説明

画像形成装置

【課題】専用の回収装置を設けることなく、像担持体の反転カブリトナーが減少して、フルカラーモードにおけるブラックトナーの混色が目立たない画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成部100Yが中間転写ベルト24に転写したイエロートナー像の上に画像形成部100Kがブラックトナー像を重ねて一次転写するフルカラーモードと、画像形成部100Kのみが中間転写ベルト24にトナー像を転写するブラック単色モードとを有する。フルカラーモードでは、ブラック単色モードよりも現像スリーブ3Kに印加される現像電圧の交流成分のピーク間電圧Vppが小さく設定される一方、現像スリーブ3Kの周速度は大きく設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材又は中間転写体に複数のトナー像を重ねて転写する画像形成装置、詳しくは帯電極性が反転したトナーに起因する混色を軽減する制御に関する。
【背景技術】
【0002】
像担持体に形成した静電像を帯電したトナーで現像してトナー像を形成する電子写真方式又は静電写真方式の画像形成装置が実用化されている。画像形成装置の現像装置は、帯電したトナーを担持した現像剤担持体に、直流電圧と交流電圧とを重畳した転写電圧を印加することにより、トナーを現像剤担持体から飛翔させて像担持体の静電像に静電気的に付着させる。
【0003】
中間転写体や記録材搬送体の循環経路に、それぞれ像担持体を設けた複数の画像形成部が配置されたフルカラー画像形成装置が実用化されている。1つの像担持体で順番に形成した複数のトナー像を記録材搬送体に担持された記録材又は中間転写体に順番に重ねて転写するフルカラー画像形成装置も実用化されている。画像形成装置は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を転写するフルカラーモードと、ブラックのトナー像のみを転写するブラック単色モードとを設けて、種々の運転条件や画像形成条件を最適化してある。
【0004】
特許文献1には、トナーの帯電極性と同極性に帯電させた像担持体を走査露光して露光部分の帯電電位を低下させ、低下部分にトナーを付着させる反転現像方式の画像形成装置が示される。ここでは、逆極性に帯電した反転トナーが非露光部に静電気的に付着したいわゆる反転カブリトナーを除去することが課題とされている。そして、非露光部よりも高い電位に帯電させた回収ローラを現像面に接触させて、反転トナーを非露光部から回収ローラへ静電気的に移動させている。
【0005】
特許文献2には、イエロー、シアン、マゼンタの2成分現像剤を用いるロータリー現像器とブラックの磁性1成分現像剤を用いる固定現像器とを1つの感光ドラムに接して配置した画像形成装置が示される。共通の感光ドラムに現像器を切り替えて順番に形成したイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像は、中間転写ドラムに順番に一次転写して重ね合わせた後に、記録材へ一括二次転写される。
【0006】
特許文献3には、記録材搬送ベルトの上向き直線区間にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部を直列に配置した画像形成装置が示される。記録材搬送ベルトに吸着して搬送される記録材に対して、4つの画像形成部で各色トナー像が直接に転写して重ね合わせられる。
【0007】
【特許文献1】特開平09−230693号公報
【特許文献2】特開2003−255663号公報
【特許文献3】特開2001−188394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フルカラーモードの画像形成時、像担持体に付着したブラックのかぶりトナーが他色のトナー像に混色すると最終的な画像の輝度が低下する。輝度差の大きいイエローのトナー像にブラックのかぶりトナーが混色すると、わずかな量でも、混色しない部分との輝度差が視覚的に目立つ結果となる。このため、ブラックのかぶりトナーは極力減らす必要がある。
【0009】
しかし、特許文献1に示される回収ローラは、現像面を一様に転がって反転トナーを回収するので、露光部に形成されたトナー像にも接触して、電気的、機械的に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0010】
また、像担持体としての感光ドラムは、近年、直径30mm程度にまで小径化され、感光ドラムの周囲には、帯電装置、露光装置、現像装置等が隙間無く配置されるため、専用の回収ローラを配置することは困難である。種々の駆動機構が入り組んだ感光ドラムの軸端空間に、感光ドラムに追従して回収ローラを回転させるためのモーターや連動機構を配置することはさらに困難である。
【0011】
また、後述するように、反転トナーは、従来考えられていたように、現像剤の容器内で発生するばかりでなく、かなりの割合で、現像スリーブに担持された後、現像領域を通過する際に発生することが確認された。
【0012】
そして、この現像スリーブ上での反転トナーは、カーボンを含むブラックトナーを高湿度環境で使用した際に発生し易くなることが確認された。
【0013】
本発明は、この新たに発見された現像スリーブ上での反転トナーの発生を抑制することで、専用の回収装置を設けることなく、像担持体のかぶりトナーを実用レベルに減少させ得る画像形成装置を提供することを目的としている。また、像担持体のかぶりトナーを減らして、フルカラーモードにおけるブラックトナーの混色が目立たない画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の画像形成装置は、帯電したトナーを担持させた現像剤担持体に、交流成分を含む現像電圧を印加して像担持体に形成された静電像を現像してトナー像を形成する第1及び第2現像装置と、移動する転写媒体に対して、前記第1現像装置により形成されたトナー像、前記第2現像装置により形成されたトナー像の順番に、前記トナー像を静電気的に転写する転写装置とを有するものである。また、前記第1現像装置と前記第2現像装置の両方を用いて画像形成を行う第1モードと、前記第1現像装置と前記第2現像装置のうち前記第2現像装置のみを用いて画像形成を行う第2モードとを有する。そして、前記第2現像装置は、前記第1モードでは、前記第2モードよりも前記交流成分の振幅が小さい現像電圧にて現像可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像形成装置では、第1モードと第2モードとにおける反転トナーの転写環境の差を利用して、転写媒体へ転写される反転トナーを減少させる。転写装置は、本来、正規極性に帯電したトナーを像担持体から転写媒体へ静電気的に移動させるので、第2モードであれば、反転トナーは、同じ転写装置によって転写媒体へ静電気的には移動しない。反転トナーは、像担持体へ押し戻される方向に静電気的な力を受けるからである。
