説明

空気通路における頂部側終端ストッパ付きの三方弁

【解決手段】2つのフラップのための単一の制御手段9と、2つのフラップの1つを通路の1つの開位置と閉位置の一方から他方に一時的な位相のずれをもって旋回駆動する駆動手段12、13、50とを備える三方弁において、駆動手段の各々のための最大変位終端ストッパと、フラップの全閉位置に対応する第2の駆動手段の終端ストッパ31と、第2の駆動手段12、50がその終端ストッパ31にあるときに第1の駆動手段の位置を超えて配置される第1の駆動手段の終端ストッパと、第1及び第2の駆動手段を基準作動中の単一の制御手段に連結する機構とを備えることを特徴とする。
【効果】通路を開閉する複数の弁体部、又は、駆動機構部に発生する駆動不具合を単一の検出器を用いて検出可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、自動車に関し、より詳細には、エンジンに動力を供給する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の熱機関は、主に複数のシリンダーからなされる燃焼室を備えている。シリンダー内では、燃料と空気の混合物が燃焼し、エンジンによる仕事を作り出すようになっている。空気は、エンジンがターボチャージャーを有するか否かにしたがって、圧縮されることもあれば、圧縮されないこともある。エンジンがターボチャージャーを備えている場合、圧縮機により圧縮された空気は、エンジン内に取り込まれ、燃料とともに燃焼され、その後、排気管より排出される。排出ガスは、タービンを駆動する。タービンは、圧縮機に取り付けられ、圧縮機とともにターボチャージャーを構成している。
【0003】
取り込まれた空気は、搬出ガスと混合される。これは、再循環排ガスの概念、及びいわゆるEGR(排気再循環)ループによるガスの循環の概念を導くものである。このようにして燃焼室内に取り込まれたガスは、吸気と呼ばれる。これにより、有害な排出、特に窒素酸化物の排出は減少される。
【0004】
排出ガスの再循環は、タービンの後で取り込まれて、圧縮機の前に再導入されるガスに適用されるときには「低圧」と呼ばれ、タービンの前で取り込まれて、圧縮機の後に再導入されるガスに適用されるときには「高圧」と呼ばれる。一例として、低圧再循環は、主として、ガソリンエンジンにおいて、燃料消費量を減少させ、より良いエンジン効率を得るために用いられる。
【0005】
したがって、ガスは、様々な導管を通って搬送され、その循環は、導管内でのガスの循環を、許可、禁止、又は制限する弁を用いて制御される。EGRループの場合、いわゆる三方弁を用いることが提案されている。このような弁は、ターボチャージャーの圧縮機の上流、すなわち混合ガスの吸気口に配置されることができ、ここで、前記導管内での空気循環量及び導管内に取り込まれる排出ガスの量が制限される。
【0006】
低温側に配置された三方弁の場合、弁の複数の作動モード、したがってエンジンの複数の作動モードが考えられる。エンジンは、再循環排出ガスを含まない外気のみを受け取る。また、エンジンは、排出ガスの一部と混合された外気も受け取る。その場合、エンジンにおける排出ガスと吸気との間の圧力差は、排出ガスの再循環を確保するのに十分なものとされる。この圧力差が、排出ガスの再循環及び適切なEGR率の確保のために十分でない場合、排気ガスの一部を、エンジンの吸気通路に向けて加速するために、EGRループの下流の排気通路を絞ることにより、背圧を生成させることができる。しかしながら、この解決法は、その複雑さゆえに、十分に満足のいくものではなく、下記のようなEGRループを用いる方が、より望ましい。
【0007】
EGR弁の外気入口通路内の外気の流速が最大であるとき、弁内のEGRガスの通路は徐々に開いて行き、弁内でのEGRガスの流速の増加が止まる前に、外気入口通路が徐々に閉じて行き、EGRガスの流速を、単調な増加曲線にしたがって増加させ続ける。
【0008】
本出願人により出願された国際公開第2009/106727号には、2つのフラップを有する三方弁であって、2つのフラップが、弁の2つの入口通路内に配置され、単一且つ同一の駆動手段により、一時的なずれをもって駆動される三方弁が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2009/106727号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のもの、フラップの位置を知るための単一のセンサのみを備えている。このセンサは、再循環ガス用のフラップの制御通路(ガス通路又はEGR通路)に配置されている。したがって、吸気フラップの制御通路(空気通路)の故障は検出されない。
