説明

画像形成装置、パターン位置決定方法、画像形成システム

【課題】シート材の影響を抑制してテストパターンの位置を検出する画像形成装置を提供すること。
【解決手段】液滴の吐出タイミングを調整する装置100であって、テストパターンからの反射光を読み出す読み取り手段30と、均一パターンの印刷データを記憶する印刷データ記憶手段54と、均一パターンを記録媒体に印刷した後、テストパターンを均一パターン上に印刷するパターン形成手段52と、読み取り手段を等速で移動させる相対移動手段313と、テストパターンが形成された記録媒体に対し読み取り手段が相対移動しながら、テストパターンを光が横断する際に前記受光手段が受光した反射光の第1の検出データを取得する第1の検出データ取得手段617と、予め定められた上限値と下限値の間に含まれる第1の検出データにライン位置決定演算を施してテストパターンの位置を検出する位置検出手段616、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に形成したテストパターンを読み取って、液滴の吐出タイミングを調整する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を用紙などのシート材に吐出して画像を形成する画像形成装置が知られている(以下、液体吐出方式の画像形成装置という)。液体吐出方式の画像形成装置は、大きくシリアル方式とラインヘッド方式のものに区分できる。シリアル方式の画像形成装置は、紙送りを繰り返しながら、紙送り方向と直角に(主走査方向に)記録ヘッドが往復移動して用紙全体に画像を形成する。ラインヘッド方式の画像形成装置は、最大用紙幅とほぼ同じ長さにノズルが並んでおり、ラインヘッド内のノズルは紙が送られ液滴を吐出するタイミングになると液滴を吐出することで画像を形成する。
【0003】
しかしながら、シリアル方式の画像形成装置では、往路及び復路の双方向で1本の罫線を印字したような場合、往路と復路で罫線の位置ずれが発生しやすいということが知られている。また、複数のヘッドを用いる画像形成装置では、複数のヘッド間の距離の差に起因した着弾位置ずれが発生しやすいことも知られている。また、ラインヘッド方式の画像形成装置では、ノズルの加工精度や取り付け誤差などに起因して、定常的に着弾位置がずれるノズルがあると紙送り方向に平行な線が現れやすいことが知られている。
【0004】
このため、液体吐出方式の画像形成装置では、液滴の着弾位置を調整するための自動調整用のテストパターンをシート材に印刷し、テストパターンを光学的に読み取り、その読み取り結果に基づいて吐出タイミングの調整を行うことが行われることが多い(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
特許文献1には、撥水性を有する撥水性部材上に、独立した複数の液滴で構成される基準パターンと、この基準パターンとは異なる吐出条件で吐出された独立した複数の液滴で構成される被測定パターンとを、記録ヘッドの走査方向に並べて形成させるパターン形成手段と、各パターンに光を照射する発光手段及び各パターンからの正反射光を受光する受光手段で構成される読取り手段と、この読取り手段の読取り結果に基づいて各パターン間の距離を測定して、この測定結果に基づいて記録ヘッドの液滴吐出タイミングを補正する補正手段とを備えている画像形成装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された液滴吐出タイミングの補正方法では、下記するような問題がある。
【0007】
図1(a)は、テストパターンを読み取る受光素子を模式的に説明する図の一例である。LEDが照射したスポット光がテストパターンを矢印方向に走査すると、スポット光の走査位置の濃度に応じた反射光が受光素子にて検出される。よく知られているように光は黒い物体によく吸収されるので、シート材が白でテストパターンが黒であれば、テストパターンを走査した時のスポット光は反射されにくい。受光素子が受光する反射光を電圧で表せば、図示するように、スポット光がテストパターンと重畳した際の電圧は、テストパターン以外を走査している際の電圧よりも大きく低下する。
【0008】
図1(b)は電圧の変化を拡大して示す図の一例である。横軸は、例えば時間又はスポット光の走査位置である。細長い円は電圧が急激に変化している領域を示す。テストパターンのエッジはこの領域内にあることが推測され、例えば、電圧値が極大と極小の中央値を示す時にスポット光の重心がテストパターンのエッジを走査していると判定される。したがって、電圧値が例えば電圧の振幅の中央値を示す時、画像形成装置は走査位置にテストパターンのエッジ位置があると判定しテストパターンの位置を特定できる。
【0009】
しかしながら、シート材がトレーシングペーパーのような反射率の低い(透過率の高い)材質の場合、受光素子の出力電圧が安定しにくいため、テストパターンのエッジ位置を精度よく特定できないという問題がある。
【0010】
図2(a)はこのような問題を有する記録媒体を説明する図の一例である。記録媒体の透過率が高い場合、入射光がすり抜けやすい一方で反射する部分もあるため、光の反射率が変動しやすい。
【0011】
また、図2(b)は記録媒体の結晶構造を模式的に示す図の一例である。記録媒体が結晶構造を有する場合、光の反射方向に指向性が生じるため、受光素子の出力電圧が安定しにくくなり同様の問題が生じる。
【0012】
また、図2(c)は、記録媒体の色むらを模式的に示す図の一例である。記録媒体に色むらがあると、光の吸収性が部分的に変動するため反射率に変動が生じ、受光素子の出力電圧が安定しにくくなり同様の問題が生じる。
【0013】
また、シート材がフィルムやOHPシートのような正反射出力の割合の大きい材質の場合、拡散反射を用いて検出を行おうとすると、出力が小さいため十分な出力を得ることができない。かといって正反射を用いて検出を行おうとすると、出力が大きすぎてセンサの検出最大値を超えてしまい、変化を検出することができない。
【0014】
すなわち、記録媒体の性質によって、安定した出力を得られなかったり、求める出力を得られなかったりする場合がある。出力が安定しなかったり、大きすぎたり、又は、小さすぎたりすると、テストパターンのラインのエッジ位置の特定精度が低下するため、液滴吐出タイミングの調整精度が低下することになる。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑み、液滴の吐出タイミングを調整する画像形成装置であって、シート材の特性から受ける影響を抑制して、テストパターンの位置を精度よく特定できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題に鑑み、本発明は、記録媒体に形成したテストパターンを読み取って、液滴の吐出タイミングを調整する画像形成装置であって、前記記録媒体に光を照射する発光手段及び前記記録媒体からの反射光を受光する受光手段とを有する読み取り手段と、前記テストパターンと異なる色で、前記テストパターンよりも広い範囲に形成される均一パターンの印刷データを記憶する印刷データ記憶手段と、前記均一パターンを前記記録媒体に印刷した後、前記テストパターンを前記均一パターン上に印刷するパターン形成手段と、前記記録媒体又は前記読み取り手段を相対的に等速で移動させる相対移動手段と、前記テストパターンが形成された前記記録媒体に対し前記読み取り手段が相対移動しながら、前記テストパターンを前記光が横断する際に前記受光手段が受光した前記反射光の第1の検出データを取得する第1の検出データ取得手段と、予め定められた上限閾値と下限閾値の間に含まれる前記第1の検出データに、ライン位置決定演算を施して、前記テストパターンの位置を検出する位置検出手段、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
シート材の特性から受ける影響を抑制して、テストパターンの位置を精度よく特定できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】テストパターンを読み取る受光素子を模式的に説明する図の一例である。
【図2】記録媒体を説明する図の一例である。
【図3】画像形成装置のテストパターンの概略を説明する図の一例である。
【図4】シリアル方式の画像形成装置の概略斜視図の一例である。
【図5】キャリッジの動作をより詳細に説明する図の一例である。
【図6】画像形成装置の制御部のブロック図の一例である。
【図7】テストパターンの形成を説明する図の一例である。
【図8】均一パターンとテストパターンが一体の印刷データを模式的に説明する図の一例である。
【図9】印字位置ずれセンサがテストパターンのエッジを検出するための構成を模式的に示す図の一例である。
【図10】補正処理実行部の機能ブロック図の一例である
【図11】スポット光とテストパターンの一例を示す図である。
【図12】スポット光とテストパターンの一例を示す図である。
【図13】エッジ位置の特定方法を説明する図の一例である。
【図14】吸収面積と吸収面積の増加率の一例をそれぞれ示す図である。
【図15】均一パターンによる出力電圧の変動抑制効果を説明する図の一例である。
【図16】振幅が不安定な出力電圧と均一パターンの形成後の出力電圧の一例をそれぞれ示す図である。
【図17】スポット光の径とテストパターンの線幅を説明する図の一例である。
【図18】スポット光の径とテストパターンの線幅を説明する図の一例である。
【図19】ライン方式の画像形成装置のヘッドの配置とテストパターンを模式的に説明する図の一例である。
【図20】補正処理実行部が信号補正する手順の一例を示すフローチャート図である。
【図21】補正処理実行部の機能ブロック図の一例である(実施例2)。
【図22】信号補正を説明する図の一例である。
【図23】n回スキャンの測定結果の一例を示す図である。
【図24】同期処理を説明する図の一例である。
【図25】フィルタ処理を説明する図の一例である。
【図26】n回スキャンを説明する図の一例である。
【図27】同期処理を説明する図の一例である。
【図28】VsgとVpを説明する図の一例である
【図29】パターン測定データの出力波形の一例、白紙測定データの出力波形の一例をそれぞれ示す図である。
【図30】x´とy´から得られる演算対象データzを模式的に説明する図の一例である。
【図31】補正処理実行部が信号補正する手順の一例を示すフローチャート図である。
【図32】補正処理実行部の処理を説明するフローチャート図の一例である。
【図33】画像形成装置とサーバを有する画像形成システムを模式的に説明する図の一例である。
【図34】サーバと画像形成装置のハードウェア構成図の一例を示す図である。
【図35】画像形成システムの機能ブロック図の一例である。
【図36】画像形成システムの動作手順を示すフローチャート図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0020】
