説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】長時間に亘って動作が継続される場合であっても、現像ゴーストや補給かぶりの発生を防止することができる現像装置、及び当該現像装置を備えることで高い質の画像を形成することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像装置は、トナー及びキャリアを含有する二成分現像剤を担持する磁気ローラー32と、静電潜像が形成される感光ドラム21に対向配置されて磁気ローラー32から供給されるトナーで静電潜像を現像する現像ローラー33と、磁気ローラー32と現像ローラー33との間に、直流電圧に交流電圧が重畳されたバイアス電圧を印加するバイアス印加部51,52と、トナー及びキャリアの少なくとも一方の劣化状況に応じてバイアス印加部51,52を制御し、バイアス電圧に重畳されている交流電圧の振幅を変化させる制御部40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、複写機、プリンター、ファクシミリ、或いはこれら各機器の機能を複合化した複合機等の画像形成装置は、紙等の記録媒体上にトナーを定着させることによって画像を形成する。具体的に、画像形成装置は、感光体(像担持体)、現像装置、及び定着装置を備えており、感光体上に形成された静電潜像を現像装置でトナー像に現像し、このトナー像を記録媒体上に転写して定着装置で定着させることによって記録媒体上に画像を形成する。
【0003】
ここで、上記の現像装置は、トナーだけを用いる一成分現像装置と、トナーに加えてキャリアを用いる二成分現像装置とに大別されるが、近年、双方の装置の利点を活かして長寿命化と高画質化とを両立させたタッチダウン現像装置が提案されている。このタッチダウン現像装置は、磁気ローラー(現像剤担持体)と現像ローラー(トナー担持体)とを備えており、トナー及びキャリアを含有する二成分現像剤を磁気ローラーの表面に担持させ、磁気ローラーから現像ローラーにトナーのみを移送させて現像ローラー上にトナー層を形成する。そして、現像ローラー上のトナー層を接触又は非接触により感光体に移送させることによって感光体上に形成された静電潜像を現像する。
【0004】
以下の特許文献1には、従来のタッチダウン現像装置の一例が開示されている。この特許文献1に開示されたタッチダウン現像装置は、磁気ローラーに設けられている磁極(磁気ローラー磁極)とは極性が異なる磁極(現像ローラー磁極)が内蔵された現像ローラーを備えており、これらの磁極の間に形成される磁界によって、磁気ローラーの表面に現像剤で形成される磁気ブラシの拘束力を高めることにより、現像履歴現象(前回現像した像が現像ゴーストとして現れる現象)の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−274924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したタッチダウン現像装置は、磁気ローラーから現像ローラーにトナーを移送し、且つ、現像ローラーから感光体にトナーを移送するために、磁気ローラー及び現像ローラーの双方にバイアス電圧が印加されている。ここで、現像ローラー上のトナー層を安定化するためには、現像ローラー上のトナー層と磁気ローラーの表面に形成される磁気ブラシとの間でトナーの入れ替わりが行われることが重要になる。このため、上記のバイアス電圧は、トナーの移送とトナーの入れ替わりとの双方を実現するために、直流電圧に交流電圧が重畳されたものとなっている。
【0007】
しかしながら、上記のタッチダウン現像装置において、現像ローラーと磁気ローラーとの間におけるトナーの往復運動が長期に亘って行われるとトナーの劣化が早まってしまう。トナーの劣化が生ずると、新たなトナーが供給されたときに劣化したトナーが逆帯電を起こしてしまい、例えば本来白抜けとなるべき非画像部にトナーが付着して濃度が高くなる現象(所謂、補給かぶり)が生ずるという問題がある。
【0008】
特に、上記の特許文献1に開示されたタッチダウン現像装置は、磁気ブラシの拘束力が高められているため、トナーの往復運動が繰り返されて補給かぶりが発生し易くなると考えられる。また、磁気ブラシの拘束力が高められていると、トナーに加えてキャリアも劣化し易くなる。すると、キャリアの抵抗が低下してトナーの往復運動が激しくなり、トナーの劣化が促進されるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、長時間に亘って動作が継続される場合であっても、現像ゴーストや補給かぶりの発生を防止することができる現像装置、及び当該現像装置を備えることで高い質の画像を形成することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の現像装置は、トナー及びキャリアを含有する二成分現像剤を担持する磁気ローラーと、静電潜像が形成される像担持体に対向配置されて前記磁気ローラーから供給されるトナーで前記静電潜像を現像する現像ローラーとを備える現像装置において、前記磁気ローラーと前記現像ローラーとの間に、直流電圧に交流電圧が重畳されたバイアス電圧を印加するバイアス印加部と、前記トナー及び前記キャリアの少なくとも一方の劣化状況に応じて前記バイアス印加部を制御し、前記バイアス電圧に重畳されている交流電圧の振幅を変化させる制御部とを備えることを特徴としている。
