説明

空気調和機

【課題】室内空間において発生する一酸化炭素を、常温で効率的に除去でき、かつランニングコストの低い一酸化炭素除去機能付き空気調和機を提供する。
【解決手段】一酸化炭素を含む空気の導入口、清浄化された空気の排出口、および内部に空気通路を有する本体と、前記空気を空気通路に取り込む送風手段と、空気通路内に設けられた一酸化炭素除去触媒フィルタとを備えた空気調和機において、前記一酸化炭素除去触媒フィルタを流通する空気の湿度を高湿度(約60〜90%)に調節する湿度コントロール手段と、前記湿度コントロール手段の動作を制御する制御手段とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関し、特に、一酸化炭素を常温(約25℃)において効率的に除去する空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
一酸化炭素は、血液中で酸素の運搬役となっている赤血球のヘモグロビンと、酸素の約200倍強く結合する。一酸化炭素とヘモグロビンとが結合することにより、一酸化炭素ヘモグロビン(CO−Hb)が形成されるが、この一酸化炭素ヘモグロビンと酸素とは結合できない。このため、一酸化炭素存在下では、血液中の酸素濃度が低下し、細胞への酸素の供給が阻害されるので、細胞は酸素欠乏状態になる。細胞が過度に酸欠状態になると、めまいや、頭痛や、吐き気といった一酸化炭素中毒症状が生じ、死に至ることもある。
【0003】
上述したように、生活環境の空気中に存在する一酸化炭素は、人体に深刻な影響をおよぼすため、一酸化炭素を効果的に除去する技術が望まれている。
【0004】
例えば、火災、ガス漏れ、あるいは不完全燃焼などが起きた場合には、人を死に至らしめる可能性のあるほどに高濃度且つ大量の一酸化炭素が空気中に放散される危険性がある。
【0005】
この一方、低濃度の一酸化炭素を除去することに対するニーズも高まっている。低濃度の一酸化炭素は、例えば、喫煙、ガスや灯油を用いた暖房・調理器具等の使用により、室内の生活空間等においても発生する。
【0006】
これらに由来する一酸化炭素が、気密性の高い室内の閉鎖空間に拡散した場合には、低濃度一酸化炭素による健康障害を引き起こす。たとえば、一酸化炭素の濃度が0.02%(200ppm)の場合、2〜3時間で軽度の頭痛が生じる。一酸化炭素の濃度が0.04%(400ppm)の場合、1〜2時間で吐き気を催す。このような健康障害は非常に大きな問題である。したがって、室内の一酸化炭素濃度は、作業環境基準である50ppm以下に常に保たれる必要がある。
【0007】
低濃度の一酸化炭素を除去する方法としては、窓の開放や換気装置による換気が有効である。しかしながら、窓の開放は、冷気や暖気など不必要な空気を室内へ入れてしまうので冷暖房機器の効き目を下げてしまうという問題や、プライバシーが保護できないという問題がある。また、換気装置による換気は、建物の構造上設置が困難である場合がある、設置コストが高い、一酸化炭素発生源の近傍への設置・移動が容易ではない等の問題がある。
【0008】
よって、上記問題点のない空気調和機により、一酸化炭素を除去することが望ましい。しかしながら、従来の空気調和機は、一酸化炭素の除去作用をほとんど有していない。
【0009】
ところで、一酸化炭素を、貴金属触媒を用いて酸化除去する技術を用いたガス浄化装置が、工場や車から発生する排ガス処理に有効に利用されている。また、防毒マスクに用いられている、ホプカライト触媒は、常温における一酸化炭素を除去能力が高い。よって、これらの触媒を空気調和機に適用すれば、一酸化炭素の除去性能は大きく向上すると考えられる。
【0010】
しかしながら、貴金属触媒を適用した空気調和機は、触媒活性を高めるために、常時加熱する必要があり、膨大な消費電力を費やすとともに、安全に使用するために冷却装置を必要とするためコスト高になるという問題がある。
【0011】
また、ホプカライトは、湿気により数時間で活性が失われるため、日本のような湿度が高い地域で使用することには適していない。
【0012】
よって、長時間使用によっても活性が低下することなく、一酸化炭素を常温(約25℃)で且つ低コストで除去する技術が求められている。
【0013】
ここで、一酸化炭素除去触媒に関する技術としては、下記特許文献1、2が提案されている。
【0014】
【特許文献1】特開平1-159058号公報
【特許文献2】特開2006-17425号公報
【0015】
