説明

疲労改善剤

高齢化社会の到来を目前にし、中高年齢者の体力維持および健康の維持を目的として、長期の服用にも耐えうる高い安全性を持つ物質を用いた組成物による、疲労の予防および疲労からの回復を速やかにする効果の高い疲労改善剤を提供する。還元型補酵素Qからなる組成物に、筋肉の疲労を含む、疲労の予防および回復効果を認めた。本組成物による疲労改善効果は、若年ラットのみならず、加齢ラットでより顕著であることから、若年者だけではなく、特に、中高年齢者に有用性の高い疲労改善組成物が提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、下記式(1)で表される還元型補酵素Q、または、下記式(1)で表される還元型補酵素Qおよび下記式(2)で表される酸化型補酵素Qを有効成分とする疲労改善剤に関する(式中nは1〜12の整数を表す)。


ここでいう疲労改善剤とは、運動による肉体疲労の回復および予防、病中病後の肉体疲労、加齢による疲れ易さなどを改善できる組成物である。
【背景技術】
加齢に伴う肉体の衰えは、疲れ易さとして現れてくる。疲れ易さは、運動不足を誘発し、運動不足により筋力は低下するという悪循環が起こる。筋力の低下は、転倒などによる骨折あるいは寝たきり状態を引き起こすため、豊かで安楽な老後生活を楽しむためには、疲れ易さを解消して、筋力の低下をできるだけ防ぐ事が重要であると考えられる。
従来、数多くの疲労回復剤が上市されてきたが、これらは殆ど若年層あるいは若年のアスリートを対象としており、興奮剤的な処方が殆どであるため、中高年齢の人々が安心して自らの体力維持のために長期間、継続的に服用できるものはなかった。
補酵素Qは、細菌から哺乳動物まで広く生体に分布する必須成分である。ヒトでは、補酵素Qの側鎖が繰り返し構造を10個持つ、補酵素Q10が主成分であることが知られている。補酵素Q10は、生体内の細胞中におけるミトコンドリアの電子伝達系構成成分として存在する生理学的成分であり、生体内において酸化と還元を繰り返すことで電子伝達系における伝達成分としての機能を担っている。補酵素Qは生体において、エネルギー生産、膜安定化および抗酸化活性を示すことが知られており、その有用性は広い。補酵素Q10のうち、酸化型補酵素Q10(ユビキノンまたはユビデカレノン)は、鬱血性心不全薬として医薬用途に用いられているように、心臓に対して効果的に働くことが知られている。その効果としては、心筋での酸素利用効率の改善、心筋でのATPの産生賦活、心機能の改善などが報告されている。医薬用途以外では、ビタミン類と同様に、栄養剤、栄養補助剤としての効果が報告されている。また、特開昭62−59208号公報)には、酸化型補酵素Q10(ユビキノン)と乾燥酵母粉末の混合物による組織代謝活性化組成物が、特開昭52−99220号公報には、酸化型補酵素Q10による重症筋無力症の症状の改善が、また特開昭52−99222号公報では酸化型補酵素Q10による赤血球増加なども報告されている。更には、酸化型補酵素Q10による疲労に対する回復効果についても報告がある(特開平7−330584)、特開平7−330593、および特開平10−287560号公報)。
一方、還元型補酵素Q10については、酸化型補酵素Q10とは異なり、有用性に関する報告はない。これは還元型補酵素Q10が空気酸化を受けやすいため、有用性の評価が行えなかったことによる。また、一般に、酸化型補酵素Q10の投与によっても生体内で還元を受けて還元型補酵素Q10が増加する事が知られていた事から、酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の生体への効果は同等であると考えられていたことも、還元型補酵素Q10の有用性評価が行われてこなかった理由の一つである。我々は、以前に、特開平10−109933号公報において、酸化型補酵素Q10単独に比較して、還元型補酵素Q10が共に存在することで補酵素Q10の経口吸収性が高まることを開示し、種々の用途に対して還元型補酵素Qの利用が経口吸収性を上げるために極めて効果的であることを示したが、酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10に抗疲労効果での違いがあるという情報は全くなかった。
肉体疲労の回復および予防に効果的であり、且つ、中高年齢者が継続的に長期間服用するために安全性が高い組成物を開発することを目的とした。
発明の要約
