説明

硬化性組成物

【課題】高誘電率かつ絶縁性に優れた薄膜を与え得る硬化性組成物に関するものであり、さらに当該組成物を用いて形成した薄膜をゲート絶縁膜として適用し、良好な特性を示す薄膜トランジスタを提供することである。
【解決手段】A)ポリシロキサン系樹脂、B)有機金属化合物、C)有機溶剤を必須成分として含有し、有機金属化合物の含有率がポリシロキサン系樹脂に対して10〜80重量%である硬化性組成物により達成でき、該組成物からなる膜をゲート絶縁膜として用いた薄膜トランジスタは良好な特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン化合物を含有する硬化性組成物であり、該組成物は高誘電率かつ絶縁性に優れる薄膜と成すことが可能であり、薄膜トランジスタのゲート絶縁膜として有用である。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶ディスプレイ等で主に用いられるaSiTFTの代替として、ペンタセン、ポリチオフェン化合物を用いる有機TFTやZnO化合物を用いる酸化物TFT(特許文献1)が印刷プロセス、低温プロセスを視野に入れた次世代薄膜トランジスタとして提案されている。しかし有機TFTによるデバイス実用化のためには様々な課題があり、その課題の一つとして挙げられる移動度の向上を狙いとした半導体材料開発、デバイス開発が盛んに行われている。
【0003】
TFTの移動度向上に寄与する因子は複数あるが、その一つとしてゲート絶縁膜の高誘電率化が挙げられ、シリコン系ポリマー(特許文献2)、フッ素系ポリマー(特許文献3)などの様々な材料を絶縁膜として用いたトランジスタが提案されているが、半導体特性として未だ満足するものが得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−158147号公報
【特許文献2】特開2007−43055号公報
【特許文献3】WO2009/129912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記事情から、本発明の目的は高誘電率でありかつ絶縁性に優れた薄膜と成すことが出来る硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討した結果、下記特長を有する樹脂組成物を用いることにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の構成を有するものである。
【0007】
1). A)ポリシロキサン系樹脂、B)有機金属化合物、C)有機溶剤を必須成分として含有し、有機金属化合物の含有率がポリシロキサン系樹脂に対して10〜80重量%であることを特徴とする硬化性組成物。
【0008】
2). 硬化性組成物を硬化して得られる薄膜の誘電率が3.5以上であることを特徴とする1)に記載の硬化性組成物。
【0009】
3). 有機金属化合物がチタニウム化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物の群から選ばれる一種であることを特徴とする1)または2)に記載の硬化性組成物。
【0010】
4). ポリシロキサン系樹脂がヒドロシリル化反応性樹脂であることを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0011】
5). ポリシロキサン系樹脂が下記一般式(I)
【0012】
【化1】

【0013】
(式中Rは水素原子または炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい)で表される構造を含有する化合物であることを特徴とする1)〜4)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0014】
6). ポリシロキサン系樹脂が光重合性を有することを特徴とする1)〜6)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0015】
7). ポリシロキサン系樹脂がエポキシ基、架橋性ケイ素基および(メタ)アクリロイル基からなる群から選択される少なくとも一種である基を有することを特徴とする5)に記載の硬化性組成物。
【0016】
8). エポキシ基が、脂環式エポキシ基であることを特徴とする7)に記載の硬化性組成物。
【0017】
9). 架橋性ケイ素基が、アルコキシリル基であることを特徴とする7)に記載の硬化性組成物。
【0018】
10). アルカリ現像性を有することを特徴とする1)〜9)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0019】
11). ポリシロキサン系樹脂が下記構造式(X1)および/または(X2)
【0020】
【化2】

【0021】
で表される構造を含有する化合物であることを特徴とする1)〜10)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0022】
12). 1)〜11)のいずれかに記載の硬化性組成物をゲート絶縁膜の材料として用いた薄膜トランジスタ。
【0023】
本発明によれば、製膜性に優れ、高誘電率かつ絶縁性に優れた薄膜およびこれを用いて形成した薄膜トランジスタを与え得る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細を説明する。
本発明の硬化性組成物は、製膜性に優れ高誘電率でありかつ絶縁性に優れた薄膜と成すことが可能であり、該組成物は薄膜トランジスタのゲート絶縁膜として有用であり、該組成物をゲート絶縁膜として用いた薄膜トランジスタは良好な特性を与え得る。
【0025】
(硬化性組成物について)
本発明の硬化性組成物について説明する。
本発明の硬化性組成物は溶液で塗布することが可能で、優れた製膜性を有し、かつ高誘電率で絶縁性に優れる薄膜が得られる。
【0026】
(成分A)
