説明

経路長算出装置、経路長算出方法、経路長算出プログラム及び車両用空調装置ならびに移動物体搭載機器の制御装置

【課題】移動物体が一度通った経路に限定して複数のイベント発生地点間の最短経路長を算出する経路長算出装置及び経路長算出方法を提供する。
【解決手段】経路長算出装置1は、移動物体の現在位置を取得する位置検出部2と、検出対象となるイベントの発生を検知するイベント検知部4と、第1のイベントが発生したときに、その第1のイベント発生地点を移動物体が通った経路である過去経路を表す経路履歴情報を記憶する経路履歴情報記憶部5と、イベント検知部4により第2のイベントの発生が検知されたときに、位置検出部2により取得された第2のイベント発生地点と、経路履歴情報記憶部5に記憶された経路履歴情報から、第2のイベント発生地点が過去経路上に存在すると判定した場合、当該過去経路に沿って第1のイベント発生地点と第2のイベント発生地点間の最短経路長を算出する距離算出部8とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路長算出装置、経路長算出方法、経路長算出プログラム及び車両用空調装置ならびに移動物体搭載機器の制御装置に関し、特に、所定の着目地点から目的地までの最短経路長を算出する経路長算出装置、経路長算出方法及び経路長算出プログラム、及びそれらを利用して、所定位置に対して空調設定を最適化する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、経路探索用の様々なナビゲーションシステムが開発されている。ナビゲーションシステムは、車載用に限らず、携帯端末にも搭載され、広く利用されている。そのようなナビゲーションシステムでは、出発地から目的地までの最短経路を、精度良く求めることが重要である。そこで、経路探索のための様々な方法が開発され、利用されている。経路探索のための代表的な方法には、ダイクストラ法がある。ダイクストラ法では、例えば、交差点をノードで表し、交差点間の道路を、長さ情報を持つリンクで表す。そして、出発地から目的地までの経路を、リンクとノードを交互に接続していくことにより表し、得られた経路長が最短となる経路が選択される。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の経路探索装置は、各ノード間のリンク長を道路の幅及び属性で補正して、そのリンクを走行するために必要な所要時間を求め、その所要時間を表示するように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−174485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、ユーザに提供するサービスによっては、ユーザが既に通ったことのある道路のみから、経路を選択することが求められる場合もある。同様に、複数の地点間の距離を、ユーザが既に通ったことのある道路のみに基づいて算出することが求められる場合もある。しかし、上記の経路探索装置のように、従来の経路探索装置及び経路探索方法では、単に出発地と目的地の最短経路を求めるだけなので、ユーザが一度も通ったことのない道を経路に含めてしまう場合がある。
【0006】
本発明の目的は、ユーザが一度通った経路に限定して複数の地点間の最短経路長を算出する経路長算出装置及び経路長算出方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、確率モデルを用いて、特定の状況に対する空調設定を自動的に最適化する車両用空調装置において、確率モデルを生成する際、車両が一度通った経路に限定して、設定操作が行われた複数の地点間の最短経路長を求め、その最短経路長に基づいてその特定の状況が生じる範囲を決定する車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の記載によれば、本発明の一つの形態として、移動物体に関するイベントの複数の発生地点間の最短経路長を算出する経路長算出装置が提供される。係る経路長算出装置は、移動物体の現在位置を取得する位置検出部(2)と、検出対象となるイベントの発生を検知するイベント検知部(4)と、第1のイベントが発生したときに、その第1のイベント発生地点を移動物体が通った経路である過去経路を表す過去経路情報を記憶する経路履歴情報記憶部(5)と、イベント検知部(4)により第2のイベントの発生が検知されたときに、位置検出部(2)により取得された第2のイベント発生地点と、経路履歴情報記憶部(5)に記憶された過去経路情報から、第2のイベント発生地点が過去経路上に存在すると判定した場合、その過去経路に沿って第1のイベント発生地点と第2のイベント発生地点間の最短経路長を算出する距離算出部(8)とを有する。係る構成により、第1のイベント発生地点と第2のイベント発生地点の最短経路長を、過去に通った経路に沿って求めることができる。
【0009】
また請求項2の記載によれば、道路情報を取得する道路情報取得部(3)と、第1のイベント発生地点を含む所定の範囲について、過去経路上の複数の地点の位置を位置検出部(2)により取得し、道路情報取得部(3)により取得された道路情報と関連付けることにより、過去経路情報を求める経路決定部(7)とをさらに有することが好ましい。
【0010】
さらに請求項3の記載によれば、過去経路情報は、移動物体が過去経路を通過したときの移動方向を表す第1の移動方向を含み、前記位置検出部(2)は、前記第2のイベント発生地点における移動物体の移動方向を表す第2の移動方向を取得し、前記距離算出部(8)は、前記第2の移動方向が、前記第1の移動方向と一致する場合に限り、前記第2のイベント発生地点が前記過去経路上に存在すると判定する、請求項1または2に記載の経路長算出装置。係る構成により、イベント発生時における、移動物体の移動方向も勘案して、最短経路長を求めることができる。そのため、複数のイベントが、移動方向によって異なる理由で発生した場合と、移動方向とは無関係な理由で発生した場合とを区別して、イベント発生地点間の経路長を評価することができる。
【0011】
さらに請求項4の記載によれば、過去経路情報は、過去経路上の複数の地点に対応する出発点からの走行距離または第1のイベント発生地点からの相対距離を含み、距離算出部(8)は、走行距離または相対距離を参照して、最短経路長を算出することが好ましい。これにより、イベント発生地点間の経路を調べなおす必要がないので、経路長の算出に要する計算処理量を減らすことができる。
【0012】
また請求項5の記載によれば、本発明の他の形態として、移動物体に関するイベントの複数の発生地点間の最短経路長を算出する経路長算出装置が提供される。係る経路長算出装置は、移動物体の現在位置を取得する位置検出部(2)と、検出対象となるイベントの発生を検知するイベント検知部(4)と、第1のイベントが発生したときの第1のイベント発生地点を表す過去経路情報を記憶した経路履歴情報記憶部(5)と、道路情報を取得する道路情報取得部(3)と、イベント検知部(4)により第2のイベントの発生が検知されたときに、移動物体が第2のイベント発生地点を通った経路である現経路上の複数の地点の位置を位置検出部(2)により取得し、道路情報取得部(3)により取得された道路情報と関連付けることにより、その現経路を表す現経路情報を求める経路決定部(7)と、経路履歴情報記憶部(5)に記憶された第1のイベント発生地点と、現経路情報から、第1のイベント発生地点が現経路上に存在すると判定した場合、現経路に沿って第1のイベント発生地点と第2のイベント発生地点間の最短経路長を算出する距離算出部(8)とを有する。係る構成により、第1のイベント発生地点と第2のイベント発生地点の最短経路長を、第2のイベント発生時に通った経路に沿って求めることができる。
【0013】
また請求項6の記載によれば、位置検出部(2)が移動物体の位置検出時の移動方向を取得することにより、現経路情報は、現経路における移動物体の移動方向を表す第2の移動方向を含み、過去経路情報は、第1のイベント発生地点における移動物体の移動方向を表す第1の移動方向を含み、距離算出部(8)は、第1の移動方向が、第2の移動方向と一致する場合に限り、第1のイベント発生地点が現経路上に存在すると判定することが好ましい。係る構成により、イベント発生時における、移動物体の移動方向も勘案して、最短経路長を求めることができる。そのため、複数のイベントが、移動方向によって異なる理由で発生した場合と、移動方向とは無関係な理由で発生した場合とを区別して、イベント発生地点間の経路長を評価することができる。
【0014】
さらに請求項7の記載によれば、現経路情報は、現経路上の複数の地点に対応する出発点からの走行距離または第2のイベント発生地点からの相対距離を含み、距離算出部(8)は、走行距離または相対距離を参照して、最短経路長を算出することが好ましい。これにより、イベント発生地点間の経路を調べなおす必要がないので、経路長の算出に要する計算処理量を減らすことができる。
【0015】
さらに請求項8の記載によれば、本発明のさらに他の形態として、移動物体に関するイベントの複数の発生地点間の最短経路長を算出する経路長算出装置が提供される。係る経路長算出装置は、移動物体の現在位置を取得する位置検出部(2)と、検出対象となるイベントの発生を検知するイベント検知部(4)と、第1のイベントが発生したときの第1のイベント発生地点と、第1のイベント発生地点通過前または通過後に移動物体が通過した所定地点とを表す過去経路情報を記憶した経路履歴情報記憶部(5)と、道路情報を取得する道路情報取得部(3)と、イベント検知部(4)により第2のイベントの発生が検知されたときに、移動物体が第2のイベント発生地点を通った経路である現経路上の複数の地点の位置を位置検出部(2)により取得し、道路情報取得部(3)により取得された道路情報と関連付けることにより、その現経路を表す現経路情報を求める経路決定部(7)と、経路履歴情報記憶部(5)に記憶された過去経路情報と現経路情報から、上記の所定地点が現経路上に存在すると判定した場合、現在経路または過去経路に沿って第1のイベント発生地点と第2のイベント発生地点間の最短経路長を算出する距離算出部(8)とを有する。係る構成により、第1のイベント発生時に移動物体が通った経路と第2のイベント発生時に移動物体が通った経路とが、途中で分岐したり、途中で合流する場合であっても、第1のイベント発生地点と第2のイベント発生地点の最短経路長を、その第1のイベント発生時または第2のイベント発生時の経路に沿って求めることができる。
【0016】
さらに請求項9の記載によれば、位置検出部(2)が移動物体の位置検出時の移動方向を取得することにより、現経路情報は、現経路における移動物体の移動方向を表す第2の移動方向を含み、過去経路情報は、所定地点における移動物体の移動方向を表す第1の移動方向を含み、距離算出部(8)は、第1の移動方向が、第2の移動方向と一致する場合に限り、上記の所定地点が現経路上に存在すると判定することが好ましい。係る構成により、イベント発生時における、移動物体の移動方向も勘案して、最短経路長を求めることができる。そのため、複数のイベントが、移動方向によって異なる理由で発生した場合と、移動方向とは無関係な理由で発生した場合とを区別して、イベント発生地点間の経路長を評価することができる。
【0017】
さらに請求項10の記載によれば、過去経路情報は、過去経路上の所定地点に対応する出発点からの第1の走行距離または第1のイベント発生地点からの第1の相対距離を含み、かつ、現経路情報は、現経路上の複数の地点に対応する出発点からの第2の走行距離または第2のイベント発生地点からの第2の相対距離を含み、