図3は、本実施形態の画像形成装置のテストパターンの概略を説明する図の一例である。図3のシート材は光の反射強度が安定しにくい用紙などの記録媒体である。本実施形態のパターン位置決定方法はこのようなシート材に有効だが、光の反射強度が比較的安定した用紙等にも適用できる。
【0021】
まず、画像形成装置は、シート材のテストパターンの形成位置の全体を含む範囲(以下、「プレインク形成範囲」という)に、光の反射率の変動を抑えるインクで均一パターンを形成する。光の反射率の変動を抑えるインクは、例えば白色のインクであるが、反射性のよい色であればよい。
【0022】
そして、画像形成装置は均一パターンが形成されたプレインク形成範囲に、テストパターンを形成する。プレインク形成範囲は、光の反射率の変動が抑制されているので、そこにテストパターンを形成することで、出力電圧の変曲点も安定しやすくなる。このため、変曲点が、後述するスレッシュ領域内に検出されることが期待できるようになる。したがって、画像形成装置は、光の反射率に変動がある記録媒体に印刷する場合でも、テストパターンの位置を精度よく決定でき、液滴の吐出タイミングを精度よく調整することが可能になる。
【0023】
〔構成例〕
図4は、シリアル方式の画像形成装置100の概略斜視図の一例を示す。画像形成装置100は、本体フレーム70により支持されている。画像形成装置100の長手方向にはガイドロッド1及び幅ガイド2が掛け渡され、ガイドロッド1及び副ガイド2にキャリッジ5が矢印A方向(主走査方向)に往復移動可能なように保持されている。
【0024】
また、主走査方向には無端ベルト状のタイミングベルト9が、駆動プーリ7と加圧コロ15に張架されており、タイミングベルト9の一部がキャリッジ5に固定されている。また、駆動プーリ7は主走査モータ8により回転駆動され、これによりタイミングベルト9が主走査方向に移動し、連動してキャリッジ5も往復移動する。タイミングベルト9には加圧コロ15によって張力が掛けられており、タイミングベルト9はたるむことなくキャリッジ5を駆動させることができる。
【0025】
また画像形成装置100は、インクを供給するカートリッジ60と記録ヘッドを維持・クリーニングする維持機構26を有する。
【0026】
シート材150はキャリッジ5の下側にあるプラテン40上を、不図示のローラにより矢印B方向(副走査方向)に間欠的に搬送される。シート材50は、紙などの普通紙、光沢紙、フィルム、電子基板など液滴が付着可能な記録媒体であればよい。シート材150の搬送位置毎に、キャリッジ5は主走査方向に移動し、キャリッジ5が搭載している記録ヘッドが液滴を吐出する。吐出が終わるとシート材150が再度、搬送され、キャリッジ5が主走査方向に移動して液滴を吐出する。これを繰り返すとシート材150の全面に画像が形成される。
【0027】
図5は、キャリッジ5の動作をより詳細に説明する図の一例である。上記のガイドロッド1及び副ガイド2は左側板3と右側板4の間に掛け渡され、キャリッジ5は軸受け12と副ガイド受け部11によりガイドロッド1及び副ガイド2を摺動自在に保持され、矢印X1,X2方向(主走査方向)に移動可能となっている。
【0028】
キャリッジ5には黒(K)の液滴を吐出する記録ヘッド21,22、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色のインク滴を吐出する記録ヘッド23,24,が搭載されている。記録ヘッド21は黒がよく使用されるために配置したものであり、省略することもできる。
【0029】
なお、記録ヘッド21〜24としては、インク流路内(圧力発生室)のインクを加圧する圧力発生手段(アクチュエータ手段)として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させることによる圧力でインク滴を吐出させるいわゆるサーマル型のもの、又は、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで、インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のもの、などを用いることができる。
【0030】
キャリッジ5を移動走査する主走査機構32は、主走査方向の一方側に配置される主走査モータ8と、主走査モータ8によって回転駆動される駆動プーリ7と、主走査方向の他方側に配置された加圧コロ15と、駆動プーリ7と加圧コロ15との間に掛け回されたタイミングベルト9とを備えている。なお、加圧コロ15は、図示しないテンションスプリングによって外方(駆動プーリ7に対して離れる方向)にテンションが作用させられている。
【0031】
タイミングベルト9は、キャリッジ5の背面側に設けたベルト保持部10に一部分が固定保持されていることで、タイミングベルト9の無端移動に伴い主走査方向にキャリッジ5を牽引する。
【0032】
また、キャリッジ5の主走査方向に沿うようにエンコーダシート41が配置されており、キャリッジ5に設けたエンコーダセンサ42によって当該エンコーダシート42のスリットを読取ることで、キャリッジ5の主走査方向の位置を検知することができる。このキャリッジ5が主走査領域のうち記録領域に存在する場合、シート材150が図示しない紙送り機構によってキャリッジ5の主走査方向と直交する矢示Y1,Y2方向(副走査方向)に間欠的に搬送される。
【0033】
以上説明した、本実施形態に係る画像形成装置100では、キャリッジ5を主走査方向に移動し、シート材150を間欠的に送りながら、記録ヘッド21〜24を画像情報に応じて駆動して液滴を吐出させることによってシート材150に所要の画像を形成することができる。
【0034】
キャリッジ5の一側面には、着弾位置のずれを検出(テストパターンの読取り)するための印字位置ずれセンサ30が搭載されている。印字位置ずれセンサ30は、LEDなどの発光素子及び反射型フォトセンサで構成した受光素子によって、シート材150に形成された着弾位置検出用のテストパターンを読み取る。例えば印字位置ずれセンサ30は、例えば、特許請求の範囲の読み取り手段に相当し、例えばキャリッジ5は特許請求の範囲の相対移動手段に相当する。
【0035】
この印字位置ずれセンサ30は記録ヘッド21用のものなので、記録ヘッド22〜24の液滴吐出タイミングを調整するため記録ヘッド22〜24と並列に別の印字位置ずれセンサ30を搭載することが好ましい。また、印字位置ずれセンサ30を記録ヘッド22〜24と並列になるようにスライドさせる機構がキャリッジ5に搭載されていれば、一台の印字位置ずれセンサ30で記録ヘッド22〜24の液滴吐出タイミングを調整できる。または、画像形成装置100がシート材150を逆方向に送っても、一台の印字位置ずれセンサ30で記録ヘッド22〜24の液滴吐出タイミングを調整できる。
【0036】
図6は、画像形成装置100の制御部300のブロック図の一例である。制御部300は、主制御部310及び外部I/F311を有する。主制御部310は、CPU301と、ROM302、RAM303、NVRAM304、ASIC305、及び、FPGA(Field Programmable Gate Array)306を有する。CPU301はROM302に記憶されたプログラム3021を実行して、画像形成装置100の全体を制御する。ROM302にはこのプログラム3021の他、初期値や制御のためのパラメータなど固定データが格納されている。RAM303は、プログラムや画像データ等を一時的に格納する作業メモリであり、NVRAM304は、装置の電源が遮断されている間も設定条件などのデータを保持するための不揮発性メモリである。ASIC305は画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行なったり、各種のエンジンを制御する。FPGA306は、装置全体を制御するための入出力信号を処理する。
【0037】
主制御部310は、この装置全体の制御を司るとともにテストパターンの形成、テストパターンの検出、着弾位置の調整(補正)などに関わる制御を司る。後述するように、本実施例では主にCPU301がROM302に記憶されたプログラム3021を実行してエッジ位置の検出を行うが、一部又は全てをFPGA306やASIC305など、LSIが行ってもよい。
【0038】
外部I/F311は、ネットワークに接続された他の機器と通信するための通信装置、USB、IEEE1394、と接続するためのバスやブリッジであり、外部からのデータを主制御部310に送出する。また、外部I/F311は主制御部310が生成したデータを外部に出力する。外部I/F311には脱着可能な記憶媒体320が装着可能であり、プログラム3021は記憶媒体320に記憶された状態や、外部からの通信装置を介して配信される。
【0039】
また、制御部300は、ヘッド駆動制御部312、主走査駆動部313、副走査駆動部314、給紙駆動部315、排紙駆動部316、及び、スキャナ制御部317を有する。ヘッド駆動制御部312は、記録ヘッド21〜24のそれぞれの吐出有無、吐出する場合の液滴吐出タイミング及び吐出量を制御する。ヘッド駆動制御部312は、記録ヘッド21〜24を駆動制御するためのヘッドデータ生成配列変換用ASICを有し(ヘッドドライバ)、印刷データ(ディザ処理などが施されたドットデータ)に基づき、液滴の有無と液滴の大きさを示す駆動信号を生成して、記録ヘッド21〜24に供給する。記録ヘッド21〜24はノズル毎にスイッチを有しており、駆動信号に基づきオン・オフすることで、記録ヘッド21〜23は印刷データにより指定されるシート材150の位置に指定されるサイズの液滴を着弾させる。なお、ヘッド駆動制御部312のヘッドドライバは記録ヘッド21〜24側に設けられてもよいし、ヘッド駆動制御部312と記録ヘッド21〜24が一体になっていてもよい。図示する構成は一例である。
【0040】
主走査駆動部(モータドライバ)313は、キャリッジ5を移動走査する主走査モータ8を駆動する。主制御部310には、前述したキャリッジ位置を検出するエンコーダセンサ42が接続されており、主制御部310はこの出力信号に基づいてキャリッジ5の主走査方向の位置を検出する。そして、主走査駆動部313を介して主走査モータ8を駆動制御することでキャリッジ5を主走査方向に往復移動させる。
副走査駆動部(モータドライバ)314は紙送りするための副走査モータ132を駆動する。主制御部310には、副走査方向の移動量を検出するロータリエンコーダセンサ131からの出力信号(パルス)が入力され、主制御部310はこの出力信号に基づいて紙送り量を検出し、副走査駆動部314を介して副走査モータ132を駆動制御することで図示しない搬送ローラを介してシート材を紙送りする。
【0041】
