説明

研磨途中時点の検出方法と研磨装置並びに研磨状態モニタ方法と研磨終了時点の検出方法

【課題】CMPにおいて、渦電流によるジュール熱損を極小に抑えるとともに、所定の導電性膜が適正に除去されているかを正確に評価する。
【解決手段】導電性膜を研磨し、前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される渦電流の変化をモニタする方法であって、前記所定の導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果により、研磨除去による前記導電性膜の膜厚減少に伴って前記導電性膜を貫通する磁束が増大して導電性膜に誘起される渦電流が増加するステップと、その後の更なる研磨による膜厚減少に伴って、渦電流を生じうる実質的な導電性膜厚の減少により、前記誘起される渦電流が減少へ転じるステップとを有し、該転じるステップの変化点を検出することを特徴とする、研磨途中時点の検出方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨途中時点の検出方法と研磨装置並びに研磨状態モニタ方法及び研磨終了時点の検出方法に関するものであり、特に、化学機械研磨加工(CMP)等において渦電流によるジュール熱損を極小に抑えた上で、研磨途中時点、研磨終了時点等を精度よく検出し、また所定の導電性膜が適正に除去されているかをリアルタイムで正確に評価することが可能な研磨途中時点の検出方法と研磨装置並びに研磨状態モニタ方法と研磨終了時点の検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハの表面に例えば酸化膜を形成し、該酸化膜にリソグラィ及びエッチングを施して配線パターンに対応した溝パターンを形成し、この上に前記溝パターンを充填するためのCu等からなる導電性膜を成膜し、該導電性膜のうち前記溝パターンやスルーホール部分等の埋め込み部以外の不要部分を化学機械研磨により除去して配線パターンを形成するプロセスが知られている。この配線パターンの形成では、不要部分の導電性膜が適正な厚さ除去されたときの研磨終点を確実に検出してプロセスを停止することが極めて重要である。導電性膜の研磨が過剰であると配線の抵抗が増加し、研磨が過少であると配線の絶縁障害につながる。
【0003】
これに関連する従来技術として、例えば次のようなフィルム厚の変化のその場での監視方法が知られている。この従来技術は、下地本体(半導体ウェハ)上から化学機械研磨によって導電性フィルムを除去する方法において該導電性フィルムの厚さ変化をその場で監視するための方法であって、電磁界に指向性をもたらすように整形するためのフェライト・ポット型コアに巻回されたコイルからなるインダクタとコンデンサとの直列又は並列共振回路を含むセンサを前記導電性フィルムに近接して配置し、励振信号源からの20Hz〜40.1MHzの周波数からなる掃引出力を動作点設定用インピーダンス手段を介して前記センサへ印加する。これにより、センサが励起されると、発振電流がコイルに流れ、交番電磁界を発生する。この交番電磁界は、次いで導電性フィルム中に渦電流を誘導する。渦電流が導電性フィルムに誘導されると、二つの効果が生じることになる。まず第1に、導電性フィルムが損失抵抗として作用し、その効果はセンサ回路に対する抵抗負荷であり、これは共振信号の振幅を下げ、共振周波数を下げる。第2に、導電性フィルムの厚さが減少すると、金属ロッドがインダクタのコイルから引き抜かれるかのような効果が生じ、これによってインダクタンスの変化並びに周波数シフトを引き起こす。このようにして前記導電性フィルムの厚さ変化に起因するセンサ共振ピークに関連した周波数シフトの変化を監視することにより、該導電性フィルムの厚さ変化を連続的に検出するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他の従来技術として、例えば次のような渦電流センサが知られている。この従来技術は、導電性膜又は導電性膜が形成される基体の近傍に配置されるセンサコイル(渦電流センサ)と、該センサコイルに8〜32MHz程度で一定周波数の交流信号を供給して前記導電性膜に渦電流を形成する交流信号源と、前記導電性膜を含めたリアクタンス成分及び抵抗成分を計測する検出回路とを備え、前記センサコイルは、前記信号源に接続する発振コイルと、該コイルの前記導電性膜側に配置する検出コイルと、前記発振コイルの前記導電性膜側の反対側に配置するバランスコイルとを具備し、前記検出コイルとバランスコイルとは互いに逆相となるように接続されている。そして、前記検出回路で検出した抵抗成分及びリアクタンス成分から合成インピーダンスを出力し、該インピーダンスの変化から前記導電性膜の膜厚の変化を広いレンジでほぼ直線的な関係として検出するようにし
ている。(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、他の従来技術として、例えば次のような渦電流センサが知られている。この従来技術も先に示した従来技術と同様に、[0008]には、センサコイルが形成する磁束がそのセンサコイル全面に配置された基板上の導電性膜を貫通し、交番的に変化することで該導電性膜中に渦電流を生じさせ、その渦電流が導電性膜中に流れることで渦電流損失が生じ、等価回路的にみるとセンサコイルのインピーダンスのリアクタンス成分を低下させることになるとしている。また、[0009]には、発振回路の発振周波数の変化を観察することで、研磨の進行に伴い、導電性膜が徐々に薄くなると、これにより発振周波数が低下し、導電性膜が研磨により完全になくなるタンク回路の自己発振周波数となり、それ以降は発振周波数が略一定となる。それ故、この点を検出することにより、導電性膜の化学機械的研磨による終点を検出することができるとある。また、[0025]には、図2に示すように、導電性膜の研磨が進行するとこれに伴い渦電流損が変化し、センサコイルの等価的な抵抗値が変化する。したがって、発振回路の発振周波数が変化するので、この発振信号を分周回路により分周し、又は減算器により減算することにより、検出幅の周波数の大きさに対応した信号をモニタに表示する。これにより、上述した図2に示すような周波数軌跡の推移が得られる(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第2878178号公報(第2〜7頁、図1〜15)。
【特許文献2】特許第3587822号公報(第3頁、図1〜11)。
【特許文献3】特開2003−21501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の従来技術においては、センサに電磁界に指向性をもたらすためのフェライト・ポット型コアに巻回されたコイルからなるインダクタとコンデンサとの直列又は並列共振回路が備えられている。そして、研磨初期において20Hz〜40.1MHzの周波数からなる掃引出力をセンサへ印加し、前記コイルから発生した指向性を持つ交番電磁界により、導電性フィルムを貫通する漏洩磁束を生じさせて該導電性フィルムの膜厚に対応した大きな渦電流を研磨初期から誘導させている。導電性フィルムの膜厚に対応した大きな渦電流を誘導するためには大きな交番電磁界、即ち導電性フィルムを貫通する程度の大きな磁束を形成することが必要であり、導電性フィルムの厚さ変化の監視は研磨初期から研磨終期まで導電性フィルム内に誘起された渦電流を利用して行われている。このため、膜厚変化の監視の間、導電性フィルムの厚さ方向に向かって磁束を貫通させることが必要である。特許文献1にかかる公報の図面中には、全ての導電性フィルムの部分に該導電性フィルムを貫通する磁束線が記載されていることからも、このことは明らかである。
