説明

画像形成装置

【課題】トナーを現像剤として用いる画像形成装置において簡単な方法で現像剤の濃度を高精度で判定して現像剤の濃度制御を正確に行う画像形成装置を提供する。
【解決手段】一般的に色材として蛍光を発色させるために配合する量(10〜40%)よりも少ない1〜10重量%未満の蛍光材をトナーに配合する。このトナーによる基準パッチを転写ベルト上に形成し、その読取位置に紫外線発光光学センサ20を配置する。基準パッチのトナーに含まれる蛍光材を光学センサ20の紫外線発光で励起し、蛍光を発光させ、その蛍光の発光波長を受光し、センサ出力/トナー付着量データテーブルによってトナー付着量に換算し、予め記憶装置に格納されている濃度データテーブルと比較し、トナー濃度の高低に応じて現像バイアスを変化させて濃度制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーを現像剤として用いる画像形成装置において簡単な方法で現像剤の濃度を高精度で判定して現像剤の濃度制御を正確に行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トナーを現像剤として用いる画像形成装置が知られている。このような画像形成装置では、現像剤の濃度にむらがあると、精度の良い画像を形成することができない。そこで、適宜の間隔で現像剤の濃度を測定して、現像剤の濃度を適正に維持するように制御する必要がある。
【0003】
例えば、非磁性トナーと磁性キャリアの二成分系現像剤を使用する画像記録装置において、現像剤の透磁率の変化を検出して現像剤のトナー濃度を検知するトナー濃度センサを用意し、湿度センサで検出した現像剤の湿度の変化や、画像記録装置内の温度に応じて、トナー濃度センサの発生磁界の強度を制御する制御電圧を変化させて画像記録装置のトナー濃度を適正に補正するトナー濃度制御方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
この特許文献1によれば、二成分系現像剤を使用する画像記録装置において、二成分系現像剤の湿度が変化したり、装置内部の温度が変化しても適正なトナー濃度が維持できるとしている。
【0005】
また、例えば、経時において現像能力を一定に保つため、トナー濃度の制御基準値を、出力画像の画像面積率の推移を把握することにより、ある一定期間内のトナー入換え量に応じて変化させて、さらに所定の実行間隔で、作像条件の変更を行うことで現像器中のトナー濃度を適正な範囲に誘導する方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
【0006】
この特許文献2によれば、トナー濃度制御基準値をある一定期間内のトナー入換え量に応じて、補正し、さらに所定の実行間隔で、作像条件の変更を行うことが可能であるため、どのような画像出力パターンにも対応することが可能であるとしている。
【特許文献1】特開平05−061353号公報
【特許文献2】特開2007−148260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の技術は、従来の非磁性トナーと磁性キャリアから成るトナーの濃度制御として、透磁率センサを用いてトナーとキャリアの混合比率を測定して濃度制御を行っているが、これはマグネットローラなど現像器などからの磁界の悪影響を受けやすく、問題がある。
【0008】
また、特許文献2の技術は、最初に現像γ(現像能力)を測定するために、パッチ書き込み部の電位を固定し、現像バイアスを変化させて、感光体上に10階調の濃度測定用の基準パッチを作像し、転写ベルトに転写して、この基準パッチを測定して、その測定結果をトナー濃度制御に用いている。
【0009】
しかし、この基準パッチの測定では、基準パッチに光学センサで光照射したときの反射光を受光して基準パッチの濃度を測定しているが、この例のように暗所で光照射した反射光を測定する場合、トナー自体の反射輝度が低いため、光学センサの受光部の感度のばらつきが大きく、予め厳密な相対テーブルを作成する必要があり、これは困難な技術を要して問題がある。
【0010】