給紙駆動部315は給紙トレイからシート材を給紙する給紙モータ133を駆動する。排紙駆動部316は、印刷されたシート材150をプラテン上に排紙するローラを駆動する排紙モータ134を駆動する。なお、排紙駆動部316は、副走査駆動部314により代用してもよい。
【0042】
スキャナ制御部317は、画像読取部135を制御する。画像読取部135は、原稿を光学的に読み取り画像データを生成する。
【0043】
また、主制御部310には、テンキー、プリントスタートキーなどの各種キー及び各種表示器を含む操作/表示部136が接続されている。主制御部310は、操作/表示部136を介してユーザが操作したキー入力の受け付け、メニューの表示などを行う。
【0044】
その他図示しないが、維持機構26を駆動する維持回復モータを駆動するための回復系駆動部、各種のソレノイド(SOL)類を駆動するソレノイド類駆動部(ドライバ)、電磁クラック類などを駆動するクラッチ駆動部、を有していてもよい。また、主制御部310には、その他の図示しない各種センサの検出信号も入力されるが図示を省略している。
【0045】
主制御部310は、シート材上にテストパターンを形成する処理を行い、形成したテストパターンに対し、キャリッジ5に搭載した印字位置ずれセンサ30の発光素子を発光させる発光駆動制御を行う。そして、受光素子の出力信号を取得しテストパターンの反射光を電気的に読取り、この読取り結果から着弾位置ずれ量を検出し、更に着弾位置ずれ量に基づいて記録ヘッド21〜24の液滴吐出タイミングを着弾位置ずれがなくなるように補正する制御を行う。
【0046】
〔テストパターンの形成〕
CPU301は、所定のタイミングになると着弾位置ずれ補正を開始する。このタイミングは、例えば、ユーザが操作/表示部136から着弾位置ずれ補正を指示したタイミング、CPU301がインク吐出前に発光素子402が発光しその時の反射光の強度が所定値以下であることから特定のシート材150であると判定したタイミング、最後に着弾位置ずれ補正を行った際の温度と湿度を記憶しておき温度又は湿度のいずれかが閾値以上ずれたと判定したタイミング、定期的(毎日、毎週、毎月等)なタイミング、等がある。
【0047】
CPU301は主走査制御部313にキャリッジ5の往復移動を指示しながら、ヘッド駆動制御部312に予め定められた均一パターンの印刷データとテストパターンの印刷データを用いた液滴の吐出を指示する。
図7は、テストパターンの形成を説明する図の一例である。上記のようなタイミングで、画像形成装置はテストパターンを形成後、着弾位置ずれの補正処理を行う。
【0048】
CPUは着弾位置ずれを補正するためのプログラムを実行して、プレインク塗布部51、テストパターン形成部52、パターン記憶部54、及び、副走査位置制御部53を実現する。パターン記憶部54は、均一パターンの印刷データと、テストパターンの印刷データを記憶している。例えばパターン記憶部54は、特許請求の範囲の印刷データ記憶手段に相当する。
【0049】
プレインク塗布部51は、パターン記憶部54から均一パターンの印刷データを読み出してプレインク形成範囲に均一パターンを形成する。テストパターン形成部52は、パターン記憶部54からテストパターンの印刷データを読み出してプレインク形成範囲にテストパターンを形成する。例えばテストパターン形成部52は、特許請求の範囲のパターン形成手段に相当する。
【0050】
副走査位置制御部53は、テストパターンがプレインク形成範囲に形成されるようにシート材の副走査方向の位置を制御する。均一パターンとテストパターンの形成方法には以下の方法がある。
【0051】
A.均一パターンとテストパターンを別々に形成する方法
(i)まず、副走査位置制御部53が、ロータリエンコーダセンサが検出するシート材の位置を監視しながら副走査駆動部314を制御することで、副走査モータ132がプレインク形成範囲の始端が記録ヘッドの下までくるように搬送する。
(ii)プレインク塗布部51は、プレインク形成範囲が記録ヘッドの下まで搬送されると、予め用意された印刷データをプレインク形成範囲に印刷する。この印刷データは、均一な色でプレインク形成範囲を塗りつぶす印刷データである。均一パターンのインクは少なくともテストパターンよりも光の透過率が少ないことが好ましい。したがって、例えばインクの色は白色が好ましいが、画像形成装置が白インクを搭載していない場合、テストパターンと異なる色であればよい。このような色として、例えばイエローが挙げられる。
(iii) プレインク塗布部51は、均一パターンを形成し終わると、副走査位置制御部53にシート材の逆方向への搬送を要求する。副走査位置制御部53は、乾燥させるため予め決まった時間、均一パターンの形成後に待機して、プレインク形成範囲の始端が記録ヘッドの下までくるように、シート材を逆方向に搬送する。
(iv) テストパターン形成部52は、プレインク形成範囲が記録ヘッドの下まで搬送されると、予め用意された印刷データをプレインク形成範囲に印刷する。この印刷データはテストパターンとなる印刷データである。
【0052】
B.均一パターンとテストパターンを並行に形成する方法
(i)まず、副走査位置制御部53が、ロータリエンコーダセンサが検出するシート材の位置を監視しながら副走査駆動部314を制御することで、副走査モータ132がプレインク形成範囲の始端が記録ヘッドの下までくるように搬送する。
(ii)テストパターン形成部52は、プレインク形成範囲が記録ヘッドの下まで搬送されると、予め用意された印刷データをプレインク形成範囲に印刷する。この印刷データは、均一な色の背景の中にテストパターンが含まれる印刷データである。
【0053】
図8は、均一パターンとテストパターンが一体の印刷データを模式的に説明する図の一例である。例えば、背景色は均一な白色の画素値であり、テストパターン部分は均一な黒色の画素値である。このような背景と一体化したテストパターンを用意することで、シート材の搬送時間や乾燥待ちの時間を短縮することができる。
【0054】
〔着弾位置ずれの補正〕
図9は、印字位置ずれセンサ30がテストパターンのエッジ位置を検出するための構成を模式的に示す図の一例である。図9は、図5の記録ヘッド21と印字位置ずれセンサ30を右側面板4から見た図になっている。
【0055】
印字位置ずれセンサ30は、主走査方向と直交する方向に並ぶ、発光素子402と受光素子403を有している。発光素子402と受光素子403の配置は逆でもよい。発光素子401は、後述するスポット光をテストパターン400に投光して、受光素子403はシート材150に反射した光、プラテン40からの反射光、その他の散乱光などを受光する。発光素子402と受光素子403は筐体の内側に固定され、印字位置ずれセンサ30のプラテン40に対向する面は、レンズ405により外部から遮蔽されている。このように、印字位置ずれセンサ30はパッケージ化されており、単体で流通することができる。
【0056】
印字位置ずれセンサ30内において、発光素子402及び受光素子403は、キャリッジ5の走査方向に対して直交する方向に配置している(副走査方向に並行に配置されている)。これにより、キャリッジ5の移動速度変動による検出結果への影響を低減することができる。
【0057】
発光素子402には例えば、LEDを採用することができるが、可視光を投射可能な光源(例えば、レーザ、各種のランプ)であればよい。可視光とするのは、スポット光がテストパターンにより吸収されることを期待するためである。なお、発光素子402の波長は固定であるが、波長が異なる発光素子402を搭載した複数の印字位置ずれセンサ30を搭載することも可能である。
【0058】
また、発光素子402が形成するスポット径は、高精度のレンズを使用せずに安価なレンズを使用するためにmmオーダーとなっている。このスポット径は、テストパターンのエッジの検出精度と関係するが、mmオーダーでも本実施形態のエッジ位置の求め方であれば十分に高精度にエッジ位置を検出できる。ただし、スポット径をより小さくすることも可能である。
【0059】
CPU301は、シート材150に形成したテストパターンを印字位置ずれセンサ30にて読取るための制御を行う。具体的には、CPU301によって発光制御手段511に印字位置ずれセンサ30の発光素子402を駆動するためのPWM値が設定され、この発光制御手段511の出力が平滑回路512で平滑化されて駆動回路513に与えられる。駆動回路513は発光素子402を発光駆動して、シート材150のテストパターンに対して発光素子402からスポット光が照射される。なお、発光制御手段511、平滑回路512、駆動回路513、光電変換回路521、ローパスフィルタ522、A/D変換回路523、及び、補正処理実行部526は主制御部310又は制御部300に搭載されている。共有メモリ525は例えばRAM303である。
【0060】
シート材上のテストパターンに発光素子402からのスポット光が照射されることで、テストパターンから反射される反射光が受光素子403に入射する。受光素子403は反射光の強度信号を光電変換回路521に出力する。具体的には、光電変換回路521は、強度信号を光電変換して、この光電変換信号(センサ出力電圧)をローパスフィルタ回路522に出力する。ローパスフィルタ回路522は高周波のノイズ分を除去した後、A/D変換回路523に光電変換信号を出力する。A/D変換回路523は、光電変換信号をA/D変換し、信号処理回路(FPGA)306に出力する。信号処理回路(FPGA)306は、A/D変換された出力電圧のデジタル値である出力電圧データを共有メモリ525に格納する。
【0061】
補正処理実行部526は共有メモリ525に記憶された出力電圧データを読み出し、着弾位置ずれ補正を行い、ヘッド駆動制御部312に設定する。すなわち、補正処理実行部526は、テストパターンのエッジ位置を検出して、2本のライン間の適正距離と比較することで、着弾位置ずれ量を算出する。
【0062】
補正処理実行部526は着弾位置ずれがなくなるように記録ヘッド21を駆動するときの液滴吐出タイミングの補正量を算出して、この算出した液滴吐出タイミング補正量をヘッド駆動制御部312に設定する。これにより、ヘッド駆動制御部312は、記録ヘッド21を駆動する際に、補正量に基づいて液滴吐出タイミングを補正した上で記録ヘッド21を駆動するので、液滴の着弾位置ずれを低減することができる。
【0063】
図10は、補正処理実行部526の機能ブロック図の一例である。補正処理実行部526は、スキャン部617と吐出タイミング補正部616を有する。スキャン部617は、発光素子と受光素子を駆動してテストパターンからの反射光を読み取り、出力電圧データを生成する。吐出タイミング補正部616は、テストパターンのエッジ位置から求めた着弾位置ずれ量に基づき液滴吐出タイミングを補正する。例えばスキャン部617は特許請求の範囲の第1の検出データ取得手段に相当し、吐出タイミング補正部616は特許請求の範囲の位置検出手段に相当する。処理の詳細は後述する。
【0064】
〔スポット光の位置とエッジ位置〕
続いて、図11、12を用いてスポット光とエッジ位置の関係について説明する。