【0007】
研磨初期におけるウェハの表面には、無垢なCu膜(導電性フィルム)が最上層にあるのが一般的である。これら無垢なCu膜の全てに渦電流を誘起させるためには非常に大きな漏洩磁束が必要である。しかし、その漏洩磁束は、渦電流を誘起するが、それらはいずれ渦電流損という形でジュール熱になって消費される。このジュール熱損は、最表層の無垢なCu膜に対しては、体積抵抗が小さいため、発熱は比較的小さいが、内部のすでに配線されている部分では、配線断面積が小さく体積抵抗が小さいため、貫通する磁束により大きな渦電流が誘起され、その結果局部的に大きなジュール熱損を生むことになる。これは、時として一部配線が溶融、断線してしまう問題に発展する。いわゆる誘導加熱の状態になり、特に内部に熱がこもってしまう現象になる。特に、Cu配線などでは、Cuが加熱されるとTaなどのバリア膜にCuが拡散する場合や、場合によっては、バリア膜を突き破ってCuが拡散してしまう懸念がある。
【0008】
また、ウェハの表面部に幾層にも配線が施されている場合では、表層のCu膜の心配だ
けではなく、すでに処理が完了している内部の配線部分が局部的に暖められて周囲に拡散したり、半導体基板内のp型、n型を形成しているドーパントがさらに拡散して、基板内素子の特性を変えてしまうこともある。また、熱が発生しない場合でも、過剰な渦電流が微細配線に流れる場合は、エレクトロマイグレーションを引き起こして断線することがある。
【0009】
さらに、例えば、研磨終了時点付近のある所定の残膜量になった時点で、研磨条件を変えて処理を行う場合に、所定の残膜量であるか否かを見極めることは困難である。初期膜厚からの変化分で推測することは可能であるが、初期膜厚がばらつく場合は所定の残膜量の見積もりがばらつくことになるからである。この研磨終了時点付近の判断に関し、センサと導電性フィルム間のギャップが研磨の振動によって微小に変化すると、センサ回路系全体の浮遊容量が変化して共振周波数全体がシフトする。このため仮に、ある設定の共振周波数になったときに閾値を設定して、研磨終点を判別する設定をしていても、全体的に共振周波数がシフトすれば、その閾値の設定による研磨終了時点の判断は難しくなる。このように、従来方法において、単調かつ連続的に増加もしくは減少変化する共振周波数において、ある値に閾値を設定していたとしても、センサと導電性フィルム間のギャップが微小に変化したり、その間に何等かの誘電体が介在したりすることで、その波形自体が全体的に上下に平行移動することは度々存在し、その結果、予め設定した閾値が意味をなさないことが度々存在した。
【0010】
渦電流センサを用いた特許文献2に記載の従来技術においても、導電性膜の膜厚変化の監視を、研磨初期から研磨終期まで渦電流の変化でみていることは、上記特許文献1に記載の従来技術とほぼ同様である。
【0011】
また、研磨初期から研磨終期まで渦電流を利用して導電性膜の膜厚を監視する上記の従来技術では、膜内で渦電流を引き起こすのに膜内に浸透する程度の十分強い磁束を作る必要があり、インダクタの形状は磁束に指向性を持たせるために三次元となっている。このため、センサを研磨装置等に組み込む上で、一般的に次のような問題がある。コイルに流す電流が大きくなって消費電力が多くなり、電源装置も大型になる。磁束が周辺に漏れてノイズが発生し易い。導線をコイル状に巻く工程等が必要になってコスト高になる。
【0012】
特許文献3に記載の渦電流センサからなる従来技術においては、まず、この従来技術で使用しているセンサ部のハードウェアについて、まず、センサコイルは導電性膜を貫通することを前提とした構成である。したがって、導電性膜を貫通しない程度の磁場しか発生しないハードウェアでは、渦電流が形成できず目的を達成できない。また、導電性膜が研磨により減少することで、渦電流が形成される領域が単調に減少し、そのため、発振周波数が単調に減少する挙動が記載されており、その発振周波数が略一定になったときを終点とみなしてこの部分を検出するとしている。即ち、この従来技術で使用するソフトウェアのアルゴリズムでは、発振周波数の変化とは、減少から略一定になる変化を、発振周波数の変化としているのであって、例えば、この発振周波数が変曲点を有するような変化をした場合には、到底検出できるアルゴリズムではない。また、図2に示すように研磨の初期から磁束が導電性膜を貫通し、常時渦電流が発生する状態である。ここで、渦電流センサは、終始渦電流を積極的に発生させ、その渦電流変化から膜厚変化に算出し直す方法を概して、渦電流センサとしている。
【0013】
そこで、膜内に形成されている微細な配線まで強い磁束を及ぼすことなく、その結果電磁誘導によって誘起される渦電流の発生を抑制して、渦電流によるジュール熱損を極小に抑えるとともに、センサと導電性膜のギャップの変化やスラリー等の誘電物質の介在常態によって、誘起される渦電流量が全体的にシフトして、閾値の設定が大幅に変化して検出しにくくなるといった事態をなくし、デバイスウェハを貫通しない程度の微細な磁場であ
っても、十分に精度よく検出することを可能にし、且つ、研磨途中等をその場で精度よく算出して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを正確に評価するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨基準点を検出する研磨途中時点の検出方法において、前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される渦電流の変化をモニタする方法であって、前記所定の導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果により、研磨除去による前記導電性膜の膜厚減少に伴って前記導電性膜を貫通する磁束が増大して導電性膜に誘起される渦電流が増加するステップと、その後の更なる研磨による膜厚減少に伴って、渦電流を生じうる実質的な導電性膜厚の減少により、前記誘起される渦電流が減少へ転じるステップとを有し、該転じるステップの変化点を検出することを特徴とする、研磨途中時点の検出方法を提供する。
【0015】
請求項2記載の発明は、導電性膜を研磨し、導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、前記インダクタで形成される一定磁束により前記所定の導電性膜に誘起される渦電流の変化をモニタすることで、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法であって、研磨初期から研磨終了の研磨途中の間に、前記所定の導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果により、研磨過程による膜厚減少に伴って研磨対象の導電性膜を貫通する磁束が増加することにより導電性膜に誘起される渦電流が上昇する過程と、更なる研磨による膜厚減少に伴って、渦電流を生じうる実質的な導電性膜厚の減少により、誘起される渦電流が減少へ転じる過程の二つを有するように、適正なインダクタ形状、インダクタ−ウェハ間距離および周波数帯域が設定されたことを特徴とする研磨装置を提供する。
【0016】