本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、トナーを現像剤として用いる画像形成装置において簡単な方法で現像剤の濃度を高精度で判定して現像剤の濃度制御を正確に行う画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の画像形成装置は、蛍光材を含有した現像剤と、該現像剤に含まれる上記蛍光材を励起する光源を有し、該光源により上記現像剤に含まれる上記蛍光材を励起し、この励起により上記蛍光材が発光する蛍光の輝度を測定する光学センサと、該光学センサが測定した上記輝度に基づいて上記現像剤の濃度を判定する現像剤濃度判定手段と、を有して構成される。
【0012】
この画像形成装置において、例えば、上記蛍光材は、色の異なる複数の上記現像剤それぞれに同一の重量比で配合され、上記光学センサは、1個のみ配置され、上記現像剤濃度判定手段は、上記現像剤の色別に拘わり無く、測定された上記輝度が同一の上記現像剤に対しては濃度が同一と判定する、ように構成することができる。
【0013】
また、例えば、上記現像剤は、異なる色ごとに励起蛍光の波長が異なる蛍光材を含有し、上記光学センサは、上記現像剤に含まれる上記蛍光材を励起して、この励起により上記蛍光材が発光する蛍光の波長と輝度を測定し、上記現像剤濃度検出手段は、上記光学センサによる測定により得られた上記波長と上記輝度に基づいて上記現像剤の色別とその濃度を判定する、ように構成することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トナーを現像剤として用いる画像形成装置において簡単な方法で現像剤の濃度を高精度で判定して現像剤の濃度制御を正確に行う画像形成装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1における蛍光材を含有した現像剤を用いて画像を形成するカラー画像形成装置(以下、単にプリンタという)の内部構成を説明する断面図である。
【0016】
図1に示すプリンタ1は、電子写真式で二次転写方式のタンデム型のカラー画像形成装置であり、画像形成部2、中間転写ベルトユニット3、給紙部4、及び両面印刷用搬送ユニット5で構成されている。
【0017】
上記画像形成部2は、同図の右から左へ4個の画像形成ユニット6(6M、6C、6Y、6K)を多段式に並設した構成からなる。
【0018】
上記4個の画像形成ユニット6のうち上流側(図の右側)の3個の画像形成ユニット6M、6C及び6Yは、それぞれ減法混色の三原色であるマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)の色トナーによるモノカラー画像を形成し、画像形成ユニット6Kは、主として文字や画像の暗黒部分等に用いられるブラック(K)トナーによるモノクロ画像を形成する。
【0019】
上記の各画像形成ユニット6は、トナー容器(トナーカートリッジ)に収納されたトナーの色を除き全て同じ構成である。したがって、以下ブラック(K)用の画像形成ユニット6Kを例にしてその構成を説明する。
【0020】
画像形成ユニット6は、最下部に感光体ドラム7を備えている。この感光体ドラム7は、その周面が例えば有機光導電性材料で構成されている。この感光体ドラム7の周面近傍を取り巻いて、クリーナ8、帯電ローラ9、光書込ヘッド11、及び現像器12の現像ローラ13が配置されている。
【0021】
現像器12は、上部のトナー容器に同図にはM、C、Y、Kで示すようにマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)のいずれかのトナーを収容し、中間部には下部へのトナー補給機構を備えている。
【0022】
また、現像器12の下部には側面開口部に上述した現像ローラ13を備え、内部にトナー撹拌部材、現像ローラ13にトナーを供給するトナー供給ローラ、現像ローラ13上のトナー層を一定の層厚に規制するドクターブレード等を備えている。
【0023】
