説明

絶縁材料用硬化性組成物、絶縁材料、及び電子部品装置の製造方法及び電子部品装置

【課題】耐熱性、特に耐高温放置性及び耐冷熱サイクル性に優れており、信頼性に優れた電子部品装置を提供することを可能とする電子部品装置用の絶縁材料用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、かつ少なくとも主鎖の一部に多環式炭化水素骨格を有する硬化性化合物(a)と、エポキシ樹脂用硬化剤(b)と、酸化防止剤(c)及び/またはヒンダードアミン系光安定剤(HALS)(d)と、無機フィラー(e)もしくはゴム微粒子(f)とを含有してなる、絶縁材料用硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に半導体チップなどの電子部品素子を実装してなる電子部品装置の絶縁部分を形成するのに適した絶縁材料用硬化性組成物に関し、より詳細には、耐熱性に優れ、温度変化が与えられた場合であっても、剥離等が生じ難い絶縁材料を与える硬化性組成物、並びに該絶縁材料用硬化性組成物を用いた電子部品装置の製造方法及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に半導体チップを実装することにより構成された半導体装置の高性能化及び小型化を図るために、ボンディングワイヤを用いない面実装技術が用いられてきている。この種の実装技術の一例は、例えば下記の特許文献1に開示されている。面実装技術を用いる場合、基板上に半導体チップを接着により接合したり、あるいは電極間の絶縁を図るために、様々な絶縁材料が用いられている。
【0003】
他方、半導体装置において用いられる絶縁材料では、用途によっては、大きな電気容量に耐え得ることが求められている。また、上記面実装技術などの実装プロセスに適したものであることも求められている。
【0004】
また、絶縁材料の接着性を利用して接着剤として用いられている場合には、耐湿性に優れていることが強く求められる。これは、絶縁材料用硬化性組成物を硬化して得られた硬化物の吸水率が高いと、接着界面に水分が浸入し易くなり、接着力を低下させるおそれがあるためである。また、硬化物の吸水量が多いと、半導体装置をハンダリフローする際の温度である200〜260℃の温度で、水分が急激に気化し、半導体装置が破壊されるおそれがあるからである。
【0005】
また、大電流用途では、特に、高温放置下及び冷熱サイクルが与えられた際の劣化が生じ難いことが強く求められている。さらに、電力損失の原因となるクラックの発生が生じ難いことも求められている。同様に、絶縁材料用硬化性組成物が基板、電極あるいは半導体チップから剥離し難いことも強く求められている。すなわち、半導体や電極構成金属に対する接着性が良好であることも強く求められている。
【0006】
下記の特許文献2には、常用温度が240℃を超える硬化性ポリイミドからなる材料が提案されている。しかしながら、硬化性ポリイミドの硬化物では、線膨張係数が高く、柔軟性が十分でなかった。従って、冷熱サイクルが与えられた場合には、クラックが生じたり、基板や半導体チップからの剥離が生じるおそれがあった。
【0007】
他方、高い接着力を有し、半導体装置における要求性能に応じた特性を実現しやすく、かつ配合設計が容易であるため、エポキシ樹脂系の硬化性組成物が半導体装置用絶縁材料用硬化性組成物として広く用いられている(例えば、下記の特許文献3など)。しかしながら、エポキシ樹脂系の硬化性組成物の硬化物は、比較的固いため、柔軟性を高めるため、エラストマーなどが配合されることが多い。ところが、高温下に放置されると、添加されているエラストマーが熱分解し、500℃のような高温下に放置されると劣化するという問題があった。
【0008】
そこで、エポキシ樹脂系の硬化性組成物に、無機フィラーを85重量%以上添加させることにより、硬化物の耐高温放置性及び耐冷熱サイクル性を高めた硬化性組成物も提案されている(例えば、下記の特許文献4)。しかしながら、無機フィラーの充填量が多過ぎるため、あるいは無機フィラーとして、大きな無機フィラーを用いていたりしているため、接着性が低下するという問題があった。
【特許文献1】特開平8−115953号公報
【特許文献2】特開2001−323224号公報
【特許文献3】特開2002−129125号公報
【特許文献4】特開2005−256011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、硬化物が耐熱性に優れており、特に、耐冷熱サイクル性及び耐高温放置性に優れており、かつ金属に対する接着性に優れており、従って、半導体装置などの電子部品装置などの絶縁材料として用いるのに好適な絶縁材料用硬化性組成物、並びに該絶縁材料用硬化性組成物を用いた電子部品装置及び電子部品装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の第1の発明は、電子部品装置用の絶縁材料用の硬化性組成物であって、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、かつ少なくとも主鎖の一部に多環式炭化水素骨格を有する硬化性化合物(a)と、エポキシ樹脂用硬化剤(b)と、酸化防止剤(c)及び/またはヒンダードアミン系光安定剤(HALS)(d)と、無機フィラー(e)とを含有してなることを特徴とする絶縁材料用硬化性組成物である。
【0011】
上記無機フィラー(e)としては、好ましくは、層状珪酸塩(e1)が用いられる。
【0012】
本願の第2の発明は、電子部品装置用の絶縁材料用硬化性組成物であって、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、かつ少なくとも主鎖の一部に多環式炭化水素骨格を有する硬化性化合物(a)と、エポキシ樹脂用硬化剤(b)と、酸化防止剤(c)及び/またはヒンダードアミン系光安定剤(HALS)(d)と、ゴム微粒子(f)とを含有してなることを特徴とする絶縁材料用硬化性組成物である。
【0013】
第2の発明では、好ましくは、上記ゴム微粒子(f)として、シラノール結合を主骨格とし、シリル基に有機置換基を有する化合物(f1)またはフッ素化合物(f2)が用いられる。
【0014】
本発明(第1,第2の発明)のある特定の局面では、硬化性化合物として、前記電子部品装置において電子部品素子または電極を構成している無機原子との間で錯体構造を形成する配位子を有する化合物(g)がさらに含有されている。
【0015】
本発明の他の特定の局面では、本発明に従って構成された絶縁材料用硬化性組成物を用いてなることを特徴とする絶縁材料、好ましくはシート状絶縁材料が提供される。
【0016】
本発明に係る電子部品装置の製造方法は、本発明に従って構成された絶縁材料用硬化性組成物を用いて電子部品装置を製造する方法であって、電子部品素子が実装された基板の電子部品素子の周囲の少なくとも一部を前記絶縁材料で被覆して絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層に高密度エネルギー線を照射し、前記絶縁層に配線用の孔を形成する工程と、前記孔に配線材料を充填する工程と、前記孔に充填された配線材料と電気的に接続される配線パターンを前記絶縁層の表面に形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る電子部品装置は、本発明に従って構成された絶縁材料用硬化性組成物の硬化物からなる絶縁層を有する電子部品装置であって、基板と、前記基板上に実装された電子部品素子と、本発明に従って構成された絶縁材料用硬化性組成物の硬化物により形成されており、前記電子部品素子の周囲の少なくとも一部を被覆するように設けられており、かつ表面に連なる孔が形成されている絶縁層と、前記絶縁層の孔に充填された配線材料と、前記絶縁層表面に形成されており、前記配線材料に電気的に接続されるように設けられた配線パターンとを備えることを特徴とする。
【0018】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0019】
(硬化性化合物(a))
本発明で用いられる硬化性化合物(a)は、少なくとも1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、かつ、少なくとも主鎖の一部に多環式炭化水素骨格を有するエポキシ系の硬化性化合物である。