図11は、スポット光とテストパターンの一例を示す図である。スポット光はテストパターンを構成する複数のライン(図では1本)を一定速度(等速)で横切るように移動する(以下、テストパターンとラインを厳密には区別せずに説明する。)。横切る際の速度は可変でもよいが、横断中は等速である。用紙などのシート材は紙送りによりラインの長手方向に移動しているため、スポット光はラインを斜めに横切るように移動するが、シート材が停止してもエッジ位置の特定方法は同じである。一般的な波長のスポット光とシート材ではテストパターンの重複面積が大きいほど、スポット光の反射光が低下するとしてよい。
【0065】
なお、図11、12ではスポット径d = テストパターンのライン幅Lとする。実際にはスポット光は若干の楕円になるが、テストパターンに並行に長軸を持つのでスポット光の形状はエッジ位置の精度にほとんど影響しない。
【0066】
図12は、本実施形態のエッジ位置の特定の概略を説明する図の一例である。図12(a)の数字I〜Vは時刻の経過を表し、下のスポット光ほど時間経過が長い。
時刻I:スポット光とテストパターンは重複していない。
時刻II:スポット光の半分がテストパターンと重畳している。この瞬間、反射光の減少率が最も大きくなる(重畳している面積が単位時間に最も大きく正に変化する)。
時刻III:スポット光の全体がテストパターンと重畳している。この瞬間、反射光の強度が最も小さくなる。
時刻IV:スポット光の半分がテストパターンと重畳している。この瞬間、反射光の増加率が最も大きくなる(重畳している面積が単位時間に最も大きく負に変化する)。
【0067】
スポット光の重心がテストパターンのラインのエッジ位置と一致するのは、時刻II及びIVである。したがって、スポット光とラインとが時刻II及びIVの関係にあることを反射光から検出できれば、エッジ位置を精度よく特定できる。
【0068】
図12(b)は受光素子の出力電圧の一例を、図12(c)は吸収面積(スポット光とテストパターンの重畳面積)の一例を、図12(d)は図12(c)の吸収面積を微分した吸収面積の増加率の一例を、それぞれ示す。なお、図12(d)は、図12(b)の出力波形を微分しても同等の情報が得られる。また、吸収面積は例えば出力電圧から算出されるが、絶対値である必要はないので、図12(c)の吸収面積は所定値から図12(b)の出力電圧を減算することで吸収面積と同様の波形が得られる。
【0069】
上述したように、時刻IIにおいて反射光の減少率が最も大きくなり(重畳している面積が単位時間に最も大きく正に変化する)、時刻IVにおいて反射光の増加率が最も大きくなる(重畳している面積が単位時間に最も大きく負に変化する)。そして、図12(d)に示すように、増加率が増加傾向から減少傾向に変化する点は、時刻IIと一致しており、増加率が減少傾向から増加傾向に変化する点は、時刻IVと一致している。
【0070】
増加傾向から減少傾向又はその逆に変化する点は、平面上の曲線において曲がる方向が変わる点、すなわち変曲点である。以上から、出力信号が変曲点を示せば、スポット光がテストパターンのエッジ位置と一致していることになる。したがって、変曲点が精度よく検出されれば、エッジ位置も精度よく特定できる。
【0071】
〔エッジ位置の特定〕
図13は、エッジ位置の特定方法を説明する図の一例である。図13(a)は、出力電圧の概略図を、図13(b)は出力電圧の拡大図をそれぞれ示す。変曲点のおよその値は、補正処理実行部526又は開発者が実験的に求めることができる。上述したように、例えば、出力電圧や吸収面積を微分して傾きがゼロに最も近い位置が変曲点となる。
【0072】
この変曲点が含まれるように、出力電圧の上限閾値Vruと下限閾値Vrdが予め定められている。後述するように、CPU301はテストパターンのない領域に対し出力電圧がほぼ同じ一定値(後述する4〔V〕)になるように発光素子402の出力と受光素子403の感度をキャリブレーションする。振幅補正処理により、出力電圧の極大値はほぼ同じ一定値にすることができるので、出力電圧が不安定でも上限閾値Vruと下限閾値Vrdの間に変曲点が含まれている。
【0073】
吐出タイミング補正部616は、出力電圧の立下り部分について、矢示Q1方向に探索して、出力電圧が下限閾値Vrd以下になる点を点P2として記憶する。次に、点P2より矢示Q2方向に探索して、出力電圧が上限閾値Vruを超える点を点P1として記憶する。
【0074】
そして、点P1と点P2の間の複数の出力電圧データを用いて回帰直線L1を算出し、回帰直線L1と上下閾値の中間値Vrcとの交点を算出し交点C1とする。
【0075】
同様にして、吐出タイミング補正部616は、出力電圧の立上がり部分について、矢示Q3方向に探索して、出力電圧が下限閾値Vru以上になる点を点P4として記憶する。次に、点P4より矢示Q4方向に探索して、出力電圧が上限閾値Vrd以下になる点を点P3として記憶する。
【0076】
そして、点P3と点P4の間の複数の出力電圧データを用いて回帰直線L2を算出し、回帰直線L2と上下閾値の中間値Vrcとの交点を算出し交点C2とする。吐出タイミング補正部616は交点C1と交点C2を二本のラインのエッジ位置に特定する。上下閾値の決定プロセスによれば、この交点C1とC2はほぼ変曲点と一致するとしてよい。
【0077】
この後、吐出タイミング補正部616は、テストパターンの2本のライン間の理想的な距離と、交点C1とC2の距離との差分を算出する。この差分は、理想的なラインの位置に対する実際のラインの位置の着弾位置ずれ量である。吐出タイミング補正部616は、算出した着弾位置ずれ量に基づいて、記録ヘッド21から液滴を吐出させるタイミング(液滴吐出タイミング)を補正する補正値を算出し、補正値をヘッド駆動制御部312に設定する。これにより、ヘッド駆動制御部312は補正された液滴吐出タイミングで記録ヘッド21を駆動するので、着弾位置ずれが低減することになる。
【0078】
〔精度低下要因〕
このように、上限閾値と下限閾値の間の出力電圧データを用いてエッジを検出する場合、上限閾値と下限閾値の間に少なくとも変曲点が含まれていなければ、エッジを検出できない。上限閾値と下限閾値(2つのスレッシュホールド)が形成する幅を、以下、「スレッシュ領域」という。スレッシュ領域は出力電圧を単位とするが、出力電圧に対応する吸収面積でも定義できる。
【0079】
図14は、吸収面積と吸収面積の増加率の一例をそれぞれ示す図である。図14のAのスレッシュ領域に変曲点があれば、図11で説明したように、吐出タイミング補正部616はエッジ位置を精度よく検出することができる。
【0080】
これに対し、図14のBのスレッシュ領域に変曲点がある場合、Aのスレッシュ領域から回帰直線を求めても、吐出タイミング補正部616は正確なエッジ位置を検出することはできない。また、変曲点がBのスレッシュ領域にあることが分かっていれば、スレッシュ領域をAからBの位置に移動して吐出タイミング補正部616が回帰直線を求めることもできるが、変曲点の位置が大きくずれることは、出力電圧や吸収面積のカーブが変形している可能性がある。例えば、カーブの傾きが大きくなったスレッシュ領域から、吐出タイミング補正部616が回帰直線を求めると、交点C1、C2も大きくずれる可能性がある。このことは、図14の下図で、Aのスレッシュ領域では頂点付近を含む位置の幅を十分に狭い範囲で推定できるに対し、Bのスレッシュ領域では変曲点(図14ではスレッシュ領域B内にはないが)付近を含む位置の幅を狭い範囲で推定しにくいことによって示されている。
【0081】
したがって、出力電圧の振幅が、変曲点がスレッシュ領域Aに入らないほどに変動した場合、スレッシュ領域Aからエッジ位置を特定したり、変曲点そのものを求めてスレッシュ領域を移動してエッジ位置を決定することは好適ではないことがわかる。
【0082】
本実施形態の画像形成装置は、均一パターンを形成してからテストパターンを形成しているので、出力電圧の変曲点がほぼスレッシュ領域に入るようになっている。このため、エッジ位置を精度よく検出することができる。
【0083】
図15は、均一パターンによる出力電圧の変動抑制効果を説明する図の一例である。図15(a)はトレーシングペーパのような透過率の高い記録媒体に、均一パターンを形成せずにテストパターンを形成した場合の、受光素子の出力電圧の振幅を模式的に示す。透過ムラがあるため出力電圧の振幅に大きな変動が発生してしまう。
【0084】
図15(b)はトレーシングペーパのような透過率の高い記録媒体に、均一パターンを形成してからテストパターンを形成した場合の、受光素子の出力電圧の振幅を模式的に示す。均一パターンにより光の透過が制限され、この結果、シート材の表面は透過ムラのない均一な状態になる。この結果、出力電圧の振幅に生じる変動を大幅に低減できる。
【0085】
図16(a)は振幅が不安定な出力電圧の場合の変曲点一例を、図16(b)は均一パターンの形成後の出力電圧の場合の変曲点の一例をそれぞれ示す。図16(a)のような出力電圧は一般には得られないが、印字位置ずれセンサ30がトレーシングパーパーのように透過率の高いシート材150に形成されたテストパターンを読み取ると、振幅がバラつくことが知られている。図示するように振幅が不安定になることで、変曲点がスレッシュ領域から外れてしまう。元のスレッシュ領域のまま、補正処理実行部526が交点C1,C2を求めると、変曲点が含まれない出力電圧から交点C1,C2を求めることになるので、エッジ位置は正確でないことになる。スレッシュ領域が変曲点を含むようにスレッシュ領域を移動させると、移動する前の交点C1,C2の求め方でエッジ位置を精度よく決定できるという保証がない。
【0086】
これに対し、図16(b)は、トレーシングパーパーのように透過率の高いシート材150に透過率の低い均一パターンを形成した後(下地処理を行い)に、テストパターンを形成した場合の出力電圧とその変曲点である。透過ムラが抑制されているため、記録媒体表面からの反射光量の変動がほとんどない。そのため、波形の極大値(地肌読み取り部分)及び極小値(パターン読み取り部分)の不揃いが少なくなる。この結果、変曲点がスレッシュ領域の中心付近に揃った安定した出力電圧となる。
【0087】
なお、本実施形態ではトレーシングパーパーを例に説明するが、透過率の高いシート材150であれば同様の課題が生じる。例えば、トレーシングパーパー以外の普通紙でも十分に紙が薄い場合には本実施形態のエッジ位置の検出方法が有効である。したがって、本実施形態の液滴吐出タイミングの補正処理は特定の材質や種類、厚みを有するシート材150に限定されない。また、厚みが十分にある普通紙に適用することもできる。
【0088】
〔スポット光の径とテストパターンの線幅〕
図11ではスポット径d = テストパターンのライン幅Lとしたが、「スポット径d > テストパターンのライン幅L」 又は、「スポット径d < テストパターンのライン幅L」でも、エッジ位置は検出可能である。