請求項3記載の発明は、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法において、前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される渦電流の変化をモニタする方法であって、研磨中、研磨除去による前記導電性膜の膜厚減少過程において、前記所定の導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果により、前記導電性膜を貫通する磁束が増大して導電性膜に誘起される渦電流が増加するステップと、その後、渦電流を生じうる実質的な導電性膜厚の減少により、誘起される渦電流が減少へ転じるステップを有し、該転じるステップの変化点を基に膜厚基準点を検出し、研磨開始から該膜厚基準点までの所要時間と、該膜厚基準点に達するまでの所定研磨量を基に、研磨中に研磨レートを算出することを特徴とする研磨状態モニタ方法を提供する。
【0017】
請求項4記載の発明は、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法において、前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される渦電流の変化をモニタする方法であって、研磨中、研磨除去による前記導電性膜の膜厚減少過程において、前記所定の導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果により、前記導電性膜を貫通する磁束が増大して導電性膜に誘起される渦電流が増加するステップと、その後、渦電流を生じうる実質的な導電性膜厚の減少により、誘起される渦電流が減少へ転じるステップを有し、該転じるステップの変化点を基に膜厚基準点を検出し、研磨開始から該膜厚基準点までの所要時間を基に、膜厚基準点から研磨終了時点までの残りの所要時間を算出し、該所要時間後に研磨を終了することを特徴とする研磨終了時点の検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明は、インダクタが高周波で駆動され、該インダクタからその高周波の周期に対応して変化する磁束が発生する。研磨により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚に至るまでは、所定の導電性膜に誘起される磁束は、前記表皮深さの領域を膜面に沿ってほぼ平行に通過する。研磨が進行して所定の導電性膜が前記表皮深さと同等もしくはその付近の膜厚になると、該所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束が生じ始める。この磁束の変化により所定の導電性膜中に電磁誘導によって誘起される渦電流量が変化する。該渦電流は膜厚が減少していくにつれて、膜を貫通する漏洩磁束が増大していくため、徐々に誘起される渦電流が増大する。この広い領域に発生した渦電流により、該所定の導電性膜内に大きな相互インダクタンスが発生する。この相互インダクタンスは、高周波インダクタ型センサにおけるセンサ回路系の自己インダクタンスを減少させるように作用する。このように、初期は、導電膜厚が減少しても、導電膜厚に投入した磁束がウェハを貫通しない程度である場合は、一定の渦電流が形成される。その後、膜厚がさらに減少して表皮深さに対応した膜厚以下になった場合、一部の磁束がウェハ上の導電性膜を貫通してウェハの裏面にまで漏洩する磁束が生じる。このとき漏洩磁束の増加とともに膜内に誘起される渦電流が大きくなる。次に、ある一定の膜厚までウェハ表面に形成される渦電流は増大するが、その後、さらに導電性膜が除去されるにしたがって、渦電流を発生する導電性膜自身が減少するため、渦電流は減少する。結果的に、単調な膜厚減少過程であるにも関わらず、一度貫通磁束増大とともに渦電流は増大し、その後さらなる膜厚の減少に伴って、渦電流を生じる体積自体が減少することに伴って急速に減少するため、誘起される渦電流に対応した相互インダクタンスには極大点が現れる。この渦電流の急速な減少により前記相互インダクタンスも急速に減少してセンサ回路系のインダクタンスは増加に転じる。このように、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さと同等もしくはその付近の膜厚になった以降において、渦電流が発生しその後、急速に減少へ転じる。
【0019】
そこで、所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される磁束変化をモニタし、研磨中の膜厚が前記所定の導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果により前記磁束変化を基に膜厚基準点を検出し、該膜厚基準点から研磨終了時点を予測するようにしたので、研磨初期には、所定の導電性膜に誘起される磁束は、前記表皮深さの領域を膜面に沿ってほぼ平行に通過する。これにより、膜内に形成されている微細な配線等まで強い磁束を及ぼすことがなく、また渦電流の発生が抑制されて該渦電流によるジュール熱損を極小に抑えることができる。研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において、所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束が生じ、この漏洩磁束により所定の導電性膜中に渦電流が誘起される。この渦電流は、膜厚の減少に伴う漏洩磁束の増加により徐々に増大し、さらなる膜厚の減少により渦電流を発生する導電性膜自身が減少するため急速に減少する。このように渦電流が減少へ転じるステップの変化点を検出することにより研磨途中時点を検出される。
【0020】
依って、この方法によれば、以下の効果を奏する。
ア.研磨終了前の途中時点を正確に検出することで、研磨終了時点を正確に予測することが可能となる。
イ.研磨終了前の途中時点を正確に検出することで、研磨終了時点で正確に止めるべく、研磨終了付近を注意深くモニタすることが可能となる。
ウ.研磨終了前の途中時点を正確に検出することで、研磨終了時点で正確に止めるために、研磨レートを小さくするなどの研磨条件へ途中で変更することが可能となる。(ソフトランディングすることが可能)
エ.研磨終了直前の途中時点を正確に検出することで、研磨終了時点で正確に止めなくても、次の中間膜の研磨条件へ移行させることが可能となる。
【0021】
請求項2記載の発明は、次の効果を奏することができる。
ア.研磨開始から研磨終了までの途中時点で、渦電流形成の急激な変化を形成することによって、研磨終了前を予測するための基準点を形成することが可能となる。
イ.適正なインダクタ形状、インダクタ−ウェハ間距離、周波数帯域が設定されることによって、導電性膜を除去する研磨過程において、磁束が導電性膜を貫通しない状態と磁束が導電性膜を貫通する状態とを形成し、その状態変化が顕著な渦電流形成の変化として現れることになり、研磨終了前の膜厚基準点を形成することが可能になる。
【0022】
請求項3記載の発明は、以下の効果を奏することができる。
ア.研磨途中の膜厚基準点において、研磨量とそのときまでの研磨時間に基づいて研磨レートを算出することで、研磨状態が安定しているか否かをモニタすることが可能となる。イ.研磨レートが異常である場合には、研磨続行を中止するなどしかるべき処置を施すことが可能となり、研磨中において、研磨状態を逐次モニタすることが可能となる。
【0023】
請求項4記載の発明は、以下の効果を奏することができる。
ア.研磨終了時点において、急に研磨終了を検知し、急に研磨を終了するのではなく、前もって途中時点を検出し、所定時間後に研磨を終了させることにより、スラリー停止準備やパッドや研磨機構部に対するリンスの準備など、研磨終了に備えて、次の動作を適切に準備・処理することが可能となり、スラリーの過剰供給など無駄な動作を抑えて、効率よく装置を稼動させることが可能となる。
