経路探索方法、経路案内システム、ナビゲーション装置及び統計処理サーバ
【課題】推奨経路を的確に探索することができる経路探索方法、経路案内システム、ナビゲーション装置及び統計処理サーバを提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置1は、車両が所定時間内に到達する距離範囲を、各メッシュ及び各時間帯に応じてそれぞれ予測したスライス幅データを記憶するスライス幅DB30を用いて、現在の自車位置を中心とした環状の各円形エリアを、現在時刻を基準として時系列的にそれぞれ設定する。また、各メッシュ毎且つ各時間帯毎の交通状況に基づいて、各リンクに対して生成された交通データを記憶する交通DB35を用いて各円形エリア内のリンクに対し、各円形エリアに対応する時間帯の交通データを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索する。
【解決手段】ナビゲーション装置1は、車両が所定時間内に到達する距離範囲を、各メッシュ及び各時間帯に応じてそれぞれ予測したスライス幅データを記憶するスライス幅DB30を用いて、現在の自車位置を中心とした環状の各円形エリアを、現在時刻を基準として時系列的にそれぞれ設定する。また、各メッシュ毎且つ各時間帯毎の交通状況に基づいて、各リンクに対して生成された交通データを記憶する交通DB35を用いて各円形エリア内のリンクに対し、各円形エリアに対応する時間帯の交通データを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路探索方法、経路案内システム、ナビゲーション装置及び統計処理サーバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の円滑な走行を図るために、高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems)の開発が進められている。この開発分野の一つに、ナビゲーションシステ
ムの高度化がある。この一例として、VICS(Vehicle Information and Communication System)機能を搭載したナビゲーション装置がある。このナビゲーション装置では、ビーコン、FM多重放送により発信された渋滞情報を受信し、現在発生している渋滞を回避するための経路案内を行う。
【0003】
また、特許文献1では、全国地図を分割するメッシュ領域毎に記憶された統計情報を記憶し、その統計情報を用いて、推奨経路を探索するナビゲーション装置が記載されている。統計情報は、各メッシュ領域毎に、時間帯、平日・休日等の要因ごとに統計された交通情報であって、各リンクの旅行時間、又は移動速度等から構成される。そして、ナビゲーション装置は、出発地から、各メッシュ領域への基準到達時刻を予測し、予め格納された統計情報のうち、到着時刻が含まれる時間帯に対応する統計情報を用いて、旅行時間が短縮される経路を探索する。このため、現時点の道路交通情報を用いるよりも、的確な推奨経路を探索することができる。
【特許文献1】特開2004−301677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記したナビゲーション装置では、四角形状のメッシュ領域の代表座標を決め、その代表座標と現在地との直線距離を、予め設定した速度で除算することにより、そのメッシュ領域への到達時刻を予測する。従って、多数のメッシュ領域への到達時刻を算出するため、処理量が多くなるばかりか、特にメッシュ領域の角部、周辺部では、予測到達時刻の精度が低下する可能性がある。その結果、実際の到着時刻とは大幅に異なる時間帯の統計情報を用いて推奨経路を探索してしまう可能性がある。
【0005】
また、上記したナビゲーション装置では、代表座標への直線距離を、一定の速度で除算することにより、到達時刻を予想している。このため、到達時刻を予測する工程において、地域性、時間帯、平日・休日等の要因を考慮していない。従って、予測到着時刻の精度が低くなる虞がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、推奨経路を的確に探索することができる経路探索方法、経路案内システム、ナビゲーション装置及び統計処理サーバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、現在の自車位置から目的地までの経路を探索する経路探索方法において、車両が所定時間内に到達する距離範囲を各区域及び各時間帯に応じてそれぞれ予測した予測距離範囲データに基づき、現在の自車位置を中心とした予測距離範囲を、現在時刻を基準として時系列的に設定するとともに、各リンクに対し、各時間帯毎の交通状況に基づき生成された各交通データのうち、前記各予測
距離範囲に対応する時間帯の前記交通データを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索することを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、現在の自車位置から目的地までの経路を案内する経路案内システムにおいて、道路交通情報、又は各車両から収集したプローブ情報を統計処理して、車両が所定時間内に到達する距離範囲を、各区域及び各時間帯に応じてそれぞれ予測した予測距離範囲データを生成する第1統計処理手段と、前記道路交通情報又は前記プローブ情報に基づいて、各リンク毎に、各時間帯の交通状況に基づく交通データを生成する第2統計処理手段と、前記予測距離範囲データに基づいて、現在の自車位置を中心とした予測距離範囲を、現在時刻を基準として時系列的にそれぞれ設定する予測距離範囲設定手段と、設定された前記各予測距離範囲内のリンクに対し、その予測距離範囲にそれぞれ対応する時間帯の前記交通データを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索する探索手段とを備えたことを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、車両に搭載されたナビゲーション装置において、車両が所定時間内に到達する距離範囲を各区域及び各時間帯に応じてそれぞれ予測した予測距離範囲データを記憶する予測距離範囲データ記憶手段と、前記予測距離範囲データに基づいて、現在の自車位置を中心とした予測距離範囲を、現在時刻を基準として時系列的に設定する予測距離範囲設定手段と、各リンクに対し、各時間帯毎の交通状況に基づいて生成された交通データを記憶する交通データ記憶手段と、設定された前記各予測距離範囲内のリンクに対し、その予測距離範囲にそれぞれ対応する時間帯の前記交通データを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索する探索手段とを備えたことを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のナビゲーション装置において、前記予測距離範囲データ記憶手段は、前記予測距離範囲データを地図メッシュ毎に記憶しており、前記予測距離範囲設定手段は、自車位置が含まれる地図メッシュを検出し、検出された地図メッシュに対応する前記予測距離範囲データを読み出して、予測距離範囲を設定することを要旨とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載のナビゲーション装置において、前記予測距離範囲設定手段は、現在の自車位置を中心として、同心円状の前記各予測距離範囲を設定することを要旨とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項3〜5のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、前記予測距離範囲設定手段は、最も現在の前記自車位置に近い前記予測距離範囲に対し、前記現在時刻及び前記予測距離範囲に対応する時間帯の同期をとって、前記予測距離範囲データを補正することを要旨とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項3〜6のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、前記予測距離範囲データは、区域、季節、曜日、祝日又は連休期間毎に生成されていることを要旨とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項3〜7のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、前記予測距離範囲データ、又は各時間帯毎の交通状況に基づいた前記交通データを、外部から受信する受信手段をさらに備えたことを要旨とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項3〜8のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、前記車両の走行した道路の所要時間、時間帯、車速を含む走行履歴を記憶する走行履歴記憶手段と、前記走行履歴に基づき、前記予測距離範囲データ又は前記交通データを生成又は更新する走行学習手段とを備えたことを要旨とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、経路探索のためのデータを統計処理する統計処理サーバにおいて、道路交通情報、又は各車両から収集したプローブ情報を統計処理して、車両が所定時間内に到達する距離範囲を、各区域及び各時間帯に応じてそれぞれ予測した予測距離範囲データを生成する第1統計処理手段と、前記道路交通情報又は前記プローブ情報に基づいて、各リンク毎に、各時間帯の交通状況に基づく交通データを生成する第2統計処理手段とを備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、車両の予測距離範囲が、時間帯毎に、時系列的に予測される。そして、各時間帯に到達する範囲を示す予測距離範囲内において、その時間帯に応じた交通データが用いられる。従って、時間帯に応じた交通データを探索に用いる際、車両がそのリンクに到達する時間帯を精度よく予測できるので、的確な時間帯の交通データを用いることができる。このため、時間的変化を加味して、車両通過時に渋滞が発生する道路、渋滞が解消される道路を予測できる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、第1及び第2統計処理手段は、車両の予測距離範囲を、時間帯毎に、時系列的に予測した予測距離範囲データ及び各時間帯の交通状況を示す交通データを生成する。従って、探索手段は、時間帯に応じた交通データを探索に用いる際、車両がそのリンクに到達する時間帯を精度よく予測することができるので、的確な時間帯の交通データを用いることができる。このため、時間的変化を加味して、車両通過時に渋滞が発生する道路、渋滞が解消される道路を予測できる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、車両の予測距離範囲が、時間帯毎に、時系列的に予測される。そして、各時間帯に到達する範囲を示す予測距離範囲内において、その時間帯に応じた交通データが用いられる。従って、時間帯に応じた交通データを探索に用いる際、車両がそのリンクに到達する時間帯を精度よく予測することができるので、的確な時間帯の交通データを用いることができる。このため、時間的変化を加味して、車両通過時に渋滞が発生する道路、渋滞が解消される道路を予測できる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、予測距離範囲データを地図メッシュ毎に記憶する。このため、予測距離範囲設定手段は、自車位置が含まれる地図メッシュの予測距離範囲データを読み出せば良いので、例えば自車位置から所定距離内のリンクを検出し、そのリンクに対応する予測距離範囲データを逐次検索するよりも、処理を軽減することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、現在の自車位置を中心として、同心円状の各予測距離範囲が設定されるので、時間的変化に伴った予測距離範囲を算出することができる。
