説明

窒化物系半導体素子、及び窒化物系半導体素子を作製する方法

【課題】酸化ガリウム基板上の半導体層と酸化ガリウム基板の主面との界面におけるオフセット電圧を低減可能な窒化物系半導体素子を提供する。
【解決手段】III族窒化物結晶層15は、酸化ガリウム基板13の主面13aを覆う。III族窒化物結晶層15は、III族構成元素としてアルミニウムを含むと共にアルミニウム以外の少なくとも2種の構成元素を含むIII族窒化物からなる。半導体積層17は、窒化ガリウム半導体層25を含む。第1の電極19は、半導体積層17の主面17a上に設けられる。第2の電極21は、酸化ガリウム基板13の裏面13b上に設けられる。III族窒化物結晶層15のバンドギャップE(15)は窒化ガリウム半導体層のバンドギャップE(GaN)より大きい。III族窒化物結晶層15のバンドギャップE(15)は4.8エレクトロンボルトより小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物系半導体素子、及び窒化物系半導体素子を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、Ga基板上に形成された発光素子が記載されている。Ga基板上に、バッファ層を低温成長する。バッファ層の成長は、窒素雰囲気中で摂氏350度〜摂氏550度の範囲で行われる。このバッファ層は、AlN層又はAlGaN層である。発光素子のp側電極及び電流拡散層はp型GaN層上に形成されており、発光素子のn側電極は、Ga基板上に形成されたn+型GaN層の露出面上に形成されている。このn+GaN層は、低温バッファ層上に直接に成長されたSiドープGaN厚膜である。低温成長バッファ層の厚さは20nm〜30nmである。低温成長バッファ層の成長は、水素、アンモニア、TMG及びTMAを成長炉に供給して成長されるので、低温成長バッファ層にはドーパントが添加されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−310765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された発光素子では、この発光素子に印加される電流は、p側電極からp+型GaN層、p型AlGaN層、MQW層、n型AlGaN層、及びn+GaN層を介してn側電極に流れる。低温バッファ層を酸化ガリウム基板上に形成する理由は以下のものである:水素雰囲気においてGa基板上に低温成長バッファ層を形成しても、Ga基板が変質しない低温成長バッファ層を成長する。
【0005】
酸化ガリウム基板に形成された電極を含む半導体素子では、酸化ガリウム基板上に窒化ガリウム系半導体領域が形成される。この半導体素子に印加される電流は、窒化ガリウム系半導体領域と酸化ガリウム基板の主面との界面を横切ってn側電極に流れる。発明者らの知見は、上記の界面が半導体素子にオフセット電圧を生じさせている。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、酸化ガリウム基板上の半導体層と酸化ガリウム基板の主面との界面におけるオフセット電圧を低減可能な窒化物系半導体素子を提供することを目的とし、また、酸化ガリウム基板を用いた窒化物系半導体素子を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、窒化物系半導体素子は、(a)主面及び裏面を有する導電性の酸化ガリウム基板と、(b)前記酸化ガリウム基板の前記主面を覆うIII族窒化物結晶層と、(c)前記III族窒化物結晶層とヘテロ接合を成しており、窒化ガリウム半導体層を含む半導体積層と、(d)前記半導体積層上に設けられた第1の電極と、(e)前記酸化ガリウム基板の前記裏面上に設けられた第2の電極とを備え、前記III族窒化物結晶層のバンドギャップは前記窒化ガリウム半導体層のバンドギャップより大きく、前記III族窒化物結晶層のバンドギャップは4.8エレクトロンボルトより小さく、前記III族窒化物結晶層は、III族構成元素としてアルミニウムを含むと共にアルミニウム以外の少なくとも2種の構成元素を含むIII族窒化物からなる。
【0008】
この窒化物系半導体素子によれば、窒化物系半導体素子に印加された電流は、半導体積層上に設けられた第1の電極から、酸化ガリウム基板の裏面上に設けられた第2の電極に流れる。この電流経路上にIII族窒化物結晶層が設けられている。このIII族窒化物結晶層はアルミニウムをIII族構成元素として含んでおり、そのバンドギャップは窒化ガリウム半導体層のバンドギャップより大きく、4.8エレクトロンボルトより小さい。このIII族窒化物結晶層により、当該窒化物系半導体素子におけるオフセット電圧を低減できる。
【0009】
本発明に係る窒化物系半導体素子では、最も基板に近い側の前記窒化ガリウム半導体層と、前記酸化ガリウム基板との間のオフセット電圧が0.5V以下であることができる。また、本発明に係る窒化物系半導体素子では、最も基板に近い側の前記窒化ガリウム半導体層と、前記酸化ガリウム基板との間のオフセット電圧が0.3V以下であることができる。さらに、本発明に係る窒化物系半導体素子では、最も基板に近い側の前記窒化ガリウム半導体層と、前記酸化ガリウム基板との間のオフセット電圧が0.2V以下であることができる。
【0010】
本発明に係る窒化物系半導体素子では、前記III族窒化物結晶層は、n型ドーパントを含み、前記n型ドーパントの濃度は、1×1016cm−3以上であることができる。この窒化物系半導体素子では、III族窒化物結晶層における抵抗を低減できる。
【0011】
本発明に係る窒化物系半導体素子では、前記III族窒化物結晶層はInAlGa1−X−YN層(0≦X<1、0<Y<1、0<X+Y≦1)を含むことができる。
【0012】
InAlGa1−X−YNを酸化ガリウム基板上に成長できる。また、このInAlGa1−X−YN層上に、窒化物系半導体素子のために適用可能な半導体層を成長できる。この構造により、オフセット電圧を低減できる。
【0013】
本発明に係る窒化物系半導体素子では、前記III族窒化物結晶層はAlGa1−ZN層を含み、前記AlGa1−ZN層のアルミニウム組成は0.2以上0,3以下であることができる。
【0014】
この窒化物系半導体素子によれば、上記のAlGa1−ZN層が酸化ガリウム基板上に設けられるとき、酸化ガリウム基板とAlGa1−ZN層との界面におけるオフセット電圧、及び当該窒化物系半導体素子のための半導体積層とAlGa1−ZN層との界面におけるオフセット電圧を低減できる。
【0015】
本発明に係る窒化物系半導体素子では、前記III族窒化物結晶層はInAlGa1−X−YN層を含み、前記InAlGa1−X−YN層のインジウム組成Xは0.1以下であり、前記InAlGa1−X−YN層のアルミニウム組成Yは0.15以上であり、前記InAlGa1−X−YN層のアルミニウム組成Yは0.35以下であることができる。
【0016】
この窒化物系半導体素子によれば、上記のInAlGa1−X−YN層が酸化ガリウム基板上に設けられるとき、酸化ガリウム基板とInAlGa1−X−YN層との界面におけるバンドギャップ差、及び当該窒化物系半導体素子のための半導体積層とInAlGa1−X−YN層との界面におけるバンドギャップ差を低減できる。
【0017】
本発明に係る窒化物系半導体素子では、前記III族窒化物結晶層は、前記酸化ガリウム基板の主面の法線軸の方向に配列された複数のInAlGaN層を含み、前記複数のInAlGaN層のバンドギャップは前記酸化ガリウム基板から前記窒化ガリウム半導体層への方向に小さくなることができる。