また、本発明の現像装置は、前記バイアス印加部が、前記磁気ローラー及び前記現像ローラーに対してそれぞれ個別に前記バイアス電圧を印加しており、前記制御部が、前記バイアス印加部を制御して、前記磁気ローラーに印加される前記バイアス電圧に重畳されている交流電圧の振幅を変化させることを特徴としている。
本発明の画像形成装置は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、前記記録媒体に形成すべき画像の静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体に形成された前記静電潜像をトナー像に現像する上記の現像装置と、前記現像装置で現像されて前記記録媒体上に転写された前記トナー像を定着させる定着装置とを備えることを特徴としている。
また、本発明の画像形成装置は、前記制御部が、画像の形成を行った記録媒体の数と、前記トナー及び前記キャリアの少なくとも一方の劣化状況との関係を示すテーブルを備えており、該テーブルを用いて、画像の形成が行われた記録媒体の数から前記トナー及び前記キャリアの少なくとも一方の劣化状況を把握することを特徴としている。
また、本発明の画像形成装置は、前記制御部が、前記記録媒体に形成すべき画像の印字率に応じて、前記交流電圧の振幅の変化量を変えることを特徴としている。
また、本発明の画像形成装置は、前記現像装置によって現像されるトナーの量を検出する検出器を備えており、前記制御部が、前記検出器の検出結果に応じて前記交流電圧の振幅を変化させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トナーやキャリアの劣化状況に応じて磁気ローラーや現像ローラーに印加されるバイアス電圧に重畳されている交流電圧の振幅を変化させてトナーの往復運動を抑制しているため、長時間に亘って動作が継続される場合であっても、現像ゴーストや補給かぶりの発生を防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による画像形成装置としてのカラープリンターの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態における画像形成ユニットの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による画像形成装置としてのカラープリンターの制御系の要部構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態による現像装置に印加されるバイアス電圧の制御系の要部構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態における現像装置に対するバイアス電圧の一例を示す図である。
【図6】本発明の一実施例等の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による現像装置及び画像形成装置について詳細に説明する。尚、以下では、画像形成装置としてカラープリンターを例に挙げて説明するが、本発明は、モノクロのプリンターにも適用可能であり、更には、複写機、ファクシミリ、複合機等のプリンター以外の画像形成装置にも適用することができる。
【0014】
〔画像形成装置〕
図1は、本発明の一実施形態による画像形成装置としてのカラープリンターの構成を示す断面図である。図1に示す通り、カラープリンター1は、箱形形状の装置本体1a内に、給紙カセット11、レーザースキャナーユニット(LSU)12、画像形成ユニット13、中間転写ベルト14、及び定着装置15等を備えており、例えば外部から入力される印刷データに応じた画像を所定の印刷用紙(記録媒体)に印刷する。
【0015】
給紙カセット11は、上記の定型の印刷用紙を複数枚(例えば、数十枚程度)収容可能であり、装置本体1aの正面から引き出し可能なように装置本体1aの底部に配置されている。レーザースキャナーユニット12は、例えば外部から入力される印刷データに応じて変調されたレーザー光を画像形成ユニット13に供給する。具体的には、マゼンタ(M)の画像を形成するためのレーザー光、シアン(C)の画像を形成するためのレーザー光、イエロー(Y)の画像を形成するためのレーザー光、及びブラック(K)の画像を形成するためのレーザー光の計4種類のレーザー光を画像形成ユニット13に供給する。