イ.研磨レートが異常である場合には、研磨続行を中止するなどしかるべき処置を施すことが可能となり、研磨中において、研磨状態を逐次モニタすることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
渦電流によるジュール熱損を極小に抑えるとともに、研磨途中時点を精度よく予測・検出し、また除去すべき残膜量及び研磨レート等をその場で精度よく算出して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを正確に評価するという目的を達成するために、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨基準点を検出する研磨途中時点の検出方法において、前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される渦電流の変化をモニタする方法であって、前記所定の導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果により、研磨除去による前記導電性膜の膜厚減少に伴って前記導電性膜を貫通する磁束が増大して導電性膜に誘起される渦電流が増加するステップと、その後の更なる研磨による膜厚減少に伴って、渦電流を生じうる実質的な導電性膜厚の減少により、前記誘起される渦電流が減少へ転じるステップとを有し、該転じるステップの変化点を検出することを特徴とする、研磨途中時点の検出方法を提供することにより実現した。
【実施例1】
【0025】
以下、本発明の好適な実施例を図面に従って詳述する。図1は研磨終了時点の予測・検出装置が組み込まれた化学機械研磨装置の斜視図、図2は研磨ヘッドの拡大縦断面図、図3は研磨終了時点の予測・検出装置がプラテンに組み込まれた状態を説明するための一部破断して示す概略側面図、図4は研磨終了時点の予測・検出装置が研磨ヘッドに組み込まれた状態を説明するための一部破断して示す概略側面図である。
【0026】
まず、本発明に係る研磨終了時点の予測・検出方法とその装置の構成を、これに適用される化学機械研磨装置の構成から説明する。図1において化学機械研磨装置1は、主としてプラテン2と、研磨ヘッド3とから構成されている。前記プラテン2は、円盤状に形成され、その下面中央には回転軸4が連結されており、モータ5の駆動によって矢印A方向へ回転する。前記プラテン2の上面には研磨パッド6が貼着されており、該研磨パッド6
上に図示しないノズルから研磨剤と化学薬品との混合物であるスラリーが供給される。
【0027】
前記研磨ヘッド3は、図2に示すように、主としてヘッド本体7、キャリア8、リテーナリング9、リテーナリング押圧手段10、弾性シート11、キャリア押圧手段16及びエアー等の制御手段で構成されている。
【0028】
前記ヘッド本体7は前記プラテン2よりも小形の円盤状に形成され、その上面中央に回転軸12(図1参照)が連結されている。該ヘッド本体7は前記回転軸12に軸着されて図示しないモータで駆動され図1の矢印B方向に回転する。
【0029】
前記キャリア8は円盤状に形成され、前記ヘッド本体7の中央に配設されている。該キャリア8の上面中央部とヘッド本体7の中央下部との間にはドライプレート13が設けられており、ピン14,14を介してヘッド本体7から回転が伝達される。
【0030】
前記ドライプレート13の中央下部と前記キャリア8の中央上部との間には作動トランス本体15aが固定されており、さらに前記キャリア8の中央上部には作動トランス15のコア15bが固定され、図示しない制御部に連結されてウェハW上(図2の下方側)に形成されたCu等からなる導電性膜の研磨状態信号を該制御部に出力している。
【0031】
前記キャリア8の上面周縁部にはキャリア押圧部材16aが設けられており、該キャリア8は該キャリア押圧部材16aを介してキャリア押圧手段16から押圧力が伝達される。
【0032】
前記キャリア8の下面にはエアーフロートライン17から弾性シート11にエアーを噴射するためのエアー吹出し口19が設けられている。該エアーフロートライン17にはエアーフィルタ20及び自動開閉バルブV1を介してエアー供給源である給気ポンプ21に接続されている。前記エアー吹出し口19からのエアーの吹出しは前記自動開閉バルブV1の切替えによって実行される。
【0033】
前記キャリア8の下面にはバキューム及び必要によりDIW(純水)又はエアーを吹き出すための孔22が形成されている。該エアーの吸引は真空ポンプ23の駆動によって実行され、そして、自動開閉バルブV2をバキュームライン24に設け、該自動開閉バルブV2の切替えによって該バキュームライン24を介し、バキューム及びDIWの送給が実行される。
【0034】
前記エアーフロートライン17からのエアー送給及びバキュームライン24からのバキューム作用及びDIWの送給等は制御部からの指令信号によって実行される。
【0035】
なお、前記キャリア押圧手段16は、ヘッド本体7下面の中央部周縁に配置され、キャリア押圧部材16aに押圧力を与えることにより、これに結合されたキャリア8に押圧力を伝達する。このキャリア押圧手段16は、好ましくはエアーの吸排気により膨脹収縮するゴムシート製のエアバック25で構成される。該エアバック25にはエアーを供給するための図示しない空気供給機構が連結されている。
【0036】
前記リテーナリング9はリング状に形成され、キャリア8の外周に配置されている。このリテーナリング9は研磨ヘッド3に設けられたリテーナリングホルダ27に取り付けられ、その内周部に前記弾性シート11が張設されている。
【0037】
前記弾性シート11は円形状に形成され、複数の孔22が開穿されている。該弾性シート11は、周縁部がリテーナリング9とリテーナリングホルダ27との間で挟持されるこ
とにより、リテーナリング9の内側に張設される。
【0038】
前記弾性シート11が張設されたキャリア8の下部には、キャリア8と弾性シート11との間にエアー室29が形成されている。導電性膜が形成されたウェハWは該エアー室29を介してキャリア8に押圧される。前記リテーナリングホルダ27はリング状に形成された取付部材30にスナップリング31を介して取り付けられている。該取付部材30にはリテーナリング押圧部材10aが連結されている。リテーナリング9は、このリテーナリング押圧部材10aを介してリテーナリング押圧手段10からの押圧力が伝達される。
【0039】
リテーナリング押圧手段10はヘッド本体7の下面の外周部に配置され、リテーナリング押圧部材10aに押圧力を与えることにより、これに結合しているリテーナリング9を研磨パッド6に押し付ける。このリテーナリング押圧手段10も好ましくは、キャリア押圧手段16と同様に、ゴムシート製のエアバック16bで構成される。該エアバック16bにはエアーを供給するための図示しない空気供給機構が連結されている。
【0040】
そして、図3又は図4に示すように、化学機械研磨装置1におけるプラテン2の上部の部分又は研磨ヘッド3のキャリア8の部分に、研磨終了時点の予測・検出装置33がそれぞれ一つずつ組み込まれている。研磨終了時点の予測・検出装置33がプラテン2側に組み込まれたとき、該研磨終了時点の予測・検出装置33からの膜厚基準点等の検出信号は、スリップリング32を介して外部に出力される。
【0041】
なお、研磨終了時点の予測・検出装置33は、プラテン2の上部の部分又は研磨ヘッド3のキャリア8の部分に、それぞれ二つ以上を組み込んでもよい。研磨終了時点の予測・検出装置33を二つ以上を組み込んで、回転方向前方側の研磨終了時点の予測・検出装置33から、時系列的に膜厚情報を採取することで、ウェハW面内における導電性膜28の膜厚変化の分布情報等が得られる。
【0042】