【0018】
複数のInAlGaN層を含むIII族窒化物結晶層の適用により、III族窒化物結晶層と該III族窒化物結晶層に隣接する領域との間の格子定数差を小さくできる。これ故に、窒化物系半導体素子では、オフセット電圧だけでなく、基板と半導体積層との間の格子定数差の低減も可能になる。
【0019】
本発明に係る窒化物系半導体素子では、前記III族窒化物結晶層は、傾斜組成を有するInAlGaN層を含み、前記InAlGaN層のバンドギャップは前記酸化ガリウム基板から前記窒化ガリウム半導体層への方向に小さくなることができる。
【0020】
組成傾斜のInAlGaN層を含むIII族窒化物結晶層の適用により、III族窒化物結晶層と該III族窒化物結晶層に隣接する領域との間の格子定数差を小さくできる。これ故に、この窒化物系半導体素子によれば、オフセット電圧だけでなく、格子定数差の低減も可能になる。
【0021】
本発明に係る窒化物系半導体素子では、前記酸化ガリウム基板は単結晶からなり、前記III族窒化物結晶層におけるa軸の格子定数は前記酸化ガリウム基板におけるb軸の格子定数と前記窒化ガリウム半導体層におけるa軸の格子定数との間にあることができる。
【0022】
このIII族窒化物結晶層の適用により、オフセット電圧だけでなく、III族窒化物結晶層と該III族窒化物結晶層に隣接する領域との間の格子定数差を小さくできる。
【0023】
本発明に係る窒化物系半導体素子では、前記酸化ガリウム基板はn導電性を有し、前記半導体積層は、p型窒化ガリウム系半導体層及び活性層を含み、前記窒化ガリウム半導体層は、前記酸化ガリウム基板と前記活性層との間に設けられ、前記活性層は、前記窒化ガリウム半導体層と前記p型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられており、前記半導体積層は、前記III族窒化物結晶層と前記活性層との間に設けられた一又は複数の窒化ガリウム系半導体層を含み、前記窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップは前記III族窒化物結晶層のバンドギャップより小さく、当該窒化物系半導体素子は発光素子を含む。
【0024】
この窒化物系半導体素子は、発光素子に適用可能である。
【0025】
本発明に係る窒化物系半導体素子では、当該窒化物系半導体素子は、前記第1及び第2の電極の一方から前記第1及び第2の電極の他方に電流が流れる縦型電子デバイスを含む。この窒化物系半導体素子は、縦型構造のダイオード又はトランジスタ等に適用可能である。また、本発明に係る窒化物系半導体素子では、当該窒化物系半導体素子は、前記第1及び第2の電極の一方から前記第1及び第2の電極の他方に電流が流れるダイオードを含む。この窒化物系半導体素子は、縦型構造のpnダイオード又はショットキダイオード等に適用可能である。
【0026】
本発明の別の側面は、窒化物系半導体素子を作製する方法である。この方法は、(a)導電性の酸化ガリウム基板を成長炉に配置する工程と、(b)窒素ガスを前記成長炉に供給しながら、摂氏600度以上摂氏700度以下の温度範囲に前記酸化ガリウム基板の温度を上昇する工程と、(c)前記酸化ガリウム基板の主面上に、前記温度範囲内の成長温度でIII族窒化物層を成長する工程と、(d)前記成長温度より高い温度で前記III族窒化物層の熱処理を行って、前記酸化ガリウム基板の前記主面を覆うようにIII族窒化物結晶層を該前記主面上に形成する工程と、(e)窒化ガリウム半導体層を含む半導体積層を前記III族窒化物結晶層上に成長する工程と、(f)前記半導体積層上に第1の電極を形成すると共に、前記酸化ガリウム基板の裏面に第2の電極を形成する工程とを備える。前記III族窒化物結晶層のバンドギャップは前記窒化ガリウム半導体層のバンドギャップより大きく、前記III族窒化物結晶層のバンドギャップは4.8エレクトロンボルトより小さく、前記III族窒化物結晶は、III族構成元素としてアルミニウムを含むと共にアルミニウム以外の少なくとも2種の構成元素を含むIII族窒化物からなる。
【0027】
この方法によれば、酸化ガリウム基板の主面を覆うように該主面上に上記の成長温度でIII族窒化物層を成長すると共にこの成長温度より高い温度でIII族窒化物層の熱処理を行ってIII族窒化物結晶層を主面上に形成する。この後に、窒化物系半導体素子のための半導体積層をIII族窒化物結晶層上に成長する。III族窒化物結晶層のバンドギャップは窒化ガリウム半導体層のバンドギャップより大きく、また4.8エレクトロンボルトより小さい。これ故に、窒化物系半導体素子の製造において、酸化ガリウム基板より小さいバンドギャップを有する窒化ガリウム系半導体からなる半導体積層を酸化ガリウム基板上に形成することに起因するオフセット電圧を低減可能になる。
【0028】
本発明に係る方法では、前記III族窒化物層の成長は、前記成長炉にn型ドーパントを供給しながら行われることができる。この結果、III族窒化物結晶層にはn型ドーパントが添加される。III族窒化物結晶層に起因する直列抵抗を低減できる。
【0029】
本発明に係る方法では、前記III族窒化物層の成長中に、前記成長炉への供給ガスを窒素ガスから水素ガスに切り替えることができる。この方法によれば、III族窒化物結晶層上に半導体積層を水素キャリアガスを用いて成膜できる。
【0030】
本発明に係る方法では、前記窒化物結晶層は三元AlGaN層及びは四元InAlGaN層の少なくともいずれか一方を含むことができる。
【0031】
本発明に係る方法では、前記III族窒化物結晶層はAlGa1−ZN層を含み、前記AlGa1−ZN層のアルミニウム組成Zは0.2以上0,3以下である。
【0032】
この方法によれば、窒化物系半導体素子の製造において、三元AlGaNを用いて、酸化ガリウム基板上の窒化物結晶層と酸化ガリウム基板の主面との界面、及び窒化物結晶層と半導体積層との界面におけるバンドギャップ差を小さくできる製造方法を提供できる。
【0033】
本発明に係る方法では、前記III族窒化物結晶層はInAlGa1−X−YN層を含み、前記InAlGa1−X−YN層のインジウム組成Xは0.1以下であり、前記InAlGa1−X−YN層のアルミニウム組成Yは0.15以上であり、前記InAlGa1−X−YN層のアルミニウム組成Yは0.35以下であることができる。
【0034】
この方法によれば、窒化物系半導体素子の製造において、四元InAlGaNを用いて、上記の界面におけるオフセット電圧を低減可能な製造方法を提供できる。
【0035】
本発明に係る方法では、前記III族窒化物結晶層は、前記酸化ガリウム基板の主面の法線軸の方向に配列された複数のInAlGaN層を含み、前記複数のInAlGaN層のバンドギャップは前記酸化ガリウム基板から前記窒化ガリウム半導体層への方向に小さくなる。
【0036】
この方法によれば、窒化物系半導体素子の製造において、四元InAlGaNを用いて、階段状のバンドギャップの変化によりオフセット電圧を低減可能な製造方法を提供できる。
【0037】
本発明に係る方法では、前記III族窒化物結晶層は、傾斜組成を有するInAlGaN層を含み、前記InAlGaN層のバンドギャップは前記酸化ガリウム基板から前記窒化ガリウム半導体層への方向に小さくなる。
【0038】
この方法によれば、窒化物系半導体素子の製造において、四元InAlGaNを用いて、傾斜組成によるバンドギャップの変化によりオフセット電圧を低減可能な製造方法を提供できる。
