説明

画像表示装置、画像表示装置の駆動方法及び端末装置

【課題】高開口率と輝度均一性を実現し、画像品質を向上することができる。
【解決手段】サブ画素には、画素電極4PIX、画素薄膜トランジスタ4TFT、蓄積容量電極CS2が配置されている。蓄積容量電極CS2は、蓄積容量線CSと同層で形成され、蓄積容量線CSと電気的に接続されている。蓄積容量4CSは、主に蓄積容量電極CS2とシリコン層4SIから構成される電極との間で絶縁膜を介して形成される。画素薄膜トランジスタ4TFTのソース電極又はドレイン電極の一方は、コンタクトホール4CONT1を介してデータ線Dに接続され、他方は、コンタクトホール4CONT2を介して画素電極4PIXに接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置、画像表示装置の駆動方法及び端末装置に関し、特に複数の視点に向けて夫々異なる画像を表示する装置、または表示画像を高画質化するための表示部の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や情報端末の発展に伴い、表示装置の小型化、高精細化が進んでいる。一方、新たな付加価値を有する表示装置として、観察者が表示装置を観察する位置により異なる画像を観察する表示装置、すなわち複数の視点に向けて夫々異なる画像を提供する表示装置や、その夫々異なる画像を視差画像とし観察者へ立体表示を提供する立体画像表示装置が注目されている。
【0003】
複数の視点に向け夫々異なる画像を提供する方式は、夫々の視点用の画像データを合成して表示部に表示し、表示された合成画像をレンズやスリットを持つバリア(遮光板)からなる光学的な分離手段により分離し、夫々の視点へ画像を提供する方式が知られている。画像分離の原理は、スリットを有するバリア、あるいは、レンズといった光学手段を用いて、視点方向ごとに見える画素を限定することによる。画像分離手段としては、縞状の多数のスリットを有するバリアからなるパララックスバリアや、一方向にレンズ効果を有するシリンドリカルレンズを配列したレンチキュラレンズが一般に用いられる。
【0004】
光学的な画像分離手段を用いた立体表示装置は、特殊な眼鏡を装着する必要がなく、眼鏡を装着する煩わしさがない点で携帯機器への搭載に適している。実際に液晶パネルとパララックスバリアとからなる立体表示装置を搭載した携帯が製品化されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
ところで、上記の方式、すなわち、光学的な分離手段を用いて複数の視点に向けて夫々異なる画像を提供する表示装置は、観察者の視点位置が移動し視認する画像が切り換わるとき、画像と画像の境界が暗く見える場合がある。この現象は、各視点用の画素と画素の間の非表示領域(液晶パネルで一般にブラックマトリクスと呼ばれる遮光部)が視認されることに起因する。観察者の視点移動に伴う上記の現象は、光学的な分離手段を持たない一般の表示装置では発生しない。このため、観察者は、光学的な分離手段を備えた多視点表示装置、又は立体表示装置で発生する上記の現象に、違和感、あるいは、表示品質の低下を感じることになる。
【0006】
これは、一般的に3Dモアレと言われている現象である。3Dモアレ(3D moire)とは、異なる角度方向に異なる映像を表示することに起因する、周期的な輝度のムラ(色のムラを指すこともある)である。3Dモアレは、輝度の角度方向における変動(Luminance Angular Fluctuation)であり、視認位置によっては問題とならない場合もあるが、輝度の角度方向における変動が大きいと、立体視に好ましくない影響があると考えられている。
【0007】
上記の光学的な分離手段と遮光部に起因する問題を改善するために、表示部の画素電極および遮光部の形状と配列を工夫し、表示品質の低下を抑制する表示装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0008】
特許文献1は、図29に示すような表示装置を開示している。特許文献1が開示している表示装置は、横方向1012の任意の点において、シリンドリカルレンズ1003aの配列方向と垂直となる縦方向1011に、表示素子切断面を想定すると、遮光部(配線1070及び遮光部1076)と開口部1075の割合が略一定となっている。従って、観察者が画像の分離方向である横方向1012に視点を移動し、観察方向が変わった場合でも、視認する遮光部の割合は略一定である。すなわち、観察者が特定方向から遮光部のみを観察することはなく、表示が暗く見えることもない。つまり、遮光領域に起因する表示品質の低下を防止することができる。
【0009】
また、特許文献1が開示するような表示装置に好適に適用可能な画素構造が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0010】
特許文献2は、図30に示すような画素を備える液晶表示装置を開示している。蓄積容量線CSは、ゲート線Gの延伸方向、すなわちX軸方向に隣接する各画素の蓄積容量4CSに接続するように配置されている。X軸方向に隣接する各画素においては、Y軸方向における薄膜トランジスタの位置が異なるため、蓄積容量線CSはこれらを結ぶように屈曲して配置されている。なお、蓄積容量4CSは薄膜トランジスタと同様、各画素において、略台形状を有する表示領域の上底側に配置されている。これにより、隣接画素対4PAIRを構成する各画素の上底間に蓄積容量4CSを効率的に配置することができ、開口率の更なる向上が可能となる。
【0011】
また、特許文献2が開示する液晶表示装置において、蓄積容量線CSとデータ線Dとの交差部分は、台形斜辺部において、蓄積容量線CSとデータ線Dが互いに沿うように配置されている。画像分離方向、すなわちX軸方向に沿って配列する配線は、極力削減するのが好ましく、上述の表示装置においては、データ線Dのみを配列している。これにより、一層の画質の向上が可能となる。Y軸方向に沿って蓄積容量線CSを配列すると、画像分離手段により蓄積容量線CSの像が拡大されてしまい、表示画質を著しく劣化させてしまうからである。
【0012】
すなわち、特許文献2が開示している液晶表示装置は、画像分離方向へ延伸するゲート線Gと蓄積容量線CSを同層で形成することにより、プロセス数を削減しつつ、画像分離手段と蓄積容量線CSに起因して発生する画質低下を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−208567号公報
【特許文献2】特開2009−098311号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】「日経エレクトロニクス、No.838号」、日本経済新聞社、2003年1月6日、p.26−27
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献2は、製造プロセス数を低減するために、走査線と容量線を同一プロセスで形成することを開示している。特に、一般的な小型表示装置は低コスト化への要求が強く、できるだけ少ないレイア数で画素アレイを構成することが求められる。
【0016】
また、表示装置の表示部は、精細度の向上のため画素ピッチを細かくすることや、表示輝度の向上のため、表示輝度に寄与する開口部と遮光部の面積比で決まる所謂開口率を高めることが求められる。
【0017】
しかし、ここで、画像の高精細化を考えた場合に、もともと小さな画面領域に、多くの画素を配列させることになるため、1画素のサイズをより微細化する必要が生じる。すなわち、いかに画素サイズを小さくするかが課題となる。これは、半導体の微細加工技術の進歩に伴い、より微細なサイズの画素が実現されつつある。
【0018】
上記のように画素は高精細化される動向にあるが、光を変調させるために液晶を駆動するスイッチング素子や補助容量などの電気・電子回路は、画素の高精細化に比例して、必ずしも小さくできる訳ではない。これは、スイッチング素子や補助容量が、半導体基板やガラス基板等の基板上に微細加工技術を用いて作製されるが、半導体プロセスの制限により、実現できる細線幅に限度があるためである。また、技術的にはより微細な加工が可能であっても、設備投資等を考えると当面はコスト高となってしまう。
【0019】
液晶表示装置は、高精細化に伴う上記の制限のため、光が遮光される領域の拡大、すなわち開口率の低下が生じ、表示装置全体の光利用効率が低下するという問題がある。画素の高精細化によって画質の向上を図ろうとすると、光利用効率が低下するというトレードオフがあり、ここに、高精細な画像を実現すると同時に、高画質、高効率な画像表示装置を実現させるという課題がある。
【0020】
特に、小型表示装置では、高精細化に伴う上記の制限のため、1画素の面積を占める配線やコンタクトホール面積の割合が非常に大きくなり、開口率の低下が顕著である。高精細化した画素は、画素内の配線やコンタクトホール数を極力低減する必要がある。
【0021】
また、非特許文献1が開示するように、近年では立体画像表示装置の適用範囲、用途が拡大されつつあり、その一例として、表示装置の用途によってはデータ線の延伸する方向へ画像分離する構成が考えられる。しかしながら、特許文献1が開示している画素部の開口形状、遮光形状を維持しつつ、特許文献2が開示している画素構造を上述の構成に適用しても、高開口率化・高画質化を実現することができないことを本発明者は見出した。
【0022】
以下に詳しく説明する。前述の通り、従来ではゲート線が延伸する方向と画像分離方向とが同じ方向であるため、ゲート線と同層で形成された蓄積容量線の延伸方向は、画像分離手段と干渉しないように画像分離方向と同じ方向となるようにすることができていた。同様にして、特許文献2が開示している画素構造をデータ線が延伸する方向へ画像を分離する表示装置に適用した場合、データ線と同じ材料から成る蓄積容量線は、画像分離方向へ配線される必要がある。
【0023】
一般的には、スイッチング素子を形成する際のプロセスによるダメージからデータ線を保護するため、データ線はゲート線より後のプロセス工程で形成されることが多い。すなわち、基板上では、ゲート線の上層にデータ線が設けられる構成が適用される。このようなゲート線上層にデータ線が設けられた構成でデータ線と蓄積容量線を同層で形成した場合、蓄積容量線は単位面積当りの比誘電率の小さい層間で蓄積容量を形成しなければならず、所定の蓄積容量を形成するためには面積を大きくとらなければならない。そのため十分な画素開口率を得ることができず、透過率が低減する。
【0024】
また、特許文献2が開示している表示装置では、蓄積容量4CSは、シリコン層4SIとゲート線Gと同層の蓄積容量電極との間で形成する方が単位面積当りの比誘電率が大きく、蓄積容量4CSの面積を削減できる。しかし、この場合は、蓄積容量電極と蓄積容量線CSを接続するためのコンタクトホール4CONTをあらたに設ける必要があり、十分な画素開口率を得ることができないために透過率が低減する。
【0025】
また、特許文献2が開示している表示装置に係る画素構造では、ゲート電極と同層の蓄積容量線CSがスイッチング素子(TFT)の周辺を画像分離方向へ横断するように配線されており、略台形の上底に位置する遮光部のY軸方向の幅は、TFTの面積に加えて蓄積容量線CSの配線幅と配線スペース分が加算されることとなる。従って、この略台形の上底部におけるY軸方向の幅は、プロセスルールの変更なしには小さくすることができず、ピッチの小さい画素では開口領域のY軸方向の幅に対して略台形の上底部を覆う遮光部の幅が相対的に大きくなり、開口率が低下する。画像分離手段によって、この略台形の上程部を覆う遮光部の像が拡大されると、視認者には表示部における粒状や縞状の明暗として視認されるため表示品質が低下する。
【0026】
なお、本明細書では、上述したように、異なる角度方向に異なる映像を表示することに起因する、周期的な輝度のムラ(色のムラを指すこともある)、特に、輝度の角度方向における変動 (Luminance Angular Fluctuation)、を「3Dモアレ」と定義する。また、ある1つの視点映像に対する、他の視点映像の混入、漏れを「3Dクロストーク」と定義する。
【0027】
一般的には、互いの異なる周期をもった構造物が干渉して発生する縞模様は「モアレ縞」と称される。モアレ縞は構造物の周期性やピッチに依存して発生する干渉縞であり、3Dモアレは画像分離手段の結像性に起因して発生する輝度ムラであるため、本明細書においては、3Dモアレとモアレ縞は区別して適用する。
【0028】
3Dモアレは視認位置によっては問題とならない場合もあるが、輝度の角度方向における変動が大きいと、立体視に好ましくない影響があると考えられるため、輝度変動を所定値以下とすることが望ましい。
【0029】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高開口率と輝度均一性を実現し、画像品質を向上することができる画像表示装置、画像表示装置の駆動方法及び端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る画像表示装置は、
第1視点用の画像を表示する第1のサブ画素と第2視点用の画像を表示する第2のサブ画素とを少なくとも含む表示単位がマトリクス状に複数配列された表示素子と、
前記第1のサブ画素と前記第2のサブ画素から出射した光を第1の方向に振り分ける光学手段と、を備え、
前記光学手段は、前記第1の方向と直交する第2の方向と平行な光学主軸を有し、
前記第1のサブ画素と前記第2のサブ画素は、それぞれ、画像を表示するための表示信号を伝送するスイッチング手段と、容量を形成する蓄積容量電極と、を有し、