しかし、上記技術によっても、未だ上記課題は解決されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者らは、上述の問題点を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、貴金属等の触媒の一酸化炭素酸化除去能は、一酸化炭素を含む空気の湿度に依存し、一酸化炭素を含む空気を高湿度化することにより、常温での触媒の一酸化炭素酸化除去能を飛躍的に向上させることができることを見出した。本発明は、上記知見に基づき完成されたものであって、通常の室内環境(約25℃、湿度30〜60%)であっても高効率で一酸化炭素を除去でき、且つ長寿命な空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するための第1の本発明は、空気通路と、前記空気通路の一方端に設けられた導入口と、前記空気通路の他方端に設けられた排出口と、を有する装置本体と、空気を前記空気通路に取り込む送風手段と、前記空気通路内に設けられた一酸化炭素除去触媒フィルタと、を備えた空気清浄機において、前記一酸化炭素除去触媒フィルタを流通する空気の湿度を調節する湿度コントロール手段と、前記湿度コントロール手段の動作を制御する制御手段と、を更に備えることを特徴とする。
【0018】
この構成によると、湿度コントロール手段が、一酸化炭素除去触媒フィルタを通過する空気の湿度を高め、一酸化炭素除去触媒の活性を高める。また、湿度を積極的に利用するため、触媒活性が時間とともに低下することがない。これにより、高効率に一酸化炭素を除去でき、且つ長寿命な空気調和機を実現できる。
【0019】
ここで、本明細書で用いる「空気調和機」とは、空気清浄機能を備えた機器すべてを意味し、空気清浄機を含むのは勿論のこと、空気清浄機能を備えたエアーコンディショナー、除湿機、加湿器等を含んだものを意味する。
【0020】
上記構成において、前記湿度コントロール手段が、一酸化炭素除去触媒フィルタよりも導入口側に配置されている構成とすることができる。
【0021】
湿度コントロール手段は、前記一酸化炭素除去触媒フィルタを流通する空気の湿度を調節する必要があるため、一酸化炭素除去触媒フィルタよりも導入口側に配置することが好ましい。
【0022】
上記構成において、前記湿度コントロール手段が、前記一酸化炭素除去触媒フィルタに導入する空気の湿度を検知する湿度センサーと、空気を加湿する加湿装置と、前記湿度センサーにより検知した湿度に基づき、加湿量を決定する決定手段と、を有する構成とすることができる。
【0023】
この構成によると、低湿度雰囲気下では、湿度センサーにより検知した湿度に基づき決定手段が決定した加湿量を、加湿装置が加湿することにより一酸化炭素除去触媒の活性が高められる。一方、高湿度雰囲気下では、湿度センサーにより検知した湿度に基づき決定手段が決定した加湿量がほぼ0となり、必要以上に加湿されることがない。よって、装置のランニングコストを低下できる。
【0024】
上記構成において、前記湿度コントロール手段が、前記一酸化炭素除去触媒フィルタに導入する空気の湿度を常に60〜90%となるように調節する構成とすることができる。
【0025】
一酸化炭素除去触媒の活性は、特に湿度が60〜90%の時に飛躍的に高まるので、この構成によると、一酸化炭素除去触媒の活性を常に最も高い状態に維持でき、高効率で一酸化炭素を除去できる。
【0026】
上記構成において、前記空気調和機は、空気通路に取り込む空気の一酸化炭素濃度を検知する一酸化炭素濃度センサーを更に備え、前記湿度コントロール手段は、前記一酸化炭素濃度センサーにより検知された一酸化炭素濃度が予め定められた閾値を超えている場合にのみ、前記一酸化炭素除去触媒フィルタに導入する空気を、湿度60〜90%となるように調節する構成とすることができる。
【0027】
一酸化炭素濃度が閾値より低く、人体に悪影響を及ぼさない濃度(およそ50ppm以下)である場合には、一酸化炭素除去触媒の活性を高める必要性に乏しい。この構成によると、予め設定された閾値以下(一酸化炭素除去触媒の活性を高める必要性に乏しい一酸化炭素濃度以下)の場合には加湿しなくてすむので、ランニングコストをさらに低減できる。
【0028】
上記課題を解決するための第2の本発明は、空気通路と、前記空気通路の一方端に設けられた導入口と、前記空気通路の他方端に設けられた排出口と、を有する装置本体と、空気を前記空気通路に取り込む送風手段と、空気通路内に設けられた一酸化炭素除去触媒フィルタと、を備えた空気調和機において、前記一酸化炭素除去触媒フィルタを通過する空気を加湿する加湿手段と、前記加湿手段の動作を制御する制御手段と、を更に備えることを特徴とする。
【0029】
湿度コントロール手段に代えて、加湿手段を備えた上記構成であっても、高効率で且つ長寿命な空気調和機を実現できる。