本発明の必須成分であるポリシロキサン系樹脂については、形成される薄膜において、絶縁性に優れるという観点より、ポリシロキサン系化合物であることが好ましく、シロキサン単位(Si−O−Si)を含有する化合物、重合体を示し、構造上特に限定されるものではない。
【0027】
また、これら化合物中のシロキサン単位のうち、構成成分中T単位(XSiO3/2)、またはQ単位(SiO4/2)の含有率が高いものほど得られる硬化物は硬度が高くより耐熱信頼性に優れ、またM単位(XSiO1/2)、またはD単位(XSiO2/2)の含有率が高いものほど硬化物はより柔軟で低応力なものが得られる。
【0028】
また得られた薄膜についてトランジスタ製造プロセス時の耐溶剤性、耐熱性に優れるという観点より、硬化性を有しているものが好ましい。また硬化反応についても様々な硬化反応性を有するポリシロキサン系樹脂があり、例えばSiH基およびアルケニル基によるヒドロシリル化反応、エポキシ基、オキセタニル基、加水分解性ケイ素基、ビニルエーテル基によるカチオン重合反応、アクリル基、メタクリル基などのラジカル重合反応、水酸基およびイソシアネート基を有しウレタン架橋反応、アミノ基または水酸基およびカルボキシル基を有し縮合アミド、エステル縮合反応等が挙げられる。
【0029】
得られる薄膜がプロセス耐性に優れるという観点より、ヒドロシリル化反応、カチオン重合反応、ラジカル重合反応が好ましく、未反応基が生成しにくく絶縁性に優れる薄膜が得られやすいという観点よりヒドロシリル化反応を架橋反応とするものが好ましく、光エネルギーにより短時間で硬化できるという観点より、カチオン重合反応、ラジカル重合反応が好ましく、硬化収縮が小さいという観点よりエポキシ基、オキセタニル基等のカチオン重合反応が好ましい。
【0030】
(ヒドロシリル化反応性組成物について)
ヒドロシリル化反応性組成物としては、アルケニル基とSiH基およびヒドロシリル化触媒を含有している組成物であれば特に限定はされない。
【0031】
アルケニル基を有する化合物については、ポリシロキサン化合物、有機化合物にかかわらず特に限定なく使用することができる。アルケニル基を有する直鎖状のポリシロキサンの具体例としては、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリもしくはオリゴシロキサン、側鎖にビニル基を有するポリもしくはオリゴシロキサン、テトラメチルジビニルジシロキサン、ヘキサメチルトリビニルトリシロキサン、上記SiH基を含有する環状シロキサンの例示でSiH基をビニル基、アリル基等のアルケニル基に置換したものなどが例示される。
【0032】
アルケニル基含有有機化合物の例としては、ポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素としてC、H、N、O、Sおよびハロゲンからなる群から選ばれる原子より構成される化合物であって、1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する有機化合物であれば特に限定されない。またSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。
【0033】
上記有機化合物は、有機重合体系の化合物と有機単量体系化合物に分類でき、有機重合体系化合物としては例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の化合物を用いることができる。また有機単量体系化合物としては例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系:直鎖系、脂環系等の脂肪族炭化水素系:複素環系の化合物およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0034】
化合物の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロへキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3−ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(ビニルオキシ)アダマンタン、ジシクロペンタジエン、ビニルシクロへキセン、1,5−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、2,5−ジアリルフェノールアリルエーテル、およびそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイドなどが挙げられる。
【0035】
またSiH基を有する化合物として、ジメチルヒドロシリル基で末端が封鎖されたポリもしくはオリゴシロキサン、側鎖にSiH基を有する環状、鎖状のポリもしくはオリゴシロキサン等が挙げられる。
【0036】
中でも環状シロキサンの具体例としては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−メチルー3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3−ジメチルー5,7−ジハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3−ジプロピル−5,7−ジハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−7−ヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等が例示される。特に入手性の観点より、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。
【0037】
また強靭な薄膜が得られるという観点より、あらかじめポリシロキサン化合物同士または有機化合物とポリシロキサン化合物とを部分的に反応させているオリゴマーも用いることが好ましい。この一部架橋させる反応としては特には限定されるものではないが、加水分解縮合と比較して反応後に電気的および熱的に安定なC−Si結合を形成し、また反応制御が容易で未架橋基が残りにくいという観点より、ヒドロシリル化反応を適用することが好ましい。
