説明

自走式作業ロボット

【課題】 いずれの方向から障害物に接触した場合にも適切、かつ、迅速に対応可能な自走式作業ロボットを提供する。
【解決手段】 床面を自走する走行アセンブリ1と、床に対する作業を行う作業アセンブリ2とを備えた自走式作業ロボットに関する。前記作業アセンブリ2の前面に障害物が接触したのを検知する第1の接触センサと、作業アセンブリ2の側面に障害物が接触したのを検知する第2の接触センサを設け、第1の接触センサの検知信号に基づいて、第1の退避速度で作業アセンブリ2を左右に移動させ、第2の接触センサの検知信号に基づいて第1の退避速度よりも低速の第2の退避速度で作業アセンブリ2を左右に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁際の床面等に対する作業に適した作業ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、接触センサを設け、障害物の接触を検出する自走式の作業ロボットが提案されている。
【特許文献1】特許第3201208号(図2)
【特許文献2】特開昭60−206759(図1)
【特許文献3】実開昭56−164602(図5)
【発明の開示】
【0003】
しかし、この種の従来の自走式作業ロボットは、障害物に接触した場合の回避動作において、適切、かつ、迅速に対応することができかった。そのため、走行速度が著しく遅かったり、壁際から離れすぎてしまうなどの欠点があった。
【0004】
したがって、本発明の目的は、いずれの方向から障害物に接触した場合にも適切、かつ、迅速に対応可能な自走式作業ロボットを提供することである。
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は、自走する作業ロボットであって、床面を自走するための車輪を有する走行アセンブリと、前記走行アセンブリに対し左右に移動可能に取り付けられ、前記床に対する作業を行う作業アセンブリと、前記走行アセンブリと前記作業アセンブリとの位置関係を変更すべく、前記作業アセンブリを前記走行アセンブリに対して移動させる移動機構と、前記作業アセンブリに設けられ、前記作業アセンブリの前面に障害物が接触したのを検知する第1の接触センサと、前記作業アセンブリに設けられ、前記作業アセンブリの側面に障害物が接触したのを検知する第2の接触センサと、前記走行アセンブリの走行を制御すると共に、前記第1の接触センサの検知信号に基づいて、第1の退避速度で前記作業アセンブリを左右に移動させるよう移動機構を制御し、前記第2の接触センサの検知信号に基づいて第1の退避速度よりも低速の第2の退避速度で前記作業アセンブリを左右に移動させるよう作業アセンブリ移動機構を制御する制御部とを備えている。
【0006】
自走式作業ロボットの前進中に、前方の障害物が作業アセンブリの前面に接触すると、第1の接触センサがこれを検知し、作業アセンブリが速い第1の退避速度で、障害物のない左右の一方に前記接触状態が解除されるまで退避する。したがって、作業ロボットの走行速度をある程度の速さで走行させることが可能となる。
なお、ここでいう、「前方」ないし「前面」は、作業ロボットの進行方向を基準にして定義付けられる。
【0007】
作業ロボットの前進中に、作業アセンブリが障害物の側面に接触すると、第2の接触センサがこれを検知し、作業アセンブリが低速の第2の退避速度で、障害物とは反対側の左右の一方に、当該接触状態が解除されるまで退避する。したがって、作業アセンブリが障害物に沿った状態で、ロボットが走行することが可能であるから、作業アセンブリが障害物である壁際から離れすぎてしまうという不都合が生じない。
【0008】
本発明において、前記制御部は、第1の接触センサによる接触検知の時間が所定の閾値よりも長い場合は、走行を停止させる機能を有するのが好ましい。
このようにすれば、障害物との接触による作業ロボットの破損や、障害物の損傷を防止することができる。
【0009】
本発明において、前記閾値は、走行速度が速い時には小さい値に設定され、走行速度が遅い場合には大きい値に設定されるのが好ましい。
このようにすれば、低速走行時の不要な停止を防止すると共に、高速走行時における本作業ロボットや障害物の損傷を防止することができる。
【0010】