前記表示素子は、前記第2の方向に配列した前記表示信号を供給するデータ線と、前記第1の方向に配列した前記スイッチング手段を制御するゲート線と、前記第2の方向に配列した前記蓄積容量電極を前記第2の方向へ電気的に接続させる蓄積容量線と、を有し、
同一の前記データ線と対向して配置されるサブ画素対が有する一方の前記スイッチング手段は、前記データ線と前記ゲート線に接続され、前記サブ画素対の他方の前記スイッチング手段は、前記一方の前記スイッチング手段に接続される前記データ線と同一の前記データ線と、前記一方の前記スイッチング手段に接続される前記ゲート線とは異なる前記ゲート線に接続され、
前記サブ画素対がそれぞれ有する前記スイッチング手段が構成する電極と前記蓄積容量電極は、前記サブ画素対で電気的に共通に接続され、
前記ゲート線と前記蓄積容量線の少なくとも一部は、前記光学主軸と交差するように前記第2の方向と異なる方向に傾斜して配置され、
前記蓄積容量線の少なくとも一部は、前記ゲート線に沿って配置される、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、高開口率と輝度均一性を実現し、画像品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像表示装置を示す平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る画像表示装置を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る画像表示装置のサブ画素を示す平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る画像表示装置のサブ画素を示す平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るサブ画素における傾斜配線の断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る画像表示装置のブラックマトリクスを示す平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る表示素子を示す平面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る画像表示装置を搭載した携帯機器を示す斜視図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る画像表示装置を搭載した携帯機器を示す斜視図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係る画像表示装置においてデータ線に入力するドット反転駆動の極性を示す表である。
【図11】本発明の第1実施形態に係る画像表示装置における各サブ画素の極性を示す模式図である。
【図12】レンチキュラレンズを使用した場合の光学モデルを示す断面図である。
【図13】レンチキュラレンズの画像分離条件を算出するため曲率半径最小時を示した光学モデル図である。
【図14】レンチキュラレンズの画像分離条件を算出するため曲率半径最大時を示した光学モデル図である。
【図15】(A)は本発明の第1実施形態に係るサブ画素における縦開口幅の分布、(B)は明るさの分布を示す模式図である。
【図16】本発明の第1実施形態に係る画像表示装置における輝度分布の一例を示すグラフである。
【図17】本発明の第1実施形態に係る画像表示装置の集光状態を示す概念図である。
【図18】空間像方式を適用した立体画像表示装置を示す概念図である。
【図19】本発明の第2実施形態に係る画像表示装置のサブ画素を示す平面図である。
【図20】本発明の第2実施形態に係るサブ画素における傾斜配線の断面図である。
【図21】本発明の第3実施形態に係る画像表示装置のサブ画素を示す平面図である。
【図22】本発明の第3実施形態に係るサブ画素における傾斜配線の断面図である。
【図23】本発明の第3実施形態に係るサブ画素における傾斜配線の断面図である。
【図24】本発明の第3実施形態の変形例に係る画像表示装置のサブ画素を示す平面図である。
【図25】本発明の第3実施形態の変形例に係る画像表示装置のブラックマトリクスを示す平面図である。
【図26】(A)本発明の第3実施形態に係る画像表示装置の縦開口の幅を示す分布、(B)は明るさの分布を示す模式図である。
【図27】本発明の第4実施形態に係る画像表示装置においてデータ線に入力する反転駆動の極性を示す表である。
【図28】本発明の第4実施形態に係る画像表示装置における各サブ画素の極性を示す模式図である。
【図29】従来の立体画像表示装置における表示素子を示す平面図である。
【図30】従来の立体画像表示装置における表示素子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態に係る画像表示装置について、図面を参照して具体的に説明する。
【0034】
[第1実施形態]
本実施形態に係る画像表示装置及び画像表示装置に搭載される表示素子、及びその駆動方法について説明する。
【0035】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る画像表示装置1は、表示素子2、レンチキュラレンズ3、バックライト15から構成される。表示素子2は、電気光学素子として液晶分子を利用した液晶表示パネルである。レンチキュラレンズ3は、表示素子2の表示面側、すなわち使用者側に配置される。バックライト15は表示素子2の背面側に配置される。
【0036】
図1に示すように、表示素子2の表示部には、表示単位4U、4U’、4U’’、4U’’’がマトリクス状に並べられている。表示単位4Uは、左眼用画素4L及び右眼用画素4Rから構成され、表示単位4U’、4U’’、4U’’’についても同様である。すなわち、表示素子2は、左眼用の画像を表示するサブ画素と右眼用の画像を表示するサブ画素を備えた視点数2からなる立体表示用の液晶表示パネルである。以下の説明において、表示単位4U、4U’、4U’’、4U’’’を構成する1つの画素について説明する場合は、左眼用画素4Lと右眼用画素4Rを区別することなく、「サブ画素」と称する。すなわち、表示単位4Uは、相互に隣接する2つのサブ画素4Sから構成されると表現することができる。図3、図4に示すように、表示単位4U、4U’、4U’’、4U’’’は、TFT基板2aのレイアウト構造が夫々異なるが、左眼用画素4L及び右眼用画素4Rを備える点は同様であるため、共通の構造について説明する場合、総じて表示単位4Uと称する。なお、以下の説明において、「表示部」は、表示素子2の画面領域の全体のことを意味し、「表示領域」は、サブ画素4Sの開口部を意味するものとして区別して使用する。
【0037】
図2に示すレンチキュラレンズ3は、多数のシリンドリカルレンズ3aが一次元配列したレンズアレイである。シリンドリカルレンズ3aは、かまぼこ状の凸部を有する一次元レンズである。その延伸方向、すなわち長手方向は、表示面内において配列方向と直交する方向となっている。シリンドリカルレンズ3aは、延伸方向にはレンズ効果を持たず、その直交方向である配列方向にのみレンズ効果を有する。これにより、レンチキュラレンズ3はシリンドリカルレンズ3aの配列方向にのみレンズ効果を有する一次元レンズアレイとなっている。そして、シリンドリカルレンズ3aの配列方向は、左眼用画素4L及び右眼用画素4Rが繰り返し配列される方向となっている。なお、シリンドリカルレンズ3aは、前述の表示単位4Uと対応して配置されている。
【0038】
シリンドリカルレンズ3aは、前述のように、その延伸方向と直交する方向にのみレンズ効果を有する。そして、本実施形態では、このレンズ効果を有する方向が、左眼用画素4L及び右眼用画素4Rが繰り返し配列される方向と一致している。この結果、シリンドリカルレンズ3aは、左眼用画素4Lの光と右眼用画素4Rの光を異なる方向に分離可能な光線分離手段として作用する。これにより、レンチキュラレンズ3は、各表示単位4Uの左眼用画素4Lが表示する画像と、各表示単位4Uの右眼用画素4Rが表示する画像を、異なる方向に分離することができる。すなわち、レンチキュラレンズ3は、画像分離手段、または画像振分手段として作用する光学部材である。なお、シリンドリカルレンズ3aの焦点距離は、シリンドリカルレンズ3aの主点、すなわちレンズの頂点と、サブ画素面、すなわち左眼用画素4L又は右眼用画素4Rが配置された面との間の距離に設定されている。
【0039】
なお、以下の説明においては、便宜上、以下のようにXYZ直交座標系を設定する。左眼用画素4L及び右眼用画素4Rが繰り返し配列される方向において、右眼用画素4Rから左眼用画素4Lに向かう方向を+X方向とし、その反対方向を−X方向とする。+X方向及び−X方向を総称してX軸方向という。また、シリンドリカルレンズ3aの長手方向をY軸方向とする。更に、X軸方向及びY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向とし、このZ軸方向のうち、左眼用画素4L又は右眼用画素4Rが配置された面からレンチキュラレンズ3に向かう方向を+Z方向とし、その反対方向を−Z方向とする。+Z方向は前方、すなわち、使用者に向かう方向であり、使用者は、表示素子2の+Z側の面を視認することになる。そして、+Y方向は、右手座標系が成立する方向とする。すなわち、人の右手の親指を+X方向、人差指を+Y方向に向けたとき、中指は+Z方向を向くようにする。なお、以下の図面において、原点記号にバツ印を付している場合、図面手前から奥に向かう方向が正の方向であることを意味し、原点記号に黒丸を付している場合、図面奥から手前に向かう方向が正の方向であることを意味している。
【0040】
上述の如くXYZ直交座標系を設定すると、シリンドリカルレンズ3aの配列方向はX軸方向となり、左眼用の画像と右眼用の画像は、X軸方向に沿って分離されることになる。また、左眼用画素4L及び右眼用画素4Rからなる表示単位4UがY軸方向に一列に配列される。X軸方向における表示単位4Uの配列周期は、シリンドリカルレンズ3aの配列周期と略等しくなっている。一つのシリンドリカルレンズ3aには、Y軸方向に配列した表示単位4Uの列が対応して配置されている。
【0041】
図11に示すように、本実施形態では、1ピクセル4PはY軸方向に配列した3つの表示単位4Uから構成され、各表示単位4Uは、赤(RED)、緑(GREEN)、青(BLUE)に配色されている。カラーフィルタは、赤(RED)、緑(GREEN)、青(BLUE)の各色がX軸方向へ延伸しており、Y軸方向へ赤(RED)、緑(GREEN)、青(BLUE)がストライプ状に繰り返し配列している。なお、配色の順序はこれに限定されない。また、配色の種類は、これに限定されることなく、3色以上から構成されていてもよい。本実施形態では、カラーフィルタ及びブラックマトリクスは、対向基板2bの液晶層5LC側の面に設けられている。
【0042】
図2に示すように、表示素子2は、TFT基板2aと対向基板2bとが微小な間隙を設定して配置されており、この間隙に液晶層5LCが配置されている。液晶層5LCは、例えば、透過型のTNモードとなるように構成されているが、これに限定されず、他の液晶モードを適用しても良い。TFT基板2aは、表示素子2の−Z方向側に配置され、対向基板2bは+Z方向側に配置されている。すなわち、対向基板2bの更に+Z方向側にレンチキュラレンズ3が配置されている。また、TFT基板2aの+Z側、及び対向基板2bの−Z側には偏光板11が貼合されている。
【0043】
表示素子2は、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を有するアクティブマトリクス型の液晶表示パネルである。薄膜トランジスタは、各サブ画素に表示信号を伝送するためのスイッチとして作用し、このスイッチを操作するのは、各スイッチのゲートに接続されたゲート線を流れるゲート信号である。本実施形態においては、TFT基板2aの液晶層5LC側の面(+Z方向側の面)に、列方向(Y軸方向)に延伸するゲート線G1乃至G7が配置されている。なおゲート線G1乃至G7を総じてゲート線Gと称する。更に、TFT基板2aの同じ面には、行方向(X軸方向)に延伸するデータ線D1乃至D13が配置されている。データ線D1乃至D13を総じてデータ線Dと称する。なお、データ線Dは、薄膜トランジスタに表示データ信号を供給する役割を果たす。
【0044】
本実施形態では、ゲート線Gは、屈曲しているものの、複数回の屈曲を経てY軸方向に延伸しており、X軸方向に複数配列している。また、データ線Dは、屈曲しているものの、複数回の屈曲を経てX軸方向に延伸しており、Y軸方向に複数配列している。そして、ゲート線Gとデータ線Dの交点近傍に、サブ画素4S(左眼用画素4L又は右眼用画素4R)が配置されている。
【0045】
特に、図1においては、サブ画素4Sのゲート線G及びデータ線Dとの接続関係を明確にするため、例えば、データ線D3とゲート線G2に接続されたサブ画素4SをP32と表記している。すなわち、Pの次の数字がデータ線Dの後の数字であり、更にその次の数字がゲート線Gの後の数字である。
【0046】
サブ画素4Sには、図3及び図4に示すように、画素電極4PIX、画素薄膜トランジスタ4TFT、蓄積容量電極CS2が配置されている。蓄積容量電極CS2は、蓄積容量線CSと同層で形成され、蓄積容量線CSと電気的に接続されている。蓄積容量4CSは、主に蓄積容量電極CS2とシリコン層4SIから構成される電極との間で絶縁膜を介して形成される。画素薄膜トランジスタ4TFTは、MOS型の薄膜トランジスタであり、ソース電極又はドレイン電極の一方は、コンタクトホール4CONT1を介してデータ線Dに接続され、他方は、コンタクトホール4CONT2を介して画素電極4PIXに接続される。従って、画素電極4PIXは、シリコン層4SIから構成された電極と電気的に接続され、共通の電位となる。本実施形態では、画素電極4PIXが接続された方の電極をソース電極、信号線に接続された方の電極をドレイン電極と称する。そして、画素薄膜トランジスタ4TFTのゲート電極は、ゲート線Gに接続される。更に、対向基板の液晶層5LC側には、対向電極4COMが形成され、画素電極4PIXとの間で画素容量4CLCが形成される。