中間転写ベルトユニット3は、本体装置のほぼ中央で図の左右のほぼ端から端まで扁平なループ状になって延在する無端状の転写ベルト14と、この転写ベルト14を掛け渡されて転写ベルト14を図の反時計回り方向に循環移動させる駆動ローラ15と従動ローラ16を備えている。
【0024】
上記の転写ベルト14は、トナー像を直接ベルト面に転写(一次転写)されて、そのトナー像を更に用紙に転写(二次転写)すべく用紙への転写位置まで搬送するので、ここではユニット全体を中間転写ベルトユニットといっている。
【0025】
この中間転写ベルトユニット3は、上記扁平なループ状の転写ベルト14のループ内にベルト位置制御機構17を備えている。ベルト位置制御機構17は、転写ベルト14を介して感光体ドラム7の下部周面に押圧する導電性発泡スポンジから成る一次転写ローラ18を備えている。
【0026】
ベルト位置制御機構17は、マゼンタ(M)、シアン(C)及びイエロー(Y)の3個の画像形成ユニット6M、6C及び6Yに対応する3個の一次転写ローラ18を鉤型の支持軸を中心に同一周期で回転移動させる。
【0027】
そして、ベルト位置制御機構17は、ブラック(K)の画像形成ユニット6Kに対応する1個の一次転写ローラ18を上記3個の一次転写ローラ18の周期と異なる回転移動周期で回転移動させて転写ベルト14を感光体ドラム7から離接させる。
【0028】
すなわち、ベルト位置制御機構17は、中間転写ベルトユニット3の転写ベルト14の位置を、フルカラーモード(4個全部の一次転写ローラ18が転写ベルト14に当接)、モノクロモード(画像形成ユニット6Kに対応する一次転写ローラ18のみが転写ベルト14に当接)、及び全非転写モード(4個全部の一次転写ローラ18が転写ベルト14から離れる)に切換える。
【0029】
上記の中間転写ベルトユニット3には、上面部のベルト移動方向最上流側の画像形成ユニット6Mの更に上流側に、ベルトクリーナユニットが配置され、下面部のほぼ全面に沿い付けるように平らで薄型の廃トナー回収容器19が着脱自在に配置されている。
【0030】
また、中間転写ベルト14の、4色の重ね転写画像を担持して搬送する下面の適宜な箇所に近接し対向して、光学センサ20が配置されている。光学センサ20は、発光部に発光素子を有し、受光部に受光素子を有する光学センサであり、発光素子としては、波長350−390nmをピークに持つ紫外線を発光する構成の紫外線発光光学センサである。
【0031】
給紙部4は、上下2段に配置された2個の給紙カセット21を備え、2個の給紙カセット21の給紙口(図の右方)近傍には、それぞれ用紙取出ローラ22、給送ローラ23、捌きローラ24、待機搬送ローラ対25が配置されている。
【0032】
待機搬送ローラ対25の用紙搬送方向(図の鉛直上方向)には、転写ベルト14を介して従動ローラ16に圧接する二次転写ローラ26が配設されて、用紙への二次転写部を形成している。
【0033】
この二次転写部の下流(図では上方)側にはベルト式熱定着装置27が配置されて、ベルト式熱定着装置27の更に下流側には、定着後の用紙をベルト式熱定着装置27から搬出する搬出ローラ対28、及びその搬出される用紙を装置上面に形成されている排紙トレー29に排紙する排紙ローラ対31が配設されている。
【0034】
両面印刷用搬送ユニット5は、上記搬出ローラ対28と排紙ローラ対31との中間部の搬送路から図の右横方向に分岐した開始返送路32a、それから下方に曲がる中間返送路32b、更に上記とは反対の左横方向に曲がって最終的に返送用紙を反転させる終端返送路32c、及びこれらの返送路の途中に配置された4組の返送ローラ対33a、33b、33c、33dを備えている。
【0035】
上記終端返送路32cの出口は、給紙部4の下方の給紙カセット21に対応する待機搬送ローラ対25への搬送路に連絡している。
【0036】
また、本例において中間転写ベルトユニット3の上面部には、クリーニング部35及び取り込みローラ36が配置されている。
【0037】
クリーニング部35は、転写ベルト14の上面に当接して廃トナーを擦り取って除去し、取り込みローラ36はクリーニング部35が除去した廃トナーを引き継いで、図示を省略したベルトクリーナユニットの一時貯留部に溜め込み、その溜め込まれた廃トナーを搬送スクリューにより落下筒内を上部まで搬送し、落下筒を介して廃トナー回収容器19に送り込んでいる。この廃トナー回収容器19は、先行技術の図3及び図4に示されているものと同様の構成である。
