説明

発光素子

【課題】転位を少なくする半導体成長用基板および転位の少ない発光素子を提供する。
【解決手段】
本発明の発光素子は、 一方主面15Aから一部が突出するとともに、上面14a´を有する突起14aを複数備えた単結晶基板14と、
一方主面15Aの突起14aが配置されていない領域に設けられ、上部14a´が突起14aの上面14a´の高さ位置より高い位置にあるとともに、単結晶基板14と異なる材料からなる複数の構造体16と、単結晶基板14上に構造体16を被覆するように設けられた光半導体層13と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体成長用基板上に、紫外光、青色光、緑色光等を発光する光半導体層から構成される発光素子を形成する技術が提案されている。
【0003】
発光素子の開発において、発光ムラや発光効率を改善するため、複数の突起を形成した半導体成長用基板上に光半導体層を成長させて、突起の上面から延びる転位を結合させて転位を減らす必要があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−277374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、突起の上面から延びる転位をより結合しやすくすることにより、光半導体層の厚み方向に延在する転位をさらに減らした発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる発光素子は、一方主面から一部が突出するとともに、上面を有する突起を複数備えた単結晶基板と、前記一方主面の前記突起が配置されていない領域に設けられ、上部が前記突起の上面の高さ位置より高い位置にあるとともに、前記単結晶基板と異なる材料からなる複数の構造体と、前記単結晶基板上に前記構造体を被覆するように設けられ、前記複数の突起の上面から前記一方主面に沿った方向であって前記複数の構造体同士の間に延びる転位を複数有する光半導体層と、を有し、前記複数の転位を、平面透視して、前記突起および前記構造体と重ならない位置で結合させている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発光効率を向上させることができる発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態にかかる発光素子を実装した発光装置を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)のA−A´線で切断したときの断面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる発光素子の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる半導体成長用基板の平面図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる発光素子の断面図であり、(a)は図2および3のB−B´線で切断したとき、(b)は図2および3のC−C´線で切断したときの断面にそれぞれ相当する。
【図5】本発明の実施形態にかかる発光素子の断面図であり、(a)は図2および3のB−B´線で切断したとき、(b)は図2および3のC−C´線で切断したときの断面にそれぞれ相当する。
【図6】本発明の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す断面図である。
【図11】本発明の実施形態の変形例にかかる発光素子の断面図であり、図2のB−B´線で切断した時の断面に相当する。
【図12】本発明の実施形態の変形例にかかる発光素子の断面図であり、図2のC−C´線で切断した時の断面に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
【0010】
本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を施すことができる。
【0011】
<発光装置>
図1(a)は本実施形態にかかる発光素子1を実装した発光装置2の斜視図、図1(b)は図1(a)に示す発光装置2の断面図であり、図1(a)のA−A´線で切断した時の断面に相当する。
【0012】
発光装置2は、図1(b)に示すように、配線導体3が設けられた実装基体4と、実装基体4上に実装された発光素子1と、を有している。
【0013】