図5は研磨終了時点の予測・検出装置33の構成例を示す図であり、(a)はブロック図、(b)は平面状インダクタの他の構成例を示す図、(c)は図(b)の平面状インダクタの断面図である。該研磨終了時点の予測・検出装置33における高周波インダクタ型センサ34の主体を構成している発振回路35は、インダクタンスLとなる二次元の平面状インダクタ36に、キャパシタンスCとなる集中定数キャパシタ37が直列に接続されて、LC回路が構成されている。前記平面状インダクタ36は、絶縁物からなる方形状等の基板36a上に、Cu等の導電物質を用いてメアンダ形に構成されている。
【0043】
該平面状インダクタ36は、図5(a)に示すスパイラル形の他に、図5(b)に示す平面状インダクタ41のように、方形状の基板41a上に、メアンダ形で構成してもよい。また、図示しない丸形のスパイラルとしてもよい。二次元の平面状インダクタ36,41は、ガラス・エポキシや紙・フェノール等の絶縁物からなる基板36a,41a上にCu等の導電膜を成膜後、エッチング等で製作することで、線幅を非常に微細化して製作することができ、全体形状も図5(c)に示すように、一辺が23mm程度の方形状等に小型化することができる。そして、平面状インダクタ36,41の小形化により微小な磁場を効率よく発生させることができ、磁場を導電性膜28の内部に深く浸透させることなく、該導電性膜28が除去される終点付近の変化挙動を精度よく検出することが可能となる。
【0044】
前記LC回路からの出力信号はオペアンプ等で構成された増幅器38に入力され、該増幅器38の出力は抵抗等で構成されたフィードバック・ネットワーク39に入力されている。フィードバック・ネットワーク39の出力信号が、平面状インダクタ36にポジティブ・フィードバックされることにより、該平面状インダクタ36を含めて発振回路35が
構成されている。
【0045】
該発振回路35は、基本的には、図6の構成例に示すように、その発振周波数帯fが、次式(1)に示すように、平面インダクタ36のインダクタンスLと集中定数キャパシタ37のキャパシタンスCで決まるコルピッツ型等の発振回路となっている。

【0046】
前記増幅器38の出力端子には、周波数カウンタ40が接続されている。該周波数カウンタ40から後述する膜厚基準点を示す検出信号等がデジタルで外部に出力される。検出信号出力をデジタルで伝送することで、ノイズの影響及び出力の減衰が防止される。また、膜厚データの管理容易性が得られる。
【0047】
前記平面状インダクタ36を含む高周波インダクタ型センサ34と該周波数カウンタ40とを含めて研磨終了時点の予測・検出装置33が構成されている。高周波インダクタ型センサ34における発振回路35と、その発振(共振)周波数の変化をモニタするための周波数カウンタ40とを近接して配置することで、該発振回路35と周波数カウンタ40間の配線・結線部分で分布定数回路を形成してインダクタンスやキャパシタンスが不要に大きくなるのが防止されて、高周波インダクタ型センサ34付近にもたらされる導電性膜28の研磨の進行に伴う磁束の変化を精度よく検出することが可能となる。
【0048】
該研磨終了時点の予測・検出装置33は、平面状インダクタ36を除いた他の構成部品ないしは回路がIC(集積回路)化されてパッケージ33aに内装されている。前記平面状インダクタ36は、薄い絶縁膜で被覆されてパッケージ33aの表面に固定されている。パッケージ化された研磨終了時点の予測・検出装置33が前記化学機械研磨装置1に組み込まれるとき、前記図3、図4に示したように、平面状インダクタ36がウェハW表面部の導電性膜28と対峙するように組み込まれる。
【0049】
また、発振回路35を構成している前記集中定数キャパシタ37はキャパシタンスが可変となっており、高周波インダクタ型センサ34は前記発振周波数帯の範囲内で、発振周波数を選択できるようになっている。
【0050】
本実施例では研磨中の所定の導電性膜28が該所定の導電性膜28の表皮深さδに対応する膜厚になった場合の磁束変化を基に後述する膜厚基準点の検出を行っている。所定の導電性膜28における表皮深さδは、該所定の導電性膜28の材質と高周波インダクタ型センサ34の発振周波数fとに依存して式(2)のように決まる。

【0051】
ω:2πf、μ:透磁率、σ:導電率である。
【0052】
そして、該表皮深さδが、所定の導電性膜28の初期膜厚よりも小さく研磨終期において埋め込み部を除いた部分の所定の導電性膜28の膜厚より大になるように高周波インダクタ型センサ34の発振周波数fが選択されている。研磨除去対象の導電性膜28の材質がCuの場合において、前記発振周波数帯は、20MHz以上が選択される。
【0053】
ここで、前記「表皮深さに対応する膜厚」及び「表皮効果によって生じる磁束変化」に
ついて、図7の(a)〜(d)を用いて説明する。図7はコイルから発生した磁場が導体膜上でどのような向き((a)〜(d)各図中下方の矢印→)に配列しているかを電磁シミュレーションした結果を示す図であり、同図(a)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、同図(b)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が1μmの場合、同図(c)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、同図(d)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が1μmの場合である。
【0054】
電磁シミュレーションの設定は、磁場を形成するインダクタは指向性を持たない平面状インダクタとした。前記「表皮深さに対応する膜厚」とは、「表皮効果によって磁束変化が生じる膜厚」のことである。センサの発振周波数が1MHzではコイルの下側に存在する導体膜上の磁束は縦方向を向いている。この周波数では、膜厚が1μm及び0.2μmであっても、導体膜内を磁束が貫通している(図7(a)、(b))。こうした導体膜内を磁束が貫通する場合は、従来例に示されているように、導体膜内部に発生する渦電流は、膜厚減少に伴って減少する。よって、1MHzの場合、1μm以下の膜厚では、単調な挙動であるため、表皮効果は現れず、「表皮深さに対応する膜厚」も少なくとも1μmよりも厚い膜厚と考えられる。
【0055】
これに対し、センサの発振周波数が40MHzでは、明らかに導体表面での磁束向きが水平であり、膜厚が1μmでは、殆ど導体内部に入り込んでいない(図7(d))。明らかに、先の発振周波数が1MHzで膜厚が1μmの場合(図7(b))と比較すると、導体膜に入り込む磁束の向きが異なることが分かる。
【0056】
しかし、発振周波数が40MHzで導体膜が0.2μmまで薄くなると(図7(c))、一部の磁束のみが導体膜内部方向へ向いている。これは導体膜がCuでも、ある薄さになると一部の磁束が導体膜内を貫通することを示している。
【0057】
この40MHzの交番変化する磁束の場合、表皮効果に対応して、導体膜内の磁束の貫通状態が変化する。貫通磁束が徐々に増加する影響で、周波数は約700Å前後まで急激に上昇する。なお、膜厚が1μm以上では磁束は殆ど貫通していない。よって、この場合、「表皮深さに対応した膜厚」は、磁束が貫通するか・しないかの境界の膜厚とすると、約1μm程度ということができる。このことからも、発振周波数を40MHzと高くし、平面状インダクタを使用すると、1μm厚みのCu導体膜内に磁束は殆ど入り込まず、これは表皮効果によるものである。
【0058】