本発明において、前記制御部は、第1の接触センサによる検知時間が所定の閾値を超えたことを検出して走行を停止させた場合、当該停止後、所定距離だけ後方へ移動させ、前記作業アセンブリを所定距離退避方向に移動させた後、前方への走行を再開するように、前記走行アセンブリと前記作業アセンブリ移動機構を制御するのが好ましい。
このようにすれば、作業アセンブリが障害物に接触したまま移動するのを防止できるから、作業アセンブリによって壁などの障害物が傷つくのを防止することができる。
【0011】
本発明において、前記制御部は、前記接触センサの検知信号に基づいた作業アセンブリの移動が行われた場合、前記両接触センサによる接触が検出されなくなった後に、前記走行アセンブリに対する作業アセンブリの相対位置を接触センサによる接触が検出される以前の位置に、第2の退避速度よりも低速の復帰速度で戻すように前記移動機構を制御するのが好ましい。
このようにすれば、作業アセンブリの復帰時において、障害物と作業アセンブリとの接触時の衝撃を少なくすることができる。
【0012】
本発明においては、前記作業アセンブリは平面視が概ね長方形に形成され、前記接触センサは前記作業アセンブリの周囲を覆うバンパと、前記バンパと一体に移動する被検出部と、前記被検出部を検出する検出スイッチとを備えるのが好ましい。
このようにすれば、バンパが作業アセンブリの周囲を覆っているので、該バンパと一体に移動する被検出部を検出することにより、障害物との接触を検出することができる。
【0013】
本発明においては、前記バンパは左右に分割されており、当該分割されたバンパごとに前記被検出部および検出スイッチが設けられ、前記左側のバンパは左方向にバネ力により付勢された状態で所定の左端の位置に位置決めされ、前記右側のバンパは右方向にバネ力により付勢された状態で所定の右端の位置に位置決めされているのが好ましい。
このようにすれば、バンパは、左右に分割され、バネ力により付勢された状態で左右端に、それぞれ位置決めされる。そのため、バンパを浮いた状態で支持する必要がなくなるから、該バンパが走行中などに左右に揺れるおそれがない。したがって、壁との接触を精度良く検知することができる。
【0014】
本発明においては、前記バンパは左右および前後に分割されており、当該分割されたバンパごとに前記被検出部および検出スイッチが設けられ、左前側のバンパは、左方向および前方向にバネ力により付勢された状態で所定の左端および前端の位置に位置決めされ、右前側のバンパは、右方向および前方向にバネ力により付勢された状態で所定の右端および前端の位置に位置決めされ、左後側のバンパは、左方向および後方向にバネ力により付勢された状態で所定の左端および後端の位置に位置決めされ、右後側のバンパは、右方向および後方向にバネ力により付勢された状態で所定の右端および後端の位置に位置決めされているのが好ましい。
このようにバンパを前後および左右に4分割して設けることで、壁との接触を前後および左右において検出することができる。
【0015】
本発明においては、前記バンパは左右および前後に分割されており、当該分割されたバンパごとに前記被検出部および検出スイッチが設けられ、前記分割された各バンパは、当該各バンパが障害物に接触した際に内方へ退避可能なように外方に向ってバネ力により付勢された状態でストッパにより所定の位置に位置決めするのが好ましい。
このようにすれば、バンパが4分割され、かつ、各々、各バンパごとの支持部材がバネ力でストッパに接触していることにより、小さく分割されたバンパが安定して支持される。したがって、左右に長い作業部であっても、バンパに撓みが出るおそれがない。
【0016】
この場合、前記各バンパは、四隅のコーナ部では連続しており、かつ、各バンパ同士が前面、後面および2つの側面において互いに分割されているのが更に好ましい。
このように、四隅のコーナ部が連続していることにより、バンパの四隅が障害物に係合する(引っ掛かる)おそれがないので、スムースな走行を期待することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施例を図面に従って説明する。
以下の実施例では、本発明の自走式作業ロボットを、床上のゴミを吸い上げる自走式の清掃ロボットに適用した場合について例示して説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明にかかる自走式作業ロボットは、床面を自走する台車様の走行アセンブリ1と、床上のゴミを吸い上げる作業アセンブリ2とを備えている。作業アセンブリ2は、走行アセンブリ1の定常的な進行方向Fに対して、該走行アセンブリ1の後方に設けられている。
