説明

絶縁シートおよび金属層/絶縁シート積層体とそれを用いたプリント配線板

【課題】プリント配線板の製造等に好適に用いることができる絶縁シートであり、該シートの表面粗度が小さい場合にも、該表面に形成した金属層との接着性に優れ、線膨張係数が小さく、多層プリント配線板に加工した際の層間絶縁厚みの均一性や、層間絶縁性の信頼性に優れた絶縁シートとその代表的な利用技術を提供する。
【解決手段】非熱可塑性ポリイミドフィルム層Aの片方の面に特定の構造の熱可塑性ポリイミド樹脂を含有することを特徴とする層Bを形成し、他方の面に、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱硬化性成分を含む層Cを形成することを特徴とする絶縁シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子機器等に広く使用される、プリント配線板に用いられる絶縁シートに関する。さらに詳しくは絶縁シートの表面が平滑であり、この上に金属層を形成した場合における金属層との密着性が高く、さらに回路面と積層する際の溶融粘度が低く、積層硬化後の線膨張係数が小さい絶縁シートに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は電子部品や半導体素子等を実装するために広く用いられている。近年の電子機器の小型化、高機能化の要求に伴い、配線の高密度化や薄型化が強く望まれている。特にライン/スペースの間隔が25μm/25μm以下であるような微細配線形成方法の確立はプリント配線板分野の重要な課題である。
プリント配線板に用いられる絶縁層としては、その上に配線を形成するための役割と、基板上などに形成された回路に積層するための役割を併せ持つ絶縁接着シートであることが好ましい。
このような絶縁接着シートとしては、微細配線形成のために、微細配線との接着性が高いこと、表面粗度が微細配線形成に悪影響を与えない程充分に平滑であることが求められる。また、微細配線形成の場合、絶縁接着シート表面の凹凸を極力小さくしないと、配線形状や配線幅、配線厚みなどを設計通りに良好に形成することができない。よって、微細配線形成のために最も好ましい絶縁接着シートは、表面の凹凸が極めて小さく、且つ微細配線との接着性が十分高い絶縁層である。
一方、多層フレキシブルプリント配線板やビルドアップ配線板等を製造する際は、既に基板上に形成された導体回路に対して絶縁性接着シートを積層するが、積層の際に絶縁性接着シートが流動し、回路配線の線間を埋め込むとともに、絶縁接着シートと導体回路、および絶縁接着シートと該回路が形成されている絶縁膜が強固に接着されていることが必要である。つまり、絶縁性接着シートには、内層回路、基板等に対する優れた接着力とともに回路配線の線間を埋められる程度の流動性が求められることになる。
【0003】
さらには、プリント配線板を製造する場合には、配線板の両面を導通させるビアホールの形成が不可欠である。そのため、その様なプリント配線板は通常、レーザーによるビアホール形成工程、デスミア工程、触媒付与工程、無電解めっき銅を施す工程、等を経て配線形成がおこなわれる。さらに、通常、微細配線形成はレジスト膜を形成する工程、無電解めっき膜が露出している部分への電解銅めっき工程、レジスト被膜の除去工程、余分な無電解銅めっき皮膜のエッチング工程から成る、いわゆるセミアディティブ法により製造されることが多い。したがって、微細配線と絶縁層間の接着性はこれらのプロセスに耐えるものであることがより好ましい。
上記要求を満たす絶縁性接着シートを用いることにより、高速・高周波電気信号を必要とする電子機器用の高密度プリント配線板を提供できると考えられており、強くその出現が望まれている。
ここで、従来、配線基板に用いられる上記接着材料としては、一般的には、エポキシ系接着材料が用いられている。上記エポキシ系接着材料は、被着体同士の低温・低圧条件下での貼り合わせや回路配線の線間埋め込みが可能である等の加工性に優れ、被着体との接着性にも優れている。ただし、金属層との接着性、すなわちエポキシ系接着材料とこの上に形成される回路配線間との接着は不充分であった。この問題を改善するために、アンカー効果と呼ばれる表面の凹凸によって、接着性を向上させていた(例えば特許文献1参照)。しかし、形成する表面凹凸を小さくし、若しくは特に凹凸を形成せずに配線との充分な接着力を得ることは困難であった。
一方、ポリイミドシロキサンを含有する接着剤を用いた層間絶縁接着技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。しかし、特許文献2には、少なくとも金属層を形成するための最外層と形成された回路と対向させるための最外層を有する本発明の構成は開示されていない。
【0004】
また、半導体素子の高性能化、高速化にに際しては、半導体素子の強度が低下する(割れやすくなる)場合がある。さらに、プリント配線板の高密度化に際しては、素子と基板の実装の高精度化が要求され、位置のズレの許容範囲も小さくなってきている。
【0005】
この際、基板と素子の線膨張係数が大きく異なる場合、素子を実装した基板の温度変化によって基板と素子の間に寸法のズレが生じ、応力が発生するため、基板と素子の接続が断線したり、素子が割れたりする。このようなトラブルを避けるために、プリント配線板材料に線膨張係数が半導体素子と近い材料、言い換えれば線膨張係数の小さい材料が求められている。
材料の線膨張係数を小さくするという観点では、半導体装置の封止樹脂にフィラーを含有して線膨張係数と粘度を制御する技術が開示されている。(特許文献3参照)しかし、プリント配線板の層間絶縁材料に関するものではなく、耐熱性や加工性を兼ね備えたプリント配線板に適した材料を提供するには至っていない。
【特許文献1】特開2000−198907
【特許文献2】特開2000−290606
【特許文献3】特開平07−66329
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためのものであって、その目的は、フレキシブルプリント配線板、リジッドプリント配線板、多層フレキシブルプリント配線板、多層リジッド配線板やビルドアップ配線板等のプリント配線板用の製造等に好適に用いることができ、表面粗度が小さく、微細配線形成が可能であり、且つ該表面に強固に無電解めっき銅を形成することが可能であり、回路との積層性に優れ、線膨張係数が小さい絶縁シートとその代表的な利用技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、下記の新規な絶縁シートにより、上記課題が解決しうることを見出した。すなわち、
1) 高分子フィルム層Aの片面に、シロキサン構造を有する熱可塑性ポリイミド樹脂を含有する層Bが形成され、他方の面に、熱可塑性ポリイミド樹脂および熱硬化性成分を含有する層Cが形成されたことを特徴とする絶縁シート。
2)前記シロキサン構造を有する熱可塑性ポリイミド樹脂が、酸二無水物成分と、下記一般式(1)で表されるジアミンを含むジアミン成分を原料とする熱可塑性ポリイミド樹脂であることを特徴とする1)記載の絶縁シート。
【0008】
【化3】

(式中、gは1以上の整数を表す。また、R11及びR22は、それぞれ同一、または異なっていてよく、炭素数1〜6のアルキレン基またはフェニレン基を表す。R33〜R66は、それぞれ同一、または異なっていてよく、炭素数1〜6のアルキル基、またはアルコキシ基、またはフェニル基、またはフェノキシ基を表す。)
3) 前記層Bは、該層上に金属層を形成するための層であるとともに、前記層Cは、別途形成された回路と対向し積層させるための層であることを特徴とする1)または2)記載の絶縁シート。
4) 前記層Bの厚みが、前記層Aの厚みの1倍以下であることを特徴とする1)〜3)のいずれか一項に記載の絶縁シート。
5) 前記層Bの引張弾性率が、前記層Aの引張弾性率の1倍以下であることを特徴とする1)〜4)のいずれか一項に記載の絶縁シート。
6) 前記層Cがフィラーを5体積%以上含むことを特徴とする1)〜5)のいずれか一項に記載の絶縁シート
7) 前記フィラーが球状溶融シリカであることを特徴とする6)記載の絶縁シート。
8) 前記フィラーがシラン系またはチタン系のカップリング剤または表面処理剤で表面処理したフィラーであることを特徴とする6)または7)に記載の絶縁シート。
9)前記C層に含まれる熱硬化性成分がエポキシ樹脂成分を含むことを特徴とする1)〜8)のいずれか1項に記載の絶縁シート。
10) 前記C層のB−ステージ状態での溶融粘度が20,000Pa・s以下であることを特徴とする1)〜9)のいずれか1項に記載の絶縁シート。
11) 前記層Bのカットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さ(Ra)が0.5μm未満であることを特徴とする1)〜10)のいずれか1項に記載の絶縁シート。
12) 前記金属層が、無電解銅メッキにより形成されることを特徴とする1)〜11)のいずれか一項に記載の絶縁シート。
13) 前記1)〜11)のいずれか一項に記載の絶縁シートの層B上に金属層が形成された金属層/絶縁シート積層体であって、金属層の密着強度が5N/cm以上であることを特徴とする金属層/絶縁シート積層体。
14) 前記金属層が、無電解銅メッキにより形成したものであることを特徴とする13)記載の金属層/絶縁シート積層体。
15) 前記金属層が、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法または化学蒸着法のいずれかで形成されたものであることを特徴とする13)記載の金属層/絶縁シート積層体。
16) 1)〜15)のいずれか1項に記載の絶縁シートまたは金属層/絶縁シート積層体を用いることを特徴とするプリント配線板。
17) 高分子フィルム層Aの片面に、酸二無水物成分と、下記一般式(1)で表されるジアミンを含むジアミン成分を原料とする熱可塑性ポリイミド樹脂を含有する層Bが形成され、他方の面に、別途形成された回路と対向し積層させるための層が形成されたことを特徴とする絶縁シート。
【0009】
【化4】