【0020】
上記硬化性化合物(a)としては、特に限定されないが、多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂が好適に用いられる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエンジオキシド、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシ樹脂などのジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリシジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、トリス(o−グリシジルオキシフェニル)メタン、トリス(m−グリシジルオキシフェニル)メタン、トリス(p−グリシジルオキシフェニル)メタン等のトリス(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシ樹脂及びトリス(グリシジルオキシフェニル)メタンをモノマー構造に持つ重合体、トリス(o−グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(m−グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(p−グリシジルオキシフェニル)エタン等のトリス(グリシジルオキシフェニル)エタン骨格を有するエポキシ樹脂及びトリス(グリシジルオキシフェニル)エタンをモノマー構造に持つ重合体、テトラキス(o−グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(m−グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(p−グリシジルオキシフェニル)メタン等のテトラキス(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシ樹脂及びテトラキス(グリシジルオキシフェニル)メタンをモノマー構造に持つ重合体、1,1’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’―バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’―バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン等のバイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボネート等が挙げられ、これらの多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂は、1種のみが用いられても良いし、2種類以上が併用されて用いられても良い。
【0021】
また、上記硬化性化合物(a)においては、上述した上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂だけでなく、硬化性化合物(a)として、上記エポキシ基と反応する官能基を有する高分子量固形ポリマーを併用することが好ましい。なお、上記高分子量固形ポリマーとは、具体的には、数平均分子量が10万以上の大きな高分子量を有するものをいうものとする。
【0022】
エポキシ基と反応する官能基を有する高分子量固形ポリマーとの併用により、絶縁材料を実装デバイスに被覆する際のハンドリング性が向上する。また、より好ましくは、上記高分子量固形ポリマーとしては、エポキシ基を有する高分子量固形ポリマーが好ましい。エポキシ基を有する高分子量固形ポリマーを含有することにより、未硬化状態における絶縁材料組成物の貯蔵安定性と優れた反応性が両立し、硬化状態での可とう性が向上するからである。
【0023】
上記エポキシ基を有する高分子量固形ポリマーとしては、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子量ポリマーであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂などが挙げられ、なかでも、エポキシ基を多く含む高分子量固形ポリマーを得ることができ、絶縁材料組成物の硬化後における機械的強度や耐熱性がより優れたものとなることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好適に用いられる。これらのエポキシ基を有する高分子量固形ポリマーは、上記多環式水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂と併用されれば、該エポキシ基を有する高分子量ポリマーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0024】
また、上記のように、エポキシ基を有する高分子量固形ポリマーは、上記硬化性化合物(a)において、多環式炭化水素骨格を主鎖に有する樹脂と併用されることが望ましいが、エポキシ基を有する高分子量固形ポリマー自体がエポキシ基を1分子中に2個以上有し、かつ主鎖の一部に多環式炭化水素骨格を有する場合、硬化性化合物(a)として、上記エポキシ基を有する高分子量固形ポリマーのみを用いてもよい。
【0025】
上記エポキシ基を有する高分子量固形ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、5量体モノマー単位中に3個以上のエポキシ基を含有するのが好ましい。3個未満では架橋点間距離が大きくなるため、硬化物の機械的強度や耐熱性が十分に向上しないためである。
【0026】
上記エポキシ基を有する高分子量固形ポリマーの製造方法としては、特に限定されるものではないが、溶剤を媒体とした溶液重合法で製造される他、水又は被溶剤を媒体とした懸濁重合法で行うと、エポキシ基を多量に含み、かつ、高分子量のエポキシ基含有樹脂をモノマーがほとんど残留させずに得ることが可能であるとともに、重合系からの分離操作も容易であるので、製造工程が簡略になる。
【0027】
すなわち、上記エポキシ基を有する高分子量固形ポリマーは、好ましくはエポキシ基含有アクリル樹脂は、重量平均分子量が5万以上であることが好ましい。エポキシ基を有する高分子量固形ポリマー、エポキシ基含有アクリル樹脂の重量平均分子量が5万未満であると、絶縁材料を実装デバイスに被覆する際のハンドリング性向上の効果が十分に作用しない。
【0028】
上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂とは、特に限定されないが、上記エポキシ基と反応する官能基を有し、かつ末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にゴム構造を持つ樹脂との併用が好ましい。エポキシ基と反応する官能基を有する、ゴム構造を持つ樹脂との併用により、絶縁材料硬化物の可とう性が向上する。より好ましくは、エポキシ基を有する高分子量固形ポリマーとの併用が好ましい。エポキシ基を有する高分子量固形ポリマーを含有することにより、未硬化状態における絶縁材料組成物の貯蔵安定性と優れた反応性が両立し、硬化状態での可とう性が向上するからである。
【0029】
上記エポキシ基を有し、ゴム構造を持つ樹脂としては、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)エポキシ基を有し、かつ末端及び/又は側鎖(ペンダント位)及び/又は主鎖構造中にゴム構造を有するものであれば良い。特に限定されるものではないが、ゴム構造としては例えば、アクリルゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴムなどが挙げられる。これらエポキシ基及びゴム構造を有する樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0030】
上記エポキシ基及びゴム構造を有する樹脂は、絶縁材料組成物総重量に対して、5重量%以上、30重量%以下で、より好ましくは、5〜15重量%の範囲で配合するのが好ましい。5重量%未満では絶縁材料硬化物の可とう性向上効果が不十分となるおそれがあり、30重量%を超えると、絶縁材料物硬化物のガラス転移温度が低下し、耐熱性をはじめとする高温性能を低下させがちとなる。