【0016】
しかし、第1モードでは、転写媒体へ先に転写された正規極性に帯電したトナー像が反転トナーを静電気的に引き付けるので、両者が混ざり合って分離できなくなる。
【0017】
そこで、第2モードでは、現像剤担持体から像担持体への反転トナーの移動は無視して、相対的に高い交流電圧を用いることにより、正規極性のトナーに対する高い現像効率を享受する。しかし、転写媒体へトナー像を重ねる第1モードでは、正規極性のトナーに対する多少の現像効率低下は我慢して、相対的に低い交流電圧を用いることにより、現像剤担持体から像担持体への反転トナーの移動量を大きく減らすことができる。後述するように、現像に用いる交流電圧を少し低下させることで、反転トナーの発生率は、正規極性のトナーの現像効率よりも劇的に低下するからである。
【0018】
また、後述するように、正規極性のトナーの現像効率の低下は、現像剤担持体と像担持体との相対速度を高めることで、十分に相殺可能だからでもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、現像に用いる交流電圧の振幅を低下させて像担持体に付着する反転トナーを減少させる限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0020】
本発明は、中間転写体や記録材搬送体に沿って複数の画像形成部を配置した画像形成装置のみならず、1つの像担持体に沿って各色現像器を配置した画像形成装置でも実施できる。なお、中間転写体や記録材は、像担持体からトナー像を転写される物体と見なして、転写媒体と総称する。
【0021】
本実施形態では、トナー像の形成に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を付加して、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
【0022】
なお、特許文献1に示される画像形成装置の構成部材、電源、装置機器、制御等に関する一般的事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
【0023】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の画像形成装置の概略的な構成の説明図、図2は画像形成部の構成の説明図である。画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部100Y、100M、100C、100Kを、中間転写ベルト24の直線区間に配列した電子写真方式タンデム型フルカラープリンタである。画像形成装置100は、接続された原稿読取装置又は通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器からの画像信号に応じて、4色フルカラー画像を記録用紙、プラスチックフィルム、布等の記録材Pに形成する。
【0024】
図1に示すように、画像形成部100Y、100M、100C、100Kは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色トナー像を形成し、中間転写ベルト24に連続的に転写して重ね合わせる。
【0025】
中間転写体の一例である中間転写ベルト24は、駆動ローラ29、従動ローラ33、および二次転写内ローラ30に掛け渡して支持され、駆動ローラ29に駆動されて図中矢印方向に循環する。二次転写外ローラ31は、中間転写ベルト24と搬送材8とを介して二次転写内ローラ30に圧接して、中間転写ベルト24と搬送材8との間に二次転写部を形成する。搬送材8は二次転写部を通過する不図示の循環経路で循環し、記録材Pを表面に吸着させて二次転写部を通過した後に、記録材Pを確実に中間転写ベルト24から分離させる。
【0026】
中間転写ベルト24上のトナー像にタイミングを合わせて、不図示の記録材収納カセットから記録材Pが1枚ずつ取り出され、供給ローラ32、搬送材8により二次転写部へ送り込まれる。電源D31が二次転写外ローラ31へ二次転写電圧を印加することにより、中間転写ベルト24上の4色のトナー像は、重ねて挟持搬送される記録材Pの表面に一括二次転写される。4色のトナー像を二次転写された記録材Pは、搬送材8によって定着装置25に搬送され、定着装置25で加熱加圧されて、表面にフルカラー画像を定着される。
【0027】
画像形成装置100の装置本体に配置された画像形成部100Y、100M、100C、100Kは、現像色が異なることを除いて、実質的に同一の構成を有する。従って、いずれの画像形成部に属するかを表すための添え字Y、M、C、Kを省略して構成部材に参照符号を付した図2を参照して総括的に説明する。
【0028】
図2に示すように、画像形成部100Y、100M、100C、100Kは、図中矢印方向に回転駆動される円筒形の電子写真感光体であって、像担持体の一例である感光ドラム28を有する。回転する感光ドラム28の周囲には、帯電器21、露光装置22、現像器1、一次転写ローラ23、ドラムクリーニング装置26が固定して配置される。第1実施形態では、帯電させた感光ドラム28の表面を露光して露光部分の電位を低下させ、電位が低下した部分に選択的にトナーを付着させる反転現像方式を採用している。
【0029】
帯電手段の一例である帯電器21は、電源D21から負極性の駆動電圧を供給されて感光ドラム28の表面を一様な負極性に帯電する。
【0030】
露光手段の一例である露光装置22(レーザースキャナ)は、半導体レーザー素子から出力させたレーザービームを回転ミラーで走査して感光ドラム28の表面を軸方向に走査露光する。入力された画像信号に応じて半導体レーザー素子をPWM変調することにより、各色の分解画像における高濃度の画素は大きな面積が露光され、低濃度の画素は小さな面積が露光される。これにより、感光ドラム28の表面には、各色の分解画像においてトナーが付着すべき部分の電位を低下させた静電像が形成される。