(式中、gは1以上の整数を表す。また、R11及びR22は、それぞれ同一、または異なっていてよく、炭素数1〜6のアルキレン基またはフェニレン基を表す。R33〜R66は、それぞれ同一、または異なっていてよく、炭素数1〜6のアルキル基、またはアルコキシ基、またはフェニル基、またはフェノキシ基を表す。)
18) 高分子フィルムが非熱可塑性ポリイミドであることを特徴とする1)〜17)に記載の絶縁シートならびに金属層/絶縁シート積層体またはプリント配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、層B、に特定の構造を有する熱可塑性ポリイミド樹脂を用いることにより、該層の表面粗度が小さい場合でも、層B上に金属層を形成した場合における金属層との接着強度が高いという効果を発現する。
【0011】
さらに、層Cを設けることにより、本発明にかかる絶縁シートと内層回路基板(形成された回路)との低温・低圧条件下での貼り合わせや回路配線の線間埋め込みが可能である等の加工性に優れる。
【0012】
さらに高分子フィルム層Aの片方の面に層B、他方の面に層Cを形成した構成とすることにより全体の線膨張係数を小さく抑えることができる。
【0013】
上記の如く、本発明の絶縁シートは、優れた加工性、及び微細回路形成性、半導体素子を実装した際の素子の破壊などを防ぐなどの特徴を併せ持つことから微細回路を必要とする電子機器用の高密度プリント配線板に適切に用いる事が可能である。また、プリント配線板用材料として必要な、樹脂材料、導体材料への接着性、加工性、耐熱性に優れたものとなり、フレキシブルプリント配線板やビルドアップ配線板、多層フレキシブルプリント配線板、コアレスパッケージ基板、の製造に好適に用いることができるという効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の一形態について以下に詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
(本発明の絶縁シートの特徴と材料構成)
本発明の絶縁シートは、少なくとも1層の高分子フィルム層Aとその片方の面に形成された層Bが酸二無水物成分と、下記一般式(1)で表されるジアミンを含むジアミン成分とからなる熱可塑性ポリイミド樹脂を含有し、他方の面に、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱硬化性成分を含む層Cを形成することを特徴とする絶縁シートである。
【0015】
【化5】