【0031】
(エポキシ樹脂用硬化剤(b))
本発明で用いられる硬化性化合物(b)は、特に限定されるものではないが、例えばトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸などの加熱硬化型酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、ジシアンジアミドなどの潜在性硬化剤、カチオン系触媒型硬化剤などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂用硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されても良い。
【0032】
上記常温で液状の加熱硬化型硬化剤の代表的なものとしては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸などの酸無水物系硬化剤が挙げられる。なかでも、メチルテトラヒドロ無水フタル酸やメチルヘキサヒドロ無水フタル酸に比べて疎水化されており、耐水性を高め得るので、メチルナジック酸無水物やトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸が好適に用いられる。これらの酸無水物硬化剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0033】
上記フェノール系硬化剤の代表的なものとしては、例えば、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ−o−ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ−m−ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ−p−ヒドロキシフェニル)メタンなどが挙げられる。これらのフェノール系硬化剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0034】
上記絶縁材料用の硬化性組成物においては、硬化速度や硬化物の物性などを調整するために、上記エポキシ樹脂用硬化剤とともに、硬化促進剤を併用しても良い。
【0035】
上記硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤などが挙げられ、なかでも、硬化速度や硬化物の物性などの調整をするための反応系の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好適に用いられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0036】
上記イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールや、イソシアヌル酸で塩基性を保護した商品名「2MA−OK」(四国化成工業社製)などが挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0037】
酸無水物系硬化剤といえばイミダゾール系硬化促進剤などの硬化促進剤とを併用する場合は、酸無水物系硬化剤の添加量をエポキシ基に対して理論的に必要な当量以下とすることが好ましい。酸無水物系硬化剤の添加量が必要以上に過剰であると、硬化物から水分により塩素イオンが溶出しやすくなるおそれがある。また、アミン系硬化剤といえばイミダゾール系硬化促進剤等の硬化促進剤を併用する場合も、アミン系硬化剤の添加量をエポキシ基に対して理論的に必要な当量以下とすることが好ましい。アミン系硬化剤の添加量が必要以上に過剰であると、硬化物から水分により塩素イオンが溶出しやすくなるおそれがある。
【0038】
(酸化防止剤(c))
本発明で用いられる酸化防止剤(c)は絶縁材料中の活性酸素と反応し、失活させることで絶縁材料の酸化及び熱酸化を抑制し、かつ絶縁材料が接着している実装デバイス基板、電極及び半導体チップ等の酸化を防ぐことにより、高温放置下での接着性の低下を抑制する化合物である。
【0039】
本発明で用いられる酸化防止剤(c)としては、特に限定されるものではないが、代表的なものとしては、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、チオジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド〕、ベンゼンプロパン酸、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ、C7−C9側鎖アルキルエステル、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a、a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o―クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3−(5−tert―ブチル4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート〕、ヘキサメチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス〔(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル〕−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン2−イルアミノ)フェノール、ジエチル〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル〕メチル〕ホスフォネート等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、トリス〔2−〔〔2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサフォスフェフィン−6−イル〕オキシ〕エチル〕アミン、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス〔2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル〕エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)〔1,1−ビフェニル〕−4,4’−ジイルビスホスフォナイト等のリン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンの反応生成物等のラクトン系酸化防止剤等が挙げられる。これら酸化防止剤は1種のみが用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0040】
上記酸化防止剤としては、1次酸化防止剤であるフェノール系酸化防止剤と2次酸化防止剤であるリン系酸化防止剤とを併用することが好ましい。フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤とを併用することで(式1)の熱酸化劣化サイクルを抑止することができるためである。また、1次酸化防止剤であるフェノール系酸化防止剤と2次酸化防止剤であるリン系酸化防止剤及びラクトン系酸化防止剤を併用することが望ましい。ラクトン系酸化防止剤は、下記の(式1)の熱酸化劣化サイクルにおいて、更にアルキルラジカルを捕捉してラジカル発生点において熱酸化劣化サイクルを抑止するためである。
【0041】
【化1】

【0042】
上記酸化防止剤において、なかでも融点が65℃以上で、かつ20℃での蒸気圧が1.0×10−8Pa以下であるものが好ましい。融点が65℃未満、もしくは20℃での蒸気圧が1.0×10−8Pa以上であると、熱硬化過程もしくは高温放置状態において酸化防止剤自体が揮発して絶縁材料の酸化及び熱酸化を抑制し、かつ高温放置下での接着性低下を抑制する酸化防止剤の効果が不十分なものとなるおそれがある。
【0043】