【0011】
この問題点に対する第1の解決策は、空気通路に第2のセンサを配置することである。しかしながら、この解決策は、これに伴う付加部品のコスト及び体積のために、満足のいくものではない。
【0012】
本発明の目的は、空気又はEGR通路の1つに生じた欠陥を、単一のセンサを用いて検出し得るようになっている三方弁を提案することにより、これらの問題点を取り除くことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のため、本発明の主題は、それぞれが弁の3つの通路の中の2つに配置された2つのゲートを有する三方弁において、前記弁は、2つのゲートのための単一の制御手段と、単一の制御手段により制御され、かつそれぞれ2つのゲートの1つを、第1及び第2の位置の一方から他方に駆動する第1及び第2の駆動手段とを備え、前記制御手段及び駆動手段は、通常作動モードにおいて、2つのゲートをそれぞれの第2の位置に同時に到達させ得るように構成されているものに関する。
【0014】
本発明によれば、前記弁は、前記駆動手段の少なくとも1つのための最大変位終端ストッパを備えており、前記終端ストッパは、前記駆動手段を、対応するゲートが第2の位置にあるときに妨げるように構成されており、かつ前記弁は、前記ゲートの他方の第2の位置を超える動きを検出する手段を更に備えている。
【0015】
従って、本発明によれば、全ての通路において、機構の完全性が検査されるが、これは、通路の1つにのみ配置された検出手段を用いて実行される。この検出手段は、組み込まれた通路の異常のみならず、他の通路の異常も診断することができる。何故なら、検出手段が設けられた通路に取り付けられたゲートが所定の位置を超えると、これは、他の通路に取り付けられたゲートの駆動手段が、その終端位置に達しておらず、対応する機構に欠陥があることを意味するからである。
【0016】
上記の典型的な利用において、検出手段は、ガスのためのフラップによる全開位置の行き過ぎを確認することができ、したがって、追加のセンサを必要とせずに、空気側の機構の故障を確認することができる。
【0017】
組み合わせて、又は別々に採用しうる他の実施形態としては、次のものがある。
-前記ゲートの他方の第2の位置を超える動きを検出する手段は、前記ゲートの他方の位置を計測する手段を備えている。
-前記最大変位終端ストッパは、前記第2の駆動手段を妨げるようになっており、前記ゲートの他方の基準変位を超える動きを検出する手段は、前記第1の駆動手段のための終端ストッパを備えており、前記第1の駆動手段のための終端ストッパは、前記第2の駆動手段が通常作動モードにおいてその終端ストッパ上にあるときに、前記第1の駆動手段の位置を超えるように構成されている。
-前記ゲートの他方の基準変位を超える動きを検出する手段は、前記第1の駆動手段に設けられた移動限界終端ストッパと、前記移動限界終端ストッパと前記第1の駆動手段の終端ストッパとの接触を検出する検出器を備えている。
-前記ゲートは、フラップであり、前記制御手段及び駆動手段は、前記フラップを旋回駆動するように構成されており、前記第1及び第2の駆動手段は、歯付きクラウン歯車セグメントである。
-前記第1の駆動手段の終端ストッパは、対応するクラウン歯車セグメントの端部を構成する面の1つと向き合うように配置されている。
【0018】
一実施例においては、第2の駆動手段は、第2の駆動手段の歯付きクラウン歯車セグメント内に形成されたスカラップ内で循環する爪を更に備え、前記第2の駆動手段と連係した終端ストッパは、前記弁の本体に取り付けられており、前記爪と向き合って配置されている。
【0019】
変形例においては、前記第2の駆動手段は、前記第1フラップにそれとともに回転するように連結されており、前記歯付きクラウン歯車セグメントに対して回転自由な制御歯車を更に備え、前記制御歯車は、前記第1フラップが第1の位置から第2の位置に切り換わるとき、前記歯付きクラウン歯車セグメントにより回転駆動可能となっている。前記制御歯車は、例えば、前記第2のゲートがその第2の位置にあるときに、最大変位終端ストッパに隣接するように構成された終端ストッパを備えている。
【0020】
本発明の1つの特徴によれば、前記第1及び第2の位置は、通路の1つの開放及び閉鎖位置である。
【0021】
本発明の他の特徴によれば、前記制御手段及び駆動手段は、前記2つのゲートを一時的な位相のずれをもって駆動するように構成されており、そのため、前記第1のゲートが、その第1の位置からその第2の位置に、前記第1の駆動手段を介して、対応する前記通路を開放又は閉鎖するように変位され続ける一方で、前記第2のゲートは、前記第1の位置から第2の位置に、前記第2の駆動手段を介して、対応する前記通路を開放又は閉鎖するように、変位し始めるようになっている。