距離算出部(8)は、第1及び第2の走行距離または第1及び第2の相対距離を参照して、最短経路長を算出することが好ましい。これにより、イベント発生地点間の経路を調べなおす必要がないので、経路長の算出に要する計算処理量を減らすことができる。
【0018】
また請求項11の記載によれば、本発明のさらに他の形態として、移動物体に関するイベントの複数の発生地点間の最短経路長を算出する経路長算出方法が提供される。係る経路長算出方法は、第1のイベントの発生を検知するステップと、第1のイベントが発生したときに、その第1のイベント発生地点を移動物体が通った経路である過去経路を表す過去経路情報を記憶するステップと、第2のイベント発生を検知するステップと、第2のイベント発生を検知したときに、その第2のイベント発生地点の現在位置を取得するステップと、第2のイベントの発生が検知されたときに、第2のイベント発生地点と、過去経路情報から、第2のイベント発生地点が過去経路上に存在すると判定した場合、その過去経路に沿って第1のイベント発生地点と第2のイベント発生地点間の最短経路長を算出するステップとを含む。
【0019】
また請求項12の記載によれば、本発明のさらに他の形態として、コンピュータに移動物体に関するイベントの複数の発生地点間の最短経路長を算出させるプログラムが提供される。係る経路長算出プログラムは、第1のイベントの発生を検知するステップと、第1のイベントが発生したときに、その第1のイベント発生地点を移動物体が通った経路である過去経路を表す過去経路情報を記憶するステップと、第2のイベント発生を検知するステップと、第2のイベント発生を検知したときに、その第2のイベント発生地点の現在位置を取得するステップと、第2のイベントの発生が検知されたときに、第2のイベント発生地点と、過去経路情報から、第2のイベント発生地点が過去経路上に存在すると判定した場合、その過去経路に沿って第1のイベント発生地点と第2のイベント発生地点間の最短経路長を算出するステップとをコンピュータに実行させる。
【0020】
また請求項13の記載によれば、本発明のさらに他の形態として、車両用空調装置が提供される。係る空調装置は、空調空気を車両内に供給する空調部(20)と、車両の位置を表す位置情報を取得する位置情報取得部(40)と、車両が乗員により所定の設定操作が行われた操作点を通ったときの経路である過去経路を表す過去経路情報と、その操作点の位置情報を記憶する記憶部(61)と、位置情報を入力することにより乗員が所定の設定操作を行う確率を算出するための確率モデルを構築する学習部(65)と、学習部(65)で構築された確率モデルに、位置情報取得部(40)で取得された車両の現在位置情報を入力して上記の確率を算出し、その確率に応じて、乗員の設定操作に関連する設定情報又は制御情報を、所定の設定操作となるように修正する制御情報修正部(63)と、修正された設定情報又は制御情報にしたがって、空調部(20)を制御する空調制御部(64)とを有する。そして学習部(65)は、乗員が所定の設定操作を行う度に、位置検出部(40)により取得された、所定の設定操作が行われた現操作点と、記憶部(61)に記憶された各過去経路情報から、現操作点が過去経路上に存在すると判定した場合、その過去経路に沿って、過去経路において所定の設定操作が行われた過去操作点と現操作点間の最短経路長を算出することにより、各操作点間の最短経路長を記録した距離参照テーブルを作成する距離算出部(652)と、各操作点を、距離参照テーブルを参照して、少なくとも第1のクラスタと第2のクラスタに区分し、かつ第1のクラスタに含まれる操作点から車両の位置に関する第1の範囲を決定し、第2のクラスタに含まれる操作点から車両の位置に関する第2の範囲を決定するクラスタリング部(654)と、第1の範囲に含まれる車両の位置に対する上記の確率及び第2の範囲に含まれる車両の位置に対する上記の確率を決定することにより、所定の設定操作に関連する確率モデルを構築する確率モデル構築部(655)とを有する。本発明に係る車両用空調装置は、確率モデルを生成する際、車両が一度通った経路に限定して、設定操作が行われた複数の操作点間の最短経路長を求め、その最短経路長を用いて操作点をクラスタリングした結果に基づいて車両の位置に対する区分を決定するので、その特定の状況が生じる範囲を正確に区分することができる。
【0021】
また請求項14の記載によれば、本発明のさらに他の形態として、移動物体に搭載された機器の制御装置が提供される。係る制御装置は、移動物体の位置を表す位置情報を取得する位置情報取得部と、移動物体が機器に関する所定の設定操作が行われた操作点を通ったときの経路である過去経路を表す過去経路情報と、操作点の位置情報を記憶する記憶部と、位置情報を入力することにより移動物体に搭載された機器について所定の設定操作が行われる確率を算出するための確率モデルを構築する学習部と、学習部で構築された確率モデルに、位置情報取得部で取得された移動物体の現在位置情報を入力して上記の確率を算出し、その確率に応じて、上記の機器に対する設定操作に関連する設定情報又は制御情報を、所定の設定操作となるように修正する制御情報修正部と、修正された設定情報又は制御情報にしたがって、上記の機器を制御する制御部とを有する。そして、学習部は、所定の設定操作が行われる度に、位置検出部により取得された、所定の設定操作が行われた現操作点と、記憶部に記憶された各過去経路情報から、現操作点が過去経路上に存在すると判定した場合、その過去経路に沿って、過去経路において所定の設定操作が行われた過去操作点と現操作点間の最短経路長を算出することにより、各操作点間の最短経路長を記録した距離参照テーブルを作成する距離算出部と、各操作点を、距離参照テーブルを参照して、少なくとも第1のクラスタと第2のクラスタに区分し、かつ第1のクラスタに含まれる操作点から移動物体の位置に関する第1の範囲を決定し、第2のクラスタに含まれる操作点から移動物体の位置に関する第2の範囲を決定するクラスタリング部と、第1の範囲に含まれる移動物体の位置に対する上記の確率及び第2の範囲に含まれる移動物体の位置に対する上記の確率を決定することにより、所定の設定操作に関連する確率モデルを構築する確率モデル構築部とを有する。
【0022】
なお、上記各部に付した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の第1の実施形態に係る経路長算出装置について説明する。
本発明の第1の実施形態に係る経路長算出装置は、例えば、車両に搭載され、車両がそれまでに通ったことのある経路に限定して、複数の地点間の経路長を算出するものである。そのために、係る経路長算出装置は、記録対象となるイベント(例えば、設定温度を変更する、あるいは、内気循環モードに設定するといった空調装置の操作を実行)が発生した地点の近傍において、ユーザが通った経路をそのイベントと関連付けて記憶しておく。経路長算出装置は、その後に新たなイベントが発生した場合、その新たなイベントの発生地点が、記憶された経路上に存在するか否かを調べる。そして記憶された経路上に新たなイベントの発生地点が存在する場合には、その経路に関連付けられたイベントの発生地点との距離を、その経路に沿って算出する。そして経路長算出装置は、そのイベント同士の地理的な関連性を判断するための情報として、イベント発生地点同士の最短経路長を車両が通った経路に沿って算出する。
【0024】
図1は、経路長算出装置1の全体構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、経路長算出装置1は、位置検出部2と、道路情報取得部3と、操作部4と、記憶部5と、制御部6とを有する。
【0025】
位置検出部2は、経路長算出装置1が搭載された車両の現在位置及び進行方向を検出する。そのために、位置検出部2は、センサとして、地磁気センサ、ジャイロスコープ、距離センサ及びGPS受信機を有する。そして、地磁気センサは絶対方位を取得し、ジャイロスコープは相対方位を検出する。また、距離センサは、車速パルス信号に基づいて、出発点からの走行距離を算出する。さらに、GPS受信機は、GPS(全地球測位システム)を構成するGPS衛星からの情報に基づいて、車両の現在位置の緯度及び経度を得る。位置検出部2は、これらの情報を組み合わせて、車両の現在位置及び進行方向を検出する。なお、地磁気センサ、ジャイロスコープ、距離センサ及びGPS受信機は、それぞれ周知のものを用いることができるため、ここではその詳細な説明を省略する。また、それらのセンサからの情報を組み合わせて車両の位置及び進行方向を検出する方法も、周知であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
位置検出部2は、一定の距離間隔(例えば、50m毎)、あるいは一定の時間間隔(例えば、5秒毎)に、車両の現在位置及び進行方向を検出し、制御部6へ送信する。なお、その現在位置及び進行方向を、以下では位置情報という。
【0026】
道路情報取得部3は、車両の現在位置周辺の道路情報を含む地図を取得し、制御部6へ送信する。そのために、道路情報取得部3は、例えば、地図情報を記録したDVD、CDなどの光磁気記録媒体と、その記録媒体の読取装置を有する。ここで、道路情報は、各交差点を表すノードと、隣接する交差点間をつなぐ道路を表すリンクで構成される。そして、ノードには、そのノード自体の識別情報、位置、ノードに接続されたリンクの識別情報などが関連付けられる。またリンクには、そのリンク自体の識別情報、リンクの位置、長さ、道路の種別(例えば、一般道路か高速道路)、一方通行情報などが関連付けられる。なお、道路情報取得部3は、無線通信ネットワークを介して、サーバから地図情報を取得するようにしてもよい。
【0027】
操作部4は、イベント検知部として機能し、車両の乗員が何等かの操作を行ったことを検知する。そのために、操作部4は、車載機器の操作部、または、車両の操作装置で構成される。検知される操作は、車載機器の何れかについての設定操作、例えば、空調装置の設定を変更する操作(設定温度を変える、風量または風向きを調整する、内気循環モードまたは外気導入モードに設定する等)、またはカーオーディオの操作(カーオーディオの電源を入れる/切る、ラジオを聴く、CDを操作する、ボリュームを調整する等)であってもよい。あるいは、その操作は、車両の運転操作、例えば、ブレーキペダルを踏む、加速/減速する、ワイパーを動かす、パワーウインドウを開ける/閉じるといった操作であってもよい。
そして操作部4は、乗員が何等かの操作を行ったことを検知すると、その操作内容を表す信号を制御部6へ送信する。
【0028】
記憶部5は、例えば、書き換え可能な不揮発性の半導体メモリ、または磁気記録媒体及びその読取装置などで構成される。そして記憶部5は、制御部6で実行されるプログラム、そのプログラムが使用する各種設定パラメータなどを記憶する。さらに記憶部5は、経路履歴情報記憶部として機能し、制御部6で求めた、車両が通った経路を表す経路履歴情報を記憶する。
【0029】
制御部6は、CPU,ROM,RAM等からなる1個もしくは複数個の図示してないマイクロコンピュータ及びその周辺回路で構成される。そして、制御部6は、このマイクロコンピュータ及びマイクロコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムによって実現される機能モジュールとして、経路決定部7及び距離算出部8を有する。さらに制御部6は、リングバッファで構成され、一時的に、車両の現在位置近傍の所定区間にわたって車両が通った経路上の複数の地点に関する位置情報を記憶するためのバッファ9を有する。
以下、制御部6の動作を詳細に説明する。
【0030】
経路決定部7は、位置検出部2から位置情報を取得する度に、道路情報取得部3から取得した道路情報とマップマッチングを行い、その位置情報を、道路情報に含まれる、何れかのリンクまたはノードに関連付ける。なお、マップマッチングとして、周知の方法を利用することができるので、ここではマップマッチングの詳細な説明を省略する。
