説明

画像の領域分割による欠陥の検出

【課題】 欠陥の検出対象の形状による欠陥の検出処理量の増大を抑制する。
【解決手段】 複数の色の領域を有する検査対象物を撮影する。撮影によって得られた検査対象物のカラー画像を、色に応じて領域分割する。この領域分割結果から、特定の領域の形状を表す被検査画像を取得する。そして、被検査画像と比較画像とを対比することにより、特定の領域に関する欠陥を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検査対象物の欠陥を画像の領域分割により取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路を構成するためのプリント基板には、層間の導通や部品の挿入のためのスルーホール(穴)が設けられる。このようなスルーホールの位置や形状の異常や、スルーホールの穴詰まりなどの異常は、導通不良や部品挿入の不良の原因となる。そのため、これらのスルーホールに現れる異常(欠陥)を検出するための、種々の画像検査装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−191185号公報
【特許文献2】特許第2500961号公報
【0004】
しかしながら、スルーホールの欠陥をこれらの画像検査装置により検出する場合、プリント基板に設けられた個々のスルーホールについて、その面積や周囲長などの特徴量をそれぞれ抽出する必要がある。そのため、プリント基板に設けられるスルーホールの数が多くなると、検査にかかる処理量が増大する。このような問題は、画像検査装置によるスルーホールの欠陥検出において顕著であるが、一般に、検査対象物の欠陥検出対象に共通する問題であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、欠陥の検出対象の形状による欠陥の検出処理量の増大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的の少なくとも一部を達成するために、本発明の方法は、複数の色領域を有する検査対象物を撮影したカラー画像を用いて、前記複数の色領域のうちの特定領域に関する欠陥を検出する方法であって、(a)前記カラー画像を色に応じて領域分割する工程と、(b)前記領域分割の結果から、前記特定領域の形状を表す被検査画像を取得する工程と、(c)前記被検査画像と、前記被検査画像の少なくとも一部と対比し得る比較画像と、を対比することにより、前記特定領域に関する欠陥を検出する工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、カラー画像の領域分割により生成された被検査画像と、比較画像とを対比することにより、特定領域に関する欠陥を検出できる。そのため、検査対象物の欠陥検出対象の形状が複雑な場合にも、欠陥の検出処理量が低減できる。
【0008】
前記工程(c)は、(1)前記特定領域の標準的な形状を表す画像として前記比較画像を取得する工程と、(2)前記被検査画像と前記比較画像とに基づいて、前記特定領域の形状の前記標準的な形状からの差異を表す比較結果画像を取得する工程と、(3)前記比較結果画像を評価することにより、前記特定領域に関する欠陥を検出する工程と、を含むものとしてもよい。
【0009】
この構成によれば、比較画像が特定領域の標準的な形状に基づいて生成できるので、比較画像の生成が容易となる。
【0010】
前記工程(2)は、前記被検査画像と前記比較画像との論理演算を行うことにより前記比較結果画像を取得する工程を含むものとしてもよい。
【0011】
この構成によれば、比較結果画像の取得がより容易となる。
【0012】
前記論理演算は排他的論理和の演算であるものとしてもよい。
【0013】
この構成によっても、比較結果画像の取得がより容易となる。
【0014】
前記工程(3)は、前記比較結果画像中の前記被検査画像と前記比較画像とが異なっている欠陥領域の面積を評価することにより、前記特定領域に関する欠陥を検出する工程を含むものとしてもよい。
【0015】
この構成によれば、比較結果画像に基づく欠陥の検出が容易となる。
【0016】
前記工程(3)は、前記特定領域の形状の大きさが前記標準的な形状の大きさと異なる場合に、前記比較結果画像に現れる線状の領域の幅を評価することにより、前記特定領域に関する欠陥を検出する工程を含むものとしてもよい。
【0017】
この構成によれば、特定領域の大きさの異常による欠陥の検出が容易となる。
【0018】
前記工程(3)は、前記比較結果画像中の前記被検査画像と前記比較画像とが異なっている欠陥領域の数を評価することにより、前記特定領域に関する欠陥を検出する工程を含むものとしてもよい。