【0038】
また、上記のクリーニング部35を適度の圧力で転写ベルト14に圧接させるために、中間転写ベルトユニット3側には、下方から転写ベルト14をクリーニング部35に向けて押圧する押圧ローラ37が設けられている。
【0039】
図1に示すように、この画像形成装置1は、従来の用紙に直接トナー像を転写する方式ではなく、待機搬送ローラ対25により二次転写部まで鉛直方向に搬送される用紙に中間転写ベルト14を介してトナー像を転写する方式となっている。
【0040】
したがって、用紙の搬送路に発生する用紙ジャム等の不具合を回復するメンテナンス処理時には、図1の右側を開放するのみで対処できるようになっている。
【0041】
そして、用紙ジャム等の不具合はキット類の配設部では発生しないので、図1の左側に集中するキット類などの消耗品の着脱の操作は、長手方向に入れ替え操作するだけの小さなスペースで良いように構成されている。
【0042】
これにより、キット間の寸法は、可及的に縮小されており、装置本体全体の小型化が図られている。また、光書込みヘッド自体も小型化され、感光体ドラムに、より近接している構成となっている。
【0043】
図2は、上記構成のプリンタ1における、内部の回路構成を示す図である。同図に示すように回路は、インターフェイス(I/F)40、プリンタコントローラ部41、EEPROM(electrically erasable programable ROM)42、ROM(read only memory)43、操作パネル44、ヘッドコントローラ部45で構成されている。
【0044】
プリンタコントローラ部41には、本体装置1の内部の適宜の位置に配設されている温湿度センサ46と廃トナー回収容器19の本体装置1側に形成されている装着部に配置された廃トナーセンサ47と光センサ20が接続されている。
【0045】
廃トナーセンサ47は、光反射型又は光透過型の光学センサから成り、装着部において廃トナー回収容器19に内蔵されている廃トナー搬入スクリューの回転軸に係合するエンコーダの回転を検知して、その検知パルス信号を、プリンタコントローラ部41に出力する。
【0046】
廃トナー搬入スクリュー、つまりエンコーダは、廃トナー回収容器19が装着部に未装着の状態では回転せず、空の新しい廃トナー回収容器19が装着部に装着されたときは正常に回転し、装着された廃トナー回収容器19内の廃トナーが満杯近くなるにつれ、廃トナーの負荷により回転が減速し、廃トナー回収容器19内の廃トナーが限度一杯に満杯になると回転が停止する。
【0047】
光学センサ20は、現像剤に含まれる蛍光材を励起する光源を有し、この光源により現像剤に含まれる蛍光材を励起し、この励起により蛍光材が発光する蛍光の輝度を測定し、その測定結果をプリンタコントローラ部41に出力する。
【0048】
また、図1には図示を省略したが、高圧電源を含む高圧ユニット48が接続されている。高圧ユニット48は、帯電ローラ9、現像ローラ13、一次転写ローラ18、二次転写ローラ26等に所定のバイアス電圧を供給するプラス又はマイナスの高圧電源を備えている。
【0049】
また、他方のヘッドコントローラ部45には、図1に示した4個の光書込ヘッド11が接続されている。
【0050】
インターフェイス(I/F)40は不図示のホスト機器から送られてくる印刷データを入力し、印刷データの中の画像データをヘッドコントローラ部45に出力し、印刷データの中のコマンドをプリンタコントローラ部41に出力する。
【0051】
EEPROM42には装置内の温湿度や、後述するエンコーダの回転パルス、予告中フラグ、予告後廃トナーの回収量などが記憶される。また、ROM43には印刷プログラムや、制御プログラムが記憶されている。
【0052】