Cu導体膜で発振周波数が40MHzの場合、Cuの導電率を58×10S/mとすると、表皮深さδは9.34μmになる。計算上は、膜厚が1μmだと磁束は導体膜内に十分入り込む計算になるが、平面状インダクタを使用しており、磁束に指向性がないことから、実際は発振周波数が40MHzの場合、膜厚が1μmでも表皮効果によって磁場は導体膜内に侵入しない。導体膜が薄くなるにつれて一部の磁束が導体膜内に入り込み、わずかに渦電流が発生する。このことより、渦電流を積極的に利用して膜厚測定するのではなく、終点付近の薄い膜厚になったときに、表皮効果により、わずかに漏洩・貫通する磁束を利用して、導体膜内に誘起される相互インダクタンスの変曲点(極大点)を利用して該導体膜の終点付近の膜厚状態をモニタすることが可能となる。
【0059】
次に、上述のように構成された研磨終了時点の予測・検出装置が組み込まれた化学機械研磨装置の研磨作用及び研磨終了時点の予測・検出方法を、図8、図9(a)〜(e)及び該図9の比較例としての図10(a)〜(e)を用いて説明する。図8は高周波インダクタ型センサにおける電磁結合で発生する磁場によるインダクタンスの変化作用を説明するための図、図9は導電性膜の研磨削除に伴う磁束及び渦電流の変化例及び膜厚基準点
の検出作用を説明するための組図であり、(a)〜(d)は導電性膜の研磨削除に伴う磁束及び渦電流の変化例を示す図、(e)は導電性膜の膜厚変化に対する共振周波数の変化例を示す特性図である。図9(a)〜(d)では、平面状インダクタ36が、図を見やすくするため、スパイラル形に表示されている。
【0060】
まず、化学機械研磨装置1における研磨ヘッド3を図示しない移動機構により所定箇所に待機中の導電性膜28が非研磨のウェハW上に載置する。そして、該研磨ヘッド3のバキュームライン24を作動させ、バキューム口19a及び孔22(バキューム孔)を介して弾性シート11下面のエアー室29を真空にし、これにより前記導電性膜28が非研磨のウェハWを吸着保持し、そして、前記移動機構により、該導電性膜28が非研磨のウェハWを吸着保持した研磨ヘッド3をプラテン2上に運び、該ウェハWを、導電性膜28が研磨パッド6に対接するようにプラテン2上に載置する。
【0061】
前記バキュームライン24はウェハW上部の導電性膜28の研磨作業が終了したとき、再び、該バキュームライン24の作動により前記ウェハWを該研磨ヘッド3によって吸着保持し、図示しない洗浄装置へ搬送するときにも用いられる。
【0062】
次いで、前記バキュームライン24の作動を解除し、図示しないポンプからエアバック25にエアーを供給して該エアバック25を膨らませる。これと同時にキャリア8に設けたエアー吹出し口19からエアー室29にエアーを供給する。これにより、エアー室29の内圧が高くなる。
【0063】
前記エアバック25の膨らみによって、前記ウェハW上部の導電性膜28とリテーナリング9が所定の圧力で研磨パッド6に押し付けられる。この状態でプラテン2を図1の矢印A方向に回転させるとともに研磨ヘッド3を図1の矢印B方向に回転させ、回転する研磨パッド6上に図示しないノズルからスラリーを供給してウェハW上部の所定の導電性膜28を研磨する。
【0064】
そして、次のように、高周波インダクタ型センサ34における平面インダクタ36で形成される磁束により研磨に伴う所定の導電性膜28の膜厚変化がモニタされて膜厚基準点が検出される。
【0065】
平面インダクタ36が発振回路35から発振される高周波で駆動され、該平面インダクタ36からその高周波の周期に対応して時間的に変化する磁束φが発生する。研磨初期において所定の導電性膜28に誘起される磁束φは、前記表皮深さδに対応する膜厚の領域のみを膜面に沿ってほぼ平行に通過し、所定の導電性膜28における表皮深さδに対応する膜厚を超えた領域への磁束φの侵入は回避される(図9(a))。また、高周波インダクタ型センサ34から発振される共振周波数も所定の導電性膜28の膜厚変化に関係なく一定に保持される(図9(e)のa領域)。
【0066】
研磨が進行して所定の導電性膜28が前記表皮深さδに対応する膜厚と同等もしくはその付近の膜厚になると、一部の磁束φが所定の導電性膜28を貫通して漏洩磁束φが生じ始める。所定の導電性膜28を貫通しない磁束φは、そのまま膜面に沿ってほぼ平行に通過する。そして、所定の導電性膜28中に貫通した漏洩磁束φ数に比例して渦電流Ieが発生する(図9(b))。
【0067】
さらに研磨が進行すると、漏洩磁束φが増えて渦電流Ieが導電性膜28の膜面に沿った広い領域に発生する(図9(c))。この広い領域に発生した渦電流Ieが、図8に示すように、さらに磁場Mを作り、その磁場Mが元の平面状インダクタ36から発生した磁束φを打ち消すように作用する。結果的に導電性膜28が形成した磁場Mによって、
相互インダクタンスLmが上昇し、元の平面状インダクタ36の見かけ上のインダクタンスLが低下する。その結果、高周波インダクタ型センサ34から発振される発振周波数fは、式(3)のように増大する。

【0068】
したがって、相互インダクタンスの発生により、センサ回路系のインダクタンスが等価的に減少して高周波インダクタ型センサ34から発振される共振周波数が上昇する(図9(e)のb、cの領域)。
【0069】
さらに研磨の進行により漏洩磁束φは増えて飽和する。しかし渦電流Ieは、所定の導電性膜28の膜厚体積の減少に伴い急速に減少する(図9(d))。この渦電流Ieの急速な減少により前記相互インダクタンスも急速に減少する。この相互インダクタンスの急速な減少は、前記式(3)におけるインダクタンスの減少分Lmの低下につながり、結果としてセンサ回路系のインダクタンスが等価的に増加し、高周波インダクタ型センサ34から発振される共振周波数が急速に低下する(図9(e)のd領域)。
【0070】
このように、研磨の進行により所定の導電性膜28が表皮深さδに対応する膜厚と同等もしくはその付近の膜厚になった以降において、渦電流Ieが発生しその後の急速な減少によりセンサ回路系のインダクタンスが一旦減少してその後増加に転じる。この挙動により高周波インダクタ型センサ34から発振される共振周波数の波形にピーク(変曲点)が発生する。このピークを基に研磨終了点手前の膜厚基準点Pが検出され、該膜厚基準点Pから研磨終了時点が予測される。所定の導電性膜28がCuの場合、膜厚基準点Pが検出された時点の残膜量は、ほぼ1000Å程度であり、該残膜量に対し仕上げ研磨等が行われて研磨を終了する。
【0071】
該仕上げ研磨としては、例えば、前記膜厚基準点Pから、該膜厚基準点Pにおける残膜量である表皮深さに対応した膜厚を所要の研磨レートで予め設定した研磨時間分研磨した後に研磨終了とする。又は、研磨初期から膜厚基準点Pが検出されるまでの時間と、該膜厚基準点Pに達するまでの研磨量から、その間における研磨レートを算出し、膜厚基準点Pにおける残膜量である表皮深さに対応した膜厚を前記研磨レートで除することで膜厚基準点P
検出後の所要研磨時間を算出する。そして、該膜厚基準点Pの検出後に、前記算出された研磨時間分だけ研磨することで研磨を終了する。
【0072】
次いで、図10(a)〜(e)の比較例を説明する。該比較例では、表皮深さδに対応する膜厚が、導電性膜28の初期膜厚よりも大になるような周波数が適用されている。このような周波数が適用されることで、研磨初期から研磨終期までの膜厚変化のモニタの間、導電性膜28に誘起される磁束φは全て該導電性膜28を貫通して絶えず漏洩磁束φが発生している。したがって、膜厚変化のモニタの間、該漏洩磁束φ数に比例した渦電流Ieが発生する(図10の(a)〜(d))。このため、この渦電流Ieにより導電性膜28と前記平面インダクタとの間に大きな相互インダクタンスが発生し、この相互インダクタンスによるインダクタンスの減少分Lmにより、センサから発振される発振周波数fは、研磨初期から前記式(3)のようになる。
【0073】