【0019】
この構成によれば、特定領域の形状の歪みによる欠陥の検出が容易となる。
【0020】
前記工程(2)は、前記被検査画像と前記比較画像との互いに異なる相対移動量のうち、前記被検査画像と前記比較画像との位置のズレが最小となる最適移動量を取得するとともに、前記最適移動量に応じて前記被検査画像と前記比較画像の相対位置を変更する工程を含むものとしてもよい。
【0021】
この構成によれば、画像の位置ズレによる誤差を低減できる。
【0022】
前記工程(c)は、前記領域分割の結果から、前記特定領域とは異なる色領域の形状を表す画像として前記比較画像を取得する工程と、前記比較画像から、前記特定領域が有すべき特定の形状を有する対応領域を抽出する工程と、前記被検査画像内の前記特定領域と、前記比較画像内の前記対応領域と、を対比することにより、前記特定領域に関する欠陥を検出する工程と、を含むものとしてもよい。
【0023】
この構成によれば、特定領域と他の領域との位置関係に関する欠陥を容易に検出できる。
【0024】
前記検査対象物はプリント基板であり、前記特定領域は前記プリント基板に設けられたスルーホールであるものとしてもよい。
【0025】
この構成によれば、プリント基板のスルーホールの欠陥の検出が容易となる。
【0026】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、物体の表面領域配置の取得方法および装置、その取得結果を用いた画像検査方法および装置、それらの各種の方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の態様で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0028】
A.第1実施例:
図1は、本発明の一実施例としてのプリント基板検査装置100の構成を示す説明図である。このプリント基板検査装置100は、プリント基板PCBを照明するための光源20と、プリント基板PCBの画像を撮影する撮像部30と、装置全体の制御を行うコンピュータ40とを備えている。コンピュータ40には、各種のデータやコンピュータプログラムを格納する外部記憶装置50が接続されている。
【0029】
コンピュータ40は、画像取得部210と、領域分割部220と、特定領域抽出部230と、比較画像取得部240と、比較評価部250と、の機能を有している。これら各部の機能は、外部記憶装置50に格納されたコンピュータプログラムをコンピュータ40が実行することによって実現される。
【0030】
図2は、欠陥のないプリント基板PCB(「マスター基板」とも呼ぶ)の様子を示す説明図である。プリント基板PCBの表面は、基板ベース上にレジストが塗布されたベースレジスト領域RBRと、銅配線のパターン上にレジストが塗布されたパターンレジスト領域RPRと、基板ベース上に白色の文字がシルク印刷されたシルク印刷領域RSGと、金メッキが施された金メッキ領域RGPと、基板ベースが露出している基板ベース領域RSBと、を含んでいる。また、プリント基板PCBには、7つのスルーホールTH1〜TH7が設けられている。
【0031】
この欠陥のないプリント基板PCBを撮像部30(図1)で撮影した画像では、ベースレジスト領域RBRは、茶色の基板ベースに緑色のレジストが塗布されているので、輝度の低い緑色領域GDとなる。また、パターンレジスト領域RPRは、レジストの下が銅色の銅配線パターンとなっているので、ベースレジスト領域RBRよりも輝度の高い緑色領域GBとなる。シルク印刷領域RSGと、金メッキ領域RGPと、基板ベース領域RSBとは、それぞれ表面材質の色である白色領域WHと、金色領域GLと、茶色領域BRとなっている。そして、スルーホールTH1〜TH7は、基板に穴が開けられているので、黒色領域BKとなる。このマスター基板の画像は、個々の基板の検査に先だって予め取得され、外部記憶装置50に格納される。
【0032】
図3は、第1実施例における個々のプリント基板PCBの検査手順を示すフローチャートである。ステップS100では、画像取得部210(図1)が、プリント基板PCBのカラー画像を撮像部30(図1)から取得する。なお、予め取得された画像に関してステップS200以降の処理を実行する場合には、ステップS100において、外部記憶装置50(図1)から画像データが読み出される。
【0033】