【0016】
画像形成ユニット13は、レーザースキャナーユニット12から供給されるレーザー光を用いて印刷用紙に転写すべきトナー像を形成する。具体的に、画像形成ユニット13は、一定の間隔でタンデムに配置されたマゼンタ画像形成ユニット13M、シアン画像形成ユニット13C、イエロー画像形成ユニット13Y、及びブラック画像形成ユニット13Kを備えており、レーザースキャナーユニット12から供給されるレーザー光を用いて、マゼンタ(M)のトナー像、シアン(C)のトナー像、イエロー(Y)のトナー像、及びブラック(K)のトナー像をそれぞれ形成する。尚、画像形成ユニット13の詳細については後述する。
【0017】
中間転写ベルト14は、マゼンタ画像形成ユニット13M、シアン画像形成ユニット13C、イエロー画像形成ユニット13Y、及びブラック画像形成ユニット13Kの各々で形成されたトナー像が転写されるベルトであり、二次転写対向ローラー14a、駆動ローラー14b、及びテンションローラー14cによって張設されている。定着装置15は、中間転写ベルト14から印刷用紙上に転写されたトナー像(フルカラーのトナー像)を加熱及び加圧して印刷用紙に定着させる。尚、装置本体1aの上部は画像が印刷された印刷用紙を載置する排紙トレイ16とされており、装置本体1aの側部には手差しトレイ17が設けられている。
【0018】
〔画像形成ユニット〕
次に、画像形成ユニット13について詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態における画像形成ユニットの構成を示す断面図である。尚、画像形成ユニット13が備えるマゼンタ画像形成ユニット13M、シアン画像形成ユニット13C、イエロー画像形成ユニット13Y、及びブラック画像形成ユニット13Kは同様の構成であるため、以下ではマゼンタ画像形成ユニット13Mを例に挙げて説明し、シアン画像形成ユニット13C、イエロー画像形成ユニット13Y、及びブラック画像形成ユニット13Kについての説明は省略する。
【0019】
図2に示す通り、マゼンタ画像形成ユニット13Mは、感光ドラム21、帯電器22、現像装置23、転写ローラー24、及びドラムクリーニング装置25を備える構成である。かかる構成のマゼンタ画像形成ユニット13Mは、レーザースキャナーユニット12から供給されるレーザー光LM(マゼンタ(M)の画像を形成するためのレーザー光)を用いて中間転写ベルト14上にマゼンタ(M)のトナー像を形成する。
【0020】
感光ドラム21は、レーザースキャナーユニット12からのレーザー光LMが照射されることによってマゼンタ(M)の画像に応じた静電潜像が形成される円筒形の感光体である。この感光ドラム21は、不図示のモータによって図示矢印方向(図2における反時計回り方向)に所定のプロセススピードで回転駆動される。帯電器22は、不図示の帯電バイアス電源から印加される帯電バイアスによって感光ドラム21の表面を所定の電位に均一に帯電させる。
【0021】
現像装置23は、マゼンタ(M)の現像剤を収容しており、感光ドラム21上に形成された静電潜像にトナーを付着させることによってマゼンタ(M)のトナー像を現像するものである。ここで、現像装置23が収容する現像剤は、トナーとキャリアとを有する二成分現像剤であり、トナーとしては磁性粉を含有する磁性トナーが用いられている。尚、現像装置23の詳細については後述する。
【0022】
転写ローラー24は、感光ドラム21とともに中間転写ベルト14を挟むように配置されており、中間転写ベルト14の一方の面(感光ドラム21が配置されている側の面)を感光ドラム21に当接させるために設けられる。ドラムクリーニング装置25は、中間転写ベルト14上に転写されずに感光ドラム21上に残留しているトナーを除去するものである。
【0023】
〔現像装置〕
次に、現像装置23について詳細に説明する。図2に示す通り、現像装置23は、現像容器30内に、攪拌スクリュー31a,31b、磁気ローラー32、及び現像ローラー33等を備えており、感光ドラム21上に形成された静電潜像をトナー像に現像する。尚、現像容器30の内部は、仕切壁30aによって収納室R1と収納室R2とに区画されている。
【0024】
攪拌スクリュー31a,31bは、現像容器30内に収容されるマゼンタ(M)の現像剤を攪拌するためのスパイラル状の羽根を持つ部材であり、その回転軸が図2の紙面垂直方向に沿うように、収納室R1,R2内に回転可能にそれぞれ配設されている。これら攪拌スクリュー31a,31bが回転すると、現像容器30内の現像剤が攪拌されつつ軸方向(図2の紙面垂直方向)に搬送され、仕切壁30aに形成された不図示の連通路を通過して収納室R1と収納室R2との間を循環することになる。
