画像処理装置、画像形成装置、及び、画像処理方法
【課題】階調の特性を損なうことなく、異なる主走査ライン間における画像の特性差を解消する画像処理装置、画像形成装置、及び、画像処理方法を提供すること。
【解決手段】ヘッド毎の主走査方向の走査ライン毎における色の情報を取得する色情報取得手段と、取得された前記色の情報に基づいて、主走査方向の一の走査ラインの中間調処理に用いるパラメータ、及び、前記一の走査ラインに隣接する隣接ラインの中間調処理に用いるパラメータを補正して、前記一の走査ラインと前記隣接ラインとの間の色の差の補正を行う補正手段と、を有する画像処理装置。
【解決手段】ヘッド毎の主走査方向の走査ライン毎における色の情報を取得する色情報取得手段と、取得された前記色の情報に基づいて、主走査方向の一の走査ラインの中間調処理に用いるパラメータ、及び、前記一の走査ラインに隣接する隣接ラインの中間調処理に用いるパラメータを補正して、前記一の走査ラインと前記隣接ラインとの間の色の差の補正を行う補正手段と、を有する画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像形成装置、及び、画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のヘッドユニットを繋いで用紙幅分を1度の走査で記録するラインインクジェット記録装置、又は、1つのヘッドがヘッド幅分を1度の走査で記録する1パス印刷モードにより画像を形成するシリアルインクジェット記録装置において、ヘッドの噴射特性のばらつきが、画像のムラとなる劣化が発生することがある。
【0003】
そこで、特開2005−219508号公報(特許文献1)には、主走査ラインにオーバーラップを持たせるプリンタの発明が開示されている。しかしながら、オーバーラップ量が僅かな場合には、完全に特性差を目立たなくすることができない。一方、オーバーラップ量を増やすと、ヘッドの使用効率が落ち、印刷速度が低下する。
【0004】
そこで、特開2004−326613号公報(特許文献2)には、ヘッドの駆動波形を切り替えてバンディングを軽減する画像処理方法が開示されている。また、特開2003−189103号公報(特許文献3)には、中間調画像に、面内の濃度むらを補正する信号を重畳することにより、濃度むらが補正された画像を生成する画像形成装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示の発明を、ヘッドの特性のばらつきを解消するために用いると、様々な駆動波形が必要となる。また、一のヘッド内で液滴の大きさや形状の変化が生じることもあるため、事前に全ての駆動波形を用意しておくことは、困難である。
【0006】
また、上記特許文献2に開示の発明は、階調値を変更するため、ヘッドの特性のばらつきを解消するために特許文献2に記載の発明を用いると、階調値の変更によりドット配置パターンが切り替わり、色ではなく、パターンの変化としての不連続性が目立つ。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みて、これらの問題を解消するために発明されたものであり、階調の特性を損なうことなく、異なる主走査ライン間における画像の特性差を解消する画像処理装置、画像形成装置、及び、画像処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の画像処理装置は次の如き構成を採用した。本発明の画像処理装置は、ヘッド毎の主走査方向の走査ライン毎における色の情報を取得する色情報取得手段と、取得された前記色の情報に基づいて、主走査方向の一の走査ラインの中間調処理に用いるパラメータ、及び、前記一の走査ラインに隣接する隣接ラインの中間調処理に用いるパラメータを補正して、前記一の走査ラインと前記隣接ラインとの間の色の差の補正を行う補正手段と、を有する構成とすることができる。
【0009】
これにより、階調の特性を損なうことなく、異なる主走査ライン間における画像の特性差を解消する画像処理装置を提供することができる。
【0010】
なお、上記課題を解決するため、本発明は、上記画像処理装置を有する画像形成装置、又は、上記画像処理装置における画像処理方法としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像処理装置、画像形成装置、及び、画像処理方法によれば、階調の特性を損なうことなく、異なる主走査ライン間における画像の特性差を解消する画像処理装置、画像形成装置、及び、画像処理方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、画像形成装置の機構部の全体構成を説明する側面説明図である。
【図2】図2は、画像形成装置の機構部の平面説明図である。
【図3】図3は、液体吐出ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図である。
【図4】図4は、液体吐出ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
【図5】図5は、画像形成装置の制御部の概要を説明するブロック図である。
【図6】図6は、印刷制御部及びヘッドドライバの一例について説明する図である。
【図7】図7は、駆動波形生成部が生成する駆動パルスの波形を示す図である。
【図8】図8は、液滴の大きさ毎の駆動パルスを示す図である。
【図9】図9は、インクの粘度毎の駆動波形を示す図である。
【図10】図10は、画像処理装置とインクジェットプリンタとを含む画像形成システムを説明する図である。
【図11】図11は、画像処理装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【図12】図12は、画像処理部を概略的に示すブロック図である。
【図13】図13は、オーバーラップの例を示す図である。
【図14】図14は、繋ぎヘッドの例を示す図である。
【図15】図15は、ライン方式のインクジェットプリンタのヘッドユニットを示す図である。
【図16−1】図16−1は、誤差拡散処理について説明する図(その1)である。
【図16−2】図16−2は、誤差拡散処理について説明する図(その2)である。
【図16−3】図16−3は、誤差拡散処理について説明する図(その3)である。
【図17】図17は、明度で表されるヘッド特性差を量子化基準値に置き換えることを説明する図である。
【図18】図18は、繋ぎヘッドにおける特性差の補正処理を説明する図である。
【図19】図19は、ヘッド毎の量子化基準値を示す図である。
【図20】図20は、ヘッドの主走査ライン毎の色の情報を測定するためのパッチの例を示す図である。
【図21】図21は、1パス記録における特性差の補正処理を説明する図である。
【図22】図22は、本実施形態に係る画像処理装置の機能構成の例を示す図である。
【図23】図23は、本実施形態に係る画像処理方法を説明するフロー図である。
【図24】図24は、本実施形態に係る画像処理方法の一例を説明するフロー図である。
【図25】図25は、理想的なヘッドの出力特性の一例を示す図である。
【図26】図26は、繋ぎヘッドのノズル位置と記録する画像データの座標との関係を示した図である。
【図27】図27は、各ヘッドで記録する画素位置を塗り分けした図である。
【図28】図28は、ヘッドに一定の値が入力された場合の出力画像明度を画素位置単位で示した図である。
【図29】図29は、(4)式又は(5)式を適用して補正した量子化基準値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、以下の実施の形態において、ヘッドの「特性値」とは、吐出するインク滴量や、ドットの形成状態(単一のドットになるか、分裂してサテライトと呼ばれる意図しないドットを形成するか等)、ドットの着弾位置精度等を指す。これらにより、ヘッドから吐出されるインクにより表現される色の濃度、明度、彩度等の特性が決まる。したがって、特性値が異なると、同じインクを使用していても、出力される画像濃度に大きな差が現れ、色ムラとして認識されてしまう事になる。また、「特性差」とは、「特性値の差」をいう。
【0014】
また、ヘッドから吐出されるドットによって表現される濃度、明度、彩度等の特性の情報を「色の情報」という。
【0015】
〔本実施の形態〕
以下、本実施の形態を図面に基づき説明する。なお、本実施の形態では、画像形成装置として、インクジェットプリンタについて説明する。本実施の形態に係るインクジェットプリンタは、KCMYの4色のインクを吐出するヘッドを有し、これらのヘッドを記録用紙の搬送方向と直交する方向に往復動作させて画像記録を行う。
【0016】
図1ないし図6は、インクジェットプリンタである画像形成装置100について説明する図である。図1は、画像形成装置100の機構部の全体構成を説明する側面説明図であり、図2は、画像形成装置100の機構部の平面説明図である。
【0017】
画像形成装置100は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド1とガイドレール2とでキャリッジ3を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ4で駆動プーリ6Aと従動プーリ6Bとの間に張架したタイミングベルト5を介して図2で矢印A1及び矢印A2の方向(主走査方向)に移動走査する。
【0018】
このキャリッジ3には、例えば、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)のインク滴を吐出する液体吐出ヘッドを有する4個の記録ヘッド7y、7c、7m、7k(以下、色を区別しない場合は「記録ヘッド7」という。)を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0019】
記録ヘッド7を構成する液体吐出ヘッドは、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0020】
また、色毎に独立したヘッド構成に限るものではなく、複数の色の液滴を吐出する複数のノズルで構成されるノズル列を有する1又は複数の液体吐出ヘッドを有する構成でもよい。また、キャリッジ3には、記録ヘッド7に各色のインクを供給するための各色のサブタンク8を搭載している。このサブタンク8にはインク供給チューブ9を介して図示しないメインタンク(インクカートリッジ)からインクが補充供給される。
【0021】
一方、給紙カセット10などの用紙積載部(圧板)11上に積載した用紙12を給紙するための給紙部として、用紙積載部11から用紙12を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙ローラ)13及び給紙ローラ13に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド14を備え、この分離パッド14は給紙ローラ13側に付勢されている。
【0022】
そして、この給紙部から給紙された用紙12を記録ヘッド7の下方側で搬送するため、用紙12を静電吸着して搬送するための搬送ベルト21と、給紙部からガイド15を介して送られる用紙12を搬送ベルト21との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ22と、略鉛直上方に送られる用紙12を略90°方向転換させて搬送ベルト21上に倣わせるための搬送ガイド23と、押さえ部材24で搬送ベルト21側に付勢された押さえコロ25とを備えている。また、搬送ベルト21表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ26を備えている。
【0023】
ここで、搬送ベルト21は、無端状ベルトであり、搬送ローラ27とテンションローラ28との間に掛け渡されて、副走査モータ31からタイミングベルト32及びタイミングローラ33を介して搬送ローラ27が回転されることで、図2のベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。なお、搬送ベルト21の裏面側には記録ヘッド7による画像形成領域に対応してガイド部材29を配置している。また、帯電ローラ26は、搬送ベルト21の表層に接触し、搬送ベルト21の回動に従動して回転するように配置されている。
【0024】
また、図2に示すように、搬送ローラ27の軸には、スリット円板34を取り付け、このスリット円板34のスリットを検知するセンサ35を設けて、これらのスリット円板34及びセンサ35によってロータリエンコーダ36を構成している。
【0025】
さらに、記録ヘッド7で記録された用紙12を排紙するための排紙部として、搬送ベルト21から用紙12を分離するための分離爪51と、排紙ローラ52及び排紙コロ53と、排紙される用紙12をストックする排紙トレイ54とを備えている。
【0026】
また、背部には両面給紙ユニット55が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット55は搬送ベルト21の逆方向回転で戻される用紙12を取り込んで反転させて再度カウンタローラ22と搬送ベルト21との間に給紙する。
【0027】
さらに、図2に示すように、キャリッジ3の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド7のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構56を配置している。
【0028】
この維持回復機構56は、記録ヘッド7の各ノズル面をキャッピングするための各キャップ57と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード58と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け59などを備えている。
【0029】
このように構成した画像形成装置においては、給紙部から用紙12が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙12はガイド15で案内され、搬送ベルト21とカウンタローラ22との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド23で案内されて押さえコロ25で搬送ベルト21に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0030】
このとき、図示しない制御部によってACバイアス供給部から帯電ローラ26に対して正負が交互に繰り返す交番電圧を印加して、搬送ベルト21を交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが交互に所定の幅で繰り返されるパターンで帯電させる。この帯電した搬送ベルト21上に用紙12が給送されると、用紙12が搬送ベルト21に静電力で吸着され、搬送ベルト21の周回移動によって用紙12が副走査方向に搬送される。
【0031】
そこで、キャリッジ3を往路及び復路方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド7を駆動することにより、停止している用紙12にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙12を所定量搬送後、次の行の記録を行なう。記録終了信号又は用紙12の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙12を排紙トレイ54に排紙する。
【0032】
また、両面印刷の場合には、表面(最初に印刷する面)の記録が終了したときに、搬送ベルト21を逆回転させることで、記録済みの用紙12を両面給紙ユニット55内に送り込み、用紙12を反転させて(裏面が印刷面となる状態にして)再度カウンタローラ22と搬送ベルト21との間に給紙し、タイミング制御を行って、表面の記録と同様に搬送ベルト21上に搬送して裏面に記録を行った後、排紙トレイ54に排紙する。
【0033】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ3は維持回復機構56側に移動されて、キャップ57で記録ヘッド7のノズル面がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ57で記録ヘッド7をキャッピングした状態でノズルから記録液を吸引し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行い、この回復動作によって記録ヘッド7のノズル面に付着したインクを清掃除去するためにワイパーブレード58でワイピングを行なう。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行なう。これによって、記録ヘッド7の安定した吐出性能を維持する。
