説明

白色熱硬化性樹脂組成物、その硬化物を有するプリント配線板、及びその硬化物からなる発光素子用反射板

【課題】反射率が高く、且つ経時による反射率の低下並びに劣化による着色の抑制された白色硬化性樹脂組成物であって、LED等の発光素子が実装されるプリント配線板、及び発光素子用反射板に用いられた場合に、LED等の光を効率よく利用することができる白色硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)ルチル型酸化チタン、及び(B)熱硬化性樹脂を含有する白色熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)等の発光素子が実装されるプリント配線板の絶縁層として好適な、高反射率の白色熱硬化性樹脂組成物、及び当該組成物の硬化物からなる絶縁層を有するプリント配線板と当該組成物の硬化物からなるLEDやエレクトロルミネセンス(EL)等の発光素子用反射板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板においては、携帯端末、パソコン、テレビ等の液晶ディスプレイのバックライト、また照明器具の光源など、低電力で発光するLEDに直接実装して用いられる用途が増えてきている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
その場合に、プリント配線板に保護膜として被覆形成される絶縁膜には、ソルダーレジスト膜に通常要求される耐溶剤性、硬度、はんだ耐熱性、電気絶縁性等の特性に加え、LEDの発光を有効に利用することができるよう、光の反射率に優れることが所望される。
【0004】
しかしながら、従来より用いられている白色ソルダーレジスト組成物では、LEDより照射される光や発熱により樹脂の酸化が進んで黄変してしまい、反射率が経時により低下するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−249148号公報(段落0002〜0007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、反射率が高く、且つ経時による反射率の低下並びに劣化による着色の抑制された白色熱硬化性樹脂組成物であって、LED等の発光素子が実装されるプリント配線板に絶縁膜、特にソルダーレジストとして用いられた場合に、長期間にわたってLED等の光を効率よく利用することができる白色熱硬化性樹脂組成物を提供すること、並びに前記白色熱硬化性樹脂組成物からなり、高反射率で、且つ経時間による反射率の低下、及び劣化による黄変などの着色の抑制された、LEDやEL等の発光素子用反射板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、白色顔料としてルチル型酸化チタンを使用することにより、同じ酸化チタンでもアナターゼ型酸化チタンを使用した場合に比し、特に酸化チタンの光活性に起因する光による樹脂の劣化(黄変)の抑制効果が顕著となり、高反射率を長期間にわたり達成することができることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明の第1の側面によれば、(A)ルチル型酸化チタン、及び(B)熱硬化性樹脂を含有する白色熱硬化性樹脂組成物が提供される。
特に、熱硬化性樹脂(B)としては、(B−1)エポキシ化合物及び/又は(B−2)オキセタン化合物が好適に用いられる。
また、本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は、さらに、(C−1)硬化剤、及び/又は(C−2)硬化触媒を含有し得る。
【0009】
本発明の他の側面によれば、第1の側面による白色熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含むプリント配線板が提供される。
【0010】
本発明の他の側面によれば、第1の側面による白色熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる発光素子用反射板が提供される。
【0011】
また、本発明の発光素子用反射板は、EL用反射板またはLED用反射板を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る白色熱硬化性樹脂組成物は、高反射率を長期間にわたり維持することができるため、LED等の発光素子が実装されるプリント配線板の絶縁層(ソルダーレジストや発光素子用反射板)として用いられた場合に、LED等の光を効率よく利用することができ、全体として照度を長期にわたり上げることが可能となる。本発明に係る白色熱硬化性樹脂組成物は、プリント配線板に限定されるものではなく、高反射率が要求される部品、例えばELやLED等の発光素子用反射板として広範囲にわたりに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、発光素子が実装されたプリント配線板を模式的に示す上面図である。
【図2】図2は、発光素子が実装されたプリント配線板を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、発光素子が実装されたプリント配線板の製造工程の一部を模式的に示す概略図である。
【図4】図4は、発光素子用反射板を具備する基板を模式的に表す上面図である。
【図5】図5は、発光素子が実装されたプリント配線板を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は、(A)ルチル型酸化チタン、及び(B)熱硬化性樹脂を含有する。