【0047】
なお、図3及び図4では、コンタクトホール4CONT1は灰色塗り、コンタクトホール4CONT2は黒塗りで示し、画素電極4PIXは点線で、またシリコン層4SIは太線で、夫々の形状を示している。
【0048】
なお、図1では、各サブ画素4Sのゲート線G及びデータ線Dに対する接続関係を示すため、図3に示す画素薄膜トランジスタ4TFT及び画素電極4PIXを抽出して示している。また、図3及び図4では、各構成要素の大きさや縮尺は、図の視認性を確保するため、適宜変更して記載している。
【0049】
図1に示すように、本明細書では、相互に隣接するゲート線Gとデータ線Dで囲まれた領域がサブ画素4Sに対応する画素領域である。このサブ画素4S内に開口部が設けられる。
【0050】
1ピクセルは、Y軸方向へ並ぶ3つの表示単位4Uから構成され、3行×2列のサブ画素4Sからなる正方形で構成される。従って、サブ画素4SのX軸方向のピッチPx、サブ画素4SのY軸方向のピッチPyとすると、1ピクセルのピッチPuは、3×Py、または2×Pxであり、以下の関係が成り立つ。
[数1]
Pu=2×Px=3×Py
【0051】
ブラックマトリクス60は、図5に示すように、対向基板2bの液晶層5LC側に、サブ画素4Sの開口部以外を覆う遮光部として設けられる。また、図6に示すように、ブラックマトリクス60は、画素薄膜トランジスタ4TFT、及びゲート線G、データ線Dを覆っており、略台形状に開口している。本明細書では遮光部以外の領域を開口部と定義する。すなわち、本実施形態においては、ブラックマトリクス60以外の領域が開口部である。また、本明細書では、「遮光部」という表現を使用するが、これは特にこのブラックマトリクス60に限定するものではなく、光を通さない部分を指すものである。従って、ブラックマトリクス60は、データ線Dまたはゲート線G上には設けず、画素薄膜トランジスタ4TFTと蓄積容量電極CS2のみを覆った構成であってもよく、その場合はデータ線Dまたはゲート線Gが遮光部として機能する。
【0052】
ここで、XY平面状において、「上」または「下」という表現を使う場合、「上」または「下」の方向とは、Y軸方向と平行な方向であり、「上」側が+Y方向、「下」側が−Y方向である。なお、上述のように、サブ画素4Sは遮光部形状より実質的に台形状とみなすことができるため、説明上は「略台形画素」と称して、底辺のうち長い方を下底、短い方を上底とする。なお、開口の形状は台形に限定されず、平行四辺形や多角形、楕円形、半円形にも適用される。
【0053】
前述の略台形画素の開口部の上底の長さは、図6に示すように、X1である。また、略台形画素の斜辺の中心点から上底との交点までのX軸方向への長さはX2であり、略台形画素の斜辺領域におけるX軸方向への幅は2×X2である。X軸方向に隣接するサブ画素において、略台形画素の開口部が互いに重なる領域のX軸方向への幅はX3である。また、略台形画素の開口部のY軸方向の開口幅はY1である。略台形画素の上底における遮光部のY軸方向への幅はY2であり、略台形画素の下底における遮光部のY軸方向への幅は2×Y3である。従って、サブ画素4SのX軸方向のピッチPx、及びY軸方向のピッチPyと、略台形画素と開口部の関係から以下の関係式が成り立つ。
[数2]
Px=X1+2×X2
[数3]
Py=Y1+Y2+2×Y3
【0054】
ところで、図3及び図4に示す画素薄膜トランジスタ4TFTは、半導体として多結晶シリコンを使用したポリシリコン薄膜トランジスタを使用している。多結晶シリコンは、一例では、微量のホウ素を含むP型半導体である。すなわち、画素薄膜トランジスタ4TFTは、ソース電極又はドレイン電極の電位よりもゲート電極の電位の方がローレベルとなった場合に、ソース電極とドレイン電極との間が導通状態となる所謂PMOS型の薄膜トランジスタである。
【0055】
ポリシリコン薄膜は、一例では、TFT基板2a上に酸化シリコン層を形成した後でアモルファスシリコン層を形成し、このアモルファスシリコン層を多結晶化して形成される。多結晶化する手段は、熱アニール法やレーザアニール法が用いられるが、特にエキシマレーザ等のレーザを使用したレーザアニール法は、ガラス基板の温度上昇を最小限に留めた上でシリコン層のみを加熱多結晶化することができるため、融点の低い無アルカリガラス等を使用することができる。これにより、低コスト化が可能となるため、低温ポリシリコンと称してよく用いられている。なお、このアニール工程を省くことにより、アモルファスシリコン薄膜トランジスタを実現することもできる。
【0056】
次に、シリコン層の上にゲート絶縁層としての酸化シリコン層を形成し、適宜パターニングする。この過程で、シリコン薄膜の半導体層として使用する部分以外の領域にイオンをドーピングして、導体化することが好ましい。パターニングの手法は、感光性レジストを使用する光パターニングの手法を適用することができる。一例では、感光性レジストをスピンコートした後に、ステッパ等の露光機で光を部分照射し、現像工程を経て、パターンを残す部分にのみ感光性レジストの膜を残す。その後、ドライエッチング等により感光性レジストの膜が残存しない領域のシリコン層を除去し、最後に感光性レジストの膜を剥離する。
【0057】
次に、ゲート電極となるアモルファスシリコン層とタングステンシリサイド層を成膜し、ゲート電極等を形成する。このとき、ゲート電極が接続するゲート線や、蓄積容量電極、蓄積容量線を同様に形成してもよい。次に、酸化シリコン層と窒化シリコン層を形成し、適宜パターニングした後に、アルミニウム層とチタン層を成膜し、ソース電極及びドレイン電極を形成する。このとき、データ線を同時に形成してもよい。
【0058】
次に窒化シリコン層を成膜し、適宜パターニングした後に、ITO等の透明電極を成膜、パターニングすることにより、画素電極を形成する。これにより、薄膜トランジスタを有する画素構造を形成することができる。なお、この薄膜トランジスタを用いて、ゲート線やデータ線、蓄積容量線を駆動する回路を同時に形成することもできる。
【0059】
表示素子2は、図7に示すように、長辺がX軸方向、短辺がY軸方向に沿って配置され、ランドスケープ(横長)表示に対応した表示パネルである。一例では、表示素子2の画面解像度をWVGAとし、X軸方向のピクセル数を800個、Y軸方向のピクセル数を480個と設定した。上述の通り、表示単位4Uは視点数2に対応した2つのサブ画素から構成され、1ピクセルは3つの表示単位4Uから構成され、各々の表示単位4Uは3色に配色される。このとき、表示部6に使用するデータ線及びゲート線の各々の本数は、Y軸方向に配列したデータ線の本数が480×3=1440本であり、X軸方向に配列したゲート線の本数が800×2=1600本である。従って、図7に示す表示素子2は、データ線の本数がゲート線の本数より少ない構成である。
【0060】
また、表示素子2のTFT基板2aの短辺側に映像信号を制御するための駆動IC7が実装されている。駆動IC7の出力は、夫々、表示部6のデータ線と接続する。一般的に、駆動IC7の出力ピンピッチは、データ線のピッチより狭い。このため、駆動IC7の出力ピンから各データ線へ伸びる配線は、広がりをもつことになり、表示部6からある程度の距離をとる必要がある。表示部6から駆動IC7までの距離は、出力ピンのピッチが同じであれば、接続先のデータ線の数が少ないほど短くできる。表示部6がランドスケープの場合には、データ線を水平方向、すなわちX軸方向の短辺側へ配置する方が、垂直方向の長辺側へ配置するより、データ線の本数を少なくできる。従って、データ線を水平方向に配置することにより、額縁を小さくすることができる。また、データ線の本数を少なくすることにより、必要な駆動IC7の数を削減して低コスト化でき、さらに駆動IC7の負荷を低減することができる。また、駆動IC7には、データ信号のマルチプレクサ回路を搭載し、TFT基板2aには、駆動IC7から出力されたデータ信号をマルチプレクサ回路の動作に応じて時分割で振り分けることが可能なスイッチング回路を設けてもよい。これにより、駆動IC7から出力される接続するデータ信号の配線数をさらに少なくすることができる。
【0061】
また、本実施形態では、ゲート線を順次走査するためのゲートドライバ回路は、TFT基板2a上に薄膜トランジスタと同時に形成される。これにより、表示素子2の長辺側の額縁幅を小さくすることができる。また、短辺側への駆動IC7を配置し、かつ、長辺側へのゲートドライバ回路を集積することにより、表示素子2の各片の額縁を小さくすることができる。狭額縁化により表示素子2のサイズを小さくすることができるため、1枚のマザー基板から得られる表示素子2の取り数を増やすことができ、低コスト化することができる。さらに、サブ画素とゲートドライバ回路をTFT基板2a上へ一体形成することにより、ドライバ回路の部品数を削減することができるため、低コスト化及び低消費電力化することができる。
【0062】
また、画面解像度は上述の構成に限定されることなく、1ピクセルがK色に配色され、視点数Nからなる表示素子2において、X軸方向のピクセル数がMx個、Y軸方向のピクセル数がMy個である画面解像度を有する表示素子2であれば、N×Mx<K×Myの関係式が成り立つ場合に上述の効果を得ることができるのは明らかである。
【0063】
本実施形態では、図3に示すように、ゲート線G、蓄積容量線CS及び蓄積容量電極CS2は、画素薄膜トランジスタ4TFTのゲート電極と同層で形成されている。また、シリコン層4SIと蓄積容量電極CS2との間で、蓄積容量4CSが形成されている。前述のように、シリコン層4SIは、コンタクトホール4CONT1を介してデータ線Dに接続されるが、サブ画素4Sにおいて、画素電極4PIX側に設けられたもう一つのコンタクトホール4CONT2は、蓄積容量4CSにおけるシリコン層4SIと画素電極4PIXを電気的に接続するためのものである。
【0064】
なお、本実施形態では、「隣接画素対」という表現を使用する。これは、特に、データ線Dを挟み配置された二つのサブ画素が、このサブ画素間に配置されたデータ線Dに接続された状態において使用するものとする。すなわち、隣接画素対を構成するサブ画素は、このサブ画素間に配置されたデータ線Dにより、映像信号のデータ電位が供給される。例えば、図3に示すように、左側のY軸方向へ並ぶ二つのサブ画素4Sが、隣接画素対4PAIR1を構成している。また、図4に示すように、左側のY軸方向へ並ぶ二つのサブ画素4Sが隣接画素対4PAIR2を構成している。以下、隣接画素対4PAIR1、4PAIR2について共通の構造を説明する場合、総じて4PAIRと称する。
【0065】
隣接画素対4PAIRを構成する各サブ画素は、夫々異なるゲート線Gによりスイッチング動作が制御される。図3に示す左側の隣接画素対4PAIRでは、−Y方向側のサブ画素4Sは−X方向側に配置されたゲート線Gによって制御され、+Y方向側のサブ画素4Sは+X方向側に配置されたゲート線Gによって制御される。
【0066】
そして、データ線Dの延伸方向、すなわちX軸方向に隣り合う隣接画素対4PAIRは、共通のデータ線Dに接続されず、異なるデータ線Dに接続されている。これは、隣接画素対4PAIRが、X軸方向においては、Y軸方向にサブ画素4S一つ分だけずれた状態で隣り合っているからである。このように配置することにより、必要な配線数を最小限に抑えることができるため、開口率の向上が可能となる。
【0067】
ここで、再度図1を参照して、本実施形態に係るサブ画素の配置関係を確認する。まず、画素P31と画素P32から構成される隣接画素対に着目する。理解を容易にするため、以下の説明では、このような隣接画素対の表記を(P31、P32)とすることにする。すると、隣接画素対(P31、P32)に対し、+X方向には、隣接画素対(P23、P22)、及び(P42、P43)が隣り合っている。隣接画素対(P22、P23)はデータ線D2を共通のデータ線としている。ここで、「共通のデータ線」という表現は、隣接画素対を構成する各サブ画素は、このサブ画素間に配置された共通のデータ線に接続されており、この共通のデータ線を通じて供給されるデータ電位が所定のタイミングでそれぞれ書き込まれることを意味する。隣接画素対(P31、P32)は、データ線D3を共通のデータ線とするので、隣接画素対(P31、P32)と隣接画素対(P22、P23)は、夫々異なるデータ線Dを共通のデータ線としている。なお、夫々の共通のデータ線Dは隣接の関係にある。
【0068】
また、隣接画素対(P31、P32)に対し、+X方向には、もう1つの隣接画素対(P42、P43)も隣り合って配置されている。両者の隣接画素対においても同様に、夫々異なるデータ線Dを共通のデータ線としている。
【0069】
更に、隣接画素対(P23、P22)又は隣接画素対(P42、P43)に対し、+X方向には、隣接画素対(P34、P33)が配置されている。この隣接画素対(P34、P33)は、データ線D3を共通のデータ線としている点は、隣接画素対(P31、P32)と同様である。すなわち、サブ画素1列毎に、同じデータ線Dを共通データ線とする隣接画素対が配置されていることになる。これは、換言すれば、右眼用画素4Rを構成する隣接画素対に接続されたデータ線Dは、左眼用画素4Lを構成する隣接画素対には接続されないことになる。
【0070】