【0034】
図3及び図4は、記録ヘッド7を構成している液体吐出ヘッドの一例について説明する図である。図3は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図、図4は同ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
【0035】
この液体吐出ヘッドは、例えば単結晶シリコン基板を異方性エッチングして形成した流路板101と、この流路板101の下面に接合した例えばニッケル電鋳で形成した振動板102と、流路板101の上面に接合したノズル板103とを接合して積層し、これらによって液滴(インク滴)を吐出するノズル104が連通する流路であるノズル連通路105及び圧力発生室である液室106、液室106に流体抵抗部(供給路)107を通じてインクを供給するための共通液室108に連通するインク供給口109などを形成してい
る。
【0036】
また、振動板102を変形させて液室106内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての2列(図4では1列のみ図示)の積層型圧電素子121と、この圧電素子121を接合固定するベース基板122とを備えている。なお、圧電素子121の間には支柱部123を設けている。この支柱部123は圧電素子部材を分割加工することで圧電素子121と同時に形成した部分であるが、駆動電圧を印加しないので単なる支柱となる。
【0037】
また、圧電素子121には図示しない駆動回路(駆動IC)を搭載したFPCケーブル126を接続している。
【0038】
そして、振動板102の周縁部をフレーム部材130に接合し、このフレーム部材130には、圧電素子121及びベース基板122などで構成されるアクチュエータユニットを収納する貫通部131及び共通液室108となる凹部、この共通液室108に外部からインクを供給するためのインク供給穴132を形成している。このフレーム部材130は、例えばエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成している。
【0039】
ここで、流路板101は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路105、液室106となる凹部や穴部を形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。
【0040】
振動板102は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他、金属板や金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。この振動板102に圧電素子121及び支柱部123を接着剤接合し、更にフレーム部材130を接着剤接合している。
【0041】
ノズル板103は各液室106に対応して直径10〜30μmのノズル104を形成し、流路板101に接着剤接合している。このノズル板103は、金属部材からなるノズル形成部材の表面に所要の層を介して最表面に撥水層を形成したものである。
【0042】
圧電素子121は、圧電材料151と内部電極152とを交互に積層した積層型圧電素子(ここではPZT)である。この圧電素子121の交互に異なる端面に引き出された各内部電極152には個別電極153及び共通電極154が接続されている。なお、この実施形態では、圧電素子121の圧電方向としてd33方向の変位を用いて液室106内インクを加圧する構成としているが、圧電素子121の圧電方向としてd31方向の変位を用いて加圧液室106内インクを加圧する構成とすることもできる。また、1つのベース基板122に1列の圧電素子121が設けられる構造とすることもできる。
【0043】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば圧電素子121に印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子121が収縮し、振動板102が下降して液室106の容積が膨張することで、液室106内にインクが流入し、その後圧電素子121に印加する電圧を上げて圧電素子121を積層方向に伸長させ、振動板102をノズル104方向に変形させて液室106の容積/体積を収縮させることにより、液室106内の記録液が加圧され、ノズル104から記録液の滴が吐出(噴射)される。
【0044】
そして、圧電素子121に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室108から液室106内に記録液が充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0045】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0046】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図5のブロック図を参照して説明する。
【0047】
この制御部200は、この装置全体の制御を司るCPU201と、CPU201が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM202と、画像データ等を一時格納するRAM203と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ204と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行なう画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC205とを備えている。
【0048】
また、この制御部200は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行なうためのホストI/F206と、記録ヘッド7を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動波形を生成する駆動波形生成手段を含む印刷制御部207と、キャリッジ3側に設けた記録ヘッド7を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)208と、主走査モータ4及び副走査モータ31を駆動するためのモータ駆動部210と、帯電ローラ26にACバイアスを供給するACバイアス供給部212と、エンコーダセンサ43、35からの各検出信号、環境温度を検出する温度センサなどの各種センサからの検出信号を入力するためのI/O213などを備えている。また、この制御部200には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行なうための操作パネル214が接続されている。
【0049】
ここで、制御部200は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの画像データ等をケーブル或いはネットを介してホストI/F206で受信する。
【0050】
そして、制御部200のCPU201は、ホストI/F206に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC205にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行ない、この画像データを印刷制御部207からヘッドドライバ208に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は後述するようにホスト側のプリンタドライバで行なっている。
【0051】
印刷制御部207は、上述した画像データをシリアルデータでヘッドドライバ208に転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッドドライバ208に出力する以外にも、ROM202に格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバ208に与える駆動波形選択手段を含み、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッドドライバ208に対して出力する。
【0052】
ヘッドドライバ208は、シリアルに入力される記録ヘッド7の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部207から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に記録ヘッド7の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば前述したような圧電素子121)に対して印加することで記録ヘッド7を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0053】
また、CPU201は、リニアエンコーダを構成するエンコーダセンサ43からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて主走査モータ4に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介して主走査モータ4を駆動する。同様に、ロータリエンコーダを構成するエンコーダセンサ35からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて副走査モータ31に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介しモータドライバを介して副走査モータ31を駆動する。
【0054】
図6は、印刷制御部207及びヘッドドライバ208の一例について説明する図である。印刷制御部207は、上述したように、1印刷周期内に複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部301と、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M3を出力するデータ転送部302とを備えている。
【0055】
なお、滴制御信号は、ヘッドドライバ208の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ315の開閉を滴毎に指示する2ビットの信号であり、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべき波形でHレベル(オン)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(オフ)に状態遷移する。
【0056】
ヘッドドライバ208は、データ転送部302からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/CH)を入力するシフトレジスタ311と、シフトレジスタ311の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路312と、階調データと滴制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ313と、デコーダ313のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ315が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ314と、レベルシフタ314を介して与えられるデコーダ313の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ315とを備えている。
【0057】
このアナログスイッチ315は、各圧電素子121の共通電極154に接続され、駆動波形生成部301からの共通駆動波形が入力されている。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と滴制御信号M0〜M3をデコーダ313でデコードした結果に応じてアナログスイッチ315がオンにされることにより、共通駆動波形を構成する所要の駆動信号が通過して(選択されて)圧電素子121に印加される。
【0058】
次に、駆動波形の一例について図7及び図8を参照して説明する。図7は、駆動波形生成部301が生成する駆動パルスの波形である。駆動波形生成部301からは1印刷周期(1駆動周期)内に、基準電位Veから立ち下がる波形要素と、立下り後の状態から立ち上がる波形要素などで構成される、8個の駆動パルスP1ないしP8からなる駆動信号(駆動波形)を生成して出力する。一方、データ転送部302からの滴制御信号M0〜M3によって使用する駆動パルスを選択する。
【0059】
ここで、駆動パルスの電位Vが基準電位Veから立ち下がる波形要素は、これによって圧電素子121が収縮して液室106の容積が膨張する引き込み波形要素である。また、立下り後の状態から立ち上がる波形要素は、これによって圧電素子121が伸長して液室106の容積が収縮する加圧波形要素である。
【0060】
図8は、小滴(小ドット)、中滴(中ドット)、大滴(大ドット)、及び、微駆動のそれぞれの駆動パルスを示す図である。データ転送部302からの滴制御信号M0〜M3によって、小滴を形成するときには図8(a)に示すように駆動パルスP1を選択し、中滴を形成するときには図8(b)に示すように駆動パルスP4ないしP6を選択し、大滴を形成するときには図8(c)に示すように駆動パルスP2ないしP8を選択し、微駆動の(滴吐出を伴わないでメニスカスを振動させる)ときには図8(d)に示すように微駆動パルスである駆動パルスP2を選択して、それぞれ記録ヘッド7の圧電素子121に印加させるようにする。
【0061】
中滴を形成する場合、駆動パルスP4にて1滴目、駆動パルスP5にて2滴目、駆動パルスP6にて3滴目を吐出させ、飛翔中に合体させて一滴として着弾させる。このとき、圧力室(液室106)の固有振動周期をTcとすると、駆動パルスP4とP5の吐出タイミングの間隔は2Tc±0.5μsが好ましい。駆動パルスP4とP5は、単純引き打ち波形要素で構成されているため、駆動パルスP6も同様の単純引き打ち波形要素にするとインク滴速度が大きくなりすぎてしまい、他の滴種の着弾位置からずれてしまうおそれがある。そこで、駆動パルスP6は、引き込み電圧を小さくする(立下りの電位を少なくする)ことでメニスカスの引き込みを小さくし、3滴目のインク滴速度を抑えている。ただし、必要なインク滴体積をかせぐために立ち上げ電圧は小さくしない。
【0062】
つまり、複数の駆動パルスのうちの最終駆動パルスの引き込み波形要素では引き込み電圧を相対的に小さくすることによって、当該最終駆動パルスによる滴吐出速度を相対的に小さくして、着弾位置を他の滴種と極力合わせるようにすることができる。また、駆動パルスP2とは、ノズルのメニスカスの乾燥を防ぐため、インク滴を吐出させずにメニスカスを振動させる駆動波形である。非印字領域ではこの駆動パルスP2が記録ヘッド7に印加される。また、この微駆動波形である駆動パルスP2を、大滴を構成する駆動パルスの一つとして利用することにより、駆動周期の短縮化(高速化)を達成することができる。
【0063】
さらに、駆動パルスP2と駆動パルスP3の吐出タイミングの間隔を、固有振動周期Tc±0.5μsの範囲内に設定することにより、駆動パルスP3によって吐出するインク滴の体積をかせぐことができる。つまり、駆動パルスP2によって生じた振動周期によって液室106の圧力振動に駆動パルスP3による液室106の膨張を重畳させることによって駆動パルスP3で吐出できる滴の滴体積を駆動パルスP3単独で印加する場合よりも大きくすることができる。
【0064】
なお、インクの粘度によって必要な駆動波形が異なることから、この画像形成装置においては、図9に示すように、インク粘度が5mPa・sのときの駆動波形、同じく粘度が10mPa・sのときの駆動波形、同じく20mPa・sのときの駆動波形をそれぞれ用意し、温度センサからの検出温度からインク粘度を判定して、使用する駆動波形を選択するようにしている。
【0065】