【0039】
本発明に係る方法では、前記半導体積層の形成において、窒化ガリウム半導体層は前記III族窒化物結晶層に接するように成長される。この方法によれば、窒化ガリウム半導体と酸化ガリウムとのバンドギャップに起因するオフセット電圧を低減できる。
【0040】
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0041】
以上説明したように、本発明の一側面によれば、酸化ガリウム基板上の半導体層と酸化ガリウム基板の主面との界面におけるオフセット電圧を低減可能な窒化物系半導体素子が提供される。また、本発明の別の側面によれば、この窒化物系半導体素子を製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本実施の形態に係る窒化物系半導体光素子の構造を示す図面である。
【図2】図2は、III族窒化物結晶層の層構造を示す図面である。
【図3】図3は、本実施の形態に係るエピタキシャルウエハを形成する方法、及び半導体素子を作製する方法の主要な工程を示す図面である。
【図4】図4は、本実施の形態に係るエピタキシャルウエハのための酸化ガリウム基板を示す図面である。
【図5】図5は、III族窒化物層の成長及び半導体積層の成長のためのシーケンスを示す図面である。
【図6】図6は、本実施の形態に係る形成方法及び作製方法の主要な工程を模式的に示す図面である。
【図7】図7は、本実施の形態に係る形成方法及び作製方法の主要な工程を模式的に示す図面である。
【図8】図8は、デバイスシミュレーションのためのデバイス構造及びシミュレーション結果を示す図面である。
【図9】図9は、電子デバイスの一例として作製したダイオードの構造、その特性、及び比較例の特性を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明の窒化物系半導体素子及びエピタキシャル基板、並びに窒化物系半導体素子及びエピタキシャル基板を作製する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0044】
図1は、本実施の形態に係る窒化物系半導体光素子の構造を示す図面である。窒化物系半導体素子11は、導電性の酸化ガリウム基板13と、III族窒化物結晶層15と、半導体積層17と、第1の電極19と、第2の電極21とを備える。酸化ガリウム基板13は、主面13a及び裏面13bを有する。III族窒化物結晶層15は、酸化ガリウム基板13の主面13aを覆っており、本実施例では主面13aの全面を覆う。III族窒化物結晶層15は、III族構成元素としてアルミニウムを含むと共にアルミニウム以外の少なくとも2種の構成元素を含むIII族窒化物からなる。半導体積層17は、窒化ガリウム半導体層25を含む。第1の電極19は、半導体積層17の主面17a上に設けられており、例えば主面17aに接触を成す。第2の電極21は、酸化ガリウム基板13の裏面13b上に設けられており、例えば裏面13bに接触を成す。III族窒化物結晶層15は、半導体積層17とヘテロ接合23aを成しており、また酸化ガリウム基板13の主面13aとヘテロ接合23bを成す。III族窒化物結晶層15のバンドギャップE(15)は窒化ガリウム半導体層のバンドギャップE(GaN)より大きい。III族窒化物結晶層15のバンドギャップE(15)は4.8エレクトロンボルトより小さく、この値は、例えば単結晶の酸化ガリウムのバンドギャップと同程度である。
【0045】
この窒化物系半導体素子11によれば、この素子に印加された電流は、半導体積層17上の第1の電極19から、酸化ガリウム基板13の裏面13b上の第2の電極21に流れる。この電流経路上にIII族窒化物結晶層15が設けられている。このIII族窒化物結晶層15はアルミニウムをIII族構成元素として含んでおり、そのバンドギャップは窒化ガリウム半導体層のバンドギャップより大きく、4.8エレクトロンボルトより小さい。このIII族窒化物結晶層15により、酸化ガリウム基板13上にIII族窒化物からなる積層17を形成することに起因するオフセット電圧を低減できる。
【0046】
III族窒化物結晶層15が単一の層からなるとき、III族窒化物結晶層15、酸化ガリウム基板13及び半導体積層17の三者において、酸化ガリウム基板13とIII族窒化物結晶層15との界面23aにおけるオフセット電圧と半導体積層17とIII族窒化物結晶層15との界面23bにおけるオフセット電圧との和は、参加我利宇宇と窒化ガリウムとの界面により電圧オフセットより小さい。
【0047】
窒化物系半導体素子11では、III族窒化物結晶層15にはn型ドーパントが添加されていることが良い。このn型ドーパントの濃度は、1×1016cm−3以上であることができる。これによって、オフセット電圧の低減効果を提供できると共に、III族窒化物結晶層15における抵抗を低減できる。
【0048】
窒化物系半導体素子11では、III族窒化物結晶層15はInAlGa1−X−YN層(0≦X<1、0<Y<1、0<X+Y≦1)を含むことが良い。III族窒化物結晶層のInAlGa1−X−YN層を酸化ガリウム基板上に成長できる。また、このInAlGa1−X−YN層上に、窒化物系半導体素子のために適用可能な半導体積層17を成長できる。III族窒化物結晶層15の材料は、例えば三元及び四元のIII族窒化物であり、具体例としてAlGaN、InAlGaN等が示される。三元混晶AlGaNは、ガリウムより小さい原子半径のアルミニウム構成元素のためGaNのバンドギャップより大きなバンドギャップを有する。四元混晶InAlGaNは、ガリウムより大きい原子半径のインジウム構成元素とアルミニウム構成元素との組み合わせによりGaNのバンドギャップより大きなバンドギャップを提供できる。四元混晶InAlGaNは、ガリウムより大きい原子半径のインジウム構成元素とアルミニウム構成元素との組み合わせによりGaNの格子定数と酸化ガリウム基板の主面における主要な格子定数との間の格子定数を提供できる。
【0049】
III族窒化物結晶層15はAlGa1−ZN層であることができる。上記のAlGa1−ZN層が酸化ガリウム基板上に設けられるとき、酸化ガリウム基板13とAlGa1−ZN層との界面23bにおけるオフセット電圧、及び当該窒化物系半導体素子のための半導体積層17とAlGa1−ZN層との界面23aにおけるオフセット電圧との和を、酸化ガリウムと窒化ガリウムとの界面におけるオフセット電圧より小さい。また、III族窒化物結晶層15のAlGa1−ZN層のアルミニウム組成は0.2以上であることが良く、0.3以下であることが良い。この組成範囲のAlGaNはオフセット電圧の低減に寄与できる。III族窒化物結晶層15のバンドギャップは例えば3.4エレクトロンボルト以上4.8エレクトロンボルト以下の範囲であることが良い。このIII族窒化物結晶層15のためのAlGa1−ZN層の厚さは、例えば10nm以上であり、また100nm以下であることができる。
【0050】
或いは、III族窒化物結晶層15はInAlGa1−X−YN層であることができる。上記のInAlGa1−X−YN層が酸化ガリウム基板13上に設けられるとき、酸化ガリウム基板13とInAlGa1−X−YN層との界面23bにおけるオフセット電圧、及び半導体積層17とInAlGa1−X−YN層との界面23aにおけるオフセット電圧の和、酸化ガリウムと窒化ガリウムとの界面におけるオフセット電圧より小さくできる。このIII族窒化物結晶層15のためのInAlGa1−X−YN層の厚さは、例えば10nm以上であり、また100nm以下であることができる。必要な場合には、酸化ガリウムのバンドギャップと同等のAlGaN層又はInAlGaN層を酸化ガリウム基板の表面にます成長しても良い。また、半導体積層の最下層が、その最下層のバンドギャップと同等のバンドギャップを有するInAlGaN層上に形成されていても良い。