【0031】
現像装置の一例である現像器1は、現像剤担持体の一例である現像スリーブ3の円筒面に、負極性に帯電したトナーを担持させて、感光ドラム28の表面に形成された静電像を現像する。
【0032】
現像スリーブ3は、制御部35によって回転数が二段階に設定されるモータM3に駆動されて、感光ドラム28と僅かな隙間を隔てて回転する。現像スリーブ3には、電源D3から負極性の直流電圧と交流電圧とを重畳した現像電圧が印加される。このとき、交流電圧に応答して現像スリーブ3から飛散した負極性のトナーが、直流電圧よりも正極性側に帯電した静電像の部分(図6参照)に付着する。これにより、感光ドラム28の露光部分に正規極性のトナーが付着して反転現像されたトナー像が形成される。
【0033】
転写装置の一例である一次転写ローラ23は、中間転写ベルト24を介して感光ドラム28に圧接する。一次転写ローラ23は、電源D23から正極性の直流電圧(転写電圧)を印加されることにより、感光ドラム28の表面の負極性のトナー像を引き付けて中間転写ベルト24に移動させる。
【0034】
制御手段の一例である制御部35は、これらの部材、電源、装置を制御して第1モードの一例であるフルカラーモードと、第2モードの一例であるブラック単色モードとによる画像形成を実行する。
【0035】
画像形成動作が開始すると、回転する感光ドラム28の表面が帯電器21によって一様に帯電される。次いで、感光ドラム28は、露光装置22から発せられる画像信号に対応したレーザー光により露光される。感光ドラム28上の静電像は、現像器1によって顕像化され、可視像のトナー像となる。感光ドラム28上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ23に転写電圧を印加して、中間転写ベルト24上に一次転写される。一次転写後に感光ドラム28表面に残ったトナー(転写残トナー)はドラムクリーニング装置26によってクリーニングされる。
【0036】
フルカラーモードでは、この動作を画像形成部100Y、100M、100C、100Kで順次行い、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を中間転写ベルト24に一次転写して重ね合わせる。そして、二次転写内ローラ30に二次転写電圧を印加することにより、中間転写ベルト24上の4色のトナー像を、搬送材8上に担持されている記録材P上に一括二次転写する。
【0037】
次いで、記録材Pは、搬送材8から分離され、定着手段としての定着装置25に搬送される。定着装置25によって、加熱、加圧されることで、記録材P上の4色のトナー像は溶融、混合されて、フルカラーの永久画像となる。その後、記録材Pは機外に排出される。二次転写部で転写しきれずに中間転写ベルト24に残留したトナーは、ベルトクリーニング装置18により除去される。これにより、一連の動作が終了する。
【0038】
ブラック単色モードでは、画像形成部100Y、100M、100Cはトナー像を形成せず、画像形成部100Kで形成したブラックのトナー像のみが中間転写ベルト24に一次転写される。その後は、フルカラーモードと同様に記録材Pに二次転写されて定着される。
【0039】
<現像器>
図3は現像器を正面側から見た断面図、図4は現像器の平断面図、図5は2成分現像剤中のトナーの帯電量分布の説明図である。現像器1には、非磁性トナ−と磁性キャリアとからなる2成分現像剤が収容されており、初期状態の現像剤中のトナー濃度は7%である。この値は、トナーの帯電量、キャリア粒径、画像形成装置の構成等で適正に調整されるべきものであって、必ずしもこの数値に限られるものではない。
【0040】
図3に示すように、現像装置の一例である現像器1は、感光ドラム28に対向した位置に形成された開口部2dに一部露出させて、感光ドラム28に現像剤を搬送する現像スリーブ3を回転可能に配置している。第1実施形態では、第1現像装置はイエローの現像器1Y、第2現像装置はブラックの現像器1Kに対応している。従って、現像器1Yと現像器1Kとの両方を用いて画像形成を行う第1モードはフルカラーモードに、現像器1Yと現像器1Kとのうち現像器1Kのみを用いて画像形成を行う第2モードはブラック単色モードに対応している。
【0041】
現像剤担持体の一例である現像スリーブ3は、磁界発生手段である固定のマグネット4を内包すると共に非磁性材料で構成され、現像動作時には矢印方向に回転する。固定のマグネット4の隣接した同極性の磁極の一つである現像剤層厚規制極に対向させて、磁性体からなるドクターブレード13が、現像スリーブ3と所定間隙をもって配置される。現像スリーブ3は、現像容器2内の2成分現像剤を、ドクターブレード13によって層厚規制した層状に保持しながら現像領域に担持搬送する。現像スリーブ3は、マグネット4の磁極に応答して穂立ちして磁気ブラシに形成された2成分現像剤を感光ドラム28と対向する現像領域に供給して、感光ドラム28に接触させて、静電像を現像する。静電像を現像した後の現像剤は、現像スリーブ3の回転にしたがって搬送され、現像剤収納部である現像容器2内に回収される。
【0042】
現像時の現像スリーブ3には、上述した現像電圧として、交流電圧に直流電圧を重畳した振動バイアスが印加される。すなわち、現像スリーブには、交流成分を含む現像電圧が印加される。感光ドラム28上に形成された潜像の暗部電位(非露光部電位)と明部電位(露光部電位)は、振動バイアス電圧の最大電位と最小電位の間に位置している。これによって、現像領域には、向きが交互に変化する交番電界が形成され、磁気ブラシに形成された現像剤のトナーとキャリアが激しく振動する。そして、トナーが現像スリーブ3およびキャリアの静電拘束力を振り切って、感光ドラム28の静電像に潜像電位に対応した量で付着することにより、静電像が現像される。なお、ここで言う交流成分とは、一般的な交流電圧以外に、直流電圧を所定の周期でON/OFFスイッチングして得られる電圧の形態も含む。
【0043】