【0030】
上記構成において、前記加湿手段が、一酸化炭素除去触媒フィルタよりも導入口側に配置されている構成とすることができる。
【0031】
加湿手段は、前記一酸化炭素除去触媒フィルタを通過する空気を加湿する必要があるため、一酸化炭素除去触媒フィルタよりも導入口側に配置することが好ましい。
【0032】
湿度を高めることにより一酸化炭素除去性能が高められる触媒としては、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Ag、NiおよびAuからなる群から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0033】
また、上記一酸化炭素除去触媒を、平均粒径が1〜10nmの超微粒子状とすると、表面積を大きくできるため、触媒反応をより促進できる。
【0034】
上記構成において、前記一酸化炭素除去触媒フィルタは、基材と、前記基材上に形成された触媒担体と、前記触媒担体上に担持された一酸化炭素除去触媒とを有し、前記触媒担体が金属酸化物であり、前記金属が、Zr、Al、Ti、Si、Mg、Fe、Ba、Cr、Mn、Cu、Zn、Co、Ga、Ge、Sr、Cd、In、Sn、Ba、Hf、Ce、W、PおよびTaからなる群から選択される少なくとも一種である構成とすることができる。
【0035】
基材上に直接一酸化炭素除去触媒を担持させることは難しく、且つ反応面積を大きくしにくい。このため、金属酸化物上に担持させる構成を採用することが好ましい。中でも、この金属として上記のものを用いることが好ましい。
【0036】
上記構成において、前記基材が、ハニカム構造を有する構成とすることができる。
【0037】
この構成によると、一酸化炭素を含む空気が一酸化炭素除去触媒フィルタを通過する時の圧力損失を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によると、室内空間において発生する一酸化炭素を常温で、高効率且つ長時間にわたって除去できるとともに、空気調和機のランニングコストを低くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明を実施するための最良の形態を、以下に詳細に説明する。
【0040】
(予備実験)
基材としてのSUS(ステンレススチール)ハニカムを、ZrOまたはAl溶液に浸漬し、乾燥させて、SUS表面に、ZrOまたはAlからなる触媒担体を形成した。この触媒担体コートSUSハニカムを、触媒微粒子としての平均粒径が5nmであるPt又はPd粒子が分散された溶液に浸漬し、乾燥させて、一酸化炭素除去触媒フィルタを作製した。この一酸化炭素除去触媒フィルタにおけるPt触媒およびPd触媒の担持量は、どちらも2.0g/Lとした。
【0041】
この一酸化炭素除去触媒フィルタのサイズは、10mmφ×50mmである。この酸化一酸化炭素除去触媒フィルタのセル密度は260cpsi(Cells Per Square Inch:1インチ平方に含まれるセル数)である。
【0042】
この一酸化炭素除去触媒フィルタを用いて、異なる湿度条件で一酸化炭素(CO)除去ワンパス試験を行った。試験条件は、常温(25℃)において、一酸化炭素ガスを含む空気を一酸化炭素除去触媒フィルタに流通させ、流通後のガスをテドラーバックに捕集し、捕集したガスの一酸化炭素濃度を、一酸化炭素濃度評価装置を用いて測定した。この濃度より一酸化炭素除去率を算出した。一酸化炭素濃度評価装置としては、メタナイザーを装備するGC装置(GLサイエンス製)を用いた。
【0043】
高純度空気(N:79.0%、O:21.0%)と一酸化炭素含有空気(N:78.8%、O:21.0%、CO:2000ppm)を9:1で混合させることにより、一酸化炭素(CO)ガス濃度を200ppmとした。また、湿度は、高純度空気を水でバブリングすることにより調整した。流量は8L/分(空間速度SV値は122000hr−1)とした。
【0044】
図1及び図2は、一酸化炭素除去触媒フィルタを流通させる一酸化炭素を含む空気の湿度と、一酸化炭素除去率との関係を表わす一酸化炭素除去ワンパス試験結果のグラフである。図1は触媒微粒子としてPtを用いた場合、図2はPdを用いた場合を示す。
【0045】
図1、図2から明らかなように、Pt触媒、Pd触媒のどちらを用いても、一酸化炭素(CO)除去性能は、高湿度ほどCO除去率が高くなっていることが分かる。また、湿度としては、60〜90%であることが好ましく、70〜90%であることがより好ましいことがわかる。
【0046】