ステップS200では、領域分割部220(図1)が、取得されたカラー画像を色に応じて領域分割する。色に応じたカラー画像の領域分割は、例えば、以下のように行うことができる。まず、画像に現れる複数の領域を指定し、各領域の特徴を表す色を代表色とする。そして、画像の各画素の色と複数の代表色との所定の色空間における距離を表す距離指標値を求める。この距離指標値が最小となる代表色の領域に各画素を分類することにより、カラー画像を色に応じて複数の領域に分割できる。なお、距離指標値としては、例えば、RGB色空間を3次元ユークリッド空間とみたときのユークリッド距離や、L*a*b*空間における色差ΔEを利用することができる。また、ステップS200において行われる領域分割方法は、カラー画像の各画素の色に応じて各画素を複数の領域に分類する領域分割方法であれば良く、例えば、特開2002−259667号公報に開示された方法によっても行うことができる。
【0034】
図4(a)は、スルーホールに欠陥があるプリント基板PCBのカラー画像IM1を示す説明図である。また、図4(b)は、カラー画像IM1を領域分割した領域分割結果SR1を示す説明図である。以下に説明するように、カラー画像IM1で表されるプリント基板PCBには、7つのスルーホールTH1〜TH7のうちの6つのスルーホールTH2〜TH7に欠陥が存在する。
【0035】
スルーホールTH2の中心部には、異物(金)が存在する。そのため、スルーホールTH2を表す黒色領域BKの中心部には、金色領域GLが現れている。スルーホールTH3は穴の径が正常な穴の径よりも小さくなっているので、スルーホールTH3表す黒色領域BKは、欠陥のないスルーホールTH1を表す黒色領域BKよりも小さくなっている。スルーホールTH4は、その穴が金によりふさがった状態(「穴づまり」と呼ばれる)となっているため、スルーホールTH4は、周囲の金色領域GLよりもやや輝度が低い金色領域GLaとして表される。スルーホールTH5は、その穴の一部がレジストで覆われた状態(「レジストかぶり」と呼ばれる)となっているため、スルーホールTH5を表す黒色領域BKは、レジストに覆われている部分が欠けた半円形となっている。スルーホールTH6は穴の径が正常な穴の径よりも大きくなっているので、スルーホールTH6を表す黒色領域BKは、スルーホールTH1を表す黒色領域BKよりも大きくなっている。スルーホールTH7は、穴形状が扁平に歪む欠陥を有している。そのため、スルーホールTH7を表す黒色領域BKは、スルーホールTH1を表す黒色領域BKとは異なった形状となっている。
【0036】
ステップS200(図3)において行われる領域分割により、カラー画像IM1は、図4(b)の領域分割結果SR1に示すように6つの領域GD,GB,WH,GL,BR,BKに分割される。なお、スルーホールTH4を表すカラー画像IM1の金色領域GLaの色は、金メッキ領域RGPを表す金色領域GLの色に近い色である。そのため、領域分割結果SR1では、スルーホールTH4の部分は、周囲の金メッキ領域RGPと同一の領域GLに分割されている。
【0037】
図3のステップS300では、特定領域抽出部230(図1)が、領域分割結果から被検査画像を生成する。具体的には、特定領域抽出部230が、プリント基板PCBのスルーホールを表す黒色領域BKを領域分割結果から抽出する。そして、抽出された黒色領域BKの形状を表す画像が、被検査画像となる。
【0038】
図5(a)は、カラー画像IM1を領域分割した領域分割結果SR1を示している。なお、図5(a)と図4(b)とは同一である。図5(b)は、図5(a)に示す領域分割結果SR1から生成された被検査画像TI1を示している。この被検査画像TI1は、領域分割結果SR1の黒色領域BKを黒色とし、黒色領域BK以外を白色とする2値画像である。
【0039】
図3のステップS400では、比較画像取得部240(図1)が、被検査画像と対比するための比較画像を取得する。具体的には、比較画像取得部240が、予め生成され外部記憶装置50(図1)に格納された比較画像を、外部記憶装置50から読み出すことにより取得する。
【0040】
比較画像は、上述のステップS100〜S300と同様の手順により生成することができる。具体的には、欠陥のないプリント基板PCB(図2)のカラー画像を取得し、そのカラー画像の領域分割を行うことにより、領域分割結果が取得される。図5(c)は、このように取得された領域分割結果SRMを示している。図5(c)に示すように、領域分割結果SRMも6つの領域GD,GB,WH,GL,BR,BKに分割されている。
【0041】
比較画像は、この領域分割結果SRからプリント基板PCBのスルーホールを表す黒色領域BKを抽出することにより生成される。図5(d)は、図5(c)に示す領域分割結果SRMから生成された比較画像MI1を示している。この比較画像MI1は、領域分割結果SRMの黒色領域BKを黒色とし、黒色領域BK以外を白色とする2値画像である。
【0042】
