説明

蒸着用マスク、蒸着用マスクの製造方法、電子素子および電子素子の製造方法

【課題】被蒸着膜を高精細なパターンで形成することが可能な蒸着用マスクを提供する。
【解決手段】蒸着用マスクは、1または複数の第1開口部を有する基板と、この基板の第1主面側に設けられると共に、各第1開口部と対向して1または複数の第2開口部を有する高分子膜とを備える。蒸着の際には、蒸着材料が第1開口部および第2開口部を順に通過することにより、第2開口部に対応した所定のパターンで被蒸着膜が形成される。基板と高分子膜とを組み合わせて用いることにより、機械的強度を保持しつつも、金属膜のみで構成されている場合に比べ、第2開口部において微細かつ高精度な開口形状を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子回路等に設けられる電子素子の導電膜形成プロセスにおいて好適に使用される蒸着用マスクとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)等の電子素子では、その電極部分のパターンを、蒸着用マスク(シャドウマスク)を使用して形成することができる。このような蒸着用マスクは、例えば金属板に、電極パターンに対応する開口パターンをウェットエッチングにより形成して作製される(特許文献1)。また、この他にも、蒸着用マスクを、いわゆる電鋳法により作製する手法も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−77660号公報
【特許文献2】特開2006−60054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1の手法では、開口の形状および大きさは金属板の膜厚に応じた(所定の開口部アスペクト比に応じた)ものとなる。金属板の膜厚は数十μm以上であることから、このような手法では、微細なパターンを形成しにくい。一方、電鋳法を用いた特許文献2の手法では、金属材料の電着によってマスク形成を行うため、マスクの膜厚にむらが生じ易い。また、開口のエッジ(内壁部分)が膨らんで形成され易いことから、開口幅の制御が難しい。
【0005】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、被蒸着膜を高精細なパターンで形成することが可能な蒸着用マスクおよびその製造方法と、そのような蒸着用マスクを用いた電子素子の製造方法とを提供することにある。また、本開示の他の目的は、高精細なパターンで精度良く形成された成膜パターンを有する電子素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の蒸着用マスクは、1または複数の第1開口部を有する基板と、基板の第1主面側に設けられると共に、各第1開口部と対向して1または複数の第2開口部を有する高分子膜とを備えたものである。
【0007】
本開示の蒸着用マスクの製造方法は、基板に1または複数の第1開口部を形成する工程と、基板の第1主面側に、各第1開口部のそれぞれと対向して1または複数の第2開口部を有する高分子膜を形成する工程とを含むものである。
【0008】
本開示の蒸着用マスクおよび蒸着用マスクの製造方法では、1または複数の第1開口部を有する基板の第1主面側に高分子膜が設けられ、この高分子膜が、各第1開口部と対向して1または複数の第2開口部を有する。第1開口部および第2開口部を、蒸着材料が通過することにより、所定のパターンで被蒸着膜が形成される。基板と高分子膜とを用いることにより、機械的強度を保持しつつも、金属膜のみで構成されている場合に比べ、第2開口部において微細かつ高精度な開口形状を実現できる。
【0009】
本開示の電子素子は、基板上の選択的な領域に導電膜を備え、導電膜は、その裾野部分が基板側に向かってより緩やかな勾配となるように傾斜しているものである。
【0010】
本開示の電子素子の製造方法は、上記本開示の蒸着用マスクを用いて導電膜を形成する工程を少なくとも含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示の蒸着用マスクおよび蒸着用マスクの製造方法によれば、1または複数の第1開口部を有する基板の第1主面側に高分子膜を設け、この高分子膜に、各第1開口部と対向して1または複数の第2開口部を設けるようにしたので、第2開口部において微細かつ高精度な開口形状を実現できる。よって、被蒸着膜を高精細なパターンで形成することが可能となる。また、本開示の電子素子およびその製造方法によれば、製造プロセスにおいて、上記のような本開示の蒸着用マスクを用いることにより、導電膜を高精細なパターンで形成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の一実施の形態に係る蒸着用マスクの概略構成を表す斜視図である。
【図2】図1に示した蒸着用マスクの開口付近の断面図である。
【図3】図1に示した蒸着用マスクの製造方法を工程順に表す図である。
【図4】図3に続く工程を表す図である。
【図5】図4に続く工程を表す図である。
【図6】図1に示した蒸着用マスクを用いて成膜した被蒸着膜について説明するための模式図である。