【0038】
部分架橋させるモノマーとしては特に限定されるものではなく、上記SiH基を有するシロキサン化合物とアルケニル基を有するシロキサン化合物または有機化合物を適宜組み合わせて用いることができる。ヒドロシリル化反応させる場合の触媒としては、公知のヒドロシリル化触媒を用いればよい。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0039】
(光重合性組成物について)
光エネルギーにより短時間で硬化できる観点より光重合性を有しているものも好適に用いることができる。光重合反応としては、カチオン重合反応、ラジカル重合反応が挙げられる。
【0040】
カチオン重合性組成物としては、特にカチオン重合性官能基を有する化合物を含有する硬化性組成物を示す。カチオン重合性官能基としては、特に限定されるものではないが、例えばエポキシ基、オキセタニル基、加水分解性ケイ素基、ビニルエーテル基などが挙げられ、カチオン重合性が高い観点より、脂環式エポキシ基、オキセタニル基、アルコキシシリル基、SiH基等が好ましく、入手性の観点より、エポキシ基がさらに好ましく、反応性に優れるという観点より脂環式エポキシ基が好ましい。
【0041】
またラジカル重合性組成物としては、特にラジカル重合性官能基を有する化合物を含有する硬化性組成物を示す。ラジカル重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられ、反応性の観点より、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
【0042】
特に耐熱性が高く、絶縁耐圧性に優れるという観点より、上記に例示するカチオン重合性官能基およびラジカル重合性官能基が導入されているポリシロキサン系化合物が好ましい。導入する方法は特には限定されないが、反応後に電気的および熱的に安定なC−Si結合を形成し、また反応制御が容易で未架橋基が残りにくいという観点より、ヒドロシリル化反応を用いて導入する方法が好ましい。
【0043】
官能基導入に用いる化合物としては特に限定されるものではなく、上記のSiH基を有するポリシロキサン化合物とヒドロシリル化反応性を有するアルケニル基とカチオン重合性官能基またはラジカル重合性官能基を同一分子上に有する化合物を適宜組み合わせて用いることができる。
【0044】
(光重合開始剤)
本発明の硬化性組成物において光重合性を有するものの場合、適宜光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤を特に限定せず使用できる。
光カチオン重合開始剤としては、金属フルオロ硼素錯塩及び三弗化硼素錯化合物、ビス(ペルフルオルアルキルスルホニル)メタン金属塩、ビス(ペルフルオルアルキルスルホニル)メタン金属塩、アリールジアゾニウム化合物、VIa族元素の芳香族オニウム塩、Va族元素の芳香族オニウム塩、IIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート、チオピリリウム塩、MF6陰イオンの形のVIa元素、アリールスルホニウム錯塩、芳香族ヨードニウム錯塩及び芳香族スルホニウム錯塩、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビスヘキサフルオロ金属塩(例えば燐酸塩、砒酸塩、アンチモン酸塩等)、陰イオンがB(Cである芳香族ヨードニウム錯塩及び芳香族スルホニウム錯塩の一種以上が包含される。
【0045】
好ましい陽イオン系活性エネルギー線カチオン重合開始剤には、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウム又はヨードニウム塩並びにII族、V族及びVI族元素の芳香族オニウム塩が包含される。
【0046】
これらの塩のいくつかは、FX−512(3M社)、UVR−6990及びUVR−6974(ユニオン・カーバイド社)、UVE−1014及びUVE−1016(ジェネラル・エレクトリック社)、KI−85(デグッサ社)、SP−152及びSP−172(旭電化社)並びにサンエイドSI−60L、SI−80L及びSI−100L(三新化学工業社)、WPI113及びWPI116(和光純薬工業社)、RHODORSIL PI2074(ローディア社)として商品として入手できる。
【0047】
また光ラジカル開始剤の場合には、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾイン系化合物、ビイミダゾール系化合物、α−ジケトン系化合物、チタノセン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物、ケタール系化合物、アゾ系化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン系化合物、ジスルフィド系化合物、チウラム化合物類、フルオロアミン系化合物等が用いることができる。
【0048】
アセトフェノン系化合物の具体例としては、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4'−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2'−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,2−ジメトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−(4'−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4'−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチループロピオニル)−ベンジル]フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オン等が挙げられる。
