説明

発振回路

【課題】半導体集積回路の電源電圧や温度の変動がある場合においても、発振波形の周波数変動を低減させる。
【解決手段】リミッタLm1は、出力端子T1の発振信号Vo1の電圧と、基準電圧Vconstに電圧降下Vth分を加算した値とを比較し、出力端子T1の発振信号Vo1の電圧が、基準電圧Vconstに電圧降下Vth分を加算した値を超えた場合、出力端子T1の発振信号Vo1の振幅を、基準電圧Vconstに電圧降下Vth分を加算した値に制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発振回路に関し、特に、半導体集積回路に形成された発振回路から出力される発振波形の周波数変動を低減させる方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の低電圧動作化に伴なって、半導体集積回路に形成される発振回路から出力される発振波形の振幅も小さくなってきている。このため、半導体集積回路に形成される発振回路の発振周波数は、電源電圧や温度の変動の影響を受けやすくなってきている。
【0003】
また、例えば、特許文献1には、任意の周波数の信号に基づいて所望の傾きのノコギリ波形を出力し、その信号の特定周波数以下ではノコギリ波形の振幅を制限し、予め設定された信号の特定の周波数範囲内ではノコギリ波形の振幅を一定となるように制御する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−154849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、ノコギリ波形の振幅を制限することにより、ノコギリ波形の振幅を一定とすることができるが、ノコギリ波形の振幅を一定としても、発振周波数を一定とする効果は得られないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、半導体集積回路の電源電圧や温度の変動がある場合においても、発振波形の周波数変動を低減させることが可能な発振回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、発振信号を生成する発振器と、前記発振器から出力された発振信号の振幅を制限するリミッタとを備えることを特徴とする発振回路を提供する。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、発振信号を生成するリングオシレータと、前記リングオシレータの各段の発振出力の振幅を制限するリミッタとを備えることを特徴とする発振回路を提供する。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、発振信号を生成するリングオシレータと、前記リングオシレータの1段分の発振出力の振幅を制限するリミッタと、前記リミッタにて振幅が制限された発振出力に基づいて、前記リングオシレータの残りの段のバイアス電流を制御する電流制御回路とを備えることを特徴とする発振回路を提供する。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、発振信号を生成するLC反結合発振器と、前記LC反結合発振器から出力された発振信号の振幅を制限するリミッタとを備えることを特徴とする発振回路を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、半導体集積回路の電源電圧や温度の変動がある場合においても、発振波形の周波数変動を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る発振回路の概略構成を示すブロック図。
【図2】図2は、図1の発振回路にてリミッタがかけられた発振波形をリミッタがかけられない発振波形と比較して示す図。
【図3】図3は、本発明の第2実施形態に係る発振回路の回路構成を示す図。
【図4】図4は、本発明の第3実施形態に係る発振回路の回路構成を示す図。
【図5】図5は、本発明の第4実施形態に係る発振回路の回路構成を示す図。
【図6】図6は、本発明の第5実施形態に係る発振回路の回路構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る発振回路について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る発振回路の概略構成を示すブロック図である。