(式中、gは1以上の整数を表す。また、R11及びR22は、それぞれ同一、または異なっていてよく、炭素数1〜6のアルキレン基またはフェニレン基を表す。R33〜R66は、それぞれ同一、または異なっていてよく、炭素数1〜6のアルキル基、またはアルコキシ基、またはフェニル基、またはフェノキシ基を表す。)
上記式中、gは、1以上20以下であることが好ましい。
さらに前記の層Bは該層上に金属層を形成するための層であるとともに、層Cが別途形成された回路と対向し積層させるための層であることを特徴とする。すなわち金属層を形成するための層に特定の構造を有する熱可塑性ポリイミド樹脂を用いることにより、表面粗度が小さい場合でも金属層との接着強度が高く、層Cすなわち形成された回路と対向させるための層を設けることにより、本発明にかかる絶縁シートと内層回路基板との低温・低圧条件下での貼り合わせや回路配線の線間埋め込みが可能である等の加工性に優れた絶縁シートを得ることが可能である。
また、層Bの厚みが層Aの厚みの1倍以下であることを特徴とし、また、層Bの引張弾性率が層Aの引張弾性率の1倍以下であることを特徴とする。これらにより、層Aの低線膨張係数の特徴を発現することが可能となる。
また、層Cが低線膨張係数の溶融シリカのフィラーを5体積%以上含むことにより層Cの線膨張係数を小さくすることができるため系全体の線膨張係数を小さくすることができる。
さらに、フィラーに球状のものを用い、シラン系またはチタン系のカップリング剤または表面処理剤で表面処理すること、また、熱硬化性成分がエポキシ樹脂成分を含むことにより層CのB−ステージ状態での溶融粘度を2000Pa・s以下とし、別途形成された回路と対向し積層させるために十分な樹脂流れ性を発現することができる。
また、層Bのカットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さ(Ra)が0.5μm未満であることを特徴とする。このことにより、微細回路形成に際してエッチング残りが発生するなどの問題を解決できる。この表面平滑な層Bとその上に金属層を形成した場合の積層体における金属層との密着強度が5N/cm以上とすることが可能である。金属層としては、無電解銅めっき、あるいは、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法または化学蒸着法で形成されたものであることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、高分子フィルム層Aの片面に、酸二無水物成分と、下記一般式(1)で表されるジアミンを含むジアミン成分を原料とする熱可塑性ポリイミド樹脂を含有する層Bが形成され、他方の面に、別途形成された回路と対向し積層させるための層が形成されたことを特徴とする絶縁シートである。
また、本発明は、上記絶縁シートあるいは積層体を用いてプリント配線板を作製することにより高密度実装に適したプリント配線板を得られる。
【0017】
さらには、常態のみならず、プレッシャークッカ−試験(PCT)などの環境試験後の接着強度も高いため、信頼性に優れたものとなる。
ここで、算術平均粗さRaとは、JIS B 0601(平成6年2月1日改正版)に定義されている。特に本発明の算術平均粗さRaの数値は、光干渉式の表面構造解析装置で表面を観察により求められた数値を示す。本発明のカットオフ値とは、上記JIS B 0601に記載されているが、断面曲線(実測データ)から粗さ曲線を得る際に設定する波長を示す。即ち、カットオフ値が0.002mmで測定した値Raとは、実測データから0.002mmよりも長い波長を有する凹凸を除去した粗さ曲線から算出された算術平均粗さである。
【0018】
本発明の絶縁シートは、層B/層A/層Cなる構成が最も単純であるので好ましいが、それぞれの層をさらに多層化してもかまわない。
このような絶縁シートを得るための一例について説明する。
(高分子フィルム層A)
本発明の積層体に用いられる高分子フィルムは絶縁シートの低熱膨張係数を実現するために用いられる。本発明の絶縁シートの熱膨張係数は、高分子フィルムの熱膨張係数と厚み、層B及び層Cの熱膨張係数と厚みのバランスをコントロールすることによって制御でき、高分子フィルムの熱膨張係数を小さくすることが容易であり好ましい。
【0019】
また、本発明の積層体をフレキシブルプリント配線板として用いる場合は、寸法安定性が望まれる。
したがって、20ppm以下の熱膨張係数を有する高分子フィルムが望ましい。さらに、加工時の熱によって塑性変形しない、揮発成分による膨れ等の欠陥が発生しないように、高耐熱性、低吸水性の高分子フィルムが望ましい。また、小径ヴィアホールの形成のために高分子フィルムの厚みは50μm以下が好ましく、35μm以下がより好ましく、25μm以下がさらに好ましい。好ましくは1μm以上、より好ましくは、2μm以上である。厚みがあまりなく、かつ充分な電気絶縁性が確保される高分子フィルムが望ましい。このような高分子フィルムは、単層で構成されていてもよく、2層以上から構成されていてもよい。例えば、単層の場合は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン;エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル;さらに、ナイロン−6、ナイロン−11、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリケトン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、非熱可塑ポリイミド樹脂などのフィルムがあげられる。
また、層Aとの密着性を良好なものとするために、上記単層フィルムの片面あるいは両面に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を設けたり、有機モノマー、カップリング剤等の各種有機物で処理することが可能である。ここで、熱可塑ポリイミド樹脂を用いると、層Aとの密着性がさらに良好となるため好ましく用いられる。さらに、上記単層フィルムで例示したフィルムを接着剤を介して複数層を積層してもよい。
上記の諸特性を満足する高分子フィルムとして、非熱可塑ポリイミドフィルムが好適である。以下、非熱可塑性ポリイミドフィルムについて説明する。
【0020】
本発明の層Aに用いられる非熱可塑性ポリイミドフィルムは公知の方法で製造することができる。即ちポリアミド酸を支持体に流延、塗布し、化学的にあるいは熱的にイミド化することで得られる。この中で、ポリアミド酸有機溶媒溶液に、無水酢酸等の酸無水物に代表される化学的転化剤(脱水剤)と、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジン等の第三級アミン類等に代表される触媒とを作用させる方法すなわち化学的イミド化法がフィルムの靭性、破断強度、及び生産性の観点から好ましい。また、化学的イミド化法に熱キュア法を併用する方法がより好ましい。
【0021】
ポリアミド酸は基本的には、公知のあらゆるポリアミド酸を適用することができ、通常、芳香族酸二無水物の少なくとも1種とジアミンの少なくとも1種を、実質的等モル量を有機溶媒中に溶解させて、得られたポリアミド酸有機溶媒溶液を、制御された温度条件下で、上記酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで攪拌することによって製造される。
【0022】
本発明になる非熱可塑性ポリイミドに合成のための適当な酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)、p−フェニレンジフタル酸無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物及びそれらの類似物を含む。
【0023】
本発明に係る非熱可塑性ポリイミド合成に用いられる酸二無水物において、ピロメリット酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)が好ましく、これらを単独または、任意の割合の混合物が好ましく用いられる。
【0024】
本発明に係る非熱可塑性ポリイミド合成のために使用しうるジアミンとしては、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルN−フェニルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、等及びそれらの類似物を含む。
【0025】
本発明の非熱可塑性ポリイミドフィルムに用いられるこれらジアミンにおいて、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンズアニリド及びp−フェニレンジアミンが好ましく、これらを単独または、任意の割合の混合物が好ましく用いられる。
【0026】
本発明に好ましい酸二無水物とジアミン類の組み合わせは、ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの組み合わせ、ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びp−フェニレンジアミンの組み合わせ、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びp−フェニレンジアミンの組み合わせ、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びp−フェニレンジアミンの組合わせ、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物とオキシジアニリン、p−フェニレンジアミン及び2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンの組み合わせである。これらのモノマーを組み合わせて合成した非熱可塑性ポリイミドは適度な弾性率、寸法安定性、低吸水率等の優れた特性を発現し、本発明の各種積層体に用いるのに好適である。
【0027】
ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、アミド系溶媒すなわちN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルフォルムアミドが特に好ましく用いられる。
また、イミド化をケミカルキュア法により行なう場合、本発明に係るポリアミド酸組成物に添加する化学的転化剤は、例えば脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N,N’−ジアルキルカルボジイミド、低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物またはそれら2種以上の混合物が挙げられる。それらのうち、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ラク酸等の脂肪族無水物を単独またはそれらの2種以上の混合物が、好ましく用いられる。これらの化学的転化剤はポリアミド酸溶液中のポリアミド酸部位のモル数に対して1〜10倍量、好ましくは1〜7倍量、より好ましくは1〜5倍量を添加するのが好ましい。また、イミド化を効果的に行うためには、化学的転化剤に触媒を同時に用いることが好ましい。触媒としては脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン、複素環式第三級アミン等が用いられる。それらのうち複素環式第三級アミンから選択されるものが特に好ましく用い得る。具体的にはキノリン、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジン等が好ましく用いられる。これらの触媒は化学的転化剤のモル数に対して1/20〜10倍量、好ましくは1/15〜5倍量、より好ましくは1/10〜2倍量のモル数を添加する。これらの、化学的転化剤及び触媒は、量が少ないとイミド化が効果的に進行せず、逆に多すぎるとイミド化が早くなり取り扱いが困難となる。
【0028】
上記種々の公知の方法で得られる非熱可塑性ポリイミドフィルムは、公知の方法で無機あるいは有機物のフィラー、有機リン化合物等の可塑剤や酸化防止剤を添加してもよく、該非熱可塑性ポリイミドフィルムの少なくとも片方の面に、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、イオンガン処理、等の公知の物理的表面処理や、プライマー処理等の化学的表面処理を施し、さらに良好な特性を付与し得る事が出来る。
【0029】
非熱可塑性ポリイミドフィルムの厚みは、2μm以上、125μm以下であることが好ましく、5μm以上、75μm以下であることがより好ましい。この範囲より薄いと積層体の剛性が不足するばかりでなく、フィルムの取り扱いが困難となる。一方、フィルムが厚すぎると、プリント配線板を製造する際に、インピーダンス制御の点から回路幅を広くする必要があるので、プリント配線板の小型化、高密度化の要請に逆行する。また、層Aに用いる非熱可塑性ポリイミドフィルムの線膨張係数は低いことが好ましく、10〜40ppmのポリイミドフィルム、より好ましくは10〜20ppmのポリイミドフィルムが工業的に生産されており、入手、適用可能である。線膨張係数を制御するためには、剛直な構造のモノマーと柔軟な構造のモノマーを適切な割合で組み合わせることのほか、ポリアミド酸溶液を合成する際に酸無水物成分とジアミン成分を添加する順序、化学的イミド化と熱的イミド化の選択、ポリアミド酸をポリイミドに転化する際の温度条件などによっても得られる非熱可塑性ポリイミドフィルムの線膨張係数を制御できる。
【0030】
本発明において、剛直構造を有するジアミンとは、
【0031】
【化6】

式中のR2は
【0032】
【化7】

一般式群(1)
で表される2価の芳香族基からなる群から選択される基であり、式中のR3は同一または異なって,CH3−、−OH、−CF3、−SO4、−COOH、−CO-NH2、Cl−、Br−、F−、及びCH3O−からなる群より選択される何れかの1つの基である)
で表されるものをいう。
また、柔構造を有するジアミンとは、エーテル基、スルホン基、ケトン基、スルフィド基などの柔構造を有するジアミンであり、好ましくは、下記一般式(2)で表されるものである。
【0033】
【化8】

(式中のR4は、
【0034】
【化9】

で表される2価の有機基からなる群から選択される基であり、式中のR5は同一または異なって、CH3−、−OH、−CF3、−SO4、−COOH、−CO-NH2、Cl−、Br−、F−、及びCH3O−からなる群より選択される1つの基である。)
非熱可塑性ポリイミドフィルムの引っ張り弾性率は、ASTM D882−81に準拠し測定される。弾性率が低いとフィルムの剛性が低下し取り扱いが困難になる、一方高すぎると、フィルムの柔軟性が損なわれるためロール・ツー・ロールの加工が困難になる、フィルムが脆くなるなどの不具合が生じる場合がある。弾性率3〜10GPaのポリイミドフィルム、より好ましくは4〜7GPaのポリイミドフィルムが工業的に生産されており、入手、適用可能である。引っ張り弾性率も線膨張係数と同様、剛直な構造のモノマーと柔軟な構造のモノマーを適切な割合で組み合わせ、ポリアミド酸溶液を合成する際に酸無水物成分とジアミン成分を添加する順序、化学的イミド化と熱的イミド化の選択、ポリアミド酸をポリイミドに転化する際の温度条件などによって制御できる。
【0035】