【0022】
本発明の他の特徴によれば、前記第2の駆動手段は、その第2の位置から第1の位置に、リターンスプリングにより戻される。
【0023】
本発明の他の特徴によれば、ゲートは、その入口通路内に配置され、これにより、弁は、自動車の内燃エンジンの吸気マニホールドに接続された低温側のためのEGR弁となっている。
【0024】
また、本発明は、上記三方弁の機構の完全性を試験する方法において、前記第1の駆動手段を、前記単一の制御手段を介して、連係された前記ゲートの前記第1の位置から、前記ゲートの前記第2の位置に向けての動きに設定するステップと、これに続いて実行されるステップとして、前記フラップによって到達された過剰な位置を計測するステップとを備えている。
【0025】
単なる例示且つ制限を加えるものでない実施例として示す本発明の実施形態の以下の詳細な説明により、本発明を、より良く理解することができ、かつ本発明の上記以外の目的、詳細、特徴及び利点は、更に明瞭になると思う。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来技術におけるターボチャージャー付きエンジンに組み込まれたEGRループの概略図である。
【図2a】フラップが様々な位置となっている、EGRループにおける三方弁の作動の概要を示す概略図である。
【図2b】フラップが様々な位置となっている、EGRループにおける三方弁の作動の概要を示す概略図である。
【図2c】フラップが様々な位置となっている、EGRループにおける三方弁の作動の概要を示す概略図である。
【図2d】フラップが様々な位置となっている、EGRループにおける三方弁の作動の概要を示す概略図である。
【図3】図2aに示した場合に対応する配置における、本発明による三方弁の第1実施形態の2つのフラップのための制御装置を示す図である
【図4】図2bに示した場合に対応する配置における、本発明による三方弁の第1実施形態の2つのフラップのための制御装置を示す図である。
【図5】図2dに示した場合に対応する配置における、本発明による三方弁の第1実施形態の2つのフラップのための制御装置を示す図である。
【図6】図2aに対応する配置にある、通常モードにおける、図3〜図5の三方弁を示す概略図である。
【図7】図2dに対応する配置にある通常モードにおける、上述の三方弁を示す概略図である。
【図8】図2dに対応する配置にある上述の三方弁を示す概略図であり、空気通路の駆動に故障が発生した場合を示す。
【図9】空気通路のフラップのリターンスプリングの破損によって塞がった配置にある、上述の三方弁を示す概略図である。
【図10】本発明による三方弁の第2実施形態を示す部分透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、排気再循環(EGR)ループを備える自動車の内燃エンジン21を示している。内燃エンジン21は、エンジンがターボチャージャー24の圧縮機26からの空気及び排出ガスを受け取るための吸気マニホールド23と、燃焼ガスのための排気マニホールド22と、ターボチャージャー24のタービン25と、EGRループ28とを備えている。EGRループ28は、クーラー29と、ターボチャージャー24の圧縮機26の上流に配置された三方弁1とを有している。この三方弁は、出口において圧縮機と接続されており、外気を受け入れるための入口(空気通路)と、冷却された排出ガスを受け入れるための入口(EGR通路又はガス通路)の2つの入口を有している。外気と排出ガスの混合ガスの圧力は、圧縮機26によって増大される。
【0028】
図2a〜図2dには、空気入口2と再循環ガス入口3と空気とガスの混合ガスの出口4とを備える三方弁を示す。この実施形態において、弁1は、空気入口2内のフラップ5とガス入口フラップ6の2つのフラップを備えている。EGRループを有効化するときの弁の作動は、次の通りである。当初において、空気入口フラップ5は、空気入口2内における最大空気流速を可能とする角度位置(0°)にあり、ガス入口フラップ6は、ガス入口3を遮断する角度位置(90°)にある。この状態は、例えば停止中又はアイドリング時においてエンジンが作動している場合に相当する。
【0029】
ループの有効化は、空気入口フラップ5を旋回させることなく、ガス入口フラップ6の旋回を開始することにより、EGR排出ガス入口3を漸進的に開くことで、もたらされる(図2a)。空気入口フラップ5が、空気入口2における同一の最大開位置に維持され続ける一方で、ガス入口フラップ6は、ガス通路3を大きく開くように旋回し続ける(図2b)。ガス入口フラップ6が、特定の角度位置(本実施形態では35°、即ち55°の回転後の位置)となると、通路におけるEGRガスの流速は、明らかに増加を止め、そのとき、ガス入口フラップ6が旋回を続ける一方で、空気入口フラップ5は、空気入力通路2を閉じるように旋回を始め、エンジンがEGRガスを更に吸い込むようにする(図2c)。この段階は、ガス入口フラップ6がガス入力通路3を最大の開角度位置(0°)に達し、空気入口フラップが、空気入力通路2を閉じる角度位置(90°)となる最終位置に至るまで継続し得る(図2d)。