本発明では、白色顔料として、ルチル型酸化チタン(A)を用いることを特徴としている。同じ酸化チタンであるアナターゼ型酸化チタンは、ルチル型酸化チタンと比較して白色度が高く、白色顔料としてよく使用される。しかしながら、アナターゼ型酸化チタンは、光触媒活性を有するために、特にLEDから照射される光により、絶縁性樹脂組成物中の樹脂の変色を引き起こすことがある。これに対し、ルチル型酸化チタンは、白色度はアナターゼ型と比較して若干劣るものの、光活性を殆ど有さないために、酸化チタンの光活性に起因する光による樹脂の劣化(黄変)が顕著に抑制され、また熱に対しても安定である。このため、LEDが実装されたプリント配線板の絶縁層において白色顔料として用いられた場合に、高反射率を長期にわたり維持することができる。
【0015】
また、ELやLEDなどの発光素子用反射板として本発明の白色熱硬化性樹脂組成物を用いる場合、経時による反射率の低下、並びに劣化による着色が抑制され、長期にわたり高反射率を保持することができる。
【0016】
ルチル型酸化チタン(A)としては、公知のものを使用することができる。ルチル型酸化チタンの製造法には、硫酸法と塩素法の2種類あり、本発明では、いずれの製造法により製造されたものも好適に使用することができる。ここで、硫酸法は、イルメナイト鉱石やチタンスラグを原料とし、これを濃硫酸に溶解して鉄分を硫酸鉄として分離し、溶液を加水分解することにより水酸化物の沈殿物を得、これを高温で焼成してルチル型酸化チタンを取り出す製法をいう。一方、塩素法は、合成ルチルや天然ルチルを原料とし、これを約1000℃の高温で塩素ガスとカーボンに反応させて四塩化チタンを合成し、これを酸化してルチル型酸化チタンを取り出す製法をいう。その中で、塩素法により製造されたルチル型酸化チタンは、特に熱による樹脂の劣化(黄変)の抑制効果が顕著であり、本発明においてより好適に用いられる。
【0017】
市販されているルチル型酸化チタンとしては、例えば、タイペークR−820、タイペークR−830、タイペークR−930、タイペークR−550、タイペークR−630、タイペークR−680、タイペークR−670、タイペークR−680、タイペークR−670、タイペークR−780、タイペークR−850、タイペークCR−50、タイペークCR−57、タイペークCR−80、タイペークCR−90、タイペークCR−93、タイペークCR−95、タイペークCR−97、タイペークCR−60、タイペークCR−63、タイペークCR−67、タイペークCR−58、タイペークCR−85、タイペークUT771(石原産業社製)、タイピュアR−100、タイピュアR−101、タイピュアR−102、タイピュアR−103、タイピュアR−104、タイピュアR−105、タイピュアR−108、タイピュアR−900、タイピュアR−902、タイピュアR−960、タイピュアR−706、タイピュアR−931(デュポン社製)、R−25、R−21、R−32、R−7E、R−5N、R−61N、R−62N、R−42、R−45M、R−44、R−49S、GTR−100、GTR−300、D−918、TCR−29、TCR−52、FTR−700(堺化学工業社製)等を使用することができる。
【0018】
この中で塩素法により製造されたタイペークCR−50、タイペークCR−57、タイペークCR−80、タイペークCR−90、タイペークCR−93、タイペークCR−95、タイペークCR−97、タイペークCR−60、タイペークCR−63、タイペークCR−67、タイペークCR−58、タイペークCR−85、タイペークUT771(石原産業社製)、タイピュアR−100、タイピュアR−101、タイピュアR−102、タイピュアR−103、タイピュアR−104、タイピュアR−105、タイピュアR−108、タイピュアR−900、タイピュアR−902、タイピュアR−960、タイピュアR−706、タイピュアR−931(デュポン社製)がより好ましく使用され得る。
【0019】
ルチル型酸化チタン(A)の配合率は、熱硬化性樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは30〜600質量部、より好ましくは50〜500質量部である。ルチル型酸化チタン(A)の配合率が600質量部を超えると、当該ルチル型酸化チタン(A)の分散性が悪化するため、分散不良となり好ましくない。一方、上記ルチル型酸化チタン(A)の配合率が30質量部未満であると、隠ぺい力が小さくなり、高反射率の絶縁膜を得ることが困難となるため好ましくない。
【0020】
次に、(B)熱硬化性樹脂について説明する。
本発明において用いられる熱硬化性樹脂(B)としては、加熱により硬化して電気絶縁性を示す樹脂であればよく、例えばエポキシ化合物、オキセタン化合物、メラミン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。特に、本発明においては、(B−1)エポキシ化合物及び/又は(B−2)オキセタン化合物が好ましく用いられる。
【0021】
上記エポキシ化合物(B−1)としては、1個以上のエポキシ基を有する公知慣用の化合物を使用することができ、中でも2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなどのモノエポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル−1,3−ジグリシジルエーテル、ビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコール又はプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物などが挙げられる。
これらは、塗膜の特性向上の要求に合わせて、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0022】