つまり、インク粘度が小さいときは駆動パルスの電圧を相対的に小さく、インク粘度が大きいときは駆動パルスの電圧を相対的に大きくすることにより、インク粘度(温度)によらずインク滴の速度及び体積を略一定に吐出させることができる。また、駆動パルスP2は、インク粘度に合わせて波高値を選択することにより、インク滴を吐出させることなくメニスカスを振動させることができる。
【0066】
このような駆動パルスから構成される駆動波形を使用することによって、大中小の各滴が用紙12に着弾するまでの時間を制御することができ、吐出開始の時間が大中小の各滴で異なっても、各滴をほぼ同じ位置に着弾させることが可能となる。
【0067】
次に、本実施形態に係る画像処理方法を実行する画像処理装置及び画像形成装置についてについて以下に説明する。なお、本実施形態に係る画像処理方法は、例えば、コンピュータがプログラムを実行することにより実行されてもよい。
【0068】
図10は、画像処理装置と上述した画像形成装置であるインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)とで構成される画像形成システムの一例について説明する図である。
【0069】
この印刷システム(画像形成システム)は、パーソナルコンピュータ(PC)などからなる1又は複数台の画像処理装置400と、インクジェットプリンタ500とが、所定のインタフェース(外部I/F407、外部I/F507)又はネットワークで接続されて構成されている。画像処理装置400は、インクジェットプリンタ500のホストコンピュータである。
【0070】
画像処理装置400は、図11に示すように、CPU401と、メモリ手段である各種のROM402やRAM403とが、バスラインで接続されている。このバスラインには、所定のインタフェースを介して、ハードディスクなどの磁気記憶装置を用いた記憶装置406と、マウスやキーボードなどの入力装置404と、LCDやCRTなどのモニタ405と、図示しないが、光ディスクなどの記憶媒体を読み取る記憶媒体読取装置が接続され、また、インターネットなどのネットワークやUSBなどの外部機器と通信を行なう所定のインタフェース(外部I/F)407が接続されている。
【0071】
画像処理装置400の記憶装置406には、本実施の形態に係るプログラムを含む画像処理プログラムが記憶されている。この画像処理プログラムは、記憶媒体から記憶媒体読取装置により読み取って、あるいは、インターネットなどのネットワークからダウンロードするなどして、記憶装置406にインストールしたものである。このインストールにより画像処理装置400は、以下のような画像処理を行なうために動作可能な状態となる。なお、この画像処理プログラムは、所定のOS上で動作するものであってもよい。また、特定のアプリケーションソフトの一部をなすものであってもよい。
【0072】
なお、本実施の形態に係る画像処理方法はインクジェットプリンタ側で実施することもできるが、ここでは、インクジェット記録装置側では、装置内に画像の描画又は文字のプリント命令を受けて実際に記録するドットパターンを発生する機能を持たない例で説明する。すなわち、ホストとなる画像処理装置400で実行されるアプリケーションソフトなどからのプリント命令は、画像処理装置400内にソフトウェアとして組み込まれた本発明に係るプリンタドライバで画像処理されてインクジェットプリンタ500が出力可能な多値のドットパターンのデータ(印刷画像データ)が生成され、それがラスタライズされてインクジェットプリンタ500に転送され,インクジェットプリンタ500が印刷出力される例で説明する。
【0073】
具体的には、画像処理装置400内では、アプリケーションやオペレーティングシステムからの画像の描画又は文字の記録命令(例えば記録する線の位置と太さと形などを記述したものや、記録する文字の書体と大きさと位置などを記述したもの)は描画データメモリに一時的に保存される。なお、これらの命令は、特定のプリント言語で記述されたものである。
【0074】
そして、描画データメモリに記憶された命令は、ラスタライザによって解釈され、線の記録命令であれば、指定された位置や太さ等に応じた記録ドットパターンに変換され、また、文字の記録命令であれば画像処理装置400内に保存されているフォントアウトラインデータから対応する文字の輪郭情報を呼びだし指定された位置や大きさに応じた記録ドットパターンに変換され、イメージデータであれば、そのまま記録ドットのパターンに変換される。
【0075】
その後、これらの記録ドットパターン(画像データ)に対して画像処理を施してラスタデータメモリに記憶する。このとき、画像処理装置400は、直交格子を基本記録位置として、記録ドットパターンのデータにラスタライズする。画像処理としては、例えば色を調整するためのカラーマネージメント処理(CMM)やγ補正処理、ディザ法や誤差拡散法などの中間調処理、さらには下地除去処理、インク総量規制処理などがある。そして、ラスタデータメモリに記憶された記録ドットパターンがインタフェースを経由してインクジェットプリンタ500へ転送されるものである。
【0076】
本実施の形態における記録装置では、記録方法として記録媒体に対して1回の主走査で画像を形成する、いわゆる1パス印字を用いても良いし、記録媒体の同一領域に対して同一のノズル群あるいは異なるノズル群によって複数回の主走査を行い画像を形成する、いわゆるマルチパス印字を用いても良い。また、主走査方向にヘッドを並べて同一領域を異なるノズルで打ち分けても良い。これらの記録方法は適宜組み合わせて用いることができる。
【0077】
マルチパス印字について説明する。ここでは一つの記録領域に対して4回の主記録走査(4パス)を実行することによって画像を完成させる場合を例にとって説明する。
【0078】
図12は、この実施形態における画像処理部を概略的に示すブロック図である。図中、901は入力端子、902は記録バッファ、904はパス数設定部、905はマスク処理部、906はマスクパターンテーブル、907はヘッドI/F部、908は記録ヘッドを示している。
【0079】
入力端子901から入力されたビットマップデータは記録バッファ制御部により、記録バッファ902の所定のアドレスに格納される。記録バッファ902は1スキャンと紙送り量分のビットマップデータを格納できる容量を有し、FIFOメモリのような紙送り量単位のリングバッファを構成している。記録バッファ制御部は、記録バッファ902を制御し、1スキャン分のビットマップデータが記録バッファ902に格納されるとプリンタエンジンを起動し、記録ヘッド908の各ノズルの位置に応じて記録バッファ902よりビットマップデータを読み出し、パス数設定部904に入力する。また、入力端子901から次回のスキャンのビットマップデータが入力されると、記録バッファ902の空き領域(記録が完了した紙送り量に相当する領域)に格納するように記録バッファ902を制御する。
【0080】
次に、画像処理部におけるパス数設定部904のより具体的構成例を説明する。パス数設定部904では分割パス数を決定し、そのパス数をマスク処理部905へ出力する。マスクパターンテーブル906では予め格納されているマスクパターンテーブル、例えば、1パス記録、2パス記録、4パス記録、8パス記録のマスクパターンから、必要なマスクパターンを決定された分割パス数に応じて選択し、マスク処理部905に出力する。マスク処理部905は記録バッファ902に格納されているビットマップデータをマスクパターンを用いて各パス記録毎にマスクしてヘッドドライバに出力すると、ヘッドドライバではそのマスクされたビットマップデータを記録ヘッド908が用いる順に並び替え、記録ヘッド908に転送する。
【0081】
このようにマルチパス印字を用いることで、1パス印字では目立つバンディングを平均化して目立たなくすることができる。
【0082】
しかし、マルチパス印字は必然的に画像を完成させるのに多くのスキャンが必要になるため、画像品質は高いものの、その生産性は低い。そこで、特に1パス印字を行う際に画像品質を向上させる手段としてオーバーラップ処理技術がある。
【0083】
オーバーラップ処理技術はスキャンあるいはヘッドの繋ぎ目において、端部のノズルを重複させて画像形成することで、特にバンディングが問題となるこの繋ぎ目の色ムラをぼかす手法であり、種々の方式が提案されている。
【0084】
以下にオーバーラップ処理の例について示す。なお、上述したようなシリアルプリンタではスキャンの繋ぎ目でオーバーラップ処理を適用する場合の例になるが、後述するように複数ヘッドを繋ぐタイプの画像形成装置におけるヘッド繋ぎ部についても基本原理は同じため、以下説明では特に断らない限りはこれらを区別せずヘッドの繋ぎ目と標記する。(スキャンのオーバーラップについてはヘッドをスキャンに置き換えて考えればよい。)ヘッド繋ぎ部を有する画像形成装置については、後ほど記載する。
【0085】
図13は、オーバーラップの例を示す図である。図13(a)は、オーバーラップ部分のドットを千鳥パターンなどで重複ノズルに割り振って形成した例、図13(b)は、ランダムに割り振った例、図13(c)や(d)は、ヘッド端部に向かってドットの記録率が少なくなるように打ち分けた例である。
【0086】
オーバーラップ処理とは異なるインクジェットプリンタとして、繋ぎヘッドを有するシリアル方式のインクジェットプリンタがある。図14は、繋ぎヘッドの例を示す図である。図14のようにヘッドをノズル列方向に繋ぐことによって長尺化したインクジェットヘッドユニットを、用紙搬送方向と直交方向に移動して画像形成する。
【0087】
印刷速度を向上するためには、1スキャンあたりの印字領域を増やすことが有効であるが、ヘッド単体の長さを長尺化するには技術的難易度が高く、量産を考える場合、1つでもノズル不良が生じるとそのヘッドは、不良品となってしまうため歩留まりが悪くなるなどの課題がある。
【0088】
そのため、短いヘッドを繋ぎ合わせることで、ヘッドユニットの長尺化を行うことが有効となる。この際には、スキャンの繋ぎ目以外にヘッドの繋ぎ部においてもスキャンの場合と同じく、ヘッドの組み付け精度や個々のヘッドの特性差等によるバンディングの発生が課題となる。
【0089】
よって、このヘッド繋ぎ目においてもオーバーラップ処理を施すことで、バンディングの軽減を行うことが有効になる。このような装置はスキャン繋ぎ部とヘッド繋ぎ部の両方繋ぎ箇所が存在するが、それぞれ処理を変えてもよいし、同じ処理としてもよい。
【0090】
図15は、ライン方式のインクジェットプリンタのヘッドユニットを示す図である。ライン方式は、図15のようにほぼ用紙幅に達するヘッドユニットを有し、ヘッド長尺方向と直交方向に用紙搬送して画像形成を行う。この装置は、1回の通紙動作で用紙幅全域に画像形成できるため、非常に生産性が高い。
【0091】
しかし、この装置を実現する場合、先の繋ぎヘッドの実施例同様、複数のヘッドを繋ぎ合わせることで長尺なヘッドユニットを実現することが多いため、個々のヘッドの特性差や、組み付け等の位置精度によるバンディングの発生が重要課題となる。また、ヘッドを固定配置して画像形成することから基本的に1パス作像となるため、マルチパスモードを品質重視の上位モードとして持たせるようなことが困難という問題もある。
【0092】
よって、このような装置に関しても、バンディング改善技術として、ヘッド繋ぎ部のオーバーラップ処理が重要な意味を持つ。
【0093】
ただし、オーバーラップ処理は、重ね合わせのノズル数分、実質的に有効ノズル数が減る計算になる。オーバーラップ量が多いほど、重ね合わせのパターンをより複雑なものにする事ができ、繋ぎ部分の不連続性をより自然に目に付かなくする事が可能になるが、有効使用ノズル数が減るため、1パス記録方法では1走査当たりの記録面積が減り、スループットが低減してしまう。ライン方式では、一個当たりのヘッドサイズが小さくなるのと同義であり、より多くのヘッドが必要となるため、コストが嵩むといった問題が有るため、実際には、あまりオーバーラップ量を取る事ができない。
【0094】
更に、組み合わせるヘッド同士、或いは、1パス記録方式の場合はヘッド内の特性差が大きい場合、このオーバーラップ処理だけでは、特性差を完全に解消する事はできない。
【0095】
先に述べたオーバーラップ処理は、基本的に繋ぎ部分の不連続性を改善する技術であるため、色差ΔE<2.0程度の色ムラに対しては、ある程度目立たなくさせる効果を示すが、それ以上の色差に対しては、僅かなオーバーラップ領域ではムラを吸収できなくなってくる。
【0096】
そこで本発明では、オーバーラップ処理に加えて、オーバーラップ領域を含むより広い領域に補正処理を施す事で、ヘッドの特性差を吸収するものである。
【0097】
具体的な補正方法は、ヘッドの特性差に応じて誤差拡散処理のパラメータを切り換える事で出力するドットの密度を調整する。多段階のドットサイズや濃度の異なるドットを使用可能なインクジェット記録装置の場合は、ドットの組合せと密度を調整する事になる。
【0098】
図16−1ないし図16−3は、誤差拡散処理について説明する図である。誤差拡散処理は、例えば、画像データのラスタ順に、画素毎の処理を行う。誤差拡散処理は、着目画素の階調値と閾値とを比較して、所定の画素位置にドット形成の有無を決定する。その後、その閾値と階調値との誤差を、次以降の画素位置におけるドット形成の有無の判定に用いる。
【0099】
図16−1は、誤差拡散処理により、ドット形成の有無が決定された画素位置と、未だ処理されない画素の階調値とを示す図である。図16−1において、黒丸が、誤差拡散処理により、ドット形成を行うと判定された画素位置、波線の丸が、誤差拡散処理により、ドット形成を行わないと判定された画素位置である。また、数値は、それぞれの画素位置における、未だ誤差拡散処理されない画素の階調値である。
【0100】
図16−2は、誤差拡散処理により、発生した誤差を示す図である。図16−2において、exyは、誤差拡散処理により発生した閾値との誤差であり、*は、処理対象となる着目画素である。
【0101】
図16−3は、誤差ウェイトマトリクスm1を示す図である。誤差ウェイトマトリクスm1は、図16−2における*の画素位置に対する相対位置に、ウェイト値が付されている。マトリクス全体に1/48を乗じることにより、誤差ウェイトマトリクスm1は、正規化されている。
【0102】
次式(1)は、画素位置*に対する補正画素値を求める式である。式(1)では、画素位置*の階調値221と、図16−2に示す誤差exyに、誤差ウェイトマトリクスm1に示すウェイト値を乗じた数と、から、補正画素値を得る。
【数1】
【0103】
次式(2)は、画素位置*におけるドット形成の有無を決定する式である。
【数2】
式(2)において、式(1)で算出した補正画素値と、閾値とを比較する。補正画素値が閾値より大きければ、画素位置*においてドット形成を行うとし、この画素位置における誤差exyは、(補正画素値−255)の値とする。一方、補正画素値が閾値以下の場合は、画素位置*において、ドット形成は行わず、この画素位置における補正画素値を誤差exyとする。
【0104】
本実施の形態では、この量子化基準値をヘッドの特性差に基づいて切り換える事で、色ムラの補正を行う。この方法を用いれば、着目画素の誤差値に補正効果を直接適用する事ができるため、オーバーラップ処理を適用した繋ぎ部においても、それぞれのヘッドに応じた補正効果が得られる。閾値を切り換える方式では、参照する周辺画素の誤差値にも均等に補正がかかってしまうため、本来なら補正しなくて良い方のヘッドで担当する画素の誤差値にも補正がかかり、効果が弱くなってしまう。
【0105】
図17、図18で、ヘッド特性差を量子化基準値に置き換える方法について説明する。図17では、特性差を明度で示しているが、濃度、或いは彩度の何れの特性差でもかまわない。色ムラの程度を比較でき、且つ測定機で計測可能な特性であれば良い。ヘッドAは、理想に対して濃く出過ぎるヘッドであり、ヘッドBは淡くなるヘッドである。
【0106】
このヘッドA、Bを繋ぎ合わせると極端な色ムラが発生する。図18は、このイメージを示す図であるが、そのまま繋げた場合はもちろん、オーバーラップ処理を適用しても、ヘッドそのものが持つ色差はごまかしようもない。しかし、オーバーラップ領域(y3〜y4)よりもより広い区間(y1〜y2)で徐々に特性差が入れ替わるように補正をかける事で、色ムラを目立たなくする事が可能となる。
【0107】
そこで、量子化基準値を使ったこの補正方法について説明する。
【0108】
まず、それぞれのヘッドの補正区間(ヘッドAならy1〜y4。ヘッドBならy3〜y2)における量子化基準値を算出する。後述するようにヘッド内にも特性差は存在するが、個々のヘッドで特性を平均化して考えるならば、ヘッドの中央をそれぞれy1、y2として良い。ヘッド内の特性差をより厳密に見る場合は、平均的に濃い方のヘッドのMAXポイントと、平均的に淡い方のヘッドのMINポイントをy1、y2としても良い。