振動バイアスの振幅(最大値と最小値の差であるピーク間電圧Vpp)は、現像効率すなわち上記潜像電位をトナー電荷で埋める効率に大きく関連する。ピーク間電圧Vppを大きくすると、電荷をもつトナーには、トナーとキャリア間の静電拘束力に勝る電界の力が加わり、キャリアから飛翔したトナーが多く存在できるため現像効率が上がる。逆にVppが下げると、上記静電拘束力によってトナーがキャリアに拘束される割合が高まって、現像に寄与できるトナー数が減るため現像効率が下がる。現像効率が下がると、濃度変動等の画像弊害が発生するため、一般にVppは良好な現像効率が得られる値に設定される場合が多い。本実施形態でのピーク間電圧Vppの設定については、本出願に重要に関わる箇所であり、後に詳細に述べる。
【0044】
現像容器2は、現像スリーブ3に沿って区画された現像スリーブ3に近い第1室である現像室2Aと、現像スリーブ3から遠い第2室である攪拌室2Bとを備える。現像室2Aには第1現像剤循環スクリュー2aを、攪拌室2Bには第2現像剤循環スクリュー2bを配置して、現像スリーブ3と共通の駆動源であるモータM3によって駆動して回転させている。これにより、図4に示すように、2成分現像剤が現像剤循環経路2cを循環して混合攪拌される。循環方向は、攪拌室2B側(第2現像剤循環スクリュー2b側)では手前側から奥側に向かう方向であり、現像室2A側(第1現像剤循環スクリュー2a側)では奥側から手前側に向かう方向である。第2現像剤循環スクリュー2b、第1現像剤循環スクリュー2aは,シール壁19によって回転自在に支持される。外壁20の外側に第2現像剤循環スクリュー2b、第1現像剤循環スクリュー2aを現像スリーブ3と一体に回転させる歯車列が配置される。
【0045】
図3に示すように、トナーボトル5には、補充用の未帯電トナーが充填されている。不図示の磁気センサーによって検知される2成分現像剤のトナー濃度が所定水準を割り込むと、供給スクリュー5aが回転して、トナー供給口6から未帯電トナーを取り込み、図4に示される攪拌室2B側の補給場所へ供給する。未帯電トナーは、第2現像剤循環スクリュー2bによって現像剤と攪拌混合され、現像室2A側へ移行する。現像室2Aの2成分現像剤におけるトナー粒子の帯電量は、図5に分布Bとして示すように、ある一定の分布を持って広がっている。トナーボトル5から供給される未帯電トナー粒子の帯電量は、分布Cとして示した。未帯電トナーの帯電分布は、帯電量0近傍にピークをもつ分布Cを示しており、第2現像剤循環スクリュー2bによるキャリアとの攪拌混合により、分布Bと略同等の帯電分布に帯電される必要がある。
【0046】
ここで、トナー粒子の帯電量は、ホソカワミクロン(株)のEspartアナライザーにて測定した。Espartアナライザーは、電場と音響場を同時に形成させた検知部(測定部)に試料粒子を導入し、レーザードップラー法で粒子の移動速度を測定して、粒径と帯電量を測定する装置である。装置の測定部に入った試料粒子は、音響場と電場の影響を受け、水平方向に偏倚しながら落下し、この水平方向の速度のビート周波数がカウントされる。カウント値は、コンピュータに割り込みで入力され、リアルタイムでコンピュータ画面に粒子径分布あるいは単位粒径当たりの帯電量分布が示される。そして、所定の個数分の帯電量が測定されると画面は停止し、その後、帯電量と粒子径の3次元分布や粒径別の帯電量分布、平均帯電量(クーロン/重量)などが画面に表示される。Espartアナライザーの測定部に試料粒子としてトナーを導入することで、トナーの帯電量を測定し、トナーの帯電性能から粒径と帯電量の関係を評価できる。
【0047】
2成分現像剤中のトナーの帯電分布を測定する場合、測定対象となる2成分現像剤を電磁石等に保持させ、適正な強さのエアを吹きかけて、2成分現像剤中からトナーのみを分離した。これにより、キャリアとトナーが混合されている2成分現像剤中から試料粒子としてトナーのみをEspartアナライザーの測定部に導入できる。エア圧は、2成分現像剤中のキャリアを電磁石から分離させることなく、キャリアからトナーを分離させる適正水準に調整した。
【0048】
未帯電トナーの帯電分布を測定する場合、測定対象となる未帯電トナーを薬さじに所定個数(Espart測定個数、本実験では3000個)以上載せ、適正な圧力のエアを吹きかけた。これにより、Espartアナライザーの測定部に未帯電トナーを試料粒子として導入できる。
【0049】
<フルカラーモードにおけるブラックトナーの混色現象>
図6は潜像コントラストと現像コントラストの関係の説明図、図7は感光ドラムに形成される反転カブリトナーと中間転写ベルトに一次転写された反転カブリトナーとを比較した説明図である。図6には、感光ドラム28に形成された静電像の画像部/非画像部の電位と、現像スリーブ3に印加する現像電圧の直流成分の絶対値をそれぞれ模式的に表している。上述したように、第1実施形態では、ネガ帯電された感光ドラム28を露光して電位を低下させた部分にネガトナーを付着させてトナー像に可視化している。静電像の画像部/非画像部の電位差が潜像コントラストである。そして、潜像コントラストのうち、画像部側における現像電圧の直流成分との電位差が現像コントラストとなり、非画像部側における現像電圧の直流成分との電位差がかぶり取り電位となる。
【0050】
一様にネガ極性を持つ正常な帯電分布(図5の分布B)のトナーは、画像部では、現像コントラストVcontにより、感光ドラムへ押し付けられる方向に力を受け、現像動作が行われる。現像コントラストは、現像スリーブ3から露光部へ正常な帯電分布のトナーを移動させる駆動力となる。
【0051】
一方、非画像部では、かぶり取り電位Vbackを受けることで、感光ドラム28から引き離されて現像スリーブ3に戻される方向の力を受ける。このため、正常な帯電分布のトナーは、非画像部に対するトナー付着(所謂かぶり)が発生しづらい。
【0052】
しかし、現像スリーブ3に担持されるトナーの帯電分布は、図5に示す分布Aのようなポジ帯電も含んだ帯電分布になる場合がある。このような反転トナー(第1実施形態ではポジ)が発生した場合、図6に示すかぶり取り電位Vbackによって、正常なネガトナーとは逆の方向に力を受ける。すなわち、反転トナー(ポジトナー)は、かぶり取り電位によって現像スリーブ3から分離して感光ドラム28へ押し付けられる力を受けて、非画像部にトナー付着(いわゆる反転カブリ)が発生する。反転カブリが生じると、第1実施形態のように、各色のトナー像を重ね合わせてカラー画像を形成する際に混色問題が生じる。
【0053】
イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順にトナー像を一次転写する画像形成装置100で、画像形成部100Kの現像器1Kで反転カブリが発生した場合を想定する。このとき、ブラックのトナー像を中間転写ベルト24に転写する際、中間転写ベルト24上のイエローのトナー像に感光ドラム28K上の非画像部が重なった部分で、イエローのトナー像にブラックの反転カブリトナーが混色する可能性がある。この理由は、以下による。
【0054】
一次転写ローラ23Kに印加される転写電圧は、正常な帯電状態のトナーを感光ドラム28Kから分離して中間転写ベルト24へ移動させ、反転トナーを中間転写ベルト24から分離して感光ドラム28Kへ移動させる。これにより、感光ドラム28Kの画像部に付着したブラックのトナー像は、中間転写ベルト24に一次転写され、非画像部に付着した反転カブリトナーは、感光ドラム28Kに止まって中間転写ベルト24には転写されない。
【0055】
しかし、中間転写ベルト24上にイエローのトナー像が存在している場合、感光ドラム28Kの非画像部に付着した反転カブリトナーは、重ねて挟持搬送されるイエローのトナー像と極性が逆になっている。このため、クーロン力によって両者が一体に混ざり合うと一次転写ローラ23Kに印加される転写電圧では分離できなくなる。イエローのトナー像のうち感光ドラム28Kの非画像部に重なる部分にだけうっすらと反転カブリトナーが転写される結果、意図しない輝度境界が形成された混色画像が顕在化する。
【0056】
上記の現象は、例にあげたイエローのトナー像上のブラックの反転トナーが視覚的に一番目立ちやすく問題になるが、マゼンタのトナー像やシアンのトナー像に対しても同様に発生している。図7の(a)、(b)は、現像電圧の直流成分の設定に応じて感光ドラム28に形成されるかぶりトナーと、中間転写ベルト24に一次転写されるかぶりトナーがどのように変化するかを示している。横軸はかぶり取り電位Vbackである。図7の(a)に示すように、感光ドラム28K上に形成されるかぶりトナーは、かぶり取り電位Vbackの小さい領域では、低帯電トナーに起因する地かぶりと反転トナーに起因する反転カブリとが混在している。しかし、かぶり取り電位Vbackが、ある一定値を超えると、反転カブリが顕著に表れてくる。
【0057】
図7の(b)に示すように、ブラック単色モードでは、反転カブリトナーが中間転写ベルト24に転写されないので、かぶり取り電位Vbackを大きくしても、かぶり現象は顕在化しない。
【0058】
しかし、フルカラーモードにおいて、上流の画像形成部100Y、100M、100Cで形成されたトナー像上のかぶりは、破線で示すように、かぶり取り電位Vbackが大きくなるにつれて増えている。これは、ネガ性を持つトナー像に、ポジ性を持つ反転カブリトナーが静電的に吸着混在した状態で、中間転写ベルト24に転写されることに起因する。ネガ性を持つトナー像に混在した反転カブリトナーは、二次転写部でも分離されることなく、一体に記録材Pへ二次転写されてしまう。しかし、反転カブリを回避するために、単純にかぶり取り電位Vbackを小さめに設定すると、図7の(b)に示すように、当然地かぶりが顕著に発生してしまう。
【0059】
<実施例1>
図8は現像電圧の交流成分のピーク間電圧と反転トナーの発生量との関係の説明図、図9は現像電圧の交流成分のピーク間電圧と現像器の現像効率との関係の説明図である。図10は現像スリーブの周速と現像効率との関係の説明図、図11は現像電圧の交流成分のピーク間電圧と現像効率と現像スリーブの周速との関係の説明図である。
【0060】
実施例1では、反転カブリが画像上に顕在化してしまう画像の重ね合わせを必要とするフルカラーモードと、画像の重ね合わせのないブラック単色モードとで現像器1の制御を切り替えている。これにより、特許文献1に示されるような専用の回収装置を設けることなく、反転カブリトナーが正常なトナー像の上に吸着転写される現象を解消して、良好な画像形成を可能にしている。
【0061】
まず、反転カブリを引き起す反転トナーの発生原因について詳細に述べる。図4に示すように、未帯電トナーは、現像剤循環経路2cを経てキャリアに攪拌混合されることで、図5の分布Bに示す正常な帯電分布を付与されている。そして、現像スリーブ3Kによって現像領域へ運ばれる2成分現像剤に通常とは逆の極性をもった帯電不良トナーを含んでしまう多くの場合、現像器1Kの長期間の運転によってキャリアの帯電能が劣化し、攪拌によるトナーへの摩擦帯電が十分に機能していない。また、初期の現像剤では反転トナーの問題が発生する頻度は低く、キャリア寿命末期とみなして現像器1Kごと交換することで反転トナーの問題は十分に解消されていた。
【0062】
しかし、本発明者の鋭意検討の結果、ブラック顔料として抵抗の低いカーボンを利用したブラックトナーを用いた場合、現像剤循環経路2c以外でも反転トナーが発生し得ることが判明した。現像電圧の印加条件によっては、現像スリーブ3Kに担持された2成分現像剤中のネガトナーが現像領域を通過する過程でポジ反転する場合もあることが判明した。現像スリーブ3に対して感光ドラム28の電位が相対的にマイナスになる電界(引き戻し現像電界)に晒されると、一様にネガ帯電されているトナーにポジ電荷が注入されて、一部にポジ側の極性をもつトナー(反転トナー)が発生する場合がある。
【0063】
現像領域でポジ電荷が注入される現象は、現像電圧の交流成分のピーク間電圧Vppが大きい場合に顕著になり、その結果、ポジ反転するトナー量が増えて、反転カブリが目立ってくる。現像電圧として、直流成分に交流成分を重畳した矩形バイアスを用いる場合、直流成分のピーク間電圧Vppを大きくすると反転トナーが増加する。ピーク間電圧Vppを大きく設定すると、現像領域でポジ反転するトナーが増加して、かぶり取り電位Vbackを大きくした場合の反転カブリ量が増えてしまう。逆に、ピーク間電圧Vppを小さく設定すると、現像スリーブ3に担持された状態では、ポジ反転トナー量が少ないため、同じかぶり取り電位Vbackでも反転カブリはほとんど発生しない。
【0064】
図8にピーク間電圧Vppの設定値と反転カブリ量についてのデータを示す。ここで、反転カブリ量は、Espartアナライザーを用いて測定した全トナー中の反転トナーの個数の割合(%)を示す。このデータ測定時、ドラム周速は、100mm/s、スリーブ周速を130mm/sに設定している。
【0065】