【図7】変形例1に係る蒸着用マスクの製造方法を説明するための図である。
【図8】図1に示した蒸着用マスクを用いて作製されるTFTの一例を表す平面図および断面図である。
【図9】図8に示したTFTの他の断面図である。
【図10】図8に示したTFTの製造方法を工程順に表す平面図および断面図である。
【図11】図10に続く工程を表す図である。
【図12】図11に続く工程を表す平面図および断面図である。
【図13】図12に続く工程を表す平面図および断面図である。
【図14】ソース・ドレイン形成時に使用する蒸着用マスクの開口パターンの一例を表す模式図である。
【図15】図14に示した開口パターンの他の例を表す模式図である。
【図16】図13に続く工程を表す平面図および断面図である。
【図17】TFTの電極パターンの一例を表す平面模式図である。
【図18】TFTの電極パターンの他の例を表す平面模式図である。
【図19】変形例2に係る蒸着用マスクの開口パターンを表す模式図である。
【図20】図19に示した開口パターンの他の例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示における実施形態について図面を参照して詳細に説明する。尚、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(基板の第1主面側に高分子膜を有する蒸着用マスクの例)
2.変形例1(開口部形成プロセスの他の例)
3.適用例(実施の形態の蒸着用マスクを用いてソース・ドレインを形成したTFTの例)
4.変形例2(ソース・ドレイン形成時に使用する蒸着用マスクの他の開口パターン例)
【0014】
<実施の形態>
[蒸着用マスクの構成]
図1は、本開示の一の実施の形態に係る蒸着用マスク(蒸着用マスク10)の概略構成を表す斜視図である。蒸着用マスク10は、例えば電子回路に配設される電子素子(例えば後述のTFT等)における導電膜(特に、ソース電極およびドレイン電極)の成膜の際に好適に使用されるものである。この蒸着用マスク10は、1または複数の開口(開口U1)が所定のパターンで設けられたものである。ここでは、一例として、例えばそれぞれが同一形状を有する複数の開口U1がマトリクス状に配置されてなるものを例に挙げて説明する。
【0015】
図2は、開口U1付近の断面構造を表したものである。蒸着用マスク10は、基板110の面S1(蒸着の際に蒸着源側に向けられる面)にフォトレジスト膜111が設けられており、このフォトレジスト膜111と基板110には、これらを貫通する開口部11A(第1開口部)が形成されている。基板110の他方の面S2(蒸着の際に被蒸着膜側となる面)には、高分子膜112とフォトレジスト膜113とがこの順に設けられており、フォトレジスト膜113と高分子膜112には、これらを貫通する開口部11B(第2開口部)が形成されている。
【0016】
基板110は、蒸着用マスク10形状維持および機械的強度を保持するものであり、例えばSUS(ステンレス鋼)等の金属,ガラス等の無機材料,またはプラスチック等の有機材料よりなり、ウェットエッチングにより容易にパターニングできる材料よりなることが望ましい。
【0017】
この基板110の厚みは、例えば20μm〜1000μmであり、例えば50μmである。基板110に設けられる開口部11Aの開口形状のスケール(形状、大きさ)の下限は、基板110の膜厚の制約を受ける(開口部11Aをエッチングにより形成するため、膜厚が大きいと微細なスケールで形成することが難しい)。
【0018】
高分子膜112は、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアセタール、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリカルボジイミド、ポリシロキサン、ポリメタクリルアミド、ニトリルゴム、アクリルゴム、ポリエチレンテトラフルオライド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ブチルゴム、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フェノールノボラック、ベンゾシクロブテン、ポリビニルフェノール、ポリクロロピレン、ポリオキシメチレン、ポリスルホン(PSF)およびシリコーン樹脂のうちのいずれかよりなる単層膜である。あるいは、これらのうちの2種以上を積層してなる多層膜であってもよい。
【0019】
高分子膜112の膜厚は、例えば20μm以下であり、例えば5μmである。この高分子膜112の膜厚は、基板110の厚みより小さく設定されていることが望ましい。上記基板110の開口部11aの場合と同様、開口部11Bの開口スケールの下限は、高分子膜112の膜厚に制約を受けるものであることから、高分子膜112の膜厚を小さく設定した方が、被蒸着膜をより微細なスケールで精度良く成膜できる。
【0020】