【0030】
次に、本発明による三方弁1の実施を可能とし、上記の原理にしたがって作動する機構を、図3〜図5を参照して説明する。
【0031】
三方弁1の機構は、歯車装置を備えている。この歯車装置は、直流モータ7と、空気入口フラップ5とガス入口フラップ6をそれぞれ回転駆動する2本のシャフト51、61との間に配置されている。2本のシャフト51、61は、互いに平行に延びている。電気モータ7のシャフト14は、それに取り付けられ、周辺歯10と中央歯11とを備える中間歯車9を駆動するピニオン8を備えている。中間歯車9の周辺歯10は、空気入口フラップ5を回転駆動する歯付きクラウン歯車13と噛み合っている。クラウン歯車12は、フラップ5の軸51に対して回転自由である。クラウン歯車12によるフラップ5の回転駆動は、フラップ5の軸51に対して回転に関して取り付けられた駆動用爪15を介してなされる。爪15は、弁の本体(図示せず)に対して取り付けられた調整可能な終端ストッパ、即ち底部側空気終端ストッパ16に当接しうるように配置されている。クラウン歯車12は、駆動爪15の駆動、したがってフラップ5の駆動無しに、所定の角度区間にわたるクラウン歯車12の自由回転を許容するようになっている角度スカラップ17を備えている。クラウン歯車12が、一方向又は他方向に、この角度区間を超えて回転駆動されると、駆動終端ストッパ30を形成するスカラップ17の第1端部は、駆動爪15を駆動する。詳しくは後述するように、クラウン歯車12のスカラップ17の反対側端部は、リターン終端ストッパ52と呼ばれる終端ストッパとなっている。
【0032】
中間歯車9の中央歯11は、ガス入口フラップ6を回転駆動する歯付きクラウン歯車13と噛み合っている。クラウン歯車13は、ガス入口フラップ6の軸61に回転可能に取り付けられている。クラウン歯車13は、ある角度区間にわたって、円形に延びており、クラウン歯車13の端部は、弁の本体に取り付けられた部分と協働するのに適した半径方向面を有している。この半径方向面は、クラウン歯車13の円形の変位の終端ストッパを形成している。
【0033】
したがって、通常モードにおいて、モータ7の作動時、ガス入口フラップ6は、クラウン歯車13の回転により、直接的に回転駆動される一方、空気入口フラップ5は、クラウン歯車12が爪15を回転駆動するときにのみ、回転駆動されるようになっている。
【0034】
この実施例において、電気モータ7は、反時計回り方向に回転駆動されているとき、そのピストン8を介して、中間歯車9を時計回り方向に回転駆動する。一方、歯車9は、その歯10、11によって、反時計回り方向に2つのクラウン歯車12、13を回転駆動する。クラウン歯車12、13は、同一の中間歯車9によってではあるが、2つの異なる歯10、11の組によって、回転駆動される。一例として、本実施形態においては、駆動時におけるシャフト14と空気入口フラップ5との噛み合い率は約7であるが、電気モータ7のシャフト14とガス入口フラップ6との噛み合い率は約16である。
【0035】
次に、空気入口フラップ5による閉鎖の位相をずらすための機構を、図3、図4及び図5との関連で説明する。図3、図4及び図5は、ピニオン8の回転が異なった段階にあるクラウン歯車を示している。
【0036】
図3〜図4において、クラウン歯車12及び13は、ガス入口フラップ6を開くように、反時計回り方向に駆動されている一方、空気入口フラップ5は、角度スカラップ17の働きにより不動に保たれ続けている。図4の配置において、駆動終端ストッパ30を形成しているスカラップ17の端部は、爪15と接触するに至る。その後、クラウン歯車12の回転は、図5に示される位置に向けて継続し、爪15(及び、結果としてフラップ5)は、駆動終端ストッパ30により回転駆動される。したがって、空気入口フラップ5は、スカラップ17の存在に起因するガス入口フラップ6に対する一時的な位相のずれをもって閉じる。
【0037】