図8に示すように、ピーク間電圧Vppを1.2kV以下にすると、反転トナー量が著しく減少するので、中間転写ベルト24上のトナー像と反転カブリトナーとの静電吸着による反転カブリは、ほとんど発生しない。なお、図8の測定結果は、スリーブ周速130mm/s時のデータであるが、スリーブ周速を200mm/s程度まで高めてもほぼ同様の結果であった。現像領域の現像剤へ交流成分を印加することにより発生する反転カブリは、ポジ電荷注入によって起きるため、現像電圧の交流成分のピーク間電圧Vppとトナーの抵抗値に大きく依存する。
【0066】
図9にピーク間電圧Vppの設定値と現像器1の現像効率と測定した結果を示す。ここでは、測定時のドラム周速は100mm/s、スリーブ周速度は130mm/sに設定している。ピーク間電圧Vppの大きさによって現像効率が左右されるので、ピーク間電圧Vppは、良好な現像効率が得られる範囲に設定される。
【0067】
図9に示すように、ピーク間電圧Vppを上げるほど現像効率が高くなる。従って、図8の測定結果に基いてピーク間電圧Vppの設定を低下させて、反転カブリの原因である現像領域におけるポジ電荷の流入を抑えると、いくぶん現像効率が損なわれる結果となる。
【0068】
なお、現像効率の測定方法としては、まず、感光ドラム28の画像部電位Vlを測定し、その後、現像後のトナー電位Vtを測定した。そして、画像部電位Vlとトナー電位Vtとの差分を、現像コントラストVcontで除した比率を現像効率としている。従って、例えば現像後のトナー電位Vtが、現像バイアスのVdcに収束していれば、Vl−Vt=Vcontになるため、現像効率(Vl−Vt)/Vcontは100%になる。感光ドラム28Kの表面電位、および現像したトナー像の表面電位は、Trek社製の表面電位計MODEL344と専用の測定プローブとを用いて測定した。
【0069】
図10は、感光ドラム28Kの周速度を100mm/sに固定して、現像スリーブ3Kの周速度を110〜180mm/sに変更して現像効率を測定した結果である。現像電圧の交流成分は12kHzの矩形波、そのピーク間電圧Vppは1.2kVとした。
【0070】
図10に示すように、現像スリーブ3Kの周速度を上げると現像効率が上がることがわかる。この結果は、現像スリーブ3Kの周速度を上げると、現像領域に運ばれる単位時間当たりのトナー量が増えるため、同じピーク間電圧Vppでも現像に寄与できる飛翔トナー数が増える分、現像効率を高めていると理解できる。また、この結果は、現像効率に関与するピーク間電圧Vppの設定を下げても、その分、現像スリーブ3Kの周速度を高めて現像に関与するトナー量を補えば、現像効率を損なわないで済むことを意味している。
【0071】
図11は、現像スリーブ3Kの周速度を130mm/sから160mm/sに高めて、同様に、ピーク間電圧Vppを変更して現像効率を測定した結果である。
【0072】
図11に示すように、現像スリーブ3Kの周速度が130mm/sのとき、ピーク間電圧Vppを1.6kVから1.2kVに下げると、現像効率が100%から90%程度まで低下する。しかし、その分、現像スリーブ3Kの周速度を160mm/sに上げることで、現像効率がピーク間電圧Vppを下げる前の100%まで回復できることが理解される。
【0073】
実施例1では、図8、図11の特性を利用している。フルカラーモードとブラック単色モードとにおいて、現像器1の現像電圧のピーク間電圧Vppと現像スリーブ3Kの周速度とを表1のように切り替えて設定する。これにより、現像効率の低下や現像剤の早期劣化等の弊害を生じることなく、反転カブリに起因する画像品質低下を抑制している。
【0074】
【表1】

【0075】
ブラックトナーは、顔料に抵抗の低いカーボンを用いているために現像時のトナー極性が反転しやすい傾向を持つ。そこで、反転トナーが中間転写ベルト24上のトナー像に静電吸着されて反転カブリが目立ち易いフルカラーモードでは、現像電圧の交流成分のピーク間電圧Vppを1.2kVに設定した。これにより、ブラックの現像器1Kの現像スリーブ3Kが現像領域を通過する際のトナーの極性反転を抑制して、反転カブリを発生させないことを優先させた。そして、ブラック単色モードに比較して、ピーク間電圧Vppを低下させたことによる転写効率の低下は、現像スリーブ3Kの周速度を160mm/sに高めて相殺した。
【0076】
しかし、ブラック単色モードでは、現像領域で反転トナーがいくら発生しても中間転写ベルト24にはほとんど転写されない。感光ドラム28Kに反転カブリが発生しても、上述したように、一次転写に際して極性反転したポジトナーは感光ドラム28Kへ戻る方向に力を受けるからである。このため、現像電圧の交流成分のピーク間電圧Vppを高めの1.6kVに設定して、転写効率を高め、現像スリーブ3Kの周速度を130mm/sに据え置くことを優先した。
【0077】
フルカラーモードに比べてピーク間電圧Vppを高めに設定しているため、現像スリーブ3Kの周速度が130mm/sでも現像効率はフルカラーモード時と同等を維持できる。更に現像スリーブ3Kの周速度を低く設定することで、画像一枚を出力する際に必要な現像スリーブ3Kの回転数が少なくなり、現像スリーブ3Kとドクターブレード(13:図3)との隙間での摺擦に伴う現像剤劣化を軽減できる。
【0078】
つまり、ブラック現像のピーク間電圧Vppおよび現像スリーブ3Kの周速度の設定をフルカラーモードと等しくしても、ブラック単色モードでの反転カブリと現像効率に問題は発生しない。しかし、使用頻度が高いブラック単色モードで高めの周速度の設定を用いると、消費電力増や現像剤劣化のためランニングコストが上昇し、現像器1Kの寿命低下やメンテナンス間隔の短縮等の問題を引き起すので好ましくない。
【0079】
なお、ブラック以外の他色の画像形成部100Y、100M、100Cについては、ブラックトナーに比べてトナー抵抗が高いため、高目のピーク間電圧Vppでも帯電極性が反転し難い傾向を持つ。そこで、現像剤劣化の抑制等の観点から、現像スリーブ3Kの周速度を遅めの130mm/sとし、ピーク間電圧Vppは1.6kVに設定している。
【0080】
以上説明したように、画像形成装置100の画像形成部100Kは、帯電したトナーを担持させた現像スリーブ3Kに、交流成分を含む現像電圧を印加して感光ドラム28Kに形成された静電像を現像してトナー像を形成する現像器1Y及び現像器1Kと、移動する中間転写ベルト24に対して、現像器1Yにより形成されたイエロートナー像、現像器1Kにより形成されたブラックトナー像の順番に、トナー像を静電気的に転写する一次転写ローラ23Y、23Kとを有する。また、現像器1Yと現像器1Kの両方を用いて画像形成を行うフルカラーモードと、現像器1Yと現像器1Kのうち現像器1Kのみを用いて画像形成を行うブラック単色モードとを有する。そして、現像器1Kは、第1モードでは、第2モードよりも交流成分の振幅の一例であるピーク間電圧Vpp振幅が小さい現像電圧にて現像可能である。