実装基体4は、例えばセラミックから成る第1シート4aおよび第2シート4bを積層した積層体により形成することができる。実装基体4は、具体的には、凹部5を形成するための貫通孔を有する第1シート4aと、発光素子1の搭載面6から引き出し面7まで電気的な導通をさせる配線導体3を有する第2シート4bとを張り合わせることにより形成することができる。
【0014】
第1シート4aおよび第2シート4bとして例えばセラミック材料を用いた場合、配線導体3はタングステン、モリブデン、銅および銀などの金属をメタライズ配線により形成することができる。そして、このような第1シート4aおよび第2シート4bを高温で焼成することにより実装基体4が形成される。
【0015】
発光素子1は、接合電極8を介して搭載面6上の配線導体3に実装されている。本実施形態においては、発光素子1が配線導体3にフリップチップ接続の配置で実装されていることから、発光素子1で発生した熱を効率よく実装基体1側に放熱させることができる。接合電極8は、配線導体3と、後述する発光素子1の第1電極層9および第2電極層10と配線導体3との間に介在し、それぞれが電気的に接合するように配置されている。
【0016】
モールド樹脂11は、実装基体4に実装された発光素子1を被覆するように、実装基体4の凹部5に充填されている。モールド樹脂11としては、絶縁材料を用いることができる。このように発光素子1をモールド樹脂11により被覆することで、発光素子1を電気的に周囲と絶縁させることができ、信頼性を向上させることができる。
【0017】
<発光素子>
発光装置2に実装される発光素子1を、図面を参考にしつつ以下に詳細に説明する。
【0018】
図2に、本実施形態にかかる発光素子1の斜視図を示す。図3は、半導体成長用基板12の平面図であり、B−B´線およびC−C´線は図2のB−B´線およびC−C´線にそれぞれ相当する。さらに、図4は図2に示す発光素子1の断面図であり、図4(a)は
図2および3のB−B´線で切断したとき、図4(b)は図2および3のC−C´線で切断したときの断面にそれぞれ相当する。
【0019】
発光素子1は、図2に示すように、半導体成長用基板12と、半導体成長用基板12上に成長させた光半導体層13と、を有する。
【0020】
半導体成長用基板12は、図3に示すように、単結晶基板14と、単結晶基板14の第1主面15Aに構造体16と、を有している。また、半導体成長用基板12の厚みは、例えば10μm以上1000μm以下に設定することができる。ここで、半導体成長用基板12の厚みは、単結晶基板14aの第1主面15Aから第2主面15Bまでの厚みを指す。
【0021】
単結晶基板14は、光半導体層13を成長させることが可能な材料を用いることができ、例えばサファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、ホウ化ジルコニウムまたは酸化亜鉛などの結晶性材料を用いることができる。このような結晶性材料の中でも、光半導体層13で発光した光を単結晶基板14の第2主面15B側から取り出す場合、発光層13bで発光する光を50%以上透過させることができる透光性材料であるサファイア、窒化ガリウムを用いることにより、光取り出し効率を向上させることができる。なお、単結晶基板14は、平面視形状が多角形や円形などにより設定されている。
【0022】
単結晶基板14には、単結晶基板14の第1主面15Aから一部が上方へ突出するように上面14a´を有する突起14aが複数設けられている。かかる突起14aは、単結晶基板14と同じ材料からなり、単結晶基板14と一体的に設けられている。さらに第1主面15A上に設けられた複数の突起14aは、平面視して、突起14aの間隔が離間するようにして設けられている。このような離間した突起14aの間隔は、例えば1.0μm以上20μm以下に設定することができる。
【0023】
このような突起14aは、平面視したときに、突起14aの面積が単結晶基板14の第1主面15A全体の面積に対して50%以上となるように配置することが好ましい。このように突起14aを設けることにより、後述するように、多く単結晶基板14からの転位17を、第1主面15Aに沿う方向へ曲げることができるため、光半導体層13の結晶品質を向上させることができる。
【0024】
突起14aは、上面14a´が結晶成長面となっている。結晶成長面とは、結晶格子の結晶面が揃った平面を指し、例えばサファイアを用いた場合だと結晶格子のA面、C面またはR面などの結晶面を用いることができる。結晶成長面上に半導体を結晶成長させることにより、かかる結晶成長面上に半導体を規則的に配列させた結晶を育成することができる。