画素P22及び画素P23から構成される隣接画素対において、共通のデータ線D2より−Y方向に位置する画素P22は、−X方向に位置するゲート線G2によって制御され、データ線D2より+Y方向に位置する画素P23は、+X方向に位置するゲート線G3によって制御される。すなわち、この隣接画素対は、各サブ画素が共通のデータ線Dを挟み上下に配置されるとき、+Y側のサブ画素が+X側のゲート線Gに接続されていることになる。
【0071】
一方で、画素P31及び画素P32から構成される隣接画素対においては、共通のデータ線D3より−Y方向に位置する画素P32は、+X方向に位置するゲート線G2に接続され、データ線D3より+Y方向に位置する画素P31は、−X方向に位置するゲート線G1に接続される。すなわち、この隣接画素対は、各サブ画素が共通のデータ線Dを挟み上下に配置されるとき、+Y側のサブ画素が−X側のデータ線Dに接続されていることになる。+Y側のサブ画素が−X側のゲート線Gによって制御される隣接画素対は、+X方向に隣接するサブ画素列においては、−Y方向に隣接するデータ線Dに対して配置されている。この結果、同種の隣接画素対は、斜め方向に配置されていることになる。また、換言すれば、本実施形態においては、+Y側のサブ画素が−X側のデータ線Dに接続された隣接画素対と、+Y側のサブ画素が+X側のデータ線Dに接続された隣接画素対とが配置されていると表現することもできる。
【0072】
図3に示すサブ画素のレイアウトは、例えば、図1に示す隣接画素対(P34、P33)とその+X方向へ隣接した画素P25、P45の関係に相当する。また、図4に示すサブ画素のレイアウトは、例えば、図1に示す隣接画素対(P31、P32)と、サブ画素P22、P42の関係に相当する。本実施形態の表示素子2におけるTFT基板2aの画素アレイは、図3及び図4に示すサブ画素をそれぞれX方向とY方向へ交互に敷き詰めることにより構成されている。
【0073】
また、各サブ画素における表示領域、すなわち表示に使用される領域は、略台形状となっている。これに伴い、画素電極4PIXの形状も、略台形状となっている。また、隣接画素対4PAIR1、4PAIR2は、略台形状の表示領域を有する二つのサブ画素が、上底側を向かい合わせて配置されたものと表現することもできる。そして画素薄膜トランジスタ4TFTは、略台形状の表示領域の上底側に配置され、隣接画素対4PAIR1、4PAIR2を構成している。本実施形態では、表示領域の上底側が相互に向かい合って並ぶサブ画素4Sの上底間に画素薄膜トランジスタ4TFTを配置することにより、高開口化を図っている。
【0074】
また、蓄積容量線CSは、ゲート線Gの延伸方向、すなわちY軸方向に隣接するサブ画素4S毎に設けられた蓄積容量電極CS2と電気的に接続するように配置されている。なお、蓄積容量電極CS2は、画素薄膜トランジスタ4TFTと同様に、各サブ画素4Sにおいて、略台形状を有する表示領域の上底側に配置されている。これにより、隣接画素対4PAIRを構成する各サブ画素の上底間に蓄積容量4CSを形成する領域を効率的に配置し、開口率の更なる向上が可能となる。
【0075】
隣接画素対4PAIR1、4PAIR2に設けられた画素薄膜トランジスタ4TFTは、コの字型のダブルゲート構造であり、コの字の開いた方が互いに向かい合うように配置されている。そして、向かい合うように配置されたコの字型の画素薄膜トランジスタ4TFTの間には、蓄積容量電極CS2が配置されており、この蓄積容量電極CS2と各サブ画素4Sに設けられたシリコン層4SIとの間で、蓄積容量4CSが形成される。
【0076】
隣接画素対4PAIR1、4PAIR2における画素薄膜トランジスタ4TFTのチャネル部は、画像分離方向、すなわちX軸方向と平行に配置される。このチャネル部は、画素薄膜トランジスタ4TFTの動作部であり、各サブ画素4Sにおいて均一性が求められる。データ線Dは、画素薄膜トランジスタ4TFTのチャネル領域の上層で画像分離方向、すなわちX軸方向と異なる方向へ傾斜して配置している。また、データ線Dは、蓄積容量電極CS2上で画像分離方向と異なる方向へ傾斜して配置している。上述の通り、データ線Dは、台形上底に配置された画素薄膜トランジスタ4TFT及び、蓄積容量電極CS2の上層で複数回の屈曲を経てX軸方向に延伸している。データ線Dは、台形上底部で屈曲することにより効率よく配置され、開口率を向上することができる。また、画素薄膜トランジスタ4TFTのチャネル部をX軸方向に平行に配置しているため、ポリシリコン薄膜をレーザアニールにより形成する場合には、エキシマレーザのスキャン方向に応じて画素薄膜トランジスタ4TFTのチャネル部の方向を揃えることにより、トランジスタ特性を均一化することができる。
【0077】
蓄積容量線CSは、蓄積容量電極CS2と電気的に接続しているため、隣接画素対4PAIRを構成する各サブ画素において、蓄積容量線CSの電位は共通である。前述の略台形画素は、隣接画素対4PAIRにおいて、略台形画素の上底部が互いに向かい合うように接しているため、共通の蓄積容量電極CS2を設けることで無駄なスペースを削減でき、蓄積容量4CSを形成する面積を効率よく確保することができる。そのため、従来よりも開口率を大きくすることができ、高透過率化を図ることができる。
【0078】
上述のように、右眼用画素4Rを構成する隣接画素対4PAIRに接続されたデータ線Dは、左眼用画素4Lを構成する隣接画素対4PAIRには接続されないため、奇数データ線D1、D3、D5、D7、D9、D11、D13と、偶数データ線D2、D4、D6、D8、D10、D12を独立して駆動することにより、右眼用画素4Rと左眼用画素4Lを個別に動作させて簡易的な視差画像を表示することができる。表示素子2にレンチキュラレンズ3を設置する製造プロセスの過程で、偶数・奇数データ線D毎に信号を入力することにより、立体視認性を簡易的に検査することができ、後工程における製造上の歩留りを向上することができる。偶数ラインと奇数ラインには夫々共通の信号を一括で入力すればよく、偶数・奇数データ線D毎に入力信号を切り替えるためのスイッチは、画素薄膜トランジスタ4TFTと同時にTFT基板2a上に形成すれば良い。これにより、検査装置の簡易化を図ることができる。
【0079】
ここで、本実施形態に係る画像表示装置1は、図8及び図9に示すように、携帯電話9に搭載することができる。図8では、画像表示装置1のX軸方向が携帯電話9の画面の縦方向となり、画像表示装置1のY軸方向が携帯電話9の画面の横方向となっている。図8に示す携帯電話9の画面部分は回転軸をもったヒンジを備えており、図9に示すように、自由に可動することができる。そのため、表示画面の方向を使用環境に応じて変えることにより、画像分離方向、すなわちX軸方向は、視認者の両眼を結ぶ線分と略平行にして容易に立体表示を視認することができる。また、本実施形態に係る表示素子2は、上述のとおり狭額縁であることを特徴とするため、携帯機器に求められる機能性やデザイン性、操作性を制限することなく好適に携帯機器へ適用することができる。
【0080】
次に、本実施形態に係るサブ画素構造とその効果について詳細に説明する。ここで、画像分離手段の画像分離方向(本実施形態ではX軸方向)と直交する方向(すなわちY軸方向)に延伸する線分を用いて、サブ画素を切断した際のY軸方向の開口幅を、Y軸方向のサブ画素ピッチで除した値を縦開口率と定義する。複数視点用表示装置において、3Dクロストークの発生を低減して立体画像を高品質化するためには、サブ画素の縦開口率を横方向の位置によらず略一定にしつつ、縦開口率を最大にする必要がある。なお、この縦開口率を、画像分離方向に依存せず略一定にした上で、縦開口率を最大にすることが望ましい。
【0081】
まず、ゲート線G及びデータ線Dの配置については、各サブ画素の周囲にゲート線G及びデータ線Dが配置されている方が好ましい。これにより、配線間のデッドスペースを削減して開口率の向上が可能となる。換言すれば、ゲート線G同士又はデータ線D同士が、間にサブ画素を配置することなく隣接するのは避けた方がよい。これは、同種の配線同士が隣接してしまうと、ショートを防止するため配線間に間隔を設ける必要が発生し、この間隔がデッドスペースとなって開口率が低下するからである。
【0082】
なお、特に立体画像表示装置の場合には、少なくとも画像分離方向が画像表示装置の横方向となるように配置される。本実施形態では、X軸方向へ隣接する右眼用画素4Rと左眼用画素4Lを覆うように、Y軸方向と平行な光学主軸30を有するシリンドリカルレンズ3aが設置される。図3、図4、及び図6に示すように光学主軸30は表示単位4Uの中央部においてゲート線G及び蓄積容量線CSを跨るように配置される。光学主軸30はA−A’線と略一致している。なお、A−A’線は、表示単位4UにおいてX軸方向の中心点を通りY軸に平行な仮想線分であり、B−B’線は、隣接画素対4PAIRにおいてX軸方向の中心点を通りY軸に平行な仮想線である。
【0083】
また、図17及び図18に示すように、レンチキュラレンズ3に設けられたシリンドリカルレンズ3aから出射される光線方向は、観察者の視点の位置に応じて設定される。画像分離の中心軸を示す線17の方向は観察者側へ向いており、画像分離の中心軸に対して、右眼用の画像と左眼用の画像は左眼55Lと右眼55Rにそれぞれ振り分けられる。シリンドリカルレンズ3aの表面は凸状に湾曲しており、Z軸方向の最も高い点が頂点となる。シリンドリカルレンズ3aの頂点に沿ってレンズ凸部の長手方向に延びる仮想の線分は、シリンドリカルレンズ3aと表示単位4Uのピッチが一致する場合には光学主軸30と成り得る。しかしながら、表示面の垂直方向からシリンドリカルレンズ3aと表示単位4Uを重ねて観察した場合、本実施形態ではシリンドリカルレンズ3aのピッチLと表示単位4UのピッチPuが異なるため、シリンドリカルレンズ3aの頂点が表示単位4Uの中心線であるA−A’線と必ずしも一致するわけではない。これは、画像分離の中心軸を示す線17が観察者側の一点に集まっているため、観察点から見た画像分離の中心軸が見かけ上の光学主軸30となるためである。本明細書においては、観察者の位置から見た場合の画像分離の中心軸を光学主軸30と定義する。図18に示すように、表示素子2の表示部中央では、画像分離の主軸を示す線17が表示面の垂直方向であり、表示面の垂直方向から観察した場合の光学主軸30とA−A’線が一致するため、図3、図4及び図6に示すように図示することができる。
【0084】
更に、ゲート線G及び蓄積容量線CSは、縦開口率を画像分離方向の位置によらず略一定にするため、配列方向から屈曲させる必要がある。ゲート線G及び蓄積容量線CSは斜辺部において相互に近接して設けられ、台形斜辺の延びる方向へ沿って配置される。そして、縦開口率を限定する要因には、この屈曲した斜辺部の構造と、台形状開口における下底部の構造、及び上底間の構造等が挙げられる。より具体的には、図3、図4及び図6のA−A’線に示すように、斜辺部を切断する縦線は、ゲート線Gの斜辺部と蓄積容量線CSの斜辺部を覆うブラックマトリクス60のY軸方向の幅、略台形画素の下底部に配置されたデータ線Dを覆うブラックマトリクス60のY軸方向の幅が縦開口率に影響する。また、図3、図4及び図6のB−B’線に示すように、サブ画素4Sの中央部を切断する縦線は、上底部に配置された蓄積容量電極CS2と下底部に配置されたデータ線Dを覆うブラックマトリクス60のY軸方向の幅が縦開口率に影響する。
【0085】
A−A’線、B−B’線の双方に共通するのは、略台形画素の下底部に配置されたブラックマトリクス60のY軸方向の遮光幅である。そこでまず、この下底部のY軸方向の幅を最小にするための構造を検討する。前述のように、下底部に位置する遮光部には少なくともデータ線D1本は配置する必要がある。そして、下底部のY軸方向の幅を最小にするためには、構造物は、このデータ線D1本に留めるのが好ましい。例えば、下底部に画素薄膜トランジスタ4TFTを配置すると、その分だけ下底部のY軸方向の幅が増大してしまうため好ましくない。特にA−A’線においては、下底部が重複して配置されているため、下底部のY軸方向の幅が増大した際の影響が非常に大きい。このため、下底部への構造物の配置は極力避けるべきである。下底部への構造物の配置を避けることで、下底部のY軸方向の幅を削減しつつ、かつ省プロセス化が実現できる。
【0086】
次に、A−A’線における傾斜配線のY軸方向の幅について検討する。この斜辺部には、配線を屈曲して配置しているため、配線が屈曲した分だけY軸方向の幅が大きくなる。例えば、X軸に対する傾斜角をθとし、斜辺部の線幅をW1とすると、斜辺部のY軸方向の幅は、W1/cosθとなる。例えば、θが60度の場合だと、斜辺部のY軸方向の幅は、幅の2倍となる。このように、斜辺部のY軸方向の幅は、幅の1/cosθ倍の影響を受けるので、斜辺部のY軸方向の幅を小さくするのは非常に重要である。
【0087】
斜辺部の幅を小さくするには、斜辺部に構造物を極力配置しないのが好ましい。例えば、斜辺部に画素薄膜トランジスタ4TFTを配置すると、その分だけ幅が増大し、1/cosθ倍でY軸方向の幅が増大してしまう。このため、斜辺部に構造物を配置することは好ましくない。しかし前述のように、斜辺部には少なくとも1本のゲート線Gを配置する必要がある。
【0088】
最後に、B−B’線における上底部のY軸方向の幅について検討する。前述のように、下底部及び斜辺部には画素薄膜トランジスタ4TFTと蓄積容量電極CS2を配置できなかったため、この上底部に配置する必要がある。そして、上底部のY軸方向の幅を低減するような配置が重要となる。図3に示すように明らかであるが、上底部において最もY軸方向の幅を有する構造物は、画素薄膜トランジスタ4TFTである。また、蓄積容量電極CS2と画素薄膜トランジスタ4TFTは、ショートしないように間隔をおいて配置する必要がある。そこで本発明では、相互に異なるサブ画素に接続した2つの画素薄膜トランジスタ4TFTの間に共通の蓄積容量電極CS2を設けて上底部のY軸方向の幅を低減した。
