説明

硬化性樹脂組成物

【課題】色分かれが起こり難いレジストインキ組成物及びその硬化物を有するプリント配線板を提供することにある。
【解決手段】(A)1分子中に1個以上のカルボキシル基を有するカルボキシル基含有樹脂、(B)光重合開始剤、(C)含フッ素ブロックコポリマー及び/又はフッ化アルキル基を有するポリエーテルポリマー、(D)希釈剤、(E)着色剤、(F)エポキシ樹脂を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性、熱硬化性などの樹脂組成物、及びこの組成物を硬化させて得られる硬化物(ソルダーレジスト層、樹脂絶縁層)を有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の半導体部品の急速な進歩により、電子機器は小型軽量化、高性能化、多機能化の傾向にあり、これらに追従してプリント配線板の高密度化が進みつつある。このようなプリント配線板に用いられるソルダーレジストは、紫外線でパターン露光し、現像することにより画像形成し、熱及び光照射で仕上げ硬化(本硬化)する液状現像型ソルダーレジストが使用されている。また、環境問題への配慮から、現像液としてアルカリ水溶液を用いるアルカリ現像タイプの液状ソルダーレジストインキ(例えば、特許文献1)が主流になっている。
【0003】
このような液状ソルダーレジストインキは、プリント配線板上にスクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等によりレジストを全面塗布し、接触露光を可能にするため有機溶剤を揮発させる仮乾燥を行い、その後、露光、現像してパターン形成し、熱硬化して、耐熱性や電気絶縁性等に優れた硬化塗膜を得ている。
【0004】
例えば、カーテンコート法は、コンベアで搬送されているプリント配線板に、インクヘッドから液状ソルダーレジストインキを流下塗布する。インクヘッドには、インクタンクからインク受け器を介してポンプにより移送されたレジストインキがフィルターを通して循環・補充され、再使用される。このようにして、そのプリント配線板の全面に塗布して、ソルダーレジストインキの被覆膜の硬化膜を形成したプリント配線板を得るものである。
【0005】
このようなカーテンコーターによる塗布の場合、液状ソルダーレジストインキを低粘度に希釈する必要があり、例えば50dPa・s以下に希釈するとフタロシアニンブルーなどの着色剤が分離して表面に浮きやすくなり、インクタンクの中で、いわゆる「色分かれ」が生じやすくなることが知られている。
【0006】
特許文献1は、色分かれを抑制するために、樹脂組成物に、特定のチキソトロピー剤と親水性シリカを含有させることを提案している。
【0007】
特許文献2は、色分かれを抑制するために、銅フタロシアニンブルーに対して親水化表面処理をして、組成物中での分散を安定化させることを提案している。
【0008】
特許文献3は、色分かれを抑制するために、レジストインキの基本成分である樹脂成分、溶剤成分とともに着色剤を機械的手段により粉砕してその着色剤分散液を作り、これを用いてレジストインクを作る場合に、着色剤分散液の組成において各成分の使用割合を変更することで低粘度の着色剤分散液の製造を可能にするとともに、着色剤については、顔料等の着色剤の解砕(若しくは粉砕)のための機械的手段を従来の3本ロールから、ボール、ビーズ等のメディアを使用したミル分散方式等の微粉用粉砕機に変えると、着色剤の色素粒子をさらに微粉化でき、その粒径を平均粒径で1μm未満にし、かつ粒度分布の標準偏差を0.1〜0.2μmとすることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−96368号公報
【特許文献2】特開2002−194527号公報
【特許文献3】特開2007−133070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、色分かれが起こり難いレジストインキ組成物及びその硬化物を有するプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)光重合開始剤、(C)含フッ素ブロックコポリマー及び/又はフッ化アルキル基を有するポリエーテルポリマー、(D)希釈剤、(E)着色剤、(F)エポキシ樹脂を含有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、硬化性樹脂組成物に含フッ素ブロックコポリマー及び/又はフッ化アルキル基を有するポリエーテルポリマーを配合することにより、色分かれを抑制する効果を奏する。
【0013】
特に、これら含フッ素ブロックコポリマー及び/又はフッ化アルキル基を有するポリエーテルポリマーの配合量を特定の範囲にすることにより、色分かれを抑制することに加えて、消泡性、マーキング密着性も良好なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0015】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)光重合開始剤、(C)含フッ素ブロックコポリマー及び/又はフッ化アルキル基を有するポリエーテルポリマー、(D)希釈剤、(E)着色剤、(F)エポキシ樹脂を含有する。
【0016】
(A)カルボキシル基含有樹脂
本発明に用いられるカルボキシル基含有樹脂(A)としては、任意のカルボキシル基を有する樹脂を用いることができる。カルボキシル基を有する樹脂のうち、それ自体がエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂(A’)及びエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂(A)のいずれも好適に使用可能である。特に以下に列挙するような樹脂(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)を好適に使用できる。
【0017】
(1)不飽和カルボン酸と不飽和二重結合を有する化合物の共重合によって得られるカルボキシル基含有樹脂、