【0025】
磁気ローラー32は、現像剤担持体である円筒状の部材であり、現像容器30内の攪拌スクリュー31a,31bの上方において回転可能に配設されている。具体的に、磁気ローラー32は、複数の磁極(磁気ローラー磁極)を有する円筒状の固定マグネットローラー32aと、内部に固定マグネットローラー32aが設けられて非磁性体の円環状の部材である回転スリーブ32bとを備える。尚、回転スリーブ32bは、回転軸A1を回転中心線として図2の矢印方向(時計回り方向)に回転駆動される。
【0026】
固定マグネットローラー32aは、外周方向がN極となる3つの磁気ローラー磁極N1〜N3と、外周方向がS極となる2つの磁気ローラー磁極S1,S2とを有している。これら磁気ローラー磁極N1〜N3,S1,S2は、長手方向が回転スリーブ32bの回転軸A1の軸方向に延び、短手方向が固定マグネットローラー32aの径方向に延びる略直方体形状とされており、回転スリーブ32bの回転方向において、磁気ローラー磁極N1,N2間に磁気ローラー磁極S1が配置され、磁気ローラー磁極N1,N3間に磁気ローラー磁極S2が配置されている。ここで、固定マグネットローラー32aは、回転スリーブ32bが回転しても回転しないよう、回転スリーブ32bの回転とは独立して設けられている。
【0027】
現像ローラー33は、トナー担持体である円筒状の部材であり、磁気ローラー32の上方において磁気ローラー32と対向した状態で回転可能に配設されている。尚、現像ローラー33は、現像容器30の開口部30bから露出した状態で感光ドラム21に所定のギャップを介して対向配置されている。具体的に、現像ローラー33は、現像ローラー33の表面部材をなす非磁性の円環状である回転スリーブ33aを備える。この回転スリーブ33aは、不図示の駆動源によって図2の矢印方向(時計回り方向)に回転駆動される回転軸A2の回転に連動して、回転軸A2の回転中心線回りに回転する。
【0028】
また、回転スリーブ33a内には、磁気ローラー32と対向する位置に対向マグネット33bが配置されている。この対向マグネット33bは、長手方向が回転軸A2の軸方向に延び、短手方向が回転スリーブ33aの径方向に延びる略直方体形状とされている。ここで、対向マグネット33bは、回転スリーブ33aが回転しても回転しないよう、回転スリーブ33aの回転とは独立して設けられている。尚、対向マグネット33bの形状は、扇形状の断面を有しており、回転スリーブ33aの回転軸A2の軸方向(図2の紙面垂直方向)に延びる柱体状形状であってもよい。
【0029】
また、現像容器30には、トナー層厚規制部材としてのドクターブレード34が回転スリーブ32bの軸方向(図2の紙面垂直方向)に沿って取り付けられている。このドクターブレード34は、回転スリーブ32bの回転方向(図2の矢印方向)において、回転スリープ32b及び回転スリーブ33aの対向位置よりも上流側に配置され、その先端と回転スリーブ33aの表面との間には所定の微小ギャップが形成されている。
【0030】
〔画像形成装置の制御系〕
図3は、本発明の一実施形態による画像形成装置としてのカラープリンターの制御系の要部構成を示すブロック図である。図3に示す通り、カラープリンター1は、制御部40、操作表示部41、通信I/F部42、画像データ記憶部43、画像処理部44、用紙搬送部45、画像形成部46、及び各種センサー群47を備える。
【0031】
制御部40は、各種センサー群47から出力される各種検出信号を参照しつつ、操作表示部41から入力される操作指示、又は通信I/F部42から入力される各種指示に応じてカラープリンター1の動作を制御する。例えば、通信I/F部42で受信された画像データを画像データ記憶部43に記憶させ、この画像データ記憶部33に記憶された画像データを印刷する制御を行う。また、詳細は後述するが、制御部40は、現像装置23が備える磁気ローラー32及び現像ローラー33に印加するバイアス電圧の制御も行う。
【0032】
操作表示部41は、タッチパネル及び各種操作キーを備えており、操作キーの操作内容を制御部40に出力するとともに、制御部40の制御の下でタッチパネルに種々の情報を表示する。通信I/F部42は、クライアントコンピュータ(図示省略)やローカルエリアネットワーク(LAN)等のネットワーク(図示省略)に接続され、このクライアントコンピュータやネットワークとの間で各種信号の送受信を行う。
【0033】