【0089】
A−A’線における縦開口率A、及びB−B’線における縦開口率Bは、図6に示す距離を基にすると、以下の数式で示される。
[数4]
A=(Y1+Y2−W1/cosθ)/(Y1+Y2+2×Y3)
[数5]
B=Y1/(Y1+Y2+2×Y3)
【0090】
ここで、各配線の傾斜角度は、+X方向を0度の軸として反時計回りの方向を正として定義する。図3及び図4に示すように、ゲート線Gは、各サブ画素4Sにおいて画像分離方向と異なる方向へ傾斜している。そして蓄積容量線CSは、各サブ画素4Sにおいて画像分離方向と異なる方向へ傾斜しており、サブ画素4Sに配置された片側のゲート線Gの傾斜角度と同じである。
【0091】
蓄積容量線CSは、サブ画素4Sにおいて片側のゲート線Gに沿って平行に配置される。隣接画素対4PAIRの上底側が+Y方向を向いたサブ画素においては、−X側のゲート線Gの傾斜角度はθ1であり、+X軸側のゲート線Gの傾斜角度はθ2=−θ1となっている。また、上底側が−Y方向へ向いたサブ画素においては、−X方向側のゲート線傾斜角度はθ’1=−θ1であり、+X方向側のゲート線傾斜角度はθ’2=θ1となっている。
【0092】
ゲート線Gは、X軸方向に隣接するサブ画素間の境界に配線されており、ゲート線Gの斜辺部の近傍では、隣接するサブ画素間の画素電極端が近接している。そのため、ゲート線Gの斜辺部の近傍では、画素電極4PIXとゲート線Gによって発生する電界の影響により液晶分子の配向が乱れてディスクリネーションが発生しやすく、バックライトからの光り漏れによってコントラスト低下するおそれがある。特に、画像分離手段を備えた立体表示素子においては、サブ画素内の局所的な光り漏れが拡大され、輝度ムラが発生することにより表示品質が低下するおそれがある。従って、ゲート線Gの斜辺部の近傍には光り漏れを低減するための遮光層を設けることが望ましい。本実施形態では、図5及び図6に示すように、ゲート線Gの上層を対向基板2b上に設けたブラックマトリクス60で覆って遮光している。TFT基板2a側の配線による斜辺部の傾斜角度と、ブラックマトリクス60の斜辺部の傾斜角度は、等しく配置されることが望ましい。ブラックマトリクス60は、TFT基板2aと対向基板2bの重ね合わせずれマージンを見込む分だけ幅広に設けることが望ましい。
【0093】
また、ブラックマトリクス60の代わりにTFT基板2a側に設けられる配線材料を適用して遮光してもよい。TFT基板2a側に遮光部を設ける場合は、基板上に高精度にパターン形成できるため、遮光層の線幅を小さくすることができ、開口率を向上することができる。特に、遮光層の線幅を小さくすることにより、左右分離画像の境界に発生する3Dモアレを低減することができ、立体画像の表示品質を向上することができる。
【0094】
また、ゲート線Gの斜辺部は、ブラックマトリクス60で覆われているため、縦開口率はTFT基板2aと対向基板2bとの重ね合わせ精度の影響を受けて変動する可能性がある。重ね合わせ精度に起因して発生する縦開口率の変動は10%以内におさまるように設計することが望ましい。
【0095】
また、所望のサブ画素において開口率を大きくするためには、略台形画素の上底部の遮光部のY軸方向の幅Y2を台形開口のY軸方向の幅Y1より小さくすることが望ましい。これにより、以下の関係式が成り立つ。
[数6]
Y1>Y2
【0096】
ゲート線Gは、表示単位4Uの中央部に配置されており、左右画像の分離性能に大きく関わる。特に、ゲート線Gの傾斜角度が大きくなると、左右のサブ画素の画像が混じりあう領域X3が大きくなり、3Dクロストークが大きくなるため、ゲート線Gの傾斜角度は大きくできない。特に、図6に示すように、左右の画像が交じり合う領域の幅X3の領域に含まれる開口領域は、画素開口率の10%以下となっていることが望ましい。
【0097】
また、3Dクロストークを低減するためには、下記の関係式が成り立つことが望ましい。
[数7]
X1>X2
【0098】
更に、3Dクロストークを小さくし、かつ開口率を大きくするためにはX1を大きくすることが望ましく、以下の関係式が成り立つようにすることが望ましい。
[数8]
X1>(2×X2)>X3
【0099】
なお、一般的に蓄積容量電極CS2を画素薄膜トランジスタ4TFTの近傍に配置することが、蓄積容量4CSを形成する上で最も効率が高い。これは、蓄積容量4CSが、画素薄膜トランジスタ4TFTのドレイン電極に接続された電極と、蓄積容量線CSに接続された電極との間で形成されることから明らかである。特に、本実施形態では、隣接画素対4PAIRの各サブ画素4Sを制御する画素薄膜トランジスタ4TFTの間に蓄積容量電極CS2を設けており、また、隣接画素対4PAIRにおいて、共通の蓄積容量電極CS2を適用することによって、蓄積容量4CSを形成するための領域を効率的に配置し、開口率向上を図っている。
【0100】
そして、略台形画素の上底部における画素薄膜トランジスタ4TFTは、Y軸方向で隣接するサブ画素の+Y側のサブ画素と−Y側のサブ画素とをそれぞれ制御するため、蓄積容量電極CS2とデータ線Dとの交差部分においては、データ線Dが画像分離方向と異なる方向へ傾斜して配置されている。図3に示すように、蓄積容量電極CS2の上層において傾斜したデータ線Dは、画像分離方向とのなす角度θD2で配置され、隣接画素対4PAIRを駆動するための画素薄膜トランジスタ4TFTと接続している。蓄積容量電極CS2の上層に配置されたデータ線Dは、画像分離方向と異なる方向へ傾斜配置することにより、無駄なスペースを削減した上で、蓄積容量CS2などのスペースとして活用することができる。
【0101】
また、画素薄膜トランジスタ4TFTのシリコン薄膜部は、データ線Dと積層して配置される。データ線Dは、シリコン薄膜部の上層で画像分離方向と異なる方向へ傾斜して配置される。シリコン薄膜部の上層におけるデータ線DとX軸方向とのなす角度は、θD1となる。
【0102】
略台形画素の上底部において、画素薄膜トランジスタ4TFT、データ線D、及びコンタクトホール4CONT1、4CONT2に注目すると、その関係は蓄積容量電極CS2上に配置されたデータ線Dの中心部の点を中心に、点対称の配置となっている。本実施形態では、このようなトランジスタ、データ線の配置によりレイアウト面積を最小限にしてサブ画素の高開口率化を図っている。
【0103】
なお、TFT基板2a側に遮光層、及びカラーフィルタを配置してもよい。これにより、重ね合わせ精度を向上できるため、遮光層の幅を小さくでき、開口効率を大きくすることができる。また、ゲート線Gを覆う遮光層の幅を小さくすることにより、3Dモアレを低減することができ、表示品質を向上することができる。
【0104】
次に、上述で説明した本実施形態に係る画像表示装置1の駆動方法、すなわち表示動作について説明する。本実施形態においては、画像表示装置1は、ドット反転駆動を用いて駆動される。ドット反転駆動は、図10に示すように、データ線1本毎に各々伝送される表示データの極性が基準電位に対して反転され、かつゲート線1本毎に各々データ線を伝送される表示データの極性が反転され、かつフレーム毎に極性が反転される駆動方法である。ドット反転駆動は、1H1V反転駆動とも称される。これは、水平方向(H方向)に配列するデータ線1本毎、また垂直方向(V方向)に配列するゲート線1本毎に極性が反転しているからである。
【0105】
画像表示装置1は、あるフレームにおいて、ドット反転駆動の結果、図11に示すような各サブ画素の極性を実現する。まず、ゲート線G1が選択されると、データ線D1には正極性の表示データが伝送され、画素P11には正極性の電圧が書き込まれる。またデータ線D2には負極性の表示データが伝送される。同様に、データ線D3、D5、D7、D9、D11、D12には正極性の表示データが伝送され、データ線D4、D6、D8、D10、D12には負極性の表示データが伝送される。次にゲート線G2が選択された場合には、データ線の極性が全て反転される。すなわち、データ線D1、D3、D5、D7には負極性の表示データが伝送され、データ線D2、D4、D6には正極性の表示データが伝送される。以降、ゲート線G3、G5、G7の選択時は、ゲート線G1の選択時と同様であり、ゲート線G4の選択時は、ゲート線G2の選択時と同様である。そして、このフレームが終了すると、次のフレームにおいては、更に極性反転が実行される。すなわち、ゲート線G1、G3、G5、D9、D11、D13選択時においては、データ線D1、D3、D5、D7に負極性の表示データが伝送され、データ線D2、D4、D6、D8、D10、D12に正極性の表示データが伝送される。また、ゲート線G2、G4、G6選択時においては、データ線D1、D3、D5、D7、D9、D11、D12に正極性の表示データが伝送され、データ線D2、D4、D6、D8、D10、D12に負極性の表示データが伝送される。
【0106】
右眼用画素4Rから構成されるサブ画素群は、2ラインドット反転(2H1Vドット反転)効果が得られる極性分布となっている。そして、左眼用画素4Lから構成されるサブ画素群も、同様である。これにより、片眼で視認される画像の極性分布は、水平方向(H方向)に配列するデータ線D2本毎、また垂直方向(V方向)に配列するゲート線G1本毎に極性が反転しているように見える。なお、本実施形態に係る極性分布の基本セットは、X軸方向4画素、Y軸方向4画素の合計16画素である。
【0107】
本実施形態においては、各サブ画素への表示データの書き込み時に、蓄積容量線CSの電位変動を抑制することができる。これは、隣接画素対4PAIRで共通の蓄積容量電極CS2には、連続した2つのゲート線Gの選択期間において、正極性の表示データが書き込みされるサブ画素だけでなく、負極性の表示データが書き込まれるサブ画素が接続されているからである。これにより、蓄積容量線CSの電位が片側の極性に向かって変動するのを抑制することができ、蓄積容量線CSが延伸する方向へ発生するクロストークなどを低減して、高品質な画像表示を実現することができる。本実施形態に係る構成は、一般的なドット反転駆動を使用した上で、2ラインドット反転効果、各蓄積容量線CSの電位変動抑制効果を実現でき、かつ台形開口の底辺部が隣接するサブ画素の極性を同じにできる。これにより、低コストで高画質表示を実現することができる。
【0108】
なお、ドット反転駆動における基準電位としては、画素電極に対向する共通電極の電位を挙げることができる。しかし厳密には、共通電極電位は画素薄膜トランジスタ4TFTのフィードスルーの影響を低減するために、DCオフセットを印加することが多く、基準電位とは異なるものである。
【0109】
次に、本実施形態に係る画像表示装置1の構成の一例と、レンチキュラレンズ3が画像振分手段として作用するための条件について詳述する。本実施形態においては、画像振分手段は、左眼用画素4Lと右眼用画素4Rが配列する第1の方向、すなわちX軸方向に沿って、各サブ画素から出射した光を相互に異なる方向に振り分けなければならない。そこでまず、画像振分効果を最大限に発揮する場合について説明する。
【0110】
図12に示すように、左眼用画素4L及び右眼用画素4Rから出射された光線は、画像分離手段によって画像分離の中心軸を示す線17を中心にして夫々の光線を左眼の観察領域と右眼の観察領域へ振り分けられる。レンチキュラレンズ3の主点、すなわち頂点とサブ画素との間の距離をHとし、レンチキュラレンズ3の屈折率をnとし、レンズピッチをLとする。ここで、画像分離方向への1視点分に対応したサブ画素のピッチをPとおく。すなわち、本実施形態では、左眼用画素4L又は右眼用画素4Rの各1個のX軸方向へのピッチPxがPとなる。各1個の左眼用画素4L及び右眼用画素4Rからなる表示単位4Uの画像分離方向への配列ピッチPuは2Pとなる。
【0111】
また、レンチキュラレンズ3と観察者との間の距離を最適観察距離ODとし、この距離ODにおけるサブ画素の拡大投影像の周期、すなわち、レンズから距離ODだけ離れ、レンズと平行な仮想平面上における左眼用画素4L及び右眼用画素4Rの投影像の幅の周期を夫々eとする。更に、レンチキュラレンズ3の中央に位置するシリンドリカルレンズ3aの中心から、X軸方向におけるレンチキュラレンズ3の端に位置するシリンドリカルレンズ3aの中心までの距離をWLとし、表示素子2の中心に位置する左眼用画素4Lと右眼用画素4Rからなる表示単位4Uの中心と、X軸方向における表示素子2の端に位置する表示単位4Uの中心との間の距離をWPとする。更にまた、レンチキュラレンズ3の中央に位置するシリンドリカルレンズ3aにおける光の入射角及び出射角を夫々α及びβとし、X軸方向におけるレンチキュラレンズ3の端に位置するシリンドリカルレンズ3aにおける光の入射角及び出射角を夫々γ及びδとする。更にまた、距離WLと距離WPとの差をCとし、距離WPの領域に含まれるサブ画素数を2m個とする。
【0112】
シリンドリカルレンズ3aの配列ピッチLとサブ画素の配列ピッチPとは、相互に関係しているため、一方に合わせて他方を決めることになるが、通常、表示素子に合わせてレンチキュラレンズを設計することが多い。このため、サブ画素の配列ピッチPを定数として扱う。また、レンチキュラレンズ3の材料を選択することにより、屈折率nが決定される。これに対して、レンズと観察者との間の観察距離OD、及び観察距離ODにおける画素拡大投影像の周期eは、所望の値を設定する。これらの値を使用して、レンズの頂点とサブ画素との間の距離H及びレンズピッチLを決定する。スネルの法則と幾何学的関係より、下記数式9乃至17が成立する。
[数9]
n×sinα=sinβ
[数10]