【0051】
また、InAlGa1−X−YN層のインジウム組成Xはゼロより大きく0.1以下であることが良く、InAlGa1−X−YN層のアルミニウム組成Yは0.15以上であることが良い。InAlGa1−X−YN層のアルミニウム組成Yは0.35以下であることができる。この組成のInAlGaNはオフセット電圧の低減に寄与できる。
【0052】
III族窒化物結晶層15は、以下のような構造を有することができる。
【0053】
例えばIII族窒化物結晶層15は、図2(a)に示されるように、構成元素の互いに異なる組成を有する複数のIII族窒化物膜16a、16b、16c、16d、16e、16fを含むことができる。複数のIII族窒化物膜16a〜16fは、酸化ガリウム基板13の主面13aの法線軸Ax及び法線ベクトルNVの方向に配列される。III族窒化物膜16a〜16fの各々は、例えばInAlGaN層またはAlGaN層からなる。III族窒化物膜16a〜16fのバンドギャップは、酸化ガリウム基板13から半導体積層(窒化ガリウム半導体層)17への方向に小さくなる。III族窒化物膜16a〜16fの各々における膜厚は、10nm以上100nm以下であることができる。
【0054】
複数のInAlGaN層を含むIII族窒化物結晶層15を用いることによって、III族窒化物結晶層15と該III族窒化物結晶層15に隣接する領域13、17との間の格子定数差を小さくできる。これ故に、この窒化物系半導体素子11では、オフセット電圧だけでなく、III族窒化物結晶層15とこの層に隣接する半導体層との格子定数差の低減も可能になる。
【0055】
或いは、III族窒化物結晶層15は、図2(b)に示されるように、構成元素の組成に傾斜を有するIII族窒化物層14を含むことができる。ガリウムの原子半径より小さい元素、例えば構成元素のアルミニウムの組成が、酸化ガリウム基板13から半導体積層(窒化ガリウム半導体層)17への方向に小さくなるとき、同方向にIII族窒化物層14のバンドギャップが小さくなる。また、ガリウムの原子半径より大きな元素、例えば構成元素のインジウムの組成が酸化ガリウム基板13から半導体積層(窒化ガリウム半導体層)17への方向に大きくなるとき、同方向にIII族窒化物層14のバンドギャップが小さくなる。単一の構成元素に対して組成傾斜を行うことが簡便である。III族窒化物層14が複数のIII族構成元素を含むとき、一または複数の構成元素に対して組成傾斜を適用できる。
【0056】
III族窒化物結晶層15は、傾斜組成を有するInAlGaN層を含むことができる。このInAlGaN層のバンドギャップは酸化ガリウム基板13から半導体積層(窒化ガリウム半導体層)17への方向に小さくなる。III族窒化物結晶層15が組成傾斜のInAlGaN層を含むので、III族窒化物結晶層15とこの層に隣接する領域13、17との間の格子定数差を小さくできる。これ故に、この窒化物系半導体素子11において、オフセット電圧及び格子定数差の低減も可能になる。
【0057】
再び図1を参照すると、窒化物系半導体素子11では、半導体積層17は、活性層27及びp型窒化ガリウム系半導体層29を含むことができる。酸化ガリウム基板13は導電性を有し、酸化ガリウムへのドーパントの添加により、酸化ガリウム基板13はn導電性を示す。活性層27は、GaN半導体層25とp型窒化ガリウム系半導体層29との間に設けられる。当該窒化物系半導体素子11は、本実施例では、電流の印加に応答して発光する発光素子である。半導体積層17はIII族窒化物結晶層15と活性層27との間に設けられた一又は複数の窒化ガリウム系半導体層(本実施例では、GaN層25及びInGaN層31)を含む。必要な場合には、半導体積層17はp型窒化ガリウム系半導体層29と活性層27との間に設けられた一又は複数の窒化ガリウム系半導体層(本実施例では、アンドープGaN層33)を含むことができる。本実施例では、GaN半導体層25は、酸化ガリウム基板13と活性層25との間に設けられる。この窒化物系半導体素子11は、酸化ガリウムとこの上に設けられた窒化ガリウム系半導体からなる半導体積層との間におけるオフセット電圧を低減でき、また例えば発光素子に適用可能である。
【0058】
窒化物系半導体素子11では、活性層27は、例えば単一量子井戸構造または多重量子井戸構造を有することができる。多重量子井戸構造は、交互は配列された障壁層27a及び井戸層27bを含む。井戸層27bは、構成元素としてインジウムを含む窒化ガリウム系半導体、例えばInGaN、InAlGaN等からなることができ、障壁層27aは窒化ガリウム系半導体、例えばGaN、InGaN、InAlGaN等からなることができる。p型窒化ガリウム系半導体層29は、電子ブロック層29a、p型窒化ガリウム系半導体層29b、及びp型コンタクト層29cを含むことができる。
【0059】
図3は、本実施の形態に係るエピタキシャルウエハを形成する方法、及び半導体素子を作製する方法の主要な工程を示す図面である。図4は、本実施の形態に係るエピタキシャルウエハのための酸化ガリウム基板を示す図面である。図5は、III族窒化物層の成長及び半導体積層の成長のためのシーケンスを示す図面である。図6及び図7は、本実施の形態に係る形成方法及び作製方法の主要な工程を模式的に示す図面である。
【0060】
図3に示される工程フローの工程S101では、酸化ガリウム基板を準備する。図4(a)を参照すると、酸化ガリウムウエハといった基板41が示される。酸化ガリウム基板41は主面41a及び裏面41bを含む。この酸化ガリウムウエハは、例えばβ−Ga単結晶からなる。酸化ガリウムウエハは、表面と表面に反対側の裏面とを含み、表面及び裏面は互いに平行である。基板41の主面41aは、例えば単斜晶系酸化ガリウムの(100)面である。この主面41aは、(100)面に対して例えば1度以下の角度で傾斜することができる。図4(a)には、結晶座標系CRが示されており、結晶座標系CRはa軸、b軸及びc軸を有する。
【0061】
図4(b)を参照すると、単斜晶系酸化ガリウムの結晶格子が示されている。単斜晶系酸化ガリウムの結晶格子のa軸、b軸及びc軸の格子定数は、それぞれ、1.223nmであり、0.304nm及び0.58nmである。ベクトルVa、Vb、Vcは、それぞれ、a軸、b軸及びc軸の方向を示す。ベクトルVa及びVbは(001)面を規定し、ベクトルVb、Vcは(100)面を規定し、ベクトルVc及びVaは(010)面を規定する。ベクトルVa及びVbの成す角度α及びベクトルVb及びVcの成す角度γは90度であり、ベクトルVc及びVaの成す角度βは103.7度である。ウエハ主面11aの傾斜角AOFFを示すために、図4(b)には、主面41aが一点鎖線で示されている。
【0062】
工程S102では、成長炉10のサセプタ10a上に基板41を配置する。
【0063】