また、図3〜図5は、クラウン歯車12及び13に連係されている複数の終端ストッパを示している。空気通路には、弁の本体に取り付けられた頂部側空気終端ストッパ31が設けられている。頂部側空気終端ストッパ31は、空気入口フラップ5が全閉位置あるときに爪が到達する最端位置に相当している。従って、爪15は、通常作動において、一方向には駆動終端ストッパ30の作用によって、また他方向にはリターンスプリング(図示せず)の作用によって、底部側空気終端ストッパ16と頂部側空気終端ストッパ31との間で変位する。この変位は、空気入口フラップ5の全開位置と全閉位置の間の回転に対応する。図3において、空気入口フラップ5及びリターン終端ストッパ34を駆動するクラウン歯車12は、駆動爪15との接触に至らない。駆動用爪15は、三方弁が図2aの配置(空気フラップが開でガスフラップが閉)にあるときに、底部側空気終端ストッパ16まで戻される。歯車及びクラウン歯車の機構は、リターン終端ストッパ34と底部側空気終端ストッパの間に、爪15の厚さよりも大きな間隙を残すようになっている。この間隙の有用性については、図9を参照して、詳しく後述する。
【0038】
同時に、EGR通路には、2つの終端ストッパ、底部側ガス終端ストッパ32と頂部側ガス終端ストッパ33が備えられている。底部側ガス終端ストッパ32と頂部側ガス終端ストッパ33は、それぞれ、ガス入口フラップ6を駆動するクラウン歯車13の第1端部62と第2端部63によって想定される最端位置と関係付けられている。
【0039】
上記終端ストッパの作用を、本発明による三方弁の作動を示す図8〜9との関連で、より詳細に説明する。これらの図においては、簡略化のため、中間歯車9の中央歯11及び周辺歯10は、一体化されている。図6は、図2aの配置、即ち、空気入口フラップ5は全開であり、ガス入口フラップ6は全閉である、通常モードにおける弁1の作動に対応している。図7は、図2dの配置、即ち、空気入口フラップ5が全閉であり、ガス入口フラップ6が全開である、通常モードにおける三方弁1の作動に対応している。図8は、第1欠陥作動モードを示している。第1欠陥作動モードにおいては、空気入口フラップ5は、もはや駆動されず、爪15は頂部終端ストッパ31に達しておらず、ガス入口フラップ6は、全開位置を超えており、クラウン歯車13の第2端部63は、頂部側ガス終端ストッパ33に対する終端ストッパに到達している。最後に、図9は、第2欠陥作動モードを示している。第2欠陥作動モードにおいては、空気入口フラップ5は、もはや全開位置に戻らず、リターンスプリングが破損したか、さもなければ、空気通路の機構における問題個所が、スプリングが付与する力のみでの爪15の戻りを阻害していると推定される。
【0040】
図6及び図7を参照して、通常モードにおける本発明の作動を説明し、次に、図8に対応する欠陥モードにおける本発明の作動を説明する。
【0041】
図6には、図2の配置、即ち、再循環ガス導入前における、弁1の構成要素の状態を示す。中間歯車9は、ガスフラップを駆動するクラウン歯車13の第1端部62を、底部側ガス終端ストッパ32と隣接するところまで持ってきている。これは、ガス入口フラップ6の全開位置に対応している。同時に、空気フラップを駆動するクラウン歯車12は、その駆動終端ストッパ30が爪15から離れた位置にある。爪15は、空気入口フラップ5を全開位置に向けて引き戻そうとするリターンスプリングの作用の下で、終端ストッパ16と当接している。リターン終端ストッパ32は、クラウン歯車12が最端の角度位置の1つにあるにもかかわらず、爪15と接触していない。
【0042】
ガス再循環の有効化は、中間歯車9の回転によってもたらされる。一方、この回転は、ガスフラップのクラウン歯車13の回転を引き起こし、その第1端部62を、底部側ガス終端ストッパ32から引き離すように動かし、第2端部32を、頂部側ガス終端ストッパ33の近傍まで、ただし到達しない位置まで運んでいく。一方、これは、空気フラップの歯車12を回転させ、その結果、空気フラップの歯車12は、当初は、爪15の駆動終端ストッパ32に近づき、その後の第2段階においては、頂部側空気終端ストッパ31に接するまで回転する。ここで、三方弁1の状態は、空気入口フラップ5が全閉であり、ガス入口フラップ6が全開である図2dの場合に対応している図7に示すものとなる。
【0043】
図7は、中間歯車9の回転が、爪15の頂部側空気終端ストッパ31へと接触により妨げられ、回転を続けることができなくなっている状態を示している。この状態において、本発明では、クラウン歯車13の第2端部63が、ガス終端ストッパ33との接触に至ることはなく、それらの間に間隙が存在し続けるような歯車機構を備えている。この間隙は、弁がその通常作動モードにある限り、無くならないように設計されている。
【0044】