(層B)
層Bは、シロキサン構造を有するポリイミド樹脂を含有することを特徴とする。
本発明のシロキサン構造を有するポリイミド樹脂は、シロキサン構造を有していれば、いかなるポリイミド樹脂を用いても良い。例えば、(1)シロキサン構造を有する酸二無水物成分あるいはシロキサン構造を有するジアミン成分を用いて、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸を製造し、これをイミド化してポリイミド樹脂を製造する方法、(2)官能基を有する酸二無水物成分あるいは官能基を有するジアミン成分を用いて官能基を有するポリアミド酸を製造し、この官能基と反応しうる官能基、及びシロキサン構造を有する化合物を反応させて、シロキサン構造が導入されたポリアミド酸を製造し、これをイミド化してポリイミド樹脂を製造する方法、(3)官能基を有する酸二無水物成分あるいは官能基を有するジアミン成分を用いて官能基を有するポリアミド酸を製造し、これをイミド化して官能基を有するポリイミドを製造し、この官能基と反応しうる官能基、及びシロキサン構造を有する化合物を反応させて、シロキサン構造が導入されたポリイミド樹脂を製造する方法、などが挙げられる。ここで、シロキサン構造を有するジアミンは比較的容易に入手することが可能であるため、上記の中でも、酸二無水物成分と、シロキサン構造を有するジアミンを反応させて目的とするポリイミド樹脂を製造することが好ましく、シロキサン構造を有するジアミンとして、下記一般式(1)で表されるジアミンを用いることが好ましい。
【0036】
【化10】

(式中、gは1以上の整数を表す。また、R11及びR22は、それぞれ同一、または異なっていてよく、アルキレン基またはフェニレン基を表す。R33〜R66は、それぞれ同一、または異なっていてよく、アルキル基、またはフェニル基、またはフェノキシ基、またはアルコキシ基を表す。好ましくは、gは1以上20以下である。またR11及びR22は、炭素数が1〜20のアルキレン基またはフェニレン基であることが好ましい。さらにR33〜R66は、炭素数1〜6のアルキル基、またはフェニル基、またはフェノキシ基、またはアルコキシ基であることが好ましい。)
本発明における熱可塑性ポリイミドとは、圧縮モード(プローブ径3mmφ、荷重5g)の熱機械分析測定(TMA)において、10〜400℃(昇温速度:10℃/min)の温度範囲で永久圧縮変形を起こすものをいう。
【0037】
ポリイミド樹脂は、酸二無水物成分とジアミン成分とを反応させて得られる。以下、酸二無水物成分について説明する。
【0038】
酸二無水物成分としては特に限定はなく、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンジフタル酸無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’−オキシジフタル酸無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)、4,4’−ハイドロキノンビス(無水フタル酸)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,2−エチレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)等を挙げることができる。これらは1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0039】
続いて、ジアミン成分について説明する。本発明においては、ジアミン成分として、下記一般式(1)で表されるジアミン成分を含むことが好ましい。
【0040】
【化11】

(式中、gは1以上の整数を表す。また、R11及びR22は、それぞれ同一、または異なっていてよく、アルキレン基またはフェニレン基を表す。R33〜R66は、それぞれ同一、または異なっていてよく、アルキル基、またはフェニル基、またはフェノキシ基、またはアルコキシ基を表す。好ましくは、gは1以上20以下である。またR11及びR22は、炭素数が1〜6のアルキレン基またはフェニレン基であることが好ましい。さらにR33〜R66は、炭素数1〜6のアルキル基、またはフェニル基、またはフェノキシ基、またはアルコキシ基であることが好ましい。)
一般式(1)で表されるジアミン成分を用いることにより、得られるポリイミド樹脂は、無電解めっき層と強固に接着するという特徴を有するようになる。
【0041】
一般式(1)で表されるジアミンとしては、1,1,3,3,−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3,−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,3,3,−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3,−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,5,5,−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5,−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(3−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5,−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(3−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3,−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3,−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン、1,1,5,5,−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5,−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5,−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、等が挙げられる。また、一般式(1)で表される、比較的入手しやすいジアミンとして、信越化学工業株式会社製のKF−8010、X−22−161A、X−22−161B、X−22−1660B―3、KF−8008、KF−8012、Xー22−9362、等を挙げることができる。上記ジアミンは単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0042】
層Bの耐熱性向上等を目的として、上述のジアミンと他のジアミンとを組み合わせて使用することも好ましく用いられる。他のジアミン成分としては、あらゆるジアミンを使用することが可能であり、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニルなどを挙げることができる。
【0043】
一般式(1)で表されるジアミンは、全ジアミン成分に対して2〜100モル%が好ましく、より好ましくは5〜100モル%である。一般式(1)で表されるジアミンが、全ジアミン成分に対して2モル%より低い場合、層Bと無電解めっき皮膜との接着強度が低くなる。
【0044】
前記ポリイミドは、対応する前駆体ポリアミド酸重合体を脱水閉環して得られる。ポリアミド酸重合体は、酸二無水物成分とジアミン成分とを実質的に等モル反応させて得られる。
【0045】
反応の代表的な手順として、1種以上のジアミン成分を有機極性溶剤に溶解または分散させ、そののち1種以上の酸二無水物成分を添加し、ポリアミド酸溶液を得る方法があげられる。各モノマーの添加順序はとくに限定されず、酸二無水物成分を有機極性溶媒に先に加えておき、ジアミン成分を添加し、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよいし、ジアミン成分を有機極性溶媒中に先に適量加えて、つぎに過剰の酸二無水物成分を加え、過剰量に相当するジアミン成分を加えて、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよい。このほかにも、当業者に公知のさまざまな添加方法がある。具体的には下記の方法が挙げられる。
【0046】
なお、ここでいう「溶解」とは、溶媒が溶質を完全に溶解する場合のほかに、溶質が溶媒中に均一に分散または分散されて実質的に溶解しているのと同様の状態になる場合を含む。反応時間、反応温度は、とくに限定されない。
1)芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここに芳香族ジアミン化合物を追加添加後、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解及び/または分散させた後、実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
【0047】
ポリアミド酸の重合反応に用いられる有機極性溶媒としては、たとえば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどをあげることができる。さらに必要に応じて、これらの有機極性溶媒とキシレンあるいはトルエンなどの芳香族炭化水素とを組み合わせて用いることもできる。
【0048】
前記方法により得られたポリアミド酸溶液を、熱的または化学的方法により脱水閉環し、ポリイミドを得るが、ポリアミド酸溶液を熱処理して脱水する熱的方法、脱水剤を用いて脱水する化学的方法のいずれも用いることができる。また、減圧下で加熱してイミド化する方法も用いることができる。以下に各方法について説明する。
【0049】
熱的に脱水閉環する方法として、前記ポリアミド酸溶液を加熱処理によりイミド化反応を進行させると同時に、溶媒を蒸発させる方法を例示することができる。この方法により、固形のポリイミド樹脂を得ることができる。加熱の条件はとくに限定されないが、200℃以下の温度で1秒〜200分の時間の範囲で行なうことが好ましい。
【0050】
また、化学的に脱水閉環する方法として、前記ポリアミド酸溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒を加えることにより、脱水反応を起こし、有機溶媒を蒸発させる方法を例示することができる。これにより、固形のポリイミド樹脂を得ることができる。脱水剤としては、たとえば、無水酢酸などの脂肪族酸無水物、無水安息香酸などの芳香族酸無水物などがあげられる。また、触媒としては、たとえば、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン類、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、イソキノリンなどの複素環式第3級アミン類などがあげられる。化学的に脱水閉環する際の条件は、100℃以下の温度が好ましく、有機溶媒の蒸発は、200℃以下の温度で約5分〜120分の時間の範囲で行なうことが好ましい。
【0051】
また、ポリイミド樹脂を得るための別の方法として、前記の熱的または化学的に脱水閉環する方法において、溶媒の蒸発を行なわない方法もある。具体的には、熱的イミド化処理または脱水剤による化学的イミド化処理を行なって得られるポリイミド溶液を貧溶媒中に投入して、ポリイミド樹脂を析出させ、未反応モノマーを取り除いて精製、乾燥させ、固形のポリイミド樹脂を得る方法である。貧溶媒としては、溶媒とは良好に混合するがポリイミドは溶解しにくい性質のものを選択する。例示すると、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンゼン、メチルセロソルブ、メチルエチルケトンなどがあげられるが、これらに限定されない。
【0052】
つぎに、減圧下で加熱してイミド化する方法であるが、このイミド化の方法によれば、イミド化によって生成する水を積極的に系外に除去できるので、ポリアミド酸の加水分解を抑えることが可能であり、高分子量のポリイミドが得られる。また、この方法によれば、原料の酸二無水物中に不純物として存在する片側または両側開環物が再閉環するので、より一層の分子量の向上効果が期待できる。
【0053】
減圧下で加熱イミド化する方法の加熱条件は、80〜400℃が好ましいが、イミド化が効率よく行なわれ、しかも水が効率よく除かれる100℃以上がより好ましく、さらに好ましくは120℃以上である。最高温度は目的とするポリイミドの熱分解温度以下が好ましく、通常のイミド化の完結温度、すなわち250〜350℃程度が通常適用される。
【0054】
減圧する圧力の条件は、小さいほうが好ましいが、具体的には、9×10↑4〜1×10↑2Pa、好ましくは8×10↑4〜1×10↑2Pa、より好ましくは7×10↑4〜1×10↑2Paである。