なお、第1実施例では、比較画像を欠陥のないプリント基板の画像から生成しているが、他の方法によっても比較画像を生成することができる。例えば、複数のプリント基板を撮影し、スルーホールであることを表す黒色の出現頻度の積算値に基づいて比較画像を生成することも可能である。また、スルーホールを形成するために用いられる設計データ(CADデータ)に含まれるスルーホールの位置と大きさとから比較画像を生成することも可能である。
【0043】
図3のステップS500では、比較評価部250(図1)が、被検査画像と比較画像とから比較結果画像を生成する。具体的には、被検査画像と比較画像との排他的論理和(Exclusive OR)をとることにより、これら2つの画像の差異を表す比較結果画像を生成する。図5(b)に示す被検査画像TI1と、図5(d)に示す比較画像MI1と、の排他的論理和をとった比較結果画像は、図5(e)に示す画像RI1となる。このように、比較結果画像RI1は、スルーホールの欠陥DT2〜DT7が黒で表される2値画像となる。
【0044】
なお、被検査画像TI1と比較画像MI1との排他的論理和をとる際に、これらの2つの画像TI1,MI1の位置のズレを補正する処理を行うものとしてもよい。このような補正は、2つの画像TI1,MI1の少なくとも一方を移動させることにより2つの画像TI1,MI1の位置ズレが最小となるような相対移動量を取得し(「ゆすらせ処理」とも呼ぶ)、取得された移動量に応じて位置ズレを補正することにより行うことができる。この場合、2つの画像TI1,MI1の位置ズレを最小にする相対移動量は、例えば、比較結果画像RI1の黒色の画素数が最小となる相対移動量とすることができる。
【0045】
図3のステップS600では、比較評価部250が、比較結果画像RI1を解析することにより、スルーホールごとに欠陥の有無を判断する。具体的には、各スルーホールに検査領域を設定し、検査領域に現れる欠陥の面積を評価し欠陥の有無を判断する。
【0046】
図5(f)は、スルーホールTH1〜TH7のそれぞれに対応する検査領域IR1〜IR7が設定されている様子を示している。これらの検査領域IR1〜IR7は、例えば、比較画像MI1中のスルーホールTH1〜TH7を表す黒い領域を太らせ処理(膨張処理)することにより得られる領域とすることができる。また、CADデータに含まれる各スルーホールの位置と大きさとを用いて、検査領域を設定することも可能である。
【0047】
スルーホールの欠陥の有無の判断基準としては、以下のものを採用することができる。
(1)個々の検査領域中の欠陥の面積が欠陥基準面積を超える場合には、対応するスルーホールが欠陥を有すると判断する。
(2)上記基準(1)の欠陥の面積として、検査領域の位置に応じた重みを付けた面積を用いる。この際、欠陥の影響が大きき検査領域の中心部の重みは、検査領域の外周部の重みより大きくするのが好ましい。
(3)欠陥がスルーホールTH3,TH6(図4)のような穴径異常の場合には、比較結果画像RI1(図5)に現れる円環DT3,DT6の幅に基づいて欠陥の有無を判断する。
(4)欠陥がスルーホールTH7(図4)のような歪みの場合には、比較結果画像RI1に現れる欠陥の個数や欠陥の総面積に基づいて欠陥の有無を判断する。
【0048】
本実施例では、上記基準(1)を使用しているが、基準(1)〜(4)のうちの任意の1つ以上の基準を用いて判断しても良い。また、これら以外の判断基準を用いることも可能である。
【0049】
図5(f)に示すように、検査領域IR2〜IR7には、欠陥があることを示す黒い領域DT2〜DT7(図5(e))が含まれている。そのため、比較評価部250は、これらの検査領域IR2〜IR7に対応するスルーホールTH2〜TH7には欠陥があると判断する。一方、検査領域IR1には、欠陥があることを示す黒い領域が含まれていない。そのため、比較評価部250は、検査領域IR1に対応するスルーホールTH1には欠陥が無いと判断する。
【0050】
このように、第1実施例によれば、カラー画像の領域分割により生成された被検査画像と、比較画像とを対比することにより、スルーホールの欠陥を検出できる。
【0051】
なお、第1実施例では、個々のスルーホールについて検査領域を設定しているが、複数のスルーホールを含む検査領域を設定しても良い。また、検査領域を設定することなく、比較結果画像RI1に現れる欠陥の総面積を評価しても良い。しかしながら、個々のスルーホールについて検査領域を設定する方が、スルーホールの欠陥検出の精度を高めることができるので、より好ましい。
【0052】
B.第2実施例:
図6は、第2実施例におけるプリント基板PCBの検査手順を示すフローチャートである。図3に示す第1実施例のフローチャートとは、ステップS400がステップS410,S420に置き換えられている点と、ステップS600がステップS610に置き換えられている点と、ステップS500が省略されている点と、で異なっている。他の点は、第1実施例と同じである。