OD×tanβ=e
[数11]
H×tanα=P
[数12]
n×sinγ=sinδ
[数13]
H×tanγ=C
[数14]
OD×tanδ=WL
[数15]
WP−WL=C
[数16]
WP=Pu×m=2×m×P
[数17]
WL=m×L
【0113】
ここで、画像振分効果を最大限に発揮する場合について考える。それは、レンチキュラレンズ3の頂点とサブ画素との間の距離Hを、レンチキュラレンズ3の焦点距離fと等しく設定した場合である。これにより、下記数式18が成立する。そして、レンズの曲率半径をrとすると、曲率半径rは下記数式19により求まる。
[数18]
f=H
[数19]
r=H×(n−1)/n
【0114】
上記のパラメータについてまとめると、サブ画素の配列ピッチPは、表示素子2により決定される値であり、観察距離OD及び画素拡大投影像の周期eは、画像表示装置1の設定により決定される値である。屈折率nは、レンズ等の材質により決定される。そして、これらから導出されるレンズの配列ピッチL、レンズとサブ画素との距離Hは、各サブ画素からの光が観察面に投影される位置を決定するためのパラメータとなる。画像振分効果を変更するパラメータは、レンズの曲率半径rである。すなわち、レンズとサブ画素との距離Hが固定の場合には、レンズの曲率半径rを理想状態から変更すると、左右のサブ画素の像がぼやけて明確に分離しなくなる。すなわち、画像振分効果を最大限に発揮するには、分離が有効となる曲率半径rの範囲を求めれば良い。
【0115】
まず、レンズの分離作用が存在するための、曲率半径rの範囲の最小値を求める。図13に示すように、分離作用が存在するためには、レンズピッチLを底辺とし、焦点距離fを高さとする三角形と、サブ画素ピッチPを底辺とし、H−fを高さとする三角形とにおいて、相似の関係が成立すればよい。これより、下記数式20が成立し、焦点距離の最小値fminを求めることができる。
[数20]
fmin=H×L/(L+P)
【0116】
次に焦点距離から曲率半径rを求める。曲率半径rの最小値rminは、数式19を基に、下記数式21のように求めることができる。
[数21]
rmin=H×L×(n−1)/(L+P)/n
【0117】
次に、曲率半径rの最大値を求める。図14に示すように、分離作用が存在するためには、レンズピッチLを底辺とし、焦点距離fを高さとする三角形と、サブ画素ピッチPを底辺とし、f−Hを高さとする三角形とにおいて、相似の関係が成立すればよい。
【0118】
これより、下記数式22が成立し、焦点距離の最大値fmaxを求めることができる。
[数22]
fmax=H×L/(L−P)
【0119】
次に焦点距離から曲率半径rを求める。曲率半径の最小値rmaxは、数式19を基に、下記数式23のように求めることができる。
[数23]
rmax=H×L×(n−1)/(L−P)/n
【0120】
以上まとめると、レンズが画像振分効果を発揮するためには、レンズの曲率半径rが数式21及び数式23により示される下記数式24の範囲に存在する必要がある。
[数24]
H×L×(n−1)/(L+P)/n≦r≦H×L×(n−1)/(L−P)/n
【0121】
なお上記においては、左眼用画素4Lと右眼用画素4Rとを有する2視点の立体画像表示装置について説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、N視点方式の画像表示装置に対して同様に適用することができる。すなわち、N視点方式では、表示単位4UのピッチPuとサブ画素のピッチPはPu=N×Pの関係が成り立つ。この場合には、前述の距離WPの定義において、距離WPの領域に含まれるサブ画素数を、2m個からN×m個に変更すればよい。
【0122】
本実施形態の構成において、更なる高画質化を実現するためには、縦開口率を横方向の位置によらず、完全に一定とするのが好ましい。しかしながら、特に台形開口の斜辺部における頂点近傍では、レイアウト上の制約や遮光部の加工精度などにより、完全に縦開口率を一定にするのが難しい。そこで、本実施形態においては、図13及び図14に示すように、レンズの焦点をサブ画素面からずらして配置することにより像をぼかし、この遮光部の加工精度に起因する影響を低減して高画質化を図ることができる。
【0123】
上述のように、レンズの焦点をサブ画素面からずらして配置することによってぼかす領域を設定し、高画質化を図る技術を以下の説明では「デフォーカス効果」と称する。また、ぼかすことのできる有効領域についてその幅を「スポット径」と称する。本実施形態では、X軸方向へ有効にぼかすことのできる幅がスポット径SPとなる。スポット径SPの大きさは、レンズ焦点の位置からの距離に従って決定されるため、レンチキュラレンズシートや、対向基板2aの偏光板11の厚みを調整することにより設定可能である。
【0124】
ここで、台形斜辺のX軸方向における幅をWX1とすると、図6より、WX1=W1/sinθの関係が成り立ち、台形開口の斜辺と上底との交点から斜辺と下底との交点までのX軸方向への長さは、2×X2である。レンズの焦点をサブ画素面からずらして配置した時のサブ画素面におけるスポット径SPは、WX1以上、2×X2以下の範囲にあることが好ましい。スポット径SPがWX1の場合は、台形開口の斜辺領域を複合してぼかせる限界であり、スポット径SPは、これより大きく設定することが好ましい。そして、スポット径SPが2×X2の場合は、ぼかすことができる領域を台形開口の斜辺と上底との交点、及び斜辺と下底の交点まで広げることができる。ただし、これよりぼかす領域が大きくなると、レンズの分離性能が低下していく。従って、レンズの分離性能を優先して設計する場合は、下記の数式25又は数式26が成立する範囲にレンズ曲率を設定することが好ましい。
[数25]
H×L×(n−1)/(L+2×X2)/n≦r≦H×L×(n−1)/(L+WX2)/n
[数26]
H×L×(n−1)/(L−WX2)/n≦r≦H×L×(n−1)/(L−2×X2)/n
【0125】
また、本実施形態においては、傾斜した蓄積容量線CSのX軸方向への幅をWX2とすると、図6より、WX2=W2/sinθ1の関係が成り立つ。蓄積容量線CSと台形斜辺の交点を複合してぼかすのであれば、スポット径SPは、WX1以上、2×(WX2+X2)以下の範囲にあることが好ましい。スポット径SPがWX1の場合は、台形開口の斜辺領域を複合してぼかせる限界であり、スポット径SPは、これより大きく設定することが好ましい。スポット径SPが2×(WX2+X2)の場合は、ぼかす領域を蓄積容量線CSと遮光部が交差する位置まで広げることができる。これにより、蓄積容量線CSの加工精度に起因する影響を低減して高画質化することができる。この構成は、蓄積容量線CSの加工精度が画質へ及ぼす影響が大きい場合には特に有効である。ただし、これよりぼかし量が大きくなると、3Dクロストーク量が大きくなるので好ましくない。従って、下記の数式27又は数式28が成立する範囲にレンズ曲率を設定することが好ましい。
[数27]
H×L×(n−1)/(L+2×WX2+2×X2)/n≦r≦H×L×(n−1)/(L+WX1)/n
[数28]
H×L×(n−1)/(L−WX1)/n≦r≦H×L×(n−1)/(L−2×WX2−2×X2)/n
【0126】
次に、本実施形態におけるサブ画素構造とレンズの作用について詳細を説明する。まず、本実施形態における3Dモアレの定義について説明する。
【0127】
本実施形態に係る画像表示装置1の各種の分布は、図15(A)に示すような縦開口の幅の分布、図15(B)に示すような明るさの分布、図16に示すような輝度分布、となる。図16において、横軸の観察位置Xは、画像分離方向を示す角度であり、表示面に対して垂直な方向、すなわち+Z軸方向を0としている。縦軸の明るさYは、相対輝度を示している。
【0128】
観察者位置の−X側のグラフは、右眼側に出力される画像に対応した輝度分布であり、+X側のグラフは、左眼側に出力される画像に対応した輝度分布である。点線は、右眼用画素4R又は左眼用画素4Lのうち、片側のサブ画素のみに画像を出力した場合の輝度分布を示しており、実線は、両方のサブ画素に画像を表示させた場合の輝度分布である。従って、点線に示す各視点に応じた輝度分布の総和は、実線の輝度分布と等しくなる。
【0129】
本実施形態に係るサブ画素は、画像分離方向への縦開口率が略一定になるように設計されているが、TFT製造プロセスやパネル製造プロセスの工程上の加工精度により設計上の値と異なって縦開口率が一定とはならず、観察者位置Xに対して輝度変動が生じる場合がある。特に、TFT基板2aと対向基板2bの重ね合わせがY軸方向へ大きくずれた場合は、ゲート線G部を遮光しているブラックマトリクス60の影響を受けて輝度変動が生じやすい。点(X0,Y0)付近に発生する輝度変動は、ゲート線Gの遮光部に起因して発生する。この輝度変動は、3Dモアレと呼ばれるものであり、本実施形態においては、以下のように定義する。
[数29]
YC=(YL1+YR1)/2
[数30]
ΔYC=(YC−Y0)YC
[数31]
ΔYC/ΔXC=ΔYC/(XR1−XL1)
【0130】
また、右眼の視認範囲eR、及び左眼の視認範囲eLは以下のように定義する。
[数32]
eR=XR4
[数33]
eL=−XL4
【0131】
また、図6を基に、以下の関係式が成り立つ。
[数34]
(XR3−XR1):(XL1−XR1)=X1:2×X2
【0132】
本発明者は、主観的な評価結果から輝度変動が20%以内であれば、観察者に違和感を与えずに表示品質を保つことができることを見出した。従って、図6に示すA−A’線に係る縦開口率は、縦開口率の変動は20%以内におさまるように設計することが望ましく、以下の関係式が成り立つ。
[数35]
0. 8<(Y1−W1/cosθ)/Y1<1.2
【0133】
以上説明したような画像表示装置1は、サブ画素4S内のデータ線D、ゲート線G、蓄積容量電極CS2、スイッチング手段が効率良く配置されているため、開口率を向上しつつ、立体画像を高品質化することができる。
【0134】
また、画像表示装置1では、スイッチング素子とサブ画素4Sの接続関係より隣接画素対4PAIRが駆動上の基本単位であり、隣接画素対4PAIRの蓄積容量電極CS2は、隣接画素対4PAIRを構成する各サブ画素4Sが共有する領域に電気的に接続して設けられる。このため、本実施形態に係る画像表示装置1は、隣接画素対4PAIRにおいて蓄積容量電極CS2の電位変動を小さくでき、フリッカ、クロストークを低減することができる。
【0135】
また、本実施形態に係る画像表示装置1は、ゲート線Gまたは蓄積容量線CSの少なくとも一部を覆うようにブラックマトリクス60を設けることにより、製造プロセスのマージンを大きくでき、歩留りを向上することができる。また、光学手段の主軸部において発生する製造プロセス起因の輝度変動を低減し、立体画像品質を向上することができる。
【0136】
また、本実施形態に係る画像表示装置1は、蓄積容量電極CS2と電気的に接続する蓄積容量線CSの少なくとも一部がゲート線Gに近接して配置することにより、ゲート線Gから液晶層へ漏れる電界成分を遮蔽し、液晶分子の配向不良やディスクリネーションの発生を低減することができる。その結果、開口領域における液晶層の透過分布を均一化することができるため、所定の方向に光を振り分ける光学手段によって発生する輝度ムラを低減することができる。
【0137】
[第1実施形態 変形例]
本実施形態においては、理解を容易にするため、ゲート線Gの本数、データ線Dの本数は、説明に必要な数に限定した。本実施形態はこれに限定されるものではなく、本発明の本質には影響を与えない。
【0138】
また、本実施形態においては、画素薄膜トランジスタ4TFTは、ソース電極又はドレイン電極の電位よりもゲート電極の電位の方がローレベルとなった場合に、ソース電極とドレイン電極との間が導通状態となるものとして説明した。逆に、ソース電極又はドレイン電極の電位よりもゲート電極の電位の方がハイレベルとなった場合に導通状態となる所謂NMOS型の薄膜トランジスタを使用することもできる。
【0139】
更にまた、本実施形態において、サブ画素のコンタクトホール4CONT1、4CONT2は、X軸方向におけるサブ画素中央から外れて配置されている。このサブ画素中央近傍は、レンズ等の画像分離手段で観察面に拡大投影されると、観察者の視点が配置される可能性が非常に高い。このサブ画素中央近傍にコンタクトホール4CONT1、4CONT2を配置した場合、液晶分子の配向に乱れが発生し、表示に悪影響を及ぼす可能性がある。従って、サブ画素中央付近にコンタクトホール4CONT1、4CONT2を配置すると、最も良く視認される位置において、表示画質が低下してしまう危険性が高まる。そこで、本実施形態のように、サブ画素中央近傍からコンタクトホール4CONT1、4CONT2をずらして配置することにより、表示画質の向上が可能となる。更には、隣接画素対4PAIRを構成する各サブ画素を点対称の関係に配置した場合でも、各コンタクトホール4CONT1、4CONT2のX軸座標が一致するのを防ぐことができる。これにより、観察面の同じ位置に複数のコンタクトホールの影響が重複してしまうのを抑制できるため、高画質化が可能となる。
【0140】
更にまた、本実施形態において、隣接画素対4PAIRを構成する各サブ画素は、点対称の関係に配置されているものとして説明した。これはすなわち、隣接画素対4PAIRのX軸方向における中心線に対して、この隣接画素対4PAIRを構成する各サブ画素の画素薄膜トランジスタ4TFTのX軸方向における位置が、相互に線対称に配置されていることを意味する。そして、本実施形態はこれに限定されるものではなく、隣接画素対4PAIRを構成する各サブ画素の画素薄膜トランジスタ4TFTのX軸方向における位置が、非対称となるように配置されていてもよい。これにより、各サブ画素で画素薄膜トランジスタ4TFTの位置に変化を持たせることができ、観察面の同位置に複数の画素薄膜トランジスタ4TFTの影響が重複して発生するのを抑制できるため、高画質化が可能となる。