【0025】
突起14aは、平面視形状が四角形などの多角形や円形などの形状をなし、断面形状が台形や四角形などの多角形をなしている。突起14aは、単結晶基板14の第1主面15から突起14aの上面14a´までの高さが例えば0.50μm以上200μm以下に設定されている。
【0026】
構造体16は、第1主面15Aの突起14aが配置されていない領域に設けられている。突起14aが配置されていない領域とは、単結晶基板14を平面視して、突起14aが配置されていない第1主面15Aを指す。また、構造体16は、2つの突起14aの間に配置されるように設けられている。
【0027】
さらに、図4に示すように、構造体16の上部は、突起14aの上面14a´の高さ位
置より高くなるように設けられている。構造体16の上部は、例えば構造体16の上面16´など構造体16の最上部を指す。構造体16の高さ位置としては、後述する突起14aの上面14a´上に設けられるファセットの最高部より高くなるように形成することが好ましい。なお、構造体16の上面16´は、突起14aの上面14a´より高い位置になるように設定されていればよく、構造体16の高さは、例えば1μm以上150μm以下に設定することができる。
【0028】
このような構造体16は、平面形状が例えば三角形などの多角形や円形となるように形成することができ、断面形状が例えば台形や長方形などの多角形となるように形成することができる。構造体16の平面形状は、かかる構造体16に隣接する突起14aを直線で結んだ領域より小さく形成されており、例えば対角線の線分が0.5μm以上10μm以下で形成されている。なお、本実施形態においては、構造体16は、三角柱で形成されている。
【0029】
構造体16は、半導体成長用基板12上に光半導体層13を結晶成長させることから、単結晶基板14と異なる材料で、かつ耐熱性の材料から形成されている。光半導体層13が例えば400℃以上600℃以下で結晶成長される場合には、構造体16として融解温度が650℃以上の耐熱性の材料を用いることができる。このような構造体16は、例えばチタン、タンタル、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、トリウム、ニオブまたはナトリウムのうち少なくともいずれかを含む酸化物、弗化物或いは窒化物などを用いることができる。
【0030】
半導体成長用基板12上には、図4に示すように、光半導体層13が設けられている。光半導体層13は、第1半導体層13a、発光層13bおよび第2半導体層13cを順次積層することにより構成されている。なお、光半導体層13は、全体の厚みが例えば100nm以上10000nm以下で形成することができる。また、光半導体層13の各層の屈折率は、窒化ガリウムを用いた場合には例えば1.80以上2.70以下に設定される。
【0031】
光半導体層13としては、III−V族半導体を用いることができる。III−V族半導体としては、III族窒化物半導体、ガリウム燐またはガリウムヒ素などを例示することができる。III族窒化物半導体としては、ボロン、アルミニウム、ガリウムまたはインジウムのうち少なくとも1つの窒化物からなる混晶を用いることができ、例えば窒化ガリウムを用いることができる。
【0032】
第1半導体層13aは、突起14aおよび構造体16を被覆するように単結晶基板14a上に設けられている。第1半導体層13aには、単結晶基板14aから延びる転位17が複数存在している。
【0033】
転位17は、半導体の結晶格子がずれることにより形成され、例えば刃状転位やらせん状転位などの種類がある。このような転位17すなわち結晶格子のずれは、第1半導体層13aの格子定数と単結晶基板14aの格子定数が異なるため、単結晶基板14aと第1半導体層13aとの界面で発生しやすくなっている。なお、第1半導体層13aは、厚みが1μm以上250μm以下に設定されている。
【0034】
発光層13bは、第1半導体層13a上に設けられている。発光層13bは、禁制帯幅の広い障壁層と禁制帯幅の狭い井戸層からなる量子井戸構造が複数回繰り返し規則的に積層された多層量子井戸構造(MQW)を用いることができる。障壁層および井戸層としては、インジウムとガリウムの窒化物からなる混晶においてインジウムとガリウムの組成比を調整したものを用いることができる。このように構成された発光層13bは、例えば3