この理由は定かではないが、一酸化炭素は、触媒存在下、酸素と反応して二酸化炭素となって除去されるのであるが、水分が触媒(Pt、Pd)表面で酸素分子の解離を促進して一酸化炭素との反応性を高めることや、反応により生成する二酸化炭素が他の物質と反応して生成する炭酸塩の分解を促進すること等が考えられる。
【0047】
なお、Ir、Rh、Ru、Ag、Ni、Au触媒を用いた場合も、Pt触媒、Pd触媒と比べて除去性能はわずかに劣るものの、同様に高湿度ほど一酸化炭素除去率が高くなっていたことを確認した。
【0048】
ところで、空気調和機を使用する室内環境は、日本においては通常、湿度は60%未満であることがほとんどであり、さらに、冬場の乾燥時期や、それ以外の時期においても冷暖房機器の使用や建物の気密性の向上により、室内の空気の湿度が30%以下になるという状況は頻繁に生じる。
【0049】
したがって、上記一酸化炭素除去触媒フィルタをそのまま一酸化炭素除去する空気調和機のフィルタに適用した場合、空気調和機の一酸化炭素除去性能は低いものとなる可能性がある。よって、上記フィルタを通過する空気の湿度を高める手段を講じることが望ましい。以下に、空気の湿度を高める手段を組み込んだ空気調和機の好ましい形態について説明する。
【0050】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1にかかる空気調和機について図面を用いて説明する。図3は、本実施の形態にかかる空気調和機の構成を表わす概略図である。
【0051】
空気調和機1は、空気通路2と、その一方側に設けられ、一酸化炭素を含有する空気を取込む導入口3と、空気通路2の他方端に設けられ、清浄化された空気を排出する排出口4と、有する装置本体を備えている。
【0052】
さらに、装置本体内には、一酸化炭素除去触媒フィルタ5と、空気通路2の中に空気を取込み、一酸化炭素除去触媒フィルタ5に空気を送り込む送風機6と、一酸化炭素除去触媒フィルタ5よりも導入口3側に設けられた、粉塵など粒子状物質を除去するプレフィルタ7と、一酸化炭素除去触媒フィルタ5を流通する空気の湿度を調節する湿度コントロール手段8と、前記湿度コントロール手段8の動作を制御する制御手段9と、が設けられている。
【0053】
上記湿度コントロール手段8は、一酸化炭素除去触媒フィルタ5に導入する空気の湿度を検知する湿度センサー10と、空気を加湿する加湿装置11と、湿度センサー10により検知した結果に基づき加湿量を決定する決定手段12と、を備えている。また、一酸化炭素除去触媒フィルタ5としては、上記予備実験で用いたものを利用できる。
【0054】
本実施の形態にかかる一酸化炭素除去触媒フィルタ5に用いる触媒は、特に制限されないが、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Ag、NiあるいはAuのいずれか、またはこれらの混合物、またはこれらの合金を用いることができ、これらの中でも触媒活性が高いPt、Pdが特に好適である。
【0055】
触媒の大きさは特に制限されないが、超微粒子であることが好ましい。触媒粒子の平均粒子径は、通常約250nm以下、好ましくは1〜10nmである。
【0056】
本実施の形態にかかる一酸化炭素除去触媒フィルタの基材形状は、ハニカム状、粉末状、球状、粒状、発泡体状、繊維状、布状、リング状等、一般的に使用されている形状が使用可能である。これらの中でも、内部を障壁で区切ったハニカム状が、作製および空気が通過する時の圧力損失の観点から、特に好適である。
【0057】
上記のような基材に直接一酸化炭素除去触媒を担持させることは難しいため、上記基材に、触媒担体層を設けることが好ましい。この触媒担体としては特に制限はないが、金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、Zr、Al、Ti、Si、Mg、Fe、Ba、Cr、Mn、Cu、Zn、Co、Ga、Ge、Sr、Cd、In、Sn、Ba、Hf、Ce、W、PおよびTaの少なくとも一種を含む酸化物を用いることができる。これらの中でもZr、Al、Tiの酸化物がより好ましく、Zrの酸化物が特に好ましい。
【0058】
本実施の形態にかかる湿度コントロール手段8は、湿度センサー10と、加湿装置11と、決定手段12とから構成され、一酸化炭素除去触媒フィルタ5に導入する空気の湿度を湿度センサー10で検知し、決定手段12により所定の湿度(60〜90%程度)にするための加湿量を決定し、決定した量の加湿を加湿装置11により行う。
【0059】
湿度センサー10としては、公知の湿度センサーを利用できる。例えば、酸化マグネシウム等のセラミック製の湿度センサー、有機材料を用いた湿度センサー等を例示することができる。