画像データ記憶部43は、通信I/F部42がクライアントコンピュータ(図示省略)やネットワーク(図示省略)から受信するプリント画像データ等の画像データ、或いは画像処理部44で画像処理が行われた画像データを一時的に記憶する。画像処理部44は、画像データ記憶部43に記憶された画像データに対して各種の画像処理を行う、例えば、画像データの圧縮・伸張処理や画像データの印字率の算出処理等を行う。ここで、印字率とは、印刷用紙全体の面積に対して印字される領域の面積を示す指標であり、印刷用紙全体に所定の解像度で印字可能なドット数と、その印刷用紙に印字されるプリント要求された画像の総ドット数の比率で算出される。
【0034】
用紙搬送部45は、搬送ローラー、搬送ローラー駆動用のモータ等を備えており、給紙カセット11(図1参照)に収納されている印刷用紙を画像形成部46に搬送するとともに、画像形成部46で画像形成処理が行われた印刷用紙を排紙トレイ16に搬送する。画像形成部46は、制御部40の制御の下で、画像データ記憶部43に記憶されているプリント画像データ等の画像データを用いて画像形成処理を行う。具体的には、上記の各種画像データに応じて画像形成ユニット13によって中間転写ベルト14上に形成されたトナー像を用紙搬送部45から搬送される印刷用紙に転写し、定着装置15によってそのトナー像の定着処理を行う。
【0035】
各種センサー群47は、用紙切れ検出センサー、用紙詰まり検出センサー、用紙位置検出センサー、温度センサー等の画像形成動作に必要な各種センサーであり、それぞれのセンサーで検出した各種の情報を検出信号として制御部40に出力する。また、この各種センサー群47には、現像装置23によって現像されるトナーの量を検出する濃度センサー(検出器)も含まれている。この濃度センサーは、中間転写ベルト14の近傍に配設されており、中間転写ベルト14に転写されたトナーの濃度を検出することにより、現像装置23によって現像されるトナーの量(濃度)を検出する。
【0036】
〔バイアス電圧の制御系〕
図4は、本発明の一実施形態による現像装置に印加されるバイアス電圧の制御系の要部構成を示すブロック図である。図4に示す通り、現像装置23に対するバイアス電圧の制御系は、図3に示す制御部40とバイアス印加部51,52とからなる。バイアス印加部51は、制御部40の制御の下で磁気ローラー32に対してバイアス電圧B1を印加する。同様に、バイアス印加部52は、制御部40の制御の下で現像ローラー33に対してバイアス電圧B2を印加する。これらバイアス印加部51,52は、図3中の画像形成部46に設けられ、制御部40の制御の下でバイアス電圧B1,B2を個別に印加する。
【0037】
ここで、磁気ローラー32に印加されるバイアス電圧B1及び現像ローラー33に印加されるバイアス電圧B2は、直流電圧(直流バイアス)に交流電圧(交流バイアス)が重畳されたものである。図5は、本発明の一実施形態における現像装置に対するバイアス電圧の一例を示す図である。図5に示す例において、磁気ローラー32に印加されるバイアス電圧B1は直流電圧V1に対して振幅がΔ1である矩形形状の交流電圧が重畳されたものであり、現像ローラー33に印加されたるバイアス電圧B2は直流電圧V2に対して振幅がΔ2である矩形形状の交流電圧が重畳されたものである。
【0038】
上記のバイアス電圧B1は、例えば直流電圧V1が300[V]であり、交流電圧の振幅Δ1のピーク・トゥ・ピーク値(P−P値)が0.9[kV]であってデューティー比が40%である。また、上記のバイアス電圧B2は、例えば直流電圧V2が100[V]であり、交流電圧の振幅Δ2のP−P値が1.6[kV]であってデューティー比が60%である。これら、バイアス電圧B1,B2の交流電圧は、周波数が数kHz程度であって、位相関係が互いに逆となるように設定されている。
【0039】
このようなバイアス電圧B1,B2が磁気ローラー32及び現像ローラー33にそれぞれ印加された場合には、磁気ローラー32と現像ローラー33との間の電位差は図5に示すものになる。つまり、直流電圧については現像ローラー33に印加される直流電圧V2から磁気ローラー32に印加される直流電圧V1を減じた値になり、交流電圧については振幅が現像ローラー33に印加される交流電圧の振幅Δ1と磁気ローラー32に印加される交流電圧の振幅Δ2とを加算した値になる。
【0040】
制御部40は、画像データ記憶部33に記憶された画像データの印刷制御に加えて、磁気ローラー32に印加されるバイアス電圧B1及び現像ローラー33に印加されるバイアス電圧B2の制御を行う。具体的に、制御部40は、トナー及びキャリアの少なくとも一方の劣化状況に応じてバイアス印加部51,52を制御し、バイアス電圧B1,B2に重畳されている交流電圧の振幅を変化させる。
【0041】
ここで、トナーやキャリアは、印刷枚数(印刷が行われた印刷用紙の数)の増加に伴って劣化する傾向がある。制御部40は、予め実験等を行って得られた印刷枚数とトナーやキャリアの劣化状況との関係を示すテーブルTを備えており、このテーブルTを用いて印刷枚数からトナーやキャリアの劣化状況を把握する。尚、印刷枚数は、制御部40が常時把握しているため、テーブルTからトナーやキャリアの劣化状況を把握することが可能である。