次に、オキセタン化合物(B−2)について説明する。
下記一般式(I):
【化1】

【0023】
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
により表されるオキセタン環を含有するオキセタン化合物(B−2)の具体例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT−101)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT−211)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT−212)、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(東亞合成社製の商品名 OXT−121)、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成社製の商品名 OXT−221)などが挙げられる。さらに、フェノールノボラックタイプのオキセタン化合物なども挙げられる。
【0024】
上記オキセタン化合物(B−2)は、前記エポキシ化合物(B−1)と併用または単独で使用することができる。
【0025】
また、本発明の白色熱硬化性樹脂組成物には、さらに、(C−1)硬化剤、及び/又は(C−2)硬化触媒を添加し得る。
【0026】
硬化剤(C−1)としては、多官能フェノール化合物、ポリカルボン酸及びその酸無水物、脂肪族又は芳香族の一級又は二級アミン、ポリアミド樹脂、ポリメルカプト化合物などが挙げられる。これらの中で、多官能フェノール化合物、及びポリカルボン酸及びその酸無水物が、作業性、絶縁性の面から、好ましく用いられる。
【0027】
これらの硬化剤(C−1)のうち、多官能フェノール化合物は、一分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物であればよく、公知慣用のものが使用できる。具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAのノボラック樹脂、ビニルフェノール共重合樹脂などが挙げられるが、特に、フェノールノボラック樹脂が、反応性が高く、耐熱性を上げる効果も高いため好ましい。 このような多官能フェノール化合物は、適切な硬化触媒の存在下、前記エポキシ化合物(B−1)及び/又はオキセタン化合物(B−2)とも付加反応する。
【0028】
前記ポリカルボン酸及びその酸無水物は、一分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物及びその酸無水物であり、例えば(メタ)アクリル酸の共重合物、無水マレイン酸の共重合物、二塩基酸の縮合物などが挙げられる。市販品としては、BASF社製のジョンクリル(商品群名)、サートマー社製のSMAレジン(商品群名)、新日本理化社製のポリアゼライン酸無水物などが挙げられる。
【0029】
これら硬化剤(C−1)の配合率は、通常用いられる量的割合で充分であり、熱硬化性樹脂(B)、例えば前記エポキシ化合物(B−1)及び/又はオキセタン化合物(B−2)の合計100質量部当たり、好ましくは1〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部が適当である。
【0030】
次に、硬化触媒(C−2)について説明する。
この硬化触媒(C−2)は、エポキシ化合物(B−1)及び/又はオキセタン化合物(B−2)等と、上記硬化剤(C−1)との反応において硬化触媒となり得る化合物、または硬化剤を使用しない場合に重合触媒となる化合物であり、例えば、三級アミン、三級アミン塩、四級オニウム塩、三級ホスフィン、クラウンエーテル錯体、及びホスホニウムイリドなどが挙げられ、これらの中から任意に、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
これらの中で、好ましいものとしては、商品名2E4MZ、C11Z、C17Z、2PZ等のイミダゾール類や、商品名2MZ−A、2E4MZ−A等のイミダゾールのAZINE化合物、商品名2MZ−OK、2PZ−OK等のイミダゾールのイソシアヌル酸塩、商品名2PHZ、2P4MHZ等のイミダゾールヒドロキシメチル体(前記商品名はいずれも四国化成工業社製)、ジシアンジアミドとその誘導体、メラミンとその誘導体、ジアミノマレオニトリルとその誘導体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエタノーアミン、ジアミノジフェニルメタン、有機酸ジヒドラジド等のアミン類、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(商品名DBU、サンアプロ社製)、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(商品名ATU、味の素社製)、又は、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物などが挙げられる。
【0032】
これら硬化触媒(C−2)の配合率は、通常の量的割合で充分であり、熱硬化性樹脂(B)、例えば前記エポキシ化合物(B−1)及び/又はオキセタン化合物(B−2)の合計100質量部当たり、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜3質量部が適当である。