【0019】
走行アセンブリ1の上部には、吸引ユニット51が設けられている。吸引ユニット51には、ゴミ収容部(タンク)や、ブロアーモータ、フィルタなどが設けられている。吸引ユニット51と作業アセンブリ2とは、吸引ホース57を介して接続されている。作業アセンブリ2の下面には吸引口59が設けられており、本作業ロボットが走行しながら清掃作業を行うと、床のゴミが吸引口59から次々に吸い上げられて、床面の清掃が行われる。
【0020】
走行アセンブリ1:
図2に示すように、前記走行アセンブリ1は、該走行アセンブリ1の駆動を行うための1対の駆動輪6a,6bと、前記走行アセンブリ1の前部と後部の略中央に不図示の自在キャスターとを備えている。前記駆動輪6a,6bは、それぞれ、駆動モータ5a,5bによって駆動される。駆動モータ5a,5bは正逆回転可能で、制御手段8によって走行アセンブリ1の走行が制御される。
【0021】
直進走行時には、前記2つの駆動モータ5a,5bが同方向に回転することで、走行アセンブリ1は前進または後退することができる。一方、前記2つの駆動モータ5a,5bの回転の比率を制御することで、走行アセンブリ1はカーブ走行を行うこともできる。
【0022】
前記作業アセンブリ2には、作業アセンブリ2の本体20を走行アセンブリ1に取り付けるための取付板11が設けられている。一方、走行アセンブリ1の後方には、進行方向Fに略直交する左右方向Xにスライドレール14が設けられている。前記取付板11は、前記スライドレール14に取り付けられ、かつ、タイミングベルト12およびプーリー13を介してスライド駆動モーター15に接続されている。前記取付板11は、前記スライド駆動モーター15により前記スライドレール14に沿って左右にスライド移動される。したがって、取付板11、タイミングベルト12、プーリー13、スライドレール14およびスライド駆動モーター15は、作業アセンブリ2を走行アセンブリ1に対して左右に移動させる移動機構を構成している。
【0023】
本作業ロボットの走行中に、作業アセンブリ2を所定のタイミングで左右移動させるように制御することにより、図9や図10に示すように、作業アセンブリ2を壁Wに沿って移動させることが可能である。
【0024】
図2の前記走行アセンブリ1の前部には、複数の超音波式センサ3a〜3dと、複数の光学式センサ4a〜4cとが設けられている。これら複数のセンサのうち、2つの超音波センサ3a,3bは、走行アセンブリ1の左右にある障害物までの距離を測定する。一方、残りの超音波式センサ3c,3dおよび光学式センサ4a〜4cは、走行アセンブリ1の前方にある障害物までの距離を測定する。
【0025】
制御部:
図3に示すように、前記制御部8は、センサ信号入力手段40、走行車輪制御手段41、スライド制御手段42、走行用センサ制御手段43、ブロアモータ制御手段50およびマイコン(マイクロコンピュータ)44を備えている。
各手段40〜43,50は、それぞれ、図示しないインターフェイスを介してマイコン44に接続されている。マイコン44は、CPU46、RAM47、ROM48および計時を行うタイマ49を備えている。ROM48には、後述する退避速度A1〜A3や種々の閾値などが予め記憶されている。
【0026】
前記センサ信号入力手段40は、作業アセンブリ2に設けられた、たとえば光センサからなる検出スイッチ(接触センサの一部)SL1〜SL4,SR1〜SR4に接続されている。
前記走行車輪制御手段41は、図2の駆動モータ5a,5bの回転を制御し、走行アセンブリ1の走行の制御を行う。
前記スライド制御手段42は、スライド駆動モーター15の回転を制御し、作業アセンブリ2の移動機構の制御を行う。
前記走行用センサ制御手段43は、前記複数の超音波式センサ3a〜3dおよび光学式センサ4a〜4cの制御を行う。
【0027】
作業アセンブリ2:
図2に示すように、前記作業アセンブリ2は、平面視が長方形に形成されており、走行アセンブリ1の左右方向Xの幅よりも大きな幅に形成され、走行アセンブリ1の左右から突出している。作業アセンブリ2は、本体20と、該本体20の周囲を覆うバンパ21(L,R),22(L,R)を備えている。前記バンパ21,22は、左右および前後に分割されている。前記バンパ21,22は、本作業ロボットの進行方向Fに略直交する左右方向Xの中心に対して、鏡対象に設けられている。