【0089】
図17(a)は、スポット径d > テストパターンのライン幅Lの関係にあるスポット光とテストパターンの一例を示す。ここでは「d/2<L<d」であるとする。図17(b)は受光素子の出力電圧の一例を、図14(c)は吸収面積の一例を、図17(d)は図17(c)の吸収面積を微分した吸収面積の増加率の一例を、それぞれ示す。
【0090】
スポット径d > テストパターンのライン幅L であることは、スポット光とテストパターンが完全には重畳しないことを意味するので、図17(d)の吸収面積の増加率から明らかなように、スポット光の右端がテストパターンを乗り越えた時点で吸収面積が減少に転じ、増加率が急激に減少する。
【0091】
しかしながら、本実施形態では変曲点の近傍の出力電圧データが得られていれば、交点C1、C2を求めることができるので、スポット光dはd/2<Lであればよい。すなわち、スポット径d が テストパターンのライン幅Lに比べて極端に大きくなければよい。
【0092】
図18(a)は、スポット径d < テストパターンのライン幅Lの関係にあるスポット光とテストパターンの一例を示す。図18(b)は受光素子の出力電圧の一例を、図18(c)は吸収面積の一例を、図18(d)は図18(c)の吸収面積を微分した吸収面積の増加率の一例を、それぞれ示す。
【0093】
スポット径d < テストパターンのライン幅L であることは、スポット光とテストパターンが完全に重畳した状態が継続することを意味するので、図18(b)(c)に示すように出力電圧や吸収面積が一定の領域が生じる。また、図18(d)に示すように、吸収面積の増加率がゼロとなる領域が生じる。その後、スポット光の右端がテストパターンを乗り越えた時点で吸収面積が減少に転じ、増加率が緩やかに減少する(減少率が増加)。
【0094】
このような場合、図11と同様に、変曲点近傍の出力電圧データが十分に得られるので、吐出タイミング補正部616は十分に交点C1、C2を求めることができる。
【0095】
〔ライン方式の画像形成装置の場合〕
本実施形態では、図4,5のシリアル方式の画像形成装置100を例にして説明したが、ライン方式の画像形成装置100においても同様の方法で着弾位置ずれ量を補正できる。ライン方式の画像形成装置100について簡単に説明する。
【0096】
図19は、ライン方式の画像形成装置100のヘッドの配置とテストパターンを模式的に説明する図の一例である。ヘッド固定ブラケット160はシート材搬送方向と直交する主走査方向の端から端まで掛け渡されるように固定されている。ヘッド固定ブラケット160には、上流側からKCMYのインクの記録ヘッド180がそれぞれ主走査方向の全域に配置されている。各色の記録ヘッド180は端部が重複するように千鳥状に配置されている。こうすることで、記録ヘッド180の端部でも十分な解像度が得られる液滴が吐出されるので、主走査方向の全域に1つの記録ヘッド180を配置する必要がなくコスト増を抑制できる。なお、各色毎に主走査方向の全域に1つの記録ヘッド180を配置してもよいし、各色の記録ヘッド180の主走査方向の重複領域をより長くしてもよい。
【0097】
ヘッド固定ブラケット160よりも下流にはセンサ固定ブラケット170が、シート材搬送方向と直交する主走査方向の端から端まで掛け渡されるように固定されている。センサ固定ブラケット170には、印字位置ずれセンサ30がヘッドの数だけ配置されている。すなわち、1つの印字位置ずれセンサ30は、1つの記録ヘッド180と、主走査方向に少なくとも一部が重複するように配置されている。また、1つの印字位置ずれセンサ30は、1対の発光素子402と受光素子403を有する。発光素子402と受光素子403は、主走査方向にほぼ並行に並列配置されている。
【0098】
このような形態の画像形成装置100は、テストパターンを構成する各ラインを、ラインの長手方向が主走査方向と並行になるように形成する。Kを基準に他の色の液滴の着弾位置ずれを補正する場合、画像形成装置100は、KのラインとMのライン、KのラインとCのライン、KのラインとYのラインを形成する。そして、シリアル方式の画像形成装置100と同様に、CMYKのテストパターンのエッジ位置を検出し、その位置ずれ量から液滴吐出タイミングを補正する。
【0099】
以上のように、ライン方式の画像形成装置100においても、適切に印字位置ずれセンサ30を配置することで着弾位置ずれを補正できる。
【0100】
〔動作手順〕
図20(a)は、補正処理実行部526が信号補正する手順の一例を示すフローチャート図である。
【0101】
まず、CPU301が、着弾位置ずれ補正を開始するよう主制御部310に指示する。この指示により、主制御部310は副走査駆動部314を介して副走査モータ132を駆動しシート材150を記録ヘッド21の真下まで搬送させる(S1)。
【0102】
次に、主制御部310は主走査駆動部313を介して主走査モータ27を駆動して、キャリッジ5をシート材150上に移動し、プレインク塗布部51はキャリッジに搭載された記録ヘッドから透過率の低いインクを記録媒体に隙間無く一面に吐出して均一パターンを形成する(S1-2)。均一パターンの形成後、副走査位置制御部53がシート材を逆方向に搬送して、プレインク形成範囲の開始位置が記録ヘッドの下部にくるまでもどす。
【0103】
次に、テストパターン形成部52は、主走査駆動モータ27を介してキャリッジ5を移動させると共に、ヘッド駆動制御部312により記録ヘッド21〜24を駆動して、テストパターンを形成する(S1-3)。
【0104】
次に、主制御部310は主走査駆動部313を介して主走査モータ27を駆動して、キャリッジ5をシート材150上に移動し、シート材150上の特定の箇所にて発光素子と受光素子のキャリブレーションを実施する(S2)。
【0105】
図20(b)はS2の処理を説明するフローチャート図の一例である。キャリブレーションは、発光素子の出力電圧が所望の範囲内(具体的には4V±0.4〔V〕の範囲内に調整している。)になるように発光素子の光量を調整する処理である。
【0106】
CPU301によって発光制御手段511に印字位置ずれセンサ30の発光素子402を駆動するためのPWM値が設定され、平滑回路512で平滑化された後、駆動回路513に与えられることで、駆動回路513が発光素子402を発光駆動する(S21)。
【0107】
印字位置ずれセンサ30の受光素子403が検出した強度信号は共有メモリ525に記憶され、CPU301が所望の電圧値になっているかチェックする(S22)。
【0108】
所望の電圧値になっていれば(S22のOK)、図20(b)の処理は終了する。所望の電圧値になっていなければ(S22のNo)、CPU301はPWM値を変更することで(S23)、光量の再調整を行う。
【0109】
次に、スキャン部617は、キャリッジ5をホームポジションまで移動し、テストパターンのスキャンを行い、出力電圧データを共有メモリ525に記憶する(S3)。
【0110】
図20(c)はS3の処理を説明するフローチャート図の一例である。まず、CPU301がセンサ光源を点灯させる(S31)。
【0111】
次に、光電変換回路521等が出力電圧データの取り込みを開始する(S32)。取り込みを開始したら、主走査駆動部313は主走査駆動モータ27によりキャリッジ5を移動させていく(S33)。つまり、キャリッジ5が移動ながら、光電変換回路521等が出力電圧データを取り込む。データのサンプリングは例えば20kHz(50μs間隔)である。
【0112】
キャリッジ5が画像形成装置の端部に到達すると、光電変換回路521等は出力電圧データの取り込みを終了する(S34)。主制御部310は一連の出力電圧データを共有メモリ525に蓄積する。主制御部310はキャリッジ5をホームポジションで停止させる(S35)。
【0113】
吐出タイミング補正部は共有メモリ525に蓄積されたテストパターンの出力電圧データを読み出して、エッジ位置を検出し、液滴の着弾位置ずれを補正する(S12)。すなわち、吐出タイミング補正部616は下限閾値Vrdと上限閾値Vruから交点C1,C2を求める。交点C1とC2の中点がテストパターンを構成するラインの位置である。吐出タイミング補正部616は各ラインの距離を適正距離と比較して着弾位置ずれ量を算出し、着弾位置ずれがなくなるように記録ヘッド21を駆動するときの液滴吐出タイミングの補正量を算出する。
【0114】
本実施例の画像形成装置100は、均一パターンが形成されたプレインク形成範囲にテストパターンを形成することで、光の反射率の変動が抑制されるので、受光素子の出力電圧の変曲点がスレッシュ領域に入るようにすることができる。このため、テストパターンのエッジ位置を精度よく決定でき、着弾位置ずれを高精度に補正できる。
【実施例2】
【0115】
実施例1では、プレインク形成範囲に均一パターンとテストパターンを形成することで出力電圧の振幅を安定させた。しかし、均一パターンを形成するだけでは、記録媒体の性質や均一パターンの色によっては出力電圧の振幅が変動するおそれがある。そこで、本実施例では、出力電圧の信号を補正する画像形成装置について説明する。
【0116】
〔機能ブロック図〕
制御部のブロック図は実施例1の図6と、及び、エッジを検出するための構成は実施例1の図9と同様なので説明は省略する。
【0117】
図21は、本実施例の補正処理実行部526の機能ブロック図の一例である。補正処理実行部526は、印字前前処理部611、印字後前処理部612、同期処理部613、パターン非依存分除外処理部614、振幅補正処理部615及び吐出タイミング補正部616を有する。印字前前処理部611は、均一パターンが形成されているがテストパターンが形成される前の出力電圧データに前処理を施し、印字後前処理部612は、均一パターンとテストパターンが形成された後の出力電圧データに前処理を施す。同期処理部613は、均一パターンが形成されているがテストパターンの形成前と、均一パターンとテストパターンの形成後の出力電圧データを同期させる(位置を合わせる)。パターン非依存分除外処理部614は、出力電圧データから後述するVpを減算する。振幅補正処理部615は、振幅補正処理を行うことでエッジ位置を演算するための演算対象データzを生成する。吐出タイミング補正部616は、テストパターンのエッジ位置から求めた着弾位置ずれ量に基づき液滴吐出タイミングを補正する。
【0118】
〔信号補正〕
図22(a)は、補正前の受光素子の出力電圧の一例を、図22(b)は振幅補正された出力電圧の一例をそれぞれ示す。
【0119】
図22(a)はトレーシングパーパーのような透過率の高いシート材150に印字されたテストパターンを受光素子が読み取った場合の出力電圧の波形である。均一パターンの形成を行っても、出力電圧が変動する場合があるため、図22(a)のように波形の極大値(地肌読み取り部分)及び極小値(パターン読み取り部分)が不揃いで変動が大きい。
【0120】