【0033】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は、組成物の調製や粘度調整のために用いられる有機溶剤を含有し得る。有機溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などの有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は、更に必要に応じて、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができ、また本発明の熱硬化性樹脂組成物の白色を損なわない範囲において着色剤を配合することができる。
【0035】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は、前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、スクリーン印刷法等の方法により塗布する。塗布後、例えば140℃〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、硬化塗膜を得ることができる。
【0036】
本発明に係る白色熱硬化性樹脂組成物は、プリント配線板においてソルダーレジスト層として好適に用いられるのみならず、高反射率が要求される部品、例えばELやLED等の発光素子用反射板として広範囲に用いることができる。
【0037】
図1〜5は、ソルダーレジスト層並びにELやLED等の発光素子用反射板に本発明の白色硬化性樹脂組成物を使用する際の、使用例を表したものである。
【0038】
図1及び図2は、各々、発光素子12が実装されたプリント配線板13の上面図と断面図であって、最外層として本発明の白色硬化性樹脂組成物からなる発光素子用反射板(11)を形成し、当該反射板を高反射率の白色レジストとする形態を模式的に示す上面図と断面図である。
【0039】
図3は、本発明の白色硬化性樹脂組成物からなる発光素子用反射板を具備するプリント配線板の他の形態を説明するための工程図である。
【0040】
即ち、緑色等の有色または白色の一般的なソルダーレジストを用いてプリント配線板上に形成されるソルダーレジスト層を、プリント配線板13に実装された発行光素子12に対応する部分をくり抜くように加工する(図3(a)の15)。
【0041】
また、本発明の白色硬化性樹脂組成物からなる発光素子用反射板を有するプラスチックや金属のシート状の基板を、ソルダーレジスト層15と同様に、発光素子12に対応する部分をくり抜くように加工する(図3(a)の11(発光素子反射板)と20(基板))。
【0042】
そして、発光素子用反射板11を有する基板20をプリント配線板に重ねる。この工程により、見かけ上は高反射率の白色硬化性樹脂組成物からなる発光素子用反射板11が最外層に形成されたように見える(図3(b)及び(b')参照)。
【0043】
図4及び図5は、各々、以下の工程により形成された、ELやLED等の発光素子用反射板、及び該発光素子用反射板を具備するプリント配線板を表す。即ち、まず図1及び図2に表す発光素子用反射板11(白色レジスト)を具備するプリント配線板13を形成する。そして、ガラスやポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの透明な素材からなる基板21上に特定なパターンで本発明の白色硬化性樹脂組成物を塗布して発光素子用反射板11を作成する。発光素子用反射板11が形成された透明基板21を、上記発光素子用反射板11(白色レジスト)を具備するプリント配線板13に重ねる。上記形態により、取り出される光が拡散することにより、均一な照度にすることが可能となる。ここで、図5において、図1及び図2に表すプリント配線板13に替えて図3に表すプリント配線板13を用いてもよいことはいうまでもない。
【0044】
尚、上記のいずれの形態であっても、白色熱硬化性樹脂組成物(硬化物)は、黄変などの劣化要因である、発光素子から照射される光、及び発熱にさらされることとなる。このような状況であっても、本件発明の白色熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物は、長期間にわたり高度な反射率を保持することができる。
【実施例】
【0045】
次に実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことはもとよりである。
表1に従って各成分を3本ロールミルで混練し、各熱硬化性樹脂組成物(組成物例1乃至6)を得た。表中の数字は、質量部を表す。
【表1】

【0046】
性能評価:
(塗膜特性評価基板の作製)
熱硬化性樹脂組成物例1〜6を、銅ベタのFR−4基板上にスクリーン印刷により乾燥塗膜が約20μmとなるようにパターン印刷し、これを150℃で60分間加熱し硬化させて試験片を得た。得られた試験片に対して以下のように特性を評価した。
【0047】
(1)耐光性
各試験片について、ミノルタ製色彩色差計CR−400を用い、XYZ表色系のY値の初期値とL*a*b*表色系のL*、a*、b*の初期値を測定した。その後、各試験片をUVコンベア炉(出力150W/cm、メタルハライドランプ コールドミラー)で150J/cm2の光を照射して加速劣化させ、再度、ミノルタ製色彩色差計CR−400で各数値を測定しY値の変化とΔE*abで評価した。その結果を、目視による変色の評価結果と共に表2に示す。
【0048】
(2)耐熱性
各試験片について、ミノルタ製色彩色差計CR−400を用い、XYZ表色系のY値の初期値とL*a*b*表色系のL*、a*、b*の初期値を測定した。その後、各試験片を150℃の熱風循環式乾燥炉に50時間放置して加速劣化させ、再度、ミノルタ製色彩色差計CR−400で各数値を測定しY値の変化とΔE*abで評価した。その結果を、目視による変色の評価結果と共に表2に示す。
【表2】

【0049】