【0060】
加湿装置11は、例えば、噴霧式、超音波式、加熱式、蒸気式、気化式等の公知のものを利用できる。これらの中でも、噴霧式が加湿能力、消費電力、制御性の点で優れており好適である。
【0061】
決定手段12には、メモリ13が内蔵されており、メモリ13は加湿量と湿度と風量との特性データが記憶されている。湿度センサーにより検知された湿度を、メモリと照合することにより、湿度が60〜90%となるように加湿量が決定される。
【0062】
次に、上記構成の空気調和機1の使用形態について説明する。一酸化炭素を含む室内空間に空気調和機1を設置し、送風手段6を運転することによって本体1周囲の空気を本体内部の空気通路2に取り込み、先ずプレフィルタ7により粉塵など粒子状物質を吸着除去する。
【0063】
次に、湿度コントロール手段8により触媒の活性が高くなる湿度(60%〜90%)に空気の湿度を調節し、その調節した空気を一酸化炭素除去触媒フィルタ5に導入する。
【0064】
一酸化炭素除去触媒フィルタ5は、一酸化炭素を酸化して無害化し、無害化された空気が排出口4より排出される。この際、湿度コントロール手段8は、空気の湿度を湿度センサー11で検知し、加湿量と湿度と風量との特性データが記憶されているメモリ13を参照し、触媒の活性が高くなる湿度(60%〜90%)にするための加湿量を決定し、加湿装置10により加湿する。これにより、一酸化炭素除去触媒フィルタを流通する空気は、常に触媒活性が高くなる湿度(60%〜90%)に保たれる。したがって、湿度を制御しない場合と比べて飛躍的に一酸化除去性能を向上させることができる。
【0065】
なお、他の形態として、プレフィルタ7を備えないものや、活性炭等の吸着剤、紫外線発生装置またはイオン発生装置等の他の機能が備えてあるものであってよい。また、排出口4より排出する空気は高湿度であり、高湿度空気を室内に排出すると、カビ等が発生しやすくなるおそれがあるため、一酸化炭素除去触媒フィルタ5よりも排出口4側に多孔質材料等からなる吸湿手段や除湿手段を設けてもよい。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態にかかる空気調和機1は、高い一酸化炭素除去能力を常に維持できる。さらに、本実施の形態にかかる空気清浄機は、複雑な構造とすることなく、一酸化炭素を除去し空気を浄化できるので、価格やランニングコストを低く抑制できる。よって、本実施の形態にかかる空気清浄機は、オフィスビル、喫煙所、病院、老人ホーム、映画館、一般家庭その一酸化炭素が発生する生活環境で好適に利用できる。
【0067】
本実施の形態にかかる空気調和機1を用いて、一酸化炭素除去試験を行った。
【0068】
空気調和機1の一酸化炭素除去触媒フィルタ5としては、基材としてSUS(Fe−Cr−Al)ハニカムの障壁表面に、触媒担体としてZrOをコーティングし、その表面に触媒としてPtを担持させたものを用いた。この一酸化炭素除去触媒フィルタ5のサイズは100mmφ×50mmである。また、この一酸化炭素除去触媒フィルタ5のセル密度は260cpsiである。この一酸化炭素除去触媒フィルタ5におけるPt触媒の担持量は2.0g/Lである。このPtは超微粒子であり、その平均粒径は約5nmである。
【0069】
本実施の形態にかかる空気清浄機50を、一酸化炭素発生装置が備えられたステンレス製の大型評価用チャンバに入れた。このチャンバの大きさは20m(6畳相当)である。空気清浄機50をチャンバに入れると、そのチャンバ内の一酸化炭素の濃度を200ppm、湿度を30%にした。濃度が200ppmになった時点で、空気調和機1の運転を開始した。風量は1.2m/分とした。一酸化炭素除去触媒フィルタを流通させる空気の湿度は、湿度コントロール手段8により80%とした。
【0070】
運転開始と同時に、チャンバ内における一酸化炭素の濃度の経過時間に伴う変化を測定した。比較の形態として、湿度コントロールをしない場合の、チャンバ内における一酸化炭素の濃度の経過時間に伴う変化を測定した。両測定において、測定が開始時はチャンバ内の一酸化炭素の濃度が200ppmになった時とした。測定の結果を、図7に示す。図7において、実線で描かれた曲線は湿度を制御した場合(実施の形態)の結果を示し、破線で描かれた曲線は湿度を制御しない場合(比較の形態)の結果を示す。
【0071】
図7から明らかなように、湿度80%となるように制御すると、測定の開始後約10分で一酸化炭素濃度は作業環境基準である50ppm以下になり、約30分で一酸化炭素が完全に除去されていることがわかる。それに対し、湿度を制御しない場合、一酸化炭素濃度を作業環境基準である50ppm以下にするのに約90分かかり、一酸化炭素を完全に除去するのには約5時間も要することがわかる。