【0141】
更にまた、本実施形態において、対向基板2bの内側には、対向基板2bとTFT基板2aの重ねズレを考慮して遮光層としてのブラックマトリクス60をTFT基板2a側のサブ画素の配線幅より大きくして設けている。すなわち、TFT基板2a側の配線で構成されるサブ画素の開口部以外を覆う遮光層が形成されていてもよいものとして説明した。この遮光層は、サブ画素の開口部を少なくとも一部のみ覆っていてもよく、遮光層が形成する開口部と、サブ画素の開口部とが相似の形状であってもよい。また、遮光層が形成する開口部の方が小さくてもよい。これにより、TFT基板2aと対向基板2bとの位置がずれた場合でも、開口形状の変化を抑制でき、高画質化が可能となる。
【0142】
更にまた、本実施形態におけるゲート線G、データ線Dとサブ画素との接続関係は、次のように表記することもできる。すなわち、複数のデータ線Dのいずれか二本に挟まれたサブ画素列は、一方のデータ線Dに画素スイッチを介して接続するサブ画素と他方のデータ線Dに画素スイッチを介して接続するサブ画素とが交互に配置され、また複数のゲート線Gのいずれか二本に挟まれたサブ画素行は、一方のゲート線Gに画素スイッチを介して接続するサブ画素と他方のゲート線Gに画素スイッチを介して接続するサブ画素とが交互に配置されている。なお、このように配置するためには、データ線Dの本数は、サブ画素列の数よりも1だけ多く配置されている方が好ましい。同様に、ゲート線Gの本数も、サブ画素行の数よりも1だけ多く配置されている方が好ましい。
【0143】
本実施形態に係るレンチキュラレンズ3は、レンズ面が使用者側の方向である+Z方向の面に配置された場合の構造について説明したが、これに限定されるものではなく、レンズ面が表示素子側の方向である−Z方向の面に配置されていてもよい。この場合、レンズ−サブ画素間距離を小さくすることができるため、高精細化への対応で有利である。
【0144】
更にまた、表示単位4Uは正方形から構成されてもよい。なお、正方形から構成されるとは、N視点の表示単位4UにおけるX軸方向のピッチPu=N×PxがY軸方向のピッチPyと同じであり、Pu=N×Px=Pyの関係が成り立つことを意味する。換言すれば、表示単位4Uが繰り返し配列される方向において、そのピッチは全て同じである。
【0145】
なお上述の説明は、観察面に複数個の視点を設定し、その設定した各視点に向かって表示面の全ての表示単位4Uから各視点用のサブ画素の光が出射する方式のものである。この方式は、ある定めた視点に向かって、該当する視点の光を集めるため、集光方式とも称される。集光方式には、上述の2視点方式の立体表示装置や、更に視点数を増やした多視点方式の立体表示装置が分類される。集光方式は、図17に示すように概念的に表すことができる。図17に示すように、画像分離の中心軸を示す線17は観察者側の視点へ向けて集光するように構成され、左右の眼で夫々独立した映像を観察することができる。集光方式は、観察者の眼に入射する光線を再現して表示する点が特徴的である。本実施形態に係る画像表示装置1は、このような集光方式に対して効果的に適用することができる。
【0146】
更に、空間像方式や空間像再生方式、空間像再現方式、空間像形成方式などと称される方式が提案されている。これらの方式は、図18に示すように概念的に表すことができる。空間像方式は、集光方式と異なり、特定の視点を設置しない。そして、空間の物体が発する光を再現するように表示する点が異なる。このような空間像方式には、インテグラルフォトグラフィ方式やインテグラルビデオグラフィ方式、インテグラルイメージング方式の立体表示装置が分類される。空間像方式では、任意の場所に位置する観察者は、表示面全体で同一視点用のサブ画素のみを視認することはない。しかしながら、同一視点用のサブ画素が形成する所定の幅の領域は、複数種類存在することになる。この各領域では、本実施形態に係る画像表示装置1は、前述の集光方式と同様の効果を発揮できるため、空間像方式においても本実施形態に係る画像表示装置1を有効に適用することができる。
【0147】
なお、本実施形態では、「視点」を「使用者が注視する表示領域上のある点(viewing point)」という意味ではなく、「表示装置を視認する位置(observation position)」や、「使用者の眼が位置すべき点又は領域」という意味で使用している。
【0148】
また、本実施形態の画像表示装置1に搭載した表示素子2に偏光板11を貼合せず、偏光板11をレンチキュラレンズ3の側面に設けてもよい。また、偏光板11はレンチキュラレンズ3に対して観察者側に配置してもよい。偏光板11の配置を変更することによって、簡易的にレンズの頂点とサブ画素との間の距離Hを調整することができる。これにより設計の自由度を向上することができる。また、本実施形態の画像表示装置1に搭載した画像分離手段は、レンチキュラレンズ3に限られることなく、透明領域と不透明領域とが交互に並んだ視差バリアを適用してもよい。視差バリアは、透明領域と不透明領域を液晶分子またはMEMSシャッタによりスイッチング可能な電気光学素子を用いてもよい。また、画像分離手段としては、液晶を用いた電気光学素子としてGRIN(Gradient Index)レンズを用いても、本実施形態の効果を得ることができる。
【0149】
また、本実施形態の画像表示装置1に搭載した液晶表示素子は、TNモードの液晶駆動方式に限られることなく、その他の液晶駆動モードが適用できる。液晶駆動モードの例としては、横電界モードではIPS(インプレイン・スイッチング)方式、FFS(フリンジ・フィールド・スイッチング)方式、AFFS(アドヴァンスト・フリンジ・フィールド・スイッチング)方式等が挙げられる。また、垂直配向モードではマルチドメイン化され視野角依存性が低減されたMVA(マルチドメイン・ヴァーティカル・アライメント)方式、PVA(パターンド・ヴァーティカル・アライメント)方式、ASV(アドヴァンスト・スーパー・ヴイ)方式等が挙げられる。更に、OCB(オプティカリー・コンペンセイティド・ベンド)方式、フィルム補償TNモードの液晶表示素子も好適に使用することができる。
【0150】
更に、本実施形態に係る表示素子2は、電気光学素子として液晶分子を利用した液晶表示素子であるものとして説明した。表示素子2は、透過型液晶表示素子だけでなく、反射型液晶表示素子、半透過型液晶表示素子、反射領域よりも透過領域の比率が大きい微反射型液晶表示素子、透過領域よりも反射領域の比率が大きい微透過型液晶表示素子等にも適用することができる。また、表示素子2の駆動方法は、TFT方式に好適に適用できる。TFT方式における薄膜トランジスタは、アモルファスシリコンや低温ポリシリコン、高温ポリシリコン、単結晶シリコンを使用したものだけでなく、ペンタセンなどの有機物や酸化亜鉛などの酸化金属、カーボンナノチューブを使用したものにも好適に適用できる。また、本実施形態に係る表示素子2は、薄膜トランジスタの構造には依存せず、ボトムゲート型やトップゲート型、スタガ型、逆スタガ型等を好適に使用することができる。
【0151】
更には、表示素子2は、液晶方式以外の表示素子、例えば有機エレクトロルミネッセンス表示素子、又はPALC(Plasma Address Liquid Crystal:プラズマ・アドレス液晶)に適用することもできる。有機エレクトロルミネッセンス表示素子は、非発光領域が遮光領域の役割を果たすため、非発光領域に本実施形態における遮光部の構造を適用することにより、同様の効果を得ることができる。
【0152】
更にまた、本実施形態では、端末装置として携帯電話を例示したが、これに限定されず、PDA、パーソナルTV、ゲーム機、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ及びノート型パーソナルコンピュータ等の各種の携帯端末装置に適用することができる。また、携帯端末装置のみならず、キャッシュディスペンサ、自動販売機、モニタ及びテレビジョン受像機等の各種の固定型の端末装置に適用することもできる。
【0153】
[第2実施形態]
次に、本実施形態係る画像表示装置について説明する。
【0154】
本実施形態に係る画像表示装置1では、図19及び図20に示すように、1つのゲート線Gの両端に蓄積容量線CSがそれぞれ配置される。すなわち、サブ画素4S内では、蓄積容量電極CS2と電気的に接続する2本の蓄積容量線CSが配置されている。
【0155】
なお、本実施形態に係る画像表示装置1の上記以外の構成及び駆動方法は、前述の第1実施形態と同様である。
【0156】
本実施形態に係る画像表示装置1は、蓄積容量線CSが2本配置されているため、片方の配線がプロセスの不具合によって断線した場合でも、他方の蓄積容量線CSが蓄積容量電極CS2と電気的に接続し、配線として機能することができる。これにより蓄積容量線CSの断線による不良を低減でき、歩留りを向上することができる。
【0157】
また、本実施形態に係る画像表示装置1は、ゲート線Gの両側に蓄積容量線CSを配置することにより、ゲート線Gからの電界漏れを遮蔽することができる。これにより、ゲート線Gからの電界によってサブ画素開口部で発生する配向不良やディスクリネーションを低減することができる。特にノーマリブラックモードの場合は、配向不良やディスクリネーションが光漏れとなるため、上述の構成によりコントラストを向上することができる。また、サブ画素開口部の特定の位置に発生する光り漏れは、画像分離手段によって拡大されて周期的なムラとなって見えるため、上述の構成を採用することで立体画質を向上することができる。
【0158】
[第3実施形態]
次に、本実施形態に係る画像表示装置について説明する。
【0159】
本実施形態に係る画像表示装置1は、図21に示すように、レンチキュラレンズ3のレンズ凸部31側にゲート線Gが配置され、レンズ谷部32側にゲート線Gと蓄積容量線CSが配置される。
【0160】
ここで、レンズ凸部31側の光学主軸30を第1の主軸と称し、レンズ谷部32側において長手方向に沿って延びる仮想線を第2の主軸と称する。図21に示すように、表示単位4UのX軸方向における中心線A−A’線は、第1の主軸と略一致し、X軸方向へ相互に隣接する表示単位4U間の境界線である線分F−F’及び、線分G−G’は、第2の主軸と略一致している。
【0161】
レンズ凸部31では、画像分離方向と異なる方向へ傾斜した1本のゲート線Gが第1の主軸をまたがるように配置され、レンズ谷部32では、2本の蓄積容量線CSとそれに挟まれたゲート線Gが画像分離方向と異なる方向へ傾斜し、第2の主軸をまたがるように配置される。
【0162】
断面図を基に説明すると、線分D−D’におけるゲート線Gは、図22に示すように配置され、線分E−E’におけるゲート線Gは、図23に示すように配置される。
【0163】
なお、本実施形態に係る画像表示装置1の上記以外の構成及び駆動方法は、前述の第1実施形態と同様である。
【0164】
図21に示すA−A’線は、右眼用画素4Rと左眼用画素4Lの境界であり、この部分に起因して発生する3Dモアレは、観察者の違和感として問題となる。本実施形態に係る画像表示装置1では、第1の主軸における傾斜配線の幅を小さくできるため、右眼用画素4Rと左眼用画素4Lの境界部における3Dモアレを効果的に抑制することができる。
【0165】
[第3実施形態 変形例]
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0166】
本変形例に係る画像表示装置1のレンチキュラレンズ3は、図24及び図25に示すように、レンズ凸部31と比べてレンズ谷部32の加工精度が低く、レンズ谷部32では光学分離性能が低いことを特徴とする。
【0167】
なお、本変形例に係る画像表示装置1の上記以外の構成及び駆動方法は、前述の第1実施形態と同様である。
【0168】
ところで、レンチキュラレンズを製造する場合、一般的に金型を用いた成型加工、フォトリソグラフィ、インクジェットなどの技術を用いることができるが、いずれの技術を用いる場合においても、隣接するシリンドリカルレンズ間の谷の部分(以下、レンズ谷部と称する)よりシリンドリカルレンズのレンズ凸部の方が所定形状を確保し易く、光学的な性能はレンズ凸部の方が高くなる。また、レンズ谷部に剥離できず残った残留物や谷部に付着した異物は、レンズ凸部に比べて、取り除くことが困難であり、レンズ谷部の光学的な分離性が低下する要因となる。さらに、第1の主軸上ではスポット径が小さく分離性能が高いが、第2の主軸上ではスポット径が大きくなるため、分離性能が低く、大きくデフォーカスされる。
【0169】
また、光学手段に液晶を用いた電気光学素子としてGRIN(Gradient Index)レンズを用いた場合においても、レンズ凸部に相当する屈折率に比べてレンズ谷部に相当する屈折率のバラつきが大きく、レンチキュラレンズの場合と同様に、レンズ谷部に相当する光学的分離性が低下する。GRINレンズ以外にも、レンズ効果を有する凹凸基板と液晶分子を組み合わせた液晶レンズの場合においても、凹凸基板においてレンズ谷部に相当する箇所が急峻な凸形状となるため、光学的分離性が低下する傾向にある。
【0170】
本変形例に係る画像表示装置1は、図26に示すように、縦開口の幅の分布、明るさの分布を表すことができ、この分布からわかるように、レンズ凸部31側ではレンズ主軸上の光学分離性能が高いため、3Dモアレと3Dクロストークを両立させて立体表示性能を向上することができる。
【0171】