本発明者らは上記課題を解決すべく、還元型補酵素Qを含有する疲労改善剤あるいは疲労予防剤について鋭意、研究を重ね、酸化型補酵素Q10のみに比較して、疲労回復効果の高いことを見出し、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、還元型補酵素Q、または、還元型補酵素Qおよび酸化型補酵素Qを有効成分とすることを特徴とする疲労改善剤に関する。また、還元型補酵素Q10を含有する事による疲労回復効果は、加齢に相関してより顕著になることをも見出した。この結果は、疲労を感じやすく健全な肉体の維持が困難である中高年齢者に対して効果的であると考えられる。
発明の詳細な開示
補酵素Qは、生体内においては通常40〜90%程度が還元型で存在することが知られている。還元型補酵素Qを得る方法としては特に限定されず、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により補酵素Qを得た後、クロマトグラフィーにより流出液中の還元型補酵素Q区分を濃縮する方法などを採用することが出来る。この場合においては、必要に応じて上記補酵素Qに対し、水素化ほう素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム(ハイドロサルファイトナトリウム)等の一般的な還元剤を添加し、常法により上記補酵素Q中に含まれる酸化型補酵素Qを還元して還元型補酵素Qとした後にクロマトグラフィーによる濃縮を行っても良い。また、既存の高純度補酵素Qに上記還元剤を作用させる方法によっても得ることが出来る。あるいは、還元型補酵素Qを含有する菌体等を使用することも可能である。
補酵素Q中の還元型の割合は、通常、UV検出器を用いたHPLCシステムにより、試料中の酸化型補酵素Qと還元型補酵素Qを定量し、その量比をもって算出する方法とHPLCに電気化学的検出器を組み込んだシステムにより酸化型補酵素Qと還元型補酵素Qの割合をピーク面積から算出する方法とがある。電気化学的検出器を組み込んだシステムでは、酸化還元物質を特異的に測れることと感度が高いことから、生体あるいは試料に微量に存在する還元型の割合を測定する場合は、有用性が高い。本発明で示す還元型補酵素Qの割合は全て、電気化学的検出器を組み込んだHPLCシステムによって定量したものである。
補酵素Qはエネルギーの産生に関与していることから、生体内の補酵素Q量を増加させることが疲労改善に有効と考えられる。特に、還元型補酵素Qは酸化型補酵素Qとは異なり抗酸化活性を示し、組織を酸化ストレス、酸化ストレスに起因する損傷から保護することが期待出来る。従って、還元型補酵素Qの量を増加させることが疲労改善、特に筋肉による多量のエネルギーを必要とし、また、エネルギー産生に伴う酸化ストレスの影響を受けやすい部位の疲労改善に極めて有効であると考えられる。
前述のように、還元型補酵素Qを、経口投与することで、血漿中の補酵素Q量を酸化型補酵素Q10の投与に比較して、より増加させることが出来ることを我々は見出したが、生体中の還元型補酵素Q10の増加量については、明らかではなかった。従来、酸化型補酵素Qと還元型補酵素Qでは、酸化型補酵素Qを生体に投与しても、生体内で還元を受けて還元型補酵素Qへと変換されるため、酸化型と還元型の間には生体への効果に関して差はなく、実質的に同じであると考えられてきた。しかし、今回我々は筋肉中の還元型補酵素Qの量を測定したところ、還元型補酵素Qを投与した場合には、筋肉中の還元型補酵素Q量が増加したのに対し、酸化型補酵素Qを投与した場合には、筋肉中の還元型補酵素Qが逆に減少するという結果を得た。これは、筋肉の酸化ストレスに対する防護作用が、還元型補酵素Qと酸化型補酵素Qでは、大きく異なることを意味しており、運動などによる筋肉の損傷防護、疲労改善に対して、還元型補酵素Qの投与がより好ましいことを示している。また、驚くべきことに、還元型補酵素Qの投与により内因性補酵素Qを増加できることも見出した。ここでいう内因性補酵素Qとは、外部からの投与によるものでなく、生合成により合成された補酵素Qを表している。我々は、還元型補酵素Q10を投与することによる内因性補酵素Qの増加を確認したが、これは補酵素Qの生合成の賦活あるいは代謝の保護によると考えられる。
従って、本発明の疲労改善剤を用いることにより、動物、脊椎動物、哺乳動物およびヒトの筋肉中補酵素Q量を増加させることができる。本発明の疲労改善剤を用いることにより、動物、脊椎動物、哺乳動物およびヒトの筋肉中還元型補酵素Q量を増加させることができる。上記2つの補酵素Q量を増加させる方法は、動物、脊椎動物、哺乳動物およびヒトの疲労を改善する方法を提供する。
本発明の疲労改善剤は、肉体疲労の改善および予防に効果的であり、且つ、若年齢者のみならず、中高年齢者、もしくはそれ以上の高齢者に適用することができる。また、本発明による疲労改善剤は、特に、中高年齢者に有用性が高い。