経路決定部7は、位置情報にリンクまたはノードを関連付けると、その位置情報を、関連付けたリンクまたはノードとともに、バッファ9に記憶する。そして、バッファ9に所定数(例えば、10点)の位置情報が記憶されると、その後は新たな位置情報がバッファ9に記憶される度に、最も古い位置情報がバッファ9から削除される。
【0031】
ここで、操作部4から、何等かの操作が行われたことを示す操作信号が制御部6へ送信されると、経路決定部7は、その操作が行われた時の車両の位置情報を位置検出部2から取得し、その操作の種類を識別するための操作識別情報とともに、バッファ9に記憶する。なお、操作が行われた時の車両の位置を、以下では操作点という。なお、経路決定部7は、制御部6が操作部4から操作信号を受信したときに最も近いタイミングで取得された位置情報を、操作点を表す情報としてもよい。
操作が行われた後、上記の所定数の半分の位置情報がバッファ9に記憶されると、経路決定部7は、その時点でバッファ9に記憶されている位置情報を一つの経路履歴情報として、記憶部5に記憶する。そのため、一つの経路履歴情報には、操作点の位置情報と、その操作点を略中心として、経路に沿って前後にほぼ同数(例えば、5点ずつ)の位置情報が含まれる。そして経路履歴情報に含まれる各位置情報には、それぞれ、道路の情報を表すリンクまたはノードが関連付けられる。また、経路履歴情報は、行われた操作に対応する操作識別情報も含む。なお、一つの経路履歴情報に含まれる経路の始点から終点までの距離が短すぎると、異なる操作点で行われた操作同士に関連性が有る場合でも、その操作点間の経路長を求めることができなくなる。そこで、例えば、一つの経路履歴情報に含まれる経路の始点から終点までの距離は、異なる操作点で行われた操作同士が関連性を有する可能性のある最大距離に設定することができる。
【0032】
図2に、バッファ9に記憶される情報の一例を示す。なお、この例では、簡単化のために、5点のみの位置情報がバッファ9に記憶されるものとする。図2に示すように、表200の各行にそれぞれ一つの位置情報201〜205が記憶される。そして、各位置情報には、GPS受信機から取得した緯度、経度情報、車両の進行方向を表す方位、距離センサから取得した出発点からの距離、操作点からの相対距離、及びリンクまたはノードの識別番号が記憶される。
【0033】
経路決定部7は、上記の処理を繰り返し、操作部4を通じて操作が行われる度に、新たな経路履歴情報を作成して記憶部5に記憶する。
【0034】
距離算出部8は、二つの操作点間の最短経路長を算出する。そこで距離算出部8は、記憶部5に少なくとも一つの経路履歴情報が記憶されている場合において、新たに操作が行われると、記憶部5から経路履歴情報を読み込む。以下、新たに行われた操作に関する操作点及び経路履歴情報を、それぞれ現操作点及び現経路情報といい、記憶部5から読み込んだ経路履歴情報及びそれに含まれる操作点をそれぞれ過去経路情報及び履歴操作点という。そして距離算出部8は、現経路情報に含まれる任意の点と、過去経路情報に含まれる何れかの点との距離が、所定の閾値(例えば、10m)以下か否かを調べる。そして、その距離が所定の閾値以下の場合、現経路と過去経路に一致する点が存在すると判定する。そして一致する点が見つかった場合、距離算出部8は、現経路情報に含まれる経路と過去経路に含まれる経路に限定してダイクストラ法などの経路探索方法を用いることにより、現操作点と履歴操作点間の最短経路長を算出する。
なお、距離算出部8は、二分探索法を用いて、過去経路情報に含まれる点のうち、現経路情報の着目点と最も近い点を探索するようにしてもよい。あるいは、距離算出部8は、その二つの道路情報に含まれるリンクまたはノードの識別番号のうち、等しいものが存在するか否かを調べることにより、現経路と過去経路に一致する点が存在するか否かを判定することができる。この場合には、高速道路及び高速道路に並行する一般道を区別することもできる。
【0035】
以下、図3を用いてこの様子を説明する。図3(a)は、過去経路と現経路が重ならない場合の過去経路及び現経路の模式図を示し、図3(b)は、過去経路と現経路の一部が重なる場合の過去経路及び現経路の模式図をを示す。図3(a)及び(b)において、点線301〜303は、それぞれ道路を表す。また、実線311は、過去経路を表し、実線311上に示された白抜きの矢印312は、履歴操作点を表す。同様に、実線321は、現経路を表し、実線321上に示された矢印322は、現操作点を表す。なお、過去経路311及び現経路321において、それらの経路を通過したときの始点に'S'のマークを付し、終点に'G'のマークを付した。
【0036】
まず、図3(a)のように、過去経路311が道路301に沿っており、現経路321が道路302に沿っていて全く重ならない場合、履歴操作点312から現操作点322まで、車両が通ったことのある経路のみでは辿りつけない。そのため、距離算出部8は、履歴操作点312と現操作点322間の距離を、無限大とする。これは、履歴操作点312で行われた操作と、現操作点322で行われた操作との間に、何の関連性もない可能性が高いと考えられるためである。
一方、図3(b)では、過去経路311が、道路301から道路303を経て道路302に至っているため、途中から現経路321と重なっている。そのため、履歴操作点212から現操作点322まで、過去経路311と現経路321に沿って辿り付く事ができる。そこで距離算出部8は、それらの経路に沿って、現操作点と履歴操作点間の最短経路長を算出する。
【0037】
距離算出部8は、新たに操作が行われる度、上記の手順により、現操作点と、記憶されている全ての過去経路情報の履歴操作点との最短経路に沿った距離を、それぞれ算出する。そして、距離算出部8は、各操作点間の距離を表す距離参照テーブルを記憶部5から読み出し、新たに得られた現操作点と各履歴操作点との距離を距離参照テーブルに書き加える。そして更新された距離参照テーブルを、記憶部5に記憶する。
【0038】
なお、距離算出部8は、上述した手順と異なる方法によって操作点間の最短経路長を算出してもよい。そのような別の方法について説明する。この方法では、記憶部5に経路履歴情報を記憶する際、履歴操作点と、その履歴操作点を略中心とした上記の所定区間の始点及び終点の3点のみの情報だけを記憶する。そして、現経路と過去経路の一致を調べる際、その3点の何れかが、現経路情報に含まれる任意の点に関連付けられた道路情報と一致するか否か、すなわち、現経路上に存在するか否かを調べる。そして、履歴操作点が現経路上に存在する場合、距離算出部8は、現経路に沿って履歴操作点と現操作点の距離を求める。また、過去経路の始点が現経路上に存在する場合、距離算出部8は、始点から履歴操作点までの距離に、その始点から現操作点までの距離を加算または減算することにより、両操作点間の距離を求める。同様に、過去経路の終点が現経路上に存在する場合も、距離算出部8は、終点から履歴操作点までの距離に、その終点から現操作点までの距離を加算または減算することにより、両操作点間の距離を求める。
【0039】
図4(a)及び(b)に、この別の計算方法を採用した場合の例を示す。図4(a)は、過去経路の終点401が、実線で示した現経路411上に存在し、かつ現経路411の操作点412が過去経路の終点401より履歴操作点402側に存在する場合(すなわち、過去経路の終点401が現経路411の操作点412と終点413の間に存在する場合)の現経路と過去経路の関係を示す模式図である。同様に、図4(b)は、過去経路の終点401が現経路411と一致し、かつ現経路の操作点412が過去経路の終点401よりも先に存在する場合(すなわち、過去経路の終点401が現経路の始点414と操作点412の間に存在する場合)の現経路と過去経路の関係を示す模式図である。
【0040】
図4(a)に示す例では、操作点412から過去経路の終点401までの区間(距離B)が、履歴操作点402から終点401までの区間(距離A)と重複している。そこで距離算出部8は、操作点412と履歴操作点402間の距離dを、(A-B)とする。
一方、図4(b)に示す例では、操作点412から過去経路の終点401までの区間(距離B)と、履歴操作点402から終点401までの区間(距離A)とは重複しない。そこで距離算出部8は、操作点412と履歴操作点402間の距離dを、(A+B)とする。
【0041】
また、距離算出部8は、現経路または過去経路の何れか一方について、操作点のみの位置情報を用いて、現経路と過去経路が一致するか否かを調べてもよい。図5(a)及び(b)を参照しつつ、これらの方法について説明する。図5(a)は、過去経路情報として、履歴操作点のみの情報を記憶して用いる場合の過去経路と現経路の関係を表す模式図を示す。また図5(b)は、現経路情報として現操作点のみを用いる場合の過去経路と現経路の関係を表す模式図を示す。
【0042】
図5(a)において、点線501〜503は、それぞれ道路を表す。また、道路502上の実線511は現経路を表し、実線511上に示された矢印512は、現操作点を表す。車両は、現経路511の始点513から終点514へ向かって進行したものとする。また、白抜きの矢印521〜525は、それぞれ履歴操作点を表す。現操作点512及び履歴操作点521〜525の矢印の向きは、車両の進行方向を表す。
図5(a)に示す方法では、履歴操作点が現経路上に存在する場合、距離算出部8は、現操作点と履歴操作点間の距離を、現経路に沿って算出する。図5(a)では、履歴操作点521及び522が、現経路511上に存在し、その他の履歴操作点523〜525は、現経路511と離れている。そこで、距離算出部8は、現操作点512と、履歴操作点521または522との距離を現経路511に沿って算出し、それ以外の履歴操作点523〜525と現操作点512間の距離を無限大とする。
【0043】
次に、図5(b)に示す例について説明する。図5(b)において、点線551〜554は、それぞれ道路を表す。また、道路551から道路553を経由して道路552に至る実線561と、道路554に沿った実線562は過去経路を表す。また、白抜きの矢印563及び564は、それぞれ過去経路561及び過去経路562における履歴操作点を表す。さらに矢印571は、現操作点を表す。現操作点571及び履歴操作点563及び564の矢印の向きは、車両の進行方向を表す。
図5(b)に示す方法では、現操作点が過去経路上に存在する場合、距離算出部8は、現操作点と履歴操作点間の距離を、過去経路に沿って算出する。図5(b)では、現操作点571は、過去経路561上に存在するので、距離算出部8は、現操作点571と履歴操作点563間の距離を過去経路561に沿って算出する。一方、現操作点571は、過去経路562上のいずれの点とも一致しないので、距離算出部8は、現操作点571と履歴操作点564間の距離を無限大とする。
【0044】
これらの代替方法は、記憶部5に記憶するデータ量、あるいは計算に用いるデータ量を減らすことができる。また、現操作点と履歴操作点間の経路を改めて検索する必要がない。そのため、距離算出部8は、現経路情報または過去経路情報に記録された、各操作点に対応する位置の出発点からの走行距離、または何れかの操作点を起点とした相対距離を参照して、現操作点と履歴操作点間の距離を求めることができる。そのため、これらの方法は、特に、交差点が少なく、現経路と過去経路が途中で分岐したり、途中から合流することがない場合であれば、ハードウェア資源を節約するために有効である。
【0045】
図6に、操作点間の距離を表す距離参照テーブルの一例を示す。図6において、距離参照テーブル601の上端及び左端の各欄に示した操作点1〜3は、過去経路情報に含まれる履歴操作点に対応する。また、操作点4は、現操作点を表す。距離参照テーブル601の各欄611〜613に記載された数値は、履歴操作点間の距離を表す。同様に、最下部の欄614〜616には、新たに追加された現操作点4と過去に記憶された履歴操作点1〜3との距離が書き込まれる。