【0081】
現像器1Kで用いるトナーは、カーボンを顔料に含むブラックトナーである。現像器1Kの現像スリーブ3Kは、感光ドラム28Kと隙間を隔てて回転する円筒面にブラックトナーを担持する。実施例1のフルカラーモードでは、ブラック単色モードよりも感光ドラム28Kと前記円筒面との相対速度が大きく設定される。
【0082】
画像形成装置100は、中間転写ベルト24の循環経路に沿って、それぞれに感光ドラム28、現像装置1、および一次転写ローラ23Kを備えた複数の画像形成部100Y、100M、100C、100Kが配置される。最も下流に配置された画像形成部100Kが、ブラックトナーによる前記トナー像を形成する。第1モードは、複数の画像形成部100Y、100M、100C、100Kから中間転写ベルト24へ前記トナー像を転写するフルカラーモードである。第2モードは、最も下流に配置された画像形成部100Kのみが前記トナー像を形成して中間転写ベルト24へ転写するブラック単色モードである。
【0083】
実施例1は、専用の回収装置等を設けることなく、既存の構成を用いた簡単な制御の追加(図12参照)のみで、ブラックの反転カブリトナーが他色のトナー像の上に吸着転写される現象を解消する。他に弊害なく色純度の高い明るい高品質な画像形成を行うことができる。
【0084】
なお、フルカラーモードとブラック単色モードとにおけるピーク間電圧Vppと現像スリーブ3Kの周速度との設定値は、一例として挙げたものであり、上記数値に限定されるものではない。少なくとも、フルカラーモードにおけるブラック現像のピーク間電圧Vppは、反転カブリが発生しなくなるようブラックモードにおけるピーク間電圧Vppに比較して低めに設定すればよい。そして、ピーク間電圧Vppを低めにした分の現像効率低下を補うように、現像スリーブ3Kの周速度をブラックモードよりも高めに設定すればよい。これにより、実施例1と同等の効果が得られる。
【0085】
好ましくは、フルカラーモードにおけるブラック現像のピーク間電圧Vppは、ブラックモードよりも20〜40%程度低く設定し、現像スリーブ3Kの周速度は、ブラックモードよりも20〜40%程度高めに設定する。これにより、フルカラーモードにおける現像性を損なうことなく、反転カブリを防止でき、ブラックモードにおける現像剤の劣化、現像器1Kの寿命低下を抑制できる。
【0086】
以上説明したように、実施例1によれば、フルカラー画像を形成する画像形成装置100において、他色のトナー像の上にブラックの反転カブリトナーが転写される反転カブリが抑制される。これにより、ブラックの反転カブリトナーによる混色や、色味変動の発生を防止できる。高速の印刷能力、イメージ画像印刷、機体寿命等を損なうことなく、印刷画質も高品質で高精細なフルカラー画像形成装置を提供できる。
【0087】
なお、実施例1では、図1に示すように、ブラックの画像形成部100Kが最下流に配置されたタンデム型中間転写方式の画像形成装置100を用いて説明したが、実施例1の適用は、これに限定されない。フルカラーモードにおけるブラックトナー像の転写時に、他色のトナー像が中間転写ベルトもしくは記録材に載っている、ブラック単色モードとフルカラーモードとを持つ画像形成装置であれば、実施例1を適用して同様の効果が得られる。
【0088】
また、実施例1では、非磁性トナーと磁性キャリアとを主成分とした2成分現像剤を用いる現像装置を説明した。しかし、非磁性トナー或いは磁性トナーを主成分とした1成分現像剤を用いる画像形成装置でも、実施例1を適用して同様の効果が得られる。
【0089】
<実施例2>
図12は実施例2の制御のフローチャートである。実施例2は、図1〜図11を参照して説明した第1実施形態の画像形成装置100を用いて、実施例1で説明した制御の一部分のみを変更している。実施例2では、フルカラーモードとブラック単色モードとで実施例1で説明した設定(表1)を適用するか否かを運転環境の湿度情報に応じて判断する。
【0090】
実施例1で説明したように、ブラックトナーの反転カブリ現象は、現像スリーブ3Kに担持されて現像領域を通過するブラックトナー粒子へのポジ電荷注入によって発生する場合がある。そして、ブラックトナー粒子へのポジ電荷の注入のし易さはトナー(現像剤)抵抗に依存している。
【0091】
ところが、現像剤抵抗は、装置本体の運転環境の絶対湿度に大きく依存する。例えば、運転環境が高湿度になると、同じ現像剤を用いている場合でも、現像剤が水分吸収することによって現像剤抵抗が低下する。このため、ある湿度以上の条件においてのみ反転カブリが発生して、それ以下の低湿環境では反転カブリが実使用上、問題にならない場合も存在する。
【0092】
そこで、実施例2では、図2に示すように、装置本体における現像器1の現像スリーブ3の近傍に湿度センサー9を配置している。制御部35は、湿度センサー9の出力を検知して絶対湿度を測定する。そして、絶対湿度が予め定めた水準以上に高い場合のフルカラーモードについて、画像形成部100Kに実施例1の制御を適用する。
【0093】
図12に示すように、画像形成が開始されると(S11)、制御部35は、ブラック単色モードかフルカラーモードかを判別する(S12)。そして、ブラック単色モードであれば(S12のYes)、制御部35は、無条件に表1のブラック単色モードの設定を適用する(S15)。しかし、フルカラーモードであれば(S12のNo)、制御部35は、湿度センサー9の出力を検知して絶対湿度が70%の水準以上か否かを判別する(S13)。
【0094】
そして、絶対湿度が70%以上の場合(S13のYes)には、実施例1と同様に、表1のフルカラーモードの設定を適用する(S14)。しかし、絶対湿度が70%に満たない場合(S13のNo)、表1のブラック単色モードの設定を適用する(S15)。
【0095】
実施例2では、トナーの電気抵抗を低下させる湿度の指標を検知する湿度センサー9を有する。そして、湿度が予め定めた70%の水準に達しない場合には、フルカラーモードとブラック単色モードとでピーク間電圧Vppが等しく設定される。
【0096】