図22(b)は、パターン非依存分除外処理及び振幅補正処理後の出力電圧の波形の一例である。本実施形態の信号補正により、パターンの有る無しによらず出力される電圧が排除され、また、極大値及び極小値のバラツキが低減された、安定した出力データが得られる。このため、以降の着弾位置ずれ量を高精度に算出し、着弾位置ずれを高精度に補正することができる。
【0121】
本実施形態の信号補正は、
・パターン非依存分除外処理
・振幅補正処理
の2つの補正を有している。
【0122】
また、信号補正するために、前処理が必要とされる。よって、処理手順は以下のようになる。
(1)前処理
(2)信号補正
(2-1)パターン非依存分除外処理、(2-2)振幅補正処理
<前処理>
以下、前処理について説明する。前処理は前処理Aと前処理Bに分けることができる。前処理Aは、均一パターンが形成された後でかつテストパターン形成前の白紙状態(バックグラウンド)の出力電圧データに対する以下の処理により構成される。
・前処理A
(i) n回スキャン
(ii) 同期処理
(iii) 平均化
(iv) フィルタ処理
前処理Bは、均一パターン及びテストパターン形成後の出力電圧データに対する以下の処理により構成される。
・前処理B
(i) n回スキャン
(ii) 同期処理
(iii) 平均化
<前処理A>
・前処理A−(i)
図23は、A-(i)のn回スキャンの測定結果の一例を示す図である。n回スキャンに先立ち、プレインク塗布部51が均一パターンを印刷する。また、n回スキャンに先立ち、n回スキャン部はシート材(ex、普通紙、トレーシングペーパ)に対するセンサキャリブレーションを行う。n回スキャン部は、受光素子が検出し最終的にA/D変換回路523が変換した反射光の出力電圧が、ある一定値になるようにCPU301に要求する。CPU301は、出力電圧がある範囲に入るようにフィードバック制御する。例えば、出力電圧が4.4〔V〕より大きければ発光制御手段511の発光量を低減し、出力電圧が4.0〔V〕未満であれば発光制御手段511の発光量を増大する。図23(a)(b)に示すように、センサキャリブレーションにより、出力電圧は4.0〜4.4〔V〕の範囲に入るようになる。なお、目標値を4.0〜4.4Vに設定したPI制御やPID制御によりセンサキャリブレーションしてもよい。
【0123】
この出力電圧は、テストパターンが形成されていない領域の出力電圧である。n回スキャン部は図23(a)(b)のような出力電圧データをn個取得する。
【0124】
・前処理A-(ii)
図24はA-(ii)の同期処理を説明する図の一例である。平均化部はn回スキャン部が取得したn個の出力電圧データの平均を算出する。出力電圧データはスポット光がシート材150以外を走査しても検出されるが、必要なのはシート材150から得られた出力電圧のみである。このため、同期化部は、n個の出力電圧データの始まりをシート材150の紙端に揃える。
【0125】
n回の出力電圧データを紙端から始めるため、同期化部は出力電圧データが閾値を最初に越えたところを、シート材150の紙端として検出する。平均化されるための出力電圧データは、閾値を超えた以降のデータである(閾値を超えた出力電圧データを先頭1個目のデータとして扱う)。閾値はセンサキャリブレーションの目標値を4.0〔V〕とした場合、それよりもやや小さい3.5〜3.9〔V〕程度である。
【0126】
このような同期方法の他、エンコーダセンサ42が検出した主走査方向の位置情報に出力電圧データを対応づけて記憶しておき、位置情報を一致させてn個の出力電圧データの同期を取ってもよい。
【0127】
・前処理A−(iii)
次に、n個の出力電圧データはシート材150の紙端を走査方向の基準位置(位置がゼロ)として、位置毎にn個の出力電圧データを有する。この位置は、エンコーダセンサが検出するキャリッジ5の位置であるが、スポット光の重心位置と1対1に対応するので、以下、スポット光の重心位置として説明する。すなわち、平均化部は重心位置毎にn個の出力電圧データの平均を算出する。
【0128】
・前処理A-(iv)
図25は、フィルタ処理を説明する図の一例である。フィルタ処理部は、平均化部が平均した重心位置毎の出力電圧データの平均値をフィルタ処理する。具体的には、着目している出力電圧データの前後m個(着目しているデータを含めm個とする)のデータを抽出して、平均を算出する。これにより、測定ノイズが低減され、同期処理で同期しきれなかった出力電圧データのズレを低減することができる。
【0129】
図25では、実線の波形がフィルタ処理前の出力電圧データであり、点線の波形がフィルタ処理後の出力電圧データである。フィルタ処理前の出力電圧データはA/D変換回路523の分解能の影響を受け階段状の変動を示すが、フィルタ処理によりなだらかになることがわかる。
【0130】
<前処理B>
・前処理B-(i)
図26は、B-(i)のn回スキャンを説明する図の一例である。図26(a)では、A-(i)のn回スキャンが行われたシート材150にテストパターンが形成されている。図26(b)はテストパターンが形成されたシート材150からの反射光を受光素子が受光した際の出力電圧データの波形を示す。n回スキャン部はこのようなデータをn回取得する。
【0131】
・前処理B-(ii)
図27は同期処理を説明する図の一例である。上段は同期前の出力電圧データを、下段は同期後の出力電圧データをそれぞれ模式的に示す。テストデータの形成前と異なりテストデータの形成後は、n回の出力電圧データの極大値同士、及び、極小値同士を一致させることで、エッジ位置を揃えることができる。図27のような波形データの極大値同士、及び、極小値同士を一致させる(完全に一致させることは困難であるが)には、いくつか方法がある。
【0132】
比較的簡単な方法は、A−(ii)と同様に、n個の出力電圧データの始まりをシート材150の紙端に揃えることである。テストパターンが紙端に対し同じ位置に形成されていれば、複数の出力電圧データの極大値及び極小値も同じ位置に揃えることができる。
【0133】
またA−(ii)と同様に、エンコーダセンサ42が検出した主走査方向の位置情報に出力電圧データを対応づけて記憶しておき、位置情報を一致させてn個の出力電圧データの同期を取ってもよい。
【0134】
また、同期化部は、n個の出力電圧データの位置をずらしながら、n個の出力電圧データのズレが最小になるようにn個の出力電圧データの位置を決定することもできる。
【0135】
・前処理B−(iii)
平均化部は同期化したn個の出力電圧データの平均を算出する。n個の出力電圧データは、位置毎にn個の出力電圧データが存在するので、平均化部は重心位置毎にn個の出力電圧データの平均を算出する。
【0136】
<信号補正処理>
信号補正の前に同期処理部613が同期処理を行う。同期処理部613は、A-(i)〜(iv)の前処理が施されたテストパターン印字前の出力電圧データと、B-(i)〜(iii)の前処理が施されたテストパターン印字後の出力電圧データの紙端を揃える。
【0137】
揃え方はA-(ii)と同様に、閾値を最初に越えた出力電圧データを先頭1個目のデータとすることで行う。以下、説明のため、テストパターン印字前の出力電圧データを白紙測定データVsg2、テストパターン印字後の出力電圧データをパターン測定データVsg1といい、区別しない場合はVsgという。
【0138】
以下、信号補正処理について説明する。
【0139】
(2-1)パターン非依存分除外処理
パターン非依存分除外処理は、Vsgからテストパターンが形成されている部分でも発生する出力電圧分を低減する処理を行う。Vpはテストパターンが形成された部分でも吸収しきれない光による反射光、空中散乱光、暗出力による出力電圧である。Vpは、Vsg1とVsg2のどちらでも同程度とみなすことができる。
【0140】
したがって、パターン非依存分除外処理ではVsg-Vpを算出することにより、テストパターンが形成された部分でも吸収しきれない光による反射光、空中散乱光、暗出力による出力電圧を除外することができる。なお、テストパターンが形成された部分でも吸収しきれない光による反射光には、シートを透過してプラテン40が反射する光を含んでいる。
【0141】
図28は、VsgとVpを説明する図の一例である。上記のようにテストパターンの有無に関係なくVpはほぼ一定であるが、厳密にVpを求めることは困難なので、スポット光がテストパターンを走査した際の出力電圧Vsgの極小値をVpとする。このため、パターン非依存分除外処理部614は、パターン測定データを順番に検索して極小値を全て取り出す。具体的には、例えば、紙端内でパターン測定データがある閾値未満になると、より小さいデータが検出される毎に置き換えていき、最後のデータを所定値以上上回るデータが得られたら、最後に記憶したデータをVpとする。これを図の極小値毎に繰り返す。なお、必ずしも最も小さい極小値としなくてもよく、例えば、全ての極小値の平均、中央値、最も大きい極小値をVpとすることもできる。
【0142】
パターン非依存分除外処理部614は、以下を算出する。
・白紙測定データVsg2−Vp
・パターン測定データVsg1−Vp
図29(a)はパターン測定データの出力波形の一例を、図29(b)はパターン測定データからVpを減じた出力波形の一例を、それぞれ示す。図29(a)と(b)を比較すると分かるように、パターン非依存分除外処理により約1〔V〕ほど全体的にパターン測定データが小さくなっていることが分かる。
【0143】
図29(c)は白紙測定データの出力波形の一例を、図29(d)は白紙測定データからVpを減じた出力波形の一例を、それぞれ示す。図29(c)と(d)を比較すると分かるように、パターン非依存分除外処理により約1〔V〕ほど全体的に白紙測定データが小さくなっていることが分かる。
【0144】
なお、テストパターンが何色であっても、パターン測定データからVpを減じれば、パターンに依存せず出力される出力電圧を削除できるので、Vpはテストパターンの色に関係なく定義することができる。
【0145】
続いて、説明のため、以下のように置き換える。
白紙測定データx´=白紙測定データVsg1−Vp
パターン測定データy´=パターン測定データVsg2−Vp
(2-2)振幅補正処理
まず、演算対象データzを求める際の考え方について説明する。
シート材150に均一パターンが形成された状態でも、シート材150の反射光や反射率は、透過性や結晶性といったシート材150の特性で変動する。また、シート材150の指向性の高さにより程度に差はあるが、シート材150の凹凸やシート材150を支えるプラテン等の傾きが一定でないといった要因で、光軸がずれることによる反射率の変動もある。
【0146】
さらに、受光素子とシート材150の距離が一定でなかったり、プラテン40の保持機構や、様々な事象を要因とする振動、電源変動や制御的な相性等、シート材150を走査するスポット光の位置に関係する反射率の変動要因は枚挙にいとまがない。
【0147】