請求項6に記載の発明によれば、最も現在位置に近い予測距離範囲を、現在時刻及び予測距離範囲の時間帯の同期をとって、予測距離範囲データを補正する。このため、より正確に予測距離範囲を設定することができるので、的確な時間帯の交通データを用いることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、予測距離範囲データは、区域、季節、曜日、祝日、連休期間等の要因毎に生成されている。このため、車両の現在位置から所定時間内に到達する距離範囲をより的確に算出することができる。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、ナビゲーション装置は、予測距離範囲データ、交通データを受信する。このため、逐次受信した新しいデータを用いて経路探索を行うことができるので、経路探索の精度が向上する。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、ナビゲーション装置は、走行履歴に基づき、予測距離範囲データ又は交通データを更新する学習機能を備える。このため、逐次更新した新しいデータを用いて経路探索を行うことができるので、経路探索の精度が向上する。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、統計処理サーバは、道路交通情報又はプローブ情報に基づき、車両が所定時間内に到達する距離範囲を予測した予測距離範囲データ、及び時間帯毎の交通データを生成する。このため、これらのデータを用いて、時間的変化を加味して、渋滞状況・混雑状況を予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図9に従って説明する。図1は、本実施形態における、自動車に搭載されたナビゲーション装置1の説明図である。
図1に示すように、ナビゲーション装置1のナビユニット2は、予測距離範囲設定手段、探索手段としてのCPU10、RAM11、経路案内プログラムを格納したROM12、GPS受信部14を備えている。CPU10は、GPS(Global Positioning System
)衛星からGPS受信部14が受信した、緯度・経度等の座標を示す位置検出信号を入力して、電波航法により自車両の絶対位置を算出する。また、CPU10は、ナビユニット2が備える車両側I/F15を介して、自車に設けられた車速センサ40及びジャイロセンサ41から車速パルス、角速度をそれぞれ入力する。そして、CPU10は、車速パルス及び角速度を用いる自律航法により、基準位置からの相対位置を算出し、電波航法で算出した絶対位置と組み合わせて自車位置を特定する。
【0027】
また、ナビユニット2の通信インターフェース(以下、通信I/F16という)は、路側等に設置された電波ビーコン、光ビーコンや、FM多重放送の基地局から、VICS信号を受信する。VICS信号には、現在地から進行方向において数十km〜数百kmの範囲の道路状況を示す道路交通情報や、都道府県単位の道路交通情報が含まれている。
【0028】
また、ナビユニット2は、地理データ記憶部17を備えている。地理データ記憶部17は、内蔵ハードディスク、又は光ディスク等の外部記憶媒体である。この地理データ記憶部17には、目的地までの経路を探索するための各経路ネットワークデータ(以下、経路データ18という)と、出力手段としてのディスプレイ25に地図画面25aを出力するための各地図描画データ19とが格納されている。
【0029】
図2(a)に示すように、経路データ18は、全国を各区域に区画したリージョン毎のデータであって、ヘッダ18a、交差点や道路の端点を示すノードの番号等を含むノードデータ18b、ノード間のリンクのID等を含むリンクデータ18c、リンクコスト18d、ノードやリンクの座標を示す座標データ18e、バージョン18f等を有している。ヘッダ18aは、全国を区画した区域としてのメッシュの番号等が格納されている。リンクデータ18cには、リンクID、接続ノード、通行規制等のデータが含まれている。リンクコスト18dは、各リンクのリンク長、道路幅に基づくデータであって、固定値である。CPU10は、この経路データ18を用いて、ダイクストラ法等、公知の方法により、旅行時間が短縮化される経路や、走行しやすい経路等、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索する。
【0030】
また、地図描画データ19は、全国の地図を分割したメッシュ(パーセル)毎に格納され、広域の地図から狭域の地図まで各階層毎に分かれている。図2(b)に示すように、地図描画データ19は、ヘッダ19a、道路データ19b、背景データ19c等を有している。ヘッダ19aは、メッシュの番号、データの階層等を有している。道路データ19bは、地図上に表示される、形状補間データ、道路幅等、道路の形状を示すデータである。背景データ19cは、道路、市街地、河川等を描画する描画データである。
【0031】
ナビユニット2が備える画像プロセッサ20(図1参照)は、CPU10に基づき、自車位置周辺の地図を描画するための地図描画データ19を地理データ記憶部17から読出す。そして、出力用のデータを生成し、画像メモリ21に一時記憶する。さらに、出力用データに基づく映像信号をディスプレイ25に出力し、図1に示すような地図画面25aを表示する。また、画像プロセッサ20は、この地図画面25aに、自車位置を示す指標25bを重畳する。
【0032】
また、ディスプレイ25には、操作スイッチ23が隣設されている。操作スイッチ23が操作されると、ナビユニット2が備える外部入力I/F22は、操作スイッチ23の入力操作に応じた信号をCPU10に出力する。
【0033】
さらに、ナビユニット2の音声プロセッサ24は、CPU10の制御に従って、図示しない音声ファイルデータベースから音声ファイルを読出す。そして、経路を案内する音声信号等をスピーカ26に出力する。
【0034】
また、ナビユニット2は、予測距離範囲データとしてのスライス幅データ31を記憶した、予測距離範囲データ記憶手段としてのスライス幅データベース(DB)30と、交通データ36を記憶した交通データ記憶手段としての交通データベース(DB)35とを備えている。図3は、スライス幅データ31のデータ構造を説明する説明図である。スライス幅データ31は、地図メッシュ(以下、メッシュという)ID31a、季節31b、曜日31c、距離範囲としてのスライス幅31dから構成されている。メッシュID31aは、全国を10km四方に区画したメッシュに割り当てられたIDである。このメッシュID31aの下位のデータは、季節31bとなっている。季節31bは、スライス幅データ31を春・夏・秋・冬・長期連休に分けている。さらに下位にある曜日31cは、各曜日と、祝日とからなる。
【0035】
スライス幅31dは、メッシュ毎に記憶されており、そのメッシュにおいて、所定時間としての15分の間に自動車が走行可能な距離範囲を予測したデータであって、15分間の時間帯毎に、24時間分のデータが記憶されている。即ち、各スライス幅31dは、メッシュID31a(地域性)、季節31b、曜日31c、時間帯の要因が加味された予測データであって、本実施形態では、管理センターにより、VICS信号や、各自動車から収集したプローブ情報に基づいて統計処理されたデータである。例えば、メッシュに含まれる各リンクに対応するVICS信号、プローブ情報から、メッシュ内のリンク全ての平均車速を算出し、平均車速に所定時間(15分)を乗じた距離をそのメッシュのスライス幅31dとする。
【0036】
次に、交通データ36について図4に従って説明する。図4は、交通データ36のデータ構成を説明する説明図である。交通データ36は、例えばメッシュID31a毎に生成されるとともに、時間帯36b毎に、各リンクのリンクID36aに対するリンクコスト36cを有している。時間帯36bは、15分毎に設定され、スライス幅データ31で設定した時間帯(例えば「0:00」〜「0:14」等)と同じ区切りになっている。このリンクコスト36cは、その時間帯36bにおいて、そのリンクを通過する際にかかる平均旅行時間を示すデータであって、例えば「3(min)」等になっている。つまり、経路データ18のリンクコスト18dは、リンクの長さ、道路幅等に基づく、時間帯36bを加味していないコストである。交通データ36のリンクコスト36cは、各時間帯36bの交通状況を反映したコストであって、経路データ18のリンクコスト18dに加算される等して、新たなリンクコストLCを生成するためのデータである。
【0037】
次に、本実施形態の経路探索の処理手順について、図5に従って説明する。まず、CP
U10は、ROM12に記憶された経路案内プログラムに従って、タッチパネル、操作スイッチ23の入力操作等による、目的地の設定を待機する(ステップS1−1)。目的地が入力されたと判断すると(ステップS1−1においてYES)、CPU10は、その目的地の座標等をRAM11に一時格納する。
【0038】
また、CPU10は、電波航法及び自律航法によって、車両の現在位置を算出する。そして、地図描画データ19等に基づいて、自車位置が含まれるメッシュを検出し、そのメッシュのメッシュID31aを取得する(ステップS1−2)。そして、ナビユニット2の図示しない内蔵時計により、現在日時、現在時刻を取得し、現時点の季節31b、曜日31c、時間帯の要因を特定する(ステップS1−3)。そして、メッシュID31a、季節31b、曜日31c、時間帯の要因を特定すると、メッシュID31aが紐付けされたスライス幅データ31を読出し、そのスライス幅データ31に基づき、4つのスライス幅31dを時系列的に決定する(ステップS1−4)。
【0039】
例えば、季節31bが「春」、曜日31cが「月曜日」、現在時刻が10時15分〜10時29分に含まれる時刻であった場合、図3に示すスライス幅データ31のうち、「10時15分〜10時29分」のスライス幅31dを読み出す。例えば、このスライス幅31dは「6.0km」であって、このメッシュでは、車両の走行可能な距離範囲が、15分間で約6kmであることを示している。
【0040】
次に、2番目のスライス幅31dとして、同じメッシュID31a、季節31b、曜日31cの「10時30分〜10時44分」のスライス幅31dを読み出す。このとき読み出されるスライス幅31dは、「10時15分〜10時29分」の間に車両が進行した位置から、「10時30分〜10時44分」に車両が到達する距離範囲を示したデータであって、例えば「5.6km」である。
【0041】
また、CPU10は、3番目、4番目のスライス幅31dとして、同じメッシュID31a、季節31b、曜日31cの「10時45分〜10時59分」、「11時0分〜11時14分」のスライス幅31dである「6.3km」、「5.8km」をそれぞれ読み出す。これにより、「10時15分〜10時29分」、「10時30分〜10時44分」、「10時45分〜10時59分」、「11時0分〜11時14分」の連続する4つの各時間帯内において、車両が進行する距離を予測したスライス幅31dを取得する。
【0042】
次に、図5に示すように、CPU10は、1番目のスライス幅31dを補正する(ステップS1−5)。上記したように、1番目のスライス幅31dは、「10時15分〜10時29分」の15分間に車両が進行する距離を予測している。従って、現在時刻が例えば「10時20分」であった場合、上記の時間帯の終端時刻「10時29分」までの時間(「10時20分」〜「10時29分」までの10分間)に応じて、スライス幅31dを再計算する。つまり、「10時15分〜10時29分」の15分間の走行予測距離が「6.0km」であるとすると、10分間では「4.0km」になるので、1番目のスライス幅31dを「4.0km」に補正し、補正したスライス幅31dをRAM11に記憶する。
【0043】
次に、CPU10は、4つのスライス幅31dを使用して、予測距離範囲としての各円形エリアを設定する(ステップS1−6)。まず、CPU10は、図6に示すように、現在の自車位置50を中心に、RAM11に記憶した1番目のスライス幅31dを用いて、第1円形エリア51を設定する。補正した1番目のスライス幅31dは「4.0km」であるので、第1円形エリア51は、自車位置50から半径「4.0km」の円形をなしている。この第1円形エリア51内は、車両が「10時20分〜10時29分」内に到達する予測距離範囲である。
【0044】
続いて、CPU10は、第1円形エリア51の円周から、2番目のスライス幅31d(「5.6km」)だけ離れた、第2円形エリア52を設定する。この第2円形エリア52は、車両が「10時30分〜10時44分」内に到達する予測距離範囲である。
【0045】