図8は、上述した誤作動の第1の場合、即ち、機構の歯の破損、クラッチの問題、又は爪15の破損の場合における弁1の作動を示している。この場合、クラウン歯車12及び13の噛み合いの1対1の関係は、もはや存在しない。中間歯車9による爪15の駆動に関する破損のために、爪15は、頂部側空気終端ストッパに到達することはなく、又は、到達したとしても、中間歯車の回転の継続に対して、いかなる抵抗も与えることはない。したがって、中間歯車9は、ガスフラップを駆動するクラウン歯車13を、ガス入口フラップ6の全開位置を超えて駆動し、その第2端部は、頂部側ガス終端ストッパ33とぶつかる。
【0045】
ガス入口フラップ6の位置を検出するセンサは、フラップ6、軸61、又はクラウン歯車13上のいずれかにおいて、EGR通路のどこかに配置され、クラウン歯車の追加の回転を検出し、空気通路故障警告を発する。
【0046】
本発明にしたがって構成された三方弁により、空気通路の正常作動の診断方法も導かれる。
【0047】
これは、ガス入口フラップを駆動するクラウン歯車13が、第1端部62が底部側ガス終端ストッパ32上にあって、ガス入口フラップ6が全閉位置にある位置から、ガス入口フラップが全開位置となるまで、完全な移動をするように、中間歯車9の回転を始めることに基いている。空気通路が正常である場合、中間歯車9の回転は、爪15の頂部側空気終端ストッパ31との接触により停止し、センサは、全開位置にあるガス入口フラップ6を検出する。さもなければ、爪は駆動されず、中間歯車9の回転を妨げることはない。中間歯車9は、クラウン歯車13を駆動し、クラウン歯車13は、ガス入口フラップ6の全開位置を超え、その第2端部63が頂部側ガス終端ストッパ63に接触することによってのみ停止する。この余剰の回転により、ガスフラップの位置を検出するセンサは、空気通路に発生した故障を検出する。この余剰診断方法は、例えば、車両が始動する毎に適用され、何らかの故障があれば、ダッシュボード上に表示して、運転者に通知される。
【0048】
空気通路の故障検出のための他の手段は、クラウン歯車13の第2端部63と、頂部側ガス終端ストッパ33との接触を検出する検出器を取り付けることである。
【0049】
図9は、上述した誤作動の第2の場合における弁1に与えられた配置を示す。この配置では、爪15は、終端ストッパ16まで戻っていない。このようなケースは、例えば、リターンスプリングの破損、さもなければ、制御チェインの中での破損の発生、又はリターンスプリングにより作用する力を克服できない問題個所の破損によって生じる。
【0050】
この場合、図2aに相当する位置への復帰のための電気モータの始動は、空気入口フラップ5を駆動するクラウン歯車12を時計回り方向に回転させ、リターン終端ストッパを構成するスカラップの端部を、底部側空気終端ストッパ16に向けて引き戻す。これがなされると、リターン終端ストッパは、駆動爪15を、ブロックされた位置から底部側終端ストッパ16に向けて駆動し、空気フラップを全開位置に持って行く。換言すると、電気モータ7により生成されるトルクが用いられ、スプリングの故障を緩和する。したがって、車両のエンジンは、三方弁の作動において観察される故障にも関わらず、機能し続ける。
【0051】
しかしながら、爪15と底部側空気終端ストッパ16の間には間隙が残され、その結果、通常作動において、リターン終端ストッパ34は、例えば振動動作において、駆動爪15の配置と干渉することはない。
【0052】
図10は、空気通路を調整するための手段の変形例を示す。この変形例においては、透視図で示されているクラウン歯車12と、巻き線の一部が図示されているリターンスプリング100とを備えている。クラウン歯車セグメント12とリターンスプリング100は、制御歯車50に連係されている。制御歯車50は、図示しない空気フラップに、回転に関して連結されており、歯付きクラウン歯車12に対して回転自由となっている。
【0053】
前記制御歯車50は、前記空気フラップが全開位置から全閉位置へ切り換わるときには、クラウン歯車12により駆動可能であり、前記空気フラップは、リターンモードにより駆動され、この図には示していないガス入口フラップ6に対して、一時的な位相のずれを有しているときには、リターンスプリングにより駆動可能である。
【0054】
このため、前記クラウン歯車12は、駆動終端ストッパ53を備えている。駆動終端ストッパ53は、前記空気フラップが全開位置から全閉位置に切り替えられるときに、制御歯車50の駆動終端ストッパ54と協働可能となっている。より具体的には、図10に示すように、前記クラウン歯車12は、その駆動終端ストッパ53が、弁の図2aに示す配置から図2bに示す配置への切り換えに対応する前記クラウン歯車12の回転の第1段階において、制御歯車50の駆動終端ストッパ54から、角度的に後退した位置にあるように構成されている。その後、2つの駆動終端ストッパ53、54は接触し、クラウン歯車12の回転の第2段階において、クラウン歯車12は、制御クラウン歯車50を駆動する。換言すると、この第2段階において、空気フラップは、弁のモータによって、その全開位置から全閉位置まで駆動される。