【0046】
以下、図7に示したフローチャートを参照しつつ、本発明の第1の実施形態に係る経路長算出装置1の動作について説明する。なお、経路長算出装置1の動作は、制御部6により、制御部6に組み込まれたコンピュータプログラムにしたがって制御される。
【0047】
最初に、制御部6は、位置検出部2から、車両の位置情報(具体的には、車両の位置を表す緯度及び経度、出発点からの走行距離、及び進行方向)を取得し、道路情報取得部3から道路情報を取得する(ステップS101)。
次に、制御部6は、操作状態フラグの値がTrue(すなわち、バッファ9に記憶されている経路情報に操作点が含まれている状態)であり、かつ、操作が行われた以降に所定数の位置についての情報が取得されたか否か(すなわち、現経路情報が作成されたか否か)を判定する(ステップS102)。操作状態フラグの値がFalse(すなわち、バッファ9に記憶されている経路情報に操作点が含まれていない状態)か、現経路情報を作成するのに十分なデータが収集されていない場合、制御部6は、操作部4を通じて、何等かの操作が行われたか否かを判定する(ステップS103)。そして、何等かの操作が行われた場合、制御部6は、操作状態フラグの値をTrueに書き換える(ステップS104)。ステップS104の後、あるいは、ステップS103で、制御部6は、何の操作も行われていないと判定した場合、制御部6の経路決定部7は、ステップS101で取得した位置情報及び道路情報を関連付け、それらの情報をバッファ9に記憶する。そしてバッファ9に記憶されている情報を更新する(ステップS105)。その後、制御部6は、動作を終了する。
【0048】
一方、ステップS102において、操作状態フラグの値がTrueで、かつ現経路情報が完成した場合、制御部6は、記憶部5に記憶された経路履歴情報のうちの何れか一つを、過去経路情報として読み込む(ステップS106)。そして制御部6の距離算出部8は、現経路情報に含まれる現操作点と、過去経路情報に含まれる履歴操作点間の直線距離ldを求める(ステップS107)。その後、距離算出部8は、直線距離ldが、所定の閾値Tw以下か否か判定する(ステップS108)。なお、閾値Twは、現操作点と履歴操作点との間に何の関連性もないとみなせる距離に設定される。例えば、閾値Twは、現経路情報または過去経路情報に含まれる始点と終点間の距離とすることができる。直線距離ldが、閾値Twより大きい場合、距離算出部8は、現操作点と履歴操作点間の距離を無限大に設定する(ステップS111)。そして制御部6は、制御をステップS112へ移行する。このように、現操作点と履歴操作点で行われた操作に関連性がないと考えられるほど、現操作点と履歴操作点間の直線距離ldが遠い場合には、強制的に両操作点間の距離を十分に大きな値に設定することで、距離算出に要する演算処理量を減らすことができる。一方、ステップS108において、直線距離ldが閾値Tw以下の場合、距離算出部8は、現経路に含まれる何れかの点が、過去経路に含まれる何れかの点と一致するか否かを判定する(ステップS109)。現経路に含まれる何れの点においても、過去経路と一致しない場合、距離算出部8は、操作点と履歴操作点間の距離を無限大に設定する(ステップS111)。そして制御部6は、制御をステップS112へ移行する。
【0049】
一方、ステップS109において、現経路と過去経路に一致する点がある場合、距離算出部8は、現経路または過去経路に沿って、両操作点間の最短経路を探索し、その最短経路にしたがって両操作点間の距離(すなわち最短経路長)dを算出する(ステップS110)。そして制御部6は、算出された距離dを距離参照テーブルに書き込み、その更新された距離参照テーブルを記憶部5に記憶する(ステップS112)。
【0050】
ステップS112の後、制御部6は、記憶部5に記憶されている全ての経路履歴情報について、上記のステップS106〜S112の処理が終了したか否かを調べる(ステップS113)。そして、ステップS106〜S112の処理が行われていない経路履歴情報がある場合、制御部6は、制御をステップS106へ戻し、それらの処理が行われていない経路履歴情報について、ステップS106〜S112の処理を行う。
一方、ステップS113において、制御部6は、全ての経路履歴情報について、上記のステップS106〜S112の処理が終了したと判定した場合、操作状態フラグの値をFalseに書き換える(ステップS114)。そして、制御部6は、バッファ9に保存されている現経路情報を、経路履歴情報として記憶部5に追加保存し(ステップS115)、処理を終了する。
制御部6は、上記のステップS101〜S115の処理を、位置情報を取得する度に実行する。
【0051】
なお、上記のフローチャートにおいて、ステップS107及びS108の処理は省略してもよい。また、ステップS109及びS110において、図4または図5を参照しつつ説明した方法により、操作点間の最短経路長を算出するようにしてもよい。さらに、ステップS111において、操作点間の距離を、無限大とする代わりに、両操作に関連性がないことを表す十分に大きな有限値に設定してもよい。
【0052】
以上説明してきたように、本発明の第1の実施形態に係る経路長算出装置は、現経路と過去経路が一致するか否かを調べ、一致する場合にのみ現操作点と履歴操作点間の距離を算出するので、車両が実際に通った経路に沿って操作点間の最短経路長を算出することができる。
【0053】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、距離算出部8は、現経路と過去経路が一致するか否かの判定において、上記の判定基準に加えて、車両の進行方向が一致している場合にのみ、現経路と過去経路が一致していると判定するようにしてもよい。例えば、上記の図5(a)に示した例において、履歴操作点522は、現経路511と逆向きである。このような場合、距離算出部8は、履歴操作点522と現経路511は一致しないと判定するようにしてもよい。ここで、距離算出部8は、進行方向が一致しているか否かは、現経路と過去経路が一致する点における、車両の進行方向を用いて判定する。例えば、その一致点に関連付けられた道路情報がリンクである場合、車両の進行方向を表す方位の差が90°未満であれば、進行方向が一致していると判定し、方位の差が90°以上であれば、進行方向は一致していないと判定する。また、その一致点に関連付けられた道路情報がノード(すなわち、交差点)である場合、車両の進行方向を表す方位の差が30°未満であれば、進行方向が一致していると判定し、方位の差が30°以上であれば、進行方向は一致していないと判定する。
【0054】
また、距離算出部8は、公園またはショッピングセンターの駐車場内など、特定の領域内で行われた操作同士については、操作点間の距離を算出しなくてもよい。
【0055】
さらに、距離算出部8は、現操作点において行われた操作が、履歴操作点において行われた操作と同一である場合にのみ、現操作点と履歴操作点間の距離を、上記の何れかの方法によって算出するようにしてもよい。そして、同一でない場合は、現操作点と履歴操作点間の距離を、両操作に関連性がないことを表す十分に大きな有限値(例えば、無限大)に設定してもよい。このように、操作の種類(すなわち、イベントの種類)も経路長算出の判断基準に加えることで、経路長を実際に計算する操作点の組み合わせを減らせるので、距離算出部8の処理を軽減することができる。
【0056】
さらに、経路長算出装置1は、現操作点と履歴操作点間の距離の代わりに、道路情報を参照して両操作点を結ぶ経路のリンクコストの最小値を求めるようにしてもよい。これにより、道幅の広さ、渋滞の発生などを考慮して両操作点間の位置関係を調べることができる。また、経路長算出装置1は、高度計などをさらに有し、高架道と地上道のように、立体的に複数の道路が並行している場合、それらの道路の何れを走行したかを区別するために、高度情報を利用するようにしてもよい。さらにまた、複数の操作が連続して行われ、一つの経路履歴情報内に複数の操作点が含まれるような場合もある。そこで、このような場合、経路長算出装置1は、各操作ごとに一つの経路履歴情報を作成できるよう、制御部6は、操作部4を通じて操作が行われたことを検知する度に、バッファ9内に記憶されている経路情報のコピーを作成する。そして以後、経路長算出装置1は、それぞれの操作点に対する経路履歴情報が完成するまで、それぞれの経路情報に同時並行的に位置情報を追加するようにしてもよい。
【0057】
次に、本発明の第2の実施形態に係る車載用の空調システムについて説明する。係る空調システムは、車両の現在位置を入力することにより、その位置に対して適切と思われる空調設定の確率を出力する確率モデルを用いて、特定の場所に対して適切な空調設定を推定し、その推定結果に応じて自動的に空調設定を変更するものである。ここで、係る空調システムは、確率モデルを生成するために、乗員が空調設定を変更したときの車両の位置(操作点)を表す情報を蓄積する。そして空調システムは、各操作点間の最短経路長を上記の経路長算出装置1と同様に求める。その後、空調システムは、各操作点間の最短経路長に基づいて、各操作点の位置をクラスタリングすることにより、確率モデルに入力する位置情報の値の区分を決定する。最後に、各区分に対する確率を決定することにより、確率モデルを生成する。
【0058】
図8に、本発明の第2の実施形態に係る空調システム10の概略構成図を示す。図8に示すように、空調システム10は、主に機械的構成からなる空調部20と、内気温などの状態情報を取得するためのセンサ部30と、位置検出部41及び道路情報取得部42を有するナビゲーション装置40と、操作部として機能する操作パネル50と、空調システム10の各部を制御する制御部60とを有する。
【0059】
空調部20は、車内の空気または車外から取り入れた空気を冷却し、または暖めて、車内に供給する。そのために、空調部20は、冷媒を冷却するための冷凍サイクル(例えば、コンプレッサ、レシーバ、膨張弁などで構成される)と、車内または車外から空気を取り入れるための吸気口およびブロアファンと、取り入れた空気と冷媒との間で熱交換するためのエバポレータと、取り入れた空気を暖房するためのヒータコアと、ヒータコアを通過した空気とヒータコアを迂回した空気の混合比率を調整して空調空気を得るためのエアミックスドアと、空調空気を車内に送出するための吹き出し口を有する。
なお、空調部20として、車載用空調装置に使用される周知の様々な構成を採用することができる。
【0060】
センサ部30は、車両に関する各種情報を取得するためのセンサで構成される。センサ部30を構成する代表的なセンサとして、内気温センサ、外気温センサ、日射センサがある。内気温センサは、車室内の温度(内気温)Trを測定するために、ハンドル近傍のインストルメントパネルなどにアスピレータとともに設置される。また、外気温センサは、車室外の温度(外気温)Tamを測定するために、車両前方ラジエターグリルに設置される。さらに、車室内に照りつける日射光の強さ(日射量)Sを測定するために、日射センサが車室内のフロントガラス近傍に取り付けられる。これらセンサで取得された内気温Tr、外気温Tam及び日射量Sは、空調情報とされ、温調制御及び風量制御を行うために、制御部60で使用される。
【0061】
さらに、センサ部30は、エバポレータから吹き出される空気の温度を測定するためのエバポレータ出口温度センサなど、他のセンサを有してもよい。
【0062】