さらに、CPU10は、3番目及び4番目の各スライス幅31dに基づき、第2円形エリア52の円周から、3番目のスライス幅31d(「6.3km」)だけ離れた第3円形エリア53、第3円形エリア53の円周から、4番目のスライス幅31d(「5.8km」)だけ離れた第4円形エリア54を設定する。第3円形エリア53は、車両が「10時45分〜10時59分」に到達する位置を予測した予測距離範囲、第4円形エリア54は、「11時0分〜11時14分」の予測距離範囲である。その結果、現在の自車位置50を中心に、同心円状に、各円形エリア51〜54が設定される。
【0046】
次に、図5に示すように、CPU10は、各円形エリア51〜54に対応する時間帯に基づき、交通DB35内の交通データ36を検索する(ステップS1−7)。まず、CPU10は、現在の自車位置50が含まれるメッシュのメッシュIDが対応付けられた交通データ36を検索する。該当する交通データ36を検出すると、まず第1円形エリア51内のリンクに対応するリンクコスト36cを読み出す。第1円形エリア51は、ここでは「10時20分〜10時29分」までに車両が到達する予測距離範囲であるため、「10時20分〜10時29分」の上記時間帯36bに対応するリンクコスト36cを検出する。
【0047】
また、CPU10は、第2円形エリア52内のリンクに対応する交通データ36を検出し、その交通データ36内のリンクコスト36cを読み出す。図6に示すように、第2円形エリア52に含まれるメッシュは、それぞれ異なるが、各メッシュ毎に、交通データ36を検索する。そして、各交通データ36のうち、「10時30分〜10時44分」の時間帯のリンクコスト36cであって、そのうち第2円形エリア52に含まれるリンクのリンクコスト36cを読み出す。
【0048】
同様に、第3〜第4円形エリア53〜54に含まれるリンクに対しても、各メッシュ毎の「10時45分〜10時59分」、「11時0分〜11時14分」の各交通データ36のリンクコスト36cを読み出す。
【0049】
さらに、CPU10は、読み出したリンクコスト36cと、それらの各リンクコスト36cと同じリンクに対応している、経路データ18のリンクコスト18dとを用いて、新たなリンクコストLCを算出する(ステップS1−8)。例えば、各リンクコスト18d,36cを加算する等して、リンクコストLCを生成し、そのリンクコストLCを、RAM11に一時記憶する。
【0050】
各円形エリア51〜54に含まれるリンクに対するリンクコストLCを生成すると、CPU10は、リンクコストLCを用いて、現在の自車位置から、RAM11に記憶された目的地の座標までの経路を探索する(ステップS1−9)。このとき、CPU10は、図7に示すように、第1〜第4円形エリア51〜54内及び目的地周辺領域58(例えば30km四方の領域)において、細道路まで含むレベルの経路データ18を用いる。そして、第1〜第4円形エリア51〜54から目的地周辺領域58までの間は、そのレベルよりも上位であって、国道等の主要道路を含むレベルの経路データ18を用いる。また、リンクコスト36cは、第1〜第4円形エリア51〜54内について読み出したものであるため、目的地周辺領域58内、及び、第1〜第4円形エリア51〜54から目的地周辺領域58までの間は、経路データ18内のリンクコスト18dのみを用いて、目的地までの推奨経路を探索することになる。
【0051】
第1〜第4円形エリア51〜54内では、現時点で予測された、約60分先までの交通データ36が加味されているため、現時点では発生していないが、これから発生する渋滞を予測できる。例えば、図7に示すように、現在時刻(「10時20分」)では渋滞が発生していなくても、車両通過時(例えば「11時0分〜11時14分」)に、ラッシュ時等の自然渋滞の発生が予測される渋滞予測道路56を検出することができる。これにより、CPU10は、その渋滞予測道路56を回避した経路を探索することができる。従って、例えば、自車位置50と目的地55とを接続する第1経路R1と、渋滞予測道路56を含む第2経路R2とが探索された場合、渋滞予測道路56のリンクコストLCの大きさに応じて、渋滞予測道路56を回避した第1経路R1を推奨経路として算出することができる。
【0052】
逆に、図8に示すように、自車位置50から目的地55に向かう第1経路R1に、現時点(「10時20分」)でラッシュ時等による渋滞が発生している渋滞発生道路57があっても、車両通過時(例えば「11時0分〜11時14分」)にその渋滞の解消が予測されることがある。この場合、渋滞発生道路57を含む第1経路R1に対応するリンクコストLCが小さく、経路として適している際には、現時点で渋滞が発生していないが時間がかかる第2経路R2を選択せず、現時点で渋滞が発生しているが、通過時に解消が予測される第1経路R1を選択することができる。
【0053】
推奨経路が探索されると、CPU10は、目的地までの所要時間を演算し、RAM11に一時記憶する。そして、図5に示すように、探索経路をディスプレイ25に表示して、経路案内を行う(ステップS1−10)。CPU10は、推奨経路を示すリンク等のデータを画像プロセッサ20に出力し、画像プロセッサ20は、入力したデータに基づき、地図描画データ19を読出す。そして、現在の自車位置50から目的地までの推奨経路を含む、出力データを生成する。そして、この出力データを画像メモリ21に一時記憶し、映像信号としてディスプレイ25に出力する。
【0054】
その結果、図9(a)に示すような案内画面60がディスプレイ25に表示される。案内画面60には、自車位置50から目的地までの地図である地図画像61に、自車位置指標62及び目的地指標63と、各指標62,63を接続する推奨経路64が重畳されている。また、このとき、音声プロセッサ24によって、スピーカから経路を案内する案内音声を出力してもよい。又は、各種モードの設定に応じて、図9(b)に示すように、車両通過時の渋滞予測道路を、地図画像61上に渋滞予測指標65として表示する。
【0055】
推奨経路の案内を行いながら、CPU10は、第4円形エリア54を越えたか否かを判断する(ステップS1−11)。第4円形エリア54を越えていないと判断すると(ステップS1−11においてYES)、CPU10は、案内を終了するか否かを判断する(ステップS1−12)。本実施形態では、車両が目的地に到着したか否か、又は、操作スイッチ23やタッチパネル操作により、経路案内中止の操作が行われたか否かを判断する。案内終了でないと判断した場合には(ステップS1−12においてNO)、ステップS1−10に戻り、経路案内を続行する。
【0056】
一方、ステップS1−11において、第4円形エリア54を越えたと判断すると(ステップS1−11においてNO)、ステップS1−2に戻り、現在の自車位置が含まれるメッシュを検出し、上記した処理を繰り返す。そして、車両通過時の交通状況を予測しながら、経路を探索し、探索された経路を案内する。
【0057】
目的地に到着、又は案内中止の入力操作がタッチパネル又は操作スイッチ23により行われると、CPU10は案内終了であると判断し(ステップS1−12においてYES)、案内を終了する。
【0058】
第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1実施形態では、ナビゲーション装置1は、車両が現在位置から15分間に到達する距離範囲を、各時間帯に応じてそれぞれ予測したスライス幅データ31を、スライス幅DB30に記憶するようにした。また、各メッシュ毎且つ各時間帯毎の交通状況に基づいて、各リンクに対して生成されたリンクコスト36cを記憶する交通DB35を備えるようにした。そして、CPU10は、スライス幅データ31に基づいて、現在の自車位置を中心とした同心円状の第1〜第4円形エリア51〜54を、現在時刻を基準として時系列的にそれぞれ設定するようにした。さらに、第1〜第4円形エリア51〜54内のリンクに対し、第1〜第4円形エリア51〜54に対応する時間帯のリンクコスト36cを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索するようにした。従って、車両がそのリンクに到達する時間帯を、スライス幅データ31を用いて予測することができるので、的確な時間帯の交通データ36を用いることができる。このため、多くの道路では時間帯に応じて混雑度・渋滞度が変動することが殆どであるが、このような場合でも、時間的変化を加味して、自然渋滞の発生する道路を前もって予測することができる。これにより、車両通過時に発生する渋滞を回避するための経路を探索することができる。又は現在渋滞していても、車両が通過する時点で渋滞が解消される経路を推奨経路にすることができる。
【0059】
(2)第1実施形態では、ナビゲーション装置1のCPU10は、現在時刻と第1円形エリア51に対応する時間帯との同期をとって、スライス幅31dを短く補正するようにした。このため、より正確に第1円形エリア51を設定することができるので、第2〜第4円形エリア52〜54の精度を向上することができる。
【0060】
(3)第1実施形態では、スライス幅データ31は、メッシュ31a、季節31b、曜日31c、時間帯の要因毎にスライス幅31dを有するようにした。このため、地域性、時期的要因、時間的要因をスライス幅31dに加味することができるので、スライス幅31dの精度を向上することができる。
【0061】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図10〜図14に従って説明する。尚、第2の実施形態は、第1実施形態に対し、スライス幅データ31の生成方法及びデータ配信方法を追加したのみの構成であるため、その相違についてのみ説明し、その他の説明は省略する。
【0062】
図10に示すように、経路案内システムとしてのデータ統計システム70は、VICS信号、プローブ情報を統計処理する、統計処理サーバとしての統計サーバ71を有している。統計サーバ71は、ビーコン72又は基地局73から各種データを受信可能に接続されるとともに、自動車Cに搭載されたナビゲーション装置1にデータを双方向送受信可能に接続されている。統計サーバ71は、各ナビゲーション装置1から、ビーコン72又は図示しない交通管理サーバから、ネットワークNを介して、プローブ情報としてのプローブデータPr及び道路交通情報としてのVICSデータVcを受信する。プローブデータPrには、自動車Cの位置、速度、時刻等、運転特性データが含まれている。
【0063】
図11に示すように、統計サーバ71は、第1統計処理手段、第2統計処理手段としてのCPU75、RAM76、ROM77、通信I/F78と、予測距離範囲データ記憶手段としてのスライス幅DB80、交通データ記憶手段としての交通DB81とを有している。CPU75は、通信I/F78を介して、ナビゲーション装置1からプローブデータPrを入力し、ROM77に格納された統計処理プログラムに従って、プローブデータPrを統計処理する。また、図示しない交通管理サーバ又はビーコン72から、VICSデ
ータVcを受信し、VICSデータVcを統計処理する。また、スライス幅DB80には、予測距離範囲データとしての全国のスライス幅データ82が記憶され、交通DB81には交通データ83が記憶されている。
【0064】
次に、統計サーバ71の処理について、図12に従って説明する。まず、統計サーバ71のCPU75は、ROM77に格納された統計処理プログラムに従って、スライス幅を決定するメッシュを設定し(ステップS2−1)、スライス幅の要因を設定する(ステップS2−2)。本実施形態では、要因は、季節、曜日であって、例えば「春」、「月曜日」等のようにスライス幅算出対象の要因を決定する。次に、CPU75は、スライス幅を決定する時間帯を設定する(ステップS2−3)。時間帯は、上記したスライス幅31dの時間帯と同様に区切られ、15分間隔になっている。
【0065】
これらの各要因が設定されると、CPU75は、スライス幅を設定する(ステップS2−4)。例えば、CPU75は、プローブデータPr及びVICSデータVcに基づき、「10時15分〜10時29分」の間に車両が走行する距離範囲を統計処理する。その結果、統計処理したスライス幅に基づき、図13及び図14のようなスライス幅の各グラフ85a,85bが得られる。図13に示すグラフ85aは、季節が「春」、曜日が「月曜」のスライス幅を示すグラフであって、昼を除き、午前から午後に向かうにつれてスライス幅が小さくなり、夜にかけてスライス幅が次第に大きくなることを示している。
【0066】
図14に示すグラフ85bは、図14のグラフ85aの地域(メッシュ)とは異なる地域のグラフである。このグラフ85bは、図13のグラフ85aに対し、地域性以外は、同じ要因であるが、朝夕のラッシュ時のみスライス幅が小さくなり、その他は変動が小さい。このように、地域(メッシュ)、時間帯等の要因が異なると、車両が所定時間内に進行する距離も大きく異なることが判る。このため、統計サーバ71は、各要因毎にスライス幅を設定し、そのスライス幅を含むスライス幅データ82を生成する。