上記酸化防止剤は、絶縁材料組成物総重量中、0.01重量%以上配合するのが好ましい。0.01重量%未満の場合には、半導体チップなどの電子部品素子が装着された基板の電子部品素子周囲への接着力向上効果及び高温放置後の接着力低下抑制作用、並びにクラック抑制効果が不十分なものとなるおそれがある。また、酸化防止剤の配合割合は、絶縁材料組成物総重量中1.0重量%以下であることが望ましい。1.0重量%を超えると、酸化防止効果はそれ以上高まらず、低分子量分として外部を汚染するおそれがある。より好ましくは、酸化防止剤(c)は、絶縁材料組成物中0.1〜0.5重量%の割合で配合することが望ましい。
【0044】
(ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)(d))
本発明で用いられるHALS(d)は絶縁材料中に材料の劣化により発生したフリーラジカルと反応し、失活させることで絶縁材料の劣化を促進させる反応を抑制するものである。
【0045】
本発明で用いられるHALS(d)としては、特に限定されるものではないが、代表的なものとしては、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’―ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等が挙げられる。HALS(d)は1種のみが用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0046】
特に、上記HALS(d)は、上記酸化防止剤(c)との併用が好ましい。併用することにより、熱酸化劣化サイクル前述した(式1)において、発生したフリーラジカルの捕捉と酸化反応の両方を抑制することで、熱酸化劣化抑制効果がより向上するためである。また更に、併用する酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤のような1次酸化防止剤でとリン系酸化防止剤のような2次酸化防止剤とを併用することが好ましい。フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤とを併用することにより、(式1)の熱酸化劣化サイクルにおける抑制ポイントが増加し、熱酸化劣化抑制効果が向上する。また更に、併用する酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤のような1次酸化防止剤でとリン系酸化防止剤のような2次酸化防止剤と、ラクトン系酸化防止剤を併用することが好ましい。
【0047】
上記HALSにおいて、なかでも融点が65℃以上で、かつ20℃での蒸気圧が1.0×10−8Pa以下であるものが好ましい。融点が65℃未満、もしくは20℃での蒸気圧が1.0×10−8Pa以上であると、熱硬化過程もしくは高温放置状態においてHALS自体が揮発して絶縁材料の熱酸化劣化を抑制しするHALS(d)の添加の効果が不十分なものとなるおそれがある。
【0048】
上記HALS(d)は、絶縁材料組成物総重量に対して、0.01重量%以上配合するのが好ましい。0.01重量%未満の場合には、絶縁材料硬化物の高温放置後のクラック抑制効果が不十分となりがちとなる。また、上記HALS(d)の配合割合は、絶縁材料組成物中1.0重量%以下であることが望ましい。1.0重量%を超えると、それ以上HALS(d)の添加による絶縁材料の劣化を抑制する効果が得られ難く、他方、低分子量分として外部を汚染することがある。より好ましくは、HALS(d)は、絶縁材料組成物中、0.1〜0.75重量%の割合で配合される。
【0049】
(無機フィラー(e))
本発明で用いられる無機フィラー(e)としては、特に限定されるものではないが、シリカ、アルミナ、窒化珪素、ハイドロタルサイト、カオリンなどが挙げられる。これら無機フィラーは単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0050】
上記無機フィラーのなかでも、平均粒子径2〜15μmの球状シリカ、球状アルミナ、球状窒化珪素、球状珪酸アルミが好適に用いられる。2μm未満であると後述のように高充填することが困難になることがあり、15μmを超えるとろ過メッシュを通らないことがある。
【0051】
これら球状無機フィラーは、絶縁材料総重量に対して、50重量%以上、85重量%未満配合するのが好ましい。50重量%未満では、無機フィラーによる線膨張低下の効果が十分ではなく、冷熱サイクル性及び高温放置性といった耐熱性が不十分となりがちとなり、一方、85重量%以上では、絶縁材料硬化物の半導体チップの装着された基板の半導体チップの周囲への接着力が著しく低下するおそれがある。
【0052】
また、絶縁材料からなる層に孔を形成する工程を有する製造工程に用いる場合には、上記無機フィラー(e)の平均粒子径は、更に好ましくは2〜6μmである。無機フィラーの平均粒子径が6μmを超えると、所望の形状の孔を形成することが困難となる場合がある。
【0053】
また、上記平均粒子径が2〜6μmの場合、最小粒子径が1.5μm、最小粒子径が10μmであることが好ましい。最小粒子径が1.5μm未満の場合、粒子の高充填が困難となることがあり、最大粒子径が10μmを超える場合、所望の形状の孔を形成することが困難と成る場合がある。
【0054】
(層状珪酸塩(e1))
上記無機フィラーとしては、モンモリロナイト、膨潤性マイカ及びヘクトライト等の層状珪酸塩を用いてもよい。これら層状珪酸塩は、上記無機フィラーに比べ、少量添加で線膨張係数低下による冷熱サイクル性及び高温放置性といった耐熱性が向上することから、絶縁材料硬化物の半導体チップの装着された基板の半導体チップの周囲への接着力低下や、半導体デバイスへ絶縁材料硬化物を被覆する際のハンドリング性低下といった無機フィラーの問題点をカバーし、広い樹脂設計を可能にすることができる。
【0055】
上記無機フィラーとして層状珪酸塩を用いる場合は、絶縁材料総重量に対して0.5重量%以上、40重量%未満配合するのが好ましい。0.5重量%未満では、層状珪酸塩による線膨張低下の効果が十分ではなく、冷熱サイクル性及び高温放置性といった耐熱性が不十分となりがちとなり、一方、40重量%を超えると、上記無機フィラーに比べ、少量添加で線膨張係数が低下する効果が低減しがちとなる。
【0056】
上記層状珪酸塩の形状としては特に限定されるものではないが、平均長さの好ましい下限は0.01μm、上限は3μm、厚さの好ましい下限は0.001μm、上限は1μm、アスペクト比の好ましい下限は20、上限は500であり、平均長さのより好ましい下限は20、上限は0.05μm、上限は2μm、厚さのより好ましい下限は0.01μm、上限は0.5μm、アスペクト比のより好ましい下限は50、上限は200である。
【0057】
上記層状珪酸塩の層間に存在する交換性金属カチオンとは、層状珪酸塩の結晶表面上に存在するナトリウムやカルシウム等の金属イオンのことであり、これらの金属イオンは、カチオン性物質とのカチオン交換性を有するため、カチオン性を有する種々の物質を上記層状珪酸塩の結晶層間に挿入(インターカレート)することができる。
【0058】
上記層状珪酸塩とは、層間に交換性金属カチオンを有するケイ酸塩鉱物を意味する。上記層状珪酸塩とは、層間に交換性金属カチオンを有する珪酸塩鉱物を意味する。上記層状珪酸塩としては特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘度鉱物や、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ等が挙げられる。なかでもモンモリロナイト及び/又は膨潤性マイカ及び/又はヘクトライトが好適に用いられる。上記層状珪酸塩は、天然ものであっても良いし、合成物であっても良い。又、これらの層状珪酸塩は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0059】