【0109】
量子化基準値と特性値(L)が線形な特性にあれば、量子化基準値を、単純な一次式から求める事ができる。特に明度特性については、量子化基準値に対して明度リニアに設計されるのが一般であるため、計算し易い。
【0110】
量子化基準値を、次式(3)で表すと、ヘッドA及びヘッドBの量子化基準値は、以下の通りとなる。
量子化基準値 = a*L+b (a,bは定数) ・・・(3)
ヘッドAの量子化基準値 = a*LA+b・・・図17では300
ヘッドBの量子化基準値 = a*LB+b・・・図17では200
【0111】
図19は、ヘッド毎の量子化基準値を示す図である。図19に示したように、ヘッドAで記録される画素については、y1〜y4の区間でy4に向かうにしたがって、理想の量子化基準値からヘッドAの量子化基準値になるように徐々に増加させていけば良い。ヘッドBはその逆で、y3〜y2に向かうにしたがってヘッドBの量子化基準値から理想の量子化基準値となるように徐々に増加させて行けばよい。
【0112】
量子化基準値の増加は、ドットを発生させないマイナスの誤差値の増加に繋がるため、図19の補正では、ヘッドAについてはドットの発生密度が低下して明度が高くなる。また、ヘッドBについては、理想値よりも低い位置からスタートとなるので、過剰にドットが発生し易い状況から適正な状況へと変化し、こちらも徐々に明度が高くなっていく。最終的にヘッドA,Bの明度変化が一致して、色ムラが目立たなくなる。
【0113】
なお、図17ないし図19では、ヘッドAの方が濃く出る特性の例について説明したが、逆の場合は、図19の量子化基準値のグラフが、左右反転する。
【0114】
また、y3〜y4のオーバーラップ処理領域では、図13のように、それぞれのヘッドで記録される画素が混在する。オーバーラップパターン自体は、予め(a)〜(d)のような所定のパターンが規定されているため、画素位置の座標(x、y)でどちらのヘッドで記録されるかは判断が付く。つまり、ヘッド特性(L)と画素位置(x、y)で、量子化基準値を関数f(L,x,y)にて規定する事ができる。
【0115】
次式(4)は、ヘッドAの量子化基準値であり、次式(5)は、ヘッドBの量子化基準値である。
【数3】
上記式では特性値として明度を想定しているが、濃度や彩度に置き換えてもよい。
【0116】
図20は、オーバーラップ処理領域を含む、ヘッドの主走査ライン毎の色の情報を測定するためのパッチの例を示す図である。図20の縦方向が、主走査方向である。図20において、ヘッドAないしヘッドDの4個のヘッドから、それぞれ1個のパッチが出力される。各パッチの副走査方向における、オーバーラップ処理領域と、その他の領域と、から、それぞれ濃度、明度、又は、彩度等を測定する。図中では、各パッチにおいて、(1)から(3)で表記される位置が、測定位置である。なお、測定位置は、オーバーラップ処理領域に1箇所以上あればよい。
【0117】
なお、色の情報の取得は、印刷されたチャートを、操作者が測定機器等で測定した後、その値を、入力してもよい。色の情報の取得は、また、画像形成装置が有する測定機器により測定したものを、補正に用いてもよい。
【0118】
図21は、1パス記録におけるヘッド内の特性差と本実施の形態による改善効果を示した図である。繋ぎヘッドと同様に、改行部を境に色ムラが発生するが、1パス記録の場合は、一つのヘッド内の特性差によるため、場合によっては、補正領域を狭くする必要がある。
【0119】
ただし、あまりに変動の周期が短い場合は、単純にヘッドを上下で2分割し、特性値を平均化して量子化基準値を算出しても良い(量子化基準値も平均化した特性値を元に算出し、ヘッド上部の量子化基準値、ヘッド下部の量子化基準値として算出する)。
【0120】
なお、繋ぎヘッドではヘッド毎の補正切り換えであったものが、1パス記録の場合は、ヘッドの上下部で切り替わる形となる。
【0121】
ヘッドの特性差の測定と量子化基準値の算出は、実際に画像処理を行う際にリアルタイムで計算する必要はなく、事前に実施する事が可能である。また、画素記録位置と補正する量子化基準値は一対一で対応するため、予め算出結果を記録バッファに取り込んでおき、実際の画像処理の際に読み出すようにしても良い。
【0122】
図22は、本実施形態に係る画像処理装置の機能構成の例を示す図である。画像処理装置800は、色情報取得手段810、補正手段811、及び、画像形成手段812を有する。色情報取得手段810は、例えば、スキャナ等によって読み込まれた階調パッチの色の情報を取得する。色情報取得手段810は、また、階調パッチが、搬送ベルト等に形成されている場合には、搬送ベルトの搬送路上に設けられたセンサが取得した信号から、色の情報を取得する。色情報取得手段810が取得する色の情報は、例えば、図20に示す、ヘッドの主走査ライン毎に設けられるパッチにおいて、副走査方向の複数の位置から取得される。
【0123】
補正手段811は、色情報取得手段810が取得した色の情報から、一のパッチのオーバーラップ処理領域における色の情報と、副走査方向においてそのパッチに隣接するパッチのオーバーラップ処理領域における色の情報と、に基づいて、色の補正を行う。色の補正は、例えば、図19に示す、量子化基準値の補正処理である。
【0124】
画像形成手段812は、補正手段811により補正された色の情報を用いて、媒体上に画像を形成して出力する。画像形成手段812は、また、ヘッド毎に出力する色を補正するためのパッチを用紙上、又は、搬送ベルト上に形成する。
【0125】
階調パッチ809は、例えば、図20に示す、ヘッド毎に出力されたパッチを含む。
【0126】
なお、色情報取得手段810は、例えば、図5のCPU201等によって実現され、図示しないスキャナ又はセンサ等から入力される信号を処理して、色の情報を取得する。また、補正手段811は、例えば、図5のCPU201等によって実現され、ROM202等に格納されるγ補正テーブルを生成する。
【0127】
図23は、本実施形態に係る画像処理方法を説明するフロー図である。図23では、主走査方向の走査ライン毎に、異なるヘッドの特性により形成される色を補正して、画像が形成される。
【0128】
図23のステップS101では、色情報取得手段810が、主走査方向の走査ライン毎の色の情報を取得する。ステップS101に続いてステップS102に進み、補正手段811が、隣接する走査ライン間の特性差を補正する。ステップS102に続いてステップS103に進み、画像形成手段812が、特性を補正された色により、画像を形成して出力する。
【0129】
次に、本実施形態に係る画像処理方法の詳細についてさらに説明する。図24は、本実施形態に係る画像処理方法の一例を説明するフロー図である。
【0130】
まず、画像形成手段812は、各ヘッド(ヘッドユニット)の色の情報を測定するためのテストパターンを出力する(ステップS201)。テストパターンは、例えば、図20に示すようなパッチを用いることができる。出力されたテストパターンから、測定機などを用いて各ヘッドの特性(濃度、明度、彩度等)が測定される(ステップS202)。画像処理装置800は、理想のヘッドでの階調と特性値との関係を元に、上記式(3)により各ヘッドユニットの量子化基準値を算出する(ステップS203)。
【0131】
なお、上述のように、特性差の測定と量子化基準値の算出(ステップS201〜ステップS203)は、画像処理を行う際にリアルタイムで計算する必要はなく、事前に実施するように構成してもよい。
【0132】
次に、色情報取得手段810が、出力画像データを入力(取得)する(ステップS204)。具体的には、色情報取得手段810は、主走査方向の走査ライン毎の色の情報を取得する。次に、各ヘッドのノズルがオーバーラップ部分に相当する画素位置では、補正手段811が、いずれのヘッドで記録するのかを画素の座標により判定する(ステップS205)。次に、補正手段811は、上記式(4)又は式(5)により、記録するヘッドとして判定されたヘッドの量子化基準値を補正する(ステップS206)。なお、オーバーラップ領域(y3〜y4)よりも広い領域(y1〜y2)以外の領域の画素位置では、補正手段811は量子化基準値の補正を行わない。
【0133】
画像形成手段812は、補正された量子化基準値を用いて色ムラを補正した画像を形成して出力する(ステップS207)。
【0134】
次に、上記(4)式及び(5)式の関数f(L,x,y)を用いることによる効果の一例について説明する。図25は、理想的なヘッドの出力特性の一例を示す図である。図25は、入力階調値と出力明度との対応を示している。図25の例の場合は、明度と階調値との関係は、以下の式(6)に示す線形式で近似できる。
明度=−0.2745×階調値+90 ・・・(6)
【0135】
この近似式の関係を前提として、量子化基準値を補正する場合について説明する。例えば、明度50の出力画像を得たいのに、明度が40になるヘッド、すなわち、濃く出力されるヘッドでは、誤差拡散処理における量子化基準値を255から291に変更する。量子化基準値が大きいほど、上述の式(2)で計算される着目画素の誤差exyはマイナス値を取りやすくなる。このため、周辺画素の量子化計算で参照される際、ドット形成を抑制する要素となる。
【0136】
逆に、例えば、明度50の出力画像を得たいのに、明度が60になるヘッド、すなわち、薄く出力されるヘッドでは、量子化基準値を255から219に変更する。これにより、着目画素の誤差exyはプラスの値を取りやすくなり、周辺画素の量子化計算で参照される際、ドット形成を助長する要素となる。
【0137】
本実施形態では、この量子化基準値の切替効果をよりスムーズに反映させるために、図19のようにオーバーラップ部位の座標(オーバーラップさせたいずれのヘッドに近いか)によって量子化基準値が可変となるようにしている。
【0138】
次に、オーバーラップ部分で補正される量子化基準値の具体例について、図26〜図29を用いて説明する。図26は、繋ぎヘッドのノズル位置と記録する画像データの座標との関係を示した図である。図26では、画像データのy座標位置が52から54の部分で、ヘッドBとヘッドCとがオーバーラップし、画像データのy座標位置が96から98の部分で、ヘッドCとヘッドDとがオーバーラップする例が示されている。
【0139】
図27は、各ヘッドで記録する画素位置を塗り分けした図である。オーバーラップ部分は、ヘッドBとヘッドC、又は、ヘッドCとヘッドDで図のように打ち分けが行われる。点線の丸で囲った部分がオーバーラップ部分を表す。画素2701、画素2702、及び、画素2703は、それぞれヘッドD、ヘッドC及びヘッドBのノズルで記録する画素を表す。
【0140】
なお、図27では、説明を簡略化するため、それぞれのヘッドで打ち分ける画素数が常に一定になっているが、図13のように、いずれかのヘッドに近づくにつれて打ち分けるノズル数が変動するようにした方がより効果的である。
【0141】
図28は、図26に示すようなヘッドに一定の値(図28の例では、146の階調値)が入力された場合の出力画像明度を画素位置単位で示した図である。図28は、同じ入力値でもヘッドBは濃い目(明度=40)に、ヘッドDは薄目(明度=60)に出力される例を示している。
【0142】
図29は、上記(4)式又は(5)式を適用して補正した量子化基準値の一例を示す図である。図29は、各画素位置における量子化基準値がどのように変化するかを示している。ヘッドCは、元々理想的な出力特性を持っていたので、量子化基準値は255から変化しない。ヘッドBは濃すぎるので、量子化基準値は255より大きい値に補正される。また、ヘッドDは薄すぎるので、量子化基準値は255より小さい値に補正される。なお、量子化基準値は、y1〜y2に相当する区間のみで補正され、y1より右側やy2より左側の部位では補正されない。ヘッド全体に補正をかけると、濃度は一定に揃っても、階調数の減少や中間調パターンの変化が目に付きやすくなるためである。
【0143】
本実施の形態は、誤差拡散処理を前提としているが、記録システムによっては、ディザ処理を適用できる場合がある。ディザ処理は、誤差拡散処理よりも高速に量子化処理が可能なため、例えば、ヘッドの特性差がない、あるいは、特性差があってもかまわず、より高速性が求められる場合等に、ディザ処理に切り換えて使用しても良い。この判断自体は、記録システムに内蔵された測定機により自動的に判定しても良いし、出力されたテスト記録チャート等を見てオペレータが判断しても良い。
【0144】
更に、これまでインクジェット記録を前提に説明を行ってきたが、インクジェット同様に記録ヘッドを走査、或いは繋ぎ合わせてライン状に配置でき、且つドットで画像を表現する記録方法、例えば、感熱ヘッドを用いた熱転写記録等にも、本発明は適用可能である。
【0145】
以上、発明を実施するための最良の形態について説明を行ったが、本発明は、この最良の形態で述べた実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を損なわない範囲で変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0146】
以上のように、本発明にかかる画像処理装置は、複数の記録ヘッドを有するプリンタに有用であり、特に、インクジェットプリンタに適している。
【符号の説明】
【0147】
800 画像処理装置
809 階調パッチ
810 色情報取得手段
811 補正手段
812 画像形成手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0148】
【特許文献1】特開2005−219508号公報
【特許文献2】特開2004−326613号公報
【特許文献3】特開2003−189103号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像形成装置、及び、画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のヘッドユニットを繋いで用紙幅分を1度の走査で記録するラインインクジェット記録装置、又は、1つのヘッドがヘッド幅分を1度の走査で記録する1パス印刷モードにより画像を形成するシリアルインクジェット記録装置において、ヘッドの噴射特性のばらつきが、画像のムラとなる劣化が発生することがある。
【0003】
そこで、特開2005−219508号公報(特許文献1)には、主走査ラインにオーバーラップを持たせるプリンタの発明が開示されている。しかしながら、オーバーラップ量が僅かな場合には、完全に特性差を目立たなくすることができない。一方、オーバーラップ量を増やすと、ヘッドの使用効率が落ち、印刷速度が低下する。
【0004】
そこで、特開2004−326613号公報(特許文献2)には、ヘッドの駆動波形を切り替えてバンディングを軽減する画像処理方法が開示されている。また、特開2003−189103号公報(特許文献3)には、中間調画像に、面内の濃度むらを補正する信号を重畳することにより、濃度むらが補正された画像を生成する画像形成装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示の発明を、ヘッドの特性のばらつきを解消するために用いると、様々な駆動波形が必要となる。また、一のヘッド内で液滴の大きさや形状の変化が生じることもあるため、事前に全ての駆動波形を用意しておくことは、困難である。
【0006】
また、上記特許文献2に開示の発明は、階調値を変更するため、ヘッドの特性のばらつきを解消するために特許文献2に記載の発明を用いると、階調値の変更によりドット配置パターンが切り替わり、色ではなく、パターンの変化としての不連続性が目立つ。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みて、これらの問題を解消するために発明されたものであり、階調の特性を損なうことなく、異なる主走査ライン間における画像の特性差を解消する画像処理装置、画像形成装置、及び、画像処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の画像処理装置は次の如き構成を採用した。本発明の画像処理装置は、ヘッド毎の主走査方向の走査ライン毎における色の情報を取得する色情報取得手段と、取得された前記色の情報に基づいて、主走査方向の一の走査ラインの中間調処理に用いるパラメータ、及び、前記一の走査ラインに隣接する隣接ラインの中間調処理に用いるパラメータを補正して、前記一の走査ラインと前記隣接ラインとの間の色の差の補正を行う補正手段と、を有する構成とすることができる。
【0009】
これにより、階調の特性を損なうことなく、異なる主走査ライン間における画像の特性差を解消する画像処理装置を提供することができる。