工程S103では、図5に示されるシーケンスに従って、酸化ガリウム基板41の主面41a上にIII族窒化物結晶層を形成する。工程S104では、時刻t0において、引き続くIII族窒化物層の成長のための第1の成膜温度TG1に向けて、窒素雰囲気に酸化ガリウム基板41の基板温度の上昇を開始する。時刻t1において、成膜温度TG1に到達する。III族窒化物層の成膜温度TG1における温度は摂氏600度以上であり、摂氏700度以下である。III族窒化物層の成長は、例えば有機金属気相成長(MOVPE)法等で行われる。図6(a)に示されるように、ガスG0を成長炉10に供給しながら、成長炉10内の酸化ガリウム基板41の温度を変更する。ガスG0は、例えば実質的に水素を含まず窒素ガスからなる。成長炉10に供給された窒素に酸化ガリウム基板41が触れているので、水素によって酸化ガリウム基板41が侵されることがない。これ故に、成長炉10に水素を供給するときに比べて、基板温度を高めることができる。酸化ガリウム基板11の基板温度が成膜温度TG1に到達した後に、酸化ガリウム基板41の基板温度を例えば摂氏600度の温度に維持する。
【0064】
工程S105では、酸化ガリウム基板41が十分に安定した第1の成膜温度TG1になった時刻t2において、図5(b)に示されるように成膜ガスG1を成長炉10に供給して、III族窒化物層43を成長する。工程S105では、時刻t2において、窒素(N)に加えて、有機III族化合物及び窒素原料を成長炉10に供給して、主面41a上にIII族窒化物層43の成長を開始する。III族窒化物層43は、例えばAlGaN、InAlGaNといった、少なくともIII族元素としてAlを含むIII族窒化物からなる。III族窒化物層43がAlGaNからなるとき、成長炉10には、例えば窒素、ガリウム原料(トリメチルガリウム:TMG)、アルミニウム原料(トリメチルアルミニウム:TMA)及び窒素原料(アンモニア:NH)を含む原料ガスG1が供給される。或いは、III族窒化物層43がInAlGaNからなるとき、成長炉10には、例えば窒素、ガリウム原料(トリメチルガリウム:TMG)、インジウム原料(トリメチルインジウム:TMI)、アルミニウム原料(トリメチルアルミニウム:TMA)及び窒素原料(アンモニア:NH)を含む原料ガスG1が供給される。
【0065】
III族窒化物層43の成膜が開始された後に、工程S105では、有機金属化合物及び窒素原料に加えて水素(H)の供給を開始する。本実施の形態では、時刻t3において水素の供給を開始する。III族窒化物層43がAlGaNからなるとき、時刻t3では、水素、窒素、TMG、TMA及びアンモニアが成長炉10に供給される。この方法によれば、水素の使用により、III族窒化物層43中への不純物の混入が低減される。必要な場合には、水素の供給を開始した後に、窒素の供給量を減少させることができ、またIII族窒化物層43の成長中に窒素の供給を停止することがよい。本実施例では、時刻t3〜t4の間に窒素の供給量を減少して、時刻t4において窒素の供給を停止する。また、時刻t3〜t4の間に水素の供給量を増加して、時刻t4において水素の増加を停止して一定量の水素を供給する。時刻t4では、例えば水素、TMG、TMA及びアンモニアが成長炉10に供給される。これ故に、時刻t3〜t4の期間は、ガスの切り替え期間である。時刻t4〜t5の期間に、例えば水素、TMG、TMA及びアンモニアを成長炉10に供給して、III族窒化物層43の残りを成長する。
【0066】
この方法によれば、III族窒化物層43の成長の開始前には水素を成長炉10aに供給することなくIII族窒化物層43の成長途中で水素の供給を開始するので、水素を含む雰囲気に酸化ガリウム基板41が直接にさらされることを防ぐことができる。III族窒化物層43の成長開始時点及び成長初期では成長炉10aは窒素雰囲気であるので、III族窒化物層43の成膜を摂氏600度以上の温度で行うことができる。III族窒化物層43の成長の途中で成長炉10aへの水素の供給を開始するので、III族窒化物層43の品質が向上される。また、III族窒化物層43の成長温度が摂氏700度以下であることができる。III族窒化物層43と基板41との反応、あるいはIII族窒化物層43の成膜時における基板へのダメージを防ぐためである。
【0067】
III族窒化物層43の厚さは1マイクロメートル以上であることができる。この厚さによれば、窒化物層43の表面にピット等の凹凸が生じないからである。また、このIII族窒化物層43上に成長される窒化ガリウム系半導体層の品質も良好になる。III族窒化物層43の厚さは20マイクロメートル以下であることができる。この厚さによれば、窒化ガリウム系半導体の剥がれが生じることがない。
【0068】
次いで、TMG及びTMAの供給を停止してIII族窒化物層43の成膜が完了した後に、工程S106におけるアニールのための熱処理温度に、酸化ガリウム基板41の基板温度の変更を開始する。時刻t6において、基板温度の上昇を開始する。この温度変更中に、例えば水素及びアンモニアが成長炉10に供給されている。時刻t8において第2の成膜温度TG2に到達する。この後に、酸化ガリウム基板41の基板温度を第2の成膜温度TG2に保つ。
【0069】
本実施例では、工程S106では、時刻t7〜t8〜t9の期間において、図7(a)に示されるように、酸化ガリウム基板41上に成長されたIII族窒化物層43の熱処理を成長炉10で行って、III族窒化物結晶層43を形成する。この熱処理は、成長温度TG1より高い温度TANで行われ、この熱処理温度は例えば摂氏1000度以上であることができ、また摂氏1100度以下であることができる。熱処理の期間には、例えばアンモニア及び水素を含むガスG2が成長炉10に供給される。III族窒化物層43は比較的低温で成長されたので、熱処理によりの期間に再結晶化が生じることがある。
【0070】
上記の熱処理により、酸化ガリウム基板41の主面41aの全面を覆うようにIII族窒化物結晶層45が形成される。III族窒化物結晶45は、III族構成元素としてアルミニウムを含むと共にアルミニウム以外の少なくとも2種の構成元素を含むIII族窒化物からなる。III族窒化物結晶層45のバンドギャップは、後の工程においてIII族窒化物結晶層45上に成長される半導体積層の最初の半導体層(例えばGaN)のバンドギャップより大きい。III族窒化物結晶層45のバンドギャップは4.8エレクトロンボルトより小さい。
【0071】
工程S107では、温度変更が完了した後に、成長炉10において、III族窒化物半導体素子のための半導体積層をIII族窒化物結晶層45上に成長して、エピタキシャル基板を形成する。半導体積層は、六方晶系の一又は複数の窒化ガリウム系半導体エピタキシャル層(以下「エピタキシャル層」と記す)47を含む。エピタキシャル層47は、酸化ガリウムのバンドギャップより小さいバンドギャップを有する。また、III族窒化物結晶層45のバンドギャップは酸化ガリウムのバンドギャップとエピタキシャル層47のバンドギャップとの間の値である。
【0072】
本実施例では、時刻t10〜t11では、水素及びアンモニアに加えて、成長されるべきエピタキシャル層15のIII族構成元素のための有機III族元素原料ガスを含む原料G3を成長炉10に供給する。この成膜は、第2の成膜温度TG2で行われる。本実施例では、TMGといった有機III族元素原料ガスG2を供給して、窒化ガリウム層をIII族窒化物結晶層45上に成長する。このGaN層のバンドギャップは、酸化ガリウムのバンドギャップより小さい。また、III族窒化物結晶層45のバンドギャップは酸化ガリウムのバンドギャップとGaN層のバンドギャップとの間の値である。これ故に、酸化ガリウムのバンドギャップとGaN層のバンドギャップとのバンドギャップ差は大きいけれども、III族窒化物結晶層45と酸化ガリウム基板41とのヘテロ接合、及びIII族窒化物結晶層45とGaN層とのヘテロ接合を利用して、III族窒化物結晶層45は当該半導体素子のオフセット電圧の低減に寄与できる。