【0049】
アシルフォスフィンオキサイド系化合物の具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0050】
オキシムエステル系化合物の具体例としては、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0051】
ベンゾイン系化合物の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−ベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。
【0052】
ベンゾフェノン系化合物の具体例としては、ベンジルジメチルケトン、ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0053】
α−ジケトン系化合物の具体例としては、ジアセチル、ジベンゾイル、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
【0054】
ビイミダゾール系化合物の具体例としては、2,2'−ビス(2−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール等が挙げられる。
【0055】
多核キノン系化合物の具体例としては、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン等が挙げられる。
【0056】
キサントン系化合物の具体例としては、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,5−ジエチルジオキサントン等が挙げられる。
【0057】
トリアジン系化合物の具体例としては、1,3,5−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2'−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4'−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2'−メトキシフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4'−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(2'−フリルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4'−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3',4'−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4'−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2'−ブロモ−4'−メチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2'−チオフェニルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0058】
特に薄膜硬化性に優れるという観点より、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシー2−メチループロピオニル)−ベンジル]フェニル〕−2−メチループロパンー1−オン、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)が好ましい。
【0059】
特に硬化物が透明性に優れるという観点より、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4'−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2'−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,2−ジメトキシアセトフェノンが好ましい。
【0060】
またこれらの重合開始剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0061】
光重合開始剤の使用量は、硬化性組成物中の樹脂成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の量である。光重合開始剤量が少ないと硬化が不十分であり好ましくなく、開始剤量が多いと液状時の保存安定性に欠けるために好ましくない。
【0062】
(増感剤)
本発明の硬化性組成物には、光エネルギーで硬化させる場合には、光の感度向上のおよびg線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)と言われるような高波長の光に感度を持たせるために、適宜、増感剤を添加する事ができる。これら増感剤は、上記カチオン重合開始剤及び/またはラジカル重合開始剤等と併用して使用し、硬化性の調整を行うことができる。用いることができる化合物には、アントラセン系化合物、チオキサントン系化合物などが挙げることができる。
【0063】
アントラセン系化合物としては具体的には、アントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、1,4−ジメトキシアントラセン、9−メチルアントラセン、2−エチルアントラセン、2−tert−ブチルアントラセン、2,6−ジ−tert−ブチルアントラセン、9,10−ジフェニル−2,6−ジ−tert−ブチルアントラセン等が挙げられる。
【0064】
特に入手しやすい観点より、アントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン等が好ましい。また硬化物の透明性に優れる観点からはアントラセンが好ましく、硬化性組成物との相溶性に優れる観点からは9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン等が好ましい。