ナビゲーション装置40は、車両の位置情報及び道路情報を取得して、制御部60へ送信する。なお、ナビゲーション装置40の位置検出部41及び道路情報取得部42は、それぞれ本発明の第1の実施形態に係る経路長算出装置1の位置検出部2及び道路情報取得部3と同様の構成を有し、同様の機能を発揮する。そこで、位置検出部41及び道路情報取得部3の詳細については、位置検出部2及び道路情報取得部3を参照されたい。
【0063】
操作部50は、空調システム10の設定情報を調整するための各種スイッチと、設定情報を表示するための表示部などを有する。そして、操作部50は、各スイッチの操作の内容に対応した信号を、制御部60へ送信する。例えば、設定情報には、車内の設定温度Tset、風量W、吸気設定(内気循環モードまたは外気導入モード)、風向き設定などが含まれる。
【0064】
図9は、空調システム10の制御部60の機能ブロック図である。
制御部60は、図示していないCPU,ROM,RAM等からなる1個もしくは複数個の図示してないマイクロコンピュータ及びその周辺回路と、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリ等からなる記憶部61と、センサ部30、ナビゲーション装置40などとコントロールエリアネットワーク(CAN)のような車載通信規格に従って通信する通信部62を有する。
【0065】
さらに、制御部60は、このマイクロコンピュータ及びマイクロコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムによって実現される機能モジュールとして、制御情報修正部63、空調制御部64及び学習部65を有する。
【0066】
制御部60は、センサ部30からのセンサ情報、ナビゲーション装置40からの位置情報及び道路情報、操作部50から設定情報を取得すると、それらをRAMに一時的に記憶する。そして空調制御部64は、それらの情報に基づいて空調部20を制御して、各吹き出し口から送出される空調空気の風量比、全体の風量及び温度を調節する。
ここで制御情報修正部63は、車両が特定の位置に到達した場合における最適な空調空気の温度や風量などを決定するために、利用可能な確率モデルに、車両の現在位置、時間、車速など、車両の状態を表す状態情報を入力し、乗員が所定の操作(例えば、設定温度を下げる、風量を最大にする、内気循環モードに設定する等)を行う確率を推定する。その確率が所定閾値以上の場合には、空調システム10は、自動的にその所定の操作を行う。また学習部65は、確率モデルを生成するために、乗員が空調システム10を操作した場合には、その操作内容及びその操作時の車両の位置、時間など、各種情報を蓄積する。そして、そのような情報が所定数蓄積されると、蓄積した情報に基づいて統計的学習処理を行って確率モデルを生成する。以下、これらの動作を行う各機能モジュールについて説明する。
【0067】
制御情報修正部63は、確率モデルに基づいて、空調装置1の設定パラメータを自動調整するか否かを決定する。ここで設定パラメータは、設定温度Tset、風量W、内気循環モード/外気導入モードの設定など乗員が直接設定可能な設定情報である、そして、制御情報修正部63は、設定パラメータを自動調整する場合、確率モデルに関連付けられた修正情報に基づいて、設定パラメータを修正する。なお、確率モデルに関連付けられた修正情報とは、設定パラメータの修正後の値、あるいは、設定パラメータを所望の修正値に変更するために設定パラメータに加えられ、若しくは乗じられる修正量をいう。
本実施形態では、確率モデルとして、ベイジアンネットワークを用いた。ベイジアンネットワークは、複数の事象の確率的な因果関係をモデル化するものであり、各ノード間の伝播を条件付き確率で求める、非循環有向グラフで表されるネットワークである。なお、ベイジアンネットワークの詳細については、本村陽一、岩崎弘利著、「ベイジアンネットワーク技術」、初版、電機大出版局、2006年7月、繁桝算男他著、「ベイジアンネットワーク概説」、初版、培風館、2006年7月、又は尾上守夫監修、「パターン識別」、初版、新技術コミュニケーションズ、2001年7月などに開示されている。
【0068】
本実施形態では、確率モデルは、設定操作の種類ごと(例えば、設定温度Tsetを下げる若しくは上げる、風量Wを調節する、内気循環モードにする等)に生成される。そして、記憶部61には、確率モデルの構成を表す情報が、各設定操作と関連付けて記憶される。具体的には、確率モデルを構成する各ノード間の接続関係を表すグラフ構造、入力ノードに与えられる入力情報のタイプ、各ノードの条件付き確率表(以下、CPTという)が記憶部61に記憶される。さらに、設定操作の内容と一意に対応する設定操作番号k、その設定操作で修正される設定パラメータ及びその修正値(例えば、設定温度Tsetが3℃下げられる場合には、(Tset,-3)、風量Wを最大値Wmaxにする場合には、(W,Wmax)など)が各確率モデルごとに規定され、記憶部61に記憶される。
【0069】
制御情報修正部63は、確率モデルを記憶部61から読み出す。制御情報修正部63は、読み出された1以上の確率モデルのそれぞれに、所定の状態情報を入力して、乗員が各確率モデルに関連付けられた設定操作を行う確率を求める。すなわち、各確率モデルについて一意に規定され、各確率モデルとともに記憶部61に記憶された設定操作番号kで表される設定操作を行う確率を求める。制御情報修正部63は、その確率を、例えば確率伝播法を用いて計算することができる。そして、制御情報修正部63は、求めた確率が、乗員がその設定操作を行うことがほぼ確実であると考えられる閾値Th1(例えば、Th1=0.9)以上の場合、その設定操作を自動的に実行する。具体的には、その設定操作に関連する設定パラメータの値を、確率モデルに関連付けられた、すなわち、その確率モデルに対して一意に規定され、各確率モデルとともに記憶部61に記憶された設定パラメータの修正値を用いて修正する。
【0070】
図10に、空調システム10の設定パラメータを自動調節するために使用される確率モデルの一例のグラフ構造を示す。図10に示す確率モデル101では、3個の入力ノード102、103、104がそれぞれ出力ノード105に接続されている。また、各入力ノード102、103、104には、それぞれ入力される状態情報として曜日(x1)、時間帯(x2)、現在位置(x3)が与えられる。そして、出力ノード105は、設定温度Tsetを3℃下げる確率を出力する。
【0071】
図11(a)〜(d)に、図10に示した確率モデル101の各ノードについてのCPT106〜109を示す。CPT106〜108は、それぞれ入力ノード102〜104に対応し、入力される状態情報に対する事前確率を規定する。また、CPT109は、出力ノード105に対応し、各入力ノードの情報の値ごとに割り当てられた条件付き確率分布を規定する。
【0072】
ここで、曜日が土曜日(x1=1)、時間帯が昼(x2=1)、現在位置が公園(x3=1)と各入力ノードに与えられる情報が全て既知の場合、設定温度Tsetを3℃下げる確率P(x4=1|x1=1,x2=1,x3=1)は、図11(d)より、0.95となる。したがって、得られた確率は、閾値Th1以上であるため、制御情報修正部63は、設定温度Tsetを3℃下げるよう設定パラメータを修正する。
【0073】
一方、曜日が月曜日(x1=0)、時間帯が夜(x2=0)、現在位置が職場(x3=0)の場合、設定温度を3℃下げる確率P(x4=1|x1=0,x2=0,x3=0)は、図11(d)より、0.1となる。したがって、得られた確率は、第1の閾値Th1よりも小さいため、制御情報修正部63は、設定温度Tsetを変更しない。
【0074】
なお、上記の例では、簡単化のために、確率モデルを2層のネットワーク構成としたが、中間層を含む、3層以上のネットワーク構成としてもよい。また、入力ノードに与えられる状態情報の区分も、上記の例に限られない。なお、状態情報の区分については、後述する学習部65において説明する。
制御情報修正部63は、上記の処理によって、設定温度Tset、風量Wなどの各設定パラメータを必要に応じて修正すると、それらの設定パラメータを制御部60の各部で利用可能なように、制御部60のRAMに一時記憶する。
【0075】
空調制御部64は、各設定情報及び各センサから取得したセンシング情報をRAMから読み出し、それらの値に基づいて、空調部20を制御する。その際、制御情報修正部64によって修正された設定パラメータが記憶されている場合、空調制御部60は、その修正された設定パラメータを使用する。
具体的には、設定温度Tset及び各温度センサ及び日射センサ53の測定信号に基づいて、各吹き出し口から送出される空調空気の必要吹出口温度(空調温度Tao)を決定する。そして、その空調空気の温度が空調温度Taoとなるように、エアミックスドアの開度を決定する。そしてエアミックスドアがその開度になるように、エアミックスドアを動かすための温調サーボモータへ、制御信号を送信する。
【0076】
また空調制御部64は、空調温度Tao、設定温度Tset及びエバポレータ出口温度などに基づいて、冷凍サイクルを構成するコンプレッサのON/OFFを制御する。空調制御部64は、車内を冷房する場合、デフロスタを作動させる場合などには、原則としてコンプレッサを作動させ、冷凍サイクルを作動させる。
【0077】
さらに空調制御部64は、空調温度Tao、設定温度Tsetなどに基づいて、風量及び各吹き出し口から送出される空調空気の風量比を求める。そして空調制御部64は、決定した風量に対応するように、空調部20のブロアファンの回転数を調整する。また空調制御部64は、その風量比に対応するように、各吹き出し口の開度を決定する。さらにまた、空調制御部64は、空調温度Tao、設定温度Tset、内気温Trなどに基づいて、空調システム10が内気吸気口から吸気する空気と外気吸気口から吸気する空気の比率を設定する。
【0078】
空調制御部65は、空調温度Taoを決定するために、例えば、設定温度Tset、内気温Tr、外気温Tam及び日射量Sと空調温度Taoの関係を表した温調制御式を使用する。また空調制御部65は、風量Wを決定するために、例えば、設定温度Tset、内気温Tr、外気温Tam及び日射量Sと風量Wの関係を表した風量制御式を使用する。あるいは、空調制御部65は、空調温度Tao及び風量Wを決定するために、周知の様々な制御方法を用いることができる。同様に、空調制御部65は、風量比の決定、コンプレッサのON/OFF制御、吸気比の決定についても、周知の様々な制御方法を用いることができる。そのため、それらの制御方法の詳細な説明は省略する。
【0079】
学習部65は、乗員が空調システム10を操作した場合に、新しい確率モデルを生成するか否か、又は既存の確率モデルを更新するか否かを判定し、必要な場合、確率モデルを生成し、又は更新する。そのために、学習部65は、経路決定部651と、距離算出部652と、学習情報蓄積部653と、クラスタリング部654と、確率モデル構築部655と、確率モデル評価部656とを有する。以下、学習部65に含まれる各部について詳細に説明する。
【0080】
経路決定部651は、空調システム10の設定操作が行われた地点(操作点)近傍における車両の経路を、ナビゲーション装置40から取得した位置情報及び道路情報に基づいて決定し、記憶部61に経路履歴情報として記憶する。また、距離算出部652は、空調システム10の設定操作が行われる度に、各操作点間の距離を、車両が通過した経路に沿って算出し、各操作点間の距離を示した距離参照テーブルを作成して記憶部61に記憶する。なお、経路決定部651及び距離算出部652は、第1の実施形態における経路決定部7及び距離算出部8と同様の構成を有し、同様の機能を発揮する。そのため、経路決定部651及び距離算出部652の詳細については、第1の実施形態における経路決定部7及び距離算出部8の説明を参照されたい。さらに、第1の実施形態におけるバッファ9に対応する機能は、制御部60を構成するRAMによって果たされる。