【0067】
スライス幅を決定すると、CPU75は、全ての時間帯についてスライス幅を決定したか否かを判断する(ステップS2−5)。全ての時間帯についてスライス幅を決定していない場合には(ステップS2−5においてNO)、ステップS2−3に戻り、次の時間帯のスライス幅について統計処理する。一つのメッシュ、季節、曜日についてスライス幅を決定した場合には(ステップS2−5においてYES)、ステップS2−6に進む。
【0068】
次に、CPU75は、季節、曜日等の全要因についてスライス幅を決定したか否かを判断する(ステップS2−6)。全ての要因についてスライス幅を決定していない場合には(ステップS2−6においてNO)、ステップS2−2に戻り、次の季節、又は曜日のスライス幅について統計処理する。一つのメッシュについて全てのスライス幅を決定した場合には(ステップS2−6においてYES)、ステップS2−7に進む。
【0069】
ステップ2−7では、CPU75は、全メッシュについてスライス幅を決定したか否かを判断する。全てのメッシュについてスライス幅を決定していない場合には(ステップS2−7においてNO)、ステップS2−1に戻り、次のメッシュのスライス幅について統計処理する。全てのメッシュについてスライス幅を決定すると(ステップS2−7においてYES)、処理を終了する。
【0070】
同様に、CPU75は、プローブデータPr及びVICSデータVcを統計処理して、各時間帯毎のリンクコストを算出し、交通DB81を生成する。このとき生成されるリンクコストは、ナビゲーション装置1の経路データ18のリンクコスト18dと合わせて再計算されることを前提に生成されている。スライス幅DB80、交通DB81を生成すると、統計サーバ71は、ネットワークNを介して、スライス幅データ82、交通データ8
3を各ナビゲーション装置1に配信する。ナビゲーション装置1は、配信されたスライス幅データ82、交通データ83を、受信手段としての通信I/F16により受信して、ナビゲーション装置1のスライス幅DB30及び交通DB35に記憶する。その結果、ナビゲーション装置1のスライス幅データ31、交通データ36を逐次更新することができる。
【0071】
第2実施形態によれば、第1実施形態に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(4)第2実施形態では、統計サーバ71が、自動車Cから収集したプローブデータPr等に基づき、各要因毎にスライス幅を算出するとともに、交通データ83を生成するようにした。そして、生成したスライス幅データ82及び交通データ83を、ナビゲーション装置1に配信するようにした。このため、ナビゲーション装置1は、スライス幅データ82及び交通データ83を逐次更新することができるので、新しいスライス幅データ82及び交通データ83を用いて、経路探索をすることができる。
【0072】
尚、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、第1〜第4円形エリア51〜54を設定したが、1つでもよく、4つ以外の複数でもよい。
【0073】
・第1実施形態では、経路探索の際に、自車位置(出発地)を中心とした第1〜第4円形エリア51〜54内の推奨経路をスライス幅データ31を用いて探索し、それ以外の経路を経路データ18を用いて探索したが、目的地までの全推奨経路を、スライス幅データ31を用いて探索するようにしてもよい。そして、予測した、目的地までの所要時間と、実際の走行時間とを途中で比較し、誤差が大きくなった場合には、その都度、スライス幅データ31及び交通データ36を用いて、上記のように推奨経路を再探索してもよい。
【0074】
・第1実施形態では、目的地周辺領域58は、例えば30km四方の領域としたが、円形状でもよく、楕円、変形円、その他の多角形でもよい。
・第1実施形態では、スライス幅データ31から取得したスライス幅31dが「Null」等、不明な値である場合には、スライス幅データ31を用いずに経路データ18のみを用いて経路探索を行うようにしてもよい。
【0075】
・第1実施形態では、車両が高速道路を走行している場合に、スライス幅データ31を用いてもよい。そして、VICS信号と、スライス幅データ31に基づき、高速道路を降りた後の経路を探索するようにしてもよい。
【0076】
・第2実施形態では、スライス幅は、統計サーバ71が、プローブデータPr等を統計処理して生成するとした。これ以外の方法として、ナビゲーション装置1を搭載車両が走行した道路に対し、所要時間、時刻、速度等を含む走行履歴を走行履歴記憶手段としてのRAM11に記憶してもよい。そして、この走行履歴に基づき、ナビゲーション装置1の走行学習手段、第1統計処理手段、第2統計処理手段としてのCPU10が、スライス幅データ31及び交通データ36を生成又は更新するようにしてもよい。
【0077】
・第2実施形態では、ナビゲーション装置1がプローブデータPrを統計サーバ71に発信するようにしたが、統計サーバ71は、ナビゲーション装置1以外の車載装置から発信されたプローブデータPrを統計処理するようにしてもよい。
【0078】
・上記実施形態では、プローブデータPr等を統計処理するサーバと、スライス幅データ82及び交通データ83を配信するサーバとを別設してもよい。
・上記各実施形態では、円形状の第1〜第4円形エリア51〜54を設定したが、真円
である必要はなく、楕円、一部が突出した変形円でもよい。例えば、車線数等が周囲の道路に比べて極端に大きい道路がある場合、その道路に対応する箇所を突出させた変形円を設定したり、その道路を楕円の長軸部分に相当させた楕円形のエリアを設定してもよい。
【0079】
・上記各実施形態では、自車位置が含まれるメッシュのスライス幅31dを使用して、円形状の第1〜第4円形エリア51〜54を設定したが、設定したエリアの外周が位置するメッシュのスライス幅31dを使用して予測距離範囲としてのエリアを設定してもよい。詳述すると、まず、自車位置が含まれるメッシュのスライス幅31dを使用して自車位置から最も近傍のエリア(第1エリア)を設定する。設定したのち、第1エリアの外周が、自車位置が含まれるメッシュとは異なるメッシュに位置する場合、次のエリア(第2エリア)を設定する際には、第1エリアの外周が位置するメッシュのスライス幅31dを使用する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】第1実施形態のナビゲーション装置の構成を説明するブロック図。
【図2】(a)は経路データ、(b)は地図描画データのデータ構成の説明図。
【図3】スライス幅データのデータ構成の説明図。
【図4】交通データのデータ構成の説明図。
【図5】第1実施形態の処理手順の説明図。
【図6】第1〜第4円形エリアの説明図。
【図7】経路探索処理の説明図。
【図8】経路探索処理の説明図。
【図9】(a)は案内画面、(b)は渋滞予想道路を表示した案内画面の説明図。
【図10】第2実施形態のデータ統計システムの説明図。
【図11】統計サーバのブロック図。
【図12】第2実施形態の処理手順の説明図。
【図13】A地域のスライス幅の統計結果の説明図。
【図14】B地域のスライス幅の統計結果の説明図。
【符号の説明】
【0081】
1…ナビゲーション装置、10…予測距離範囲設定手段、探索手段、走行学習手段としてのCPU10…走行履歴記憶手段としてのRAM、16…受信手段としての通信I/F、30,80…予測距離範囲データ記憶手段としてのスライス幅DB、31,82…予測距離範囲データとしてのスライス幅データ、31b…季節、31c…曜日、31d…距離範囲としてのスライス幅、35,81…交通DB、36,83…交通データ、36b…時間帯、50…自車位置、51〜54…予測距離範囲としての第1〜第4円形エリア、64…推奨経路、70…経路案内システムとしてのデータ統計システム、71…統計処理サーバとしての統計サーバ、75…第1統計処理手段、第2統計処理手段としてのCPU、Pr…プローブ情報としてのプローブデータ、Vc…道路交通情報としてのVICSデータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路探索方法、経路案内システム、ナビゲーション装置及び統計処理サーバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の円滑な走行を図るために、高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems)の開発が進められている。この開発分野の一つに、ナビゲーションシステ
ムの高度化がある。この一例として、VICS(Vehicle Information and Communication System)機能を搭載したナビゲーション装置がある。このナビゲーション装置では、ビーコン、FM多重放送により発信された渋滞情報を受信し、現在発生している渋滞を回避するための経路案内を行う。
【0003】
また、特許文献1では、全国地図を分割するメッシュ領域毎に記憶された統計情報を記憶し、その統計情報を用いて、推奨経路を探索するナビゲーション装置が記載されている。統計情報は、各メッシュ領域毎に、時間帯、平日・休日等の要因ごとに統計された交通情報であって、各リンクの旅行時間、又は移動速度等から構成される。そして、ナビゲーション装置は、出発地から、各メッシュ領域への基準到達時刻を予測し、予め格納された統計情報のうち、到着時刻が含まれる時間帯に対応する統計情報を用いて、旅行時間が短縮される経路を探索する。このため、現時点の道路交通情報を用いるよりも、的確な推奨経路を探索することができる。
【特許文献1】特開2004−301677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記したナビゲーション装置では、四角形状のメッシュ領域の代表座標を決め、その代表座標と現在地との直線距離を、予め設定した速度で除算することにより、そのメッシュ領域への到達時刻を予測する。従って、多数のメッシュ領域への到達時刻を算出するため、処理量が多くなるばかりか、特にメッシュ領域の角部、周辺部では、予測到達時刻の精度が低下する可能性がある。その結果、実際の到着時刻とは大幅に異なる時間帯の統計情報を用いて推奨経路を探索してしまう可能性がある。
【0005】
また、上記したナビゲーション装置では、代表座標への直線距離を、一定の速度で除算することにより、到達時刻を予想している。このため、到達時刻を予測する工程において、地域性、時間帯、平日・休日等の要因を考慮していない。従って、予測到着時刻の精度が低くなる虞がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、推奨経路を的確に探索することができる経路探索方法、経路案内システム、ナビゲーション装置及び統計処理サーバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、現在の自車位置から目的地までの経路を探索する経路探索方法において、車両が所定時間内に到達する距離範囲を各区域及び各時間帯に応じてそれぞれ予測した予測距離範囲データに基づき、現在の自車位置を中心とした予測距離範囲を、現在時刻を基準として時系列的に設定するとともに、各リンクに対し、各時間帯毎の交通状況に基づき生成された各交通データのうち、前記各予測