(2)不飽和カルボン酸と不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、エチレン性不飽和基をペンダントとして付加させる(例えば、グリシジルメタクリレートを付加させる)ことによって得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(3)一分子中にエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した第二級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(4)不飽和二重結合を有する酸無水物と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、一分子中に水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(5)多官能エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(6)水酸基含有ポリマーに飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、生成したカルボン酸に一分子中にエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる水酸基及びカルボキシル基含有感光性樹脂、
(7)多官能エポキシ化合物と、不飽和モノカルボン酸と、一分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と、エポキシ基と反応するアルコール性水酸基以外の1個の反応性基を有する化合物との反応生成物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、及び
(8)一分子中に少なくとも2個のオキセタン環を有する多官能オキセタン化合物に不飽和モノカルボン酸を反応させ、得られた変性オキセタン樹脂中の1級水酸基に対して飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂などが挙げられる。
【0018】
これらの中でも、一分子中に感光性の不飽和二重結合を2個以上有するカルボキシル基含有感光性樹脂、特に前記(5)のカルボキシル基含有感光性樹脂が好ましい。
【0019】
上記のようなカルボキシル基含有樹脂(A)は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数の遊離のカルボキシル基を有するため、アルカリ水溶液による現像が可能になる。
【0020】
また、上記カルボキシル基含有樹脂(A)の酸価は、40〜200mgKOH/gの範囲であり、より好ましくは45〜120mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有樹脂の酸価が40mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり、一方、200mgKOH/gを超えると現像液による露光部の溶解が進むために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの描画が困難となるので好ましくない。
【0021】
このようなカルボキシル基含有樹脂(A)の配合量は、全組成物中に、20〜60質量%、好ましくは30〜50質量%である。上記範囲より少ない場合、塗膜強度が低下したりするので好ましくない。一方、上記範囲より多い場合、粘性が高くなり、又は、印刷性等が低下するので好ましくない。
【0022】
(B)光重合開始剤
本発明に用いられる光重合開始剤(B)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;又はキサントン類;(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネイト等のフォスフィンオキサイド類;各種パーオキサイド類などが挙げられ、これら公知慣用の光重合開始剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
これらの光重合開始剤(B)の配合量は、全組成物中に、0.2〜10質量%であり、好ましくは0.5〜5質量%である。前記配合量が組成物全体量の0.2質量%未満の場合、光硬化性が低下し、露光・現像後のパターン形成が困難になるので好ましくない。一方、10質量%を超えた場合、光ラジカル重合開始剤自体の光吸収により、厚膜硬化性が低下し、またコスト高の原因となるので好ましくない。
【0024】
前記のような光重合開始剤(B)と共に、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような光増感剤を単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
さらに、可視領域でラジカル重合を開始するチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア784等のチタノセン系光重合開始剤、ロイコ染料等を硬化助剤として組み合わせて用いることができる。
【0026】
(C)含フッ素ブロックコポリマー及び/又はフッ化アルキル基を有するポリエーテルポリマー
本発明に用いられる含フッ素ブロックコポリマーとしては、フッ化アルキル基含有重合体セグメントとアクリル系重合体セグメントからなるブロックコポリマーが、日油社製の商品名:モディパーFシリーズ、例えばモディパーF200、モディパーF220、モディパーF2020、モディパーF3035、モディパーF600として市販されている。
【0027】
このような含フッ素ブロックコポリマーの配合量は、全組成物中に0.001質量%以上、好ましくは0.005〜0.15質量%未満、より好ましくは0.007〜0.1質量%である。前記配合量が0.001質量%未満では、色分かれ抑制効果が発揮されない。なお、前記配合量が0.15質量%以上では、消泡性やマーキング密着性が悪くなる。
【0028】
本発明に用いられるフッ化アルキル基を有するポリエーテルポリマーとしては、ペンダント型の短いフッ化アルキルを有したポリエーテルポリマーが、例えば、オムノバ ソリューソンズ インコーポレーティッド社製のPolyFoxシリーズ(PF−636、PF−6320、PF−651、PF−652、PF−656、PF−6520、PF−151N、PF−3320等)が市販されている。
【0029】
このようなフッ化アルキル基を有するポリエーテルポリマーの配合量は、全組成物中に0.1質量%以上、好ましくは0.1〜3.5質量%、より好ましくは0.2〜2.5質量%である。前記配合量が0.1質量%未満では、色分かれ抑制効果が発揮されない。なお、前記配合量が3.5質量%を超えると、消泡性やマーキング密着性が悪くなる。
【0030】
(D)希釈剤