【0073】
半導体積層は、例えばGaN、AlGaN、InGaN、InAlGaN等といった六方晶系のIII族窒化物層からなる。半導体積層の膜厚は、例えば1マイクロメートル以上であることができる。また、半導体積層の膜厚は、20マイクロメートル以下であることができる。半導体積層のエピタキシャル層47がGaNからなるとき、成長炉10には、トリメチルガリウム(TMG)及びアンモニアを含む原料ガスG3が供給される。GaNの成長温度は、例えば摂氏900度以上摂氏1200度以下であることができる。AlGaNの成長温度は、例えば摂氏900度以上摂氏1300度以下であることができる。InGaNの成長温度は、例えば摂氏600度以上摂氏1000度以下であることができる。InAlGaNの成長温度は、例えば摂氏600度以上摂氏1200度以下であることができる。
【0074】
また、半導体積層は、窒化ガリウム系半導体デバイスを構成する少なくとも一つの半導体層を含み、該半導体層は、アンドープ、p型ドーパント添加、及びn型ドーパントであることができる。半導体積層のエピタキシャル層にp導電性またはn導電性を付与するために、エピタキシャル層15を成長する際に、原料ガスに加えてドーパントガスを供給する。ドーパントとしては、p型導電性のためにシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を用い、n型導電性のためにシラン(例えばSiH)を用いることができる。
【0075】
また、酸化ガリウム基板41の主面41aが実質的に(100)面であるとき、この方法によれば、酸化ガリウム基板41上に成長される窒化ガリウム系半導体はほぼc面の表面を有する。
【0076】
単結晶の酸化ガリウム基板41では、III族窒化物結晶層におけるa軸の格子定数は酸化ガリウム基板41におけるb軸の格子定数とGaNにおけるa軸の格子定数との間にある。このIII族窒化物結晶層45の適用により、III族窒化物結晶層45と該III族窒化物結晶層45に隣接する領域47との間の格子定数差を小さくできる。これ故に、この窒化物系半導体素子のオフセット電圧だけでなく、格子定数差の低減も可能になる。
【0077】
窒化物系半導体素子が発光素子(例えば、発光ダイオード等)であるとき、III族窒化物結晶層45上に成長されるエピタキシャル層は第1導電型を有している。この第1導電型エピタキシャル層は、例えばn型GaN、n型AlGaN、n型InAlGaN等といった六方晶系のIII族窒化物からなる。第1導電型エピタキシャル層がGaN、AlGaN、InAlGaN等からなるときは、成長炉10には、水素、TMG、アンモニア及びシランを含む原料ガスを供給して、n型GaN膜を成長する。第1導電型エピタキシャル層がGaNからなるとき、第1導電型エピタキシャル層の成長温度は例えば摂氏900度以上摂氏1200度以下の範囲になり、第1導電型エピタキシャル層は、窒化ガリウム系半導体デバイスを構成する半導体層である。次いで、第1導電型エピタキシャル層上に活性層を形成する。活性層は、交互に配列された井戸層及び障壁層を含む。井戸層は、例えばGaN、InGaN、InAlGaN等からなる。障壁層は、例えばGaN、InGaN、InAlGaN等からなる。井戸層の成長温度は、例えば摂氏500度以上摂氏900度以下の範囲にあり、障壁層の成長温度は、例えば摂氏550度以上摂氏950度以下の範囲にある。この後に、第2導電型エピタキシャル層を活性層上に形成する。第2導電型エピタキシャル層は、例えばp型電子ブロック層及びp型コンタクト層を含むことができる。第2導電型エピタキシャル層がGaN、AlGaN、InAlGaNからなるとき、第2導電型エピタキシャル層の成長温度は例えば摂氏1000度である。
【0078】
これまでの窒化ガリウム系半導体の堆積により、エピタキシャル基板が得られる。
【0079】
再び図3を参照すると、次いで、工程S108では、エピタキシャル基板上に第1及び第2の電極を形成する。例えば、エピタキシャルウエハの半導体積層の上面に第1の電極を形成すると共に、エピタキシャルウエハの裏面上に第2の電極を形成する。これらの工程により、窒化ガリウム系半導体発光デバイスのための基板生産物が作製される。この方法によれば、酸化ガリウム基板41上に、半導体発光素子、そのための基板生産物及びそのためのエピタキシャル基板を作製できる。
【0080】
この方法によれば、酸化ガリウム基板41の主面41aの全面を覆うように上記の成長温度でIII族窒化物層43を成長すると共にこの成長温度より高い温度でIII族窒化物層43の熱処理を行ってIII族窒化物結晶層45を形成する。この後に、窒化物系半導体素子のための半導体積層をIII族窒化物結晶層45上に成長する。III族窒化物結晶層45のバンドギャップは窒化ガリウム半導体層のバンドギャップより大きく、また4.8エレクトロンボルトより小さい。これ故に、窒化物系半導体素子の製造において、酸化ガリウム基板41とこれより小さいバンドギャップを有する窒化ガリウム半導体を酸化ガリウム基板41上に形成することに起因するオフセット電圧を低減可能になる。
【0081】
(実施例1)
酸化ガリウム基板とGaNエピタキシャル層の間に、AlGa1−ZN(0<Z<0.5)層を挟んだデバイス構造を用いて、デバイスシミュレーションを行った。図8(a)は、デバイスシミュレーションのためのデバイス構造を示す図面である。デバイス構造は、Z軸及び動径Rによる円柱座標を用いて規定されている。シミュレーションのためのデバイスは、基板(厚さ10マイクロメートル、キャリア濃度5×1018cm−3)、この基板上のAlGaN層、及びAlGaN層上のGaN層(厚さ5マイクロメートル、キャリア濃度5×1018cm−3)を含み、半径15マイクロメートルの円柱形である。基板の裏面にはカソードが設けられ、GaN層上にはアノードが設けられる。このダイオード構造のモデルを用いて、AlGa1−ZN(0<Z<0.5)層の様々なAl組成と順方向電圧Vfとの関係を計算した。
【0082】
図8(b)は、Al組成と順方向電圧Vfとの関係を表すデバイスシミュレーション結果を示す図面である。
Al組成、順方向電圧Vf
0.0、0.525
0.1、0.38
0.2、0.28
0.3、0.27
0.4、0.35
0.5、0.525。
Al組成(0.1≦Z≦0.4)における順方向電圧は、Al組成がゼロ及び0.5における順方向電圧に比べて小さくなる。また、Al組成(0.2≦Z≦0.3)における順方向電圧は、Al組成0.1及び0.4における順方向電圧に比べて小さくなる。この結果、Al組成(0.2≦Z≦0.3)のAlGaNからなるIII族窒化物結晶層を用いるとき、そのオフセット電圧は、酸化ガリウムとGaN層との直接接触に比べて半分程度にまで低減される。また、GaNと酸化ガリウムとの間に、バンドギャップを階段状にゆるやかに変化させる階段状の組成変化のAlGaN、InAlGaNを挟んでも、オフセット電圧を低減できる。
【0083】
GaN(バンドギャップ:3.4eV)エピタキシャル成長膜とGa(バンドギャップ:4.8eV)基板との間に上記のAlGaN(バンドギャップEg:3.4eV<Eg<4.8eV)を介在させることによって、GaN(3.4eV)エピタキシャル成長膜とGa(4.8eV)基板との間に生じるオフセット電圧を低減できる。
【0084】