図1において、この発振回路には、発振器SおよびリミッタLm1が設けられている。なお、発振器SおよびリミッタLm1は、半導体集積回路に形成することができる。ここで、発振器Sは、発振信号Vo1〜Von(nは正の整数)を生成することができる。なお、発振器Sは、半導体集積回路にて構成することができ、例えば、リングオシレータであってもよいし、ウィーンブリッジ発振器などのRC発振器であってもよいし、同調形発振器であってもよいし、LC反結合発振器であってもよいし、マルチバイブレータであってもよい。そして、発振器Sには、発振信号Vo1〜Vonをそれぞれ出力する出力端子T1〜Tnが設けられている。
【0015】
リミッタLm1は、発振器Sの出力端子T1〜Tnの少なくとも1つの発振信号Vo1〜Vonの振幅を制限することができる。そして、リミッタLm1には、基準電圧Vconstを入力する基準電圧入力端子Trが設けられている。例えば、出力端子T1の発振信号Voの振幅を制限する場合、リミッタLm1における電圧降下をVthとすると、リミッタLm1は、出力端子T1の発振信号Vo1の電圧と、基準電圧Vconstに電圧降下Vth分を加算した値とを比較する。そして、出力端子T1の発振信号Vo1の電圧が、基準電圧Vconstに電圧降下Vth分を加算した値を超えた場合、出力端子T1の発振信号Voの振幅を、基準電圧Vconstに電圧降下Vth分を加算した値に設定する。
【0016】
これにより、半導体集積回路の電源電圧や温度の変動がある場合においても、発振波形の振幅を一定に維持することができ、発振波形の周波数変動を低減させることが可能となる。このため、半導体集積回路が低電圧動作化された場合においても、水晶発振器を用いることなく、発振周波数の精度を向上させることができ、外付け部品を用いる必要がなくなるとともに、発振回路の消費電力を低減させることができる。
【0017】
この結果、近距離無線通信などに使用されるブルートゥースなどの低消費電力モードにおいても、計時動作を精度よく行わせることが可能となり、送受信の休止期間の判断処理などに有効に適用することができる。
【0018】
なお、発振回路の消費電力の増大を抑制するとともに、電界効果トランジスタの寄生効果成分が見えないようにするために、発振信号Vo1〜Vonの発振周波数は1MHz以下であることが好ましい。
【0019】
また、上述した実施形態では、発振器Sの出力端子T1〜Tnのうちの出力端子T1の出力の振幅を制限する方法について説明したが、出力端子T1〜Tnのうちの少なくとも1個の出力の振幅を制限するようにしてもよく、例えば、全ての出力端子T1〜Tnの出力の振幅を制限するようにしてもよい。
【0020】
図2は、図1の発振回路にてリミッタがかけられた発振波形をリミッタがかけられない発振波形と比較して示す図である。
図2において、発振器Sの電源電圧がVDDであるとする。そして、リミッタLm1による振幅制限がない場合、発振器Sの発振波形はW2のようになり、電源電圧VDDとグランド電圧GNDとの間で振幅が変動することから、発振波形W2の振幅は、電源電圧VDDとグランド電圧GNDとの電位差Vaにて決定される。
【0021】
そして、電源電圧VDDが変動すると、発振器Sの発振波形はW2からW3に変化し、電源電圧VDDの変動に伴なって発振器Sの振幅も変動する。ここで、発振器Sの周期は、発振波形の振幅によって決定され、発振器Sの発振波形がW2からW3に変化すると、発振器Sの周期もH2からH3に変化することから、発振器Sの発振周波数が変化する。
【0022】
具体的には、発振器Sのバイアス電流をIs、負荷容量をClとすると、発振器Sの周期Tは、以下の(1)式で近似的に与えることができる。
T=2Cl・Va/Is ・・・(1)
【0023】
ここで、図1のリミッタLm1にて出力端子T1の発振信号Vo1に振幅制限をかけると、出力端子T1の発振信号Vo1の振幅は、基準電圧Vconstに電圧降下Vth分を加算した値に制限され、出力端子T1の発振信号Vo1の発振波形はW1のようになる。このため、電源電圧VDDの変動がある場合においても、出力端子T1の発振信号Vo1の振幅が変動するのが防止され、発振波形W1の周期H1は一定に維持されることから、発振器Sの発振周波数が変化するのを防止することができる。
【0024】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る発振回路の回路構成を示す図である。