しかし、変動要因は様々であるが、どのような要因であっても区別することなく、反射率の変動を位置または時間の関数として表現できる。この反射率の変化をバックグラウンド変動と呼ぶことにする。
【0148】
以下、説明を容易にするため、以下のイメージしやすい例を用いて説明する。
・位置または時間の関数を、時間の関数とする
・バックグラウンド変動を時間の関数 Kbgとする
・非印字媒体を白紙の紙とする
・受光素子で検知したい変化を、紙に吐出されたインクの位置とする
・有効数字確保や演算上、適当な係数を最大電位 Vmaxとする
・センサで測定する値を電圧値Vとする
まず、インクの色素が光を吸収するメカニズムを考える。インクに入射してくる光子は、色素固有のエネルギー状態を下回った時に吸収される(光のエネルギーは
振動数に比例し可視光であれば振動数により色が変わることから理解される)。色素のエネルギー状態は外界からエネルギーを加えることで変化させることもできるが、工業的には、特に意図的な制御を行わない限り、一定とみなせることが多い。
【0149】
ここでは一定とみなしうる場合を考え、色素のエネルギー状態を色素が光を取り込まない確率と考え、この一定値をKi(<1)とする。入射光を1とすると反射光として帰還するのを妨げる確率(反射光率)は(1-Ki)となる。例えば、Kiを0.3とすれば、0.7の光は反射光として帰還できない。
【0150】
本実施形態の受光素子が検出したいのは、位置毎に量の異なる反射光率(1-Ki)の変化である。よって、反射光率(1-Ki)を定量化するためには、位置の関数(1-Ki)と、測定電圧が比例関係にあることが望ましい。
【0151】
つまり、測定電圧をVとしたとき、
V ∝ (1-Ki)
と仮定すれば、測定電圧Vは反射光率に比例する。
【0152】
しかし、実際にはバックグラウンド変動があるため、
V ∝ Kbg × (1-Ki)
となる。
【0153】
ここで改めて、処理したい変動(1-Ki)をZとおくと、
V ∝ Kbg × Z
⇔ Z ∝ ( 1 / Kbg ) × V となる。
Vmax を適当に定めることで、これは
Z = ( Vmax / Kbg ) × V …(1)
となる。
【0154】
この式(1)は、時間関数KbgとVが同じ時間の関数であれば、バックグラウンド変動が含まれる測定電圧を、あたかもバックグラウンド変動が無いかのように扱えるよう補正できることを示している。
【0155】
しかし、現実的にはKbgの性質上、KbgとVを同時に測定することができないので、KbgとVをそれぞれ測定し、時間軸を合わせることで、同じ位置のKbgとVを測定できたことになる。この処理は、信号補正処理の同期処理が相当する。
【0156】
式(1)の各変数を、本実施形態で説明したデータで表すと、以下のように対応する。
Kbg = y´
V = x´
Z = Vsg =z
Vmax = Vsgの最大値(例えば4V)=Vmax−Vp
実際にはZは、最終的な演算対象のデータとなるので、実測されているVsgと一致するわけではないが、Vsgの代わりに得られるデータがZであるので、「Z=Vsg」とし、さらに「Z=z」とする。また、Vmaxは適宜定めることができるので、zが演算対象データであることからVsgの最大値、すなわちVsgの理想的な振幅とする。なお、VmaxにはVpが含まれているので、Vmax = Vmax−Vpと置き直している。以上から式(1)を書き直すと次式のようになる。
【0157】
z = Vmax ×x´/y´ …(2)
図30は、x´とy´から得られる演算対象データzを模式的に説明する図の一例である。図30(a)ではx´とy´を1つに重ねて表示しており、図30(b)では演算対象データzとVmaxを表示している。
【0158】
式(2)によれば、x´/y´により、両者に含まれるバックグラウンド変動を消去することができる。また、スポット光が、テストパターンがない場所を照射するとx´とy´が等しくなり、テストパターンがある場所を照射するとx´が略ゼロとなる。このことは、x´/y´が、ある位置の変動を含んだx´がy´を基準にした場合にどのくらいの比率で含まれるかを表すこと、すなわち、バックグラウンド変動を除去した際の白紙測定データとパターン測定データの比を表すと考えられる。
【0159】
したがって、この比にVmaxを乗じれば、バックグラウンド変動が除去され、テストパターン部で極小に無地部で極大になる振幅が一定の演算対象データzが得られることが分かる。
【0160】
以上の考え方に基づき、振幅補正処理部615は、式(2)の演算を行う。x´とy´はすでに求められており、Vmaxは予め定められた固定値(例えば4〔V〕)からVpを減じることで求められる。したがって、振幅補正処理部615は図30(b)のような振幅が一定の演算対象データzを得ることができる。この後、吐出タイミング補正部616は上述したように交点C1、C2をエッジ位置に決定することができる。
【0161】
なお、固定値Vmaxは固定されている必要はなく、極大値と相関するVsg2の平均値や中央値などでもよい。印字前前処理部611がテストパターン形成前に行ったn回スキャンのVsg2はテストパターン形成後の出力電圧の最大値となるので、固定値Vmaxとみなすことができる。
【0162】
〔動作手順〕
図31は、補正処理実行部526が信号補正する手順の一例を示すフローチャート図である。
【0163】
まず、CPU301が、着弾位置ずれ補正を開始するよう主制御部310に指示する。この指示により、主制御部310は副走査駆動部314を介して副走査モータ132を駆動しシート材150を記録ヘッド21の真下まで搬送させる(S1)。
【0164】
次に、主制御部310は主走査駆動部313を介して主走査モータ27を駆動して、キャリッジ5をシート材150上に移動し、プレインク塗布部51はキャリッジに搭載された記録ヘッドから透過率の低いインクを記録媒体に隙間無く一面に吐出して均一パターンを形成する(S1-2)。
【0165】
次に、主制御部310は主走査駆動部313を介して主走査モータ27を駆動して、キャリッジ5をシート材150上に移動し、シート材150上の特定の箇所にて発光素子と受光素子のキャリブレーションを実施する(S2)。センサキャリブレーションは図32(a)に示されるが実施例1と同様なので省略する。
【0166】
次に、印字前前処理部611のn回スキャン部は、キャリッジ5をホームポジションまで移動し、テストパターン形成前のn回スキャンを行い、n個の出力電圧データを共有メモリ525に記憶する(S3a)。n回スキャンの処理は、図32(b)に示されるが、回数が異なるだけで実施例1と同様なので説明は省略する。
【0167】
CPU301は所定の回数、出力電圧データの読み取りをn回完了したか否か確認し、完了している場合は次のS5処理に進み、完了していない場合はS3の出力電圧データの読み取り処理を再度行う(S4)。
【0168】
次に、印字前前処理部611は共有メモリ525に蓄積された所定の回数読み取ったテストパターン形成前の出力電圧データを読み出して前処理を実行し、そのデータをRAM303に保存する(S5)。S5の前処理の内容は図32(c)に示されるがすでに説明したので省略する。
【0169】
次に、テストパターン形成部52は、主走査駆動モータ27を介してキャリッジ5を移動させると共に、ヘッド駆動制御部312により記録ヘッド21〜24を駆動して、テストパターンを形成する(S6)。
【0170】
次に、印字後前処理部612のn回スキャン部は、キャリッジ5をホームポジションまで移動し、テストパターン形成後のn回スキャンを行い、n個の出力電圧データを共有メモリ525に記憶する(S3b)。処理内容は図32(b)と同様である。
【0171】
CPU301は所定の回数、出力電圧データの読み取りをn回完了したか否か確認し、完了している場合は次のS8の処理に進み、完了していない場合はS3のパターンデータ読み取り処理を再度行う(S7)。
【0172】
次に、印字後前処理部612は共有メモリ525に蓄積された所定の回数読み取った出力電圧データを読み出して前処理を実施し、そのデータをRAM303に保存する(S8)。S8の前処理の内容は図32(d)に示されるがすでに説明したので省略する。
【0173】
次に、同期処理部613は前処理が施された白紙測定データとパターン測定データをRAM303より読み出して、同期化処理によって位置あわせを行う(S9)。
【0174】
次に、パターン非依存分除外処理部614は、パターン測定データの極小値からVpを求め、白紙測定データとパターン測定データからそれぞれVpを減算する(S10)。
【0175】
次に、振幅補正処理部615は、式(2)を用いて振幅補正処理を行い演算対象データzを生成する(S11)。これにより、変曲点がスレッシュ領域内に揃った出力電圧データが得られた。 吐出タイミング補正部616は、演算対象データzによりエッジ位置を検出し、液滴の着弾位置ずれを補正する(S12)。すなわち、吐出タイミング補正部616は下限閾値Vrdと上限閾値Vruから交点C1,C2を求める。交点C1とC2の中点がテストパターンを構成するラインの位置である。吐出タイミング補正部616は各ラインの距離を適正距離と比較して着弾位置ずれ量を算出し、着弾位置ずれがなくなるように記録ヘッド21を駆動するときの液滴吐出タイミングの補正量を算出する。
【0176】
以上説明したように、本実施形態の画像形成装置100は、均一パターンを形成することで、出力電圧の変動を抑制した上で、振幅がほぼ一定になるように補正する。これにより、変曲点の位置をスレッシュ領域内に揃えることができるので、エッジ位置を精度よく求めることができ、液滴の着弾位置ずれを精度よく補正することができる。
【実施例3】
【0177】
本実施例では、パターン非依存分除外処理と振幅補正処理を画像形成装置でなく、サーバが行う画像形成システムについて説明する。
【0178】
図33は、画像形成装置100とサーバ200を有する画像形成システム500を模式的に説明する図の一例である。図33において図3と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。画像形成装置100とサーバ200がネットワーク201を介して接続されている。ネットワーク201は、社内のLAN、LAN同士を接続したWAN,若しくは、インターネット、又は、これらを組み合わせたものである。なお、画像形成装置100とサーバ200はネットワーク201でなく(又はネットワークと共に)、直接、接続されていてもよい。
【0179】
図33のような画像形成システム500では、画像形成装置100がテストパターンの形成及び印字位置ずれセンサによるテストパターンの走査を行い、サーバ200が液滴吐出タイミングの補正値を算出する。したがって、画像形成装置100の処理負荷を低減でき、サーバ200に液滴吐出タイミングの補正値の算出機能を集約できる。
【0180】