ヘッドコントローラ部45には、特には図示しないが、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)に対応する4つの領域で構成されたフレームメモリを備えている。ヘッドコントローラ部45は、インターフェイス(I/F)40から入力される画像データに基づいて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のビットマップデータを作成する。
【0053】
そして、イエロー(Y)のビットマップデータはフレームメモリのイエロー(Y)の記憶エリアに記憶され、マゼンタ(M)のビットマップデータはフレームメモリのマゼンタ(M)の記憶エリアに記憶され、シアン(C)のビットマップデータはフレームメモリのシアン(C)の記憶エリアに記憶され、クロ(K)のビットマップデータはフレームメモリのクロ(K)の記憶エリアに記憶される。
【0054】
プリンタコントローラ部41は、本例のプリンタ1の印刷制御及びシステム制御を行うCPUを備えた中央制御部であり、特には図示しないが、時間カウンタ、印刷枚数カウンタ、実印字ドット数カウンタ等の数値カウンタや、レジスタ等が内蔵され、ROM43に記憶されているプログラムに従って各部の制御を行う。
【0055】
このプリンタコントローラ部41は、操作パネル44に設けられた不図示のキー操作部からの操作信号を入力し、また、これも不図示の表示部に表示信号を出力する。
【0056】
そして、プリンタコントローラ部41は、インターフェイス(I/F)40から供給されるコマンドに基づいて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、クロ(K)毎に、印字指令をヘッドコントローラ部45に出力する。
【0057】
ヘッドコントローラ部45は、上記の印字指令に基づいて、イエロー(Y)の印字データを画像形成ユニット6Kの光書込ヘッド11に供給し、マゼンタ(M)の印字データを画像形成ユニット6Mの光書込ヘッド11に供給し、シアン(C)の印字データを画像形成ユニット6Cの光書込ヘッド11に供給し、ブラック(K)の印字データを画像形成ユニット6Kの光書込ヘッド11に供給する。そして、各画像形成ユニット6によって各色の印字が行われる。
【0058】
また、ヘッドコントローラ部45は、上記の印字データを各光書込ヘッド11に供給すると共に、その実印字ドット数等を、プリンタコントローラ部41に通知する。この実印字ドット数により、転写ベルト14上に発生する廃トナー量が推計される。
【0059】
ここで、本実施の形態における画像形成装置1の現像器12に収容して画像形成に用いられる蛍光材入り現像剤について説明する。
【0060】
尚、従来、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の色トナーには色材として顔料が含まれている。また、色材として蛍光を発色させるために蛍光材を配合しているものもある。
【0061】
しかし、本例で現像剤に配合する蛍光材は、色材としてではなくセンサ検知用として入れるものであるため、一般的に色材として蛍光を発色させるために配合する量(10〜40%)よりも少なくて済む。すなわち、センサ読取用添加剤として配合する本例の蛍光材は現像剤の1〜10重量%未満である。
【0062】
一般的に、照射する光源の波長と強度を一定に保持した場合、含有する蛍光物質の量と照射光に励起されて発光する蛍光の輝度とは正比例する。したがって、光センサの発光部に使用する光源の波長と強度を、それぞれ所定の一定の値に設定すれば、受光部で検知される蛍光の輝度によって、現像剤に含まれる蛍光物質の量、すなわち現像剤の濃度を知ることができる。
【0063】
ここで、Y、M、C、及びKの4色のトナーに対して含有させる蛍光材は、1種類でも良く、また、4色のそれぞれに、吸収波長の異なる4種類の蛍光材を対応させて含有させるようにしても良い。また、蛍光材としては、蛍光顔料、蛍光染料、有機物質、又は無機物質であっても良く、特に制限されることはない。
【0064】
本例の蛍光材入り現像剤(以下、単にトナーという)の製法の一例は次の通りである。先ず、材料として以下の5種類のものを用意する。
【0065】
1.軟化点134℃のトナー用ポリエステル樹脂を88質量%。