【0081】
学習情報蓄積部653は、取得した状態情報に乗員が行った設定操作を関連付け、乗員の設定操作を推定する確率モデルの構築に必要な学習データとして記憶部61に蓄積させる。
一般的に、乗員は、車内が乗員にとって適切な空調状態となっていない場合、空調システム10の設定操作を行う。そのため、乗員が空調システム10の設定操作を頻繁に行う場合、乗員の設定操作を推定する確率モデルの構築が必要と考えられる。しかし、適切な確率モデルを構築するためには、統計的に正しい推定を行えるだけのデータが必要となる。そこで、学習情報蓄積部653は、空調システム10の設定操作が行われる度に、その操作時に取得した各状態情報(例えば、外気温Tamなどの空調情報、及び位置情報)を学習データDkとして、上述した設定操作番号kに関連付けて、記憶部61に記憶させる。
また、乗員Aが、設定操作番号kに対応する設定操作α(例えば、設定温度を3℃下げる、風量Wを最大にする、内気循環モードに切り換えるなど)を行った操作回数ikも記憶部61に記憶する。
これら学習データDk及び操作回数ikは、設定操作ごとに別個に記憶される。
【0082】
クラスタリング部654は、確率モデルの各ノードについてのCPTを求めるために、学習データDkに含まれる各状態情報のうち、予め複数の区分に分類できないものについてクラスタリングを行って、その状態情報の値の区分を決定する。
【0083】
確率モデルの入力ノードに与えられる状態情報として、車両の現在位置情報、外気温、内気温などの温度情報、時間情報など、取り得る値を限られたパターンに限定することができない情報、または連続的に変化するような情報が用いられる場合がある。このような情報を入力パラメータとするCPTを設定するためには、入力される状態情報の値をどのように区分するかが重要となる。例えば、運動後の公園の駐車場にいるという特定状況において、設定温度を3℃下げるという設定操作に対応する確率モデルを構築する場合を想定する。この場合、確率モデルの入力ノードに与えられる状態情報の一つとして上記のように車両の位置情報を用いるためには、車両の位置情報を、少なくともその公園の駐車場にいる場合とその他の場所にいる場所にいる場合とを区分することが重要となる。同様に、特定の国道を走行中という特定状況において、内気循環モードに設定するという設定操作に対応する確率モデルを構築する場合を想定する。この場合、確率モデルの入力ノードに与えられる状態情報の一つとして車両の位置情報を用いるためには、車両が国道上を走っている場合とその国道以外の場所にいる場合とを区分することが重要となる。この二つの例に示されるように、車両の位置情報に関して、公園の駐車場という範囲と国道上という範囲とでは、その位置も範囲も異なり、事前に特定状況に応じた区分を決定できないことが明らかである。
【0084】
そこで、クラスタリング部654は、車両の現在位置及び時間など、事前に値の区分を画定できない状態情報については、クラスタリングを行って、その値の区分を決定する。例えば、クラスタリング部654は、車両の現在位置が、生成しようとする確率モデルの入力パラメータの一つとして用いられる場合、学習データDkに保存された各操作点をクラスタリングする。そのために、クラスタリング部654は、各操作点間の距離を記憶した距離参照テーブルを参照して、操作点を、その各操作点間の距離に基づき、k−平均法、最短距離法などのクラスタリング手法を用いてクラスタリングする。
【0085】
クラスタリング部654は、クラスタリングを終えると、各クラスタに属する状態情報のデータの値の範囲に基づいて、状態情報の値の区分を決定する。例えば、学習データDkに保存された各操作点をクラスタリングして、車両の現在位置の値の区分を決定する場合、クラスタリング部654は、各クラスタについて、そのクラスタに属する操作点の重心を求める。さらにクラスタリング部654は、その重心からそのクラスタに属する最も離れた操作点までの距離lを求める。そして、各クラスタに対応する、車両の現在位置の値の区分を、そのクラスタの重心を中心とし、距離lを半径とする領域とする。クラスタリング部654は、求めた重心、距離、各クラスタに含まれるデータ数を、クラスタに関連付けて記憶部61に記憶する。
【0086】
確率モデル構築部655は、予めグラフ構造が決定された複数の標準モデルに対し、学習データ及びクラスタリング部654で規定された各状態情報の区分に基づいて、各標準モデルに含まれるノードのCPTを作成することにより、仮の確率モデルを生成する。
様々な状況に対応可能な、汎用的な確率モデルを構築するためには、多数のノードを含む、非常に大きな確率モデルを構築する必要がある。しかし、そのような確率モデルの学習には、非常に長い計算時間を要し、また、学習に必要なハードウェアリソースも膨大なものとなる。そこで、本実施形態では、状態情報のうち、設定操作と特に関連が深そうなものを幾つか入力ノードに与えられるパラメータとして選択し、それら入力パラメータの組み合わせに対する条件付き確率によって設定操作を行う確率を求める2層構成のグラフ構造を標準モデルとして15種類準備した。しかし、標準モデルの数は、15種類に限られない。標準モデルの数は、得られる状態情報の数や、学習対象とする設定操作の種類に応じて、適宜最適化できる。また、標準モデルは、入力パラメータを1個だけとするものや、取得可能な全ての状態情報を入力パラメータとするものであってもよい。さらに、標準モデルは、2層構成のグラフ構造に限られず、制御部60を構成するCPUの能力に応じて、3層以上のグラフ構造のものを標準モデルとして使用してもよい。
それらの標準モデルは、記憶部61に記憶される。そして、確率モデル構築部655は、各標準モデルについて、その標準モデルに含まれる各ノードのCPTを決定して仮の確率モデルを構築する。すなわち、仮の確率モデルでは、入力パラメータとして用いられる状態情報の値の区分に基づいて、その仮の確率モデルに関連付けられた設定操作を行う確率が決定される。
【0087】
以下、図を用いて詳細に説明する。
確率モデル構築部655は、記憶部61から読み出した学習データDkから、各ノードについて、各状態情報の値の区分ごとに該当する数nを数える。そして、その数nを全事象数Nで除した値を、事前確率及び条件付き確率の値とする。その際、クラスタリング部654によって入力パラメータとして用いられる状態情報の値の区分が求められている場合には、記憶部61からその区分、すなわち、各クラスタの重心及び半径を読み出し、その区分に従って状態情報の数を数える。一方、クラスタリングがなされていない入力パラメータについては、予め定められた区分に従ってその状態情報の数を数える。このように、確率モデル構築部655は、事前確率及び条件付き確率を求めることにより、各ノードに対応するCPTを決定する。
【0088】
なお、確率モデル構築部655は、学習に用いるデータ数が十分でないと考えられる場合には、ベータ分布を用いて確率分布を推定し、CPTとして用いてもよい。また、学習データDkの中に、一部の入力情報の値の組み合わせが存在しない、すなわち、未観測データがある場合、未観測データに対する確率分布を推定し、その分布に基づいて期待値を計算することで、対応する条件付き確率を計算する。このような条件付き確率の学習については、例えば、繁桝算男他著、「ベイジアンネットワーク概説」、初版、培風館、2006年7月、p.35-38、p.85-87に記載された方法を用いることができる。
同様に、確率モデル構築部655は、出力ノードに対して、入力ノードに与えられた情報に基づく条件付き確率の分布を示すCPTを設定する。なお、初期状態では、CPTは、全ての状態に対して等しい値となるように設定される。
【0089】
確率モデル評価部656は、確率モデル構築部655において構築された全ての仮の確率モデルに対して情報量基準を用いて、最も適切なグラフ構造を有する仮の確率モデルを選択する。
本実施形態では、情報量基準として、AIC(赤池情報量基準)を用いた。AICは、確率モデルの最大対数尤度と、パラメータ数に基づいて、以下の式に基づいて求めることができる。
【数1】

ここで、AICmは、確率モデルMに対するAICを表す。また、θmは、確率モデルMのパラメータ集合を、lmm|X)は、データXを所与としたときの確率モデルMにおけるそのデータの最大対数尤度の値を、kmは確率モデルMのパラメータ数をそれぞれ表す。
【0090】
確率モデル評価部656は、全ての確率モデルについてAICを求めると、AICの値が最も小さい仮の確率モデルを選択する。
なお、情報量基準を用いた確率モデルの選択(言い換えれば、グラフ構造の学習)については、ベイズ情報量基準(BIC)、竹内情報量基準(TIC)、最小記述長(MDL)基準など他の情報量基準を用いてもよい。
【0091】
以下、図12及び図13に示したフローチャートを参照しつつ、本発明の第2の実施形態に係る空調システム10の動作について説明する。なお、空調システム10は、制御部60により、制御部60に組み込まれたコンピュータプログラムにしたがって制御される。
【0092】
図12に示すように、まず、エンジンスイッチがONとなると、制御部60は、空調システム10を稼動させる。そして、通信部62を通じて、センサ部30、ナビゲーション装置40などから各状態情報を取得する(ステップS201)。
【0093】
次に、制御部60は、乗員が空調システム10の設定操作を行ったか否かを判定する(ステップS202)。なお、制御部60は、操作部50から操作信号を受信すると、設定操作が行われたと判断する。乗員が設定操作を行っていない場合、制御部60の制御情報修正部63は、何れかの操作グループ関連する設定パラメータ(例えば、設定温度Tset)の修正に関連付けられている確率モデルMqkのうち、現在の設定と異なる設定に変更するものを選択する(ステップS203)。なお、確率モデルMqkは、設定操作番号kの設定操作についてq番目に構築された確率モデルであることを表す。そして、選択された確率モデルに、観測された状態情報を入力する。そして、その確率モデルに関連付けられている設定操作を行う確率を算出する(ステップS204)。そして、その設定パラメータに関連する同一操作グループ内の設定操作について算出された確率のうち、最も高い確率Pを求める。
【0094】
次に、その確率Pを、閾値Th1と比較する(ステップS205)。確率Pが閾値Th1(例えば、0.9)以上の場合、制御情報修正部63は、確率Pを出力した確率モデル(以下、選択確率モデルという)に関連付けられた修正情報に基づいて、対応する空調システム10の設定パラメータを修正する(ステップS206)。一方、ステップS205において、確率Pが閾値Th1未満の場合、その設定パラメータを修正しない。
【0095】
その後、制御情報修正部63は、全ての確率モデルに関して確率を算出したか否かを確認することにより、全ての設定パラメータの調節が終わったか否かを判定する(ステップS207)。まだ確率を算出していない確率モデルがある場合、すなわち、設定情報の修正の有無を調べていない操作グループがある場合には、制御をステップS203に戻す。一方、全ての確率モデルについて、確率算出を終了している場合には、空調制御部64は、必要に応じて修正された設定パラメータに基づいて空調制御を行う(ステップS208)。具体的には、空調制御部64は、所望の空調温度、風量などが得られるように、エアミックスドア、ブロアファンの回転数、各吹き出し口のドアの開度を調節する。
【0096】