本発明に用いられる希釈剤(D)は、該組成物の粘度を調整して作業性を向上させるとともに、架橋密度を上げたり、密着性などを向上するために用いられ、光重合性モノマーなどの反応性希釈剤や公知慣用の有機溶剤が使用できる。
【0031】
前記光重合性モノマーとしては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキシド誘導体のモノ又はジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール又はこれらのエチレンオキシド或いはプロピレンオキシド付加物の多価(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリジジルエーテルの(メタ)アクリレート類;及びメラミン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0032】
これらは、単独または2種以上組み合わせて使用でき、組成物の液安定性の点で親水性基含有の(メタ)アクリレート類が、また光硬化性の点で多官能性の(メタ)アクリレート類が好ましい。これらの光重合モノマーの使用範囲は、全組成物中に、20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。これより多い場合は、指触乾燥性が悪くなるので好ましくない。
【0033】
なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0034】
前記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0035】
このような有機溶剤の使用量は、コーティング方法や使用する有機溶剤の沸点により異なり、特に制限されるものでは無いが、一般的に、全組成物中に、80質量%、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下である。高沸点の有機溶剤が多量に含まれる場合、指触乾燥性が低下したり、コーティング後、仮乾燥するまでに、ダレ等を発生するので好ましくない。
【0036】
(E)着色剤
本発明において使用する着色剤(E)として、公知の無機顔料、有機顔料、有機染料を含むことができる。有機染料は、感度低下を引き起こす原因となるので、無機顔料又は有機顔料を使用することが好ましい。具体的には、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどが挙げられる。さらに、環境問題等から、ノンハロゲン系有機顔料を使用することが好ましい。
【0037】
これら顔料類の配合量は、酸化チタンを除き、一般的に組成物中に、5質量%以下である。上記範囲より多い場合、光硬化性が低下するので好ましくない。なお、酸化チタンを使用する場合は、一般的に、組成物中に15質量%以下で使用される。
【0038】
(F)エポキシ樹脂
本発明のエポキシ樹脂(F)は、公知慣用の各種エポキシ樹脂、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル化合物;テレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステルなどのグリシジルエステル化合物;ダイセル化学社製のEHPE−3150などの脂環式エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂;N,N,N’,N’−テトラグリシジルメタキシレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン類や、グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との共重合物などの公知慣用のエポキシ化合物が使用できるが、指触乾燥性、耐熱性の面から、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型もしくはビキシレノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物やトリグリシジルイソシアヌレートが特に好ましい。これらのエポキシ樹脂(F)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
これらエポキシ樹脂(F)は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)と熱硬化して、耐熱性、密着性等を向上させる。これらエポキシ樹脂(F)の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)のカルボキシル基1当量に対して、エポキシ基が0.5〜3.0当量、好ましくは、1.0〜2.0当量である。エポキシ樹脂(F)の配合量が、エポキシ基0.5当量未満の場合、未反応のカルボキシル基が残存し、硬化被膜の吸湿性が高くなってPCT耐性が低下し易くなり、また、はんだ耐熱性や耐無電解めっき性も低くなり易い。また、エポキシ樹脂(F)の配合量が、エポキシ基3.0当量を超えた場合、塗膜の現像性や硬化被膜の耐無電解めっき性が悪くなり、またPCT耐性も劣ったものとなる。
【0040】
(硬化触媒、その他の成分)
さらに、本発明の光硬化性熱硬化性樹脂組成物は、潜在性の硬化触媒として、イミダゾール塩類や三フッ化ホウ素錯体、有機金属塩等を添加することができる。又、プリント配線板の回路、即ち銅の酸化防止の目的で、アデニン、ビニルトリアジン、ジシアンジアミド、オルソトリルビグアニド、メラミン等の化合物、又はこれらの塩を添加することができる。これらの化合物の配合割合は、一般的に組成物中に、5質量%以下であり、これらを添加することにより、硬化塗膜の耐薬品性や銅箔との接着性が向上する。
【0041】
さらにまた、本発明の光硬化性熱硬化性樹脂組成物は、塗膜特性を低下させない範囲で、必要に応じて、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0042】
(用途)
以上のような組成を有する本発明の光硬化性熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて希釈して塗布方法に適した粘度に調整し、これを例えば、回路形成されたプリント配線板にスクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法等の方法により塗布し、例えば60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。