【0010】
なお、上記課題を解決するため、本発明は、上記画像処理装置を有する画像形成装置、又は、上記画像処理装置における画像処理方法としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像処理装置、画像形成装置、及び、画像処理方法によれば、階調の特性を損なうことなく、異なる主走査ライン間における画像の特性差を解消する画像処理装置、画像形成装置、及び、画像処理方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、画像形成装置の機構部の全体構成を説明する側面説明図である。
【図2】図2は、画像形成装置の機構部の平面説明図である。
【図3】図3は、液体吐出ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図である。
【図4】図4は、液体吐出ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
【図5】図5は、画像形成装置の制御部の概要を説明するブロック図である。
【図6】図6は、印刷制御部及びヘッドドライバの一例について説明する図である。
【図7】図7は、駆動波形生成部が生成する駆動パルスの波形を示す図である。
【図8】図8は、液滴の大きさ毎の駆動パルスを示す図である。
【図9】図9は、インクの粘度毎の駆動波形を示す図である。
【図10】図10は、画像処理装置とインクジェットプリンタとを含む画像形成システムを説明する図である。
【図11】図11は、画像処理装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【図12】図12は、画像処理部を概略的に示すブロック図である。
【図13】図13は、オーバーラップの例を示す図である。
【図14】図14は、繋ぎヘッドの例を示す図である。
【図15】図15は、ライン方式のインクジェットプリンタのヘッドユニットを示す図である。
【図16−1】図16−1は、誤差拡散処理について説明する図(その1)である。
【図16−2】図16−2は、誤差拡散処理について説明する図(その2)である。
【図16−3】図16−3は、誤差拡散処理について説明する図(その3)である。
【図17】図17は、明度で表されるヘッド特性差を量子化基準値に置き換えることを説明する図である。
【図18】図18は、繋ぎヘッドにおける特性差の補正処理を説明する図である。
【図19】図19は、ヘッド毎の量子化基準値を示す図である。
【図20】図20は、ヘッドの主走査ライン毎の色の情報を測定するためのパッチの例を示す図である。
【図21】図21は、1パス記録における特性差の補正処理を説明する図である。
【図22】図22は、本実施形態に係る画像処理装置の機能構成の例を示す図である。
【図23】図23は、本実施形態に係る画像処理方法を説明するフロー図である。
【図24】図24は、本実施形態に係る画像処理方法の一例を説明するフロー図である。
【図25】図25は、理想的なヘッドの出力特性の一例を示す図である。
【図26】図26は、繋ぎヘッドのノズル位置と記録する画像データの座標との関係を示した図である。
【図27】図27は、各ヘッドで記録する画素位置を塗り分けした図である。
【図28】図28は、ヘッドに一定の値が入力された場合の出力画像明度を画素位置単位で示した図である。
【図29】図29は、(4)式又は(5)式を適用して補正した量子化基準値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、以下の実施の形態において、ヘッドの「特性値」とは、吐出するインク滴量や、ドットの形成状態(単一のドットになるか、分裂してサテライトと呼ばれる意図しないドットを形成するか等)、ドットの着弾位置精度等を指す。これらにより、ヘッドから吐出されるインクにより表現される色の濃度、明度、彩度等の特性が決まる。したがって、特性値が異なると、同じインクを使用していても、出力される画像濃度に大きな差が現れ、色ムラとして認識されてしまう事になる。また、「特性差」とは、「特性値の差」をいう。
【0014】
また、ヘッドから吐出されるドットによって表現される濃度、明度、彩度等の特性の情報を「色の情報」という。
【0015】
〔本実施の形態〕
以下、本実施の形態を図面に基づき説明する。なお、本実施の形態では、画像形成装置として、インクジェットプリンタについて説明する。本実施の形態に係るインクジェットプリンタは、KCMYの4色のインクを吐出するヘッドを有し、これらのヘッドを記録用紙の搬送方向と直交する方向に往復動作させて画像記録を行う。
【0016】
図1ないし図6は、インクジェットプリンタである画像形成装置100について説明する図である。図1は、画像形成装置100の機構部の全体構成を説明する側面説明図であり、図2は、画像形成装置100の機構部の平面説明図である。
【0017】
画像形成装置100は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド1とガイドレール2とでキャリッジ3を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ4で駆動プーリ6Aと従動プーリ6Bとの間に張架したタイミングベルト5を介して図2で矢印A1及び矢印A2の方向(主走査方向)に移動走査する。
【0018】
このキャリッジ3には、例えば、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)のインク滴を吐出する液体吐出ヘッドを有する4個の記録ヘッド7y、7c、7m、7k(以下、色を区別しない場合は「記録ヘッド7」という。)を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0019】
記録ヘッド7を構成する液体吐出ヘッドは、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0020】
また、色毎に独立したヘッド構成に限るものではなく、複数の色の液滴を吐出する複数のノズルで構成されるノズル列を有する1又は複数の液体吐出ヘッドを有する構成でもよい。また、キャリッジ3には、記録ヘッド7に各色のインクを供給するための各色のサブタンク8を搭載している。このサブタンク8にはインク供給チューブ9を介して図示しないメインタンク(インクカートリッジ)からインクが補充供給される。
【0021】
一方、給紙カセット10などの用紙積載部(圧板)11上に積載した用紙12を給紙するための給紙部として、用紙積載部11から用紙12を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙ローラ)13及び給紙ローラ13に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド14を備え、この分離パッド14は給紙ローラ13側に付勢されている。
【0022】
そして、この給紙部から給紙された用紙12を記録ヘッド7の下方側で搬送するため、用紙12を静電吸着して搬送するための搬送ベルト21と、給紙部からガイド15を介して送られる用紙12を搬送ベルト21との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ22と、略鉛直上方に送られる用紙12を略90°方向転換させて搬送ベルト21上に倣わせるための搬送ガイド23と、押さえ部材24で搬送ベルト21側に付勢された押さえコロ25とを備えている。また、搬送ベルト21表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ26を備えている。
【0023】
ここで、搬送ベルト21は、無端状ベルトであり、搬送ローラ27とテンションローラ28との間に掛け渡されて、副走査モータ31からタイミングベルト32及びタイミングローラ33を介して搬送ローラ27が回転されることで、図2のベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。なお、搬送ベルト21の裏面側には記録ヘッド7による画像形成領域に対応してガイド部材29を配置している。また、帯電ローラ26は、搬送ベルト21の表層に接触し、搬送ベルト21の回動に従動して回転するように配置されている。
【0024】
また、図2に示すように、搬送ローラ27の軸には、スリット円板34を取り付け、このスリット円板34のスリットを検知するセンサ35を設けて、これらのスリット円板34及びセンサ35によってロータリエンコーダ36を構成している。
【0025】
さらに、記録ヘッド7で記録された用紙12を排紙するための排紙部として、搬送ベルト21から用紙12を分離するための分離爪51と、排紙ローラ52及び排紙コロ53と、排紙される用紙12をストックする排紙トレイ54とを備えている。
【0026】
また、背部には両面給紙ユニット55が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット55は搬送ベルト21の逆方向回転で戻される用紙12を取り込んで反転させて再度カウンタローラ22と搬送ベルト21との間に給紙する。
【0027】
さらに、図2に示すように、キャリッジ3の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド7のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構56を配置している。
【0028】
この維持回復機構56は、記録ヘッド7の各ノズル面をキャッピングするための各キャップ57と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード58と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け59などを備えている。
【0029】
このように構成した画像形成装置においては、給紙部から用紙12が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙12はガイド15で案内され、搬送ベルト21とカウンタローラ22との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド23で案内されて押さえコロ25で搬送ベルト21に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0030】
このとき、図示しない制御部によってACバイアス供給部から帯電ローラ26に対して正負が交互に繰り返す交番電圧を印加して、搬送ベルト21を交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが交互に所定の幅で繰り返されるパターンで帯電させる。この帯電した搬送ベルト21上に用紙12が給送されると、用紙12が搬送ベルト21に静電力で吸着され、搬送ベルト21の周回移動によって用紙12が副走査方向に搬送される。
【0031】
そこで、キャリッジ3を往路及び復路方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド7を駆動することにより、停止している用紙12にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙12を所定量搬送後、次の行の記録を行なう。記録終了信号又は用紙12の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙12を排紙トレイ54に排紙する。
【0032】
また、両面印刷の場合には、表面(最初に印刷する面)の記録が終了したときに、搬送ベルト21を逆回転させることで、記録済みの用紙12を両面給紙ユニット55内に送り込み、用紙12を反転させて(裏面が印刷面となる状態にして)再度カウンタローラ22と搬送ベルト21との間に給紙し、タイミング制御を行って、表面の記録と同様に搬送ベルト21上に搬送して裏面に記録を行った後、排紙トレイ54に排紙する。
【0033】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ3は維持回復機構56側に移動されて、キャップ57で記録ヘッド7のノズル面がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ57で記録ヘッド7をキャッピングした状態でノズルから記録液を吸引し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行い、この回復動作によって記録ヘッド7のノズル面に付着したインクを清掃除去するためにワイパーブレード58でワイピングを行なう。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行なう。これによって、記録ヘッド7の安定した吐出性能を維持する。
【0034】
図3及び図4は、記録ヘッド7を構成している液体吐出ヘッドの一例について説明する図である。図3は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図、図4は同ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
【0035】
この液体吐出ヘッドは、例えば単結晶シリコン基板を異方性エッチングして形成した流路板101と、この流路板101の下面に接合した例えばニッケル電鋳で形成した振動板102と、流路板101の上面に接合したノズル板103とを接合して積層し、これらによって液滴(インク滴)を吐出するノズル104が連通する流路であるノズル連通路105及び圧力発生室である液室106、液室106に流体抵抗部(供給路)107を通じてインクを供給するための共通液室108に連通するインク供給口109などを形成してい
る。
【0036】
また、振動板102を変形させて液室106内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての2列(図4では1列のみ図示)の積層型圧電素子121と、この圧電素子121を接合固定するベース基板122とを備えている。なお、圧電素子121の間には支柱部123を設けている。この支柱部123は圧電素子部材を分割加工することで圧電素子121と同時に形成した部分であるが、駆動電圧を印加しないので単なる支柱となる。
【0037】
また、圧電素子121には図示しない駆動回路(駆動IC)を搭載したFPCケーブル126を接続している。
【0038】
そして、振動板102の周縁部をフレーム部材130に接合し、このフレーム部材130には、圧電素子121及びベース基板122などで構成されるアクチュエータユニットを収納する貫通部131及び共通液室108となる凹部、この共通液室108に外部からインクを供給するためのインク供給穴132を形成している。このフレーム部材130は、例えばエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成している。
【0039】
ここで、流路板101は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路105、液室106となる凹部や穴部を形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。
【0040】
振動板102は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他、金属板や金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。この振動板102に圧電素子121及び支柱部123を接着剤接合し、更にフレーム部材130を接着剤接合している。
【0041】
ノズル板103は各液室106に対応して直径10〜30μmのノズル104を形成し、流路板101に接着剤接合している。このノズル板103は、金属部材からなるノズル形成部材の表面に所要の層を介して最表面に撥水層を形成したものである。
【0042】
圧電素子121は、圧電材料151と内部電極152とを交互に積層した積層型圧電素子(ここではPZT)である。この圧電素子121の交互に異なる端面に引き出された各内部電極152には個別電極153及び共通電極154が接続されている。なお、この実施形態では、圧電素子121の圧電方向としてd33方向の変位を用いて液室106内インクを加圧する構成としているが、圧電素子121の圧電方向としてd31方向の変位を用いて加圧液室106内インクを加圧する構成とすることもできる。また、1つのベース基板122に1列の圧電素子121が設けられる構造とすることもできる。