これらの開口部11A,11Bは、互いに連通して設けられており、蒸着用マスク10の開口U1を構成する。本実施の形態では、開口U1において、開口部11Aと開口部11Bとが1対1対応で設けられている(1つの開口部11Aに対して1つの開口部11Bが設けられている)。但し、開口部11A,11Bは、必ずしも1対1対応である必要はなく、後述するように、1つの開口部11Aに対して、複数の開口部11Bが設けられていてもよい。但し、本実施の形態のように1対1対応で設けられている場合の方が、マスク強度を保持し易くなると共に、開口部11Bの形状安定性も高くなる。尚、ここでは、簡便化のため、開口U1が1つの開口部11Aと1つの開口部11Bとからなる場合を例示して説明するが、開口U1では、被蒸着膜の成膜パターン(以下、蒸着パターンという)に応じて、開口部11A,11Bの組が複数組設けられていてもよい(詳細は後述)。
【0021】
蒸着用マスク10は、蒸着時には、開口U1を面S1側から面S2側へ向かって蒸着材料を透過させるものであり、開口部11Bの開口形状およびレイアウト(開口パターン)に応じて、被蒸着膜が形成されるようになっている。この開口部11Bの開口形状は、その一部または全部が、高分子膜112の膜厚に応じた微細形状、例えば20μm以下、望ましくは10μm以下の開口幅dを有する形状となっている。開口部11Aの開口形状は、開口部11Bと同一(相似形含む)であってもよいし、異なっていてもよい。ここでは、簡便化のため、開口部11A,11Bの各開口形状を矩形状としているが、他の様々な形状を取り得る。また、開口部11Aが開口部11Bよりも一回り大きく図示しているが、このような場合に限らず、例えば開口U1の一部において、開口部11Aが開口部11Bと同等または小さくなるように形成されていてもよい。
【0022】
[蒸着用マスクの製造方法]
図3〜図5は、蒸着用マスク10の製造方法を説明するための断面図である。蒸着用マスク10は、例えば次のようにして製造することができる。
【0023】
まず、図3(A)に示したように、上述した材料よりなる基板110を用意する。ここでは、基板110としてSUS基板を用いる場合について説明する。続いて、図3(B)に示したように、基板110の一方の側(面S1側)に、フォトレジスト膜111を塗布形成する。この後、図3(C)に示したように、フォトリソグラフィ法により、フォトレジスト膜111に、開口部11Aに対応する開口111Aを形成する。
【0024】
次いで、図4(A)に示したように、基板110の他方の側(面S2側)に、上述した材料よりなる高分子膜112を塗布形成する。例えば、ポリイミドを塗布した後、焼成することにより、例えば膜厚5μm程度の高分子膜112を形成する。ここで、高分子膜112には、後段の工程において開口部11Bを形成するが、この開口部11Bの開口幅の下限値は、高分子膜112の膜厚に制約を受ける。詳細には、開口部11Bは高分子膜112のエッチングにより形成するが、その際、厚み方向だけでなく幅方向にもエッチングが進む。このため、エッチングのアスペクト比(エッチング可能な幅と深さとの比率)に応じて、少なくとも膜厚分をエッチングする際に必然的に生じる幅が、開口幅の下限となる。従って、高分子膜112を成膜する際には、開口部11Bにおいて要求される開口スケールをエッチングによって実現可能な膜厚に設定する。即ち、高分子膜112を薄膜化する程、開口スケールの微細化が可能となる。
【0025】
続いて、図4(B)に示したように、この高分子膜112上にフォトレジスト膜113を塗布形成する。この後、図4(C)に示したように、フォトリソグラフィ法により、フォトレジスト膜113に、開口113Aを形成する。この開口113Aのパターンが、開口部11Bのパターン、即ち蒸着用マスク10における蒸着パターンとなる。
【0026】
続いて、図5(A)に示したように、例えばポリイミドよりなる高分子膜113を、例えばドライエッチングにより選択的に除去し、開口113Aに対応する領域に開口部11Bを形成する。その後、図5(B)に示したように、例えばSUSよりなる基板110を、例えば塩化鉄水溶液を用いてウェットエッチングすることにより選択的に除去し、開口111Aに対応する領域に開口部11Aを形成する。これにより、図1に示した蒸着用マスク10を完成する。
【0027】
尚、フォトレジスト膜111,113および高分子膜112の各成膜工程、高分子膜112のエッチング工程、および基板110のエッチング工程については、上述した手順に限定されない。例えば、高分子膜112およびフォトレジスト膜113を形成した後に、フォトレジスト膜111を形成するようにしてもよい。また、基板110をエッチングして開口部11Aを形成した後に、高分子膜112をエッチングして開口部11Bを形成してもよい。
【0028】
[作用・効果]
本実施の形態の蒸着用マスク10では、基板110の面S2側に高分子膜112が設けられ、基板110および高分子膜112のそれぞれには、互いに連通する開口部11A,11B(開口U1)が形成されている。この蒸着用マスク10を用いた蒸着の際には、図6(A)に示したように、蒸着源の側に面S1、被蒸着基板Aの側に面S2をそれぞれ向けた状態で、成膜を行う。これにより、開口部11A,11Bを、蒸着材料が順に通過し、開口部11Bのパターンに対応したパターンで被蒸着膜が形成される。但し、本実施の形態のような蒸着用マスク10を用いて成膜を行った場合、図6(B)に示したように、被蒸着膜Bの裾野部分が、基板側に向かってより勾配が緩やかとなるような形状で成膜される。これは、一部の蒸着材料が、開口部11Bを通過する際、裏面側(面S2側)に回り込むようにして、放出されるためである。