図34は、サーバ200と画像形成装置100のハードウェア構成図の一例を示す図である。サーバ200は、それぞれバスで相互に接続されているCPU61、ROM62、RAM63、記憶媒体装着部64、通信装置65、入力装置66、及び、記憶装置67を有する。CPU61は、OS(Operating System)、及び、プログラム570を記憶装置67から読み出して、RAM63を作業メモリにして実行する。このプログラム570は、液滴吐出タイミングの補正値を算出する処理を行う。
【0181】
RAM63は必要なデータを一時保管する作業メモリ(主記憶メモリ)になり、ROM62にはBIOSや初期設定されたデータ、ブートストラップローダ等が記憶されている。記憶媒体装着部64は、可搬型の記憶媒体320を装着するインタフェースである。
【0182】
通信装置65は、LANカードやイーサネット(登録商標)カードと呼ばれ、ネットワーク201に接続して、画像形成装置100の外部I/F311と通信する。なお、画像形成装置100には、少なくともサーバ200のIPアドレス又はドメイン名が登録されている。
【0183】
入力装置66は、キーボード、マウスなど、ユーザの様々な操作指示を受け付けるユーザインターフェイスである。タッチパネルや音声入力装置を入力装置とすることもできる。
【0184】
記憶装置67は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの不揮発メモリを実体とし、OS、プログラム等を記憶している。プログラム570は、記憶媒体320に記録された状態又は不図示のサーバ200からダウンロードされる態様で配布される。
【0185】
図35は、画像形成システム500の機能ブロック図の一例である。画像形成装置100は、補正処理実行部526(印字前のn回スキャン部、印字後のn回スキャン部)、及び、テストパターン形成部52のみ有し、残りの機能はサーバ側が有する。サーバ側の機能を補正処理演算部620と称する。なお、パターン記憶部54はサーバ200又は不図示の別のサーバにあってもよく、画像形成装置100がサーバ200からダウンロードしてもよい。
【0186】
補正処理演算部620は印字前の同期化部、平均化部、フィルタ処理部、印字後の同期化部、平均化部、同期処理部613、パターン非依存分除外処理部614、振幅補正処理部615、吐出タイミング補正部616、及び、パターン記憶部54、を有する。各ブロックの機能は実施例2と同様なので説明は省略する。これらの機能を全てサーバ200が有する必要はなく、一部の機能を画像形成装置100に残しておくこともできる。
【0187】
画像形成システム500では、画像形成装置側のn回スキャン部が印字前と印字後のn個のデータをサーバ200に送信する。サーバ側の補正処理演算部620は、パターン非依存分除外処理及び振幅補正処理を行って、液滴吐出タイミングの補正値を算出する。サーバ200は液滴吐出タイミングの補正値を画像形成装置100に送信するので、ヘッド駆動制御部312は吐出タイミングを変更することができる。
【0188】
図36は、画像形成システム500の動作手順を示すフローチャート図の一例である。図示するように図24のS5,S8〜S11をサーバ200が行い、これら以外の印字前後のn回のスキャンに必要な処理を画像形成装置100が行う。
【0189】
また、画像形成装置100とサーバ200が通信するため、画像形成装置100は、ステップS4-1において印字前のn個のスキャン結果を送信する処理、S7-1において印字後のn個のスキャン結果を送信する処理、を新たに行う。また、画像形成装置100は、S7-2において液滴吐出タイミングの補正値を受信する処理を新たに行う。
【0190】
これに対し、サーバ200は、S12の後、S13において、液滴吐出タイミングの補正値を画像形成装置100に送信する処理を新たに行う。
【0191】
このように、処理が行われる場所が変わるだけで、画像形成システム500は、実施例1と同様に、シート材150の特性から受ける影響を抑制して、液滴吐出タイミングを高精度に補正することができる。
【符号の説明】
【0192】
1 ガイドロッド
2 副ガイド
5 キャリッジ
7 駆動プーリ
8 主走査モータ
9 タイミングベルト
21〜24 記録ヘッド
30 印字位置ずれセンサ
41 エンコーダシート
42 エンコーダセンサ
100 画像形成装置
200 サーバ
301 CPU
310 主制御部
312 ヘッド駆動制御部
313 主走査駆動部
314 副走査駆動部
402 発光素子
403 受光素子
500 画像形成システム
525 共有メモリ
526 補正処理実行部
611 印字前前処理部
612 印字後前処理部
613 同期処理部
614 パターン非依存分除外処理部
615 振幅補正処理部
616 吐出タイミング補正処理部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0193】
【特許文献1】特開2008−229915号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に形成したテストパターンを読み取って、液滴の吐出タイミングを調整する画像形成装置であって、
前記記録媒体に光を照射する発光手段及び前記記録媒体からの反射光を受光する受光手段を有する読み取り手段と、
前記テストパターンと異なる色で、前記テストパターンよりも広い範囲に形成される均一パターンの印刷データを記憶する印刷データ記憶手段と、
前記均一パターンを前記記録媒体に印刷した後、前記テストパターンを前記均一パターン上に印刷するパターン形成手段と、
前記記録媒体又は前記読み取り手段を相対的に等速で移動させる相対移動手段と、
前記テストパターンが形成された前記記録媒体に対し前記読み取り手段が相対移動しながら、前記テストパターンを前記光が横断する際に前記受光手段が受光した前記反射光の第1の検出データを取得する第1の検出データ取得手段と、
予め定められた上限閾値と下限閾値の間に含まれる前記第1の検出データに、ライン位置決定演算を施して、前記テストパターンの位置を検出する位置検出手段、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記均一パターンが形成された後、かつ、前記テストパターンが形成される前に、前記記録媒体に対し前記読み取り手段が相対移動しながら、前記受光手段が前記光の走査位置から受光した前記反射光の第2の検出データを取得する第2の検出データ取得手段と、
前記第1の検出データと前記第2の検出データのそれぞれから前記第1の検出データの極小値と同程度の値を減じる減算処理手段と、
減算処理された前記第2の検出データに対する前記第1の検出データの割合を算出して、前記第1の検出データの極大値を略一定に揃える信号補正手段と、
を有することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記信号補正手段は、前記割合に予め定められた電圧値を乗じて、振幅が略一定のテストパターン位置決定用データを生成する、
ことを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記位置検出手段は、予め定められた上限閾値と下限閾値の間に含まれる前記テストパターン位置決定用データを直線近似して、該直線が上限閾値と下限閾値と交わる2つの走査位置の中間点を、前記テストパターンの位置として検出する、
ことを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記均一パターンの色は、前記テストパターンの色よりも光透過率が低い、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記印刷データ記憶手段は、前記均一パターンを背景に前記テストパターンが配置された、前記均一パターンと前記テストパターンが一体の印刷データを記憶しており、
前記パターン形成手段は、前記均一パターンと前記テストパターンを前記記録媒体に時間的に並行に印刷する、
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】
記録媒体に光を照射する発光手段及び前記記録媒体からの反射光を受光する受光手段を有する読み取り手段を有し、記録媒体に液滴を吐出して形成したテストパターンを読み取って、液滴の吐出タイミングを調整する画像形成装置のパターン位置検出方法であって、
パターン形成手段が、前記テストパターンと異なる色で、前記テストパターンよりも広い範囲に形成される均一パターンの印刷データを記憶する印刷データ記憶手段から読み出した、前記均一パターンを前記記録媒体に印刷した後、前記テストパターンを前記均一パターン上に印刷するステップと、
相対移動手段が、前記記録媒体又は前記読み取り手段を相対的に等速で移動させるステップと、
前記テストパターンが形成された前記記録媒体に対し前記読み取り手段が相対移動しながら、第1の検出データ取得手段が、前記テストパターンを前記光が横断する際に前記受光手段が受光した前記反射光の第1の検出データを取得するステップと、
位置検出手段が、予め定められた上限閾値と下限閾値の間に含まれる前記第1の検出データに、ライン位置決定演算を施して、前記テストパターンの位置を検出するステップと、
を有することを特徴とするパターン位置検出方法。
【請求項8】
液滴を吐出する画像形成装置を有する画像形成システムであって、
液滴の吐出タイミングを調整するためのテストパターンと異なる色で、前記テストパターンよりも広い範囲に形成される均一パターンの印刷データを記憶する印刷データ記憶手段、を有し、
前記画像形成装置は、
記録媒体に光を照射する発光手段及び前記記録媒体からの反射光を受光する受光手段を有する読み取り手段と、
前記均一パターンを前記記録媒体に印刷した後、前記テストパターンを前記均一パターン上に印刷するパターン形成手段と、
前記記録媒体又は前記読み取り手段を相対的に等速で移動させる相対移動手段と、
前記テストパターンが形成された前記記録媒体に対し前記読み取り手段が相対移動しながら、前記テストパターンを前記光が横断する際に前記受光手段が受光した前記反射光の第1の検出データを取得する第1の検出データ取得手段と、を有し、
当該画像形成システムが、予め定められた上限閾値と下限閾値の間に含まれる前記第1の検出データに、ライン位置決定演算を施して、前記テストパターンの位置を検出する位置検出手段を有する
ことを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2013−49261(P2013−49261A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−131994(P2012−131994)
【出願日】平成24年6月11日(2012.6.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】