50nm以上600nm以下の波長の光を発光することができる。発光層13bは第1半導体層13a上に形成されるため、転位17が第1半導体層13aの上面にまで延在している場合、かかる転位17が発光層13b内にまで延びやすくなる。
【0035】
第2半導体層13cは、発光層13b上に設けられている。第2半導体層13cは、電子か正孔のどちらかを多数キャリアとすることにより、第1半導体層13aとは逆導電型を呈するように設定されている。半導体層に導電型を付与する方法としては、例えばマグネシウムやシリコンを不純物として混ぜる方法を用いることができる。
【0036】
第1電極層9は第1半導体層13a上に、第2電極層10は第2半導体層13c上に、それぞれ設けられている。このような2つの電極層により、光半導体層13に電圧が印加される。かかる2つの電極層の材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、インジウム、錫、モリブデン、銀、金、タンタルまたは白金などの金属や、酸化錫、酸化インジウムまたは酸化インジウム錫などの酸化物や、銀−アルミニウム合金、金−亜鉛合金または金−ベリリウム合金などの合金膜を好適に用いることができる。また、このような2つの電極層は、それぞれ上記材質の中から選択した層を複数回積層しても構わない。
【0037】
光半導体層13を半導体成長用基板12上に設ける際に、第1半導体層13aを横方向成長させて形成した場合、突起14aの上面14a´から延びる転位17が第1主面15Aに沿う方向へ延びやすくなる。具体的には、突起14aの上面14a´に、上面14aに対して傾斜したファセット面を形成した後、横方向成長させることにより、突起14aの上面14a´から第1半導体層13aの厚み方向に伸びる転位17を第1主面15Aに沿う方向へ延ばすことができる。ここで傾斜したファセット面は、例えば突起14aの上面14a´を(0001)面とした場合には、(11−22)面のものなどを用いることができる。
【0038】
本実施形態においては、突起14aの上面14a´より高い上面16´を有する構造体16が設けられていることから、突起14aの上面14a´から第1主面15Aに沿う方向へ延びる転位17が構造体16を避けて成長するようになる。そのため、このように構造体16を避けて延びる複数の転位17は、隣接する構造体16同士の間の領域に多く存在するようになる。
【0039】
その結果、構造体16同士の間の領域に延びる複数の転位17を、平面透視して、突起14aおよび構造体16と重ならない領域で結合させることができる。具体的には、構造体16同士の間に延びる複数の転位17を、構造体16同士の間で結合させたり、突起14aおよび構造体16と重ならない領域であって構造体16より高い位置で結合させたりすることができる。
【0040】
このように複数の転位17を結合させることにより、転位17の数を減らすことができる。なかでも、複数の転位17すなわち結晶格子のずれが結合されることにより、結晶格子のずれがなくなり結晶格子が揃うようになった場合には、かかる転位17が結合された後それ以上転位17を延びなくすることができる。
【0041】
このように突起14aが配置されていない領域に構造体16が設けられている場合、複数の突起14aの上面14a´から第1主面15Aに沿う方向へ延びる転位17の平面方向に延びる方向を制御することができる。そのため、かかる転位17同士を結合させやすくでき、第1半導体層13aの厚み方向へ延びる転位17の数を減らすことができる。その結果、第1半導体層13aの結晶品質を向上させることができ、かかる第1半導体層13a上に成長される発光層13bの結晶品質を向上させることができる。その結果、発光
層13bでの発光効率を向上させることができる。
【0042】
一方、非結晶成長構造体を有さない発光素子の構成では、単結晶基板上に第1半導体層を横方向成長させた際に、突起から単結晶基板の第1主面に沿ったあらゆる方向に複数の転位が延びるようになる。そのことから、複数の転位同士が結合されにくく、発光層まで延在する転位の数を減らすことが困難だった。その結果、かかる転位によって発光層の発光効率を向上させることが難しかった。
【0043】
本実施形態において、構造体16を三角柱で形成する場合について説明したが、構造体16は、下部から上部に向かうにつれて、第1主面15Aに平行な断面積が漸次小さくなるように設けることが好ましい。具体的には、三角錘、円錐および円錐台などの形状を用いることができる。
【0044】