以上、ポリイミド樹脂について説明したが、市販のシロキサン構造を有するポリイミド樹脂も用いてもよい。本発明の積層体の層Bに用いることができる、比較的入手しやすいシロキサン構造を含むポリイミド樹脂の例として、信越化学工業株式会社製のXー22−8917、Xー22−8904、Xー22−8951、Xー22−8956、Xー22−8984、Xー22−8985、等を挙げることができる。尚、これらはポリイミド溶液である。
【0055】
以上、ポリイミド樹脂について説明したが、本発明の積層体の層Bには、耐熱性向上等の目的で、他の成分を含有させることも可能である。他の成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの樹脂を適宜使用することができる。
【0056】
熱可塑性樹脂としては、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、また、酸二無水物成分と、一般式(1)で表されるジアミンを含むジアミン成分とからなる熱可塑性ポリイミド樹脂とは構造の異なる熱可塑性ポリイミド樹脂等を挙げることができ、これらを単独または適宜組み合わせて用いることができる。
また、熱硬化性樹脂としては、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、フェノール樹脂、シアナート樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、トリアジン樹脂、ヒドロシリル硬化樹脂、アリル硬化樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などをあげることができ、これらを単独または適宜組み合わせて用いることができる。また、前記熱硬化性樹脂以外に、高分子鎖の側鎖または末端に、エポキシ基、アリル基、ビニル基、アルコキシシリル基、ヒドロシリル基などの反応性基を有する側鎖反応性基型熱硬化性高分子を使用することも可能である。
【0057】
また、層Bと無電解めっき皮膜との接着性をより向上させる目的で、各種添加剤を高分子材料に添加、高分子材料表面に塗布等の方法で存在させることも可能である。具体的には有機チオール化合物などを挙げることができるが、これに限定されない。
【0058】
また、層B表面に微細配線形成を阻害しない程度の表面粗度を形成し、無電解めっき皮膜との接着性を高める目的で、各種有機フィラー、無機フィラーを添加することもできる。
【0059】
上述の他の成分は、微細配線形成に悪影響を及ぼす程に層Bの表面粗度を大きくしない、また、層Bと無電解めっき皮膜との接着性を低下させない範囲で組み合わせることが重要であり、この点には注意を要する。
【0060】
ここで、微細配線形成のために、本発明の層Bの表面粗度は、カットオフ値0.002mmで測定した層Bの算術平均粗さが0.5μm以下であることが好ましい。
【0061】
また、全体の線膨張係数を小さくする為には層Bの厚みは薄いほうが好ましく、具体的には層Aの1倍以下、より好ましくは1/2以下が好ましい。具体的には層Bの厚みは好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。また、弾性率についても層Bの弾性率が高いと全体の線膨張係数が層Bの特性が支配的となるため弾性率は低いほうが好ましい。具体的には層Aの1倍以下、より好ましくは1/2以下であることが好ましい。具体的には層Bの弾性率は好ましくは4GPa以下,より好ましくは3GPa以下である。
【0062】
(層C)
本発明にかかる層Cに用いる成分詳細について説明する。層Cには本発明の絶縁シートを回路が形成された凹凸のある表面に対して積層する際、回路間に層Cが流動して、回路を埋め込むことができる、優れた加工性が必要である。一般に、熱硬化性樹脂は上記加工性に優れており、本発明の層Cには熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。この熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、シアナートエステル樹脂、ヒドロシリル硬化樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂;高分子鎖の側鎖または末端にアリル基、ビニル基、アルコキシシリル基、ヒドロシリル基等の反応性基を有する側鎖反応性基型熱硬化性高分子を適切な熱硬化剤、硬化触媒と組み合わせた熱硬化性樹脂組成物として適用可能である。
【0063】
これらの中で、エポキシ樹脂を用いることが、耐熱性、加工性などの点から好ましい。これらの熱硬化性樹脂組成物に更に熱可塑性高分子を添加することも好ましく実施可能であり、熱可塑性高分子としては、フェノキシ樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などが挙げられる。 好ましい組み合わせとしては、エポキシ樹脂とフェノキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物やエポキシ樹脂と熱可塑性ポリイミド樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物、シアナート樹脂と熱可塑性ポリイミド樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。この中でも、プリント配線板用材料として要求される諸特性バランスに優れるエポキシ樹脂と熱可塑性ポリイミド樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物が最も好ましい。
【0064】
また、低熱膨張性発現のため、各種フィラーを組み合わせることも可能である。この際のフィラーの添加量は所望の線膨張係数により変化し得るが、具体的には5〜80体積%、好ましくは10〜50%の範囲である。樹脂にフィラーを添加すると、通常、樹脂の溶融流動性が低下する。本発明においては、フィラーを組み合わせることにより、フィラーを添加しているにもかかわらず、樹脂の溶融流動性を低下させること、すなわち、十分な回路埋め込み性を確保することが可能となる。例えば、球状の溶融シリカを用いること、フィラーをシラン系やチタン系の表面処理剤やカップリング剤などで表面処理することなどで、十分な回路埋め込み性を確保することができる。層CのB−ステージ状態での溶融粘度は20000Pas以下、より好ましくは2000Pas以下である。上記範囲に粘度を制御する方法としては、1)フィラーの形状を球状のものを用いること、2)フィラーに表面処理を施すこと、3)粒径分布の広いフィラーを用いることが挙げられ、1)〜3)の方法を組み合わせてもよい。 層Cの厚みは、対向する回路高さや残銅率、およびインピーダンス制御の観点から必要な絶縁層厚みが存在する。一般には対向する回路高さの1/2から1倍程度が好ましい。具体的には5〜100μmの範囲が好適である。
【0065】
(その他の層)
本発明においては、層B/層A/層Cなる構成が最も単純な構成であるので、好ましく、該構成について主に説明したが、それぞれの層の間に別の層を設けても構わない。
【0066】
(金属層)
本発明に係る絶縁シートの層B上に形成される金属層としては、絶縁シートの層B上に無電解めっき等の湿式めっきを形成してなる金属層、スパッタ等の乾式めっきを形成してなる金属層、また銅箔、アルミ箔などの金属箔を貼り合わせてなる金属層、若しくは、予め金属箔と層Bとが接するように金属箔上に本発明の絶縁シートを形成してなる金属層などを挙げることができるが、微細配線形成性、製造効率、コスト等を考慮すると、無電解めっき等の湿式めっきを形成してなる金属層が好ましい。前記金属層は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法または化学蒸着法のいずれかで形成することも、密着性、均一性、外観などの点から好ましい。
【0067】
また、無電解めっきの種類としては無電解銅めっき、無電解ニッケルめっき、無電解金めっき、無電解銀めっき、無電解錫めっき、等を挙げる事ができ本発明に使用可能であるが、工業的観点、耐マイグレーション性等の電気特性の観点より、無電解銅めっき、無電解ニッケルめっきが好ましく、特に好ましくは無電解銅めっきである。
【0068】
(本発明にかかる絶縁シートの利用)
本発明にかかる絶縁シートは、様々な用途に好適に用いることができるが、中でも、フレキシブルプリント配線板やビルドアップ配線板等のプリント配線板の材料として好適に用いることができる。具体的には、当該プリント配線板やプリント配線板上のパターン化された回路を保護する保護材料、多層のプリント配線板にて各層間の絶縁性を確保するための層間絶縁材料等として好適に用いることができる。
【0069】
(本発明にかかる絶縁シートの製造方法)
次に本発明にかかる絶縁シートの製造方法について説明するが、これに限定されるものではない。先ず、層Bに含まれる熱可塑性ポリイミド樹脂および必要に応じて他の成分を適当な溶媒に添加し撹拌し、均一に溶解・分散化した層B樹脂溶液を得る。これを非熱可塑性ポリイミドフィルム層Aの片方の面に流延塗布し、その後層B樹脂溶液を乾燥させる。続いて、同様にして調製した層C樹脂溶液を層Aの他方の面に流延塗布し、その後樹脂溶液を乾燥させることにより、層B/層A/層Cからなる本発明の絶縁シートを得ることができる。
ここで、層Cは、内層回路を埋め込むという役割を担っているため、その成分である熱硬化性樹脂組成物が半硬化状態(Bステージ状態)であり、半硬化状態を得るために乾燥温度、時間を適切に制御することが重要である。
【0070】
<プリント配線板>
本発明の絶縁シート、プリント配線板用層間接着材料は、プリント配線板用途に好ましく用いる事ができる。
【0071】
本発明の絶縁シートを用い本発明のプリント配線板を製造する場合、順に、金属箔、絶縁シート、回路パターンが形成された内層基板を、層Cと回路パターンとを対向させ互いに積層し、回路パターン間を主に層Cで埋め込んだ後、サブトラクティブ法によるパターンエッチング処理を行い所望の導体回路パターンを形成し、本発明のプリント配線板を得ることが可能である。
【0072】
本発明の絶縁シートを用い本発明のプリント配線板を製造する別の方法として、順に、層Bを保護する易剥離製樹脂フィルム基材の付いた絶縁シート、回路パターンが形成された内層基板を層C側と回路パターンを対向させ互いに積層し、回路パターン間を主に層Cで埋め込んだ後、樹脂フィルム基材を剥離することにより露出する層B樹脂表面に対し無電解めっきを行い回路パターン用の金属層を得る事も可能である。この方法はアディティブ法による回路パターン形成法に好ましく適用可能であり、特に微細配線形成が必要な場合に好ましく実施される。
【0073】
上記において内層基板にフレキシブルプリント配線板を用いた場合、多層フレキシブル配線板を製造する事になり、また、ガラス−エポキシ基材等を用いたプリント配線板を用いた場合、多層リジッド配線板やビルドアップ配線板を製造する事になる。また、本発明の絶縁シートは強靭な非熱可塑性ポリイミドフィルムからなる層Aが有るため、本絶縁シート同士を積層していくことでコアレス積層基板、コアレスパッケージ基板を製造する際にも好適に用いられる。また、多層プリント配線板には垂直方向の電気的接続の為にヴィアの形成が必要であるが、本発明のプリント配線板においては、レーザー、メカニカルドリル、パンチング等の公知の方法でヴィアを形成し、無電解めっき、導電性ペースト、ダイレクトプレーティング等の公知の方法で導電化することが可能であり、好ましく実施される。
【0074】
本発明の絶縁シートの、少なくとも層Cは、半硬化状態では、適度な流動性を有している。そのため、熱プレス処理、真空プレス処理、ラミネート処理(熱ラミネート処理)、真空ラミネート処理、熱ロールラミネート処理、真空熱ロールラミネート処理等の熱圧着処理を行うことで、パターン回路の線間を主に層Cにより良好に埋め込むことができる。中でも真空下での処理、すなわち真空プレス処理、真空ラミネート処理、真空熱ロールラミネート処理がより良好に回路間をボイド無く埋め込むことが可能であり、好ましく実施可能である。
【0075】