本発明の疲労改善剤においては、還元型補酵素Qの含有量は特に制限されず、その製品コンセプトなどにより適宜決定できる。還元型補酵素Qの割合を極端に高める事は、その安定化対策などでコストが高まる可能性があるが、より高い効果が期待できる。
本発明の疲労改善剤においては、還元型補酵素Qの補酵素Q全量に対する割合はその製品コンセプトなどにより適宜決定できる。還元型補酵素Qの割合を極端に高める事は、その安定化対策などでコストが高まる可能性があるが、より高い効果が期待できる。
本発明の疲労改善剤においては、還元型補酵素Qと酸化型補酵素Qの混合物を有効成分としても良い。還元型補酵素Qと酸化型補酵素Qの割合は特に制限はないが、補酵素Q全体に対して還元型補酵素Qの割合が、60重量%以上、100重量%以下であるのが好ましく、80重量%以上、99.5重量%以下であるのがより好ましい。
本発明で使用出来る還元型補酵素Qは前記式(1)で表されるように側鎖の繰り返し単位(式中n)が1〜12のものを使用することが出来るが、中でも側鎖繰り返し単位が10のもの、すなわち還元型補酵素Q10が特に好適に使用出来る。
本発明の疲労改善剤の剤形としては特に限定されず、経口剤であってもよく、あるいは皮膚に直接塗布するものであってもよい。経口剤としては、例えば粉末剤であってもよく、結合剤を加えて顆粒剤としてもよく、粉末剤あるいは顆粒剤をカプセルに充填してカプセル剤としてもよい。また、天然油、油状の高級脂肪酸、高級脂肪酸モノグリセライド、界面活性剤またはこれらの混合物などを加え、油状のまま充填してソフトカプセル剤とすることもできる。この場合においては、ゼラチンを主体としたものまたはその他の水溶性高分子物質を主体としたもの等を使用することもできる。また、このようなカプセルにはマイクロカプセルも含まれる。あるいは、液状にしてドリンク剤としてもよい。
本発明の疲労改善剤には、更に、上記還元型補酵素Qの他に薬剤学的に許容される他の製剤素材を、常法により適宜添加混合してもよい。このようなものとしては特に限定されず、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、酸化防止剤、着色剤、凝集防止剤、吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤などが挙げられる。
上記賦形剤としては特に限定されず、例えば、白糖、乳糖、ブドウ糖、コーンスターチ(トウモロコシ澱粉)、マンニトール、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、などが挙げられる。上記崩壊剤としては特に限定されず、例えば、澱粉、寒天、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、トラガント等が挙げられる。
上記滑沢剤としては特に限定されず、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等が挙げられる。上記結合剤としては特に限定されず、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トラガント、シェラック、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ソルビトール等が挙げられる。
上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、アスコルビン酸、トコフェロール、ビタミンA、β−カロチン、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、クエン酸などが挙げられる。
上記着色剤としては特に限定されず、例えば、医薬品に添加することが許可されているものなどを使用することができる。
上記凝集防止剤としては特に限定されず、例えばステアリン酸、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ酸などが挙げられる。
上記吸収促進剤としては特に限定されず、例えば高級アルコール類、高級脂肪酸類、グリセリン脂肪酸エステルなどの界面活性剤などが挙げられる。