【0043】
特に、本発明の組成物は、カーテンコート法やスプレーコート法、ディップコート法などの低粘度組成物を用いる工法に有効である。
【0044】
その後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部をアルカリ水溶液により現像してレジストパターンを形成でき、さらに、活性エネルギー線を照射後加熱硬化、もしくは加熱硬化後活性エネルギー線を照射、又は、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化)させることにより、密着性、硬度、はんだ耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、電気絶縁性、耐電蝕性、解像性、耐めっき性、PCT耐性、及び耐吸湿性に優れた硬化被膜(ソルダーレジスト被膜)が形成される。特に、活性エネルギー線を照射後加熱硬化、もしくは加熱硬化後活性エネルギー線を照射する工程を取ることにより、未反応の感光基が反応し、耐電触性、耐めっき性、耐吸湿性に優れた硬化被膜を得ることができる。
【0045】
上記現像に用いるアルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。また、光硬化させるための照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが適当である。その他、レーザー光線なども活性エネルギー線として利用できる。
【実施例】
【0046】
以下、例1〜11を示して本発明を具体的に説明するが、本発明が下記例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、以下において「部」とあるのは、特に断りのない限り全て「質量部」を示す。
【0047】
合成例
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のN−680(DIC社製、エポキシ当量=215)215部を撹拌機及び還流冷却器の付いた四つ口フラスコに入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート196部を加え、加熱溶解した。次に、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン0.46部と、反応触媒としてトリフェニルホスフィン1.38部を加えた。この混合物を95〜105℃に加熱し、アクリル酸72.0部(1.0当量)を徐々に滴下し、約32時間反応させ、酸価が0.9mgKOH/gの反応生成物を得た。この反応生成物(水酸基:1当量)を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物76.0部(0.5当量)を加え、約8時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂(A)は、不揮発分65%、固形物の酸価77mgKOH/gであった。以下、このワニスを、A−1ワニスと称す。
【0048】
上記合成例で得られたカルボキシル基含有樹脂ワニス(A−1ワニス)を用いた表1に示す配合成分を、3本ロールミルで混練し、光硬化性熱硬化性樹脂組成物の各主剤を得た。また、表1に示す配合成分を、3本ロールミルで混練し、上記光硬化性熱硬化性樹脂組成物の硬化剤を得た。
【0049】
なお、得られた光硬化性熱硬化性樹脂組成物は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで、粘度が約200dPa・sとなるように調整した。
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
備考
イルガキュア907:BASF社製光重合開始剤
含フッ素ブロックコポリマー:日油社製 モディパーF600
フッ化アルキル基を有するポリエーテルポリマー:オムノバ ソリューソンズ インコーポレーティッド社製 PF−6320
TEPIC:日産化学社製、トリグリシジルイソシアヌレート
DPHA:日本化薬製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
表1に記載された評価は以下の基準による。
【0052】
[色分かれ]
カーテンコーターにて循環しながら1時間後に、目視にてタンク内の色分かれの有無を確認した。
【0053】
○:色分かれなし。
【0054】
△:タンク内の一部分に色分かれ発生。
【0055】
×:タンク内の大部分に色分かれ発生。
【0056】
[消泡性]
カーテンコーターにて循環しながら10分後に、タンク内及び基板(回路厚:50μm)塗布後の消泡性を確認した。
【0057】
○:タンク内及び基板塗布後共に消泡性良好。
【0058】
△:タンク内にて若干の泡立ちあり。ただし基板塗布後の消泡性良好。
【0059】
×:タンク内の泡立ちあり。また、基板塗布後の消泡性も悪い。
【0060】
[マーキング密着性]
ソルダーレジストを形成した基板に、マーキングインキを印刷し硬化した。
【0061】
得られたマーキングについて、9Hの鉛筆を用いて、手で10往復後にマーキングの剥がれの有無を確認した。
【0062】
○:マーキングの剥がれなし。
【0063】
△:マーキングの剥がれがほとんどなし。
【0064】
×:マーキングの剥がれ多くあり。
【0065】
表1から、本発明に係るフッ素含有添加剤を配合した例1〜10はいずれも色分かれが発生しなかった。特に、例1〜4、例6〜9は、消泡性、マーキング密着性にも優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に1個以上のカルボキシル基を有するカルボキシル基含有樹脂、(B)光重合開始剤、(C)含フッ素ブロックコポリマー及び/又はフッ化アルキル基を有するポリエーテルポリマー、(D)希釈剤、(E)着色剤、(F)エポキシ樹脂を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物を、硬化させて得られるソルダーレジスト層及び/又は樹脂絶縁層を有することを特徴とするプリント配線板。

【公開番号】特開2011−232709(P2011−232709A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105650(P2010−105650)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【Fターム(参考)】