【0043】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば圧電素子121に印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子121が収縮し、振動板102が下降して液室106の容積が膨張することで、液室106内にインクが流入し、その後圧電素子121に印加する電圧を上げて圧電素子121を積層方向に伸長させ、振動板102をノズル104方向に変形させて液室106の容積/体積を収縮させることにより、液室106内の記録液が加圧され、ノズル104から記録液の滴が吐出(噴射)される。
【0044】
そして、圧電素子121に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室108から液室106内に記録液が充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0045】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0046】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図5のブロック図を参照して説明する。
【0047】
この制御部200は、この装置全体の制御を司るCPU201と、CPU201が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM202と、画像データ等を一時格納するRAM203と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ204と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行なう画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC205とを備えている。
【0048】
また、この制御部200は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行なうためのホストI/F206と、記録ヘッド7を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動波形を生成する駆動波形生成手段を含む印刷制御部207と、キャリッジ3側に設けた記録ヘッド7を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)208と、主走査モータ4及び副走査モータ31を駆動するためのモータ駆動部210と、帯電ローラ26にACバイアスを供給するACバイアス供給部212と、エンコーダセンサ43、35からの各検出信号、環境温度を検出する温度センサなどの各種センサからの検出信号を入力するためのI/O213などを備えている。また、この制御部200には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行なうための操作パネル214が接続されている。
【0049】
ここで、制御部200は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの画像データ等をケーブル或いはネットを介してホストI/F206で受信する。
【0050】
そして、制御部200のCPU201は、ホストI/F206に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC205にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行ない、この画像データを印刷制御部207からヘッドドライバ208に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は後述するようにホスト側のプリンタドライバで行なっている。
【0051】
印刷制御部207は、上述した画像データをシリアルデータでヘッドドライバ208に転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッドドライバ208に出力する以外にも、ROM202に格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバ208に与える駆動波形選択手段を含み、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッドドライバ208に対して出力する。
【0052】
ヘッドドライバ208は、シリアルに入力される記録ヘッド7の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部207から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に記録ヘッド7の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば前述したような圧電素子121)に対して印加することで記録ヘッド7を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0053】
また、CPU201は、リニアエンコーダを構成するエンコーダセンサ43からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて主走査モータ4に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介して主走査モータ4を駆動する。同様に、ロータリエンコーダを構成するエンコーダセンサ35からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて副走査モータ31に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介しモータドライバを介して副走査モータ31を駆動する。
【0054】
図6は、印刷制御部207及びヘッドドライバ208の一例について説明する図である。印刷制御部207は、上述したように、1印刷周期内に複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部301と、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M3を出力するデータ転送部302とを備えている。
【0055】
なお、滴制御信号は、ヘッドドライバ208の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ315の開閉を滴毎に指示する2ビットの信号であり、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべき波形でHレベル(オン)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(オフ)に状態遷移する。
【0056】
ヘッドドライバ208は、データ転送部302からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/CH)を入力するシフトレジスタ311と、シフトレジスタ311の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路312と、階調データと滴制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ313と、デコーダ313のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ315が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ314と、レベルシフタ314を介して与えられるデコーダ313の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ315とを備えている。
【0057】
このアナログスイッチ315は、各圧電素子121の共通電極154に接続され、駆動波形生成部301からの共通駆動波形が入力されている。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と滴制御信号M0〜M3をデコーダ313でデコードした結果に応じてアナログスイッチ315がオンにされることにより、共通駆動波形を構成する所要の駆動信号が通過して(選択されて)圧電素子121に印加される。
【0058】
次に、駆動波形の一例について図7及び図8を参照して説明する。図7は、駆動波形生成部301が生成する駆動パルスの波形である。駆動波形生成部301からは1印刷周期(1駆動周期)内に、基準電位Veから立ち下がる波形要素と、立下り後の状態から立ち上がる波形要素などで構成される、8個の駆動パルスP1ないしP8からなる駆動信号(駆動波形)を生成して出力する。一方、データ転送部302からの滴制御信号M0〜M3によって使用する駆動パルスを選択する。
【0059】
ここで、駆動パルスの電位Vが基準電位Veから立ち下がる波形要素は、これによって圧電素子121が収縮して液室106の容積が膨張する引き込み波形要素である。また、立下り後の状態から立ち上がる波形要素は、これによって圧電素子121が伸長して液室106の容積が収縮する加圧波形要素である。
【0060】
図8は、小滴(小ドット)、中滴(中ドット)、大滴(大ドット)、及び、微駆動のそれぞれの駆動パルスを示す図である。データ転送部302からの滴制御信号M0〜M3によって、小滴を形成するときには図8(a)に示すように駆動パルスP1を選択し、中滴を形成するときには図8(b)に示すように駆動パルスP4ないしP6を選択し、大滴を形成するときには図8(c)に示すように駆動パルスP2ないしP8を選択し、微駆動の(滴吐出を伴わないでメニスカスを振動させる)ときには図8(d)に示すように微駆動パルスである駆動パルスP2を選択して、それぞれ記録ヘッド7の圧電素子121に印加させるようにする。
【0061】
中滴を形成する場合、駆動パルスP4にて1滴目、駆動パルスP5にて2滴目、駆動パルスP6にて3滴目を吐出させ、飛翔中に合体させて一滴として着弾させる。このとき、圧力室(液室106)の固有振動周期をTcとすると、駆動パルスP4とP5の吐出タイミングの間隔は2Tc±0.5μsが好ましい。駆動パルスP4とP5は、単純引き打ち波形要素で構成されているため、駆動パルスP6も同様の単純引き打ち波形要素にするとインク滴速度が大きくなりすぎてしまい、他の滴種の着弾位置からずれてしまうおそれがある。そこで、駆動パルスP6は、引き込み電圧を小さくする(立下りの電位を少なくする)ことでメニスカスの引き込みを小さくし、3滴目のインク滴速度を抑えている。ただし、必要なインク滴体積をかせぐために立ち上げ電圧は小さくしない。
【0062】
つまり、複数の駆動パルスのうちの最終駆動パルスの引き込み波形要素では引き込み電圧を相対的に小さくすることによって、当該最終駆動パルスによる滴吐出速度を相対的に小さくして、着弾位置を他の滴種と極力合わせるようにすることができる。また、駆動パルスP2とは、ノズルのメニスカスの乾燥を防ぐため、インク滴を吐出させずにメニスカスを振動させる駆動波形である。非印字領域ではこの駆動パルスP2が記録ヘッド7に印加される。また、この微駆動波形である駆動パルスP2を、大滴を構成する駆動パルスの一つとして利用することにより、駆動周期の短縮化(高速化)を達成することができる。
【0063】
さらに、駆動パルスP2と駆動パルスP3の吐出タイミングの間隔を、固有振動周期Tc±0.5μsの範囲内に設定することにより、駆動パルスP3によって吐出するインク滴の体積をかせぐことができる。つまり、駆動パルスP2によって生じた振動周期によって液室106の圧力振動に駆動パルスP3による液室106の膨張を重畳させることによって駆動パルスP3で吐出できる滴の滴体積を駆動パルスP3単独で印加する場合よりも大きくすることができる。
【0064】
なお、インクの粘度によって必要な駆動波形が異なることから、この画像形成装置においては、図9に示すように、インク粘度が5mPa・sのときの駆動波形、同じく粘度が10mPa・sのときの駆動波形、同じく20mPa・sのときの駆動波形をそれぞれ用意し、温度センサからの検出温度からインク粘度を判定して、使用する駆動波形を選択するようにしている。
【0065】
つまり、インク粘度が小さいときは駆動パルスの電圧を相対的に小さく、インク粘度が大きいときは駆動パルスの電圧を相対的に大きくすることにより、インク粘度(温度)によらずインク滴の速度及び体積を略一定に吐出させることができる。また、駆動パルスP2は、インク粘度に合わせて波高値を選択することにより、インク滴を吐出させることなくメニスカスを振動させることができる。
【0066】
このような駆動パルスから構成される駆動波形を使用することによって、大中小の各滴が用紙12に着弾するまでの時間を制御することができ、吐出開始の時間が大中小の各滴で異なっても、各滴をほぼ同じ位置に着弾させることが可能となる。
【0067】
次に、本実施形態に係る画像処理方法を実行する画像処理装置及び画像形成装置についてについて以下に説明する。なお、本実施形態に係る画像処理方法は、例えば、コンピュータがプログラムを実行することにより実行されてもよい。
【0068】
図10は、画像処理装置と上述した画像形成装置であるインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)とで構成される画像形成システムの一例について説明する図である。
【0069】
この印刷システム(画像形成システム)は、パーソナルコンピュータ(PC)などからなる1又は複数台の画像処理装置400と、インクジェットプリンタ500とが、所定のインタフェース(外部I/F407、外部I/F507)又はネットワークで接続されて構成されている。画像処理装置400は、インクジェットプリンタ500のホストコンピュータである。
【0070】
画像処理装置400は、図11に示すように、CPU401と、メモリ手段である各種のROM402やRAM403とが、バスラインで接続されている。このバスラインには、所定のインタフェースを介して、ハードディスクなどの磁気記憶装置を用いた記憶装置406と、マウスやキーボードなどの入力装置404と、LCDやCRTなどのモニタ405と、図示しないが、光ディスクなどの記憶媒体を読み取る記憶媒体読取装置が接続され、また、インターネットなどのネットワークやUSBなどの外部機器と通信を行なう所定のインタフェース(外部I/F)407が接続されている。
【0071】
画像処理装置400の記憶装置406には、本実施の形態に係るプログラムを含む画像処理プログラムが記憶されている。この画像処理プログラムは、記憶媒体から記憶媒体読取装置により読み取って、あるいは、インターネットなどのネットワークからダウンロードするなどして、記憶装置406にインストールしたものである。このインストールにより画像処理装置400は、以下のような画像処理を行なうために動作可能な状態となる。なお、この画像処理プログラムは、所定のOS上で動作するものであってもよい。また、特定のアプリケーションソフトの一部をなすものであってもよい。
【0072】
なお、本実施の形態に係る画像処理方法はインクジェットプリンタ側で実施することもできるが、ここでは、インクジェット記録装置側では、装置内に画像の描画又は文字のプリント命令を受けて実際に記録するドットパターンを発生する機能を持たない例で説明する。すなわち、ホストとなる画像処理装置400で実行されるアプリケーションソフトなどからのプリント命令は、画像処理装置400内にソフトウェアとして組み込まれた本発明に係るプリンタドライバで画像処理されてインクジェットプリンタ500が出力可能な多値のドットパターンのデータ(印刷画像データ)が生成され、それがラスタライズされてインクジェットプリンタ500に転送され,インクジェットプリンタ500が印刷出力される例で説明する。
【0073】
具体的には、画像処理装置400内では、アプリケーションやオペレーティングシステムからの画像の描画又は文字の記録命令(例えば記録する線の位置と太さと形などを記述したものや、記録する文字の書体と大きさと位置などを記述したもの)は描画データメモリに一時的に保存される。なお、これらの命令は、特定のプリント言語で記述されたものである。
【0074】