距離範囲に対応する時間帯の前記交通データを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索することを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、現在の自車位置から目的地までの経路を案内する経路案内システムにおいて、道路交通情報、又は各車両から収集したプローブ情報を統計処理して、車両が所定時間内に到達する距離範囲を、各区域及び各時間帯に応じてそれぞれ予測した予測距離範囲データを生成する第1統計処理手段と、前記道路交通情報又は前記プローブ情報に基づいて、各リンク毎に、各時間帯の交通状況に基づく交通データを生成する第2統計処理手段と、前記予測距離範囲データに基づいて、現在の自車位置を中心とした予測距離範囲を、現在時刻を基準として時系列的にそれぞれ設定する予測距離範囲設定手段と、設定された前記各予測距離範囲内のリンクに対し、その予測距離範囲にそれぞれ対応する時間帯の前記交通データを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索する探索手段とを備えたことを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、車両に搭載されたナビゲーション装置において、車両が所定時間内に到達する距離範囲を各区域及び各時間帯に応じてそれぞれ予測した予測距離範囲データを記憶する予測距離範囲データ記憶手段と、前記予測距離範囲データに基づいて、現在の自車位置を中心とした予測距離範囲を、現在時刻を基準として時系列的に設定する予測距離範囲設定手段と、各リンクに対し、各時間帯毎の交通状況に基づいて生成された交通データを記憶する交通データ記憶手段と、設定された前記各予測距離範囲内のリンクに対し、その予測距離範囲にそれぞれ対応する時間帯の前記交通データを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索する探索手段とを備えたことを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のナビゲーション装置において、前記予測距離範囲データ記憶手段は、前記予測距離範囲データを地図メッシュ毎に記憶しており、前記予測距離範囲設定手段は、自車位置が含まれる地図メッシュを検出し、検出された地図メッシュに対応する前記予測距離範囲データを読み出して、予測距離範囲を設定することを要旨とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載のナビゲーション装置において、前記予測距離範囲設定手段は、現在の自車位置を中心として、同心円状の前記各予測距離範囲を設定することを要旨とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項3〜5のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、前記予測距離範囲設定手段は、最も現在の前記自車位置に近い前記予測距離範囲に対し、前記現在時刻及び前記予測距離範囲に対応する時間帯の同期をとって、前記予測距離範囲データを補正することを要旨とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項3〜6のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、前記予測距離範囲データは、区域、季節、曜日、祝日又は連休期間毎に生成されていることを要旨とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項3〜7のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、前記予測距離範囲データ、又は各時間帯毎の交通状況に基づいた前記交通データを、外部から受信する受信手段をさらに備えたことを要旨とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項3〜8のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、前記車両の走行した道路の所要時間、時間帯、車速を含む走行履歴を記憶する走行履歴記憶手段と、前記走行履歴に基づき、前記予測距離範囲データ又は前記交通データを生成又は更新する走行学習手段とを備えたことを要旨とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、経路探索のためのデータを統計処理する統計処理サーバにおいて、道路交通情報、又は各車両から収集したプローブ情報を統計処理して、車両が所定時間内に到達する距離範囲を、各区域及び各時間帯に応じてそれぞれ予測した予測距離範囲データを生成する第1統計処理手段と、前記道路交通情報又は前記プローブ情報に基づいて、各リンク毎に、各時間帯の交通状況に基づく交通データを生成する第2統計処理手段とを備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、車両の予測距離範囲が、時間帯毎に、時系列的に予測される。そして、各時間帯に到達する範囲を示す予測距離範囲内において、その時間帯に応じた交通データが用いられる。従って、時間帯に応じた交通データを探索に用いる際、車両がそのリンクに到達する時間帯を精度よく予測できるので、的確な時間帯の交通データを用いることができる。このため、時間的変化を加味して、車両通過時に渋滞が発生する道路、渋滞が解消される道路を予測できる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、第1及び第2統計処理手段は、車両の予測距離範囲を、時間帯毎に、時系列的に予測した予測距離範囲データ及び各時間帯の交通状況を示す交通データを生成する。従って、探索手段は、時間帯に応じた交通データを探索に用いる際、車両がそのリンクに到達する時間帯を精度よく予測することができるので、的確な時間帯の交通データを用いることができる。このため、時間的変化を加味して、車両通過時に渋滞が発生する道路、渋滞が解消される道路を予測できる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、車両の予測距離範囲が、時間帯毎に、時系列的に予測される。そして、各時間帯に到達する範囲を示す予測距離範囲内において、その時間帯に応じた交通データが用いられる。従って、時間帯に応じた交通データを探索に用いる際、車両がそのリンクに到達する時間帯を精度よく予測することができるので、的確な時間帯の交通データを用いることができる。このため、時間的変化を加味して、車両通過時に渋滞が発生する道路、渋滞が解消される道路を予測できる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、予測距離範囲データを地図メッシュ毎に記憶する。このため、予測距離範囲設定手段は、自車位置が含まれる地図メッシュの予測距離範囲データを読み出せば良いので、例えば自車位置から所定距離内のリンクを検出し、そのリンクに対応する予測距離範囲データを逐次検索するよりも、処理を軽減することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、現在の自車位置を中心として、同心円状の各予測距離範囲が設定されるので、時間的変化に伴った予測距離範囲を算出することができる。
請求項6に記載の発明によれば、最も現在位置に近い予測距離範囲を、現在時刻及び予測距離範囲の時間帯の同期をとって、予測距離範囲データを補正する。このため、より正確に予測距離範囲を設定することができるので、的確な時間帯の交通データを用いることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、予測距離範囲データは、区域、季節、曜日、祝日、連休期間等の要因毎に生成されている。このため、車両の現在位置から所定時間内に到達する距離範囲をより的確に算出することができる。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、ナビゲーション装置は、予測距離範囲データ、交通データを受信する。このため、逐次受信した新しいデータを用いて経路探索を行うことができるので、経路探索の精度が向上する。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、ナビゲーション装置は、走行履歴に基づき、予測距離範囲データ又は交通データを更新する学習機能を備える。このため、逐次更新した新しいデータを用いて経路探索を行うことができるので、経路探索の精度が向上する。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、統計処理サーバは、道路交通情報又はプローブ情報に基づき、車両が所定時間内に到達する距離範囲を予測した予測距離範囲データ、及び時間帯毎の交通データを生成する。このため、これらのデータを用いて、時間的変化を加味して、渋滞状況・混雑状況を予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図9に従って説明する。図1は、本実施形態における、自動車に搭載されたナビゲーション装置1の説明図である。
図1に示すように、ナビゲーション装置1のナビユニット2は、予測距離範囲設定手段、探索手段としてのCPU10、RAM11、経路案内プログラムを格納したROM12、GPS受信部14を備えている。CPU10は、GPS(Global Positioning System
)衛星からGPS受信部14が受信した、緯度・経度等の座標を示す位置検出信号を入力して、電波航法により自車両の絶対位置を算出する。また、CPU10は、ナビユニット2が備える車両側I/F15を介して、自車に設けられた車速センサ40及びジャイロセンサ41から車速パルス、角速度をそれぞれ入力する。そして、CPU10は、車速パルス及び角速度を用いる自律航法により、基準位置からの相対位置を算出し、電波航法で算出した絶対位置と組み合わせて自車位置を特定する。
【0027】
また、ナビユニット2の通信インターフェース(以下、通信I/F16という)は、路側等に設置された電波ビーコン、光ビーコンや、FM多重放送の基地局から、VICS信号を受信する。VICS信号には、現在地から進行方向において数十km〜数百kmの範囲の道路状況を示す道路交通情報や、都道府県単位の道路交通情報が含まれている。
【0028】
また、ナビユニット2は、地理データ記憶部17を備えている。地理データ記憶部17は、内蔵ハードディスク、又は光ディスク等の外部記憶媒体である。この地理データ記憶部17には、目的地までの経路を探索するための各経路ネットワークデータ(以下、経路データ18という)と、出力手段としてのディスプレイ25に地図画面25aを出力するための各地図描画データ19とが格納されている。
【0029】
図2(a)に示すように、経路データ18は、全国を各区域に区画したリージョン毎のデータであって、ヘッダ18a、交差点や道路の端点を示すノードの番号等を含むノードデータ18b、ノード間のリンクのID等を含むリンクデータ18c、リンクコスト18d、ノードやリンクの座標を示す座標データ18e、バージョン18f等を有している。ヘッダ18aは、全国を区画した区域としてのメッシュの番号等が格納されている。リンクデータ18cには、リンクID、接続ノード、通行規制等のデータが含まれている。リンクコスト18dは、各リンクのリンク長、道路幅に基づくデータであって、固定値である。CPU10は、この経路データ18を用いて、ダイクストラ法等、公知の方法により、旅行時間が短縮化される経路や、走行しやすい経路等、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索する。
【0030】
また、地図描画データ19は、全国の地図を分割したメッシュ(パーセル)毎に格納され、広域の地図から狭域の地図まで各階層毎に分かれている。図2(b)に示すように、地図描画データ19は、ヘッダ19a、道路データ19b、背景データ19c等を有している。ヘッダ19aは、メッシュの番号、データの階層等を有している。道路データ19bは、地図上に表示される、形状補間データ、道路幅等、道路の形状を示すデータである。背景データ19cは、道路、市街地、河川等を描画する描画データである。
【0031】
ナビユニット2が備える画像プロセッサ20(図1参照)は、CPU10に基づき、自車位置周辺の地図を描画するための地図描画データ19を地理データ記憶部17から読出す。そして、出力用のデータを生成し、画像メモリ21に一時記憶する。さらに、出力用データに基づく映像信号をディスプレイ25に出力し、図1に示すような地図画面25aを表示する。また、画像プロセッサ20は、この地図画面25aに、自車位置を示す指標25bを重畳する。
【0032】
また、ディスプレイ25には、操作スイッチ23が隣設されている。操作スイッチ23が操作されると、ナビユニット2が備える外部入力I/F22は、操作スイッチ23の入力操作に応じた信号をCPU10に出力する。
【0033】
さらに、ナビユニット2の音声プロセッサ24は、CPU10の制御に従って、図示しない音声ファイルデータベースから音声ファイルを読出す。そして、経路を案内する音声信号等をスピーカ26に出力する。
【0034】