本変形例では、上記した光学手段の抱える課題に対して、傾斜配線を凸部側で小さくなるように設定することにより、サブ画素4Sから出射された光を光学的分離性能の高いレンズ凸部31側に割り当てることができる。これにより光を効率良く利用することができるため、透過率を向上でき、さらに3Dモアレを抑制して立体画質の向上をはかることができる。
【0172】
[第4実施形態]
次に、本実施形態に係る画像表示装置及びその駆動方法ついて説明する。
【0173】
本実施形態に係る画像表示装置1の駆動方法は、図27に示すように、第1実施形態と同様に、ドット反転駆動(2H1V反転駆動)である。本実施形態に係る画像表示装置1の駆動方法の第1実施形態と異なる点は、表示データの伝送方法である。
【0174】
画像表示装置1は、あるフレームにおいて、2H1V反転駆動の結果、図28に示すような各サブ画素の極性を実現する。まず、ゲート線G1が選択されると、データ線D1には正極性の表示データが伝送され、画素P11には正極性の電圧が書き込まれる。またデータ線D2、D3、D6、D7、D10、D11には負極性の表示データが伝送され、データ線D4、D5、D8、D9、D11、D12には正極性の表示データが伝送される。次にゲート線G2が選択された場合には、データ線Dの極性が全て反転される。すなわち、データ線D1、D4、D5、D8、D9、D11、D12には負極性の表示データが伝送され、データ線D2、D3、D6、D7、D10、D11には正極性の表示データが伝送される。以降、ゲート線G3、G5、G7の選択時は、ゲート線G1の選択時と同様であり、ゲート線G4、G6の選択時は、ゲート線G2の選択時と同様である。そして、このフレームが終了すると、次のフレームにおいては、更に極性反転が実行される。すなわち、ゲート線G1、G3、G5、G7選択時においては、データ線D1,D4、D5、D8、D9、D11、D12に負極性の表示データが伝送され、データ線D2、D3、D6、D7、D10、D11に正極性の表示データが伝送される。また、ゲート線G2、G4、G6選択時においては、データ線D1、D4、D5、D8、D9、D11、D12に正極性の表示データが伝送され、データ線D2、D3、D6、D7、D10、D11に負極性の表示データが伝送される。
【0175】
蓄積容量線CSを介して電気的に接続される蓄積容量電極CS2は、画素P11、P32、P31、P52、P51、P72、P71、P92、P91、P112、P111、P132である。このサブ画素群に注目すると、ゲート線G1が選択されたときに書き込まれるサブ画素は、P11、P31、P51、P71、P91、P111であり、この選択されたサブ画素の中であるフレームにおいて、正極性の表示データが書き込まれるサブ画素はP11、P51、P91であり、負極性の表示データが書き込まれるサブ画素は、P31、P71、P111である。以降、次フレーム期間では、ゲート線G1によって選択されるサブ画素は、極性が反転する。従って、あるゲート線Gの選択期間における各サブ画素への表示データの書きこみに着目すると、共通の蓄積容量電極CS2は、正極性の表示データが書き込みされるサブ画素だけでなく、負極性の表示データが書き込まれるサブ画素が接続されており、正極性の表示データと負極性の表示データは、偏ること無く均等に書き込まれている。
【0176】
なお、このような電気的な接続関係は、図3及び図4に示すような、隣接画素対4PAIR1、4PAIR2を任意に組み合わせて並べることにより画素配線レイアウトを構成することができる。
【0177】
なお、本実施形態に係る画像表示装置1の上記以外の構成及び駆動方法は、前述の第1実施形態と同様である。
【0178】
本実施形態に係る画像表示装置1は、1走査期間における各サブ画素への表示データの書き込み時に、蓄積容量線CSの電位変動を抑制することができる。これは、各蓄積容量線CSには、正極性の表示データが書き込みされるサブ画素だけでなく、負極性の表示データが書き込まれるサブ画素が接続されているからである。これにより、蓄積容量線CSの電位が片側の極性に向かって変動するのを抑制することができ、蓄積容量線CSが延伸する方向へ発生するクロストーク等を低減して、高品質な表示を実現することができる。
【0179】
本実施形態に係る画像表示装置1の構成は、一般的なドット反転駆動を使用した上で、2ラインドット反転効果、すなわち各蓄積容量線CSの電位変動抑制効果を実現でき、かつ台形開口の底辺部が隣接するサブ画素の極性を同じにできる。これにより、低コストに高画質表示を実現することができる。
【0180】
なお、本発明は、本発明の広義の趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0181】
1 画像表示装置
2 表示素子
2a TFT基板
2b 対向基板
3 レンチキュラレンズ
3a シリンドリカルレンズ
30 光学主軸
31 レンズ凸部
32 レンズ谷部
4U 表示単位
4S サブ画素
4R 右眼用画素
4L 左眼用画素
4P ピクセル
4PAIR1、4PAIR2 隣接画素対
4PIX 画素電極
4TFT 画素薄膜トランジスタ
4CLC 画素容量
4CS 蓄積容量
4CONT1、4CONT2 コンタクトホール
4COM 対向電極
4SI シリコン層
5LC 液晶層
6 表示部
7 駆動IC
8 フレキシブル基板
9 携帯電話
11 偏光板
15 バックライト
16 光線方向を示す線
17 画像分離の中心軸を示す線
55L 左眼
55R 右眼
60 ブラックマトリクス
G、G1・・・G7 ゲート線
D、D1・・・D13 データ線
CS 蓄積容量線
CS2 蓄積容量電極
RED 赤色カラーフィルタ
GREEN 緑色カラーフィルタ
BLUE 青色カラーフィルタ
SP スポット径
1011 縦方向(シリンドリカルレンズの長手方向)
1012 横方向(シリンドリカルレンズの配列方向)
1003a シリンドリカルレンズ
1041 第1視点用画素
1042 第2視点用画素
1070 配線
1075 開口部
1076 遮光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1視点用の画像を表示する第1のサブ画素と第2視点用の画像を表示する第2のサブ画素とを少なくとも含む表示単位がマトリクス状に複数配列された表示素子と、
前記第1のサブ画素と前記第2のサブ画素から出射した光を第1の方向に振り分ける光学手段と、を備え、
前記光学手段は、前記第1の方向と直交する第2の方向と平行な光学主軸を有し、
前記第1のサブ画素と前記第2のサブ画素は、それぞれ、画像を表示するための表示信号を伝送するスイッチング手段と、容量を形成する蓄積容量電極と、を有し、
前記表示素子は、前記第2の方向に配列した前記表示信号を供給するデータ線と、前記第1の方向に配列した前記スイッチング手段を制御するゲート線と、前記第2の方向に配列した前記蓄積容量電極を前記第2の方向へ電気的に接続させる蓄積容量線と、を有し、
同一の前記データ線と対向して配置されるサブ画素対が有する一方の前記スイッチング手段は、前記データ線と前記ゲート線に接続され、前記サブ画素対の他方の前記スイッチング手段は、前記一方の前記スイッチング手段に接続される前記データ線と同一の前記データ線と、前記一方の前記スイッチング手段に接続される前記ゲート線とは異なる前記ゲート線に接続され、
前記サブ画素対がそれぞれ有する前記スイッチング手段が構成する電極と前記蓄積容量電極は、前記サブ画素対で電気的に共通に接続され、
前記ゲート線と前記蓄積容量線の少なくとも一部は、前記光学主軸と交差するように前記第2の方向と異なる方向に傾斜して配置され、
前記蓄積容量線の少なくとも一部は、前記ゲート線に沿って配置される、
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記蓄積容量電極は、前記サブ画素対の一方のサブ画素から他方のサブ画素に渡り配置され、
前記蓄積容量電極又は前記蓄積容量線と前記データ線が交差する部分において、前記データ線は、前記第1の方向とは異なる方向に傾斜して配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記第1の方向に隣接する前記サブ画素対は、それぞれ異なる前記データ線に接続される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記ゲート線と前記蓄積容量線は、同層に配置され、同一のプロセスで形成される、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記サブ画素対の一方の前記スイッチング手段と他方の前記スイッチング手段は、互いに前記サブ画素対の中心点を軸にして点対称となるように配置される、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記サブ画素対がそれぞれ有する前記スイッチング手段の動作部は、前記第1の方向に沿って配置される、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記データ線は、前記スイッチング手段の上層で前記第1の方向とは異なる方向に傾斜して配置される、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記表示素子は、前記ゲート線又は前記蓄積容量線の一部を遮蔽するブラックマトリクスを更に有する、
ことを特徴とする請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記データ線と前記ゲート線に囲まれる開口部は、略台形状であり、前記スイッチング手段は、前記開口部の上底側に配置される、
ことを特徴とする請求項8に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記蓄積容量線は、前記サブ画素内に1本配置され、前記サブ画素の両端に配置された2本の前記ゲート線のうち、片方の前記ゲート線に沿って配置される、
ことを特徴とする請求項9に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記蓄積容量線は、前記サブ画素内に2本配置され、前記サブ画素の両端に配置された2本の前記ゲート線の両方に沿って配置される、
ことを特徴とする請求項9に記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記サブ画素対を構成する前記サブ画素は、前記サブ画素対の中心点を軸にして点対称となるように配置される、
ことを特徴とする請求項11に記載の画像表示装置。
【請求項13】
前記ブラックマトリクスの形状は、前記第1の方向又は前記第2の方向に対して線対称となるように配置される、
ことを特徴とする請求項12に記載の画像表示装置。
【請求項14】
前記光学主軸のうち、前記表示単位の中央部における前記光学主軸を第1の光学主軸とし、前記第1の方向に隣接する前記表示単位の境界部における前記光学主軸を第2の光学主軸とした場合に、
前記蓄積容量線は前記第2の光学主軸を跨って配置される、
ことを特徴とする請求項10に記載の画像表示装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の画像表示装置の駆動方法であって、前記ゲート線は1本おきに走査され、前記ゲート線1本毎に各画素の電圧極性が反転され、かつ前記データ線1本毎に、各々伝送される前記表示信号の極性が反転している、
ことを特徴とする画像表示装置の駆動方法。
【請求項16】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の画像表示装置を有する、
ことを特徴とする端末装置。
【請求項17】
前記端末装置は、携帯電話、個人用情報端末、パーソナルテレビジョン、ゲーム機、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ビデオプレーヤ、ノート型パーソナルコンピュータ、キャッシュディスペンサ、自動販売機のいずれかである、
ことを特徴とする請求項16に記載の端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図26】
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【図27】
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【図29】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図11】
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【図19】
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【図21】
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【図24】
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【図25】
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【図28】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−203285(P2012−203285A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69393(P2011−69393)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(303018827)NLTテクノロジー株式会社 (547)
【Fターム(参考)】