そして、研磨の進行による膜厚の減少にしたがって渦電流Ieは急激に減少し(図10の(b)から(d))、これに伴って相互インダクタンスが減少して前記式(3)中のインダクタンスの減少分Lmも減少する。この結果、センサ回路系のインダクタンスが等価的に増加してセンサから発振される共振周波数が単調減少する(図10の(e))。
【0074】
このように、比較例では、共振周波数は単調減少カーブを描くため、研磨初期からの膜厚減少量を見積もることは可能だが、研磨終了時点もしくは研磨終了点手前の状態を厳密に判別することはできない。例えば、微妙な設定により浮遊容量Cが変化したとき、全体的な図10(e)の共振周波数は、波形全体にわたって上下にシフトする。このため、仮にある設定の周波数になったときに研磨終了点とする設定をしていても、全体的に共振周波数がシフトすれば、閾値は設定できない。また、初期膜厚からの除去量の状態を渦電流変化でリアルタイムにモニタしたとしても、初期膜厚がばらついている場合、研磨終了点となる状態の膜厚もばらつくことになる。波形の特徴がないため、この場合も上記と同様に閾値は設定できない。
【0075】
図11の(a)〜(d)は、研磨対象となる導電性膜が材質及び導電率の点で異なっている2種のウェハWa、Wbについて、膜厚基準点Pとなるピークを評価した結果を示している。同図(a)はCu膜付きウェハWa、(b)はCu膜の膜厚に対する共振周波数の変化特性、(c)はタングステン(W)膜付きウェハWb、(d)はタングステン(W)膜の膜厚に対する共振周波数の変化特性をそれぞれ示す図である。図11の(b)、(d)における各縦軸のセンサ出力は共振周波数に対応する。
【0076】
Cu膜及びタングステン(W)膜のいずれも研磨の進行とともに一旦は共振周波数は増大し、その後、急激に減少してピーク(変曲点)が発生する。このピーク(変曲点)を基にそれぞれ膜厚基準点Pが検出される。この挙動は、図11(d)に示すタングステン(W)膜の場合に比べて、明らかに図11(b)に示す導電率の大きいCu膜の方が顕著である。
【0077】
図12の(a)、(b)は、研磨対象の導電性膜がCu膜の場合について膜厚と共振周波数との関係を示す図であり、(a)は研磨の進行に伴う膜厚と共振周波数との関係を示す図、(b)は静止状態における膜厚と共振周波数との関係を示す図である。図12の(a)、(b)における各縦軸のカウント値は共振周波数に対応する。
【0078】
図12(a)において、Cu膜の初期膜厚は、ほぼ1.5μm(15000Å)である。Cu膜は、研磨の進行に伴って共振周波数は膜厚が約1μm(10000Å)付近から徐々に上昇し、700Å付近で最大値を取って膜厚基準点Pが検出される。共振周波数は最大値を取った後、急激に低下する。このように、Cu膜は、膜厚基準点Pが検出された
ときの残り膜厚が精度よく検知される。
【0079】
図12(b)において、静止状態のCu膜の各膜厚に対して測定した共振周波数は、膜厚が710Åで最大値を示している。したがって、静止状態で共振周波数が最大になるCu膜の膜厚と、上記の研磨の進行中において共振周波数が最大となるCu膜の膜厚とは、ほぼ一致している。
【0080】
なお、本実施例は、前記共振周波数の他に相互インダクタンス、渦電流Ie、漏洩磁束φの変化のうちの少なくともいずれかの変化を基に膜厚基準点Pを検出することができる。相互インダクタンスの変化は前記式(3)を利用して高周波インダクタ型センサ34の発振周波数の変化から求めることができ、渦電流Ieは前記相互インダクタンスと比例関係にあることから該渦電流Ieの変化は前記相互インダクタンスの変化を用いて求めることができ、また漏洩磁束φは渦電流Ieと比例関係にあることから該漏洩磁束φの変化は前記渦電流Ieの変化を用いて求めることができる。
【0081】
上述したように、本実施例に係る研磨終了時点の予測・検出方法とその装置においては
、研磨の進行により所定の導電性膜28が表皮深さと同等もしくはその付近の研磨終了点手前の膜厚になってから膜厚基準点P検出の基になる漏洩磁束φが生じることで、該漏洩磁束φで発生する渦電流Ieによるジュール熱損を極小に抑えることができる。
【0082】
研磨の進行により所定の導電性膜28が表皮深さδに対応する膜厚と同等もしくはその付近の膜厚になった以降における渦電流Ie、相互インダクタンス、又は共振周波数の各変化中には顕著なピークが生じることから、この顕著なピークを基に研磨終了点手前の膜厚基準点Pを的確に検出することができる。したがって、該膜厚基準点Pから研磨終了時点を精度よく予測・検出することができる。
【0083】
高周波インダクタ型センサ34からの共振周波数の伝送方法を周波数カウンタ40を用いたデジタル出力としたことで、ノイズの影響及び共振周波数出力の減衰が防止されて、膜厚基準点Pを確実に検出することができる。
【0084】
高周波インダクタ型センサ34を構成している集中定数キャパシタ37をキャパシタンス可変としたことで、異なる膜種の導電性膜28に対し、表皮深さδに対応する膜厚が適切な値になるように発振周波数を容易に選択することができる。
【0085】
高周波インダクタ型センサ34の主構成要素である平面インダクタ36は、ノイズの発生及び電力消費は殆どなく、さらには比較的安価で済むことからコスト低減を図ることができる。
【実施例2】
【0086】
以下、本発明の実施例2に係るリアルタイム膜厚モニタ方法とその装置を説明する。本実施例では、前記図5の(a)、(b)、(c)に示した研磨終了時点の予測・検出装置33がリアルタイム膜厚モニタ装置として機能する。そして該リアルタイム膜厚モニタ装置33が前記図3及び図4に示したように、プラテン2もしくは研磨ヘッド3に組み込まれている。
【0087】
該リアルタイム膜厚モニタ装置33によるリアルタイム膜厚モニタ方法を説明する。前記実施例1と同様の方法により、図9(e)に示す研磨終了点手前の膜厚基準点Pが検出される。周波数カウンタ40からの膜厚基準点P出力が図示しないCPU等に入力され、該膜厚基準点Pを基に表皮深さδに対応する膜厚とほぼ同等である除去すべき残膜量、並びに既に研磨除去された膜厚量及びその所要時間から研磨レート等の各研磨データがその
場で算出され、所定の導電性膜28が適正に除去されているかがリアルタイムで評価される。
【0088】
上述したように、本実施例に係るリアルタイム膜厚モニタ方法とその装置においては、研磨終了点手前の膜厚基準点Pの検出後、該膜厚基準点Pを基に除去すべき残膜量及び研磨レート等の各研磨データをその場で精度よく算出することができて、所定の導電性膜28が適正に除去されているかを正確に評価することができる。またこれとともに漏洩磁束φで発生する渦電流Ieによるジュール熱損を極小に抑えることができる。
【0089】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施例に係る研磨終了時点の予測・検出装置が組み込まれた化学機械研磨装置の斜視図。
【図2】図1の化学機械研磨装置における研磨ヘッドの拡大縦断面図。
【図3】本発明の実施例に係る研磨終了時点の予測・検出装置がプラテンに組み込まれた状態を説明するための一部破断して示す概略側面図。
【図4】本発明の実施例に係る研磨終了時点の予測・検出装置が研磨ヘッドに組み込まれた状態を説明するための一部破断して示す概略側面図。
【図5】本発明の実施例に係る研磨終了時点の予測・検出装置の構成例を示す示す図であり、(a)はブロック図、(b)は平面状インダクタの他の構成例を示す図、(c)は図(b)の平面状インダクタの断面図。
【図6】図5の研磨終了時点の予測・検出装置における発振回路の基本的な構成例を示す図であり、(a)は構成図、(b)は図(a)の等価回路。