【0029】
ここで、本実施の形態では、上述のように、高分子膜110の開口部11Bのパターンが蒸着パターンに対応するが、この高分子膜112を基板110と組み合わせて用いることにより、高分子膜112を十分に薄膜化することができる。
【0030】
詳細には、開口部11Bの開口スケールは膜厚の制約を受けるため、その微細化のためには、高分子膜112の薄膜化が必要となるが、高分子膜112を薄く形成したとしても、基板110によって、マスク全体の機械的強度(剛性)が保持される。このため、ハンドリングが容易である。仮に、蒸着用マスクが金属膜のみで構成されている場合、強度保持のため、その膜厚を数十μm以上確保する必要がある。従って、金属膜のみで構成された蒸着用マスクの場合、その開口スケールを微細化することは難しい。一方、本実施の形態のように、基板上に高分子膜を積層させて用いることにより、機械的強度を保持しつつ、高分子膜112を薄膜化し、微細なスケールで開口部11Bを形成可能となる。加えて、上述のようにエッチングによって開口部11A,11Bを形成することにより、電鋳法を用いてマスクを作製する場合に比べ、コストを低減できると共に、マスクの大面積化にも対応し易い。また、電鋳法を用いた場合には、金属材料の電着によってマスク形成を行うため、マスクの膜厚にむらが生じ易い。また、図6(C)に示したように、開口部101Bのエッジ(内壁部分)が内側に膨らんで形成され易く、開口幅の制御も難しい。本実施の形態では、このような現象は生じず、エッジ部分が略直線状の開口部11Bを得ることができ、マスク厚および開口幅の制御が容易である。このように、マスク全体の機械的強度を保ちつつ、開口部11Bを、微細なパターン(数μm程度の開口幅を有するパターン)で、かつ精度良く形成することが可能である。よって、開口部11Bにおいて微細かつ高精度な開口パターンを実現できる。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態では、基板110と高分子膜112とが積層され、それぞれに互いに連通する開口部11A,11Bが設けられていることにより、機械的強度を保持しつつ、開口部11Bを微細かつ高精度に形成することができる。よって、被蒸着膜を高精細なパターンで形成することが可能となる。
【0032】
尚、上記実施の形態では、基板110の面S1側、面S2側にそれぞれ、フォトレジスト膜111,113を残存させたが、これらのフォトレジスト膜111,113は、開口部11A,11Bの形成後に除去してもよい。
【0033】
<変形例1>
図7(A),(B)は、上記実施の形態の変形例(変形例1)に係る蒸着用マスクの形成手法を説明するための断面図である。本変形例の手法により作製される蒸着用マスクは、上記実施の形態の蒸着用マスク10と同様、基板110の面S2側に高分子膜112およびフォトレジスト膜113を備えており、これらの高分子膜112およびフォトレジスト膜113には、蒸着パターンに対応する開口部11Bを有している。また、高分子膜112の膜厚は、基板110よりも薄く、例えば20μm以下となっており、開口スケールに応じて薄膜化されている。尚、上記実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0034】
但し、本変形例では、開口部11Aを、上記実施の形態と異なる次のような手法により形成する。即ち、図7(A)に示したように、基板110の面S2側に、高分子膜112を設け、高分子膜112上にフォトレジスト膜113をパターン形成した後、高分子膜112をエッチングすることにより、開口部11Bを形成する。この面S2側の開口部11Bの形成プロセスは、上記実施の形態と同様である。この後、基板110のエッチングを、開口部11Bが設けられた高分子膜112およびフォトレジスト膜113をマスクとして行うことにより、図7(B)に示したように、基板110に開口部11Aを形成する。このようにして形成された蒸着用マスクでは、開口部11Aの断面形状が、基板110の第2主面側(面S2側)よりも第1主面側(高分子膜112側)においてより大きな幅を有している。尚、開口部11Aの面S2側の幅は、開口部11Bよりも大きくなるようにする。即ち、本変形例では、開口部11Aの高分子膜112に対面した部分の幅が最も大きく、その次に開口部11Aの面S2側の幅が大きく形成されており、高分子膜112の開口部11Bの幅は、最も小さくなっている。また、本変形例の蒸着用マスクについても、使用時には、上記実施の形態と同様、高分子膜112側の開口部11Bを被蒸着側に向けて配置する。
【0035】
本変形例のように、基板110の開口部11Aを、高分子膜112の開口部11Bを利用して、エッチング形成してもよい。この場合にも、上記実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0036】
<適用例>