図13に示すように、ステップS202において、乗員が空調システム10の設定操作を行った場合、設定信号を参照してどの設定操作が行われたかを特定する(ステップS209)。そして、行われた設定操作に対応する設定操作番号kと、その設定操作が行われた操作回数ikと関連付けて、各状態情報のうち、その設定操作時に取得された状態情報を学習データDkの要素として記憶部61に記憶する(ステップS210)。さらに、学習部65の距離算出部652は、状態情報に含まれる操作点に関して、既に学習データとして保存されている他の操作点との最短経路長を、車両が既に通ったことのある経路に沿って算出し、距離参照テーブルを更新する(ステップS211)。なお、距離算出部652は、上記の図3とともに説明したように、共に一定の長さを持った現経路と過去経路の一部でも一致したときに、現経路上の操作点と過去経路上の操作点間の最短経路長を、現経路または過去経路に沿って算出する。あるいは、図4または図5とともに説明したように、過去経路または現経路を操作点のみ、あるいは操作点と過去経路の始点及び終点のみに限定して、現経路と過去経路の一致を調べるようにしてもよい。
【0097】
その後、制御部60の学習部65は、操作回数ikが所定回数n1*j(j=1,2,3)と等しいか否か判定する(ステップS212)。なお、所定回数n1は、例えば10回である。そして、学習部65は、ik=n1*jと判定した場合、学習部65のクラスタリング部654は、設定操作番号kに関連付けられて記憶部61に記憶されている学習データDkのうち、連続的な値を取る状態情報、例えば、位置情報について、クラスタリングを行い、その値の区分を決定する(ステップS213)。
【0098】
その後、学習部65は、クラスタリングされた学習データDkを用いて、その設定操作に関する確率モデルMqkを構築する(ステップS214)。具体的には、上述したように、学習部65の確率モデル構築部655が、各標準モデルに対して、CPTを作成して仮の確率モデルを構築し、学習部65の確率モデル評価部656が、それぞれの仮の確率モデルについて情報量基準を算出し、情報量基準の値が最も小さい仮の確率モデルを、使用する確率モデルMqkとして選択する。そして、その確率モデルMqkを設定操作番号kなどと関連付けて記憶部61に記憶する。一方、ステップS212において、ikがn1*jと等しくない場合、制御をステップS215に移行する。
【0099】
次に、学習部65は、操作回数ikが所定回数n2(例えば、n2=30)と等しいか否か判定する(ステップS215)。ikがn2と等しくなければ、ikを1だけインクリメントし(ステップS216)、制御をステップS208へ移行する。一方、ステップS215において、ik=n2であれば、学習部65は、記憶部61に記憶されている、その乗員及び設定操作番号kに関連付けられて記憶部61に記憶されている学習データDkを消去する(ステップS217)。
【0100】
さらに、その時点で記憶部61に記憶されている確率モデルMqkを確立されたものとし、以後その確率モデルMqkの更新は行わない。学習部65は、確立された確率モデルMqkに対して、更新されないことを示すフラグ情報を付す。例えば、更新フラグfを確率モデルに関連付けて記憶部61に記憶し、その更新フラグfが'1'の場合は、更新(すなわち、書き換え)禁止、更新フラグfが'0'の場合は更新可能として、更新可否を判別可能とすることができる。また、ikを初期化し、ik=0とする。その後、制御をステップS208へ移行する。
【0101】
なお、所定回数n2は、n1よりも大きな数で、統計的に十分正確な確率モデルを構築可能と考えられるデータ数に対応する。所定回数n1及びn2は、経験的、実験的に最適化することができる。
以後、空調システム10は、稼動停止となるまで、一定の時間間隔または距離間隔で、上記のステップS201〜S217の制御を繰り返す。
【0102】
以上説明してきたように、本発明の第2の実施形態に係る空調システム10は、確率モデルの生成に際して、特定状況に該当する車両の状態、空調状態などの状態情報の値の範囲を最適に画定し、その結果に基づいて確率を計算する確率モデルを構築するので、その特定状況に正確に対応して、空調設定を自動的に最適化することができる。特に、操作点間の距離を、車両が実際に通った経路に沿って算出し、その距離を用いて車両の位置の区分を決定するので、ある特定状況に対応する地点の範囲を正確に決定することができる。
【0103】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、空調システム10は、所定の設定操作を実行すべき確率を計算するための確率モデルを、事前に登録されたユーザ毎に別個に生成して使用するようにしてもよい。この場合、空調システム10は、確率モデルに、ユーザの識別番号を関連付けておく。また空調システム10は、乗員を識別するための機構を別途有し、その機構によって乗員と識別された登録済みユーザに関連付けられた確率モデルのみを使用する。なお、乗員を識別するための機構として、例えば、乗員の顔画像を取得するカメラと、乗員の顔画像と登録済みユーザの顔画像とを、パターンマッチングなどにより比較照合する、制御部上で動作するソフトウェアモジュールとを用いることができる。
【0104】
さらに、上記の実施形態では、制御情報修正部63は、確率モデルに基づいて修正するパラメータを、設定温度及び風量など、操作部50を通じて乗員が直接設定できる設定パラメータとした。しかし、制御情報修正部63は、温調制御式を用いて算出される空調温度Tao若しくは風量制御式を用いて算出されるブロアファンの回転数、エアミックスドアの開度など、空調部20の各部の動作に直接関連する制御パラメータを修正してもよい。
【0105】
また、確率モデルの構築において、上記の実施形態では、予めグラフ構造を規定した標準モデルを準備したが、そのような標準モデルを準備する代わりに、K2アルゴリズムや遺伝的アルゴリズムを用いてグラフ構造の探索を行うようにしてもよい。例えば遺伝的アルゴリズムを用いる場合には、各ノード間の接続の有無を各要素とする遺伝子を複数準備する。そして、学習部65は、上記の情報量基準を用いて各遺伝子の適応度を計算する。その後、学習部65は、適応度が所定以上の遺伝子を選択し、交叉、突然変異などの操作を行って次の世代の遺伝子を作成する。学習部65は、このような操作を複数回繰り返して、最も適合度の高い遺伝子を選択する。そして学習部65は、選択された遺伝子で記述されるグラフ構造を確率モデルの構築に使用する。さらに、これらのアルゴリズムと、標準モデルからの確率モデルの構築とを組み合わせて用いてもよい。
【0106】
また本発明は、空調システムに限らず、特定の地点に近づいた時に、何等かの処理を自動的に実行する装置に適用できる。例えば、本発明を、カーオーディオに適用することができる。この場合において、乗員が、渋滞情報を知らせるAM放送が受信できる地点に近づく度に、そのAM放送を選局する操作を行うとする。このとき、カーオーディオは、本発明に従って、選局操作が行われた各操作点間の距離を車両の移動経路に沿って算出する。そして、その操作点間の距離に基づいて、操作点をクラスタリングすることにより、選局操作を行うべき地点の範囲を正確に画定することができる。そして、車両の位置情報に基づいて、AM放送を選局する確率を算出する確率モデルが生成され、カーオーディオは、AM放送が受信できる地点に近づくと自動的にそのAM放送を選局するようになる。
さらに本発明は、車両におけるボディー制御、例えば、パワーウィンドウ、キーロック、ヘッドライト、ハザードランプ、ミラー、給油口、サンルーフ、ワイパー、車間自動制御システム(ACC)、電子制御サスペンション(AVS)、シフトなどの制御に使用することができる。例えば、乗員が、トンネルに近づく度に、パワーウィンドウを閉める操作を行ったとする。このとき、パワーウィンドウを制御する車載制御装置は、本発明に従って、パワーウィンドウの閉操作が行われた各操作点間の距離を車両の移動経路に沿って算出する。そして、その操作点間の距離に基づいて、操作点をクラスタリングすることにより、閉操作を行うべき地点の範囲を正確に画定することができる。そして、車両の位置情報に基づいて、パワーウィンドウを閉じる確率を算出する確率モデルが生成される。そのため、車載制御装置は、トンネルに近づくと自動的にパワーウィンドウを閉じるようになる。
【0107】
さらに、本発明は、所定の地点に近づくといつも所定の操作を行うユーザに対して、その地点に到達すると自動的にその所定の操作を行う携帯電話機にも適用できる。
上記のように、本発明の範囲内で様々な修正を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る経路長算出装置の機能ブロック図である。
【図2】バッファに記憶される情報の概略模式図である。
【図3】(a)は、過去経路と現経路が重ならない場合の過去経路及び現経路の模式図であり、(b)は、過去経路と現経路の一部が重なる場合の過去経路及び現経路の模式図である。
【図4】(a)は、過去経路の終点が現経路の操作点と終点の間に存在する場合の現経路と過去経路の関係を示す模式図であり、(b)は、過去経路の終点が現経路の始点と操作点の間に存在する場合の現経路と過去経路の関係を示す模式図である。
【図5】(a)は、過去経路情報として、履歴操作点のみの情報を記憶して用いる場合の過去経路と現経路の関係を表す模式図であり、(b)は、現経路として現操作点のみを用いる場合の過去経路と現経路の関係を表す模式図である。
【図6】距離参照テーブルの一例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る経路長算出装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る空調システムの概略構成図である。
【図9】空調システムの制御部の機能ブロック図である。
【図10】空調システムの設定パラメータを自動調節するために使用される確率モデルの一例のグラフ構造を示す図である。
【図11】(a)〜(d)は、それぞれ図10に示した確率モデルの各ノードについての条件付き確率表を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る空調システムの動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る空調システムの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0109】
1 経路長算出装置
2 位置検出部
3 道路情報取得部
4 操作部
5 記憶部
6 制御部
7 経路決定部
8 距離算出部
9 バッファ
10 空調システム
20 空調部
30 センサ部
40 ナビゲーション装置
41 位置検出部
42 道路情報取得部
50 操作パネル
60 制御部
61 記憶部
62 通信部
63 制御情報修正部
64 空調制御部
65 学習部
651 経路決定部
652 距離算出部
653 学習情報蓄積部
654 クラスタリング部
655 確率モデル構築部
656 確率モデル評価部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動物体に関するイベントの複数の発生地点間の最短経路長を算出する経路長算出装置であって、
移動物体の現在位置を取得する位置検出部(2)と、
検出対象となるイベントの発生を検知するイベント検知部(4)と、
第1のイベントが発生したときに、該第1のイベント発生地点を移動物体が通った経路である過去経路を表す過去経路情報を記憶する経路履歴情報記憶部(5)と、
前記イベント検知部(4)により第2のイベントの発生が検知されたときに、前記位置検出部(2)により取得された第2のイベント発生地点と、前記経路履歴情報記憶部(5)に記憶された前記過去経路情報から、該第2のイベント発生地点が前記過去経路上に存在すると判定した場合、当該過去経路に沿って前記第1のイベント発生地点と前記第2のイベント発生地点間の最短経路長を算出する距離算出部(8)と、