【0028】
図1(および図4)に示すように、各バンパ21,22は、四隅のコーナ部では連続しており、かつ、各バンパ21,22同士が前面、後面および2つの側面において、互いに分割されている。後側のバンパ22L,22Rは、作業アセンブリ2の左右方向Xの概ね中心部分において分割されており、その分割部分は、互いに略平行、かつ、上下方向Zに対して斜めに形成されている。
【0029】
図4に示すように、バンパ21,22の前側のコーナ部および後側のコーナ部には、それぞれ第1および第2コロ25,26が設けられている。なお、図1では、コロ25,26を省略して描いている。
【0030】
前バー30F:
図5は、本作業ロボットの右側部分の作業アセンブリ2を示す平面断面図である。
図5に示すように、右前バンパ21Rは、該右前バンパ21Rに沿って左右方向Xに延びる前バー(被検出部)30Fに、ブラケット27を介して支持されている。前バー30Fは、第1および第2アーム31,32を介して作業アセンブリ本体20に取り付けられている。
【0031】
バンパ支持機構:
前バー30Fの左右の端部には、前記第1および第2アーム31,32が、それぞれ設けられている。第1および第2アーム31,32は、回動軸31o,32oを中心に、作業アセンブリ本体20に対して回動自在に取り付けられている。第1および第2アーム31,32には、長孔31a,32aが形成されており、前バー30Fの左右の端部には、前記長孔31a,32a内を摺動する摺動部30a,30aが形成されている。したがって、前バー30Fは、第1および第2アーム31,32を介して、作業アセンブリ本体20に対して前後、左右および斜め方向に移動可能に支持されている(図6(a)〜(c))。
【0032】
なお、右前バンパ21Rの左側の端部23は、後方に向って折り曲げられている。そのため、図6(a),(c)に示すように、右前バンパ21Rの前面や斜め前に障害物Wが接触すると、該端部23が作業アセンブリ本体20に接触し、該端部23を中心に右前バンパ21Rが回動する。
【0033】
位置決め機構:
図5に示すように、右側の第1アーム31の回動軸31oには、スプリング31sが巻回されている。前バー30Fは、スプリング31sのバネ力によって、矢印で示すように右側に向って付勢されている。
一方、作業アセンブリ本体20には、ストッパ35が固定されており、第1アーム31がストッパ35に接することで、前バー30Fが右端の所定の位置に位置決めされている。
【0034】
一方、作業アセンブリ本体20には、前バー30Fを進行方向Fに付勢するための第3アーム33が設けられている。第3アーム33は、回動軸33oを中心に作業アセンブリ本体20に対して回動自在に設けられている。第3アーム33の端部には、前バー30Fの後端部に接するローラ34が設けられている。前記回動軸33oに巻回されたスプリング33sのバネ力によって、ローラ34が前バー30Fの後端部を前方向Fに向って付勢している。
一方、前バー30Fは、前記摺動部30a,30aが、第1および第2アーム31,32の長孔31a,32aの前端部に接触することにより、進行方向Fの端部に位置決めされている。
【0035】
右第1および右第2検出スイッチSR1,SR2:
作業アセンブリ本体20には、前バー30Fの位置を検出するための右第1および右第2検出スイッチSR1,SR2が設けられている。右第1検出スイッチSR1は、前バー30Fの右側の後端部に対応する位置に設けられている。一方、右第2検出スイッチSR2は、前バー30Fの左端に対応する位置に設けられている。
【0036】
たとえば、図6(a)に示すように、前進時において、右前バンパ21Rの前面に障害物Wが当接した場合には、前バー30Fが右後方に移動し、該前バー30Fによって右第1検出スイッチSR1への光が遮断されて前バー30Fを検出する。したがって、右第1検出スイッチSR1(SL1)と前バー30Fとは、作業アセンブリ2の前面に障害物Wが接触したのを検知する第1の接触センサを構成している。