図8(A),(B)および図9は、上記蒸着用マスク10を用いて作製した電子素子(TFT1)の一例を表したものである。図8(A)は、基板13上にマトリクス状に設けられた複数のTFT1を上面側からみたもの(XY平面図)であり、図8(B)は、(A)図のI−I線における矢視断面図である。図9は、図8(A)のII−II線における矢視断面図である。TFT1は、例えばアクティブマトリクス型の有機EL表示装置、液晶表示装置あるいは電子ペーパー等の表示装置で用いられる駆動素子である。このTFT1は、例えば有機半導体を用いた有機薄膜トランジスタであり、いわゆるボトムゲート型,トップコンタクト構造を有している。TFT1は、ゲート絶縁膜14を間にしてゲート電極12と半導体層15とが対向配置され、この半導体層15に電気的に接続するようにソース電極16Aおよびドレイン電極16Bを有するものである。尚、ソース電極16Aおよびドレイン電極16Bが本開示の「導電膜」の一具体例に相当する。
【0037】
TFT1は、基板13上の選択的な領域にゲート電極12を備え、このゲート電極12を覆うように基板13の全面に渡ってゲート絶縁膜14を有している。ゲート絶縁膜14上の選択的な領域(ゲート電極12に対向する領域)には、半導体層15が形成されている。この半導体層15上に、所定のパターンでソース電極16Aおよびドレイン電極16Bが設けられている。これらのソース電極16Aおよびドレイン電極16Bは、詳細は後述するが、微細なパターンで形成されており、例えば、上記蒸着用マスク10を用いて蒸着形成されたものである。これらのソース電極16A,ドレイン電極16Bの一部と半導体層15を覆って、保護膜17が形成されている。ソース電極16Aおよびドレイン電極16Bはそれぞれ、半導体層15の上面からゲート絶縁膜14上の所定の領域(保護膜17から露出する領域)まで引き出されて設けられ、ゲート絶縁膜14上において、配線層18A,18Bとそれぞれ電気的に接続されている。
【0038】
基板13は、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート,ポリエーテルサルフォン,ポリエチレンナフタレート,ポリカーボネート,液晶ポリマーなどのプラスチックシートや、表面に絶縁処理が施されたステンレス,アルミニウム(Al),銅(Cu)等の金属シートが用いられる。
【0039】
ゲート電極12は、TFT1に印加されるゲート電圧(Vg)によって半導体層15中のキャリア密度を制御すると共に、電位を供給する配線としての機能を有するものである。このゲート電極12は、例えばアルミニウム、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ネオジム(Nd)、ルビジウム(Rb)、ロジウム(Rh)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、銅、インジウム(In)および錫(Sn)のうちの1種からなる単体、またはそれらのうちの少なくとも1種を含む合金、もしくはこれらのうちの2種以上からなる積層膜である。
【0040】
ゲート絶縁膜14は、例えばポリビニルフェノール、ジアリルフタレート、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリシロキサン、ポリメタクリルアミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ニトリルゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ノボラック樹脂、フッ素系樹脂などのうちの1種よりなる単層膜、または2種以上よりなる積層膜である。上記材料のうちの一部は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等の印刷技術によってもパターン形成することができる。
【0041】
半導体層15は、ゲート電圧の印加によりチャネルを形成するものであり、例えばperi-Xanthenoxanthene(PXX)誘導体よりなる。半導体15の材料としては、この他にも、ポリピロールおよびポリピロール置換体、ポリチオフェンおよびポリチオフェン置換体、ポリイソチアナフテンなどのイソチアナフテン類、ポリチェニレンビニレンなどのチェニレンビニレン類、ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)類、ポリアニリンおよびポリアニリン置換体、ポリアセチレン類、ポリジアセチレン類、ポリアズレン類、ポリピレン類、ポリカルバゾール類、ポリセレノフェン類、ポリフラン類、ポリ(p−フェニレン)類、ポリインドール類、ポリピリダジン類、ポリビニルカルバゾール、ポリフエニレンスルフィド、ポリビニレンスルフィドなどのポリマーおよび多環縮合体、上述した材料中のポリマーと同じ繰返し単位を有するオリゴマー類、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ピレン、ジベンゾピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレン、サーカムアントラセンなどのアセン類およびアセン類の炭素の一部をN、S、Oなどの原子、カルボニル基などの官能基に置換した誘導体(トリフェノジオキサジン、トリフェノジチアジン、ヘキサセン−6,