【0055】
反対方向への回転において、通常モードでは、スプリングは、制御歯車50を駆動し、制御歯車50は、図10に示すように、制御歯車の駆動終端ストッパ54を、空気フラップの全開位置にある底部側空気終端ストッパ16に対して押し付ける。底部側空気終端ストッパ16は、ここでは、弁の本体と同一の材料から形成されている。駆動終端ストッパ54は、底部側終端ストッパ16と協働するための半径方向延長部を有している。
【0056】
上述の誤作動の第1の場合、即ち、歯車機構の破損の場合を取り扱うことができる頂部側空気終端ストッパ31も、また本図に示されている。前記頂部側空気終端ストッパ31は、ここでは、弁本体と同一の材料から形成されている。同様の目的のために、制御歯車50には、診断終端ストッパ55が設けられ、前記制御歯車50と弁本体は、前記誤作動の第1の場合に前記頂部側空気終端ストッパ31と前記診断終端ストッパ55が接触状態に至るように構成されている。
【0057】
終端ストッパ間の干渉を回避するために、前記診断終端ストッパ55は、例えば、制御歯車50の駆動終端ストッパ54を備える表面と反対側の表面、又は/及び制御歯車50の周辺に設けられている。
【0058】
誤作動の第2の場合を処理するために、前記クラウン歯車12は、前記リターン手段の故障の場合に、制御歯車50のリターン終端ストッパ52と協働可能なリターン終端ストッパ71を備えている。
【0059】
上記の実施形態においてのように、前記リターン終端ストッパ71、52は、図10に示すように、空気入口フラップ5が全開位置にあるときに、角度方向のずれを有している。
【0060】
制御歯車50の前記リターン終端ストッパ52は、ここでは、前記制御歯車の駆動終端ストッパ54の角度方向延長部、及び/又は前記歯車の前記駆動終端ストッパ54と同一面上に設けられている。制御歯車の前記リターン終端ストッパ52及び駆動終端ストッパ54は、スペーサ56を介して、互いの上に配置されている。
【0061】
以上本発明を、一時的なずれを伴った空気通路の閉鎖が後続するEGR通路の漸進的な開放を伴うEGRループとの関係において用いられる三方弁をもって説明してきた。しかし本発明は、如何なるタイプの三方弁においても、完全に実施可能である。特に、本発明は、フラップを異なる方向に開閉する三方弁において適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 三方弁
2 空気入口
3 ガス入口
4 ガス出口
5 空気入口フラップ
6 ガス入口フラップ
7 電気モータ
8 ピニオン
9 中間歯車
10 周辺歯
11 中央歯
12 クラウン歯車
13 クラウン歯車
14 電気モータのシャフト
15 爪
16 終端ストッパ
17 スカラップ
21 内燃エンジン
22 排気マニホールド
23 吸気マニホールド
24 ターボチャージャー
26 圧縮機
28 EGRループ
29 クーラー
30 駆動終端ストッパ
31 頂部側空気終端ストッパ
32 底部側ガス終端ストッパ
33 頂部側ガス終端ストッパ
50 制御歯車
51 空気フラップの軸
52 リターン終端ストッパ
54 駆動終端ストッパ
55 診断終端ストッパ
56 スペーサ
61 ガスフラップの軸
62 クラウン歯車の第1端部
63 クラウン歯車の第2端部
71 リターン終端ストッパ
100 リターンスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁(1)の3つの通路の2つにそれぞれ配置された2つのゲート(5、6)を備える三方弁であって、前記弁は、前記ゲート(5、6)のための単一の制御手段(7〜11)と、前記単一の制御手段(7〜11)により制御され、かつそれぞれ前記2つのゲート(5、6)の1つを第1及び第2の位置の一方から他方へ駆動する第1及び第2の駆動手段(12、13、15、50)とを備え、前記制御手段(7〜11)及び前記第1及び第2の駆動手段(12、13、15、50)は、通常作動モードにおいて、前記2つのゲート(5、6)をそれぞれの第2の位置に同時に到達させるようになっている三方弁において、
前記弁は、前記駆動手段(12、15、50)の少なくとも1つのための最大変位終端ストッパ(31)を備えており、前記終端ストッパ(31)は、前記駆動手段(12、15、50)を、対応するゲート(5)が第2の位置にあるときに妨げるように構成されており、前記弁は、前記他方のゲート(6)の第2の位置を超える動きを検出する手段を更に備えていることを特徴とする三方弁。
【請求項2】
前記他方のゲート(6)の第2の位置を超える動きを検出する手段は、前記他方のゲート(6)の位置を計測する手段を備えている請求項1に記載の三方弁。