上記熱圧着処理における処理温度は特に限定されるものではないが、50℃以上250℃以下の範囲内であることが好ましく、60℃以上200℃以下の範囲内であることがより好ましく、80℃以上180℃以下の範囲内であることが好ましい。上記処理温度が250℃を超えると、熱圧着処理時に本願発明の絶縁シートが硬化してしまい、良好な積層が行えない可能性がある。一方、上記処理温度が50℃未満であると、層Cの流動性が低く、導体回路パターンを埋め込むことが困難となる。
【0076】
また、上記熱圧着処理における処理時間、処理圧力は特に限定されるものではなく、用いる装置の特性、層Cの流動性に応じて適切に設定すべきである。通常、処理時間は数秒〜3時間であることが好ましく、また処理圧力は0.1MPa〜5MPaであることが好ましい。
【0077】
上記導体回路パターン上に設けられる層Cは、導体回路パターンを保護する保護材料あるいは、多層のプリント配線板での層間絶縁材料となる。そのため、パターン回路を埋め込んだ後、加熱硬化等を行うことによって完全に硬化させることが好ましい。加熱硬化の具体的な方法は特に限定されるものではなく、絶縁シートの層Cの熱硬化性樹脂組成物を十分に硬化できる条件で行うことが好ましい。
層Cを硬化させる場合には、熱硬化性樹脂組成物の硬化反応を十分に進行させるために、積層工程の後、または同時に、ポスト加熱処理を実施することが好ましい。ポスト加熱処理の条件は特に限定されるものではないが、150℃以上200℃以下の範囲内の温度条件下、10分以上3時間以下の加熱処理を行うことが好ましい。
【0078】
このように、本発明にかかるプリント配線板は、上述した絶縁シートを含む樹脂層を備えている。そのため、優れた微細回路形成性を良好に保つことが可能となり、さらに、加工性・取扱性、耐熱性、樹脂流動性等の諸特性をバランスよく付与することができる。これにより、プリント配線板を好適に製造することが可能になる。
【0079】
また、層Bと無電解めっき層との接着性を向上させる目的で、無電解めっき層を形成後に加熱処理を施すことも可能である。
【実施例】
【0080】
本発明について、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、本発明にかかる絶縁シートの特性として、無電解めっき銅との接着性、表面粗さRa、及び積層性は以下のように評価または算出した。
【0081】
(非熱可塑性ポリイミドフィルムの作製)
ピロメリット酸二無水物/p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)/p−フェニレンジアミン/4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で1/1/1/1の割合で合成したポリアミド酸の17wt%のN,N−ジメチルアセトアミド溶液90gに無水酢酸17gとイソキノリン2gからなる転化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に厚さ150μmで流延塗布した。攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を110℃4分間加熱し、自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムの残揮発分含量は30wt%であり、イミド化率は90%であった。このゲルフィルムをアルミ箔から剥がし、フレームに固定した。このゲルフィルムを300℃、400℃、500℃で各1分間加熱して厚さ13μmの非熱可塑性ポリイミドフィルム(a)を製造した。得られた非熱可塑性ポリイミドフィルムの100℃〜200℃の平均線膨張係数は12ppm、室温での引張弾性率は6GPaであった。
【0082】
(熱可塑性ポリイミドの合成例1)
容量2000mlのガラス製フラスコに、1,1,3,3,−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン124.7g(0.15mol)と、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと呼ぶ)を投入し、撹拌しながら溶解させ、4,4´―(4,4´―イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物78.1g(0.15mol)を添加、約1時間撹拌し、固形分濃度30%ポリアミド酸のDMF溶液を得た。上記ポリアミド酸溶液をテフロン(登録商標)コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、120分、665Paで減圧加熱し、熱可塑性ポリイミド樹脂(b1)を得た。
得られた熱可塑性ポリイミド樹脂(b1)は、圧縮モード(プローブ径3mmφ、荷重5g)の熱機械分析測定(TMA、昇温速度:10℃/min)において、40℃で永久圧縮変形した。
また、得られた熱可塑性ポリイミド樹脂(b1)をジオキソランに溶解した後、PETフィルム上に流延塗布し、150℃2分間乾燥して得られた熱可塑性ポリイミドフィルムの引っ張り弾性率は0.5GPaであった。
【0083】
(熱可塑性ポリイミドの合成例2)
容量2000mlのガラス製フラスコに、1,1,3,3,−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン62.3g(0.075mol)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル15.0g(0.075mol)と、DMFを投入し、撹拌しながら溶解させ、4,4´―(4,4´―イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物78.1g(0.15mol)を添加、約1時間撹拌し、固形分濃度30%ポリアミド酸のDMF溶液を得た。上記ポリアミド酸溶液をテフロン(登録商標)コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、120分、6 65Paで減圧加熱し、熱可塑性ポリイミド樹脂(b2)を得た。
得られた熱可塑性ポリイミド樹脂(b2)は、圧縮モード(プローブ径3mmφ、荷重5g)の熱機械分析測定(TMA、昇温速度:10℃/min)において、90℃で永久圧縮変形した。また、得られた熱可塑性ポリイミド樹脂(b2)をジオキソランに溶解した後、PETフィルム上に流延塗布し、150℃2分間乾燥して得られた熱可塑性ポリイミドフィルムの引っ張り弾性率は1.0GPaであった。
【0084】
(熱可塑性ポリイミドの合成例3)
容量2000mlのガラス製フラスコに、1,1,3,3,−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン37.4g(0.045mol)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル21.0g(0.105mol)と、DMFを投入し、撹拌しながら溶解させ、4,4´―(4,4´―イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物78.1g(0.15mol)を添加、約1時間撹拌し、固形分濃度30%ポリアミド酸のDMF溶液を得た。上記ポリアミド酸溶液をテフロン(登録商標)コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、120分、665Paで減圧加熱し、熱可塑性ポリイミド樹脂(b3)を得た。
【0085】
得られた熱可塑性ポリイミド樹脂(b3)は、圧縮モード(プローブ径3mmφ、荷重5g)の熱機械分析測定(TMA、昇温速度:10℃/min)において、150℃で永久圧縮変形した。また、得られた熱可塑性ポリイミド樹脂(b3)をジオキソランに溶解した後、PETフィルム上に流延塗布し、150℃2分間乾燥して得られた熱可塑性ポリイミドフィルムの引っ張り弾性率は1.4GPaであった。
【0086】
(熱可塑性ポリイミドの合成例4)
容量2000mlのガラス製フラスコに、1,1,3,3,−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン37.4g(0.045mol)と、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン30.7g(0.105mol)と、DMFを投入し、撹拌しながら溶解させ、4,4´―(4,4´―イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物78g(0.15mol)を添加、約1時間撹拌し、固形分濃度30%ポリアミド酸のDMF溶液を得た。上記ポリアミド酸溶液をテフロン(登録商標)コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、120分、665Paで減圧加熱し、熱可塑性ポリイミド樹脂(b4)を得た。
得られた熱可塑性ポリイミド樹脂(b4)は、圧縮モード(プローブ径3mmφ、荷重5g)の熱機械分析測定(TMA、昇温速度:10℃/min)において、140℃で永久圧縮変形した。また、得られた熱可塑性ポリイミド樹脂(b4)をジオキソランに溶解した後、PETフィルム上に流延塗布し、150℃2分間乾燥して得られた熱可塑性ポリイミドフィルムの引っ張り弾性率は1.2GPaであった。
【0087】
(熱可塑性ポリイミドの合成例5)
容量2000mlのガラス製フラスコに、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン41g(0.15mol)と、DMFを投入し、撹拌しながら溶解させ、4,4´―(4,4´―イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物78g(0.15mol)を添加、約1時間撹拌し、固形分濃度30%ポリアミド酸のDMF溶液を得た。上記ポリアミド酸溶液をテフロン(登録商標)コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、180分、665Paで減圧加熱し、熱可塑性ポリイミド樹脂(b5)を得た。
得られた熱可塑性ポリイミド樹脂(b5)は、圧縮モード(プローブ径3mmφ、荷重5g)の熱機械分析測定(TMA、昇温速度:10℃/min)において、160℃で永久圧縮変形した。また、得られた熱可塑性ポリイミド樹脂(b5)をジオキソランに溶解した後、PETフィルム上に流延塗布し、150℃2分間乾燥して得られた熱可塑性ポリイミドフィルムの引っ張り弾性率は2.0GPaであった。
【0088】
(層B樹脂溶液の調合例)
上記で得られた熱可塑性ポリイミド樹脂をジオキソランに溶解・分散させ、層B樹脂溶液を得た。固形分濃度は15重量%となるようにした。
【0089】
(層C樹脂溶液の調合)
上記で得られた熱可塑性ポリイミド樹脂(b5)50gとジャパンエポキシレジン(株)社製ビフェニル型エポキシ樹脂YX4000Hを32.1g、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンを17.9g、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンを0.2gをジオキソランとトルエン重量比7対3の混合溶液に溶解し、ヘキサメチルジシラザンで乾式法により表面処理した平均粒径1.5μmの球状溶融シリカフィラー50gを分散させて層C樹脂溶液を得た。固形分濃度は30重量%となるようにした。
【0090】
〔積層体の作製〕
層B側に保護フィルムとしてフッ素樹脂フィルム(商品名アフレックス、旭硝子社製)を配し、層Cをガラスエポキシ基板(商品名RISHOLITE、CS−3665、利昌社製;銅箔の厚さ18μm、全体の厚さ0.6mm)に対向させ、温度180℃、圧力3MPa、真空下の条件で60分の加熱加圧を行った後、フッ素樹脂フィルムを引き剥がして絶縁シート/ガラスエポキシ基板積層体を得た。
(層B上への金属層の形成1、デスミア・無電解めっき+電解銅メッキ)
上記で得られた絶縁シート/ガラスエポキシ基板積層体の露出する層B表面に、(表1)(表2)の条件でデスミアおよび無電解銅めっきを行なった後、無電解めっき銅上に厚さ18μmの電解めっき銅層を形成した。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