15−キノンなど)、金属フタロシアニン類、テトラチアフルバレンおよびテトラチアフルバレン誘導体、テトラチアペンタレンおよびテトラチアペンタレン誘導体、ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N'−ビス(4−トリフルオロメチルベンジル)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミドとともに、N,N'−ビス(1H,1H−ペルフルオロオクチル)、N,N'−ビス(1H,1H−ペルフルオロブチル)及びN,N'−ジオクチルナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド誘導体、ナフタレン2,3,6,7テトラカルボン酸ジイミドなどのナフタレンテトラカルボン酸ジイミド類、アントラセン2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのアントラセンテトラカルボン酸ジイミド類などの縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、C60、C70、C76、C78、C84等フラーレン類、SWNTなどのカーボンナノチューブ、グラフェン、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類などの色素のうちのいずれか1種の誘導体、2種以上の混合物が挙げられる。
【0042】
ソース電極16Aおよびドレイン電極16Bは、半導体層15のチャネル13Cに対応する領域において電気的に分離されて配設されており、それぞれ例えば金から構成されている。ソース電極16Aおよびドレイン電極16Bの構成材料としては、この他にも、上記ゲート電極12において列挙したものと同等の金属または透明導電膜を用いることができる。ここでは、詳細は後述するが、ソース電極16Aおよびドレイン電極16Bはそれぞれ、1または複数、一方向(X方向)に沿って延在して設けられており、例えばその幅が1μm〜20μmとなっており、微細スケールを有している。ソース電極16Aおよびドレイン電極16Bのそれぞれの裾野部分Rは、蒸着用マスク10を用いて形成されたものであるため、上述したように、基板13側に向かってより勾配が緩やかとなるような形状を有している。
【0043】
保護膜17は、半導体層15を保護するためのものであり、例えばフッ素系樹脂により構成されている。この他にも、例えばポリパラキシリレン等から構成されていてもよい。
【0044】
配線層18A,18Bは、例えば銅から構成されている。配線層18Aは、ここでは、TFT1毎に配設されており、それぞれがソース電極16Aに電気的に接続されている。配線層18Bは、例えばY方向に延在して、列方向に並ぶ複数のTFT1のドレイン電極16Bに共通の配線層として設けられ、それらの各ドレイン電極16Bに電気的に接続されている。尚、これらの配線層18A,18Bの形状およびレイアウトは一例であり、他の様々なパターンを取り得る。
【0045】
[TFT1の製造方法]
図10〜図16は、TFT1の製造方法を説明するための図である。図14および図15は、ソース電極16Aおよびドレイン電極16Bの形成時に使用する蒸着用マスクの開口パターンの一例を模式的に表したものである。TFT1は、例えば次のようにして製造することができる。
【0046】
まず、図10(A),(B)に示したように、基板13上の選択的な領域にゲート電極12を形成する。具体的には、まず、基板13上の全面に、上述したゲート電極材料、例えばアルミニウムを、例えばスパッタリング法により堆積させた後、例えばフォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより、所定の形状にパターニングする。この際、例えば図示したように、他の電極層120(コンタクト用の電極や容量形成用の電極)を、ゲート電極12と共に、一括してパターニングするとよい。このようにして、基板13上にゲート電極12を形成する。尚、これらのゲート電極12および電極層120の形状およびレイアウト等は一例であり、これに限定されるものではない。
【0047】
続いて、図11(A),(B)に示したように、基板13上の全面に渡って、ゲート絶縁膜14を形成する。具体的には、基板13上に、例えばスピンコート法により、上述したゲート絶縁膜材料、例えばポリビニルフェノール溶液を塗布形成し、乾燥させることにより、ゲート絶縁膜14を形成する。尚、この際、使用材料に応じて、他の成膜手法、例えばインクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷およびグラビア印刷等の印刷法を用いてもよい。尚、図11(A)では、便宜上、ゲート絶縁膜14の縁部分のみを示し、それよりも下層に設けられているゲート電極12を実線で示している。
【0048】
次いで、図12(A),(B)に示したように、ゲート絶縁膜14上の選択的な領域(ゲート電極12に対向する領域)に半導体層15を形成する。具体的には、ゲート絶縁膜14上に、例えばperi-Xanthenoxanthene化合物溶液を塗布し、過熱させることにより、半導体層15を形成する。