ここで、図5に構造体16を三角錘台で形成した場合の発光素子1を示す。図5(a)は図2および3のB−B´線で切断したとき、図5(b)は図2および3のC−C´線で切断したときの断面にそれぞれ相当する。
【0045】
このように構造体16が下部から上部に向かうにつれて第1主面15Aに平行な断面積が小さく形成されている場合、構造体16は、第1主面15Aとなす内角が鋭角となる斜面18を有する。そのため、発光層13bで第1主面15Aに向かって発光された光が、構造体16と第1半導体層13aとの臨界角以下の角度で構造体16の斜面18に入射しやすくなる。その結果、発光層13bで発光された光が構造体16の斜面18で発光層13b側へ全反射されにくくなり、発光素子1の光取り出し効率を向上させることができる。
【0046】
さらに、構造体16として、単結晶基板14と第1半導体層13aとの間の屈折率を有する材料から形成することが好ましい。このような材料で構造体16を形成することにより、発光層13bで発光した光が、第1半導体層13aと構造体16との界面、構造体16と単結晶基板14との界面で反射されにくくなり、光取り出し効率を向上させることができる。
【0047】
また、半導体成長用基板12上に光半導体層13を成長させた後、単結晶基板14を除去してもよい。このように単結晶基板14を除去することにより、発光層13bで発光した光を、発光層13bの第1半導体層13a側から取り出す場合、発光層13bで発光した光が単結晶基板14で吸収されなくなり、発光素子1の光取り出し効率を向上させることができる。
【0048】
<発光素子の製造方法>
次に、発光素子1の製造方法を説明する。図6から図10は、発光素子1の製造方法を説明するための断面図であり、図2に示す発光素子1のC−C´線における断面に相当する部分を示している。
【0049】
(半導体成長用基板の製造工程)
図6に示すように、単結晶基板14上に、単結晶基板14の一部を露出させた露出領域を有するマスクパターン19を形成する。マスクパターン19としては、後に容易に除去することができる材料を選択することができ、厚みは例えば400nm以上1500nm以下に設定することができる。なお、マスクパターン19の膜厚は、エッチングにより単結晶基板14の一部を除去する場合、単結晶基板14のエッチングレートとマスクパターン19のエッチングレートとの選択比によって適宜選択することができる。
【0050】
マスクパターン19は、マスク材料をスパッタ法や蒸着法などの真空積層法を用いることにより単結晶基板14上に積層膜を積層し、単結晶基板14の一部を露出させるための露出領域をパターニングすることにより形成することができる。この際、単結晶基板14aとしてサファイアを用いてドライエッチングを行う場合、サファイアと反応しやすい塩素系ガスを反応ガスとして好適に用いることができるが、この場合、マスク材料としては、チタン、ニッケルまたはクロムなどの金属や酸化シリコンなどの耐塩素性の無機材料を用いることが望ましい。
【0051】
さらに、単結晶基板14の上面を露出させた露出領域からエッチング法などで、単結晶基板14の一部を厚み方向へ除去した後、マスクパターン19を除去することにより、図7に示すような、突起14aが設けられる。
【0052】
単結晶基板14の一部を除去する方法としては、ウエットエッチングやドライエッチングなどエッチング法を用いることができる。単結晶基板14としてサファイアを用いた場合に、ドライエッチングにより単結晶基板14の一部を除去する際には、サファイアと反応しやすい塩素系ガス雰囲気中でドライエッチングを行うことにより生産性を向上させることができる。一方、単結晶基板14の一部をウエットエッチングで除去する場合には、ウエットエッチングのサイドエッチなどを用いることにより、突起14aの断面形状を台形状などにすることができる。
【0053】
さらに、図8に示すように、突起14aを被覆するように単結晶基板14上に、積層膜20と、積層膜20上にレジストパターン21と、を積層した積層体22を形成する。
【0054】
積層膜20は、突起14aの第1主面15から上面14a´までの高さより高くなるように膜厚が設定されている。積層膜20の材料として酸化シリコンを用いた場合、例えばスパッタ法やスピンコート法などにより形成することができる。
【0055】
レジストパターン21は、積層膜20の上面の一部を露出させる露出領域を有するように、積層膜20上に設けられている。レジストパターン21の露出領域が、平面透視して、突起14aと重なる領域に設定されている。レジストパターン21の膜厚は、エッチングにより積層膜20の一部を除去する場合、積層膜20のエッチングレートとレジストパターン21のエッチングレートとの選択比によって適宜選択することができる。
