。
【請求項2】
フリース層(10、10'、10")が、単位面積当たりの重さが500〜1,300g/m2の範囲のときに厚さが2〜5mmの範囲である、請求項1に記載の部材。
【請求項3】
フリース層(10、10'、10")が、ポリテレフタル酸エチレンファイバーおよび/またはポリプロピレンファイバーで形成されている、請求項1または2に記載の部材。
【請求項4】
カバー層(2、16、17)とフリース層(10、10'、10")が、フリース層の縁部領域および/またはカバー層(2、16、17)とフリース層(10、10'、10")に形成された開口部の縁部領域でだけ互いに接合されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の部材。
【請求項5】
熱可塑性ファイバーからなるさらに別の空気透過フリース層(10')が、上記フリース層(10)のカバー層(16、17)とは反対側に配置されており、それぞれのフリース層(10、10')は、厚さが2〜5mm、単位面積当たりの重さが500〜700g/m2の範囲である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の部材。
【請求項6】
連続気泡フォーム層(15)が、熱可塑性ファイバーからなる空気透過カバー層(16、17)とフリース層(10、10')の間に配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の部材。
【請求項7】
連続気泡フォーム層(15)が、単位面積当たりの重さが100〜200g/m2の範囲のときに厚さが7〜15mmの範囲である、請求項6に記載の部材。
【請求項8】
連続気泡フォーム層(15)が、ポリウレタンフォームまたはメラミン樹脂フォームでできている、請求項6または7に記載の部材。
【請求項9】
カバー層が、単位面積当たりの重さが70〜110g/m2の範囲のポリエステルファイバー製フリース(16)、または単位面積当たりの重さが60〜100g/m2の範囲のスパンボンドファブリック(17)で形成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の部材。
【請求項10】
単位面積当たりの重さが70〜110g/m2の範囲のポリエステルファイバー製フリース(16)がスパンボンドファブリック(17)の真裏に配置されている、請求項9に記載の部材。
【請求項11】
カバー層がカーペット層(2)で形成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の部材。
【請求項12】
カーペット層(2)が、音響的に開放されたタフト裏当て材(3)と空気透過性ネット状タフト結合剤を有するタフテッドカーペットによって形成されている、請求項11に記載の部材。
【請求項13】
タフト結合剤が、無機微小粒体および/または中空無機微小粒体を含む、請求項12に記載の部材。
【請求項14】
カーペット層(2)の単位面積当たりの重さが200〜400g/m2の範囲である、請求項11〜13のいずれか1項に記載の部材。
【請求項15】
連続気泡フォーム層(11')または綿ファイバーフリースで形成された層(11)が、上記フリース層(10)のカバー層(2)とは反対側に配置されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の部材。
【請求項16】
綿ファイバーフリース層(11)が、単位面積当たりの重さが600〜1,100g/m2の範囲のときに厚さが5〜20mmの範囲である、請求項15に記載の部材。
【請求項17】
連続気泡フォーム層(11')が、単位面積当たりの重さが900〜1,300g/m2の範囲のときに厚さが15〜22mmの範囲である、請求項15に記載の部材。
【請求項18】
突起部(14)またはスペーサ(18)が、熱可塑性ファイバーからなるフリース層(10、10")に形成されている、請求項1〜17のいずれか1項に記載の部材。
【請求項1】
熱可塑性ファイバーからなる空気透過カバー層(2、16、17)と少なくとも1つの空気透過フリース層(10、10'、10")を備え、カバー層(2、16、17)が音波が透過できる状態でフリース層(10、10'、10")に接合されている、特に自動車用の多層音波吸収部材において、
フリース層(10、10'、10")が、単位面積当たりの重さが500〜1,500g/m2の範囲のときに厚さが2〜7mmの範囲であり、カバー層(2、16、17)に接合されていないか、カバー層(2、16、17)と向かい合っている面積の20%未満の面積にだけ接合されていることを特徴とする部材。
【請求項2】
フリース層(10、10'、10")が、単位面積当たりの重さが500〜1,300g/m2の範囲のときに厚さが2〜5mmの範囲である、請求項1に記載の部材。
【請求項3】
フリース層(10、10'、10")が、ポリテレフタル酸エチレンファイバーおよび/またはポリプロピレンファイバーで形成されている、請求項1または2に記載の部材。
【請求項4】
カバー層(2、16、17)とフリース層(10、10'、10")が、フリース層の縁部領域および/またはカバー層(2、16、17)とフリース層(10、10'、10")に形成された開口部の縁部領域でだけ互いに接合されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の部材。
【請求項5】
熱可塑性ファイバーからなるさらに別の空気透過フリース層(10')が、上記フリース層(10)のカバー層(16、17)とは反対側に配置されており、それぞれのフリース層(10、10')は、厚さが2〜5mm、単位面積当たりの重さが500〜700g/m2の範囲である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の部材。
【請求項6】
連続気泡フォーム層(15)が、熱可塑性ファイバーからなる空気透過カバー層(16、17)とフリース層(10、10')の間に配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の部材。
【請求項7】
連続気泡フォーム層(15)が、単位面積当たりの重さが100〜200g/m2の範囲のときに厚さが7〜15mmの範囲である、請求項6に記載の部材。
【請求項8】
連続気泡フォーム層(15)が、ポリウレタンフォームまたはメラミン樹脂フォームでできている、請求項6または7に記載の部材。
【請求項9】
カバー層が、単位面積当たりの重さが70〜110g/m2の範囲のポリエステルファイバー製フリース(16)、または単位面積当たりの重さが60〜100g/m2の範囲のスパンボンドファブリック(17)で形成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の部材。
【請求項10】
単位面積当たりの重さが70〜110g/m2の範囲のポリエステルファイバー製フリース(16)がスパンボンドファブリック(17)の真裏に配置されている、請求項9に記載の部材。
【請求項11】
カバー層がカーペット層(2)で形成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の部材。
【請求項12】
カーペット層(2)が、音響的に開放されたタフト裏当て材(3)と空気透過性ネット状タフト結合剤を有するタフテッドカーペットによって形成されている、請求項11に記載の部材。
【請求項13】
タフト結合剤が、無機微小粒体および/または中空無機微小粒体を含む、請求項12に記載の部材。
【請求項14】
カーペット層(2)の単位面積当たりの重さが200〜400g/m2の範囲である、請求項11〜13のいずれか1項に記載の部材。
【請求項15】
連続気泡フォーム層(11')または綿ファイバーフリースで形成された層(11)が、上記フリース層(10)のカバー層(2)とは反対側に配置されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の部材。
【請求項16】
綿ファイバーフリース層(11)が、単位面積当たりの重さが600〜1,100g/m2の範囲のときに厚さが5〜20mmの範囲である、請求項15に記載の部材。
【請求項17】
連続気泡フォーム層(11')が、単位面積当たりの重さが900〜1,300g/m2の範囲のときに厚さが15〜22mmの範囲である、請求項15に記載の部材。
【請求項18】
突起部(14)またはスペーサ(18)が、熱可塑性ファイバーからなるフリース層(10、10")に形成されている、請求項1〜17のいずれか1項に記載の部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−515339(P2007−515339A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545932(P2006−545932)
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010662
【国際公開番号】WO2005/065933
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(504210628)カーコースティクス テック センター ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (20)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010662
【国際公開番号】WO2005/065933
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(504210628)カーコースティクス テック センター ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (20)
【Fターム(参考)】
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