上記溶解補助剤としては特に限定されず、例えばフマル酸、コハク酸、りんご酸などの有機酸などが挙げられる。上記安定化剤としては特に限定されず、例えば安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチルなどが挙げられる。皮膚に直接塗布する場合は、剤型は、特に限定されるものではなく、例えば、適当な基剤中に上記薬物を溶解または混合分散させてクリーム状、ペースト状、ジェリー状、ゲル状、乳液状、液状の形状になされたもの(軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、クリーム剤、スプレー剤など)、基剤中に上記薬物を溶解または混合分散させたものを支持体上に展延したもの(パップ剤など)、粘着剤中に上記薬物を溶解または混合分散させたものを支持体上に展延したもの(プラスター剤、テープ剤など)などが挙げられる。基材、粘着剤としては必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、医薬品、化粧品などに通常用いられている基材が使用出来る。
本発明の疲労改善剤には、抗酸化物質あるいは抗酸化酵素を共に含有する事ができる。抗酸化物質としては特に限定はされないが、例えば、ビタミンE、ビタミンE誘導体、ビタミンC、ビタミンC誘導体、プロブコール、リコペン、ビタミンA、カロテノイド類、ビタミンB、ビタミンB誘導体、フラボノイド類、ポリフェノール類、グルタチオン、ピロロキノリンキノン、ピクノジェノール、フラバジェノール、又はセレンなどが適している。上記は単一で用いても良いし、二種以上を混合しても良い。また、抗酸化酵素としては、特に限定はされないが、例えば、スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、グルタチオン還元酵素、カタラーゼ、又はアスコルビン酸ペルオキシダーゼなどが適している。上記は単一で用いても良いし、二種以上を混合しても良い。
本発明の疲労改善剤は、他の滋養強壮成分を共に含む事ができる。滋養強壮成分としては、特に限定はされないが、例えば、クレアチン、タウリン、ビタミンB、ビタミンB誘導体、又はアミノ酸などが適している。上記は単一で用いても良いし、二種以上を混合しても良い。本発明の補酵素Qとこれらの成分を混合する事により、相加的あるいは相乗的な効果が期待できる。
本発明の疲労改善剤は、栄養補助成分を共に含む事が出きる。栄養補助成分としては、特に限定はされないが、アミノ酸、金属イオン、糖類、蛋白質類、脂肪酸類、ビタミンなどが挙げられる。 本発明の疲労改善剤を一般食品とする場合の形態は、特には限定されないが、食用油脂組成物、調理油類、スプレー油類、バター類、マーガリン類、ショートニング類、ホイップクリーム類、濃縮乳類、ホワイトナー類、ドレッシング類、ピックル液類、パン類、ケーキ類、パイ類、クッキー類、和菓子類、スナック菓子類、油菓子類、チョコレート及びチョコレート菓子類、米菓類、ルウ類、ソース類、たれ類、トッピング類、氷菓類、麺類、ベーカリーミックス類、フライ食品類、加工肉製品類、水産練り製品類、冷凍アントレ類、畜産冷凍食品、農産冷凍食品などの冷凍食品類、米飯類、ジャム類、チーズ、チーズフード、チーズ様食品、ガム類、キャンディー類、発酵乳類、缶詰類、飲料類などが挙げられる。
本発明の疲労改善剤は、皮膚に直接塗布することにより、筋肉疲労を改善することができる。この場合、抗炎症作用を示す物質を共に含有する事ができる。抗炎症作用を示す物質とは、特に限定はされないが、ステロイド、サリチル酸およびその誘導体、アリール酢酸およびその誘導体、プロピオン酸およびその誘導体、フェナム酸およびその誘導体、ピラゾロンおよびその誘導体、オキシカムおよびその誘導体、および非酸性抗炎症剤からなる群より選択される少なくとも一種である。ステロイドとしては、例えば、吉草酸酢酸プレドニソロン、アムシノニド、吉草酸ジフルコルトロン、吉草酸デキサメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、酢酸ジフロラゾン、プロピオン酸デキサメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、ジフルプロドナート、フルオシノニド、ハルシノニド、プデソニド、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、フルオシノロナセトニド、トリアムシノロナセトニド、ピバル酸フルメタゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸クロベタゾン、プロピオン酸アルクロメタゾン、デキサメタゾン、酢酸メチルプレドニソロン、プレドニソロン、酢酸ヒドロコルチゾンが挙げられる。サリチル酸誘導体としては、例えば、アスピリンおよびその誘導体、ジフルサニルが挙げられる。アリール酢酸誘導体としては、例えば、インドメタシン、ジクロフェナク、スリンダク、ナプメトン、プログルメタシン、インドメタシンファルネシル、エトドラクが挙げられる。