上記層状珪酸塩の結晶層間に挿入するカチオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリメチルアルキルアンモニウム塩、トリエチルアルキルアンモニウム塩、トリブチルアルキルアンモニウム塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩、ジブチルジアルキルアンモニウム塩、メチルベンジルジアルキルアンモニウム塩、ジベンジルジアルキルアンモニウム塩、トリアルキルメチルアンモニウム塩、トリアルキルエチルアンモニウム塩、トリアルキルブチルアンモニウム塩、芳香環を有する4級アンモニウム塩、トリメチルフェニルアンモニウム等の芳香族アミン由来の4級アンモニウム塩、ポリエチレングリコール鎖を2つ有するジアルキル4級アンモニウム塩、ポリプロピレングリコール鎖を二つ有するジアルキル4級アンモニウム塩、ポリエチレングリコール鎖を一つ有するトリアルキル4級アンモニウム塩、ポリプロピレングリコール鎖を一つ有するトリアルキル4級アンモニウム塩が挙げられる。この中でも特にラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂ジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジベンジルアンモニウム塩、N−ジメチルアンモニウム塩などが好適である。これらの4級アンモニウム塩は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0060】
上記4級ホスホニウム塩としては特に限定されるものではないが、例えば、トデシルトリフェニルホスホニウム塩、メチルトリフェニルホスホニウム塩、ラウリルトリメチルホスホニウム塩、ステアリルトリメチルホスホニウム塩、トリオクチルホスホニウム塩、トリオクチルメチルホスホニウム塩、ジステアリルジメチルホスホニウム塩、ジステアリルジベンジルホスホニウム塩等が挙げられる。これらの4級ホスホニウム塩は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0061】
(ゴム微粒子(f))
本発明で用いられるゴム微粒子(f)は、特に限定されるものではないが、例えば、アクリルゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴムなどが挙げられる。これらゴム微粒子は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0062】
本発明で用いられるゴム微粒子(f)は、特に限定されるものではないが、上記ゴム微粒子をコア(芯材)として用いる2層以上の複層構造からなるコアシェル構造の粒子が好適に用いられる。3層以上の複層構造からなるコアシェル構造の粒子である場合、シェルは最外殻を意味する。
【0063】
上記コアシェル構造ゴム微粒子のシェルは、エポキシ樹脂中のエポキシ基と反応する官能基を有していても良い。エポキシ基と反応する官能基としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等が挙げられ、なかでも、常温ではエポキシ基と反応せず、絶縁材料組成物の濡れ性の低下や貯蔵安定性の低下を来たさないことから、水酸基やエポキシ基が好適に用いられる。これらのエポキシ基と反応する官能基は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0064】
上記ゴム微粒子は、特に限定されるものではないが、平均粒子径が30μm以下であることが好ましい。ゴム微粒子の平均粒子径が30μmを超えると、絶縁材料硬化物の応力緩和性が十分に発現しないことがある。
【0065】
上記ゴム微粒子(f)の配合割合については、特に限定されないが、好ましくは、前記絶縁材料組成物中2〜40重量%とすることが望ましく、より好ましくは5〜20重量%とされる。ゴム微粒子の配合割合は、2重量%未満の場合には、絶縁材料の硬化物における応力緩和性が十分に発現しないことがあり、40重量%を超えると、接着性が低下することがある。
【0066】
また、上記ゴム微粒子(f)としては、好ましくは、シラノール骨格を主骨格として、シリル基に有機置換基を有する化合物(f1)またはフッ素化合物(f2)が用いられる。
【0067】
(シラノール結合を主骨格とし、シリル基に有機置換基を有する化合物(f1))
シラノール結合を主骨格とし、シリル基に有機置換基を有する化合物(f1)は、特に限定はされるものではないが、なかでもポリメチルシルセスキオキサン、メチルシリコーンが好適に用いられる。また、特に限定されるものではないが、これらゴム微粒子をコア(芯材)として用いる2層以上の複層構造からなるコアシェル構造の粒子がより好適に用いられる。3層以上の複層構造からなるコアシェル構造の粒子である場合、シェルは最外殻を意味する。
【0068】
上記コアシェル構造ゴム微粒子のシェルは、エポキシ樹脂中のエポキシ基と反応する官能基を有していても良い。エポキシ基と反応する官能基としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等が挙げられ、なかでも、常温ではエポキシ基と反応せず、絶縁材料組成物の濡れ性の低下や貯蔵安定性の低下をいたさないこと、また、上記ゴム微粒子(f1)の絶縁材料組成物中での分散性向上による応力緩和性発現、耐冷熱サイクル性及び耐高温放置性といった耐熱性向上のため、水酸基やエポキシ基が好適に用いられる。これらのエポキシ基と反応する官能基は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0069】
(フッ素化合物(f2))
フッ素化合物(f2)は、特に限定はされるものではないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、エチルテトラフルオロエチレン、ポリクロロテトラフルオロエチレン、ポリビニルフルオレン、ポリフルオロアクリレート、ポリフルオロアセテートポリビニルヂフルオレン等が挙げられる。また、特に限定されるものではないが、これらゴム微粒子をコア(芯材)として用いる2層以上の複層構造からなるコアシェル構造の粒子が好適に用いられる。3層以上の複層構造からなるコアシェル構造の粒子である場合、シェルは最外殻を意味する。
【0070】
上記コアシェル構造ゴム微粒子のシェルは、エポキシ樹脂中のエポキシ基と反応する官能基を有していても良い。エポキシ基と反応する官能基としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等が挙げられ、なかでも、常温ではエポキシ基と反応せず、絶縁材料組成物の濡れ性の低下や貯蔵安定性の低下を来たさないこと、また、上記ゴム微粒子(f1)の絶縁材料組成物中での分散性向上による応力緩和性発現、冷熱サイクル性及び高温放置性といった耐熱性向上のため、水酸基やエポキシ基が好適に用いられる。これらのエポキシ基と反応する官能基は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0071】
(無機原子との間で錯体構造を形成する官能基を有する硬化性化合物(g))
本発明で用いられる硬化性化合物(g)は電極及び電子部品素子を構成する無機原子との間で錯体構造を形成する配位子構造を有する硬化性化合物である。
【0072】
上記無機原子との間で錯体構造を形成する官能基を有する硬化性化合物(g)としては特に限定はされないが、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有し、かつ末端及び/又は側鎖(ペンダント位)及び/又は主鎖構造中に電極及び電子部品素子を構成する無機原子との間で錯体構造を形成する配位子構造を有するものであることが好ましい。
【0073】
電極及び電子部品素子を構成する無機原子との間で錯体構造を形成する配位子構造としては特に限定されるものではないが、例えば、アセチルアセトン構造、サリチルアルデヒド構造、フェニルアセチルアセトン構造、ビスアセチルアセトン構造、ビピリジン構造、ビスビピリジン構造、エタノールアミン構造、ビスグリシン構造、L−アラニン構造、ビスL−アラニン構造、L−セリン構造、ビスL−セリン構造、L−プロリン構造、ビスL−プロリン構造、トリスグリシン構造、トリスL−アラニン構造、トリスL−プロリン構造、ビスアセチルアセトンイミナート構造、サリシリデングリシルグリシナド構造、エチレンジアミン構造、フェナントロリン構造、トリスフェナントロリン構造、6−メチルピコリルアミン構造、ジメチルグリオキシム構造、ジエチルエチレンジアミン構造、ペンテン構造、ビス(2−アミノエチル)−マロン酸アミダト構造、プロピレンジアミン構造、ビスエチレンジアミン構造、ジケトン構造、ベンゼン−1,2,3−トリオール構造、燐酸構造等が挙げられる。また、上記硬化性化合物(g)は、 エポキシ樹脂の分子構造にウレタン結合を導入した構造と上記の配位子構造とを同時に有する化合物であってもよい。そのような化合物としては特に限定はされないが、例えば、旭電化工業製の「EPU‐78−11」等が挙げられる。これらの電極及び電子部品素子を構成する無機原子との間で錯体構造を形成する配位子構造を有する化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用して用いられても良い。