【0053】
図7(a)は、ステップS100で取得された、スルーホールに欠陥のあるプリント基板PCBのカラー画像IM2を示している。図7(b)は、ステップS200においてカラー画像IM2を領域分割した領域分割結果SR2を示している。図7(a)に示すように、カラー画像IM2で表されるプリント基板PCBには、7つのスルーホールTH1〜TH7のうちの4つのスルーホールTH3,TH4,TH6,TH7に欠陥が存在する。
【0054】
スルーホールTH3,TH6は、その位置がそれぞれ左にずれている。スルーホールTH3の左端は茶色領域BR(基板ベース領域RSB)に接し、スルーホールTH6の左端は緑色領域GD(ベースレジスト領域RBR)に接する状態(座切れ)となっている。また、スルーホールTH4,TH7は、その穴が金もしくは銅によってふさがった穴づまり状態となっている。そのためスルーホールTH4は、周囲の金色領域GLよりもやや輝度が低い金色領域GLaとして表され、スルーホールTH7は、周囲の緑色領域GBよりもやや輝度が低い緑色領域GBaとして表されている。
【0055】
ステップS200(図6)において行われる領域分割により、カラー画像IM2は、領域分割結果SR2に示すように6つの領域GD,GB,WH,GL,BR,BKに分割される。なお、スルーホールTH4を表す金色領域GLaの色が金メッキ領域RGPを表す金色領域GLの色と近いので、スルーホールTH4は、その周囲と同一の金色領域GLに分割されている。同様に、スルーホールTH7は、その周囲と同一の緑色領域GBに分割されている。
【0056】
図6のステップS300では、特定領域抽出部230(図1)が、領域分割結果から被検査画像を生成する。具体的には、特定領域抽出部230が、プリント基板PCBのスルーホールを表す黒色領域BKを、領域分割結果から抽出する。そして、抽出された黒色領域BKの形状を表す画像が、被検査画像となる。
【0057】
図8(a)は、カラー画像IM2を領域領域した領域分割結果SR2を示している。なお、図8(a)と図7(b)とは同一である。図8(b)は、ステップS300(図6)において、図8(a)に示す領域分割結果SR2から生成された被検査画像TI2を示している。この被検査画像TI2は、領域分割結果SR2の黒色領域BKを黒色とし、黒色領域BK以外を白色とする2値画像である。被検査画像TI2では、5つのスルーホールTH1〜TH3,TH5,TH6に対応する領域が現れている。
【0058】
図6のステップS410では、比較画像取得部240が、図8(a)に示す領域分割結果SR2から、黒色領域BKでない色領域GB,GD,GLをそれぞれ抽出する。図8(c)は、領域分割結果SR2から抽出された緑色領域GBの形状を表す第1の比較画像MI2aを示している。この比較画像MI2aでは、抽出された緑色領域GBがハッチングで表されている。同様に、図8(d)に示す第2の比較画像MI2bと、図8(e)に示す第3の比較画像MI2cとのハッチングした領域は、それぞれ、抽出された緑色領域GDと金色領域GLとを表している。
【0059】
ステップS420では、比較画像取得部240が、3つの比較画像MI2a〜MI2cからそれぞれ円形の領域を抽出する。図8(c)では、スルーホールTH5の位置の円形領域が抽出される。同様に、図8(d)に示す第2の比較画像MI2bと、図8(e)に示す第3の比較画像MI2cとからは、それぞれスルーホールTH1とスルーホールTH2との位置の円形領域が抽出される。
【0060】
なお、「円形の領域」とは、輪郭が丸く閉じており、かつ、真円との差が所定の許容範囲内にある領域を意味する。第2実施例においては、円形領域として、各比較画像MI2a〜MI2cのハッチングされていない領域の最大径Rと周囲長lとが所定の関係(例えば、2.8≦l/R≦3.4)となっている領域を抽出している。但し、他の方法によって円形領域を抽出しても良い。この場合、ハッチングされていない領域の周囲長、重心、半径、縦横比、面積、真円度などに基づいて円形領域を抽出できる。
【0061】
ステップS610では、このように3つの比較画像MI2a〜MI2cから抽出された円形の領域と被検査画像TI2から抽出されたスルーホールとの対比を行い、欠陥の有無を判断する。具体的には、スルーホールに対応する円形領域が比較画像に存在する場合には、そのスルーホールは欠陥がないと判断され、スルーホールに対応する円形領域が存在しない場合には、そのスルーホールに欠陥があると判断される。図8の例では、被検査画像TI2から抽出されたスルーホールTH1〜TH3,TH5,TH6のうち、スルーホールTH1,TH2,TH5には比較画像MI2a〜MI2cのいずれかに対応する円形領域が存在する。そのため、スルーホールTH1,TH2,TH5には欠陥がないと判断される。一方、スルーホールTH3,TH6には対応する円形領域が存在しない。そのため、スルーホールTH3,TH6には欠陥があると判断される。このように、第2実施例では、図8(b)に示す被検査画像TI2の一部であるスルーホールTH1〜TH3,TH5,TH6のみが比較画像MI2a〜MI2cと対比される。