【請求項3】
前記最大変位終端ストッパ(31)は、前記第2の駆動手段(12、15、50)を妨げるようになっており、他方の前記ゲート(6)の基準変位を超える動きを検出する手段は、前記第1の駆動手段(13)のための終端ストッパ(33)を備えており、前記第1の駆動手段(13)のための終端ストッパ(33)は、前記第2の駆動手段(12、15、50)が、通常作動モードにおいてその終端ストッパ(31)上にあるときに、前記第1の駆動手段(13)の位置を超えて位置するようになっている請求項1又は2に記載の三方弁。
【請求項4】
前記他方のゲート(6)の基準変位を超える動きを検出する手段は、前記第1の駆動手段(13)に設けられた移動限界終端ストッパ(63)と、前記移動限界終端ストッパ(63)と前記第1の駆動手段(13)の終端ストッパ(33)との接触を検出する検出器とを備えている請求項3に記載の三方弁。
【請求項5】
前記ゲート(5、6)はフラップであり、前記制御手段(7〜11)及び前記駆動手段(12、13、15、50)は、前記フラップを旋回駆動するように構成されており、前記第1及び第2の駆動手段は、クラウン歯車(12、13)である請求項3又は4に記載の三方弁。
【請求項6】
前記第1の駆動手段の前記終端ストッパ(33)は、対応するクラウン歯車(13)の端部(63)を構成する面の1つと向き合うように配置されている請求項5に記載の三方弁
【請求項7】
前記第2の駆動手段は、前記第2の駆動手段のクラウン歯車(12)内に形成されたスカラップ(17)内で循環する駆動爪(15)を更に備え、前記第2の駆動手段と連係した終端ストッパ(31)は、前記弁(1)の本体に取り付けられており、前記駆動爪(15)と向き合って配置されている請求項5又は6に記載の三方弁。
【請求項8】
前記第2の駆動手段は、前記第1フラップに回転において連結されており、前記クラウン歯車(12)に対して回転自由な制御歯車(50)を更に備え、前記制御歯車(50)は、前記第1フラップが第1の位置から第2の位置に切り換わるとき、前記クラウン歯車(12)により回転駆動可能である請求項5又は6に記載の三方弁。
【請求項9】
前記制御歯車(50)は、前記第2のゲート(5)がその第2の位置にあるときに、最大変位終端ストッパ(31)に隣接するように構成された診断終端ストッパ(55)を備えている請求項8に記載の三方弁。
【請求項10】
前記第1及び第2の位置は、前記通路(2、3)の1つの開放及び閉鎖位置である請求項1〜9のいずれか1項に記載の三方弁。
【請求項11】
前記制御手段(7〜11)及び駆動手段(12、13、15、50)は、前記2つのゲート(5、6)を一時的な位相のずれをもって駆動するように構成されており、そのため、前記第1のゲート(5)が、その第1の位置からその第2の位置に、前記第1の駆動手段(13)を介して、対応する前記通路(3)を開放又は閉鎖するように変位され続ける一方で、前記第2のゲート(5)が、前記第1の位置から第2の位置に、前記第2の駆動手段(12、15、50)を介して、対応する前記通路(3)を開放又は閉鎖するように変位し始めるようになっている請求項1〜10のいずれか1項に記載の三方弁。
【請求項12】
前記第2の駆動手段(15)は、その第2の位置から第1の位置に、リターンスプリングにより戻されるようになっている請求項11に記載の三方弁。
【請求項13】
前記ゲート(5、6)は、その入口通路(2、3)内に配置され、これにより、前記弁は、自動車の内燃エンジンの吸気マニホールドに接続された低温側のためのEGR弁となっている請求項1〜12のいずれか1項に記載の三方弁。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の三方弁(1)の機構の完全性を試験する方法であって、前記第1の駆動手段(13)を、前記単一の制御手段(7〜11)を介して、連係された前記ゲート(6)の前記第1の位置から前記ゲートの前記第2の位置に向けての動きに設定するステップと、これに続いて実行されるステップとして、前記フラップによって到達された過剰な位置を計測するステップとを備える方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−50211(P2013−50211A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−182000(P2012−182000)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【出願人】(509019750)ヴァレオ システム ドゥ コントロール モトゥール (32)
【Fターム(参考)】