そして、描画データメモリに記憶された命令は、ラスタライザによって解釈され、線の記録命令であれば、指定された位置や太さ等に応じた記録ドットパターンに変換され、また、文字の記録命令であれば画像処理装置400内に保存されているフォントアウトラインデータから対応する文字の輪郭情報を呼びだし指定された位置や大きさに応じた記録ドットパターンに変換され、イメージデータであれば、そのまま記録ドットのパターンに変換される。
【0075】
その後、これらの記録ドットパターン(画像データ)に対して画像処理を施してラスタデータメモリに記憶する。このとき、画像処理装置400は、直交格子を基本記録位置として、記録ドットパターンのデータにラスタライズする。画像処理としては、例えば色を調整するためのカラーマネージメント処理(CMM)やγ補正処理、ディザ法や誤差拡散法などの中間調処理、さらには下地除去処理、インク総量規制処理などがある。そして、ラスタデータメモリに記憶された記録ドットパターンがインタフェースを経由してインクジェットプリンタ500へ転送されるものである。
【0076】
本実施の形態における記録装置では、記録方法として記録媒体に対して1回の主走査で画像を形成する、いわゆる1パス印字を用いても良いし、記録媒体の同一領域に対して同一のノズル群あるいは異なるノズル群によって複数回の主走査を行い画像を形成する、いわゆるマルチパス印字を用いても良い。また、主走査方向にヘッドを並べて同一領域を異なるノズルで打ち分けても良い。これらの記録方法は適宜組み合わせて用いることができる。
【0077】
マルチパス印字について説明する。ここでは一つの記録領域に対して4回の主記録走査(4パス)を実行することによって画像を完成させる場合を例にとって説明する。
【0078】
図12は、この実施形態における画像処理部を概略的に示すブロック図である。図中、901は入力端子、902は記録バッファ、904はパス数設定部、905はマスク処理部、906はマスクパターンテーブル、907はヘッドI/F部、908は記録ヘッドを示している。
【0079】
入力端子901から入力されたビットマップデータは記録バッファ制御部により、記録バッファ902の所定のアドレスに格納される。記録バッファ902は1スキャンと紙送り量分のビットマップデータを格納できる容量を有し、FIFOメモリのような紙送り量単位のリングバッファを構成している。記録バッファ制御部は、記録バッファ902を制御し、1スキャン分のビットマップデータが記録バッファ902に格納されるとプリンタエンジンを起動し、記録ヘッド908の各ノズルの位置に応じて記録バッファ902よりビットマップデータを読み出し、パス数設定部904に入力する。また、入力端子901から次回のスキャンのビットマップデータが入力されると、記録バッファ902の空き領域(記録が完了した紙送り量に相当する領域)に格納するように記録バッファ902を制御する。
【0080】
次に、画像処理部におけるパス数設定部904のより具体的構成例を説明する。パス数設定部904では分割パス数を決定し、そのパス数をマスク処理部905へ出力する。マスクパターンテーブル906では予め格納されているマスクパターンテーブル、例えば、1パス記録、2パス記録、4パス記録、8パス記録のマスクパターンから、必要なマスクパターンを決定された分割パス数に応じて選択し、マスク処理部905に出力する。マスク処理部905は記録バッファ902に格納されているビットマップデータをマスクパターンを用いて各パス記録毎にマスクしてヘッドドライバに出力すると、ヘッドドライバではそのマスクされたビットマップデータを記録ヘッド908が用いる順に並び替え、記録ヘッド908に転送する。
【0081】
このようにマルチパス印字を用いることで、1パス印字では目立つバンディングを平均化して目立たなくすることができる。
【0082】
しかし、マルチパス印字は必然的に画像を完成させるのに多くのスキャンが必要になるため、画像品質は高いものの、その生産性は低い。そこで、特に1パス印字を行う際に画像品質を向上させる手段としてオーバーラップ処理技術がある。
【0083】
オーバーラップ処理技術はスキャンあるいはヘッドの繋ぎ目において、端部のノズルを重複させて画像形成することで、特にバンディングが問題となるこの繋ぎ目の色ムラをぼかす手法であり、種々の方式が提案されている。
【0084】
以下にオーバーラップ処理の例について示す。なお、上述したようなシリアルプリンタではスキャンの繋ぎ目でオーバーラップ処理を適用する場合の例になるが、後述するように複数ヘッドを繋ぐタイプの画像形成装置におけるヘッド繋ぎ部についても基本原理は同じため、以下説明では特に断らない限りはこれらを区別せずヘッドの繋ぎ目と標記する。(スキャンのオーバーラップについてはヘッドをスキャンに置き換えて考えればよい。)ヘッド繋ぎ部を有する画像形成装置については、後ほど記載する。
【0085】
図13は、オーバーラップの例を示す図である。図13(a)は、オーバーラップ部分のドットを千鳥パターンなどで重複ノズルに割り振って形成した例、図13(b)は、ランダムに割り振った例、図13(c)や(d)は、ヘッド端部に向かってドットの記録率が少なくなるように打ち分けた例である。
【0086】
オーバーラップ処理とは異なるインクジェットプリンタとして、繋ぎヘッドを有するシリアル方式のインクジェットプリンタがある。図14は、繋ぎヘッドの例を示す図である。図14のようにヘッドをノズル列方向に繋ぐことによって長尺化したインクジェットヘッドユニットを、用紙搬送方向と直交方向に移動して画像形成する。
【0087】
印刷速度を向上するためには、1スキャンあたりの印字領域を増やすことが有効であるが、ヘッド単体の長さを長尺化するには技術的難易度が高く、量産を考える場合、1つでもノズル不良が生じるとそのヘッドは、不良品となってしまうため歩留まりが悪くなるなどの課題がある。
【0088】
そのため、短いヘッドを繋ぎ合わせることで、ヘッドユニットの長尺化を行うことが有効となる。この際には、スキャンの繋ぎ目以外にヘッドの繋ぎ部においてもスキャンの場合と同じく、ヘッドの組み付け精度や個々のヘッドの特性差等によるバンディングの発生が課題となる。
【0089】
よって、このヘッド繋ぎ目においてもオーバーラップ処理を施すことで、バンディングの軽減を行うことが有効になる。このような装置はスキャン繋ぎ部とヘッド繋ぎ部の両方繋ぎ箇所が存在するが、それぞれ処理を変えてもよいし、同じ処理としてもよい。
【0090】
図15は、ライン方式のインクジェットプリンタのヘッドユニットを示す図である。ライン方式は、図15のようにほぼ用紙幅に達するヘッドユニットを有し、ヘッド長尺方向と直交方向に用紙搬送して画像形成を行う。この装置は、1回の通紙動作で用紙幅全域に画像形成できるため、非常に生産性が高い。
【0091】
しかし、この装置を実現する場合、先の繋ぎヘッドの実施例同様、複数のヘッドを繋ぎ合わせることで長尺なヘッドユニットを実現することが多いため、個々のヘッドの特性差や、組み付け等の位置精度によるバンディングの発生が重要課題となる。また、ヘッドを固定配置して画像形成することから基本的に1パス作像となるため、マルチパスモードを品質重視の上位モードとして持たせるようなことが困難という問題もある。
【0092】
よって、このような装置に関しても、バンディング改善技術として、ヘッド繋ぎ部のオーバーラップ処理が重要な意味を持つ。
【0093】
ただし、オーバーラップ処理は、重ね合わせのノズル数分、実質的に有効ノズル数が減る計算になる。オーバーラップ量が多いほど、重ね合わせのパターンをより複雑なものにする事ができ、繋ぎ部分の不連続性をより自然に目に付かなくする事が可能になるが、有効使用ノズル数が減るため、1パス記録方法では1走査当たりの記録面積が減り、スループットが低減してしまう。ライン方式では、一個当たりのヘッドサイズが小さくなるのと同義であり、より多くのヘッドが必要となるため、コストが嵩むといった問題が有るため、実際には、あまりオーバーラップ量を取る事ができない。
【0094】
更に、組み合わせるヘッド同士、或いは、1パス記録方式の場合はヘッド内の特性差が大きい場合、このオーバーラップ処理だけでは、特性差を完全に解消する事はできない。
【0095】
先に述べたオーバーラップ処理は、基本的に繋ぎ部分の不連続性を改善する技術であるため、色差ΔE<2.0程度の色ムラに対しては、ある程度目立たなくさせる効果を示すが、それ以上の色差に対しては、僅かなオーバーラップ領域ではムラを吸収できなくなってくる。
【0096】
そこで本発明では、オーバーラップ処理に加えて、オーバーラップ領域を含むより広い領域に補正処理を施す事で、ヘッドの特性差を吸収するものである。
【0097】
具体的な補正方法は、ヘッドの特性差に応じて誤差拡散処理のパラメータを切り換える事で出力するドットの密度を調整する。多段階のドットサイズや濃度の異なるドットを使用可能なインクジェット記録装置の場合は、ドットの組合せと密度を調整する事になる。
【0098】
図16−1ないし図16−3は、誤差拡散処理について説明する図である。誤差拡散処理は、例えば、画像データのラスタ順に、画素毎の処理を行う。誤差拡散処理は、着目画素の階調値と閾値とを比較して、所定の画素位置にドット形成の有無を決定する。その後、その閾値と階調値との誤差を、次以降の画素位置におけるドット形成の有無の判定に用いる。
【0099】
図16−1は、誤差拡散処理により、ドット形成の有無が決定された画素位置と、未だ処理されない画素の階調値とを示す図である。図16−1において、黒丸が、誤差拡散処理により、ドット形成を行うと判定された画素位置、波線の丸が、誤差拡散処理により、ドット形成を行わないと判定された画素位置である。また、数値は、それぞれの画素位置における、未だ誤差拡散処理されない画素の階調値である。
【0100】
図16−2は、誤差拡散処理により、発生した誤差を示す図である。図16−2において、exyは、誤差拡散処理により発生した閾値との誤差であり、*は、処理対象となる着目画素である。
【0101】
図16−3は、誤差ウェイトマトリクスm1を示す図である。誤差ウェイトマトリクスm1は、図16−2における*の画素位置に対する相対位置に、ウェイト値が付されている。マトリクス全体に1/48を乗じることにより、誤差ウェイトマトリクスm1は、正規化されている。
【0102】
次式(1)は、画素位置*に対する補正画素値を求める式である。式(1)では、画素位置*の階調値221と、図16−2に示す誤差exyに、誤差ウェイトマトリクスm1に示すウェイト値を乗じた数と、から、補正画素値を得る。
【数1】
【0103】
次式(2)は、画素位置*におけるドット形成の有無を決定する式である。
【数2】
式(2)において、式(1)で算出した補正画素値と、閾値とを比較する。補正画素値が閾値より大きければ、画素位置*においてドット形成を行うとし、この画素位置における誤差exyは、(補正画素値−255)の値とする。一方、補正画素値が閾値以下の場合は、画素位置*において、ドット形成は行わず、この画素位置における補正画素値を誤差exyとする。
【0104】
本実施の形態では、この量子化基準値をヘッドの特性差に基づいて切り換える事で、色ムラの補正を行う。この方法を用いれば、着目画素の誤差値に補正効果を直接適用する事ができるため、オーバーラップ処理を適用した繋ぎ部においても、それぞれのヘッドに応じた補正効果が得られる。閾値を切り換える方式では、参照する周辺画素の誤差値にも均等に補正がかかってしまうため、本来なら補正しなくて良い方のヘッドで担当する画素の誤差値にも補正がかかり、効果が弱くなってしまう。
【0105】
図17、図18で、ヘッド特性差を量子化基準値に置き換える方法について説明する。図17では、特性差を明度で示しているが、濃度、或いは彩度の何れの特性差でもかまわない。色ムラの程度を比較でき、且つ測定機で計測可能な特性であれば良い。ヘッドAは、理想に対して濃く出過ぎるヘッドであり、ヘッドBは淡くなるヘッドである。
【0106】
このヘッドA、Bを繋ぎ合わせると極端な色ムラが発生する。図18は、このイメージを示す図であるが、そのまま繋げた場合はもちろん、オーバーラップ処理を適用しても、ヘッドそのものが持つ色差はごまかしようもない。しかし、オーバーラップ領域(y3〜y4)よりもより広い区間(y1〜y2)で徐々に特性差が入れ替わるように補正をかける事で、色ムラを目立たなくする事が可能となる。
【0107】
そこで、量子化基準値を使ったこの補正方法について説明する。
【0108】
まず、それぞれのヘッドの補正区間(ヘッドAならy1〜y4。ヘッドBならy3〜y2)における量子化基準値を算出する。後述するようにヘッド内にも特性差は存在するが、個々のヘッドで特性を平均化して考えるならば、ヘッドの中央をそれぞれy1、y2として良い。ヘッド内の特性差をより厳密に見る場合は、平均的に濃い方のヘッドのMAXポイントと、平均的に淡い方のヘッドのMINポイントをy1、y2としても良い。
【0109】
量子化基準値と特性値(L)が線形な特性にあれば、量子化基準値を、単純な一次式から求める事ができる。特に明度特性については、量子化基準値に対して明度リニアに設計されるのが一般であるため、計算し易い。
【0110】
量子化基準値を、次式(3)で表すと、ヘッドA及びヘッドBの量子化基準値は、以下の通りとなる。
量子化基準値 = a*L+b (a,bは定数) ・・・(3)
ヘッドAの量子化基準値 = a*LA+b・・・図17では300
ヘッドBの量子化基準値 = a*LB+b・・・図17では200
【0111】
図19は、ヘッド毎の量子化基準値を示す図である。図19に示したように、ヘッドAで記録される画素については、y1〜y4の区間でy4に向かうにしたがって、理想の量子化基準値からヘッドAの量子化基準値になるように徐々に増加させていけば良い。ヘッドBはその逆で、y3〜y2に向かうにしたがってヘッドBの量子化基準値から理想の量子化基準値となるように徐々に増加させて行けばよい。
【0112】
量子化基準値の増加は、ドットを発生させないマイナスの誤差値の増加に繋がるため、図19の補正では、ヘッドAについてはドットの発生密度が低下して明度が高くなる。また、ヘッドBについては、理想値よりも低い位置からスタートとなるので、過剰にドットが発生し易い状況から適正な状況へと変化し、こちらも徐々に明度が高くなっていく。最終的にヘッドA,Bの明度変化が一致して、色ムラが目立たなくなる。
【0113】
なお、図17ないし図19では、ヘッドAの方が濃く出る特性の例について説明したが、逆の場合は、図19の量子化基準値のグラフが、左右反転する。
【0114】
また、y3〜y4のオーバーラップ処理領域では、図13のように、それぞれのヘッドで記録される画素が混在する。オーバーラップパターン自体は、予め(a)〜(d)のような所定のパターンが規定されているため、画素位置の座標(x、y)でどちらのヘッドで記録されるかは判断が付く。つまり、ヘッド特性(L)と画素位置(x、y)で、量子化基準値を関数f(L,x,y)にて規定する事ができる。
【0115】
次式(4)は、ヘッドAの量子化基準値であり、次式(5)は、ヘッドBの量子化基準値である。
【数3】
上記式では特性値として明度を想定しているが、濃度や彩度に置き換えてもよい。
【0116】
図20は、オーバーラップ処理領域を含む、ヘッドの主走査ライン毎の色の情報を測定するためのパッチの例を示す図である。図20の縦方向が、主走査方向である。図20において、ヘッドAないしヘッドDの4個のヘッドから、それぞれ1個のパッチが出力される。各パッチの副走査方向における、オーバーラップ処理領域と、その他の領域と、から、それぞれ濃度、明度、又は、彩度等を測定する。図中では、各パッチにおいて、(1)から(3)で表記される位置が、測定位置である。なお、測定位置は、オーバーラップ処理領域に1箇所以上あればよい。
【0117】
なお、色の情報の取得は、印刷されたチャートを、操作者が測定機器等で測定した後、その値を、入力してもよい。色の情報の取得は、また、画像形成装置が有する測定機器により測定したものを、補正に用いてもよい。
【0118】
図21は、1パス記録におけるヘッド内の特性差と本実施の形態による改善効果を示した図である。繋ぎヘッドと同様に、改行部を境に色ムラが発生するが、1パス記録の場合は、一つのヘッド内の特性差によるため、場合によっては、補正領域を狭くする必要がある。
【0119】
ただし、あまりに変動の周期が短い場合は、単純にヘッドを上下で2分割し、特性値を平均化して量子化基準値を算出しても良い(量子化基準値も平均化した特性値を元に算出し、ヘッド上部の量子化基準値、ヘッド下部の量子化基準値として算出する)。
【0120】
なお、繋ぎヘッドではヘッド毎の補正切り換えであったものが、1パス記録の場合は、ヘッドの上下部で切り替わる形となる。
【0121】
ヘッドの特性差の測定と量子化基準値の算出は、実際に画像処理を行う際にリアルタイムで計算する必要はなく、事前に実施する事が可能である。また、画素記録位置と補正する量子化基準値は一対一で対応するため、予め算出結果を記録バッファに取り込んでおき、実際の画像処理の際に読み出すようにしても良い。