図6(b)に示すように、右前バンパ21Rの側面に第1コロ25を介して障害物Wが接触した場合には、前バー30Fが左側に移動し、前バー30Fによって第2スイッチSR2への光が遮断されて前バー30Fを検出する。したがって、右第2検出スイッチSR2(SL2)と前バー30Fとは、作業アセンブリ2の側面に障害物Wが接触したのを検知する第2の接触センサを構成している。
図6(c)に示すように、右前バンパ21Rの斜め前に第1コロ25を介して障害物Wが接触した場合には、前バー30Fが左斜め後に移動し、右第1および右第2検出スイッチSR1,SR2の双方が前バー30Fを検出する。
【0037】
図4に示すように、作業アセンブリ2の左側に設けられた左第1および左第2検出スイッチSL1,SL2は、それぞれ、前述の右第1および右第2検出スイッチSR1,SR2に対して、鏡対象の位置に設けられている。したがって、左右の第1および第2検出スイッチSR1,SR2,SL1,SL2の検出信号と、前進時における障害物の接触位置との関係は、以下のようになる。
SR1のみ:右前面に接触(図6(a))
SR2のみ:右側面に接触(図6(b))
SR1およびSR2:右斜め前に接触(図6(c))
SL1のみ:左前面に接触
SL2のみ:左側面に接触
SL1およびSL2:左斜め前に接触
【0038】
後バー30B:
図5に示すように、前記右後バンパ22Rは、該右後バンパ22Rに沿って左右方向Xに延びる後バー(被検出部)30Bが、ブラケット27を介して支持されている。後バー30Bの移動機構および位置決め機構は、前述の前バー30Fに対して、鏡対象に設けられており、その相当部分に同一符号を付してその説明を省略する。
このように、分割された各バンパ21(L,R),22(L,R)は、当該各バンパ21(L,R),22(L,R)が障害物Wに接触した際に、内方へ退避可能なように、外方に向ってバネ力により付勢された状態で、ストッパ35により所定の位置に位置決めされている。
【0039】
右第3および右第4検出スイッチSR3,SR4:
作業アセンブリ本体20には、後バー30Bの位置を検出する右第3および右第4検出スイッチSR3,SR4が設けられている。右第3検出スイッチSR3は、後バー30Bの右側の前端部に対応する位置に設けられている。一方、右第4検出スイッチSR4は、後バー30Bの左側の前端部に対応する位置に設けられている。
【0040】
たとえば、図7(a)に示すように、後退時において、後方の第2コロ26を介して右後バンパ22Rの右斜め後に障害物Wが接触した場合には、後バー30Bの右端が前方に移動し、右第3検出スイッチSR3が後バー30Bを検出する。
図7(b)に示すように、右後バンパ22Rの左側付近、すなわち作業アセンブリ2の中央部の右側付近に障害物Wが接触した場合には、後バー30Bの左端が前方に移動し、右第4検出スイッチSR4が後バー30Bを検出する。
図7(c)に示すように、右後バンパ22Rの中央部付近、すなわち、作業アセンブリ2の右側付近に障害物Wが接触した場合には、後バー30Bが前方に移動し、右第3および右第4検出スイッチSR3,SR4の双方が後バー30Bを検出する。
【0041】
作業アセンブリ本体20の左側に設けられた左第3および左第4検出スイッチSL3,SL4は、それぞれ、前述の右第3および右第4検出スイッチSR3,SR4に対して、鏡対象の位置に設けられている。したがって、左右の第3および第4検出スイッチSR3,SR4,SL3,SL4の検出信号と、後退時における障害物の接触位置との関係は、以下のようになる。
SR3のみ:右斜め後に接触(図7(a))
SR4のみ:作業アセンブリ2の中央部右に接触(図7(b))
SR3およびSR4:作業アセンブリ2の右側付近に接触(図7(c))
SL3のみ:左斜め後に接触
SL4のみ:作業アセンブリ2の中央部左に接触
SL3およびSL4:作業アセンブリ2の左側付近に接触
【0042】
回避動作:
以上説明したように、前記CPU46は、センサ信号入力手段40を介して検出スイッチSR1〜SR4,SL1〜SL4からの検出信号を受信することにより、前進ないし後退時において、各バンパ21(L,R),22(L,R)のどの部分が障害物Wに接触したかを詳細に判別することが可能である。CPU46は、かかる検出信号に基づいて、種々の回避動作を行う。
以下、回避動作について、本作業ロボットが前進している場合で、かつ、障害物Wが作業アセンブリ2の前面ないし側面に接触した場合について例示して説明する。
【0043】