【0056】
その後、積層膜20の露出領域から厚み方向へ一部除去することにより、図9に示すような、構造体16を形成することができる。エッチングする方法としては、ドライエッチングやウエットエッチングなど用いることができる。ドライエッチングを用いて積層膜20の一部を除去した場合、露出領域に対して垂直方向からエッチングされやすいため、構造体16の断面形状を四角形とすることができる。また、ウエットエッチングを用いて積層膜20の一部を除去した場合、サイドエッチにより平面透視してレジストパターンと重なる領域もエッチングされやすいため、容易に斜面18を有する構造体16を形成することができる。
【0057】
以上のようにして、突起14aを有する単結晶基板14と、単結晶基板14の第1主面15A上に配置された構造体16と、を有する半導体成長用基板12が形成される。
【0058】
(発光素子の製造工程)
次に、図10に示すように光半導体層13を、単結晶基板14上に横方向成長を用いて形成する。光半導体層13を横方向成長させる方法としては、それぞれの層において組成比、成長温度および成長圧力などの成長条件を調整すればよい。このように成長条件を調整することにより、結晶の成長速度を、単結晶基板14の第1主面15Aに対して垂直方
向と水平方向とで制御することができる。
【0059】
第1半導体層13aは、単結晶基板14の突起14aの上面14a´に第1半導体層13aのファセットを形成して、横方向成長させることにより設けられる。具体的に、第1半導体層13aは、突起14aの上面14a´に外部との界面が特定の結晶面すなわちファセットとなるように成長させた後、第1主面15Aに対して水平方向の成長を垂直方向に対して成長速度を早くすることにより設けられる。このように第1半導体層13aを横方向成長させて設けることから、転位17も横方向成長に伴い第1主面15Aと水平な方向に沿って延びやすくなる。
【0060】
第1半導体層13aとして窒化ガリウムを用いた場合、突起14aの上面14a´に傾斜したファセットを形成する方法としては、例えば20kPa以上90kPa以下の圧力および700℃以上1150℃以下の温度で結晶成長させればよい。その後、ファセット形成時の温度以上に設定した高温状態およびファセット形成時の圧力以下に設定した低圧力状態にして結晶成長させることにより、第1半導体層13aを横方向成長させることができる。
【0061】
本実施形態においては、単結晶基板14の第1主面15A上に構造体16が形成されているため、第1半導体層13aが構造体16の隙間を埋めるようにして、突起14aの上面14a´から成長する。そのため、第1半導体層13aが構造体16の隙間を埋めるとともに、突起14の上面14aから延びる転位17が複数の構造体16の隙間を縫うようにして平面方向へ延びるようになる。このように複数の転位17は、構造体16によって平面方向に延びる方向が制限されるため、複数の構造体16の隙間に存在しやすくなり、転位17同士が結合しやすくなる。その結果、第1半導体層13aの厚み方向へ延びる転位17の数を減らすことができる。
【0062】
その後、第1半導体層13a上に発光層13bおよび第2半導体層13cを積層することにより、光半導体層13が単結晶基板14上に形成される。
【0063】
このように構造体16を設けていることにより、第1半導体層13aの結晶品質を向上させることができ、結果的に第1半導体層13aの上に形成される発光層13bおよび第2半導体層13cの結晶品質の向上に寄与することができる。
【0064】
このような光半導体層13すなわち第1半導体層13a、発光層13bおよび第2半導体層13cを成長させる方法として、有機金属気相成長法、分子線エピタキシー法、ハイドライド気相成長法またはパルスレーザデポジション法などを用いることができる。
【0065】
(電極形成工程)
次に、光半導体層13に電圧を印加するための一対の電極層を形成する。このような一対の電極層は、第1半導体層13aと接続する第1電極層9と第2半導体層13cと接続する第2電極層10により構成されている。
【0066】
一対の電極層の材料としては、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、インジウム、錫、モリブデン、銀、金、ニオブ、タンタル、バナジウム、白金、鉛またはベリリウムなどの金属や、酸化錫、酸化インジウムまたは酸化インジウム錫などの酸化物を好適に用いることができる。また、一対の電極層は、それぞれ上記材質の中から選択した層を複数層積層したものとしても構わない。