【0065】
チオキサントン系化合物の具体例としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,5−ジエチルジオキサントン等が挙げられる。
【0066】
またこれらの増感剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
また、樹脂構造中に下記一般式(I)
【0067】
【化3】

【0068】
(式中Rは水素原子または炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい)で表される構造を含むことにより、構造上緻密となり耐薬品性、耐熱性に優れる平坦化膜となりうる観点より好ましい。
【0069】
当該構造を硬化性組成物に導入する手法としては特に限定されないが、汎用のイソシアヌル環含有化合物を添加する手法が挙げられる。イソシアヌル環含有化合物としては、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(3−メルカプトプロピオニロオキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられ、樹脂組成物の架橋反応に応じて適宜選択して使用することができる。
【0070】
ヒドロシリル化反応を硬化反応とする硬化性組成物では、アルケニル基を有するトリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートが好適である。
【0071】
カチオン重合反応を硬化反応とする硬化性組成物では、トリグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが好ましい。
【0072】
ラジカル重合反応を硬化反応とする硬化性組成物では、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(3−メルカプトプロピオニロオキシエチル)イソシアヌレートが好適である。
【0073】
またさらに上記汎用イソシアヌル環含有化合物とその他化合物とをあらかじめ一部反応させた化合物も適用することができる。ポリシロキサン系化合物に導入する場合には、SiH基を有するポリシロキサン化合物と上記アルケニル基を有するイソシアヌル環化合物とをあらかじめヒドロシリル化反応させた化合物や上記アルコキシシリル基を有するイソシアヌル環含有化合物やエポキシ基を有するイソシアヌル環含有化合物とアルコキシシリル基を有するポリシロキサン系化合物とを加水分解縮合によりあらかじめ反応させた化合物を用いることができ、相溶性の観点より好ましく、得られる硬化物の耐薬品性、耐熱性に優れるという観点よりあらかじめヒドロシリル化反応させた化合物を用いるものが好ましい。
【0074】
また光重合性を有する組成物の場合、アルカリ現像性を有しているものがフォトリソグラフィーにより微細なパターニングが形成できる観点より好ましい。アルカリ現像性を発現するには、構造中にカルボキシル基、フェノール基、スルホン酸基などといった酸性基を有しているものが挙げられるが、その中でも下記構造式(X1)および/または(X2)
【0075】
【化4】

【0076】
を有するものはアルカリ現像性を有しかつ透明性、耐熱性に優れるという観点より好ましい。
【0077】
(成分B)
本発明の硬化性組成物において使用する有機金属化合物は特に限定せず使用することができる。具体的には、絶縁特性に優れ、高誘電率を示す有機金属化合物であるチタニウム化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、ハフニウム化合物等を用いることができる。
【0078】
チタニウム化合物としては、例えば、チタニウム(IV)n−ブトキシド、チタニウム(IV)t−ブトキシド、チタニウム(IV)エトキシド、チタニウム(IV)2−エチルヘキソキシド、チタニウム(IV)イソプロポキシド、チタニウム(IV)(ジイソプロポキシド)ビスアセチルアセトナート、チタニウム(IV)オキシドビス(アセチルアセトナート)、トリクロロトリス(テトラヒドロフラン) チタニウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)チタニウム(III)、(トリメチル)ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウム(IV)、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド(IV)、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキシド(IV)、テトラクロロビス(シクロヘキシルメルカプト)チタニウム(IV)、テトラクロロビス(テトラヒドロフラン)チタニウム(IV)、テトラクロロジアミンチタニウム(IV)、テトラキス(ジエチルアミノ)チタニウム(IV)、テトラキス(ジメチルアミノ)チタニウム(IV)、ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル) ジカルボニルチタニウム(II)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(ペンタメチルシクロペタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)オキソチタニウム(IV)、クロロチタニウムトリイソプロポキシド、シクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド、ジクロロビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)チタニウム(IV)、ジメチルビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウム(IV)、ジ( イソプロポキシド)ビス(2 ,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)チタニウム(IV)などを用いることができる。