【0072】
よって、本実施の形態にかかる空気調和機を用いると、室温環境で速やかに一酸化炭素を除去できることがわかる。
【0073】
なお、本発明は、この実施の形態の構成に制限されるものではない。すなわち、本発明の範囲は、上記した構成ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0074】
(実施の形態2)
以下、本発明の第2の実施の形態にかかる空気調和機について説明する。
図4は、本実施の形態にかかる空気調和機の構成を表わす概略図である。
【0075】
本実施の形態にかかる空気調和機1は、空気通路に取込む空気の一酸化炭素濃度を検知する一酸化炭素濃度センサー14が導入口近傍に設けられたこと以外は第1の実施の形態と同様である。
【0076】
本発明にかかる一酸化炭素濃度センサーは特に制限されず、公知の湿度センサーを利用できる。例えば、半導体式、定電位電解式、電気化学式等を例示することができる。
【0077】
次に、以上のような構成の空気調和機の使用形態について説明する。
基本的には実施の形態1と同様であるが、実施の形態2では一酸化炭素濃度センサー14により、検知された一酸化炭素濃度が予め設定された閾値を超えた場合のみ、湿度コントロール手段8を働かす。つまり、室内の空気の一酸化炭素濃度が問題ないレベル以下の場合は湿度制御を行わず、問題になるレベル以上の場合は湿度制御を行う。一酸化炭素濃度の閾値は、人体への一酸化炭素の影響を考慮すると、10ppm〜50ppm程度に設定する。
【0078】
このようにすることにより、一酸化炭素濃度が閾値以下の場合には、湿度制御を行わずにすむため、湿度制御に要する電力を少なくすることや、加湿に用いる水分を補給する頻度を少なくすることが可能となる。
【0079】
(実施の形態3)
以下、本発明の第3の実施の形態にかかる空気調和機について説明する。
図5は、本実施の形態にかかる空気調和機1の構成を表わす概略図である。
【0080】
本実施の形態は、一酸化炭素除去触媒フィルタ5を流通する空気の湿度を調節する湿度コントロール手段8を、加湿手段15に置き換えた以外は、第1の実施の形態にかかる空気調和機と同様である。このため、制御手段9は、加湿手段15の動作を制御することとなる。
【0081】
本発明の加湿手段15は、特に制限されず、例えば噴霧式、超音波式、加熱式、蒸気式、気化式を利用できる。これらの中でも、噴霧式が加湿能力、消費電力、制御性の点で優れており好適である。
【0082】
次に、以上のような構成の空気調和機の使用形態について説明する。一酸化炭素を含む室内空間に空気調和機を設置して、送風手段6を運転することによって本体1の空気を本体内部の空気通路2に取り込み、先ずプレフィルタ7により粉塵など粒子状物質を吸着除去し、次に加湿手段15により空気を加湿し、その加湿した空気を一酸化炭素除去触媒フィルタ5に導入し、一酸化炭素を酸化分解により無害化し、排出口4より排出する。なお、加湿量は前もって設定しておく、又はマニュアルやプログラムにより増減させることが可能となっている。したがって、加湿しない場合と比べて、触媒の活性が高くなるので一酸化除去性能を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によると、常温における一酸化炭素除去性能が高く、長寿命で、ランニングコストの低い空気調和機を提供できる。よって、産業上の利用性は大である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】一酸化炭素除去触媒フィルタとしてPtを担持したハニカム構造体を用いた場合の、常温における一酸化炭素除去ワンパス試験結果である。
【図2】一酸化炭素除去触媒フィルタとしてPdを担持したハニカム構造体を用いた場合の、常温における一酸化炭素除去ワンパス試験結果である。
【図3】実施の形態1に係る空気調和機の構成を表わす概略図である。
【図4】実施の形態2に係る空気調和機の構成を表わす概略図である。
【図5】実施の形態3に係る空気調和機の構成を表わす概略図である。
【図6】湿度制御を行った場合と、行わない場合の一酸化炭素濃度の推移を表わすグラフである。
【符号の説明】
【0085】
1 空気調和機本体
2 空気通路
3 導入口
4 排出口
5 一酸化炭素除去触媒フィルタ
6 送風機
7 プレフィルタ
8 湿度コントロール手段
9 制御手段
10 湿度センサー
11 加湿装置
12 決定手段
13 メモリ
14 一酸化炭素濃度センサー