プロピオン酸誘導体としては、例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、チアプロフェン、プラノプロフェン、ロキソプロフェン、アルミノプロフェンなどが挙げられる。フェナム酸誘導体としては、例えば、メフェナム酸、トルフェナム酸などが挙げられる。ピラゾロン誘導体としては、例えば、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾンなどが挙げられる。オキシカム誘導体としては、例えば、ピロキシカム、テノキシカム、アンピロキシカムなどが挙げられる。非酸性抗炎症剤としては、例えば、エピリゾール、チアラミド、エモルファゾンなどが挙げられる。本発明の還元型補酵素Qを含有する疲労改善剤とこれらの成分を混合する事により、相加的あるいは相乗的な疲労改善効果が期待できる。
本発明の還元型補酵素Qを含有する疲労改善剤を作製する際の、還元型補酵素Qの含有量、製品形態、製品の保存方法および保存形態は、その疲労改善剤の商品設計および用途などに応じて適宜決定される。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に実施例及び製剤例を揚げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例および製剤例のみに限定されるものではない。
(参考例1)1000gのエタノール中に、100gの酸化型補酵素Q10(純度99.4%)、60gのL−アスコルビン酸を加え、78℃にて攪拌し、還元反応を行った。30時間後、50℃まで冷却し、同温を保持しながらエタノール330gと水70g添加した。このエタノール溶液(還元型補酵素Q10を100gを含む)を攪拌しながら、10℃/時間の冷却速度で2℃まで冷却し、白色のスラリーを得た。得られたスラリーを減圧濾過し、湿結晶を冷エタノール、冷水、冷エタノールで順に洗浄(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)して、さらに湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶97gを得た。減圧乾燥を除く全ての操作は窒素雰囲気下で実施した。
(参考例2)100gの酸化型補酵素Q10を25℃で1000gのヘプタン溶液に溶解させた。攪拌しながら、還元剤として次亜硫酸ナトリウム(純度75%以上)100gに1000mlの水を加えて溶解させた水溶液を徐々に添加し、25℃、pH4〜6で還元反応を行った。2時間後、反応液から水相を除去し、脱気した飽和食塩水1000gでヘプタン相を6回水洗した。以上、すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。このヘプタン相を減圧下にて溶媒置換し、50℃の還元型補酵素Q10の7%(w/w)エタノール溶液を調製した(還元型補酵素Q10を100g含む)。このエタノール溶液に水50gを添加し、攪拌しながら、10℃/時間の冷却速度で2℃まで冷却して結晶を析出させた。全ての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧濾過し、湿結晶を冷エタノール、冷水、冷エタノールで順に洗浄(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)して、さらに、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶97gを得た。
(実施例1)補酵素Qは、そのATP生産系への効果によって、筋肉へのエネルギー供給が増加し、その結果として抗疲労効果が発現すると考えられる。従って、筋肉中の補酵素Qに対する還元型補酵素Q10投与の影響を調べる事で、補酵素Qによる抗疲労効果を予測することが可能である。
SD系雄性ラット(6週齢)に参考例1で得た還元型補酵素Q10(但し、約1%の酸化型補酵素Q10を含む)の大豆油溶液(還元型補酵素Q10/大豆油溶液=20mg/ml)を還元型補酵素Q10(但し、約1%の酸化型補酵素Q10を含む)として100mg/kgの投与量で1日1回5日間経口投与し、5日後に大腿部の筋肉を採取、筋肉中の補酵素Qの定量を行った。筋肉中補酵素Qの定量は、HPLCを用いて実施した。即ち、採取したラット筋肉(0.2g)に対して、補酵素Q(0.003mg)、エタノール(1ml)、蒸留水(1ml)および塩化第二鉄(0.01%)を添加し、ホモジネートした後、ヘキサン(3ml)を添加、振盪して補酵素Q10を抽出した。