2.蛍光材料(Y2 02 Sにユーロピウムをドープさせた粒子で、平均粒子径は個数平均で1.22μm、シスメックス製FPIA−2100にて測定)を5質量%。
【0066】
3.マゼンタ顔料としてカーミン6Bを3質量%
4.ポリエチレン系WAX(三井化学社製「NP056」)を3質量%。
5.帯電付与材(日本カーリット社製有機ホウ素化合物「LR−147」)を1質量%。
【0067】
以上5種類の材料をミキサーにて混合した後、2軸スクリュー混練機にて温度(最高温度160℃)をかけながら混練を行った。得られた混練物を、2mm程度まで機械式粉砕機にて粉砕した後、気流式粉砕機にて更に小粒子径まで粉砕し、目的の粒子径に分級を行った。
【0068】
その後、シリコンオイル又はアルキルジシラザンにて表面処理したシリカ粒子(混練粉砕物に対して2質量%)を混練粉砕物に外添を行い、ふるいを通して、トナーを得た。このトナーの平均粒径は体積平均(D50)で9.4μmである。
【0069】
次に、光センサの配置では、図1に示したように、中間転写ベルト14上の、トナーをスキャン可能な位置に、本体のフレームに固定して設置する。
【0070】
トナー濃度の検出では、先ず、濃度の検出を行いたいトナーを中間転写ベルト14上に転写する。ここで、転写されるトナーは、濃度が異なる複数ある画像パターンで構成される基準パッチを形成することが一般的である。
【0071】
基準パッチの画像形態としては、単一のべタ印字画像よりも、べタ印字及び網点印字からなる濃度を変えた画像を複数取り揃えて形成する方が濃度検出の精度がより高くなる。また、プリンタ本体の制御データとして不揮発性メモリ上に上記の基準パッチの濃度データテーブルを予め用意しておく。
【0072】
続いて、濃度の検出を行いたいトナーの基準パッチを中間転写ベルト14上に転写し、この中間転写ベルト14上に転写された基準パッチを光学センサ20で読み取る。この読取では、基準パッチに向けて光学センサ20の発光部から所定波長の励起光を照射する。
【0073】
この励起光の照射により、トナーに含まれる蛍光材が、蛍光材に特有の波長の蛍光を発光する。光学センサ20の受光部は、この蛍光の発光を検知し、検出した発光の輝度に応じた強さの信号を輝度信号としてプリンタコントローラ部41に出力する。プリンタコントローラ部41は、光学センサ20で検知された輝度信号を用いて、輝度が検知されたトナーの付着量を算出する。
【0074】
図3は、光センサ20から出力される輝度信号の強さとトナー付着量との関係を示す特性図(データテーブル)である。同図は横軸にトナー付着量を示し、縦軸にセンサ出力を示している。プリンタコントローラ部41は、この特性図に基づいて、検出された輝度信号からトナー付着量を算出し、この算出したトナー付着量から、基準パッチの画像濃度を演算する。
【0075】
プリンタコントローラ部41は、上記演算された基準パッチの画像濃度が、不揮発性メモリ上に予め設定されている濃度データテーブルの示す濃度よりも低い場合には、トナーの濃度を上げるように例えば現像バイアスを変化させるようにして濃度制御を行う。
【0076】
画像形成装置1が、カシオ製N3500の場合を例にとると、感光体7の転写バイアスは−510V。現像ローラ13の現像バイアスは−210V。ドクターバイアスと供給バイアスは同じ配線で−510Vである。
【0077】
図4は、画像濃度と現像バイアスの関係を示す特性図(データテーブル)である。同図は横軸に現像バイアスを示し、縦軸に画像濃度を示している。プリンタコントローラ部41は、図4の特性図を用い、検出された基準パッチの画像濃度の過不足に応じて、当該画像形成ユニット6の現像バイアスを変化させて濃度制御を行う。例えば、画像濃度を上げる場合には、現像バイアスの絶対値を大きくすれば良い。
【0078】
このように、本例の画像形成装置は、蛍光材入り現像剤を使用し、現像剤に含まれる蛍光物質の特性を利用して蛍光スペクトルが発生する光源を有する反射型光学センサを用い、蛍光材入り現像剤の基準パッチを中間転写ベルト上に保持して光学センサで読み取り、光学センサで読み取られた輝度データにより画像濃度制御を行う。
【0079】