図8(a)に示すように、左前バンパ21Lの前面に障害物Wが接触した場合、CPU46は左第1検出スイッチSL1(図4)からの検出信号を受け取ると、第1の退避速度A1で、作業アセンブリ2を右方向に移動させる。
図8(b)に示すように、右前バンパ21Rの前面に障害物Wが接触した場合、CPU46は右第1検出スイッチSR1(図4)からの検出信号を受け取ると、第1の退避速度A1で、作業アセンブリ2を左方向に移動させる。
【0044】
図8(c)に示すように、左前バンパ21Lの左側面に障害物Wが接触した場合、CPU46は左第2検出スイッチSL2(図4)からの検出信号を受け取ると、第1の退避速度A1よりも低速の第2の退避速度A2で、作業アセンブリ2を右方向に退避させる。
図8(d)に示すように、右前バンパ21Rの右側面に障害物Wが接触した場合、CPU46は右第2検出スイッチSR2(図4)からの検出信号を受け取ると、前記第2の退避速度A2で、作業アセンブリ2を左方向に退避させる。
なお、第1の退避速度A1としては、たとえば1m/秒〜3m/秒程度が好ましく、第2の退避速度A2としては、たとえば、10cm/秒〜30cm/秒程度が好ましい。
【0045】
図9(a)は、前述の制御方法を採用して、本作業ロボットを壁際で走行させた場合の例である。以下の説明では、本作業ロボットの右側に障害物Wが存在する場合について、例示している。
前記障害物(壁)Wの途中には、左側に向って比較的小さな凸部W1が突出している。作業アセンブリ2は、初期状態において、走行アセンブリ1の左右方向Xのほぼ中央に位置している。
【0046】
1):走行アセンブリ1が走行を開始し、右前バンパ21R側面の第1コロ25が障害物Wに接触すると、第2検出スイッチSR2から検出信号が送信される(図6(b)の状態)。CPU46は、第2検出スイッチSR2からの検出信号を受け取ると、スライド制御手段42を介してスライド駆動モーター15(図2)を作動させ、作業アセンブリ2を左側に低速の第2の退避速度A2で移動させる(図8(d))。
2):作業アセンブリ2が左方向に移動したため、第2検出スイッチSR2からの検出信号が送信されなくなる。CPU46は、前記検出信号を受信しなくなると、直ちに、第2の退避速度A2よりも更に低速の復帰速度A3で作業アセンブリ2を元の位置に移動させる。
3):1)および2)と同じ動作を繰り返しながら壁Wに沿って前進する。
4):障害物Wの凸部W1に右前バンパ21Rの右前が接触すると、第1検出スイッチSR1から検出信号が送信される(図6(a)の状態)。CPU46は、第1検出スイッチSR1からの検出信号を受け取ると、作業アセンブリ2を第1の退避速度A1で左側に高速移動させて、障害物Wの凸部W1を回避しながら前進する(図8(b))。
5)、6):前記1)および2)と同じ動作を繰り返しながら前進する。
【0047】
図9(b)は、本発明に含まれない比較例を示す。
図9(b)の比較例では、右前バンパ21Rの側面に障害物Wが接触した場合に、作業アセンブリ2を第1の退避速度A1で高速移動させている(図9(b)の1))。そのため、本比較例では、障害物Wから作業アセンブリ2が離れすぎてしまい、障害物Wと作業アセンブリ2が離れている時間が長くなる(図9(b)の1)〜3))。
これに対し、本実施例では、作業アセンブリ2の側面に障害物Wが接触した場合には、作業アセンブリ2を低速の第2の退避速度A2で移動させているので、作業アセンブリ2と障害物Wとが離れている時間が短くなり、障害物Wに沿って壁際を清掃することができる。
【0048】
一方、図示していないが、障害物Wの凸部W1に右前バンパ21Rの右前が接触した場合に、作業アセンブリ2を第2の退避速度A2で低速移動させることも考えられる。かかる場合には、障害物Wの凸部W1に対する回避が遅くなり、比較的小さな凸部W1であっても作業アセンブリ2が当該凸部W1に引っ掛かってしまい、走行アセンブリ1の進行方向が傾くおそれが生じる。
これに対し、本実施例では、作業アセンブリ2の前面に障害物Wが接触した場合には、作業アセンブリ2を第1の退避速度A1で高速移動させているので、作業アセンブリ2が障害物Wに引っ掛かるおそれが少なくなる。
【0049】
つぎに、図10(a),(b)に示すように、障害物Wの途中に比較的大きな凸部W2が存在する場合について説明する。