この抽出操作を2回繰り返した後、ヘキサンを蒸発乾固、0.25mlのエタノールに再溶解してHPLCに注入した。HPLCの条件は、カラム:YMC−Pack(ODS−A303)、検出波長:275nm、移動相:メタノール(88%)、ヘキサン(12%)、流速:1ml/minである。筋肉中の還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10の比率の測定は、採取したラット筋肉(0.2g)に対し、蒸留水(0.2ml)およびエタノール(0.8ml)を添加した後、ホモジネートし、ヘキサン(1.2ml)を加えて抽出した。ヘキサンを窒素気流下で蒸発させた後、エタノール(0.2ml)を添加して、再溶解し、HPLCに注入した。HPLC条件は、上と同じであるが、検出器として電気化学的検出器を用いた。対照群には、大豆油を投与した。
(比較例1)同様に酸化型補酵素Q10を投与し、筋肉中補酵素Q量を定量した。


還元型あるいは酸化型補酵素Q10投与による筋肉中の補酵素Qの定量結果を表1に示した。
(実施例2)(実施例1)と同様に還元型補酵素Q10を投与し、筋肉中の還元型補酵素Q量を定量した。
(比較例2)(比較例1)と同様に酸化型補酵素Q10を投与し、筋肉中の還元型補酵素Q量を定量した。

還元型あるいは酸化型補酵素Q10投与による筋肉中の還元型補酵素Qの定量結果を表2に示した。
(実施例3)還元型補酵素Q10の若年ラットによるトレッドミル試験
SD系雄性ラット(7週齢、n=10)を用いて還元型補酵素Q10(約1%の酸化型補酵素Q10を含有する)の抗疲労効果をトレッドミルを用いて評価した。即ち、トレッドミル装置(型式NK−73−4、夏目製作所)を用いて、ラットを10m/minの速度で走行させ、3分毎に5m/minずつ段階的に速度を上げていき、ラットが走行不能となるまでの時間(最大走行時間)を測定した。被験物質として、参考例1で得た還元型補酵素Q10の大豆油溶液(還元型補酵素Q10/大豆油溶液=20mg/ml)を作製し、還元型補酵素Q10(但し、約1%の酸化型補酵素Q10を含む)として、300mg/kgの投与量で、ラットに経口投与した。最大走行時間は、投与前および投与2時間後に測定し、最大走行時間の延長時間を算出した。対照群には、大豆油を投与した。

最大走行時間の値を表3に示す。還元型補酵素Q10の投与により、ラットの最大走行時間は有意に増加し、還元型補酵素Q10に若年ラットに対する抗疲労効果があることが明らかになった。
(比較例3)酸化型補酵素Q10の若年ラットによるトレッドミル試験
(実施例3)と同様の方法で、酸化型補酵素Q10の抗疲労効果を若年ラットで評価した。その結果、若年ラットでは酸化型補酵素Q10の抗疲労効果は還元型補酵素Q10とほぼ同程度であることが判った。
(実施例4)加齢ラットによるトレッドミル試験
SD系雄性ラット(61〜63週齢、n=7)を用いて(実施例3)と同様の方法で還元型補酵素Q10(約1%の酸化型補酵素Q10を含有する)の抗疲労効果を評価した。但し、本実験はクロスオーバー法で実施した。

最大走行時間の値を表4に示す。還元型補酵素Q10の投与により、ラットの最大走行時間は、投与1日後から有意に増加し、還元型補酵素Q10には加齢ラットに対しても抗疲労効果があることが明らかになった。
(比較例4)(実施例4)と同様の方法で酸化型補酵素Q10の抗疲労効果を評価した。その結果を表4に示したが、酸化型補酵素Q10は、加齢のラットに対しては走行時間の延長効果が認められず、抗疲労効果が弱いことが明らかになった。以上の結果、還元型補酵素Q10の抗疲労効果は、若年から高齢まで幅広く有効性を示すのに対し、従来用いられている酸化型補酵素Q10は、若年では確かに有効性を示すが、加齢動物に対しては、有効性が弱いことが明らかになった。
(製剤例1)(散剤)還元型補酵素Q10(但し、1%の酸化型補酵素Q10を含む)をプロパノールに溶解し、次いでこれを微結晶セルロースに吸着させた後、減圧下で乾燥した。これを窒素気流下でトウモロコシ澱粉と混合し、散剤とした。
還元型補酵素Q10 9.9重量部
酸化型補酵素Q10 0.1重量部
微結晶セルロース 40重量部
トウモロコシ澱粉 55重量部
(製剤例2)(カプセル剤)製剤例1と同様に散剤を作製した後、常法によりゼラチンカプセルに充填した。充填したカプセルはシールをした後、窒素雰囲気下でパッキングし、冷蔵保存した。
還元型補酵素Q10 19.8重量部
酸化型補酵素Q10 0.2重量部
微結晶セルロース 40重量部
トウモロコシ澱粉 20重量部
乳糖 65重量部
ステアリン酸マグネシウム 3重量部
ポリビニルピロリドン 2重量部