III族窒化物結晶層は単一膜又は多層膜からなることができる。III族窒化物結晶層は、単一膜では実質的に単一の組成を成すことができ、或いはIII族窒化物結晶層は一又は複数の構成元素に傾斜組成を成すことができる。これ故に、III族窒化物結晶層は、階段状もしくはスロープ状のバンドギャップを有することができる。例えば、3.4eV≦Eg≦4.8eVの範囲で階段状もしくはスロープ状に変化するバンドギャップを有する三元又は四元混晶を用いることができる。III族窒化物結晶層は、例えばAl及びInの少なくともいずれか一方の組成が単調に変化するInAlGaN、又はAl及びInの少なくともいずれか一方の徐々に変化するInAlGaNを含むことができる。InAlGaN多層膜は、Ga基板に近い層ほど高いバンドギャップとなると共に半導体層(例えばGaN層)に近い層ほど低いバンドギャップとなる多層構造を有する。AlGaNのAl組成が0.5程度であるとき、AlGaNのバンドギャップは、酸化ガリウムのバンドギャップと同程度になる。また、アンドープのInAlGaNは高抵抗であるので、基板の導電性を活かすためには、InAlGaNにn型ドーピングにすることが良い。逆方向耐電圧は比較的大きいままであるため、GaNエピタキシャル成長膜の上にLED構造を作製する場合、n電極はエピタキシャル膜ではなく酸化ガリウム基板にとることが良い。
【0085】
(実施例2)
図9(a)に示されるような構造のダイオードを電子デバイスの一例として作製した。このダイオードは、n型酸化ガリウム基板(厚さ400マイクロメートル)上にIII族窒化物結晶層(厚さ10nm)を介して、n型GaN層(厚さ3マイクロメートル)を成長した。この酸化ガリウム基板の裏面にはカソード電極を形成し、n型GaN層の表面にアノード電極(ショットキ電極)を形成した。図9(b)のダイオードは、厚さ400マイクロメートルのn型酸化ガリウム基板上にAl0.22Ga0.78N層を介して厚さ3マイクロメートルのn型GaN層を成長した。図9(c)のダイオードは、n型酸化ガリウム基板(厚さ400マイクロメートル)上にAlN層(厚さ10nm)を介してn型GaN層(厚さ3マイクロメートル)を成長した。図9(c)のダイオードのオフセット電圧は、図9(b)のダイオードに比べて0.3ボルト程度に低減された。これらの測定において、オフセット電圧を近似直線の電圧軸との交点によって規定した。
【0086】
(実施例3)
Ga基板上にInAlGaN層を成長して、LED構造のエピタキシャル積層を以下の成長シーケンスを用いて作製した。有機金属気相成長(MOVPE)装置内にGa基板をセットする。成長装置に窒素雰囲気中を形成した後に、摂氏600度〜摂氏700度(好ましくは摂氏600度)の温度に基板温度を上昇する。基板温度が安定した後に、窒素ガスと共に、原料ガスの一つであるアンモニアを成長装置に供給し始める。さらに、窒素ガス及びアンモニアと共に、III族原料TMA、TMI及びTMGを成長装置に供給して、InAlGaN層を成長し始める。成長開始の後に、V族及びIII族の原料ガスを供給しながら、雰囲気ガスを窒素から水素に切り替える。そして、引き続きInAlGaN層を成長する。これにより、基板のGaが水素によりエッチングされることを避けることができる。成膜の初期にのみ窒素雰囲気を用いることにより、比較的高温でもGa基板を保護しながら、III族窒化物層を成長できる。窒素ガス及びアンモニアを流し続けると共に、TMA、TMI及びTMGの供給を停止して、InAlGaN層の成長を終了する。このInAlGaN層は比較的低温で成長されるので、結晶性が十分には良くないことがある。この基板温度を摂氏1000度〜摂氏1100度の範囲のアニール温度でInAlGaN層を再結晶化する。成長装置にアンモニア及びTMGを供給して、再結晶化されたInAlGaN層上にGaNエピタキシャル膜の成膜を行う。この上に、発光素子のためのエピタキシャル成長又は縦型電子デバイスのためのエピタキシャル成長を行う。Ga基板(バンドギャップ4.8eV)とGaN(バンドギャップ3.4eV)エピタキシャル膜との間のオフセット電圧が0.5ボルト以下、或いは0.3ボルト以下であることができ、更に良好な特性では、0.2〜0.1ボルト以下であることができる。
【0087】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本実施の形態では、例えば発光ダイオードといった窒化物半導体発光素子を説明したけれども、本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。また、本実施の形態では、窒化物半導体素子として窒化物半導体発光素子について例示的に説明しているけれども、窒化物半導体素子は、例えば縦型トランジスタ(例えば縦型電界効果トランジスタ又は縦型HEMT等)及び縦型ダイオード(例えば縦型pnダイオード又は縦型ショットキダイオード等)といった窒化物電子デバイスであることもできる。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【符号の説明】
【0088】
10…成長炉、10a…サセプタ、11…窒化物系半導体素子、13…酸化ガリウム基板、14…組成傾斜のIII族窒化物層、15…III族窒化物結晶層、16a、16b、16c、16d、16e、16f…III族窒化物膜、17…半導体積層、19…第1の電極、21…第2の電極、13a…酸化ガリウム基板主面、13b…酸化ガリウム基板裏面、23a、23b…ヘテロ接合(界面)、25…GaN半導体層、27…活性層、29…p型窒化ガリウム系半導体層、31…InGaN層、33…アンドープGaN層、27a…障壁層、27b…井戸層、29a…電子ブロック層、29b…p型窒化ガリウム系半導体層、29c…p型コンタクト層、41…酸化ガリウム基板、41a…酸化ガリウム基板主面、41b…酸化ガリウム基板裏面、43…III族窒化物層、45…III族窒化物結晶、47…エピタキシャル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面及び裏面を有する導電性の酸化ガリウム基板と、
前記酸化ガリウム基板の前記主面を覆うIII族窒化物結晶層と、
前記III族窒化物結晶層とヘテロ接合を成しており、窒化ガリウム半導体層を含む半導体積層と、
前記半導体積層上に設けられた第1の電極と、
前記酸化ガリウム基板の前記裏面上に設けられた第2の電極と
を備え、
前記III族窒化物結晶層のバンドギャップは前記窒化ガリウム半導体層のバンドギャップより大きく、
前記III族窒化物結晶層のバンドギャップは4.8エレクトロンボルトより小さく、
前記III族窒化物結晶層は、III族構成元素としてアルミニウムを含むと共にアルミニウム以外の少なくとも2種の構成元素を含むIII族窒化物からなる、ことを特徴とする窒化物系半導体素子。
【請求項2】
最も基板に近い側の前記窒化ガリウム半導体層と、前記酸化ガリウム基板との間のオフセット電圧が0.5V以下であることを特徴とする請求項1に記載された窒化物系半導体素子。
【請求項3】
最も基板に近い側の前記窒化ガリウム半導体層と、前記酸化ガリウム基板との間のオフセット電圧が0.3V以下であることを特徴とする請求項1に記載された窒化物系半導体素子。
【請求項4】
最も基板に近い側の前記窒化ガリウム半導体層と、前記酸化ガリウム基板との間のオフセット電圧が0.2V以下であることを特徴とする請求項1に記載された窒化物系半導体素子。
【請求項5】
前記III族窒化物結晶層はn型ドーパントを含み、