本実施の形態によれば、蛍光材入り現像剤の蛍光物質の発光を光センサで検出するようにしたので、通常のトナーから受光する反射光よりも、励起された蛍光の輝度が高いためその蛍光スペクトルを検知して高精度な濃度検出が可能となる。
【0080】
尚、本例の濃度検出方式は、色材として使用されている蛍光トナーの濃度制御にも適用可能であることは言うまでもない。また、基準パッチを中間転写ベルト上に保持するようにしているが、光学センサの配置位置を変更して、感光体ドラム上に現像した基準パッチの濃度を読み取るようにしてもよい。また、紙転写後で定着前の紙上のトナーを測定できる箇所に光センサを設置するようにしても良い。
【0081】
また、更に光学センサの配置位置を変更して、現像ローラ上のトナー濃度を検知するようにしてもよい。ただし、この場合、中間転写ベルトや感光体ドラムの場合と異なり現像ローラの原理上、基準パッチのように網点で構成されるハーフトーンの画像は形成できない。
【0082】
しかし、濃度の検出結果に応じて、現像バイアス、供給バイアス、ドクターバイアスのいずれか又はそれぞれを変化させた場合には、現像ローラ上のトナー層(トナー濃度)を変化させることができる。
【0083】
また、光学センサとして紫外線発光光学センサを用いているが、発光部に蛍光材を励起して蛍光を発光させることができる光源を用いるものであれば何でもよい。また、受光部には、蛍光の波長に感応できるものであればスキャナとしてCCDを利用しても良い。
【0084】
一般的に、センサ部の装置構成としては、例えば、照射光源装置からレンズなどの集光装置を通して基準パッチに照射光を当て、反射した波長はレンズなどの集光装置、蛍光フィルタなどを通じて増幅装置、検出装置で検出された波長をデジタル化して解析データに変換する。
【0085】
この場合、フィルタを使用して照射波長を変えるようにしてもよい。また、蛍光スペクトルを効率よく感知する目的で励起光と散乱光を除去するために蛍光フィルターを利用しても良い。
【0086】
フィルタを使用して照射波長を変えるようにした場合、使用する光センサ光源の励起波長と蛍光フィルタに合致し且つ異なる4種類の波長を有する蛍光材4種を使用し、Y、M、C、及びKの4色の現像剤のそれぞれに対応する異なる波長を有する4種類の蛍光材を含ませるようにすることができる。
【0087】
この場合、光センサの受光部では、現像剤の蛍光材を励起して発光した蛍光の波長と輝度を測定し、プリンタコントローラ部41では、光学センサによる測定により得られた波長と輝度に基づいて現像剤の色別とその濃度を判定する。
【0088】
そのようにすれば、例えば中間転写ベルト上に基準パッチを保持する場合に、基準パッチを4色同時に重ねても、使用される蛍光材の波長が異なるために各色ごとの画像濃度を測定する事が可能となる。
【0089】
ただし、このように4色を重ねた場合、現実的には転写の影響が大きくなって測定値を補正する必要が出てくるため、2〜3色重ねを利用した方が効果的である。これでも、1色ずつ検出するよりも、検出にかかる時間が短縮されるので有効な方法となる。
【0090】
また、紫外線照射以外の光学センサを併用しても良い。併用する光学センサは、光源に赤外(940nm)発光ダイオードによる反射光を利用したものでも良い。また、例えば青(470nm)、緑(520nm)、赤(630nm)などの通常の可視光でも良い。
【0091】
コスト的にはセンサが2つになるため不利になるが、照射光を変えて2種類の反射光により画像形成されたトナーを判定できるため、より多くの情報を受け取り精度向上が可能になる。
【0092】
また、光学センサは可視光または赤外発光ダイオードを利用したセンサにして、別途外部に紫外線照射可能な装置(例えばブラックライトなど)を設置しても良い。紫外線を照射すればトナーに含有される蛍光材により反射光が変化するため、読み取ることは可能である。
【0093】
温湿度センサと組み合わせて濃度制御を行えば、濃度制御の精度がより高くなる。もちろんレジスト補正にも適用が可能である。
【0094】