(製剤例3) (ソフトカプセル剤)コーン油を50℃に加温し、同温度で溶融した還元型補酵素Q10(但し、約1%の酸化型補酵素Q10を含む)を加えて溶解した。これを常法によりソフトカプセル化した。
還元型補酵素Q10 49.5重量部
酸化型補酵素Q10 0.5重量部
コーン油 350重量部
(製剤例4)(錠剤)還元型補酵素Q10(但し、約1%の酸化型補酵素Qを含む)をプロパノールに溶解し、これを微結晶セルロースに吸着させた後、減圧下で乾燥した。これに窒素雰囲気下でトウモロコシ澱粉、乳糖、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウムを混合し、次いでポリビニルピロリドンの水溶液を結合剤として加えて常法により顆粒化した。これに滑沢剤としてタルクを加えて混合した後、錠剤に打錠した。錠剤は窒素雰囲気下でパッキングし、冷蔵保存とした。
還元型補酵素Q10 19.8重量部
酸化型補酵素Q10 0.2重量部
トウモロコシ澱粉 25重量部
乳糖 15重量部
カルボキシメチルセルロースカルシウム 10重量部
微結晶セルロース 40重量部
ポリビニルピロリドン 5重量部
ステアリン酸マグネシウム 3重量部
タルク 10重量部
(製剤例5)
還元型補酵素Q10(1%の酸化型補酵素Q10を含む)を含有する親水軟膏を既知の方法により以下の組成で作製した。
親水軟膏 95.000重量%
還元型補酵素Q10 0.990重量%
酸化型補酵素Q10 0.010重量%
インドメタシン 1.000重量%
アスコルビン酸ステアリン酸 3.000重量%
(製剤例6)
還元型補酵素Q10(約1%の酸化型補酵素Q10を含む)を含有するW/Oクリームを既知の方法により以下の組成で作製した。
グリセロールソルビタン脂肪酸エステル 6.000重量%
微晶性ワックス 1.000重量%
オリーブオイル 3.000重量%
流動パラフィン 18.000重量%
ステアリン酸マグネシウム 1.000重量%
プロピレングリコール 3.700重量%
硫酸マグネシウム(MgSO・7HO) 0.700重量%
還元型補酵素Q10 0.990重量%
酸化型補酵素Q10 0.010重量%
インドメタシン 1.000重量%
脱水化塩 100.000重量%に
(製剤例7)
還元型補酵素Q10(約1%の酸化型補酵素Q10を含む)を含有するW/O乳化物を既知の方法により以下の組成で作製した。
ポリオキシエチレングリセロールソルビタン
脂肪酸エステル 3.600重量%
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル 1.400重量%
ステアリルアルコール 2.000重量%
鉱油、GP9 20.000重量%
パラベン混合物 適宜
硫酸マグネシウム(MgSO・7HO) 0.700重量%
還元型補酵素Q10 0.990重量%
酸化型補酵素Q10 0.010重量%
塩化カルシウム(CaCl) 0.85重量%
ビタミンE 1.000重量%
インドメタシン 1.000重量%
脱水化塩 100.000重量%に
(製剤例8)
還元型補酵素Q10(約1%の酸化型補酵素Q10を含む)を含有するW/Oローションを既知の方法により以下の組成で作製した。
グリセロールソルビタン脂肪酸エステル 1.300重量%
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル 3.700重量%
中性油 6.000重量%
流動パラフィン、GP9 14.000重量%
プロピレングリコール 3.800重量%
硫酸マグネシウム(MgSO・7HO) 0.700重量%
リポン酸 1.500重量%
還元型補酵素Q10 0.990重量%
酸化型補酵素Q10 0.010重量%
アスコルビン酸 2.000重量%
脱塩化水 100.000重量%に
【産業上の利用可能性】
本発明の疲労改善剤は上述の構成よりなるので、疲労の予防および回復効果、更には筋肉の疲労に対して優れた効果を示す。特に、中高年齢者に対して強い疲労改善効果を持つことから、中高年齢者の体力維持および健康維持に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される還元型補酵素Qを有効成分とすることを特徴とする疲労改善剤(式中nは1〜12の整数を表す)

【請求項2】
下記式(1)で表される還元型補酵素Qおよび下記式(2)で表される酸化型補酵素Qを有効成分とすることを特徴とする疲労改善剤(式中nは1〜12の整数を表す)。


【請求項3】
請求の範囲第1または第2に記載の疲労改善剤であって、補酵素Qが補酵素Q10である疲労改善剤。
【請求項4】