【0062】
なお、被検査画像TI2から抽出したスルーホールと比較画像MI2a〜MI2cから抽出した円形領域との対比は、それぞれの位置を比較しその距離が所定の距離基準値(例えば、5画素)以下である場合にスルーホールと円形領域が対応していると判断することができる。但し、他の方法によって対比を行うことも可能である。例えば、比較画像MI2a〜MI2cから抽出した円形領域を表す画像を生成し、その画像と被検査画像との論理演算を行うことによっても、スルーホールと円形領域との対比が可能である。この場合、比較画像MI2aの円形内の領域のみを0とする画像と、被検査画像TI2との論理積をとることにより、被検査画像TI2のスルーホールTH5を表す領域が白色(0)に置き換えられた画像が得られる。この得られた画像と、比較画像MI2b,MI2cの円形内の領域のみを0とする画像との論理積を順次とることにより、図8(f)に示すような、欠陥のあるスルーホールTH3,TH6を表す画像を得ることができる。
【0063】
このように、第2実施例によっても、カラー画像の領域分割により生成された被検査画像と、比較画像とを対比することにより、スルーホールの欠陥を検出できる。
【0064】
なお、第2実施例では、比較画像取得部240が領域分割結果SR2から抽出する領域の形状を、正常なスルーホールの形状である円形としているが、領域分割結果から領域を抽出する形状は他の形状としても良い。抽出する領域の形状は、一般には、被検査画像に現れる特定の領域の形状とすることができる。
【0065】
C.変形例:
なお、この発明は上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0066】
C1.変形例1:
上記第1および第2実施例で説明した2つの欠陥検出手順は、単独で実行するのみでなく、2つの欠陥検出手順のいずれをも行うものとしてもよい。この際、例えば、第1実施例の欠陥検出手順で検出されなかった欠陥を、第2実施例の欠陥検出手順で検出するものとしてもよい。逆に、第2実施例の欠陥検出手順で検出されなかった欠陥を、第1実施例の欠陥検出手順で検出するものとしてもよい。2つの欠陥検出手順を組み合わせることは、欠陥の検出精度をより高めることができるので好ましい。なお、この場合、カラー画像の領域分割は、最初の欠陥検出の際の1回のみ行うものとしてもよい。
【0067】
C2.変形例2:
本発明による欠陥の検出は、プリント基板のスルーホールに限らず、欠陥の検出対象となる特定の領域が、画像の特定の色領域によって表されるものであれば、任意の物体の特定領域に関する欠陥を検出することができる。例えば、機械部品などの形状の欠陥や物体に印刷された文字などの欠陥の検出にも適用することができる。
【0068】
C3.変形例3:
第1実施例では、図5(b),(d)に示すように、比較画像MI1は、被検査画像TI1の全部に対比しうる画像として生成されている。一方、第2実施例では、図8(b),(c)に示すように、緑色領域GBから抽出される比較画像MI2aは、被検査画像TI2の一部に対比しうる画像として生成されている。これらの実施例から理解できるように、本発明では、比較画像として、被検査画像の少なくとも一部と対比し得る画像を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施例としてのプリント基板検査装置100の構成を示す説明図。
【図2】欠陥のないプリント基板PCBの様子を示す説明図。
【図3】第1実施例におけるプリント基板PCBの検査手順を示すフローチャート。
【図4】プリント基板PCBのカラー画像IM1とその領域分割結果SR1を示す説明図。
【図5】第1実施例におけるプリント基板PCBの検査の様子を示す説明図。
【図6】第2実施例におけるプリント基板PCBの検査手順を示すフローチャート。
【図7】プリント基板PCBのカラー画像IM2とその領域分割結果SR2を示す説明図。
【図8】第2実施例におけるプリント基板PCBの検査の様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0070】
100…プリント基板検査装置
20…光源
30…撮像部
40…コンピュータ
50…外部記憶装置
210…画像取得部