図3において、発振回路には、リングオシレータおよびリミッタLm2が設けられている。ここで、リングオシレータには、インバータIV1〜IVnが設けられ、リミッタLm2には、ダイオードD1〜Dn、オペアンプOP1およびNチャンネル電界効果トランジスタT1が設けられている。なお、インバータIV1〜IVnには、負荷容量C1〜Cnがそれぞれ設けられている。この負荷容量C1〜Cnとしては、例えば、MOM(Metal Oxicide Metal)キャパシタを用いることができる。このMOMキャパシタは、配線そのものをキャパシタとすることができる。
【0025】
そして、インバータIV1〜IVnが順次直列接続され、最終段のインバータIVnの出力が初段のインバータIV1の入力に接続されることでリングオシレータが構成されている。なお、インバータIV1〜IVnにてリングオシレータを構成する場合、インバータIV1〜IVnの段数は奇数に設定することができる。また、インバータIV1〜IVnのバイアス電流を供給する電流源として定電流源G1がVDD側に接続されている。なお、定電流源G1の電流値と負荷容量C1〜Cnの値とでリングオシレータの発振周波数を決定することができる。
【0026】
そして、インバータIV1〜IVnの入力端子は、ダイオードD1〜Dnをそれぞれ介し、Nチャンネル電界効果トランジスタT1のドレインおよびオペアンプOP1の非反転入力端子に接続されている。なお、ダイオードD1〜Dnの順方向降下電圧はVthに設定することができる。また、ダイオードD1〜Dnは、PN接合にて構成するようにしてもよいし、ゲートにドレインが接続された電界効果トランジスタにて構成するようにしてもよい。
【0027】
また、オペアンプOP1の反転入力端子には基準電圧Vconstが入力されるとともに、オペアンプOP1の出力端子はNチャンネル電界効果トランジスタT1のゲートに接続されている。なお、基準電圧Vconstは、例えば、0.2V〜0.3Vの範囲内に設定することができる。
【0028】
そして、インバータIV1〜IVnには定電流源G1からバイアス電流Iconstが供給されながら、インバータIV1〜IVnから発振信号がそれぞれ出力され、各段のインバータIV1〜IVnから出力された発振信号は次段のインバータIV1〜IVnにそれぞれ入力される。そして、インバータIV1〜IVnの各段の入力電圧は、ダイオードD1〜Dnをそれぞれ介し、オペアンプOP1の非反転入力端子に印加され、基準電圧Vconstと比較される。
【0029】
そして、インバータIV1〜IVnの各段の入力電圧が、ダイオードD1〜Dnの順方向降下電圧Vth分を基準電圧Vconstに加算した値を超えた場合、オペアンプOP1の出力端子の電位がハイレベルになり、Nチャンネル電界効果トランジスタT1がオンする。
【0030】
そして、Nチャンネル電界効果トランジスタT1がオンすることで、インバータIV1〜IVnの各段の入力電圧が、ダイオードD1〜Dnの順方向降下電圧Vth分を基準電圧Vconstに加算した値を超えた場合においても、ダイオードD1〜Dnのカソード側の電位が基準電圧Vconstに一致するように維持され、インバータIV1〜IVnの各段の入力電圧が、ダイオードD1〜Dnの順方向降下電圧Vth分を基準電圧Vconstに加算した値に制限される。
【0031】
ここで、リングオシレータの入力電圧の振幅を制限することにより、リングオシレータの電源電圧VDDや温度の変動がある場合においても、リングオシレータの発振波形の振幅を一定に維持することができ、消費電力の増大を抑制しつつ、発振波形の周波数変動を低減させることが可能となる。
【0032】
なお、上述した実施形態では、リングオシレータを構成するために、インバータIV1〜IVnを用いる方法について説明したが、NAND回路やNOR回路などの反転論理回路を用いてリングオシレータを構成するようにしてもよい。
【0033】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態に係る発振回路の回路構成を示す図である。
図4において、発振回路には、リングオシレータ、リミッタLm3、電流制御回路Gcおよび定電流源G2が設けられている。ここで、リングオシレータには、インバータIV11〜IV13が設けられ、リミッタLm3には、ダイオードD11、オペアンプOP10およびNチャンネル電界効果トランジスタT10が設けられ、電流制御回路Gcには、オペアンプOP11、OP12およびPチャンネル電界効果トランジスタT31、T32が設けられている。なお、インバータIV11〜IV13には、負荷容量C11〜C13がそれぞれ設けられている。
【0034】