を有することを特徴とする経路長算出装置。
【請求項2】
道路情報を取得する道路情報取得部(3)と、
前記第1のイベント発生地点を含む所定の範囲について、前記過去経路上の複数の地点の位置を前記位置検出部(2)により取得し、前記道路情報取得部(3)により取得された道路情報と関連付けることにより、前記過去経路情報を求める経路決定部(7)と、
をさらに有する請求項1に記載の経路長算出装置。
【請求項3】
前記過去経路情報は、移動物体が前記過去経路を通過したときの移動方向を表す第1の移動方向を含み、前記位置検出部(2)は、前記第2のイベント発生地点における移動物体の移動方向を表す第2の移動方向を取得し、前記距離算出部(8)は、前記第2の移動方向が、前記第1の移動方向と一致する場合に限り、前記第2のイベント発生地点が前記過去経路上に存在すると判定する、請求項1または2に記載の経路長算出装置。
【請求項4】
前記過去経路情報は、前記過去経路上の複数の地点に対応する出発点からの走行距離または前記第1のイベント発生地点からの相対距離を含み、
前記距離算出部(8)は、前記走行距離または前記相対距離を参照して、前記最短経路長を算出する、請求項1〜3の何れか一項に記載の経路長算出装置。
【請求項5】
移動物体に関するイベントの複数の発生地点間の最短経路長を算出する経路長算出装置であって、
移動物体の現在位置を取得する位置検出部(2)と、
検出対象となるイベントの発生を検知するイベント検知部(4)と、
第1のイベントが発生したときの該第1のイベント発生地点を表す過去経路情報を記憶した経路履歴情報記憶部(5)と、
道路情報を取得する道路情報取得部(3)と、
前記イベント検知部(4)により第2のイベントの発生が検知されたときに、移動物体が該第2のイベント発生地点を通った経路である現経路上の複数の地点の位置を前記位置検出部(2)により取得し、前記道路情報取得部(3)により取得された道路情報と関連付けることにより、当該現経路を表す現経路情報を求める経路決定部(7)と、
前記経路履歴情報記憶部(5)に記憶された第1のイベント発生地点と、前記現経路情報から、該第1のイベント発生地点が前記現経路上に存在すると判定した場合、前記現経路に沿って前記第1のイベント発生地点と前記第2のイベント発生地点間の最短経路長を算出する距離算出部(8)と、
を有することを特徴とする経路長算出装置。
【請求項6】
前記位置検出部(2)が移動物体の位置検出時の移動方向を取得することにより、前記現経路情報は、前記現経路における移動物体の移動方向を表す第2の移動方向を含み、前記過去経路情報は、前記第1のイベント発生地点における移動物体の移動方向を表す第1の移動方向を含み、前記距離算出部(8)は、前記第1の移動方向が、前記第2の移動方向と一致する場合に限り、前記第1のイベント発生地点が前記現経路上に存在すると判定する、請求項5に記載の経路長算出装置。
【請求項7】
前記現経路情報は、前記現経路上の複数の地点に対応する出発点からの走行距離または前記第2のイベント発生地点からの相対距離を含み、
前記距離算出部(8)は、前記走行距離または前記相対距離を参照して、前記最短経路長を算出する、請求項5または6に記載の経路長算出装置。
【請求項8】
移動物体に関するイベントの複数の発生地点間の最短経路長を算出する経路長算出装置であって、
移動物体の現在位置を取得する位置検出部(2)と、
検出対象となるイベントの発生を検知するイベント検知部(4)と、
第1のイベントが発生したときの該第1のイベント発生地点と、該第1のイベント発生地点通過前または通過後に移動物体が通過した所定地点とを表す過去経路情報を記憶した経路履歴情報記憶部(5)と、
道路情報を取得する道路情報取得部(3)と、
前記イベント検知部(4)により第2のイベントの発生が検知されたときに、移動物体が該第2のイベント発生地点を通った経路である現経路上の複数の地点の位置を前記位置検出部(2)により取得し、前記道路情報取得部(3)により取得された道路情報と関連付けることにより、当該現経路を表す現経路情報を求める経路決定部(7)と、
前記経路履歴情報記憶部(5)に記憶された前記過去経路情報と前記現経路情報から、前記所定地点が前記現経路上に存在すると判定した場合、前記現在経路または前記過去経路に沿って前記第1のイベント発生地点と前記第2のイベント発生地点間の最短経路長を算出する距離算出部(8)と、
を有することを特徴とする経路長算出装置。
【請求項9】
前記位置検出部(2)が移動物体の位置検出時の移動方向を取得することにより、前記現経路情報は、前記現経路における移動物体の移動方向を表す第2の移動方向を含み、前記過去経路情報は、前記所定地点における移動物体の移動方向を表す第1の移動方向を含み、前記距離算出部(8)は、前記第1の移動方向が、前記第2の移動方向と一致する場合に限り、前記所定地点が前記現経路上に存在すると判定する、請求項8に記載の経路長算出装置。
【請求項10】
前記過去経路情報は、前記過去経路上の所定地点に対応する出発点からの第1の走行距離または前記第1のイベント発生地点からの第1の相対距離を含み、かつ、前記現経路情報は、前記現経路上の複数の地点に対応する出発点からの第2の走行距離または前記第2のイベント発生地点からの第2の相対距離を含み、
前記距離算出部(8)は、前記第1及び第2の走行距離または前記第1及び第2の相対距離を参照して、前記最短経路長を算出する、請求項8または9に記載の経路長算出装置。
【請求項11】
移動物体に関するイベントの複数の発生地点間の最短経路長を算出する経路長算出方法であって、
第1のイベントの発生を検知するステップと、
第1のイベントが発生したときに、該第1のイベント発生地点を移動物体が通った経路である過去経路を表す過去経路情報を記憶するステップと、
第2のイベント発生を検知するステップと、
第2のイベント発生を検知したときに、該第2のイベント発生地点の現在位置を取得するステップと、
第2のイベントの発生が検知されたときに、第2のイベント発生地点と、前記過去経路情報から、該第2のイベント発生地点が前記過去経路上に存在すると判定した場合、当該過去経路に沿って前記第1のイベント発生地点と前記第2のイベント発生地点間の最短経路長を算出するステップと、
を含むことを特徴とする経路長算出方法。
【請求項12】
コンピュータに移動物体に関するイベントの複数の発生地点間の最短経路長を算出させるプログラムであって、
第1のイベントの発生を検知するステップと、
第1のイベントが発生したときに、該第1のイベント発生地点を移動物体が通った経路である過去経路を表す過去経路情報を記憶するステップと、
第2のイベント発生を検知するステップと、
第2のイベント発生を検知したときに、該第2のイベント発生地点の現在位置を取得するステップと、
第2のイベントの発生が検知されたときに、第2のイベント発生地点と、前記過去経路情報から、該第2のイベント発生地点が前記過去経路上に存在すると判定した場合、当該過去経路に沿って前記第1のイベント発生地点と前記第2のイベント発生地点間の最短経路長を算出するステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項13】
空調空気を車両内に供給する空調部(20)と、
前記車両の位置を表す位置情報を取得する位置情報取得部(40)と、
前記車両が乗員により所定の設定操作が行われた操作点を通ったときの経路である過去経路を表す過去経路情報と、該操作点の位置情報を記憶する記憶部(61)と、
前記位置情報を入力することにより乗員が所定の設定操作を行う確率を算出するための確率モデルを構築する学習部(65)と、
前記学習部(65)で構築された確率モデルに、前記位置情報取得部(40)で取得された車両の現在位置情報を入力して前記確率を算出し、該確率に応じて、乗員の設定操作に関連する設定情報又は制御情報を、前記所定の設定操作となるように修正する制御情報修正部(63)と、
前記修正された設定情報又は制御情報にしたがって、前記空調部(20)を制御する空調制御部(64)とを有し、
前記学習部(65)は、
乗員が所定の設定操作を行う度に、前記位置検出部(40)により取得された、該所定の設定操作が行われた現操作点と、前記記憶部(61)に記憶された各過去経路情報から、該現操作点が前記過去経路上に存在すると判定した場合、当該過去経路に沿って、当該過去経路において所定の設定操作が行われた過去操作点と該現操作点間の最短経路長を算出することにより、各操作点間の最短経路長を記録した距離参照テーブルを作成する距離算出部(652)と、
前記各操作点を、前記距離参照テーブルを参照して、少なくとも第1のクラスタと第2のクラスタに区分し、かつ該第1のクラスタに含まれる操作点から車両の位置に関する第1の範囲を決定し、該第2のクラスタに含まれる操作点から車両の位置に関する第2の範囲を決定するクラスタリング部(654)と、
前記第1の範囲に含まれる車両の位置に対する前記確率及び前記第2の範囲に含まれる車両の位置に対する前記確率を決定することにより、前記所定の設定操作に関連する確率モデルを構築する確率モデル構築部(655)と、
を有することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項14】
移動物体に搭載された機器の制御装置であって、
移動物体の位置を表す位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記移動物体が前記機器に関する所定の設定操作が行われた操作点を通ったときの経路である過去経路を表す過去経路情報と、該操作点の位置情報を記憶する記憶部と、
前記位置情報を入力することにより前記機器について所定の設定操作が行われる確率を算出するための確率モデルを構築する学習部と、
前記学習部で構築された確率モデルに、前記位置情報取得部で取得された移動物体の現在位置情報を入力して前記確率を算出し、該確率に応じて、前記機器に対する設定操作に関連する設定情報又は制御情報を、前記所定の設定操作となるように修正する制御情報修正部と、
前記修正された設定情報又は制御情報にしたがって、前記機器を制御する制御部とを有し、
前記学習部は、
前記所定の設定操作が行われる度に、前記位置検出部により取得された、該所定の設定操作が行われた現操作点と、前記記憶部に記憶された各過去経路情報から、該現操作点が前記過去経路上に存在すると判定した場合、当該過去経路に沿って、当該過去経路において所定の設定操作が行われた過去操作点と該現操作点間の最短経路長を算出することにより、各操作点間の最短経路長を記録した距離参照テーブルを作成する距離算出部と、
前記各操作点を、前記距離参照テーブルを参照して、少なくとも第1のクラスタと第2のクラスタに区分し、かつ該第1のクラスタに含まれる操作点から移動物体の位置に関する第1の範囲を決定し、該第2のクラスタに含まれる操作点から移動物体の位置に関する第2の範囲を決定するクラスタリング部と、
前記第1の範囲に含まれる移動物体の位置に対する前記確率及び前記第2の範囲に含まれる移動物体の位置に対する前記確率を決定することにより、前記所定の設定操作に関連する確率モデルを構築する確率モデル構築部と、
を有することを特徴とする制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−75010(P2009−75010A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245953(P2007−245953)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(502324066)株式会社デンソーアイティーラボラトリ (332)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】