【0074】
上記電極及び電子部品素子を構成する無機原子との間で錯体構造を形成する配位子構造を有する化合物は、絶縁材料組成物総重量に対して、5重量%以上配合するのが好ましい。5重量%未満の場合には、絶縁材料硬化物の半導体チップの装着された基板の半導体チップの周囲への接着力向上並びに高温放置後の接着力低下抑制及びクラック抑制効果が不十分なものとなりがちとなる。
【0075】
(その他添加剤)
本発明の絶縁材料用硬化性組成物には、必要に応じて、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が含有されていても良い。上記熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、スチレン系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ケトン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0076】
上記熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂などのアミノ系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、熱硬化性ウレタン系樹脂、上記ペンタジエン型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂以外のエポキシ系樹脂、熱硬化性ポリイミド系樹脂、アミノアルキド系樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。また、上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、それぞれ単独で用いられても良いし、両者が併用されても良い。
【0077】
上記熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のなかでも、スーパーエンプラと呼ばれる耐熱性樹脂群が含有されているとより好ましい。スーパーエンプラとしては、特に限定されるものではないが,例えば,ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン等の熱可塑性樹脂、熱可塑性及ポリイミド、熱硬化性ポリイミド、ベンゾオキサジン、BPOとベンゾオキサジンの反応物などが挙げられる。これら熱可塑性又は熱硬化性樹脂は、単独で用いられても良いし,2種類以上が併用されても良い。これらスーパーエンプラと呼ばれる耐熱性樹脂が含有されることで、絶縁材料硬化物の高温放置性能が向上する。
【0078】
本発明の絶縁材料用硬化性組成物には、必要に応じて、接着性付与剤、チキソ性付与剤、分散剤、難燃剤が含有されていても良い。接着性付与剤としては、特に限定されるものではないが、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、ケチミンシランカップリング剤、イミダゾールシランカップリング剤、カチオン系シランカップリング剤等が挙げられる。また、チキソ性付与剤としては、特に限定されるものではないが、ポリアマイド樹脂、脂肪酸アマイド樹脂、ポリアミド樹脂、フタル酸ジオクチル樹脂などがあげられる。分散剤としては、脂肪酸せっけん、アルキルサルフェート、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、等のアニオン性分散剤、デシルアミン酢酸塩、トリメチルアンモニウムクロライド、ジメチル(ベンジル)アンモニウムクロライド等のカチオン性分散剤、ポリエチレングリコールエーテル、ポリエチレングリコールエステル、ソルビタンエステル、ソルビタンエステルエーテル、モノグリセライド、ポリグリセリンアルキルエステル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルポリエーテルアミン、アミンオキサイド、エチレングリコールジステアレート等のノニオン性分散剤等が挙げられる。
【0079】
難燃剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドーソナイト、アルミン酸化カルシウム、2水和石こう、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物、赤りんやポリリン酸アンモニウムなどのリン系化合物、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、リン酸メラミン及びこれらに表面処理が施されたもののようなメラミン誘導体などの窒素系化合物、ハイドロタルサイトなどの層状複水和物などが挙げられる。中でも金属水酸化物及びメラミン誘導体が好適に用いられる。
【0080】
(絶縁材料)
本発明の絶縁材料用硬化性組成物を用いて、絶縁材料を得ることができる。
【0081】
このような絶縁材料もまた、本発明の一つである。
【0082】
本発明の絶縁材料の態様としては特に限定はされないが、上述の絶縁材料硬化性組成物をそのまま絶縁材料として用いてもよく、上記硬化性組成物をシート状に加工して絶縁シートしたものであってもよい。後述する半導体装置の製造に用いる場合には、シート状に加工した絶縁材料を用いることが好ましい。
【0083】
上記絶縁材料用硬化性組成物をシート状に加工する方法としては特に限定はされないが、例えば、溶剤キャスト法、押し出し成膜等の方法が好適である。
【0084】
上記シートの膜厚としては特に限定はされないが、好ましい下限は100μm、好ましい上限は300μmである。100μm未満では絶縁性が低下することがあり、300μmを超えると電極間の導通プロセスが煩雑になることがある。より好ましい下限は120μm、より好ましい上限は200μmである。
【0085】
(絶縁材料用硬化性組成物の用途)
本発明に係る絶縁材料は、電子部品装置用の絶縁材料であり、このような電子部品装置としては、前述した半導体装置が挙げられる。すなわち、基板上に半導体チップが実装されている半導体装置に本発明を好適に用いることができる。この場合、半導体チップは基板上に面実装されているものであることが硬化を進める上で好ましいが、ボンディングワイヤーにより半導体チップが基板に実装されている半導体装置にも本発明の絶縁材料用硬化性組成物を用いることができる。さらに、本発明の絶縁材料用硬化性組成物は、半導体チップ以外の電子部品素子が、基板上に搭載されている電子部品装置にも用いることができる。
【0086】
(電子部品装置の製造方法)
本発明の電子部品装置の製造方法では、上述した本発明の絶縁材料を用いることを特徴とする。この場合、半導体チップなどの電子部品素子が実装された基板の電子部品素子の周囲の少なくとも一部を上記絶縁材料で被覆し、次に硬化させて絶縁層を形成する。上記被覆は、上記絶縁材料が組成物状の場合はスクリーン印刷などの印刷法などの適宜の方法を用いて行うことができる。上記絶縁材料は、シート状に形成されたものであることが好ましく、この場合上記被複は例えば真空ラミネーター等を用いて行うことができる。
【0087】
また、被覆後の絶縁材料用硬化性組成物の硬化については、加熱あるいは光の照射による硬化などの適宜の硬化方法を用いて行うことができる。
【0088】
次に、絶縁層に高密度エネルギー線を照射することにより、配線用の孔を形成する。そして、この孔に配線材料として金属材料を充填する。しかる後、絶縁層の表面に、上記配線材料と電気的に接続される配線パターンを形成する。この配線パターンについても、配線材料と同様に、適宜の金属材料を用いることができる。
【0089】
図1に、本発明に従って製造される電子部品装置の一例としての半導体装置を略図的正面断面図で示す。