また、現像装置内部のトナー残量検知にも利用できる。この場合、光学センサはトナー供給容器から現像装置内にトナーを搬送する途中経路上において本体装置側に設置してもよいし、トナー供給装置の、トナー供給装置に残っているトナーをセンサで観察できる位置に、観察窓を設けて、その観察窓に配置してもよい。
【0095】
トナーを保持している現像装置内部のトナーが残っている場合には、トナー特有の蛍光物質を検出できる。トナーが少なくなれば光センサによる検出量は小さくなっていき、ほとんどなくなれば光センサによる検出はなくなる。トナーの色に係わりなく暗所でも良い受光感度を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】実施形態1における蛍光材を含有した現像剤を用いて画像を形成するカラー画像形成装置(プリンタ)の内部構成を説明する断面図である。
【図2】実施形態1におけるプリンタの内部の回路構成を示す図である。
【図3】実施形態1におけるプリンタの光センサから出力される輝度信号の強さとトナー付着量との関係を示す特性図(データテーブル)である。
【図4】実施形態1におけるプリンタの画像濃度と現像バイアスの関係を示す特性図(データテーブル)である。
【符号の説明】
【0097】
1 画像形成装置(プリンタ)
2 画像形成部
3 中間転写ベルトユニット
4 給紙部
5 両面印刷用搬送ユニット
6(6M、6C、6Y、6K) 画像形成ユニット
7(7m、7c、7y、7k) 感光体ドラム
8 クリーナ
9 帯電ローラ
11 光書込ヘッド
12 現像器
13 現像ローラ
14 転写ベルト
15 駆動ローラ
16 従動ローラ
17 ベルト位置制御機構
18 一次転写ローラ
19 廃トナー回収容器
20 光センサ
21 給紙カセット
22 用紙取出ローラ
23 給送ローラ
24 捌きローラ
25 待機搬送ローラ対
26 二次転写ローラ
27 ベルト式熱定着装置
28 搬出ローラ対
29 排紙トレー
31 排紙ローラ対
32a 開始返送路
32b 中間返送路
32c 終端返送路
33a、33b、33c、33d 返送ローラ対
35 クリーニング部
36 取り込みローラ
37 押圧ローラ
40 インターフェイス(I/F)
41 プリンタコントローラ部
42 EEPROM(electrically erasable programable ROM)
43 ROM(read only memory)
44 操作パネル
45 ヘッドコントローラ部
46 温湿度センサ
47 廃トナーセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光材を含有した現像剤と、
該現像剤に含まれる前記蛍光材を励起する光源を有し、該光源により前記現像剤に含まれる前記蛍光材を励起し、この励起により前記蛍光材が発光する蛍光の輝度を測定する光学センサと、
該光学センサが測定した前記輝度に基づいて前記現像剤の濃度を判定する現像剤濃度判定手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記蛍光材は、色の異なる複数の前記現像剤それぞれに同一の重量比で配合され、
前記光学センサは、1個のみ配置され、
前記現像剤濃度判定手段は、前記現像剤の色別に拘わり無く、測定された前記輝度が同一の前記現像剤に対しては濃度が同一と判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像剤は、異なる色ごとに励起蛍光の波長が異なる蛍光材を含有し、
前記光学センサは、前記現像剤に含まれる前記蛍光材を励起して、この励起により前記蛍光材が発光する蛍光の波長と輝度を測定し、
前記現像剤濃度検出手段は、前記光学センサによる測定により得られた前記波長と前記輝度に基づいて前記現像剤の色別とその濃度を判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−107668(P2010−107668A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278796(P2008−278796)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】