【0067】
(変形例1)
図11は上述した実施形態にかかる発光素子1の変形例を示す図であり、図2のB−B
´線で切断したときの断面に相当する。上述の実施形態にかかる発光素子1と重複する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0068】
変形例1にかかる発光素子23は、発光層13bと第2半導体層13cとの間に、平面透視して、構造体16と重なる位置に貫通孔24aを有する絶縁層24が配置されている。
【0069】
このような絶縁層24が設けられていることにより、発光素子23に電圧を印加した際に、絶縁層24の貫通孔24aに電流が流れやすくなり、平面透視して貫通孔24aと重なる位置の発光層13bを発光させることができる。
【0070】
これにより、光半導体層13の構造体16と重なる領域すなわち厚み方向に延在する転位17の少ない領域に効率よく電流を集中させることができる。その結果、転位17による光半導体層13の静電破壊を抑制しつつ、発光波長の改善や発光効率を向上させることができる。
【0071】
(変形例2)
図12は上述した実施形態にかかる発光素子1の変形例を示す図であり、図2のC−C´線で切断したときの断面に相当する。上述の実施形態にかかる発光素子1と重複する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
変形例2にかかる発光素子25は、構造体16の一部が単結晶基板14の突状部14bから形成されている。
【0073】
突状部14bは、単結晶基板14と一体的に設けられている。このような突状部14bは、上述した半導体成長用基板の製造工程において、突状部14bとなる領域をマスクパターン19で被覆し、単結晶基板14の露出した露出領域から単結晶基板14をエッチングすることにより、突起14aと同時に設けることができる。なお、突起14aの高さと突状部14bの高さを異なるように形成する場合には、マスクパターン22の厚みを部分的に変えることにより、突起14aと突状部14bを異なる高さで形成することができる。
【0074】
このように構造体16の一部を単結晶基板14の突状部14bで形成することにより、突状部14bの第1主面15Aからの高さ分だけ積層膜20の厚みを薄くすることができ、構造体16形成の生産性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 発光素子
2 発光装置
3 配線導体
4 実装基体
4a 第1シート
4b 第2シート
5 凹部
6 搭載面
7 引き出し面
8 接合電極
9 第1電極層
10 第2電極層
11 モールド樹脂
12 半導体成長用基板
13 光半導体層
13a 第1半導体層
13b 発光層
13c 第2半導体層
14 単結晶基板
14a 突起
14a´ 上面
14b 突状部
15A 第1主面
15B 第2主面
16 構造体
16´ 上面
17 転位
18 斜面
19 マスクパターン
20 積層膜
21 レジストパターン
22 積層体
23 発光素子
24 絶縁層
24a 貫通孔
25 発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方主面から一部が突出するとともに、上面を有する突起を複数備えた単結晶基板と、
前記一方主面の前記突起が配置されていない領域に設けられ、上部が前記突起の上面の高さ位置より高い位置にあるとともに、前記単結晶基板と異なる材料からなる複数の構造体と、
前記単結晶基板上に前記構造体を被覆するように設けられた光半導体層と、を有する発光素子。
【請求項2】
前記構造体は、前記突起から離間するように設けられている請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記構造体は、下部から上部に向かうにつれて一方主面に平行な断面積が漸次小さくなるように設けられている請求項1または2に記載された発光素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−211049(P2011−211049A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78692(P2010−78692)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】