【0042】
また、印刷枚数が同じであっても、印字率の高低に応じてトナーやキャリアの劣化状況が変動する。このため、制御部40は、画像処理部44で得られた印字率に応じてバイアス電圧B1,B2に重畳されている交流電圧の振幅の変化量を変える。例えば、印字率が6%以下である場合には、印字率が6%よりも大である場合に比べて、磁気ローラー32と現像ローラー33との間の電位差(交流成分)がより小さくなるようにバイアス電圧B1,B2に重畳されている交流電圧の振幅を変化させる。
【0043】
或いは、制御部40は、各種センサー群47(図3参照)に設けられた濃度センサーの検出結果に応じてバイアス電圧B1,B2に重畳されている交流電圧の振幅を変化させる。つまり、濃度センサーの検出結果は、現像装置23によって中間転写ベルト14に転写されるトナー像の濃度(現像装置23の現像ローラー33に形成されるトナー層の厚み)を示すものであり、この検出結果によってキャリアの抵抗低下を知ることができるものである。よって、制御部40は、濃度センサーの検出結果に基づいて所望の濃度が得られるように、バイアス電圧B1,B2に重畳されている交流電圧の振幅を変化させる。
【0044】
〔画像形成装置の動作〕
次に、上記構成におけるカラープリンター1を用いて画像を印刷する際に行われる動作について説明する。印刷用紙に印刷すべき画像を示す印刷データが外部から入力されると、通信I/F部42で受信されて画像データ記憶部43に一時的に記憶される。この印刷データは画像処理部44に読み出されて伸張処理等の画像処理が行われ、画像処理が行われた印刷データが画像データ記憶部43に記憶される。尚、画像処理部44では、印刷データの印字率を算出する処理も行われる。
【0045】
画像データ記憶部43に記憶された印刷データは制御部40に読み出され、制御部40の制御の下でその印刷データに応じた画像形成が画像形成部46で行われるとともに、印刷用紙の搬送が用紙搬送部45で行われる。具体的には、マゼンタ画像形成ユニット13M、シアン画像形成ユニット13C、イエロー画像形成ユニット13Y、及びブラック画像形成ユニット13Kの各々に設けられた感光ドラム21が図2の矢印方向(反時計回り方向)に所定のプロセススピードで回転駆動され、これらの感光ドラム21は、帯電器22によって一様に帯電される。
【0046】
また、レーザースキャナーユニット12からは、上記の印刷データに応じて変調された色毎のレーザー光(マゼンタ(M)の画像を形成するためのレーザー光、シアン(C)の画像を形成するためのレーザー光、イエロー(Y)の画像を形成するためのレーザー光、及びブラック(K)の画像を形成するためのレーザー光)が射出される。そして、これらのレーザー光は、マゼンタ画像形成ユニット13M、シアン画像形成ユニット13C、イエロー画像形成ユニット13Y、及びブラック画像形成ユニット13Kの各々に設けられた感光ドラム21に照射され、これによって各感光ドラム21には各色毎の静電潜像がそれぞれ形成される。
【0047】
マゼンタ画像形成ユニット13Mの感光ドラム21上に形成された静電潜像は、現像装置23によって現像され、これによって感光ドラム21上にマゼンタトナー像が形成される。具体的に、現像装置23に設けられた攪拌スクリュー31a,31bによって二成分現像剤が攪拌されることによってマゼンタトナーが帯電し、攪拌スクリュー31b上の二成分現像剤が磁気ローラー32によって吸引搬送される。そして、磁気ローラー32上には、磁気ローラー磁極S2による磁気ブラシが形成されて、ドクターブレード34によって層厚が規制される。
【0048】
層厚が規制された二成分現像剤は、回転スリーブ32bの回転によって現像ローラー33と対向する位置に搬送され、磁気ローラー磁極N1によって二成分現像剤からなる磁気ブラシが形成される。そして、磁気ローラー32と現像ローラー33との間の電位差によって、磁気ブラシに含まれるトナーが現像ローラー33上に移送され、現像ローラー33上にはトナー層が形成される。この現像ローラー33に形成されたトナー層が感光ドラム21に移相されることによって、感光ドラム21上に静電潜像に応じたマゼンタトナー像が形成される。
【0049】
感光ドラム21上に形成されたマゼンタトナー像は、感光ドラム21と転写ローラー24とによって図1の矢印方向に周回駆動されている中間転写ベルト14上に一次転写される。このようにして中間転写ベルト14上に一次転写されたマゼンタトナー像は、シアン画像形成ユニット13Cに移動する。そして、シアン画像形成ユニット13Cにおいても同様に、シアン画像形成ユニット13Cの感光ドラム21上に形成された静電潜像が現像装置23によって現像され、感光ドラム21上に形成されたシアントナー像が中間転写ベルト14上のマゼンタトナー像に重ねて転写される。