実施例2では、高湿度に起因して反転カブリが発生し易くなる湿度70%の水準以上の場合にのみ、実施例1で行ったフルカラーモードの制御を画像形成部100Kで実施する。水準以上でないそれ未満の湿度では、ブラック現像のピーク間電圧Vppと現像スリーブ3Kの周速度を実施例1のブラック単色モードの設定に合わせる。このような湿度判断を加えることで、実施例1と同様の効果が得られるのはもちろんのこと、反転カブリが実質的に発生しない環境で現像スリーブ3Kの周速度を高めなくて済むため、不必要な現像剤劣化を防ぐことができる。
【0097】
<第2実施形態>
特許文献2に示されるような画像形成装置でも、フルカラーモードとブラック単色モードとを実行可能とすれば、上述した実施例1または実施例2の制御を使用できる。これにより、フルカラーモードにおけるブラックトナーの反転カブリの抑制と、ブラック単色モードにおけるブラック現像器の現像スリーブの低速度化とを両立できる。
【0098】
第2実施形態の画像形成装置は、イエロー、シアン、マゼンタの2成分現像剤を用いるロータリー現像器とブラックの磁性1成分現像剤を用いる固定現像器とを1つの感光ドラムに接している。そして、共通の感光ドラムに現像器を切り替えて順番に形成したイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像は、中間転写ドラムに順番に一次転写して重ね合わせた後に、記録材へ一括二次転写される。
【0099】
<第3実施形態>
特許文献3に示されるような画像形成装置でも、フルカラーモードとブラック単色モードとを実行可能とすれば、上述した実施例1または実施例2の制御を使用できる。これにより、フルカラーモードにおけるブラックトナーの反転カブリの抑制と、ブラック単色モードにおけるブラック現像器の現像スリーブの低速度化とを両立できる。
【0100】
第3実施形態の画像形成装置は、記録材搬送ベルトの上向き直線区間にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部を直列に配置している。記録材搬送ベルトに吸着して搬送される記録材に対して、4つの画像形成部で各色トナー像が直接に転写して重ね合わせられる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】第1実施形態の画像形成装置の概略的な構成の説明図である。
【図2】画像形成部の構成の説明図である。
【図3】現像器を正面側から見た断面図である。
【図4】現像器の平断面図である。
【図5】2成分現像剤中のトナーの帯電量分布の説明図である。
【図6】潜像コントラストと現像コントラストの関係の説明図である。
【図7】感光ドラムに形成される反転カブリトナーと中間転写ベルトに一次転写された反転カブリトナーとを比較した説明図である。
【図8】現像電圧の交流成分のピーク間電圧と反転トナーの発生量との関係の説明図である。
【図9】現像電圧の交流成分のピーク間電圧と現像器の現像効率との関係の説明図である。
【図10】現像スリーブの周速と現像効率との関係の説明図である。
【図11】現像電圧の交流成分のピーク間電圧と現像効率と現像スリーブの周速との関係の説明図である。
【図12】実施例2の制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1 現像器
2 現像容器
2A 現像室
2B 攪拌室
2a 第1現像剤循環スクリュー
2b 第2現像剤循環スクリュー
2c 現像剤循環経路
3 現像剤担持体(現像スリーブ)
5 トナーボトル
8 搬送材
9 検知手段(湿度センサー)
21 帯電器
22 露光装置
23 転写装置(一次転写ローラ)
24 中間転写ベルト
26 ドラムクリーニング装置
28 像担持体(感光ドラム)
35 制御部
P 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電したトナーを担持させた現像剤担持体に、交流成分を含む現像電圧を印加して像担持体に形成された静電像を現像してトナー像を形成する第1及び第2現像装置と、
移動する転写媒体に対して、前記第1現像装置により形成されたトナー像、前記第2現像装置により形成されたトナー像の順番に、前記トナー像を静電気的に転写する転写装置と、を有し、
前記第1現像装置と前記第2現像装置の両方を用いて画像形成を行う第1モードと、
前記第1現像装置と前記第2現像装置のうち前記第2現像装置のみを用いて画像形成を行う第2モードと、を有する画像形成装置において、
前記第2現像装置は、前記第1モードでは、前記第2モードよりも前記交流成分の振幅が小さい現像電圧にて現像可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像剤担持体は、前記像担持体と隙間を隔てて回転する円筒面に前記トナーを担持し、
前記第2現像装置は、前記第1モードでは、前記第2モードよりも前記像担持体と前記円筒面との相対速度が大きい条件にて現像可能であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
装置本体が置かれた環境の湿度を検知する検知手段を有し、
前記検知された湿度が予め定めた水準に達しない場合には、前記第2現像装置において、前記第1モードと前記第2モードとで前記振幅を等しく設定し、
前記検知された湿度が前記水準以上の場合には、前記第2現像装置において、前記第1モードにおける前記振幅を、前記第2モードにおける振幅よりも小さく設定することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2現像装置で用いられるトナーは、カーボンを顔料に含むブラックトナーであることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1現像装置で用いられるトナーは、色トナーであり、
前記第1モードは、カラーモードであり、
前記第2モードは、ブラック単色モードであることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−197464(P2008−197464A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33598(P2007−33598)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】