【0079】
また、ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウム(IV)n−ブトキシド、ジルコニウム(IV)t−ブトキシド、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウム(IV)イソプロポキシド、ジルコニウム(IV)n−プロポキシド、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナート、ジルコニウム(IV)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ジルコニウム(IV)トリフルオロ
アセチルアセトナート、テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)ジルコニウム(IV)、などを用いることができる。
【0080】
ハフニウム化合物としては、例えば、ハフニウム(IV)n−ブトキシド、ハフニウム(IV)t−ブトキシド、ハフニウム(IV)エトキシド、ハフニウム(IV)イソプロポキシド、ハフニウム(IV)イソプロポキシドモノイソプロピレート、ハフニウム(IV)アセチルアセナート、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウムなどを用いることができる。
【0081】
また、アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、アルミニウムトリフルオロアセ
チルアセトナート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)アルミニウムなどを用いることができる。
【0082】
組成物中でも安定性が高くハンドリング性が確保でき、かつ加水分解反応性に優れることより有機金属化合物のなかでも、金属アルコキシド化合物が好ましい。
さらにアルコキシド化合物のなかでも加熱後硬化物中に残渣が残りにくく良質な膜が得られやすいという観点より、炭素数が2〜6のアルコキル基が好ましい。
【0083】
特にこの中でも、絶縁性に優れ、低リーク電流な薄膜が形成しやすいという観点より、アルミ化合物である事が好ましく、また高誘電率な薄膜が得られやすいという観点よりチタン化合物を用いる事が好ましい。
【0084】
本発明の有機絶縁体組成物において、有機金属化合物の含量はポリシロキサン系化合物に対して30〜70重量%、さらには35〜65重量%であることが好ましい。有機金属化合物の含量が少ないと誘電率向上効果を得ることができず、有機金属化合物の含量が多すぎると、均一相の組成物を得ることができないか、製造された素子の漏れ電流が増加してしまい、好ましくない。
【0085】
(成分C)
本発明の硬化性組成物において樹脂組成物を均一に塗布するために溶剤を使用することが好ましい。使用できる溶剤は特に限定されるものではなく具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)、エチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶剤を好適に用いることができる。
【0086】
特に均一な膜が形成しやすい観点より、トルエン、テトラヒドロフラン、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、等が好ましい。
【0087】
使用する溶剤量は適宜設定できるが、用いる樹脂組成物1gに対しての好ましい使用量の下限は0.1gであり、好ましい使用量の上限は10gである。使用量が少ないと、低粘度化等の溶剤を用いることの効果が得られにくく、また、使用量が多いと、材料に溶剤が残留して熱クラック等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり工業的利用価値が低下する。これらの、溶剤は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶剤として用いることもできる。
【0088】
(その他添加剤)
本発明の硬化性組成物には、その他、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤、物性調整剤等を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0089】
(薄膜トランジスタについて)
本発明で得られる硬化性組成物をゲート絶縁膜の材料として用いた薄膜トランジスタとは、電界効果トランジスタ(FET)を示し、ソース、ドレイン、ゲート電極から形成されている3端子型、およびバックゲートを含む4端子型のトランジスタのことであり、ゲート電極に電圧印加することで発生するチャネルの電界によりソース/ドレイン間の電流を制御する薄膜型のトランジスタを示す。
【0090】
薄膜トランジスタ構造としては、ゲート電極の配置に関してボトムゲート型、トップゲート型、さらにはソース/ドレイン電極の配置に関し、ボトムコンタクト型、トップコンタクト型など適用する表示デバイス構造に応じて様々な組み合わせ、配置で設計可能であり、特にはその構造は限定されない。
【0091】
薄膜トランジスタの半導体層種として様々な形態のものが提案されており、アモルファスシリコン(aSi)、ポリシリコン(pSi)、微結晶シリコン(μ−cSi)等のシリコン系半導体、ZnO、InGaZnOなどの酸化物系半導体やペンタセン、オリゴチオフェン、フタロシアニンなどの化合物を用いる有機半導体、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等を用いる炭素系半導体などが代表的なものとして挙げられ、特に限定されず適用できる。その中でも低温プロセスでありプラスチックフィルム上で形成しやすいという観点から、有機半導体を用いるものが好ましい。