【0050】
以下同様にして、中間転写ベルト14上に重畳転写されたマゼンタトナー像及びシアントナー像の上に、イエロー画像形成ユニット13Yの感光ドラム21上に形成されたイエロートナー像と、ブラック画像形成ユニット13Kの感光ドラム21上に形成されたブラックトナー像とが順次重ね合わされる。これにより、中間転写ベルト14上にはフルカラーのトナー像が形成される。尚、中間転写ベルト14上に転写されずに画像形成ユニット13の各々に設けられる感光ドラム21上に残留する残トナーは、画像形成ユニット13の各々に設けられるドラムクリーニング装置25によって除去される。
【0051】
中間転写ベルト14上に形成されたフルカラーのトナー像の先端が二次転写対向ローラー14aに達するタイミングに合わせて、給紙カセット11又は手差しトレイ17から用紙搬送部45により搬送されてきた印刷用紙も二次転写対向ローラー14aに搬送される。そして、中間転写ベルト14に形成されたフルカラーのトナー像が、中間転写ベルト14から搬送されてきた印刷用紙に転写される。このようにして、フルカラーのトナー像が転写された印刷用紙は、定着装置15へと搬送され、フルカラーのトナー像が加熱及び加圧されて印刷用紙の表面に熱定着され、トナー像が定着された用紙が排紙トレイ16上に排出されて一連の動作が完了する。
【0052】
ここで、以上の動作が繰り返されて印刷枚数が増加すると、制御部40は、印刷枚数に応じてテーブルTを用いてバイアス電圧B1に重畳されている交流電圧の振幅を変化させる制御を行う。かかる制御を行うことにより、現像装置23に設けられた現像ローラー33と磁気ローラー32との間におけるトナーの過剰な往復運動が抑制されるため、トナーの劣化を防止することができ、この結果として現像ゴーストや補給かぶりの発生を防止することができる。
【0053】
また、制御部40は、画像処理部44で算出された印字率が低い場合(例えば、6%以下である場合)には、印字率が6%よりも大である場合に比べて、磁気ローラー32と現像ローラー33との間の電位差(交流成分)がより小さくなるようにバイアス電圧B1に重畳されている交流電圧の振幅を変化させる制御を行う。かかる制御を行うことにより、現像剤の劣化が抑制され、この結果として現像ゴーストや補給かぶりの発生をより確実に防止することができる。
【0054】
或いは、制御部40は、各種センサー群47(図3参照)に設けられた濃度センサーの検出結果に基づいて所望の濃度が得られるように、バイアス電圧B1,B2に重畳されている交流電圧の振幅を変化させる制御を行う。かかる制御を行うことにより、キャリアの抵抗低下をトナー層の厚みから検出することができるため、キャリアの劣化を抑制しながら現像ゴーストや補給かぶりの発生を防止することができる。
【実施例】
【0055】
出願人は、以下に示す仕様の現像装置を用いて、バイアス電圧B1,B2の制御を実施した。
磁気ローラー:直径20[mm]、回転数700[rpm]
現像ローラー:直径20[mm]、回転数878[rpm]
感光ドラムと現像ローラーとの間隔(DSギャップ):110[μm]
磁気ローラーと現像ローラーとの間隔(MSギャップ):300[μm]
トナー:6.8[μm]
キャリア:35[μm]
トナー/キャリア重量比率:11[%]
【0056】
具体的には、以下の実施例1〜3に示す通り、バイアス電圧B1,B2の制御を実施した。
(1)実施例1
テーブルTを用い、印刷枚数に応じてバイアス電圧B1に重畳された交流電圧を変化させることにより、磁気ローラー32と現像ローラー33との間の電位差(交流成分)を例えば以下の通り変化させた。
0枚(初期) :2.5[kV]
5万枚(50k枚) :2.0[kV]
20万枚(200k枚):1.8[kV]
【0057】
(2)実施例2
印字率が6%を超える場合には実施例1と同様に変化させ、印字率が6%以下である場合には、バイアス電圧B1に重畳された交流電圧を変化させることにより、磁気ローラー32と現像ローラー33との間の電位差(交流成分)を例えば以下の通り変化させた。
0枚(初期) :2.5[kV]
5万枚(50k枚) :1.8[kV]
20万枚(200k枚):1.5[kV]
【0058】
(3)実施例3
バイアス電圧B1,B2の各々に重畳される交流電圧の値を変化させながら濃度センサーの検出を取得し、印刷枚数に応じて一定以上の濃度が得られる電圧を例えば以下の通り設定した。
0枚(初期) :2.3[kV]
5万枚(50k枚) :1.9[kV]
20万枚(200k枚):1.7[kV]
40万枚(400k枚):1.6[kV]
【0059】
また、出願人は、以上の実施例1〜3に対する比較例として、磁気ローラー32と現像ローラー33との間の電位差(交流成分)を以下の通りに固定した比較例1〜3を実施した。
(4)比較例1
2.5[kV]固定
(5)比較例2