Y値は、XYZ表色系のYの値であり、数値が大きいほど高い反射率を示す。ΔE*abは、L*a*b*表色系において初期値と加速劣化後の差を算出したもので、数値が大きいほど、変色が大きいことを示す。ΔE*abの計算式は以下の通りである。
【0050】
ΔE*ab=((L*2−L*1)2+(a*2−a*1)2+(b*2−b*1)2)0.5
式中、L*1、a*1、b*1は、各々L*、a*、b*の初期値を表し、L*2、a*2、b*2は、各々加速劣化後のL*、a*、b*の値を表す。
【0051】
目視評価の判定基準は以下の通りである。
○○:まったく変色がない。
○:ほとんど変色がない。
△:若干の変色がある。
×:変色がある。
【0052】
(3)耐溶剤性
各試験片をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに30分間浸漬し、次いで乾燥した後、変色を目視にて観察し、さらにテープピールによる剥がれの有無を確認した。判定基準は以下の通りである。
【0053】
○:剥がれ及び変色のいずれもない。
【0054】
×:剥がれ又は変色がある。
結果を表3に示す。
【0055】
(4)はんだ耐熱性
ロジン系フラックスを塗布した各試験片を、予め260℃に設定したはんだ槽にフローさせ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで洗浄し乾燥した後、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれの有無を確認した。判定基準は以下の通りである。
【0056】
○:剥がれがない。
【0057】
×:剥がれがある。
結果を表3に示す。
【0058】
(5)鉛筆硬度
先が平らになるように研いだBから9Hまでの鉛筆の芯を、各試験片に45°の角度で押し付けて、塗膜が剥がれない最も硬い鉛筆の硬さを記録した。結果を表3に示す。
【0059】
(6)電気絶縁性
前記銅箔基板に替えてIPC規格Bパターンのくし型電極が形成されたFR−4基板を用い、上記と同様にスクリーン印刷により乾燥塗膜が約20μmとなるようにパターン印刷し、これを150℃で60分間加熱し硬化させて試験片を得た。各試験片の電極間の絶縁抵抗値を印加電圧500Vにて測定した。結果を表3に示す。
【表3】

【0060】
表2及び表3に示された結果から明らかなように、本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は、プリント配線板用絶縁層に一般的に要求される諸特性を満たしつつ、光及び熱による加速劣化後も、高反射率を維持し、変色も抑制されていることがわかる。特に、アナターゼ型酸化チタンを用いた場合に比し、耐光性が顕著に改善されている。
【0061】
また、本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は、発光素子用反射板に一般的に要求される、高反射率の維持、並びに光劣化や熱劣化が無く長期にわたり安定している特性を有するため、ELやLED等の発光素子用反射板などに適用する場合に、高反射率の維持、並びに光劣化や熱劣化が無く長期にわたり安定している特性に優れたELやLED等の発光素子用反射板等が得られる。
【符号の説明】
【0062】
11:本発明の白色硬化性樹脂組成物からなる発光素子用反射板
12:発光素子
13:プリント配線板
14:くり抜き部
15:ソルダーレジスト
20:基板
21:透明基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ルチル型酸化チタン、及び(B)熱硬化性樹脂を含有する白色熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
ルチル型酸化チタン(A)の配合率が、熱硬化性樹脂(B)100質量部に対して、30〜600質量部である、請求項1に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(B)熱硬化性樹脂が、(B−1)エポキシ化合物、及び/又は(B−2)オキセタン化合物である、請求項1又は2に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(C−1)硬化剤、及び/又は(C−2)硬化触媒を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の白色硬化性樹脂組成物を基材上に塗布し、硬化させて得られる硬化物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の白色熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を有するプリント配線板。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の白色熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる発光素子用反射板。
【請求項8】
エレクトロルミネセンス用反射板である請求項7に記載の反射板。
【請求項9】
発光ダイオード用反射板である請求項7に記載の反射板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−275561(P2010−275561A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188618(P2010−188618)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【分割の表示】特願2008−306242(P2008−306242)の分割
【原出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【Fターム(参考)】