そして、インバータIV11〜IV13が順次直列接続され、最終段のインバータIV13の出力が初段のインバータIV11の入力に接続されることでリングオシレータが構成されている。
【0035】
ここで、インバータIV11には、Pチャンネル電界効果トランジスタT11およびPチャンネル電界効果トランジスタT21が設けられ、インバータIV12には、Pチャンネル電界効果トランジスタT12およびPチャンネル電界効果トランジスタT22が設けられ、インバータIV13には、Pチャンネル電界効果トランジスタT13およびPチャンネル電界効果トランジスタT23が設けられている。
【0036】
そして、Pチャンネル電界効果トランジスタT11のドレインおよびPチャンネル電界効果トランジスタT21のドレインは、Pチャンネル電界効果トランジスタT12のゲートおよびPチャンネル電界効果トランジスタT22のゲートに共通に接続されている。また、Pチャンネル電界効果トランジスタT12のドレインおよびPチャンネル電界効果トランジスタT22のドレインは、Pチャンネル電界効果トランジスタT13のゲートおよびPチャンネル電界効果トランジスタT23のゲートに共通に接続されている。また、Pチャンネル電界効果トランジスタT13のドレインおよびPチャンネル電界効果トランジスタT23のドレインは、Pチャンネル電界効果トランジスタT11のゲートおよびPチャンネル電界効果トランジスタT21のゲートに共通に接続されている。
【0037】
また、Pチャンネル電界効果トランジスタT11のソースは、Pチャンネル電界効果トランジスタT31のドレインに接続され、Pチャンネル電界効果トランジスタT12のソースは、Pチャンネル電界効果トランジスタT32のドレインに接続され、Pチャンネル電界効果トランジスタT13のソースは、Nチャンネル電界効果トランジスタT33のドレインに接続されている。また、Pチャンネル電界効果トランジスタT31、T32のソースおよびNチャンネル電界効果トランジスタT33のソースは、定電流源G2に接続されている。
【0038】
そして、Pチャンネル電界効果トランジスタT11のゲートおよびPチャンネル電界効果トランジスタT21のゲートは、ダイオードD11を介し、Nチャンネル電界効果トランジスタT10のドレインおよびオペアンプOP10の非反転入力端子に接続されている。なお、ダイオードD11の順方向降下電圧はVthに設定することができる。また、ダイオードD11は、PN接合にて構成するようにしてもよいし、ゲートにドレインが接続された電界効果トランジスタにて構成するようにしてもよい。
【0039】
また、オペアンプOP10の反転入力端子およびNチャンネル電界効果トランジスタT33のゲートには基準電圧Vconst2が入力されるとともに、オペアンプOP10の出力端子はNチャンネル電界効果トランジスタT10のゲートに接続されている。
また、Pチャンネル電界効果トランジスタT11のゲートおよびPチャンネル電界効果トランジスタT21のゲートは、オペアンプOP11、OP12の反転入力端子に接続されている。また、Pチャンネル電界効果トランジスタT12のゲートおよびPチャンネル電界効果トランジスタT22のゲートは、オペアンプOP11の非反転入力端子に接続されている。また、Pチャンネル電界効果トランジスタT13のゲートおよびPチャンネル電界効果トランジスタT23のゲートは、オペアンプOP12の非反転入力端子に接続されている。
【0040】
また、オペアンプOP11の出力端子はPチャンネル電界効果トランジスタT31のゲートに接続され、オペアンプOP12の出力端子はPチャンネル電界効果トランジスタT32のゲートに接続されている。
【0041】
そして、インバータIV11にはPチャンネル電界効果トランジスタT31を介してバイアス電流が供給され、インバータIV12にはPチャンネル電界効果トランジスタT32を介してバイアス電流が供給され、インバータIV13にはNチャンネル電界効果トランジスタT33を介してバイアス電流が供給される。そして、インバータIV11の入力電圧は、ダイオードD11を介し、オペアンプOP10の非反転入力端子に印加され、基準電圧Vconst1と比較される。
【0042】
そして、インバータIV11の入力電圧が、ダイオードD11の順方向降下電圧Vth分を基準電圧Vconst1に加算した値を超えた場合、オペアンプOP10の出力端子の電位がハイレベルになり、Nチャンネル電界効果トランジスタT10がオンする。
【0043】