【図7】本発明の実施例において、コイルから発生した磁場が導体膜上でどのような向きに配列しているかを電磁シミュレーションした結果を示す図であり、(a)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、(b)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が1μmの場合、 (c)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、(d)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が1μmの場合。
【図8】本発明の実施例に係る高周波インダクタ型センサにおける電磁結合で発生する磁場によるインダクタンスの変化作用を説明するための構成図。
【図9】図1の化学機械研磨装置による導電性膜の研磨削除に伴う磁束等の変化例及び膜厚基準点の検出作用を説明するための組図であり、(a)〜(d)は導電性膜の研磨削除に伴う磁束等の変化例を示す図、(e)は導電性膜の膜厚変化に対する共振周波数の変化例を示す特性図。
【図10】図9の比較例としての組図であり、(a)〜(d)は導電性膜の研磨削除に伴う磁束及び渦電流の変化例を示す図、(e)は導電性膜の膜厚変化に対する共振周波数の変化例を示す特性図。
【図11】本発明の実施例において、研磨対象となる導電性膜が材質及び導電率の点で異なっているCu膜とタングステン(W)膜について膜厚基準点となるピークを評価した結果を示す図であり、(a)はCu膜付きウェハを示す図、(b)はCu膜の膜厚に対する共振周波数の変化特性例を示す図、(c)はタングステン(W)膜付きウェハを示す図、(d)はタングステン(W)膜の膜厚に対する共振周波数の変化特性例を示す図。
【図12】本発明の実施例において、研磨対象の導電性膜がCu膜の場合について膜厚と共振周波数との関係を示す図であり、(a)は研磨の進行に伴う膜厚と共振周波数との関係例を示す図、(b)は静止状態における膜厚と共振周波数との関係例を示す図。
【符号の説明】
【0091】
1 化学機械研磨装置
2 プラテン
3 研磨ヘッド
4 回転軸
5 モータ
6 研磨パッド
7 ヘッド本体
8 キャリア
9 リテーナリング
10 リテーナリング押圧手段
11 弾性シート
12 回転軸
13 ドライプレート
14 ピン
15 作動トランス
16 キャリア押圧手段
17 エアーフロートライン
19 エアー吹出し口
20 エアーフィルタ
21 給気ポンプ
22 孔
23 真空ポンプ
24 バキュームライン
25 エアバック
27 リテーナリングホルダ
28 導電性膜
29 エアー室
30 取付部材
31 スナップリング
32 スリップリング
33 研磨終了時点の予測・検出装置(リアルタイム膜厚モニタ装置)
34 高周波インダクタ型センサ
35 発振回路
36 平面状インダクタ
36a 絶縁性の基板
37 集中定数キャパシタ
38 増幅器
39 フィードバック・ネットワーク
40 周波数カウンタ
41 平面状インダクタ
41a 絶縁性の基板
P 膜厚基準点
W ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨基準点を検出する研磨途中時点の検出方法において、前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される渦電流の変化をモニタする方法であって、前記所定の導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果により、研磨除去による前記導電性膜の膜厚減少に伴って前記導電性膜を貫通する磁束が増大して導電性膜に誘起される渦電流が増加するステップと、その後の更なる研磨による膜厚減少に伴って、渦電流を生じうる実質的な導電性膜厚の減少により、前記誘起される渦電流が減少へ転じるステップとを有し、該転じるステップの変化点を検出することを特徴とする、研磨途中時点の検出方法
【請求項2】
導電性膜を研磨し、導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、前記インダクタで形成される一定磁束により前記所定の導電性膜に誘起される渦電流の変化をモニタすることで、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法であって、
研磨初期から研磨終了の研磨途中の間に、前記所定の導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果により、研磨過程による膜厚減少に伴って研磨対象の導電性膜を貫通する磁束が増加することにより導電性膜に誘起される渦電流が上昇する過程と、更なる研磨による膜厚減少に伴って、渦電流を生じうる実質的な導電性膜厚の減少により、誘起される渦電流が減少へ転じる過程の二つを有するように、適正なインダクタ形状、インダクタ−ウェハ間距離および周波数帯域が設定されたことを特徴とする研磨装置。
【請求項3】
導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法において、 前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される渦電流の変化をモニタする方法であって、研磨中、研磨除去による前記導電性膜の膜厚減少過程において、前記所定の導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果により、前記導電性膜を貫通する磁束が増大して導電性膜に誘起される渦電流が増加するステップと、その後、渦電流を生じうる実質的な導電性膜厚の減少により、誘起される渦電流が減少へ転じるステップを有し、該転じるステップの変化点を基に膜厚基準点を検出し、研磨開始から該膜厚基準点までの所要時間と、該膜厚基準点に達するまでの所定研磨量を基に、研磨中に研磨レートを算出することを特徴とする研磨状態モニタ方法。
【請求項4】
導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法において、
前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される渦電流の変化をモニタする方法であって、研磨中、研磨除去による前記導電性膜の膜厚減少過程において、前記所定の導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果により、前記導電性膜を貫通する磁束が増大して導電性膜に誘起される渦電流が増加するステップと、その後、渦電流を生じうる実質的な導電性膜厚の減少により、誘起される渦電流が減少へ転じるステップを有し、該転じるステップの変化点を基に膜厚基準点を検出し、
研磨開始から該膜厚基準点までの所要時間を基に、膜厚基準点から研磨終了時点までの残りの所要時間を算出し、
該所要時間後に研磨を終了することを特徴とする研磨終了時点の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−288582(P2008−288582A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117895(P2008−117895)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【分割の表示】特願2007−134707(P2007−134707)の分割
【原出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】