【0049】
この後、図13(A),(B)に示したように、半導体層15上に、ソース電極16Aおよびドレイン電極16Bを形成する。具体的には、上記実施の形態の蒸着用マスク10を用いて、上述した電極材料、例えば金を所定のパターンで蒸着させる。以下、ソース電極16A,ドレイン電極16Bの形状(XY平面形状)およびレイアウトの一例(電極パターン例)と、そのようなソース電極16A,ドレイン電極16Bを形成可能な蒸着用マスク10における開口の形状およびレイアウトの一例(開口パターン例)について説明する。
【0050】
(電極パターン例)
ソース電極16Aおよびドレイン電極16Bはそれぞれ、例えば図13(A)に示したように、一方向(X方向)に沿って、かつ上記のような微細な幅で延在する線形状を有している。このようなソース電極16Aおよびドレイン電極16Bはそれぞれ、1または複数、その延在方向と略直交する方向に沿って交互に配設されている。具体的には、半導体層15上に、1本のソース電極16Aを、2本のドレイン電極16Bが挟むようにして配設されている。これらのソース電極16Aおよびドレイン電極16Bは、半導体層15上からゲート絶縁膜14上の所定の領域まで、互いに逆方向に引き出されて設けられている。尚、ソース電極16Aおよびドレイン電極16Bの裾野部分Rは、蒸着用マスク10を用いて形成されることにより、上述したように、基板13側に向かってより勾配が緩やかとなるような形状となる。
【0051】
(開口パターン例)
図14は、上記のような電極パターンを形成するための蒸着用マスク10の開口パターン(開口パターン10a)について模式的に表したものである。開口パターン10aは、複数の開口U11が例えばマトリクス状に配列してなり、各開口U11は、開口部11A1(破線部分)および開口部11B1(実線部分)からなる。尚、開口U11は、上記蒸着用マスク10における開口U1の一具体例に相当し、開口部11A1が開口部11Aの一具体例、開口部11B1が開口部11Bの一具体例にそれぞれ相当している。この例では、上記のようなソース電極16Aおよびドレイン電極16Bのそれぞれの形状およびレイアウトに対応して、開口部11B1が設けられており、開口部11B1と開口部11A1とが互いに対向して、1対1対応で設けられている。
【0052】
あるいは、図15に示したような開口パターン(開口パターン10b)を用いてもよい。開口パターン10bは、上記開口パターン10aと同様、複数の開口U12が例えばマトリクス状に配列してなり、各開口U12は、開口部11A2(破線部分)および開口部11B1(実線部分)からなる。尚、開口U12は、上記蒸着用マスク10における開口U1の一具体例に相当し、開口部11A2が開口部11Aの一具体例、開口部11B1が開口部11Bの一具体例にそれぞれ相当している。この例においても、上記のようなソース電極16Aおよびドレイン電極16Bのそれぞれの形状およびレイアウトに対応して、開口部11B1が設けられ、開口部11B1と開口部11A2とが互いに対向している。但し、この開口パターン10bでは、複数(ここでは3つ)の開口部11B1に、1つの開口部11A2が対向して設けられた構成となっている。このような開口パターン10bを用いてもよい。但し、前述のように、形状安定性の観点から、上記開口パターン10aを用いることが望ましい。
【0053】
上記のような開口パターンを有する蒸着用マスク10を用いることにより、ソース電極16Aおよびドレイン電極16Bを、微細かつ高精度に形成することができる。また、エッチングプロセスを経ないため、半導体層15を傷つけることなく、電極形成が可能である。
【0054】
次に、図16(A),(B)に示したように、半導体層15を覆うように保護膜17を形成する。具体的には、半導体層15上に、例えばフッ素系樹脂よりなる保護膜17を塗布形成し、ソース電極16Aおよびドレイン電極16Bの一部(ゲート絶縁膜14に隣接して設けられた部分)が露出するように、例えばフォトリソグラフィ法によりパターニングする。尚、保護膜材料は半導体層15に対する直交溶媒に溶解した材料を塗布形成することが望ましい。また、保護膜材料としてポリパラキシリレンを用いる場合には、保護膜17を、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法により成膜することができる。
【0055】
最後に、配線層18A,18Bを形成する。具体的には、上述したような配線層材料、例えば銅を例えばスパッタ法により成膜した後、例えばフォトリスグラフィ法を用いたウェットエッチングによりパターニングすることにより、配線層18A,18Bを一括形成する。この際、例えば配線層18Aがソース電極16Aの露出部分、配線層18Bがドレイン電極16Bの露出部分とそれぞれ電気的に接続されるようにパターニングを行う。尚、配線層18A,18Bがソース電極16Aおよびドレイン電極16Bに接続されることで、図17に模式的に示したように、各TFT1には、XY平面において、Y方向に延在するソース電極16Aの一部が、コの字形状のドレイン電極16Bに挟まれたような電極パターンが形成される。以上により、図8(A),(B)に示したTFT1を完成する。
【0056】