そして、Nチャンネル電界効果トランジスタT10がオンすることで、インバータIV11の入力電圧が、ダイオードD11の順方向降下電圧Vth分を基準電圧Vconst1に加算した値を超えた場合においても、ダイオードD11のカソード側の電位が基準電圧Vconst1に一致するように維持され、インバータIV11の入力電圧が、ダイオードD11の順方向降下電圧Vth分を基準電圧Vconst1に加算した値に制限される。
【0044】
また、インバータIV12の入力電圧は、インバータIV11の入力電圧とオペアンプOP11にて比較される。そして、インバータIV12の入力電圧が、インバータIV11の入力電圧よりも大きくなると、オペアンプOP11の出力レベルが増大する。そして、Pチャンネル電界効果トランジスタT31を介してインバータIV11に供給されるバイアス電流が減少することで、インバータIV12の入力電圧と、インバータIV11の入力電圧とが一致するように維持され、インバータIV12の入力電圧が、ダイオードD11の順方向降下電圧Vth分を基準電圧Vconst1に加算した値に制限される。
【0045】
また、インバータIV13の入力電圧は、インバータIV11の入力電圧とオペアンプOP12にて比較される。そして、インバータIV13の入力電圧が、インバータIV11の入力電圧よりも大きくなると、オペアンプOP12の出力レベルが増大する。そして、Pチャンネル電界効果トランジスタT32を介してインバータIV12に供給されるバイアス電流が減少することで、インバータIV13の入力電圧と、インバータIV11の入力電圧とが一致するように維持され、インバータIV13の入力電圧が、ダイオードD11の順方向降下電圧Vth分を基準電圧Vconst1に加算した値に制限される。
【0046】
これにより、インバータIV11のみの入力電圧の振幅を制限した場合においても、リングオシレータの発振波形の振幅を一定に維持することができ、消費電力の増大を抑制しつつ、発振波形の周波数変動を低減させることが可能となる。
【0047】
なお、上述した実施形態では、リングオシレータを構成するために、インバータIV11〜IV13を用いる方法について説明したが、NAND回路やNOR回路などの反転論理回路を用いてリングオシレータを構成するようにしてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、3段分のインバータIV11〜IV13を用いてリングオシレータを構成する方法について説明したが、3段以上の奇数段ならばインバータの段数はいくつでもよい。
【0049】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態に係る発振回路の回路構成を示す図である。
図5において、発振回路には、LC反結合発振器およびリミッタLm4が設けられている。ここで、LC反結合発振器には、Pチャンネル電界効果トランジスタT51、T52、Nチャンネル電界効果トランジスタT53、T54、コイルL51とコンデンサC51が設けられ、リミッタLm4には、ダイオードD51、D52、オペアンプOP50およびNチャンネル電界効果トランジスタT50が設けられている。
【0050】
そして、Pチャンネル電界効果トランジスタT51のゲートは、Pチャンネル電界効果トランジスタT52のドレインに接続されるとともに、Pチャンネル電界効果トランジスタT52のゲートは、Pチャンネル電界効果トランジスタT51のドレインに接続されることで、クロスカップル接続されている。
【0051】
また、Nチャンネル電界効果トランジスタT53のゲートは、Nチャンネル電界効果トランジスタT54のドレインに接続されるとともに、Nチャンネル電界効果トランジスタT54のゲートは、Nチャンネル電界効果トランジスタT53のドレインに接続されることで、クロスカップル接続されている。
【0052】
また、Pチャンネル電界効果トランジスタT51のソースおよびPチャンネル電界効果トランジスタT52のソースは、定電流源G2に接続されている。また、Pチャンネル電界効果トランジスタT51のドレインは、Nチャンネル電界効果トランジスタT53のドレインに接続され、Pチャンネル電界効果トランジスタT52のドレインは、Nチャンネル電界効果トランジスタT54のドレインに接続されている。
【0053】
また、Pチャンネル電界効果トランジスタT51のドレインと、Nチャンネル電界効果トランジスタT53のドレインとの間には、コイルL51とコンデンサC51とが並列に接続されている。
【0054】