図10(a)に示すように、障害物Wの凸部W2が大きい場合には、作業アセンブリ2を高速な第1の退避速度A1で左側に移動させる回避動作を行っても、当該回避動作が間に合わず、作業アセンブリ2が凸部W2に引っ掛かってしまい、走行アセンブリ1の進行方向が傾くおそれが生じる。
【0050】
そこで、本実施例では、以下のように、回避動作を行う。
図10(b)の4)に示すように、右前バンパ21Rに障害物Wが接触すると、右第1検出スイッチSR1が検出信号をCPU46に送信する(図6(a))。前記検出信号は、障害物Wの接触が解消されるまで、送信が続けられる。
図3のCPU46が、右第1検出スイッチSR1からの検出信号を受け取ると、タイマ49が計時を開始し、検知時間を計時する。一方、CPU46は当該検知時間と、ROM48から読み出した閾値との比較を行い、検知時間が前記閾値よりも長い場合には、図10(b)に示す走行アセンブリ1の走行を停止させる。該停止後、CPU46は、走行アセンブリ1を所定距離だけを後方へ移動させる。一方、作業アセンブリ2が第1の退避速度A1で退避方向に移動される。その後、走行アセンブリ1が前方への移動を再開する。
【0051】
このように、第1検出スイッチSR1(SL1)による検知時間が所定の閾値を超えたことを検出して走行アセンブリ1の走行を一旦停止させ、当該停止後、所定距離だけ後方へ移動させるので、作業アセンブリ2が障害物Wに引っ掛かることによって走行アセンブリ1の進行方向が傾いたり、障害物Wや作業アセンブリ2に傷が付くのを防止することができる。
【0052】
なお、走行アセンブリ1の走行速度が速いほど、前記閾値を小さく(時間を短く)するのが好ましい。走行速度が速いほど、作業アセンブリ2が壁の出っ張りに引っ掛かって進行方向が傾くまでの時間が短くなるからである。
かかる回避の方法としては、たとえば、ROM48に複数の閾値を記憶させ、走行アセンブリ1の走行速度が速い場合には小さい値の閾値を読み出し、走行速度が遅い場合には大きい値の閾値を読み出すようにしてもよい。また、所定の演算を行い走行速度に応じて閾値を算出するようにしてもよい。
【0053】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、接触センサの一例として、前述の実施例では光センサを用いたが、障害物の接触を検出し得るものであればよく、たとえば、接触型のスイッチを用いてもよい。
また、後方の左右のバンパが一体に形成されていてもよいし、後方のバンパを省略し、前方の左右のバンパのみを用いてもよい。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施例にかかる自走式作業ロボットを示す概略斜視図である。
【図2】本作業ロボットの平面断面図である。
【図3】本作業ロボットの制御機構を示す概略構成図である。
【図4】作業アセンブリの平面断面図である。
【図5】作業アセンブリの右側部分を示す平面断面図である。
【図6】障害物の検出方法を示す平面断面図である。
【図7】障害物の検出方法を示す平面断面図である。
【図8】障害物の回避方法を示す平面図である。
【図9】(a)は本作業ロボットによる障害物の回避方法を示す平面図、(b)は本発明に含まれない比較例を示す平面図である。
【図10】(a)は障害物に接触しても停止しない場合の回避方法を示す平面図、(b)は停止および後退する場合の回避方法を示す平面図である。
【符号の説明】
【0055】
1:走行アセンブリ
2:作業アセンブリ
8:制御部
11:取付板(移動機構の一部)
12:タイミングベルト(移動機構の一部)
13:プーリー(移動機構の一部)
14:スライドレール(移動機構の一部)
21(L,R),22(L,R):バンパ
30F:前バー(被検出部:第1および第2の接触センサの一部)
30B:後バー(被検出部)
SR1,SL1:第1検出スイッチ(第1の接触センサの一部)
SR2,SL2:第2検出スイッチ(第2の接触センサの一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走する作業ロボットであって、
床面を自走するための車輪を有する走行アセンブリと、
前記走行アセンブリに対し左右に移動可能に取り付けられ、前記床に対する作業を行う作業アセンブリと、
前記走行アセンブリと前記作業アセンブリとの位置関係を変更すべく、前記作業アセンブリを前記走行アセンブリに対して移動させる移動機構と、