【0092】
また半導体層の形成方法に関しては、CVD法、スパッタリング、蒸着、塗布など様々な工法が提案されており、特に限定されない。低温プロセスでプラスチックフィルム上での形成がしやすいという観点よりスパッタ、蒸着、塗布法で形成できることが好ましく、印刷プロセスのような簡便なプロセスを用いて量産できることよりコストメリットの観点から塗布法で形成できるものがより好ましい。
【0093】
電極材料に関しては、特に限定せず使用することができるが、簡便に入手できるAu、Al、Pt、Mo、Ti、Cr、Ni、Cu、ITO、PEDOT/PSS等の導電性高分子、導電ペースト、メタルインクなどが好適に用いられる。抵抗が低く、高い導電性を得られることよりAl、Mo、Ti、Cr、Ni、Cuなどが好ましく、また透明性が必要な箇所に適用できる観点からは、ITO、PEDOT/PSSが好ましく、電極表面が酸化されにくくの安定性に優れるという観点からは、Au、Ptが好ましく、印刷プロセスにより形成できることよりPEDOT/PSS等の導電性高分子、導電ペースト、メタルインクが好ましく用いられる。
【0094】
(絶縁膜の形成方法)
当該硬化性組成物を用いるゲート絶縁膜の形成方法は特に限定されるものではなく、スピンコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、スクリーンコーティング、スプレーコーティング、スピンキャスティング、フローコーティング、スクリーン印刷、インクジェットまたはドロップキャスティングなどの方法で成膜することができる。また成膜する基材の状態に合わせ適宜、溶剤による粘度調整、界面活性剤による表面張力調整を行っても良い。またこの硬化性組成物において、熱硬化性、光硬化性、湿気硬化等特に限定されるものではない。熱硬化の際、加熱温度は特に限定されるものではない。
【0095】
(誘電率、リーク電流)
薄膜トランジスタにおいてより高移動度のトランジスタとするためには、ゲート絶縁膜の誘電率が高いものが好ましい。ポリシロキサン系化合物は絶縁性、耐電圧性に優れることからゲート絶縁膜としてよく適用されるが材料の性質上一般に誘電率が低く3.0以下のものが多い。ただし良好なトランジスタとして機能する為には3.5以上である事が好ましく、さらにゲート容量を稼ぎ高い移動度が発現でき得るという観点より4.0以上がさらに好ましい。
【0096】
またトランジスタとしてON/OFF時の電流比が高いものが特性として好ましく、ゲート絶縁膜においてリーク電流が低いものほどトランジスタとしてOFF時の電流が低くでき、よりON/OFF時の電流比の優れたトランジスタとなり得る。ゲート絶縁膜として好適に用いる事ができるリーク電流値としては、5000Åの膜厚において5.0nA/cm以下である事が好ましく、3.0nA/cm以下であるものがさらに好ましい。
【0097】
本願発明の硬化性組成物をゲート絶縁膜として用いるとこれら特性を満たすゲート絶縁膜を得ることが可能であり、本願発明の硬化性組成物をゲート絶縁膜に用いることによりON/OFF時の電流比が高いく良好な特性を有する薄膜トランジスタを得ることが出来る。
【実施例】
【0098】
当該発明の手法を用いて下記実施例および比較例で作成したコンデンサについて、静電容量、およびリーク電流を測定し誘電率を算出した結果を表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
この結果からもわかるように本発明による硬化性組成物から、高誘電率かつ優れた絶縁性を有する薄膜が得られている事がわかる。
【0101】
(膜厚測定)
実施例および比較例において作成した薄膜の膜厚を段差計(Dektak6M、アルバック製)用いて測定した。
【0102】
(静電容量測定)
半導体パラメーターアナライザ(Keithley4200)を用い1MHz、10V印加時での実施例および比較例で作成した薄膜の静電容量(F)を測定した。
【0103】
(リーク電流測定)
半導体パラメーターアナライザ(Keithley4200)を用い0〜30V印加時の実施例および比較例で作成した薄膜中の漏れ電流量を測定し、20V印加時の単位面積当たりの電流値をリーク電流値(nA/cm)とした。
【0104】
(比誘電率算出)
上記測定より得られた膜厚および静電容量より比誘電率を下記式より算出した。
【0105】
ε=C×t/ε×A
C:静電容量(F)
ε:真空の誘電率(8.85E−12)
t:膜厚(m)
A:面積(m
(製造実施例1)
300mL四つ口フラスコにトルエン72.4g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン72.4gを入れて気相部を窒素置換した後、内温105℃とし、トリアリルイソシアヌレート10g、トルエン10g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0063gの混合液を滴下した。H−NMRでアリル基が消失したことを確認し、冷却により反応を終了した。溶剤のトルエンを減圧留去し、ポリシロキサン系化合物Aを得た。H−NMR測定により、得られたポリシロキサン系化合物AよりSiH基由来のピークが確認されており、SiH基を有するポリシロキサン化合物であることがわかる。
【0106】
得られたポリシロキサン系化合物A1g、トリアリルイソシアヌレート0.73g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0017g、アルミニウムトリブトキシド0.5g、1−エチニルシクロヘキサノール0.0017g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤、PGMEA)8.0gを混合し、樹脂組成物1とした。
【0107】
(製造実施例2)