請求の範囲第1または第2のいずれか1項に記載の疲労改善剤であって、抗酸化物質または/および抗酸化酵素を含有する疲労改善剤。
【請求項5】
請求の範囲第4記載の疲労改善剤であって、抗酸化物質がビタミンE、ビタミンE誘導体、ビタミンC、ビタミンC誘導体、プロブコール、リコペン、ビタミンA、カロテノイド類、ビタミンB、ビタミンB誘導体、フラボノイド類、ポリフェノール類、グルタチオン、ピロロキノリンキノン、ピクノジェノール、フラバジェノール、又はセレンである疲労改善剤。
【請求項6】
請求の範囲第4記載の疲労改善剤であって、抗酸化酵素がスーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、グルタチオン還元酵素、カタラーゼ、又はアスコルビン酸ペルオキシダーゼである疲労改善剤。
【請求項7】
請求の範囲第1または第2のいずれか1項に記載の疲労改善剤であって、滋養強壮成分を共に含有する疲労改善剤。
【請求項8】
請求の範囲第7記載の疲労改善剤であって、滋養強壮成分がクレアチン、タウリン、ビタミンB、ビタミンB誘導体、又はアミノ酸である疲労改善剤。
【請求項9】
請求の範囲第1または第2記載の疲労改善剤であって、栄養補助成分を含有する疲労改善剤。
【請求項10】
請求の範囲第9記載の疲労改善剤であって、栄養補助成分が、アミノ酸、金属イオン、糖類、蛋白質類、脂肪酸類、又はビタミンであるところの疲労改善剤。
【請求項11】
請求の範囲第1または第2記載のいずれか1項に記載の疲労改善剤であって、その形態がドリンク剤あるいは食品であるところの疲労改善剤。
【請求項12】
請求の範囲第1または第2のいずれか1項に記載の疲労改善剤であって、皮膚に直接塗布することにより筋肉疲労を改善するところの疲労改善剤。
【請求項13】
請求の範囲第12記載の疲労改善剤であって、その形態がスプレー剤、軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、クリーム剤、パップ剤、プラスター剤、テープ剤であるところの疲労改善剤。
【請求項14】
請求の範囲第12記載の疲労改善剤であって、抗炎症成分を共に含有する疲労改善剤。
【請求項15】
請求の範囲第14記載の疲労改善剤であって抗炎症成分が、ステロイド、サリチル酸およびその誘導体、アリール酢酸およびその誘導体、プロピオン酸およびその誘導体、フェナム酸およびその誘導体、ピラゾロンおよびその誘導体、オキシカムおよびその誘導体、および非酸性抗炎症剤からなる群より選択される少なくとも一種である疲労改善剤。
【請求項16】
請求の範囲第1から第15記載の疲労改善剤を用いることにより、動物の筋肉中補酵素Q量を増加させる方法。
【請求項17】
請求の範囲第1から第15記載の疲労改善剤を用いることにより、脊椎動物の筋肉中補酵素Q量を増加させる方法。
【請求項18】
請求の範囲第1から第15記載の疲労改善剤を用いることにより、哺乳動物の筋肉中補酵素Q量を増加させる方法。
【請求項19】
請求の範囲第1から第15記載の疲労改善剤を用いることにより、ヒトの筋肉中補酵素Q量を増加させる方法。
【請求項20】
請求の範囲第1から第15記載の疲労改善剤を用いることにより、動物の筋肉中還元型補酵素Q量を増加させる方法。
【請求項21】
請求の範囲第1から第15記載の疲労改善剤を用いることにより、脊椎動物の筋肉中還元型補酵素Q量を増加させる方法。
【請求項22】
請求の範囲第1から第15記載の疲労改善剤を用いることにより、哺乳動物の筋肉中還元型補酵素Q量を増加させる方法。
【請求項23】
請求の範囲第1から第15記載の疲労改善剤を用いることにより、ヒトの筋肉中還元型補酵素Q量を増加させる方法。
【請求項24】
請求の範囲第1から第15記載の疲労改善剤を用いることにより、動物の疲労を改善する方法。
【請求項25】
請求の範囲第1から第15記載の疲労改善剤を用いることにより、脊椎動物の疲労を改善する方法。
【請求項26】
請求の範囲第1から第15記載の疲労改善剤を用いることにより、哺乳動物の疲労を改善する方法。
【請求項27】
請求の範囲第1から第15記載の疲労改善剤を用いることにより、ヒトの疲労を改善する方法。

【国際公開番号】WO2004/066988
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504674(P2005−504674)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000366
【国際出願日】平成16年1月19日(2004.1.19)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】