【0122】
図22は、本実施形態に係る画像処理装置の機能構成の例を示す図である。画像処理装置800は、色情報取得手段810、補正手段811、及び、画像形成手段812を有する。色情報取得手段810は、例えば、スキャナ等によって読み込まれた階調パッチの色の情報を取得する。色情報取得手段810は、また、階調パッチが、搬送ベルト等に形成されている場合には、搬送ベルトの搬送路上に設けられたセンサが取得した信号から、色の情報を取得する。色情報取得手段810が取得する色の情報は、例えば、図20に示す、ヘッドの主走査ライン毎に設けられるパッチにおいて、副走査方向の複数の位置から取得される。
【0123】
補正手段811は、色情報取得手段810が取得した色の情報から、一のパッチのオーバーラップ処理領域における色の情報と、副走査方向においてそのパッチに隣接するパッチのオーバーラップ処理領域における色の情報と、に基づいて、色の補正を行う。色の補正は、例えば、図19に示す、量子化基準値の補正処理である。
【0124】
画像形成手段812は、補正手段811により補正された色の情報を用いて、媒体上に画像を形成して出力する。画像形成手段812は、また、ヘッド毎に出力する色を補正するためのパッチを用紙上、又は、搬送ベルト上に形成する。
【0125】
階調パッチ809は、例えば、図20に示す、ヘッド毎に出力されたパッチを含む。
【0126】
なお、色情報取得手段810は、例えば、図5のCPU201等によって実現され、図示しないスキャナ又はセンサ等から入力される信号を処理して、色の情報を取得する。また、補正手段811は、例えば、図5のCPU201等によって実現され、ROM202等に格納されるγ補正テーブルを生成する。
【0127】
図23は、本実施形態に係る画像処理方法を説明するフロー図である。図23では、主走査方向の走査ライン毎に、異なるヘッドの特性により形成される色を補正して、画像が形成される。
【0128】
図23のステップS101では、色情報取得手段810が、主走査方向の走査ライン毎の色の情報を取得する。ステップS101に続いてステップS102に進み、補正手段811が、隣接する走査ライン間の特性差を補正する。ステップS102に続いてステップS103に進み、画像形成手段812が、特性を補正された色により、画像を形成して出力する。
【0129】
次に、本実施形態に係る画像処理方法の詳細についてさらに説明する。図24は、本実施形態に係る画像処理方法の一例を説明するフロー図である。
【0130】
まず、画像形成手段812は、各ヘッド(ヘッドユニット)の色の情報を測定するためのテストパターンを出力する(ステップS201)。テストパターンは、例えば、図20に示すようなパッチを用いることができる。出力されたテストパターンから、測定機などを用いて各ヘッドの特性(濃度、明度、彩度等)が測定される(ステップS202)。画像処理装置800は、理想のヘッドでの階調と特性値との関係を元に、上記式(3)により各ヘッドユニットの量子化基準値を算出する(ステップS203)。
【0131】
なお、上述のように、特性差の測定と量子化基準値の算出(ステップS201〜ステップS203)は、画像処理を行う際にリアルタイムで計算する必要はなく、事前に実施するように構成してもよい。
【0132】
次に、色情報取得手段810が、出力画像データを入力(取得)する(ステップS204)。具体的には、色情報取得手段810は、主走査方向の走査ライン毎の色の情報を取得する。次に、各ヘッドのノズルがオーバーラップ部分に相当する画素位置では、補正手段811が、いずれのヘッドで記録するのかを画素の座標により判定する(ステップS205)。次に、補正手段811は、上記式(4)又は式(5)により、記録するヘッドとして判定されたヘッドの量子化基準値を補正する(ステップS206)。なお、オーバーラップ領域(y3〜y4)よりも広い領域(y1〜y2)以外の領域の画素位置では、補正手段811は量子化基準値の補正を行わない。
【0133】
画像形成手段812は、補正された量子化基準値を用いて色ムラを補正した画像を形成して出力する(ステップS207)。
【0134】
次に、上記(4)式及び(5)式の関数f(L,x,y)を用いることによる効果の一例について説明する。図25は、理想的なヘッドの出力特性の一例を示す図である。図25は、入力階調値と出力明度との対応を示している。図25の例の場合は、明度と階調値との関係は、以下の式(6)に示す線形式で近似できる。
明度=−0.2745×階調値+90 ・・・(6)
【0135】
この近似式の関係を前提として、量子化基準値を補正する場合について説明する。例えば、明度50の出力画像を得たいのに、明度が40になるヘッド、すなわち、濃く出力されるヘッドでは、誤差拡散処理における量子化基準値を255から291に変更する。量子化基準値が大きいほど、上述の式(2)で計算される着目画素の誤差exyはマイナス値を取りやすくなる。このため、周辺画素の量子化計算で参照される際、ドット形成を抑制する要素となる。
【0136】
逆に、例えば、明度50の出力画像を得たいのに、明度が60になるヘッド、すなわち、薄く出力されるヘッドでは、量子化基準値を255から219に変更する。これにより、着目画素の誤差exyはプラスの値を取りやすくなり、周辺画素の量子化計算で参照される際、ドット形成を助長する要素となる。
【0137】
本実施形態では、この量子化基準値の切替効果をよりスムーズに反映させるために、図19のようにオーバーラップ部位の座標(オーバーラップさせたいずれのヘッドに近いか)によって量子化基準値が可変となるようにしている。
【0138】
次に、オーバーラップ部分で補正される量子化基準値の具体例について、図26〜図29を用いて説明する。図26は、繋ぎヘッドのノズル位置と記録する画像データの座標との関係を示した図である。図26では、画像データのy座標位置が52から54の部分で、ヘッドBとヘッドCとがオーバーラップし、画像データのy座標位置が96から98の部分で、ヘッドCとヘッドDとがオーバーラップする例が示されている。
【0139】
図27は、各ヘッドで記録する画素位置を塗り分けした図である。オーバーラップ部分は、ヘッドBとヘッドC、又は、ヘッドCとヘッドDで図のように打ち分けが行われる。点線の丸で囲った部分がオーバーラップ部分を表す。画素2701、画素2702、及び、画素2703は、それぞれヘッドD、ヘッドC及びヘッドBのノズルで記録する画素を表す。
【0140】
なお、図27では、説明を簡略化するため、それぞれのヘッドで打ち分ける画素数が常に一定になっているが、図13のように、いずれかのヘッドに近づくにつれて打ち分けるノズル数が変動するようにした方がより効果的である。
【0141】
図28は、図26に示すようなヘッドに一定の値(図28の例では、146の階調値)が入力された場合の出力画像明度を画素位置単位で示した図である。図28は、同じ入力値でもヘッドBは濃い目(明度=40)に、ヘッドDは薄目(明度=60)に出力される例を示している。
【0142】
図29は、上記(4)式又は(5)式を適用して補正した量子化基準値の一例を示す図である。図29は、各画素位置における量子化基準値がどのように変化するかを示している。ヘッドCは、元々理想的な出力特性を持っていたので、量子化基準値は255から変化しない。ヘッドBは濃すぎるので、量子化基準値は255より大きい値に補正される。また、ヘッドDは薄すぎるので、量子化基準値は255より小さい値に補正される。なお、量子化基準値は、y1〜y2に相当する区間のみで補正され、y1より右側やy2より左側の部位では補正されない。ヘッド全体に補正をかけると、濃度は一定に揃っても、階調数の減少や中間調パターンの変化が目に付きやすくなるためである。
【0143】
本実施の形態は、誤差拡散処理を前提としているが、記録システムによっては、ディザ処理を適用できる場合がある。ディザ処理は、誤差拡散処理よりも高速に量子化処理が可能なため、例えば、ヘッドの特性差がない、あるいは、特性差があってもかまわず、より高速性が求められる場合等に、ディザ処理に切り換えて使用しても良い。この判断自体は、記録システムに内蔵された測定機により自動的に判定しても良いし、出力されたテスト記録チャート等を見てオペレータが判断しても良い。
【0144】
更に、これまでインクジェット記録を前提に説明を行ってきたが、インクジェット同様に記録ヘッドを走査、或いは繋ぎ合わせてライン状に配置でき、且つドットで画像を表現する記録方法、例えば、感熱ヘッドを用いた熱転写記録等にも、本発明は適用可能である。
【0145】
以上、発明を実施するための最良の形態について説明を行ったが、本発明は、この最良の形態で述べた実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を損なわない範囲で変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0146】
以上のように、本発明にかかる画像処理装置は、複数の記録ヘッドを有するプリンタに有用であり、特に、インクジェットプリンタに適している。
【符号の説明】
【0147】
800 画像処理装置
809 階調パッチ
810 色情報取得手段
811 補正手段
812 画像形成手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0148】
【特許文献1】特開2005−219508号公報
【特許文献2】特開2004−326613号公報
【特許文献3】特開2003−189103号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド毎の主走査方向の走査ライン毎における色の情報を取得する色情報取得手段と、
取得された前記色の情報に基づいて、主走査方向の一の走査ラインの中間調処理に用いるパラメータ、及び、前記一の走査ラインに隣接する隣接ラインの中間調処理に用いるパラメータを補正して、前記一の走査ラインと前記隣接ラインとの間の色の差の補正を行う補正手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記中間調処理に用いるパラメータとは、誤差拡散処理における量子化基準値、又は、ディザ処理におけるディザマトリクスであることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記色情報取得手段は、前記一の走査ラインにおける、前記隣接ラインとの重複部分、及び、前記隣接ラインと重複しない部分の色の情報を取得し、
前記補正手段は、前記一の走査ラインにおける副走査方向の端部からの色の差が生じている範囲において、前記中間調処理に用いるパラメータを補正することを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記一の走査ラインの副走査方向における中央から、前記隣接ラインの副走査方向における中央までの範囲の階調差が、副走査方向において線形に近づく補正をすることを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記中間調処理に用いるパラメータが、誤差拡散処理における量子化基準値の場合に、
前記補正手段は、前記一の走査ラインを形成するヘッドと前記隣接ラインを形成するヘッドとの特性差と記録画素位置とに応じて変動する関数により規定される量子化基準値を取得することを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記一の走査ラインを形成するヘッドと前記隣接ラインを形成するヘッドとの特性差と記録画素位置とに応じて変動する関数により規定される量子化基準値のテーブルを保持する保持手段を有することを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
複数のヘッドが主走査方向に平行走査すること、又は、一のヘッドが主走査方向の複数ラインを走査することにより、画像を形成する画像形成装置であって、
請求項1ないし6何れか一項に記載の画像処理装置により、主走査方向の走査ライン間の階調差の補正を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
ヘッド毎の主走査方向の走査ライン毎における色の情報を取得する色情報取得ステップと、
取得された前記色の情報に基づいて、主走査方向の一の走査ラインの中間調処理に用いるパラメータ、及び、前記一の走査ラインに隣接する隣接ラインの中間調処理に用いるパラメータを補正して、前記一の走査ラインと前記隣接ラインとの間の色の差の補正を行う補正ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項1】
ヘッド毎の主走査方向の走査ライン毎における色の情報を取得する色情報取得手段と、
取得された前記色の情報に基づいて、主走査方向の一の走査ラインの中間調処理に用いるパラメータ、及び、前記一の走査ラインに隣接する隣接ラインの中間調処理に用いるパラメータを補正して、前記一の走査ラインと前記隣接ラインとの間の色の差の補正を行う補正手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記中間調処理に用いるパラメータとは、誤差拡散処理における量子化基準値、又は、ディザ処理におけるディザマトリクスであることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記色情報取得手段は、前記一の走査ラインにおける、前記隣接ラインとの重複部分、及び、前記隣接ラインと重複しない部分の色の情報を取得し、
前記補正手段は、前記一の走査ラインにおける副走査方向の端部からの色の差が生じている範囲において、前記中間調処理に用いるパラメータを補正することを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記一の走査ラインの副走査方向における中央から、前記隣接ラインの副走査方向における中央までの範囲の階調差が、副走査方向において線形に近づく補正をすることを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記中間調処理に用いるパラメータが、誤差拡散処理における量子化基準値の場合に、
前記補正手段は、前記一の走査ラインを形成するヘッドと前記隣接ラインを形成するヘッドとの特性差と記録画素位置とに応じて変動する関数により規定される量子化基準値を取得することを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記一の走査ラインを形成するヘッドと前記隣接ラインを形成するヘッドとの特性差と記録画素位置とに応じて変動する関数により規定される量子化基準値のテーブルを保持する保持手段を有することを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
複数のヘッドが主走査方向に平行走査すること、又は、一のヘッドが主走査方向の複数ラインを走査することにより、画像を形成する画像形成装置であって、
請求項1ないし6何れか一項に記載の画像処理装置により、主走査方向の走査ライン間の階調差の補正を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
ヘッド毎の主走査方向の走査ライン毎における色の情報を取得する色情報取得ステップと、
取得された前記色の情報に基づいて、主走査方向の一の走査ラインの中間調処理に用いるパラメータ、及び、前記一の走査ラインに隣接する隣接ラインの中間調処理に用いるパラメータを補正して、前記一の走査ラインと前記隣接ラインとの間の色の差の補正を行う補正ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16−1】
【図16−2】
【図16−3】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16−1】
【図16−2】
【図16−3】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2011−140215(P2011−140215A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262221(P2010−262221)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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