製造実施例1で得られたポリシロキサン化合物A1g、トリアリルイソシアヌレート0.73g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0017g、チタニウムテトラブトキシド0.5g、1−エチニルシクロヘキサノール0.0017g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤、PGMEA)8.0gを混合し、樹脂組成物2とした。
【0108】
(製造実施例3)
製造実施例1で得られたポリシロキサン化合物A1g、トリアリルイソシアヌレート0.73g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0017g、ジルコニウムテトラブトキシド0.5g、1−エチニルシクロヘキサノール0.0017g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤、PGMEA)8.0gを混合し、樹脂組成物3とした。
【0109】
(製造実施例4)
300mL四つ口フラスコにトルエン72.4g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン72.4gを入れて気相部を窒素置換した後、内温105℃とし、ジアリルイソシアヌレート15g、トルエン10g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0063gの混合液を滴下した。H−NMRでアリル基が消失したことを確認し、冷却により反応を終了した。
【0110】
未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを減圧留去し、再びトルエン70gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃とし、トルエン5g、ビニルシクロヘキセンオキシド5gの混合液を滴下した。H−NMRでビニル基が消失したことを確認し、冷却により反応を終了した。溶剤のトルエンを減圧留去し、ポリシロキサン系化合物Bを得た。H−NMR測定により、エポキシ基由来のピークが確認されており、エポキシ基を有するポリシロキサン化合物であることがわかる。
【0111】
得られたポリシロキサン系化合物B1g、ヨードニウム塩系カチオン重合開始剤(BBI−102、みどり化学製)0.04g、アルミニウムトリブトキシド0.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤、PGMEA)8.0gを混合し、樹脂組成物4とした。
【0112】
(実施例1〜4)
Mo膜(2000Å)付ガラス基板上に製造実施例1〜4で得られた樹脂組成物1〜4をそれぞれ1000rpm、20secの条件でスピンコートにより塗布し、250℃、1hでポストベイクし薄膜を形成した。真空蒸着製膜装置により厚さ500Å、3mmφのアルミ電極3を形成し、それぞれ実施例1〜4のコンデンサを製作した。
【0113】
(比較例1)
有機金属化合物を添加しない以外は実施例1と同様にして薄膜およびコンデンサを作製した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)ポリシロキサン系樹脂、B)有機金属化合物、C)有機溶剤を必須成分として含有し、有機金属化合物の含有率がポリシロキサン系樹脂に対して10〜80重量%であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
硬化性組成物を硬化して得られる薄膜の誘電率が3.5以上であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
有機金属化合物がチタニウム化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物の群から選ばれる一種であることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
ポリシロキサン系樹脂がヒドロシリル化反応性樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
ポリシロキサン系樹脂が下記一般式(I)
【化1】

(式中Rは水素原子または炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい)で表される構造を含有する化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項6】
ポリシロキサン系樹脂が光重合性を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項7】
ポリシロキサン系樹脂がエポキシ基、架橋性ケイ素基および(メタ)アクリロイル基からなる群から選択される少なくとも一種である基を有することを特徴とする請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
エポキシ基が、脂環式エポキシ基であることを特徴とする請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
架橋性ケイ素基が、アルコキシリル基であることを特徴とする請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
アルカリ現像性を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項11】
ポリシロキサン系樹脂が下記構造式(X1)および/または(X2)
【化2】

で表される構造を含有する化合物であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の硬化性組成物をゲート絶縁膜の材料として用いた薄膜トランジスタ。


【公開番号】特開2012−111864(P2012−111864A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262568(P2010−262568)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】