前記n型ドーパントの濃度は1×1016cm−3以上である、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された窒化物系半導体素子。
【請求項6】
前記III族窒化物結晶層はInAlGa1−X−YN層(0≦X<1、0<Y<1、0<X+Y≦1)を含む、ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載された窒化物系半導体素子。
【請求項7】
前記III族窒化物結晶層はAlGa1−ZN層を含み、
前記AlGa1−ZN層のアルミニウム組成Zは0.2以上0.3以下である、ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載された窒化物系半導体素子。
【請求項8】
前記III族窒化物結晶層はInAlGaN層を含み、
前記InAlGa1−X−YN層のインジウム組成Xは0.1以下であり、
前記InAlGa1−X−YN層のアルミニウム組成Yは0.15以上であり、
前記InAlGa1−X−YN層のアルミニウム組成Yは0.35以下である、ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載された窒化物系半導体素子。
【請求項9】
前記III族窒化物結晶層は、前記酸化ガリウム基板の前記主面の法線軸の方向に配列された複数のInAlGaN層を含み、
前記複数のInAlGaN層のバンドギャップは前記酸化ガリウム基板から前記窒化ガリウム半導体層への方向に小さくなる、ことを特徴とする請求項1〜請求項6及び請求項8のいずれか一項に記載された窒化物系半導体素子。
【請求項10】
前記III族窒化物結晶層は、傾斜組成を有するInAlGaN層を含み、
前記InAlGaN層のバンドギャップは前記酸化ガリウム基板から前記窒化ガリウム半導体層への方向に小さくなる、ことを特徴とする請求項1〜請求項6、請求項8及び請求項9のいずれか一項に記載された窒化物系半導体素子。
【請求項11】
前記酸化ガリウム基板は単結晶からなり、
前記III族窒化物結晶層におけるa軸の格子定数は前記酸化ガリウム基板におけるb軸の格子定数と前記窒化ガリウム半導体層におけるa軸の格子定数との間にある、ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載された窒化物系半導体素子。
【請求項12】
前記酸化ガリウム基板はn導電性を有し、
前記半導体積層は、p型窒化ガリウム系半導体層及び活性層を含み、
前記窒化ガリウム半導体層は、前記酸化ガリウム基板と前記活性層との間に設けられ、
前記活性層は、前記窒化ガリウム半導体層と前記p型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられており、
前記半導体積層は、前記III族窒化物結晶層と前記活性層との間に設けられた一又は複数の窒化ガリウム系半導体層を含み、
前記窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップは前記III族窒化物結晶層のバンドギャップより小さく、
当該窒化物系半導体素子は発光素子を含む、ことを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載された窒化物系半導体素子。
【請求項13】
当該窒化物系半導体素子は、前記第1及び第2の電極の一方から前記第1及び第2の電極の他方に電流が流れる縦型電子デバイスを含む、ことを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載された窒化物系半導体素子。
【請求項14】
当該窒化物系半導体素子は、前記第1及び第2の電極の一方から前記第1及び第2の電極の他方に電流が流れるダイオードを含む、ことを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載された窒化物系半導体素子。
【請求項15】
窒化物系半導体素子を作製する方法であって、
導電性の酸化ガリウム基板を成長炉に配置する工程と、
窒素ガスを前記成長炉に供給しながら、摂氏600度以上摂氏700度以下の温度範囲に前記酸化ガリウム基板の温度を上昇する工程と、
前記酸化ガリウム基板の主面上に、前記温度範囲内の成長温度でIII族窒化物層を成長する工程と、
前記成長温度より高い温度で前記III族窒化物層の熱処理を行って、前記酸化ガリウム基板の前記主面を覆うようにIII族窒化物結晶層を前記主面上に形成する工程と、
窒化ガリウム半導体層を含む半導体積層を前記III族窒化物結晶層上に成長する工程と、
前記半導体積層上に第1の電極を形成すると共に、前記酸化ガリウム基板の裏面に第2の電極を形成する工程と
を備え、
前記III族窒化物結晶層のバンドギャップは前記窒化ガリウム半導体層のバンドギャップより大きく、
前記III族窒化物結晶層のバンドギャップは4.8エレクトロンボルトより小さく、
前記III族窒化物結晶層はアルミニウムをIII族構成元素として含む、ことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記III族窒化物層の成長は、前記成長炉にn型ドーパントを供給しながら行われる、ことを特徴とする請求項15に記載された方法。
【請求項17】
前記III族窒化物層の成長中に、前記成長炉への供給ガスが窒素ガスから水素ガスに切り替えられる、ことを特徴とする請求項15または請求項16に記載された方法。
【請求項18】
前記III族窒化物結晶層はAlGa1−ZN層を含み、
前記AlGa1−ZN層のアルミニウム組成Zは0.2以上0.3以下であり、
前記III族窒化物結晶層のバンドギャップは3.4エレクトロンボルト以上4.8エレクトロンボルト以下の範囲にある、ことを特徴とする請求項15〜請求項17のいずれか一項に記載された方法。
【請求項19】
前記III族窒化物結晶層はInAlGa1−X−YN層を含み、
前記InAlGa1−X−YN層のインジウム組成Xは0.1以下であり、
前記InAlGa1−X−YN層のアルミニウム組成Yは0.15以上である、ことを特徴とする請求項15〜請求項17のいずれか一項に記載された方法。
【請求項20】
前記III族窒化物結晶層は、前記酸化ガリウム基板の主面の法線軸の方向に配列された複数のInAlGaN層を含み、
前記複数のInAlGaN層のバンドギャップは前記酸化ガリウム基板から前記窒化ガリウム半導体層への方向に小さくなる、ことを特徴とする請求項15〜請求項17及び請求項19のいずれか一項に記載された方法。
【請求項21】
前記III族窒化物結晶層は、傾斜組成を有するInAlGaN層を含み、
前記InAlGaN層のバンドギャップは前記酸化ガリウム基板から前記窒化ガリウム半導体層への方向に小さくなる、ことを特徴とする請求項15〜請求項17及び請求項19のいずれか一項に記載された方法。
【請求項22】
前記半導体積層の形成において、前記窒化ガリウム半導体層は前記III族窒化物結晶層に接するように成長される、ことを特徴とする請求項15〜請求項21のいずれか一項に記載された方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−61086(P2011−61086A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210793(P2009−210793)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】