そして、Pチャンネル電界効果トランジスタT51のドレインと、Pチャンネル電界効果トランジスタT52のドレインは、ダイオードD51、D52をそれぞれ介し、Nチャンネル電界効果トランジスタT50のドレインおよびオペアンプOP50の非反転入力端子に接続されている。なお、ダイオードD51、D52の順方向降下電圧はVthに設定することができる。また、ダイオードD51、D52は、PN接合にて構成するようにしてもよいし、ゲートにドレインが接続された電界効果トランジスタにて構成するようにしてもよい。
【0055】
また、オペアンプOP50の反転入力端子には基準電圧Vconstが入力されるとともに、オペアンプOP50の出力端子はNチャンネル電界効果トランジスタT50のゲートに接続されている。
【0056】
そして、Pチャンネル電界効果トランジスタT51のソースと、Pチャンネル電界効果トランジスタT52のソースには、定電流源G2からバイアス電流Iconstが供給されながら、Pチャンネル電界効果トランジスタT51のドレインと、Pチャンネル電界効果トランジスタT52のドレインから発振信号がそれぞれ出力される。そして、Pチャンネル電界効果トランジスタT51のドレインの電圧と、Pチャンネル電界効果トランジスタT52のドレインの電圧は、ダイオードD51、D52をそれぞれ介し、オペアンプOP50の非反転入力端子に印加され、基準電圧Vconstと比較される。
【0057】
そして、Pチャンネル電界効果トランジスタT51のドレインの電圧と、Pチャンネル電界効果トランジスタT52のドレインの電圧が、ダイオードD51、D52の順方向降下電圧Vth分を基準電圧Vconstに加算した値を超えた場合、オペアンプOP50の出力端子の電位がハイレベルになり、Nチャンネル電界効果トランジスタT50がオンする。
【0058】
そして、Nチャンネル電界効果トランジスタT50がオンすることで、Pチャンネル電界効果トランジスタT51のドレインの電圧と、Pチャンネル電界効果トランジスタT52のドレインの電圧が、ダイオードD51、D52の順方向降下電圧Vth分を基準電圧Vconstに加算した値を超えた場合においても、ダイオードD51、D52のカソード側の電位が基準電圧Vconstに一致するように維持され、Nチャンネル電界効果トランジスタT50がオンすることで、Pチャンネル電界効果トランジスタT51のドレインの電圧と、Pチャンネル電界効果トランジスタT52のドレインの電圧が、ダイオードD51、D52の順方向降下電圧Vth分を基準電圧Vconstに加算した値に制限される。
【0059】
ここで、LC反結合発振器の発振信号の振幅を制限することにより、LC反結合発振器の電源電圧や温度の変動がある場合においても、LC反結合発振器の発振信号の振幅を一定に維持することができ、消費電力の増大を抑制しつつ、発振信号の周波数変動を低減させることが可能となる。
【0060】
なお、上述した実施形態では、LC反結合発振器を構成するために、コイルL51とコンデンサC51の並列回路を用いる方法について説明したが、ハートレー発振器やコルピッツ発振器などをLC反結合発振器として用いるようにしてもよい。
【0061】
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5実施形態に係る発振回路の回路構成を示す図である。
図6において、発振回路には、リングオシレータおよびリミッタLm2´が設けられている。ここで、リングオシレータには、インバータIV1´〜IVn´が設けられ、リミッタLm2´には、ダイオードD1´〜Dn´、オペアンプOP1´およびPチャンネル電界効果トランジスタT1´が設けられている。なお、インバータIV1´〜IVn´には、負荷容量C1´〜Cn´がそれぞれ設けられている。
【0062】
そして、インバータIV1´〜IVn´が順次直列接続され、最終段のインバータIVn´の出力が初段のインバータIV1´の入力に接続されることでリングオシレータが構成されている。なお、インバータIV1´〜IVn´にてリングオシレータを構成する場合、インバータIV1´〜IVn´の段数は奇数に設定することができる。また、インバータIV1´〜IVn´のバイアス電流を供給する電流源として定電流源G1´がGND側に接続されている。
【0063】
そして、Pチャンネル電界効果トランジスタT1´のドレインは、ダイオードD1´〜Dn´をそれぞれ介し、インバータIV1´〜IVn´の入力端子に接続されるとともに、オペアンプOP1´の非反転入力端子に接続されている。なお、ダイオードD1´〜Dn´の順方向降下電圧はVthに設定することができる。また、ダイオードD1´〜Dn´は、PN接合にて構成するようにしてもよいし、ゲートにドレインが接続された電界効果トランジスタにて構成するようにしてもよい。