【0090】
図1に示す半導体装置1は、基板2を有し、基板2上に半導体チップ3が実装されている。半導体チップ3の少なくとも一部を覆うように、本発明の絶縁材料用硬化性組成物により構成された絶縁層4が設けられている。そして絶縁層4に、上述した方法に従って、孔4a,4bが形成されている。孔4a,4bに配線材料5a,5bが充填され、かつ配線材料5a,5bに電気的に接続されるように、絶縁層4の表面に配線パターン6が形成されている。
【0091】
なお、半導体チップ3に代えて、他の電子部品素子を用いた場合には、半導体装置以外の電子部品装置を提供することができる。
【0092】
上記半導体装置1では、絶縁層4が、本発明の絶縁材料用硬化性組成物の硬化物で形成されているので、前述した通り、耐高温放置性及び耐冷熱サイクル性に優れており、従って、半導体装置1の耐熱性を効果的に高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0093】
第1の発明は、電子部品装置用の絶縁材料用硬化性組成物であって、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、かつ少なくとも主鎖の一部に多環式水素骨格を有する硬化性化合物(a)と、エポキシ樹脂用硬化剤(b)と、上記酸化防止剤(c)及び/またはヒンダードアミン系光安定剤(d)と、無機フィラー(e)とを含有しているため、第2の発明では、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、かつ少なくとも主鎖の一部に多環式水素骨格を有する硬化性化合物(a)と、エポキシ樹脂用硬化剤(b)と、酸化防止剤(c)及び/またはヒンダードアミン系光安定剤(d)と、ゴム微粒子(f)とを含有しているため、いずれにおいても、絶縁材料用硬化性組成物の硬化物が、耐高温放置性及び耐冷熱サイクル性に優れている。すなわち、高温に放置されたり、冷熱サイクルが加えられたとしても、硬化物の劣化が生じ難く、クラックの形成が小さく、クラックも生じ難い。加えて、このような優れた耐熱性を発現するだけでなく、金属などに対する接合強度も十分な大きさとされ得る。従って、該絶縁材料用硬化性組成物の硬化物により電子部品装置の絶縁層などを形成することにより、半導体装置などの電子部品装置の耐熱性及び信頼性を効果的に高めることが可能となる。
【0094】
本発明に係る電子部品装置の製造方法では、上記本発明の絶縁材料用硬化性組成物を用いて基板に実装された電子部品素子の少なくとも一部を被覆し、硬化させて絶縁層を形成し、該絶縁層に高エネルギー線を照射し、絶縁層に配線用の孔を形成し、孔に配線材料を充填し、さらに絶縁層表面に配線パターンを形成する各工程を備えるため、本発明に従って、耐熱性に優れた絶縁層が設けられた電子部品装置を提供すくことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0095】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0096】
以下の実施例及び比較例においては、以下の原材料を用いた。
【0097】
硬化性化合物(a)
(1)ジシクロペンタジエン型固形エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、商品名:EXA−7200HH)
(2)キサンテン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、商品名EXA−7336)
(3)3官能型ビフェノール型エポキシ樹脂(商品名「YL6677」、ジャパンエポキシレジン社製)
(4)ナフタレン型液状エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、商品名:HP−4032D)
(5)ジナフタレン骨格エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、商品名:HP−4700)
(6)エポキシ基含有アクリル樹脂(日本油脂社製、商品名:マープルーフG−2050M)
(7)CTBN変性エポキシ液状樹脂(旭電化工業社製、商品名:EPR4023)
硬化性化合物(g):ジケトン含有エポキシ樹脂(旭電化工業社製、商品名:EP49)
【0098】
エポキシ樹脂用硬化剤(b)
(1)酸無水物硬化剤(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:YH−307)
(2)フェノール系硬化剤(住友化学社製、商品名:EP415)
イソシアヌル変性固体分散型イミダゾール(四国化成社製、商品名:2MAOK−PW)
【0099】
酸化防止剤(c)
(1)フェノール系酸化防止剤(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名:イルガノックスQ1010)
(2)リン系酸化防止剤(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名:イルガフォス168)
(3)ラクトン系酸化防止剤(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名:HP−136)
【0100】
HALS(d)
(1)N−OR型HALS(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名:TINUVIN XT855)
(2)高分子量HALS(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名:TINUVIN 622)
【0101】
無機フィラー(e)
(1)表面疎水化ヒュームドシリカ(トクヤマ社製、商品名:MT−10、平均粒径15nm)
(2)球状シリカ(トクヤマ社製、商品名:SE−15、平均粒径15μm)
(3)層状珪酸塩(コープケミカル社製、商品名:STN65meq−w1)
(4)窒化珪素(デンカ社製、商品名:SN−7、平均粒径44μm)
(5)アルミナ(デンカ社製、商品名:DAM−10、平均粒径10μm)
【0102】
ゴム微粒子(f)
(1)コアシェル型ゴム微粒子(f)(三菱レーヨン社製、商品名:KW4426、メチルメタクリレートからなるシェルと、ブチルアクリレートからなるコアとを有するゴム微粒子、平均粒径5μm)
(2)シリコンゴム微粒子(f1)(東レ・ダウコーニング社製、商品名:トレフィルE601、平均粒径2μm)
(3)フッ素ゴム微粒子(f2)(ダイキン工業社製、商品名:ルブロンL20、平均粒径2μm)
【0103】
添加剤
(1)熱硬化性ポリイミド(丸善石油化学社製、商品名:BANI−XL)
(2)ポリエーテルサルホン(住友化学社製、商品名:エクセル)
(3)エポキシシランカップリング剤(信越化学社製、商品名:KBM303)
【0104】
溶剤
(1)メチルエチルケトン
(2)ジメチルホルムアミド
(3)トルエン
【0105】
(実施例1)
ホモディスパー型攪拌機を用い、下記の表1に示すように、ナフタレン型液状エポキシ樹脂45重量部と、エポキシ含有アクリル樹脂45重量部と、CTBN変成液状エポキシ樹脂10重量部と、エポキシ硬化剤として酸無水物硬化剤35重量部及びイソシアヌル変成固体分散型イミダゾール5重量部と、酸化防止剤(c)として、ヘネオル系酸化防止剤0.25重量部と、HALS(d)としてN−OR型HALSを0.25重量部と、無機フィラーとして表面疎水化ヒュームドシリカ4重量部と窒化珪素400重量部とをエポキシシランカップリング剤2重量部とを配合し、溶剤としてのメチルエチルケトン130重量部と共に均一に混練し、絶縁材料用硬化性組成物を調製した。
【0106】
上記絶縁材料用硬化性組成物を50μm離形PETシートに80μm厚に塗工し、70℃オーブンにて1時間乾燥したシート2枚を40℃熱ラミネーターで貼り合せ、160μm厚のシート状の絶縁材料を作製した。
【0107】
(実施例2〜27及び比較例1〜8)
絶縁材料用硬化性組成物の配合量を下記の表1〜表3に示すようにしたこと以外は、実施例1と同様にして絶縁材料用硬化性組成物を調製した。
【0108】
(実施例及び比較例の評価)