前記作業アセンブリに設けられ、前記作業アセンブリの前面に障害物が接触したのを検知する第1の接触センサと、
前記作業アセンブリに設けられ、前記作業アセンブリの側面に障害物が接触したのを検知する第2の接触センサと、
前記走行アセンブリの走行を制御すると共に、前記第1の接触センサの検知信号に基づいて、第1の退避速度で前記作業アセンブリを左右に移動させるよう移動機構を制御し、前記第2の接触センサの検知信号に基づいて第1の退避速度よりも低速の第2の退避速度で前記作業アセンブリを左右に移動させるよう作業アセンブリ移動機構を制御する制御部とを備えた自走式作業ロボット。
【請求項2】
請求項1において、さらに、
前記制御部は、第1の接触センサによる接触検知の時間が所定の閾値よりも長い場合は、走行を停止させる機能を有する自走式作業ロボット。
【請求項3】
請求項2において、さらに、
前記閾値は、走行速度が速い時には小さい値に設定され、走行速度が遅い場合には大きい値に設定される自走式作業ロボット。
【請求項4】
請求項2もしくは3において、
前記制御部は、第1の接触センサによる検知時間が所定の閾値を超えたことを検出して走行を停止させた場合、当該停止後、所定距離だけを後方へ移動させ、前記作業アセンブリを所定距離退避方向へ移動させた後、前方への走行を再開するように、前記走行アセンブリと前記作業アセンブリ移動機構を制御する自走式作業ロボット。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記制御部は、前記接触センサの検知信号に基づいた作業アセンブリの移動が行われた場合、前記両接触センサによる接触が検出されなくなった後に、前記走行アセンブリに対する作業アセンブリの相対位置を接触センサによる接触が検出される以前の位置に、第2の退避速度よりも低速の復帰速度で戻すように前記移動機構を制御する自走式作業ロボット。
【請求項6】
請求項1において、前記作業アセンブリは平面視が概ね長方形に形成され、前記接触センサは前記作業アセンブリの周囲を覆うバンパと、前記バンパと一体に移動する被検出部と、前記被検出部を検出する検出スイッチとを備えた自走式作業ロボット。
【請求項7】
請求項6において、前記バンパは左右に分割されており、当該分割されたバンパごとに前記被検出部および検出スイッチが設けられ、
前記左側のバンパは左方向にバネ力により付勢された状態で所定の左端の位置に位置決めされ、
前記右側のバンパは右方向にバネ力により付勢された状態で所定の右端の位置に位置決めされ、
ていることを特徴とする自走式作業ロボット。
【請求項8】
請求項6において、前記バンパは左右および前後に分割されており、当該分割されたバンパごとに前記被検出部および検出スイッチが設けられ、
左前側のバンパは、左方向および前方向にバネ力により付勢された状態で所定の左端および前端の位置に位置決めされ、
右前側のバンパは、右方向および前方向にバネ力により付勢された状態で所定の右端および前端の位置に位置決めされ、
左後側のバンパは、左方向および後方向にバネ力により付勢された状態で所定の左端および後端の位置に位置決めされ、
右後側のバンパは、右方向および後方向にバネ力により付勢された状態で所定の右端および後端の位置に位置決めされ、
ていることを特徴とする自走式作業ロボット。
【請求項9】
請求項6において、前記バンパは左右および前後に分割されており、当該分割されたバンパごとに前記被検出部および検出スイッチが設けられ、
前記分割された各バンパは、当該各バンパが障害物に接触した際に内方へ退避可能なように外方に向ってバネ力により付勢された状態でストッパにより所定の位置に位置決めされており、
前記各バンパは、四隅のコーナ部では連続しており、かつ、各バンパ同士が前面、後面および2つの側面において互いに分割されている自走式作業ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−79145(P2006−79145A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259181(P2004−259181)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000223986)フィグラ株式会社 (68)
【Fターム(参考)】