また、ナビユニット2は、予測距離範囲データとしてのスライス幅データ31を記憶した、予測距離範囲データ記憶手段としてのスライス幅データベース(DB)30と、交通データ36を記憶した交通データ記憶手段としての交通データベース(DB)35とを備えている。図3は、スライス幅データ31のデータ構造を説明する説明図である。スライス幅データ31は、地図メッシュ(以下、メッシュという)ID31a、季節31b、曜日31c、距離範囲としてのスライス幅31dから構成されている。メッシュID31aは、全国を10km四方に区画したメッシュに割り当てられたIDである。このメッシュID31aの下位のデータは、季節31bとなっている。季節31bは、スライス幅データ31を春・夏・秋・冬・長期連休に分けている。さらに下位にある曜日31cは、各曜日と、祝日とからなる。
【0035】
スライス幅31dは、メッシュ毎に記憶されており、そのメッシュにおいて、所定時間としての15分の間に自動車が走行可能な距離範囲を予測したデータであって、15分間の時間帯毎に、24時間分のデータが記憶されている。即ち、各スライス幅31dは、メッシュID31a(地域性)、季節31b、曜日31c、時間帯の要因が加味された予測データであって、本実施形態では、管理センターにより、VICS信号や、各自動車から収集したプローブ情報に基づいて統計処理されたデータである。例えば、メッシュに含まれる各リンクに対応するVICS信号、プローブ情報から、メッシュ内のリンク全ての平均車速を算出し、平均車速に所定時間(15分)を乗じた距離をそのメッシュのスライス幅31dとする。
【0036】
次に、交通データ36について図4に従って説明する。図4は、交通データ36のデータ構成を説明する説明図である。交通データ36は、例えばメッシュID31a毎に生成されるとともに、時間帯36b毎に、各リンクのリンクID36aに対するリンクコスト36cを有している。時間帯36bは、15分毎に設定され、スライス幅データ31で設定した時間帯(例えば「0:00」〜「0:14」等)と同じ区切りになっている。このリンクコスト36cは、その時間帯36bにおいて、そのリンクを通過する際にかかる平均旅行時間を示すデータであって、例えば「3(min)」等になっている。つまり、経路データ18のリンクコスト18dは、リンクの長さ、道路幅等に基づく、時間帯36bを加味していないコストである。交通データ36のリンクコスト36cは、各時間帯36bの交通状況を反映したコストであって、経路データ18のリンクコスト18dに加算される等して、新たなリンクコストLCを生成するためのデータである。
【0037】
次に、本実施形態の経路探索の処理手順について、図5に従って説明する。まず、CP
U10は、ROM12に記憶された経路案内プログラムに従って、タッチパネル、操作スイッチ23の入力操作等による、目的地の設定を待機する(ステップS1−1)。目的地が入力されたと判断すると(ステップS1−1においてYES)、CPU10は、その目的地の座標等をRAM11に一時格納する。
【0038】
また、CPU10は、電波航法及び自律航法によって、車両の現在位置を算出する。そして、地図描画データ19等に基づいて、自車位置が含まれるメッシュを検出し、そのメッシュのメッシュID31aを取得する(ステップS1−2)。そして、ナビユニット2の図示しない内蔵時計により、現在日時、現在時刻を取得し、現時点の季節31b、曜日31c、時間帯の要因を特定する(ステップS1−3)。そして、メッシュID31a、季節31b、曜日31c、時間帯の要因を特定すると、メッシュID31aが紐付けされたスライス幅データ31を読出し、そのスライス幅データ31に基づき、4つのスライス幅31dを時系列的に決定する(ステップS1−4)。
【0039】
例えば、季節31bが「春」、曜日31cが「月曜日」、現在時刻が10時15分〜10時29分に含まれる時刻であった場合、図3に示すスライス幅データ31のうち、「10時15分〜10時29分」のスライス幅31dを読み出す。例えば、このスライス幅31dは「6.0km」であって、このメッシュでは、車両の走行可能な距離範囲が、15分間で約6kmであることを示している。
【0040】
次に、2番目のスライス幅31dとして、同じメッシュID31a、季節31b、曜日31cの「10時30分〜10時44分」のスライス幅31dを読み出す。このとき読み出されるスライス幅31dは、「10時15分〜10時29分」の間に車両が進行した位置から、「10時30分〜10時44分」に車両が到達する距離範囲を示したデータであって、例えば「5.6km」である。
【0041】
また、CPU10は、3番目、4番目のスライス幅31dとして、同じメッシュID31a、季節31b、曜日31cの「10時45分〜10時59分」、「11時0分〜11時14分」のスライス幅31dである「6.3km」、「5.8km」をそれぞれ読み出す。これにより、「10時15分〜10時29分」、「10時30分〜10時44分」、「10時45分〜10時59分」、「11時0分〜11時14分」の連続する4つの各時間帯内において、車両が進行する距離を予測したスライス幅31dを取得する。
【0042】
次に、図5に示すように、CPU10は、1番目のスライス幅31dを補正する(ステップS1−5)。上記したように、1番目のスライス幅31dは、「10時15分〜10時29分」の15分間に車両が進行する距離を予測している。従って、現在時刻が例えば「10時20分」であった場合、上記の時間帯の終端時刻「10時29分」までの時間(「10時20分」〜「10時29分」までの10分間)に応じて、スライス幅31dを再計算する。つまり、「10時15分〜10時29分」の15分間の走行予測距離が「6.0km」であるとすると、10分間では「4.0km」になるので、1番目のスライス幅31dを「4.0km」に補正し、補正したスライス幅31dをRAM11に記憶する。
【0043】
次に、CPU10は、4つのスライス幅31dを使用して、予測距離範囲としての各円形エリアを設定する(ステップS1−6)。まず、CPU10は、図6に示すように、現在の自車位置50を中心に、RAM11に記憶した1番目のスライス幅31dを用いて、第1円形エリア51を設定する。補正した1番目のスライス幅31dは「4.0km」であるので、第1円形エリア51は、自車位置50から半径「4.0km」の円形をなしている。この第1円形エリア51内は、車両が「10時20分〜10時29分」内に到達する予測距離範囲である。
【0044】
続いて、CPU10は、第1円形エリア51の円周から、2番目のスライス幅31d(「5.6km」)だけ離れた、第2円形エリア52を設定する。この第2円形エリア52は、車両が「10時30分〜10時44分」内に到達する予測距離範囲である。
【0045】
さらに、CPU10は、3番目及び4番目の各スライス幅31dに基づき、第2円形エリア52の円周から、3番目のスライス幅31d(「6.3km」)だけ離れた第3円形エリア53、第3円形エリア53の円周から、4番目のスライス幅31d(「5.8km」)だけ離れた第4円形エリア54を設定する。第3円形エリア53は、車両が「10時45分〜10時59分」に到達する位置を予測した予測距離範囲、第4円形エリア54は、「11時0分〜11時14分」の予測距離範囲である。その結果、現在の自車位置50を中心に、同心円状に、各円形エリア51〜54が設定される。
【0046】
次に、図5に示すように、CPU10は、各円形エリア51〜54に対応する時間帯に基づき、交通DB35内の交通データ36を検索する(ステップS1−7)。まず、CPU10は、現在の自車位置50が含まれるメッシュのメッシュIDが対応付けられた交通データ36を検索する。該当する交通データ36を検出すると、まず第1円形エリア51内のリンクに対応するリンクコスト36cを読み出す。第1円形エリア51は、ここでは「10時20分〜10時29分」までに車両が到達する予測距離範囲であるため、「10時20分〜10時29分」の上記時間帯36bに対応するリンクコスト36cを検出する。
【0047】
また、CPU10は、第2円形エリア52内のリンクに対応する交通データ36を検出し、その交通データ36内のリンクコスト36cを読み出す。図6に示すように、第2円形エリア52に含まれるメッシュは、それぞれ異なるが、各メッシュ毎に、交通データ36を検索する。そして、各交通データ36のうち、「10時30分〜10時44分」の時間帯のリンクコスト36cであって、そのうち第2円形エリア52に含まれるリンクのリンクコスト36cを読み出す。
【0048】
同様に、第3〜第4円形エリア53〜54に含まれるリンクに対しても、各メッシュ毎の「10時45分〜10時59分」、「11時0分〜11時14分」の各交通データ36のリンクコスト36cを読み出す。
【0049】
さらに、CPU10は、読み出したリンクコスト36cと、それらの各リンクコスト36cと同じリンクに対応している、経路データ18のリンクコスト18dとを用いて、新たなリンクコストLCを算出する(ステップS1−8)。例えば、各リンクコスト18d,36cを加算する等して、リンクコストLCを生成し、そのリンクコストLCを、RAM11に一時記憶する。
【0050】
各円形エリア51〜54に含まれるリンクに対するリンクコストLCを生成すると、CPU10は、リンクコストLCを用いて、現在の自車位置から、RAM11に記憶された目的地の座標までの経路を探索する(ステップS1−9)。このとき、CPU10は、図7に示すように、第1〜第4円形エリア51〜54内及び目的地周辺領域58(例えば30km四方の領域)において、細道路まで含むレベルの経路データ18を用いる。そして、第1〜第4円形エリア51〜54から目的地周辺領域58までの間は、そのレベルよりも上位であって、国道等の主要道路を含むレベルの経路データ18を用いる。また、リンクコスト36cは、第1〜第4円形エリア51〜54内について読み出したものであるため、目的地周辺領域58内、及び、第1〜第4円形エリア51〜54から目的地周辺領域58までの間は、経路データ18内のリンクコスト18dのみを用いて、目的地までの推奨経路を探索することになる。
【0051】
第1〜第4円形エリア51〜54内では、現時点で予測された、約60分先までの交通データ36が加味されているため、現時点では発生していないが、これから発生する渋滞を予測できる。例えば、図7に示すように、現在時刻(「10時20分」)では渋滞が発生していなくても、車両通過時(例えば「11時0分〜11時14分」)に、ラッシュ時等の自然渋滞の発生が予測される渋滞予測道路56を検出することができる。これにより、CPU10は、その渋滞予測道路56を回避した経路を探索することができる。従って、例えば、自車位置50と目的地55とを接続する第1経路R1と、渋滞予測道路56を含む第2経路R2とが探索された場合、渋滞予測道路56のリンクコストLCの大きさに応じて、渋滞予測道路56を回避した第1経路R1を推奨経路として算出することができる。
【0052】
逆に、図8に示すように、自車位置50から目的地55に向かう第1経路R1に、現時点(「10時20分」)でラッシュ時等による渋滞が発生している渋滞発生道路57があっても、車両通過時(例えば「11時0分〜11時14分」)にその渋滞の解消が予測されることがある。この場合、渋滞発生道路57を含む第1経路R1に対応するリンクコストLCが小さく、経路として適している際には、現時点で渋滞が発生していないが時間がかかる第2経路R2を選択せず、現時点で渋滞が発生しているが、通過時に解消が予測される第1経路R1を選択することができる。
【0053】
推奨経路が探索されると、CPU10は、目的地までの所要時間を演算し、RAM11に一時記憶する。そして、図5に示すように、探索経路をディスプレイ25に表示して、経路案内を行う(ステップS1−10)。CPU10は、推奨経路を示すリンク等のデータを画像プロセッサ20に出力し、画像プロセッサ20は、入力したデータに基づき、地図描画データ19を読出す。そして、現在の自車位置50から目的地までの推奨経路を含む、出力データを生成する。そして、この出力データを画像メモリ21に一時記憶し、映像信号としてディスプレイ25に出力する。
【0054】
その結果、図9(a)に示すような案内画面60がディスプレイ25に表示される。案内画面60には、自車位置50から目的地までの地図である地図画像61に、自車位置指標62及び目的地指標63と、各指標62,63を接続する推奨経路64が重畳されている。また、このとき、音声プロセッサ24によって、スピーカから経路を案内する案内音声を出力してもよい。又は、各種モードの設定に応じて、図9(b)に示すように、車両通過時の渋滞予測道路を、地図画像61上に渋滞予測指標65として表示する。
【0055】