2.0[kV]固定
(6)比較例3
1.8[kV]固定
【0060】
図6は、本発明の一実施例等の評価結果を示す図であって、(a)は補給かぶりの評価結果であり、(b)は現像ゴーストの評価結果を示す図である。尚、図6中における記号「○」は目視で補給かぶりや現像ゴーストが確認できないことを意味しており、記号「×」は目視で補給かぶりや現像ゴーストが確認できることを意味している。
【0061】
図6(a)を参照すると、実施例1において印刷枚数が50万枚を超えた場合に、補給かぶりが確認されているものの、実施例1〜3においては殆ど補給かぶりが確認されていないことが分かる。これに対し、比較例1,2を参照すると、実施例1〜3よりも少ない印刷枚数で補給かぶりが確認できているのが分かる。また、図6(b)を参照すると、実施例1〜3では現像ゴーストが全く確認されていないのに対し、比較例2,3では印刷枚数が少ない場合(初期又は10万枚以下の場合)に現像ゴーストが確認できているのが分かる。以上から、実施例1〜3は、比較例1〜3に比べて現像ゴーストや補給かぶりの発生を防止できているのが分かる。このように、本実施形態では、30万枚以上に対応できる長寿命の現像装置を実現できる。
【0062】
以上、本発明の一実施形態による現像装置及び画像形成装置について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、磁気ローラー32と現像ローラー33との間のインピーダンスを検出してキャリアの抵抗を検出し、この検出結果に基づいて磁気ローラー32と現像ローラー33との間の電位差(交流成分)を制御してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 カラープリンター
15 定着装置
21 感光ドラム
23 現像装置
32 磁気ローラー
33 現像ローラー
40 制御部
51,52 バイアス印加部
T テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー及びキャリアを含有する二成分現像剤を担持する磁気ローラーと、静電潜像が形成される像担持体に対向配置されて前記磁気ローラーから供給されるトナーで前記静電潜像を現像する現像ローラーとを備える現像装置において、
前記磁気ローラーと前記現像ローラーとの間に、直流電圧に交流電圧が重畳されたバイアス電圧を印加するバイアス印加部と、
前記トナー及び前記キャリアの少なくとも一方の劣化状況に応じて前記バイアス印加部を制御し、前記バイアス電圧に重畳されている交流電圧の振幅を変化させる制御部と
を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記バイアス印加部は、前記磁気ローラー及び前記現像ローラーに対してそれぞれ個別に前記バイアス電圧を印加しており、
前記制御部は、前記バイアス印加部を制御して、前記磁気ローラーに印加される前記バイアス電圧に重畳されている交流電圧の振幅を変化させる
ことを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、
前記記録媒体に形成すべき画像の静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に形成された前記静電潜像をトナー像に現像する請求項1又は請求項2記載の現像装置と、
前記現像装置で現像されて前記記録媒体上に転写された前記トナー像を定着させる定着装置と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、画像の形成を行った記録媒体の数と、前記トナー及び前記キャリアの少なくとも一方の劣化状況との関係を示すテーブルを備えており、該テーブルを用いて、画像の形成が行われた記録媒体の数から前記トナー及び前記キャリアの少なくとも一方の劣化状況を把握することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記記録媒体に形成すべき画像の印字率に応じて、前記交流電圧の振幅の変化量を変えることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記現像装置によって現像されるトナーの量を検出する検出器を備えており、
前記制御部は、前記検出器の検出結果に応じて前記交流電圧の振幅を変化させることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−208199(P2012−208199A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72032(P2011−72032)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】