【0064】
また、オペアンプOP1´の反転入力端子には基準電圧Vconstが入力されるとともに、オペアンプOP1´の出力端子はPチャンネル電界効果トランジスタT1´のゲートに接続されている。
【0065】
そして、インバータIV1´〜IVn´には定電流源G1´からバイアス電流Iconstが供給されながら、インバータIV1´〜IVn´から発振信号がそれぞれ出力され、各段のインバータIV1´〜IVn´から出力された発振信号は次段のインバータIV1´〜IVn´にそれぞれ入力される。そして、Pチャンネル電界効果トランジスタT1´のドレイン電圧は、オペアンプOP1´の非反転入力端子に印加され、基準電圧Vconstと比較されるとともに、ダイオードD1´〜Dn´をそれぞれ介し、インバータIV1´〜IVn´の各段の入力電圧として与えられる。
【0066】
そして、インバータIV1´〜IVn´の各段の入力電圧が、ダイオードD1´〜Dn´の順方向降下電圧Vth分を基準電圧Vconstから減算した値に満たなくなった場合、オペアンプOP1´の出力端子の電位がロウレベルになり、Pチャンネル電界効果トランジスタT1´がオンする。
【0067】
そして、Pチャンネル電界効果トランジスタT1´がオンすることで、インバータIV1´〜IVn´の各段の入力電圧が、ダイオードD1´〜Dn´の順方向降下電圧Vth分を基準電圧Vconstから減算した値に満たなくなった場合においても、ダイオードD1´〜Dn´のアノード側の電位が基準電圧Vconstに一致するように維持され、インバータIV1´〜IVn´の各段の入力電圧が、ダイオードD1´〜Dn´の順方向降下電圧Vth分を基準電圧Vconstから減算した値に維持される。
【0068】
ここで、リングオシレータの入力電圧の振幅を制限することにより、リングオシレータのグランド側の電圧や温度の変動がある場合においても、リングオシレータの発振波形の振幅を一定に維持することができ、消費電力の増大を抑制しつつ、発振波形の周波数変動を低減させることが可能となる。
【0069】
なお、上述した実施形態では、リングオシレータを構成するために、インバータIV1´〜IVn´を用いる方法について説明したが、NAND回路やNOR回路などの反転論理回路を用いてリングオシレータを構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
S 発振器、Lm1〜Lm4、Lm2´ リミッタ、T1〜Tn 出力端子、Tr 基準電圧入力端子、G1、G1´、G2 定電流源、IV1〜IVn、IV1´〜IVn´、IV11〜IV13 インバータ、D1〜Dn、D1´〜Dn´、D11、D51、D52 ダイオード、OP1、OP1´、OP10〜OP12、OP50 オペアンプ、T1、T10、T21〜T23、T33、T50、T53、T54 Nチャンネル電界効果トランジスタ、T1´、T11〜T13、T31、T32、T51、T52 Pチャンネル電界効果トランジスタ、Gc 電流制御回路、L51 コイル、C51 コンデンサ、C1〜Cn、C1´〜Cn´、C11〜C13 負荷容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振信号を生成する発振器と、
前記発振器から出力された発振信号の振幅を制限するリミッタとを備えることを特徴とする発振回路。
【請求項2】
発振信号を生成するリングオシレータと、
前記リングオシレータの各段の発振出力の振幅を制限するリミッタとを備えることを特徴とする発振回路。
【請求項3】
発振信号を生成するリングオシレータと、
前記リングオシレータの1段分の発振出力の振幅を制限するリミッタと、
前記リミッタにて振幅が制限された発振出力に基づいて、前記リングオシレータの残りの段のバイアス電流を制御する電流制御回路とを備えることを特徴とする発振回路。
【請求項4】
発振信号を生成するLC反結合発振器と、
前記LC反結合発振器から出力された発振信号の振幅を制限するリミッタとを備えることを特徴とする発振回路。
【請求項5】
前記発振信号の発振周波数は1MHz以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−268352(P2010−268352A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119692(P2009−119692)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】