15 加湿手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気通路と、前記空気通路の一方端に設けられた導入口と、前記空気通路の他方端に設けられた排出口と、を有する装置本体と、
空気を前記空気通路に取り込む送風手段と、
前記空気通路内に設けられた一酸化炭素除去触媒フィルタと、
を備えた空気調和機において、
前記一酸化炭素除去触媒フィルタを流通する空気の湿度を調節する湿度コントロール手段と、
前記湿度コントロール手段の動作を制御する制御手段と、
を更に備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記湿度コントロール手段が、前記一酸化炭素除去触媒フィルタよりも導入口側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記湿度コントロール手段が、
前記一酸化炭素除去触媒フィルタに導入する空気の湿度を検知する湿度センサーと、
空気を加湿する加湿装置と、
前記湿度センサーにより検知した湿度に基づき、加湿量を決定する決定手段と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記湿度コントロール手段は、前記一酸化炭素除去触媒フィルタに導入する空気の湿度を、前記空気通路内に取り込んだ空気の湿度より高くなるように制御する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項5】
前記湿度コントロール手段が、一酸化炭素除去触媒フィルタに導入する空気の湿度を常に60〜90%となるように調節することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項6】
前記空気清浄機は、空気通路に取り込む空気の一酸化炭素濃度を検知する一酸化炭素濃度センサーを更に備え、
前記湿度コントロール手段は、前記一酸化炭素濃度センサーにより検知された一酸化炭素濃度が予め定められた閾値を超えている場合にのみ、一酸化炭素除去触媒フィルタに導入する空気を、湿度60〜90%となるように調節する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項7】
空気通路と、前記空気通路の一方端に設けられた導入口と、前記空気通路の他方端に設けられた排出口と、を有する装置本体と、
空気を前記空気通路に取り込む送風手段と、
空気通路内に設けられた一酸化炭素除去触媒フィルタと、
を備えた空気清浄機において、
前記一酸化炭素除去触媒フィルタを通過する空気を加湿する加湿手段と、
前記加湿手段の動作を制御する制御手段と、
を更に備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項8】
前記加湿手段が、一酸化炭素除去触媒フィルタよりも導入口側に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の空気調和機。
【請求項9】
前記一酸化炭素除去触媒フィルタは、一酸化炭素除去触媒として、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Ag、NiおよびAuからなる群から選択される少なくとも一種を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項10】
前記一酸化炭素除去触媒が、平均粒径が1〜10nmの超微粒子である、
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項11】
前記一酸化炭素除去触媒フィルタは、基材と、前記基材上に形成された触媒担体と、前記触媒担体上に担持された一酸化炭素除去触媒とを有し、
前記触媒担体が金属酸化物であり、
前記金属が、Zr、Al、Ti、Si、Mg、Fe、Ba、Cr、Mn、Cu、Zn、Co、Ga、Ge、Sr、Cd、In、Sn、Ba、Hf、Ce、W、PおよびTaからなる群から選択される少なくとも一種である、
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項12】
前記基材が、ハニカム構造を有する、
ことを特徴とする請求項11に記載の空気調和機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−292441(P2007−292441A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22863(P2007−22863)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】