220…領域分割部
230…特定領域抽出部
240…比較画像取得部
250…比較評価部
PCB…プリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色領域を有する検査対象物を撮影したカラー画像を用いて、前記複数の色領域のうちの特定領域に関する欠陥を検出する方法であって、
(a)前記カラー画像を色に応じて領域分割する工程と、
(b)前記領域分割の結果から、前記特定領域の形状を表す被検査画像を取得する工程と、
(c)前記被検査画像と、前記被検査画像の少なくとも一部と対比し得る比較画像と、を対比することにより、前記特定領域に関する欠陥を検出する工程と、
を備える、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
前記工程(c)は、
(1)前記特定領域の標準的な形状を表す画像として前記比較画像を取得する工程と、
(2)前記被検査画像と前記比較画像とに基づいて、前記特定領域の形状の前記標準的な形状からの差異を表す比較結果画像を取得する工程と、
(3)前記比較結果画像を評価することにより、前記特定領域に関する欠陥を検出する工程と、
を含む、方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、
前記工程(2)は、前記被検査画像と前記比較画像との論理演算を行うことにより前記比較結果画像を取得する工程を含む、方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法であって、
前記論理演算は排他的論理和の演算である、方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法であって、
前記工程(3)は、前記比較結果画像中の前記被検査画像と前記比較画像とが異なっている欠陥領域の面積を評価することにより、前記特定領域に関する欠陥を検出する工程を含む、方法。
【請求項6】
請求項4または5記載の方法であって、
前記工程(3)は、前記特定領域の形状の大きさが前記標準的な形状の大きさと異なる場合に、前記比較結果画像に現れる線状の領域の幅を評価することにより、前記特定領域に関する欠陥を検出する工程を含む、方法。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか記載の方法であって、
前記工程(3)は、前記比較結果画像中の前記被検査画像と前記比較画像とが異なっている欠陥領域の数を評価することにより、前記特定領域に関する欠陥を検出する工程を含む、方法。
【請求項8】
請求項2ないし7のいずれか記載の方法であって、
前記工程(2)は、前記被検査画像と前記比較画像との互いに異なる相対移動量のうち前記被検査画像と前記比較画像との位置のズレが最小となる最適移動量を取得するとともに、前記最適移動量に応じて前記被検査画像と前記比較画像の相対位置を変更する工程を含む、方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法であって、
前記工程(c)は、
前記領域分割の結果から、前記特定領域とは異なる色領域の形状を表す画像として前記比較画像を取得する工程と、
前記比較画像から、前記特定領域が有すべき特定の形状を有する対応領域を抽出する工程と、
前記被検査画像内の前記特定領域と、前記比較画像内の前記対応領域と、を対比することにより、前記特定領域に関する欠陥を検出する工程と、
を含む、方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか記載の方法であって、
前記検査対象物はプリント基板であり、前記特定領域は前記プリント基板に設けられたスルーホールである、方法。
【請求項11】
複数の色領域を有する検査対象物を撮影したカラー画像を用いて、前記複数の色領域のうちの特定領域に関する欠陥を検出する装置であって、
前記カラー画像を色に応じて領域分割する領域分割部と、
前記領域分割の結果から、前記特定領域の形状を表す被検査画像を取得する被検査画像取得部と、
前記被検査画像と、前記被検査画像の少なくとも一部と対比し得る比較画像と、を対比することにより、前記特定領域に関する欠陥を検出する欠陥検出部と、
を備える、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−38582(P2006−38582A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217598(P2004−217598)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】