上記のようにして得られた各絶縁材料用硬化性組成物を以下の要領で硬化し、(1)初期接着力、(2)高温放置試験後のクラックの有無、(3)高温放置試験後の接着力、(4)線膨張係数(CTE/ppm)、及び(5)冷熱サイクル試験後のクラックの発生状況について評価した。結果を下記の表1〜3に示す。
【0109】
(1.初期接着力)
1mm×30mm×100mm角銅板の先端に30mm×50mm角に切り取ったシート状の絶縁材料を貼り、離形PETフィルムを剥離した上からシート状の絶縁材料の先端とは反対側の縁に合わせてシートを挟むかたちで同サイズの銅板を重ね、200℃オーブンで1時間加熱硬化して、2枚の銅板のシートとは反対側の先端に治具を取り付け、5mm/分の引張速度で上下に引っ張り、最大破断強度(N/25mm)を求めて、初期接着力とした。本発明における絶縁材料の初期接着力としては、400N/25mm以上が好ましい。
【0110】
(2.高温放置試験後クラック発生)
銅基板の上にシリコンチップを半田付けした上から基板全体にシート状の絶縁材料を真空ラミネーター(MVLP−500、メイキ製作所製)にて40℃の条件下でラミネートし、200℃オーブンで1時間加熱硬化して作製したテストサンプルを200℃オーブンに500時間放置し、硬化物表面のクラック有無を光学顕微鏡(TRANSFORMER−XN、Nikon社製)にて観察し、同サンプル10検体中のクラック発生したテストサンプルの数を数えた。本発明における絶縁材料のクッラク発生検数としては、10検体中2検体以下が好ましい。
【0111】
実施例1〜27では、クラックの発生は皆無であった。
【0112】
(3.高温放置試験後接着力)
銅基板の上にシリコンチップを半田付けした上から基板全体をシート状の絶縁材料を真空ラミネーター(MVLP−500、メイキ製作所製)にて40℃の条件下でラミネートし、200℃オーブンで1時間加熱硬化して作製したテストサンプルを200℃オーブンに500時間放置した後、初期接着力と同様の方法で接着力を測定した。本発明における絶縁材料の高温放置試験後接着力としては、350N/25mm以上が好ましく、初期接着力からの高温放置試験後接着力の変化量としては、100N/25mm未満が好ましく、より好ましくは50N/25mm未満が好ましい。
【0113】
(4.線膨張係数)
シート状絶縁材料を3mm×25mm角に切り出したものを200℃オーブンで1時間硬化して作製したテストサンプルをTMA装置(TMA/SS6000、セイコーインストロメント社製)にて10℃毎分で320℃まで1回昇温したのち−45℃から130℃まで10℃毎分で昇温した時の温度―TMA直線の傾きを測定し、その逆数を線膨張係数として算出した。本発明における絶縁材料の線膨張係数としては、40ppm以下が好ましく、より好ましくは30ppm以下が好ましい。
【0114】
(5.冷熱サイクル試験後クラック発生)
銅基板の上にシリコンチップを半田付けした上から基板全体をシート状の絶縁材料を真空ラミネーター(MVLP−500、メイキ製作所製)にて40℃の条件下でラミネートし、200℃オーブンで1時間加熱硬化して作製したテストサンプルを1チャンバー式冷熱サイクル試験機(WINTECH NT510、ETACH社製)にて−40℃、20分及び125℃20分を1サイクルとして50サイクル行い、硬化物表面のクラック有無を光学顕微鏡(TRANSFORMER−XN、Nikon社製)にて観察して同サンプル10検体中のクラック発生したテストサンプルの数を数えた。本発明における絶縁材料のクラック発生検数としては、10検体中、2検体以下が好ましい。
【0115】
実施例1〜27では、クラックが発生したサンプルは皆無であった。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の電子部品装置の一実施形態としての半導体装置を説明するための略図的正面断面図。
【符号の説明】
【0120】
1…半導体装置
2…基板
3…半導体チップ
4…絶縁層
4a,4b…孔
5a,5b…配線材料
6…配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品装置用の絶縁材料用の硬化性組成物であって、
1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、かつ少なくとも主鎖の一部に多環式炭化水素骨格を有する硬化性化合物(a)と、
エポキシ樹脂用硬化剤(b)と、
酸化防止剤(c)及び/またはヒンダードアミン系光安定剤(HALS)(d)と、
無機フィラー(e)とを含有してなることを特徴とする絶縁材料用硬化性組成物。
【請求項2】
電子部品装置用の絶縁材料用の硬化性組成物であって、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、かつ少なくとも主鎖の一部に多環式炭化水素骨格を有する硬化性化合物(a)と、
エポキシ樹脂用硬化剤(b)と、
酸化防止剤(c)及び/またはヒンダードアミン系光安定剤(HALS)(d)と、
ゴム微粒子(f)とを含有してなることを特徴とする絶縁材料用硬化性組成物。
【請求項3】
前記無機フィラー(e)が、層状珪酸塩(e1)であることを特徴とする、請求項1に記載の絶縁材料用硬化性組成物。
【請求項4】
前記ゴム微粒子(f)が、シラノール結合を主骨格とし、シリル基に有機置換基を有する化合物(f1)またはフッ素化合物(f2)である、請求項2に記載の絶縁材料用硬化性組成物。
【請求項5】
前記電子部品装置において電子部品素子または電極を構成している無機原子との間で錯体構造を形成する配位子を有する化合物(g)をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁材料用硬化性組成物。
【請求項6】
前記電子部品素子が半導体チップであり、前記電子部品装置が半導体装置であり、半導体装置用の絶縁材料用硬化性組成物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の絶縁材料用硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の絶縁材料用硬化性組成物を用いてなることを特徴とする絶縁材料。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の絶縁材料用硬化性組成物を用いて電子部品装置を製造する方法であって、電子部品素子が実装された基板の電子部品素子の周囲の少なくとも一部を前記絶縁材料で被覆して絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層に高密度エネルギー線を照射し、前記絶縁層に配線用の孔を形成する工程と、
前記孔に配線材料を充填する工程と、
前記孔に充填された配線材料と電気的に接続される配線パターンを前記絶縁層の表面に形成する工程とを備えることを特徴とする、電子部品装置の製造方法。
【請求項9】
前記電子部品素子として半導体チップを用い、前記電子部品装置として半導体装置を製造することを特徴とする、請求項8に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の絶縁材料用硬化性組成物の硬化物からなる絶縁層を有する電子部品装置であって、
基板と、
前記基板上に実装された電子部品素子と、
前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の絶縁材料用硬化性組成物の硬化物により形成されており、前記電子部品素子の周囲の少なくとも一部を被覆するように設けられており、かつ表面に連なる孔が形成されている絶縁層と、
前記絶縁層の孔に充填された配線材料と、
前記絶縁層表面に形成されており、前記配線材料に電気的に接続されるように設けられた配線パターンとを備えることを特徴とする、電子部品装置。
【請求項11】
前記電子部品素子が半導体チップであり、前記電子部品装置として、半導体装置が形成されている、請求項10に記載の電子部品装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−182493(P2007−182493A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1260(P2006−1260)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】