(層B上への金属層の形成2、スパッタリング+電解銅メッキ)
上記で得られた絶縁シート/ガラスエポキシ基板積層体の露出する層B表面に昭和真空社製スパッタリング装置NSP−6を用い、銅200nmを(スパッタ圧0.2Pa、DC出力200W、スパッタ時間24分間)の条件でスパッタリングにより銅薄膜を形成し、スパッタ銅薄膜上に厚さ18μmの電解銅メッキ層を形成した。
(接着強度の測定)
上記得られた、層B表面に金属層を形成した絶縁シート/ガラスエポキシ基板積層体を、180℃、30分の乾燥処理を行った後、JPCA−BU01−1998(社団法人日本プリント回路工業会発行)に従い、常態、及びプレッシャークッカー試験(PCT)後の接着強度を測定した。尚、デスミアおよび無電解銅めっきは以下実施した。
常態接着強度:25℃、50%の雰囲気下、24時間放置した後に測定した接着強度。
PCT後接着強度:121℃、100%の雰囲気下、96時間放置した後に測定した接着強度。
【0093】
〔表面粗度Ra測定〕
上記接着性測定項目においてサンプル作製手順においてデスミアまで行った状態のサンプルを用い、層Bの表面粗度Raの測定を行った。測定は、光波干渉式表面粗さ計(ZYGO社製NewView5030システム)を用いて下記の条件で層Bの算術平均粗さを測定した。
【0094】
(測定条件)
対物レンズ:50倍ミラウ イメージズーム:2
FDA Res:Normal
解析条件:
Remove:Cylinder
Filter:High Pass
Filter Low Waven:0.002mm
〔積層性評価〕
高さが18μm,回路幅が50μm,回路間距離が50μmにて形成された回路を有するガラスエポキシ基板(商品名RISHOLITE、CS−3665、利昌社製;銅箔の厚さ18μm、全体の厚さ0.6mm)の回路形成面と、層B側に保護フィルムとしてフッ素樹脂フィルム(商品名アフレックス、旭硝子社製)を有する絶縁シートの層Cを対向させ、温度180℃、圧力3MPa、真空下の条件で60分の加熱加圧を行った後、フッ素樹脂フィルムを引き剥がして、絶縁シート/ガラスエポキシ基板積層体を得た。露出した樹脂表面を、光学顕微鏡(倍率50倍)を用いて目視によって観察し、回路間において泡のかみ込みの有無を確認した。回路間の泡のかみ込み(回路間に樹脂が入り込んでいない部分)が確認されなかった場合の積層性を合格(○)とし、泡のかみ込み確認がされた場合の積層性を不合格(×)として評価を行った。
【0095】
(線膨張係数の測定)
層B/層A/層Cからなる絶縁シートを熱プレス(180℃1時間)により熱硬化性成分を硬化して、硬化シートを作製し、さらに180℃30分乾燥したものをサンプルとし、測定装置(セイコーインスツルメント社製TMA120C)、サンプル形状(15mm長さ×5mm幅)、昇温速度(10℃/min)、引張り荷重(3g)の状態で室温から200℃まで昇温、測定し、一旦冷却する。この操作により、試料中の残留応力を開放し、再度室温から270℃まで昇温し測定する。この2回目の測定において、温度−寸法曲線の変曲点の温度をガラス転移温度(Tg)とし、室温からTg−10℃までの温度範囲の平均線膨張係数をサンプルの線膨張係数とした。
【0096】
(溶融粘度の測定)
上記、B−ステージ状態の層Cの材料からなる樹脂シートを、測定装置(BOHLIN社製レオメーターCVO)、サンプルサイズ(25mmφ、0.5mm厚み)、昇温速度(12℃/分)にて60℃から180℃まで昇温の後180℃で1時間保持する。昇温開始からの、試料の複素粘性係数の時間変化を観察し、その最低値を試料の溶融粘度とした。
【0097】
(弾性率の測定)
引っ張り弾性率はASTM D882−81に準拠し測定した。
【0098】
〔実施例1〕
前述の方法で得た非熱可塑性ポリイミドフィルム(a)を層Aとして、その片方の面に上記で得た熱可塑性ポリイミド樹脂(b1)の溶液を流延塗布した。その後、熱風オーブンにて60℃、100℃、150℃の温度で、各2分ずつ加熱乾燥させ、厚み5μmの層Bを得た。続いて層Aの他方の面に上記の方法で得た層C樹脂溶液を乾燥後の層Cの厚みが40μmとなる様に流延塗布し、熱風オーブンにて80℃、100℃、120℃、150℃の温度で、各1分ずつ加熱乾燥させ、層B(5μm)/層A(13μm)/層C(40μm)からなる本発明の絶縁シートを得た。得られたシートを用いて絶縁シート/ガラスエポキシ基板積層体を作製し、層B上に上述の方法でデスミア/無電解メッキ+電解メッキの方法で金属層を形成し接着性を評価した。
また、得られた絶縁シート/ガラスエポキシ基板積層体や絶縁シートの各種評価項目を上述の評価手順に従い評価した。評価結果を表3に示す。
【0099】
〔実施例2〜4〕
層B樹脂溶液をそれぞれ上記方法で得た熱可塑性ポリイミド樹脂(b2)〜(b4)を用いる以外は実施例1と同様の手順で本発明の絶縁シートを得た。得られたシートや絶縁シート/ガラスエポキシ基板積層体を実施例1と同様に各種評価項目の評価手順に従い評価した。評価結果を表3に示す。
【0100】
(実施例5)
実施例3と同様の方法で得た絶縁シート/ガラスエポキシ基板積層体を用い、層B上に上述の方法でスパッタリング+電解メッキの方法で金属層を形成し接着性を評価した。結果を表3に示す。
(実施例6〜8)
層B樹脂溶液を上記熱可塑性ポリイミド樹脂(b3)を用い、層Cに溶融シリカのフィラーを添加せず、厚みをそれぞれ、15,20,40μmする以外は,実施例3と同様に本発明の絶縁シートを得た。得られたシートや絶縁シート/ガラスエポキシ基板積層体を実施例1と同様に各種評価項目の評価手順に従い評価した。評価結果を表3に示す。
【0101】
(比較例1)
層B樹脂溶液を用いない以外は実施例1と同様の手順で本発明の絶縁シートを得た。得られたシートや絶縁シート/ガラスエポキシ基板積層体を実施例1と同様に各種評価項目の評価手順に従い評価した。評価結果を(表3)に示す。
【0102】
【表3】