推奨経路の案内を行いながら、CPU10は、第4円形エリア54を越えたか否かを判断する(ステップS1−11)。第4円形エリア54を越えていないと判断すると(ステップS1−11においてYES)、CPU10は、案内を終了するか否かを判断する(ステップS1−12)。本実施形態では、車両が目的地に到着したか否か、又は、操作スイッチ23やタッチパネル操作により、経路案内中止の操作が行われたか否かを判断する。案内終了でないと判断した場合には(ステップS1−12においてNO)、ステップS1−10に戻り、経路案内を続行する。
【0056】
一方、ステップS1−11において、第4円形エリア54を越えたと判断すると(ステップS1−11においてNO)、ステップS1−2に戻り、現在の自車位置が含まれるメッシュを検出し、上記した処理を繰り返す。そして、車両通過時の交通状況を予測しながら、経路を探索し、探索された経路を案内する。
【0057】
目的地に到着、又は案内中止の入力操作がタッチパネル又は操作スイッチ23により行われると、CPU10は案内終了であると判断し(ステップS1−12においてYES)、案内を終了する。
【0058】
第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1実施形態では、ナビゲーション装置1は、車両が現在位置から15分間に到達する距離範囲を、各時間帯に応じてそれぞれ予測したスライス幅データ31を、スライス幅DB30に記憶するようにした。また、各メッシュ毎且つ各時間帯毎の交通状況に基づいて、各リンクに対して生成されたリンクコスト36cを記憶する交通DB35を備えるようにした。そして、CPU10は、スライス幅データ31に基づいて、現在の自車位置を中心とした同心円状の第1〜第4円形エリア51〜54を、現在時刻を基準として時系列的にそれぞれ設定するようにした。さらに、第1〜第4円形エリア51〜54内のリンクに対し、第1〜第4円形エリア51〜54に対応する時間帯のリンクコスト36cを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索するようにした。従って、車両がそのリンクに到達する時間帯を、スライス幅データ31を用いて予測することができるので、的確な時間帯の交通データ36を用いることができる。このため、多くの道路では時間帯に応じて混雑度・渋滞度が変動することが殆どであるが、このような場合でも、時間的変化を加味して、自然渋滞の発生する道路を前もって予測することができる。これにより、車両通過時に発生する渋滞を回避するための経路を探索することができる。又は現在渋滞していても、車両が通過する時点で渋滞が解消される経路を推奨経路にすることができる。
【0059】
(2)第1実施形態では、ナビゲーション装置1のCPU10は、現在時刻と第1円形エリア51に対応する時間帯との同期をとって、スライス幅31dを短く補正するようにした。このため、より正確に第1円形エリア51を設定することができるので、第2〜第4円形エリア52〜54の精度を向上することができる。
【0060】
(3)第1実施形態では、スライス幅データ31は、メッシュ31a、季節31b、曜日31c、時間帯の要因毎にスライス幅31dを有するようにした。このため、地域性、時期的要因、時間的要因をスライス幅31dに加味することができるので、スライス幅31dの精度を向上することができる。
【0061】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図10〜図14に従って説明する。尚、第2の実施形態は、第1実施形態に対し、スライス幅データ31の生成方法及びデータ配信方法を追加したのみの構成であるため、その相違についてのみ説明し、その他の説明は省略する。
【0062】
図10に示すように、経路案内システムとしてのデータ統計システム70は、VICS信号、プローブ情報を統計処理する、統計処理サーバとしての統計サーバ71を有している。統計サーバ71は、ビーコン72又は基地局73から各種データを受信可能に接続されるとともに、自動車Cに搭載されたナビゲーション装置1にデータを双方向送受信可能に接続されている。統計サーバ71は、各ナビゲーション装置1から、ビーコン72又は図示しない交通管理サーバから、ネットワークNを介して、プローブ情報としてのプローブデータPr及び道路交通情報としてのVICSデータVcを受信する。プローブデータPrには、自動車Cの位置、速度、時刻等、運転特性データが含まれている。
【0063】
図11に示すように、統計サーバ71は、第1統計処理手段、第2統計処理手段としてのCPU75、RAM76、ROM77、通信I/F78と、予測距離範囲データ記憶手段としてのスライス幅DB80、交通データ記憶手段としての交通DB81とを有している。CPU75は、通信I/F78を介して、ナビゲーション装置1からプローブデータPrを入力し、ROM77に格納された統計処理プログラムに従って、プローブデータPrを統計処理する。また、図示しない交通管理サーバ又はビーコン72から、VICSデ
ータVcを受信し、VICSデータVcを統計処理する。また、スライス幅DB80には、予測距離範囲データとしての全国のスライス幅データ82が記憶され、交通DB81には交通データ83が記憶されている。
【0064】
次に、統計サーバ71の処理について、図12に従って説明する。まず、統計サーバ71のCPU75は、ROM77に格納された統計処理プログラムに従って、スライス幅を決定するメッシュを設定し(ステップS2−1)、スライス幅の要因を設定する(ステップS2−2)。本実施形態では、要因は、季節、曜日であって、例えば「春」、「月曜日」等のようにスライス幅算出対象の要因を決定する。次に、CPU75は、スライス幅を決定する時間帯を設定する(ステップS2−3)。時間帯は、上記したスライス幅31dの時間帯と同様に区切られ、15分間隔になっている。
【0065】
これらの各要因が設定されると、CPU75は、スライス幅を設定する(ステップS2−4)。例えば、CPU75は、プローブデータPr及びVICSデータVcに基づき、「10時15分〜10時29分」の間に車両が走行する距離範囲を統計処理する。その結果、統計処理したスライス幅に基づき、図13及び図14のようなスライス幅の各グラフ85a,85bが得られる。図13に示すグラフ85aは、季節が「春」、曜日が「月曜」のスライス幅を示すグラフであって、昼を除き、午前から午後に向かうにつれてスライス幅が小さくなり、夜にかけてスライス幅が次第に大きくなることを示している。
【0066】
図14に示すグラフ85bは、図14のグラフ85aの地域(メッシュ)とは異なる地域のグラフである。このグラフ85bは、図13のグラフ85aに対し、地域性以外は、同じ要因であるが、朝夕のラッシュ時のみスライス幅が小さくなり、その他は変動が小さい。このように、地域(メッシュ)、時間帯等の要因が異なると、車両が所定時間内に進行する距離も大きく異なることが判る。このため、統計サーバ71は、各要因毎にスライス幅を設定し、そのスライス幅を含むスライス幅データ82を生成する。
【0067】
スライス幅を決定すると、CPU75は、全ての時間帯についてスライス幅を決定したか否かを判断する(ステップS2−5)。全ての時間帯についてスライス幅を決定していない場合には(ステップS2−5においてNO)、ステップS2−3に戻り、次の時間帯のスライス幅について統計処理する。一つのメッシュ、季節、曜日についてスライス幅を決定した場合には(ステップS2−5においてYES)、ステップS2−6に進む。
【0068】
次に、CPU75は、季節、曜日等の全要因についてスライス幅を決定したか否かを判断する(ステップS2−6)。全ての要因についてスライス幅を決定していない場合には(ステップS2−6においてNO)、ステップS2−2に戻り、次の季節、又は曜日のスライス幅について統計処理する。一つのメッシュについて全てのスライス幅を決定した場合には(ステップS2−6においてYES)、ステップS2−7に進む。
【0069】
ステップ2−7では、CPU75は、全メッシュについてスライス幅を決定したか否かを判断する。全てのメッシュについてスライス幅を決定していない場合には(ステップS2−7においてNO)、ステップS2−1に戻り、次のメッシュのスライス幅について統計処理する。全てのメッシュについてスライス幅を決定すると(ステップS2−7においてYES)、処理を終了する。
【0070】
同様に、CPU75は、プローブデータPr及びVICSデータVcを統計処理して、各時間帯毎のリンクコストを算出し、交通DB81を生成する。このとき生成されるリンクコストは、ナビゲーション装置1の経路データ18のリンクコスト18dと合わせて再計算されることを前提に生成されている。スライス幅DB80、交通DB81を生成すると、統計サーバ71は、ネットワークNを介して、スライス幅データ82、交通データ8
3を各ナビゲーション装置1に配信する。ナビゲーション装置1は、配信されたスライス幅データ82、交通データ83を、受信手段としての通信I/F16により受信して、ナビゲーション装置1のスライス幅DB30及び交通DB35に記憶する。その結果、ナビゲーション装置1のスライス幅データ31、交通データ36を逐次更新することができる。
【0071】
第2実施形態によれば、第1実施形態に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(4)第2実施形態では、統計サーバ71が、自動車Cから収集したプローブデータPr等に基づき、各要因毎にスライス幅を算出するとともに、交通データ83を生成するようにした。そして、生成したスライス幅データ82及び交通データ83を、ナビゲーション装置1に配信するようにした。このため、ナビゲーション装置1は、スライス幅データ82及び交通データ83を逐次更新することができるので、新しいスライス幅データ82及び交通データ83を用いて、経路探索をすることができる。
【0072】
尚、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、第1〜第4円形エリア51〜54を設定したが、1つでもよく、4つ以外の複数でもよい。
【0073】
・第1実施形態では、経路探索の際に、自車位置(出発地)を中心とした第1〜第4円形エリア51〜54内の推奨経路をスライス幅データ31を用いて探索し、それ以外の経路を経路データ18を用いて探索したが、目的地までの全推奨経路を、スライス幅データ31を用いて探索するようにしてもよい。そして、予測した、目的地までの所要時間と、実際の走行時間とを途中で比較し、誤差が大きくなった場合には、その都度、スライス幅データ31及び交通データ36を用いて、上記のように推奨経路を再探索してもよい。
【0074】
・第1実施形態では、目的地周辺領域58は、例えば30km四方の領域としたが、円形状でもよく、楕円、変形円、その他の多角形でもよい。
・第1実施形態では、スライス幅データ31から取得したスライス幅31dが「Null」等、不明な値である場合には、スライス幅データ31を用いずに経路データ18のみを用いて経路探索を行うようにしてもよい。
【0075】
・第1実施形態では、車両が高速道路を走行している場合に、スライス幅データ31を用いてもよい。そして、VICS信号と、スライス幅データ31に基づき、高速道路を降りた後の経路を探索するようにしてもよい。
【0076】
・第2実施形態では、スライス幅は、統計サーバ71が、プローブデータPr等を統計処理して生成するとした。これ以外の方法として、ナビゲーション装置1を搭載車両が走行した道路に対し、所要時間、時刻、速度等を含む走行履歴を走行履歴記憶手段としてのRAM11に記憶してもよい。そして、この走行履歴に基づき、ナビゲーション装置1の走行学習手段、第1統計処理手段、第2統計処理手段としてのCPU10が、スライス幅データ31及び交通データ36を生成又は更新するようにしてもよい。
【0077】
・第2実施形態では、ナビゲーション装置1がプローブデータPrを統計サーバ71に発信するようにしたが、統計サーバ71は、ナビゲーション装置1以外の車載装置から発信されたプローブデータPrを統計処理するようにしてもよい。
【0078】
・上記実施形態では、プローブデータPr等を統計処理するサーバと、スライス幅データ82及び交通データ83を配信するサーバとを別設してもよい。
・上記各実施形態では、円形状の第1〜第4円形エリア51〜54を設定したが、真円
である必要はなく、楕円、一部が突出した変形円でもよい。例えば、車線数等が周囲の道路に比べて極端に大きい道路がある場合、その道路に対応する箇所を突出させた変形円を設定したり、その道路を楕円の長軸部分に相当させた楕円形のエリアを設定してもよい。
【0079】