(比較例2)
層B樹脂溶液をそれぞれ上記方法で得た熱可塑性ポリイミド樹脂(b5)を用いる以外は実施例1と同様の手順で本発明の絶縁シートを得た。得られたシートや絶縁シート/ガラスエポキシ基板積層体を実施例1と同様に各種評価項目の評価手順に従い評価した。評価結果を(表3)に示す。
【0103】
【表4】

表4に示すように、一般式(1)で表されるジアミンを含まない熱可塑性ポリイミド樹脂を用いた比較例1は金属層の接着強度が低い。
【0104】
(実施例9〜11)
層Cの厚みがそれぞれ15μm、20μm、30μmとする以外は実施例3と同様にして絶縁シートを得た。得られた絶縁シートの線膨張係数を表5に示す
(参考例1)
層Aに非熱可塑性フィルムを用いないで、支持PETフィルム熱可塑性ポリイミド樹脂(b3)からなる層Bの樹脂を塗工、さらに層Cの樹脂を塗工乾燥して、層B/層Cからなる絶縁シートを作製した。得られたシートの線膨張係数を評価した。結果を表5に示す。
【表5】

【0105】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明にかかる絶縁シートは、回路を形成する層の表面粗度が小さい場合でも、回路との接着強度が高いという特徴を有しているため、微細配線形成性に優れている。
【0107】
さらに、非熱可塑性ポリイミドフィルムとの積層構造を有し、多層プリント配線板として加工した際の層間絶縁厚みの均一性、層間絶縁の信頼性に優れる。また、該非熱可塑性ポリイミドフィルムは線膨張係数が小さく、微細配線形成に優れた特性を発揮することができる。それゆえ、本発明は、樹脂組成物や接着剤等の素材加工産業や各種化学産業だけでなく、各種電子部品の産業分野に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子フィルム層Aの片面に、シロキサン構造を有する熱可塑性ポリイミド樹脂を含有する層Bが形成され、他方の面に、熱可塑性ポリイミド樹脂および熱硬化性成分を含有する層Cが形成されたことを特徴とする絶縁シート。
【請求項2】
前記シロキサン構造を有する熱可塑性ポリイミド樹脂が、酸二無水物成分と、下記一般式(1)で表されるジアミンを含むジアミン成分を原料とする熱可塑性ポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項1記載の絶縁シート。
【化1】

(式中、gは1以上の整数を表す。また、R11及びR22は、それぞれ同一、または異なっていてよく、炭素数1〜6のアルキレン基またはフェニレン基を表す。R33〜R66は、それぞれ同一、または異なっていてよく、炭素数1〜6のアルキル基、またはアルコキシ基、またはフェニル基、またはフェノキシ基を表す。)
【請求項3】
前記層Bは、該層上に金属層を形成するための層であるとともに、前記層Cは、別途形成された回路と対向し積層させるための層であることを特徴とする請求項1または2記載の絶縁シート。
【請求項4】
前記層Bの厚みが、前記層Aの厚みの1倍以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の絶縁シート。
【請求項5】
前記層Bの引張弾性率が、前記層Aの引張弾性率の1倍以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の絶縁シート。
【請求項6】
前記層Cがフィラーを5体積%以上含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の絶縁シート
【請求項7】
前記フィラーが球状溶融シリカであることを特徴とする請求項6記載の絶縁シート。
【請求項8】
前記フィラーがシラン系またはチタン系のカップリング剤または表面処理剤で表面処理したフィラーであることを特徴とする請求項6または7に記載の絶縁シート。
【請求項9】
前記C層に含まれる熱硬化性成分がエポキシ樹脂成分を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の絶縁シート。
【請求項10】
前記C層のB−ステージ状態での溶融粘度が20,000Pa・s以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の絶縁シート。
【請求項11】
前記層Bのカットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さ(Ra)が0.5μm未満であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の絶縁シート。
【請求項12】
前記金属層が、無電解銅メッキにより形成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の絶縁シート。
【請求項13】
前記請求項1〜11のいずれか一項に記載の絶縁シートの層B上に金属層が形成された金属層/絶縁シート積層体であって、金属層の密着強度が5N/cm以上であることを特徴とする金属層/絶縁シート積層体。
【請求項14】
前記金属層が、無電解銅メッキにより形成したものであることを特徴とする請求項13記載の金属層/絶縁シート積層体。
【請求項15】
前記金属層が、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法または化学蒸着法のいずれかで形成されたものであることを特徴とする請求項13記載の金属層/絶縁シート積層体。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の絶縁シートまたは金属層/絶縁シート積層体を用いることを特徴とするプリント配線板。
【請求項17】
高分子フィルム層Aの片面に、酸二無水物成分と、下記一般式(1)で表されるジアミンを含むジアミン成分を原料とする熱可塑性ポリイミド樹脂を含有する層Bが形成され、他方の面に、別途形成された回路と対向し積層させるための層が形成されたことを特徴とする絶縁シート。
【化2】

(式中、gは1以上の整数を表す。また、R11及びR22は、それぞれ同一、または異なっていてよく、炭素数1〜6のアルキレン基またはフェニレン基を表す。R33〜R66は、それぞれ同一、または異なっていてよく、炭素数1〜6のアルキル基、またはアルコキシ基、またはフェニル基、またはフェノキシ基を表す。)
【請求項18】
高分子フィルムが非熱可塑性ポリイミドであることを特徴とする請求項1〜17に記載の絶縁シートならびに金属層/絶縁シート積層体またはプリント配線板

【公開番号】特開2006−224644(P2006−224644A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78093(P2005−78093)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】