・上記各実施形態では、自車位置が含まれるメッシュのスライス幅31dを使用して、円形状の第1〜第4円形エリア51〜54を設定したが、設定したエリアの外周が位置するメッシュのスライス幅31dを使用して予測距離範囲としてのエリアを設定してもよい。詳述すると、まず、自車位置が含まれるメッシュのスライス幅31dを使用して自車位置から最も近傍のエリア(第1エリア)を設定する。設定したのち、第1エリアの外周が、自車位置が含まれるメッシュとは異なるメッシュに位置する場合、次のエリア(第2エリア)を設定する際には、第1エリアの外周が位置するメッシュのスライス幅31dを使用する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】第1実施形態のナビゲーション装置の構成を説明するブロック図。
【図2】(a)は経路データ、(b)は地図描画データのデータ構成の説明図。
【図3】スライス幅データのデータ構成の説明図。
【図4】交通データのデータ構成の説明図。
【図5】第1実施形態の処理手順の説明図。
【図6】第1〜第4円形エリアの説明図。
【図7】経路探索処理の説明図。
【図8】経路探索処理の説明図。
【図9】(a)は案内画面、(b)は渋滞予想道路を表示した案内画面の説明図。
【図10】第2実施形態のデータ統計システムの説明図。
【図11】統計サーバのブロック図。
【図12】第2実施形態の処理手順の説明図。
【図13】A地域のスライス幅の統計結果の説明図。
【図14】B地域のスライス幅の統計結果の説明図。
【符号の説明】
【0081】
1…ナビゲーション装置、10…予測距離範囲設定手段、探索手段、走行学習手段としてのCPU10…走行履歴記憶手段としてのRAM、16…受信手段としての通信I/F、30,80…予測距離範囲データ記憶手段としてのスライス幅DB、31,82…予測距離範囲データとしてのスライス幅データ、31b…季節、31c…曜日、31d…距離範囲としてのスライス幅、35,81…交通DB、36,83…交通データ、36b…時間帯、50…自車位置、51〜54…予測距離範囲としての第1〜第4円形エリア、64…推奨経路、70…経路案内システムとしてのデータ統計システム、71…統計処理サーバとしての統計サーバ、75…第1統計処理手段、第2統計処理手段としてのCPU、Pr…プローブ情報としてのプローブデータ、Vc…道路交通情報としてのVICSデータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在の自車位置から目的地までの経路を探索する経路探索方法において、
車両が所定時間内に到達する距離範囲を各区域及び各時間帯に応じてそれぞれ予測した予測距離範囲データに基づき、現在の自車位置を中心とした予測距離範囲を、現在時刻を基準として時系列的に設定するとともに、
各リンクに対し、各時間帯毎の交通状況に基づき生成された各交通データのうち、前記各予測距離範囲に対応する時間帯の前記交通データを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索することを特徴とする経路探索方法。
【請求項2】
現在の自車位置から目的地までの経路を案内する経路案内システムにおいて、
道路交通情報、又は各車両から収集したプローブ情報を統計処理して、車両が所定時間内に到達する距離範囲を、各区域及び各時間帯に応じてそれぞれ予測した予測距離範囲データを生成する第1統計処理手段と、
前記道路交通情報又は前記プローブ情報に基づいて、各リンク毎に、各時間帯の交通状況に基づく交通データを生成する第2統計処理手段と、
前記予測距離範囲データに基づいて、現在の自車位置を中心とした予測距離範囲を、現在時刻を基準として時系列的にそれぞれ設定する予測距離範囲設定手段と、
設定された前記各予測距離範囲内のリンクに対し、その予測距離範囲にそれぞれ対応する時間帯の前記交通データを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索する探索手段と
を備えたことを特徴とする経路案内システム。
【請求項3】
車両に搭載されたナビゲーション装置において、
車両が所定時間内に到達する距離範囲を各区域及び各時間帯に応じてそれぞれ予測した予測距離範囲データを記憶する予測距離範囲データ記憶手段と、
前記予測距離範囲データに基づいて、現在の自車位置を中心とした予測距離範囲を、現在時刻を基準として時系列的に設定する予測距離範囲設定手段と、
各リンクに対し、各時間帯毎の交通状況に基づいて生成された交通データを記憶する交通データ記憶手段と、
設定された前記各予測距離範囲内のリンクに対し、その予測距離範囲にそれぞれ対応する時間帯の前記交通データを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索する探索手段と
を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項3に記載のナビゲーション装置において、
前記予測距離範囲データ記憶手段は、前記予測距離範囲データを地図メッシュ毎に記憶しており、
前記予測距離範囲設定手段は、自車位置が含まれる地図メッシュを検出し、検出された地図メッシュに対応する前記予測距離範囲データを読み出して、予測距離範囲を設定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のナビゲーション装置において、
前記予測距離範囲設定手段は、現在の自車位置を中心として、同心円状の前記各予測距離範囲を設定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、
前記予測距離範囲設定手段は、最も現在の前記自車位置に近い前記予測距離範囲に対し、前記現在時刻及び前記予測距離範囲に対応する時間帯の同期をとって、前記予測距離範囲データを補正することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、
前記予測距離範囲データは、区域、季節、曜日、祝日又は連休期間毎に生成されていることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、
前記予測距離範囲データ、又は各時間帯毎の交通状況に基づいた前記交通データを、外部から受信する受信手段をさらに備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、
前記車両の走行した道路の所要時間、時間帯、車速を含む走行履歴を記憶する走行履歴記憶手段と、
前記走行履歴に基づき、前記予測距離範囲データ又は前記交通データを生成又は更新する走行学習手段と
を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項10】
経路探索のためのデータを統計処理する統計処理サーバにおいて、
道路交通情報、又は各車両から収集したプローブ情報を統計処理して、車両が所定時間内に到達する距離範囲を、各区域及び各時間帯に応じてそれぞれ予測した予測距離範囲データを生成する第1統計処理手段と、
前記道路交通情報又は前記プローブ情報に基づいて、各リンク毎に、各時間帯の交通状況に基づく交通データを生成する第2統計処理手段と
を備えたことを特徴とする統計処理サーバ。
【請求項1】
現在の自車位置から目的地までの経路を探索する経路探索方法において、
車両が所定時間内に到達する距離範囲を各区域及び各時間帯に応じてそれぞれ予測した予測距離範囲データに基づき、現在の自車位置を中心とした予測距離範囲を、現在時刻を基準として時系列的に設定するとともに、
各リンクに対し、各時間帯毎の交通状況に基づき生成された各交通データのうち、前記各予測距離範囲に対応する時間帯の前記交通データを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索することを特徴とする経路探索方法。
【請求項2】
現在の自車位置から目的地までの経路を案内する経路案内システムにおいて、
道路交通情報、又は各車両から収集したプローブ情報を統計処理して、車両が所定時間内に到達する距離範囲を、各区域及び各時間帯に応じてそれぞれ予測した予測距離範囲データを生成する第1統計処理手段と、
前記道路交通情報又は前記プローブ情報に基づいて、各リンク毎に、各時間帯の交通状況に基づく交通データを生成する第2統計処理手段と、
前記予測距離範囲データに基づいて、現在の自車位置を中心とした予測距離範囲を、現在時刻を基準として時系列的にそれぞれ設定する予測距離範囲設定手段と、
設定された前記各予測距離範囲内のリンクに対し、その予測距離範囲にそれぞれ対応する時間帯の前記交通データを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索する探索手段と
を備えたことを特徴とする経路案内システム。
【請求項3】
車両に搭載されたナビゲーション装置において、
車両が所定時間内に到達する距離範囲を各区域及び各時間帯に応じてそれぞれ予測した予測距離範囲データを記憶する予測距離範囲データ記憶手段と、
前記予測距離範囲データに基づいて、現在の自車位置を中心とした予測距離範囲を、現在時刻を基準として時系列的に設定する予測距離範囲設定手段と、
各リンクに対し、各時間帯毎の交通状況に基づいて生成された交通データを記憶する交通データ記憶手段と、
設定された前記各予測距離範囲内のリンクに対し、その予測距離範囲にそれぞれ対応する時間帯の前記交通データを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索する探索手段と
を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項3に記載のナビゲーション装置において、
前記予測距離範囲データ記憶手段は、前記予測距離範囲データを地図メッシュ毎に記憶しており、
前記予測距離範囲設定手段は、自車位置が含まれる地図メッシュを検出し、検出された地図メッシュに対応する前記予測距離範囲データを読み出して、予測距離範囲を設定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のナビゲーション装置において、
前記予測距離範囲設定手段は、現在の自車位置を中心として、同心円状の前記各予測距離範囲を設定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、
前記予測距離範囲設定手段は、最も現在の前記自車位置に近い前記予測距離範囲に対し、前記現在時刻及び前記予測距離範囲に対応する時間帯の同期をとって、前記予測距離範囲データを補正することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、
前記予測距離範囲データは、区域、季節、曜日、祝日又は連休期間毎に生成されていることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、
前記予測距離範囲データ、又は各時間帯毎の交通状況に基づいた前記交通データを、外部から受信する受信手段をさらに備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、
前記車両の走行した道路の所要時間、時間帯、車速を含む走行履歴を記憶する走行履歴記憶手段と、
前記走行履歴に基づき、前記予測距離範囲データ又は前記交通データを生成又は更新する走行学習手段と
を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項10】
経路探索のためのデータを統計処理する統計処理サーバにおいて、
道路交通情報、又は各車両から収集したプローブ情報を統計処理して、車両が所定時間内に到達する距離範囲を、各区域及び各時間帯に応じてそれぞれ予測した予測距離範囲データを生成する第1統計処理手段と、
前記道路交通情報又は前記プローブ情報に基づいて、各リンク毎に、各時間帯の交通状況に基づく交通データを生成する第2統計処理手段と
を備えたことを特徴とする統計処理サーバ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−218777(P2007−218777A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40753(P2006−40753)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
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