以上のように、上記実施の形態の蒸着用マスク10を用いることにより、例えばソース電極16Aおよびドレイン電極16Bを、高精細なパターンで形成可能となる。これにより、TFT等の電子素子において、複雑かつ微細なパターンで電極等の導電膜を形成することができるようになり、素子の高性能化を実現可能となる。
【0057】
尚、上記実施の形態では、1本のソース電極16Aと、2本のドレイン電極16Bとが交互に設けられた電極パターンおよび蒸着用マスク10の開口パターンを例に挙げたが、ソース電極16Aおよびドレイン電極16Bの本数やレイアウトについてはこれに限定されるものではない。
【0058】
例えば、開口パターンにおける開口数を増やし、ソース電極16Aおよびドレイン電極16Bをそれぞれ2本以上、交互に設けるようにしてもよい。ソース電極16Aおよびドレイン電極16Bを2本ずつ交互に配設した場合には、最終的に配線層18A,18Bと接続されることで、図18(A)に示したような各コの字形状のソース電極16A1およびドレイン電極16Bを形成可能である。また、各3本以上交互に配設した場合には、図18(B)に示したような各櫛歯形状のソース電極16A2およびドレイン電極16B2を形成可能である。尚、櫛歯形状の場合、ソース電極16Aおよびドレイン電極16Bの本数(歯数)については特に限定されない。以下、そのような櫛歯形状の電極パターンを形成する場合を例に挙げて、電極パターンの他の形成手法例について説明する。
【0059】
<変形例2>
図19は、上記実施の形態における蒸着用マスク10の開口パターン(開口パターン10c)の模式図である。開口パターン10cは、上述の開口パターン10a,10bと同様、マトリクス状に配置された複数のTFT形成領域のそれぞれに、ソース電極およびドレイン電極を形成する際に使用されるものである。また、開口パターン10cは、開口部11Aの一具体例として開口部11A3、開口部11Bの一具体例として開口部11B3を有しており、上記開口パターン10aと同様、開口部11A3と開口部11B3とが1対1対応で配置されている。但し、本変形例では、ソース電極およびドレイン電極と、それぞれに電気的に接続される配線層(上述の配線層18A,18Bに相当)との電極パターンが1枚のマスク(1つの開口パターン)に集約されてなるものである。
【0060】
具体的には、開口パターン10cは、開口部11B3として、少なくとも一部に櫛歯形状を有するユニット開口B31と、同じく櫛歯形状を有するユニット開口B32とが、互いの櫛歯部分が噛み合うように配設されたものである。ユニット開口B31は、例えば、ソース電極部分(櫛歯部分)に対応する(ソース電極を形成するための)電極用開口311と、これに接続される配線部分に対応する配線用開口312とが、一体的に(連結して)形成されたものである。このユニット開口B31は、例えば、TFT毎に設けられている。ユニット開口B32は、例えば、ドレイン電極部分(櫛歯部分)に対応する電極用開口321と、これに接続される配線部分に対応する配線用開口322とが一体的に形成されたものである。このユニット開口B32は、列方向において互いに連結して設けられている(配線用開口322が列方向に沿って配置されたユニット開口B32において共通化されている)。尚、開口部11A3は、そのような開口部11B3の微細形状に倣った形状で、かつ開口部113Bよりも一回り大きく設けられている。
【0061】
このような開口パターン10cを有する蒸着用マスク10を用いることにより、上述したようなTFT1の製造プロセスにおいて、それぞれが櫛歯形状を有するソース電極およびドレイン電極と、各電極に接続される配線層とを、同一工程において一括形成できる。よって、これらの各層を高精細なパターンで形成できると共に、工程数を減らし、製造プロセスを簡略化することが可能となる。
【0062】
尚、本変形例では、開口部11A3および開口部11B3が1対1対応で配置される場合を例に挙げたが、この例においても、1つの開口部11A3に、複数の開口部11B3が対向して設けられていてもよい。例えば図20に示した開口パターン10dのように、列方向に沿って配置された複数のユニット開口B31,B32が、1つの開口部11A4(開口部11Aの一具体例)に対向して設けられていてもよい。但し、形状安定性の観点から、図19に示した開口パターン10cを用いることが望ましい。
【0063】
以上、実施の形態、適用例および変形例を挙げて説明したが、本開示内容はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、蒸着用マスクの開口パターンおよびそれを用いて形成される被蒸着膜パターンについては、上述したものに限らず、他の様々な形状およびレイアウトを取り得る。特に、本開示の蒸着用マスクを用いることにより、例えば数μm〜20μm程度の微細な幅で延在する線形部分を有するパターン、そのような線形部分が複数、微小間隔でレイアウトされたパターン、あるいはそのような線形部分と他の形状とが組み合わされたパターン等の場合にも、高精度に形成することができる。また、そのような微細化部分は、一方向に延在する線形状(直線形状)に限定されず、曲線形状であってもよい。更に、このような線形状以外にも、例えば数μm〜20μmの範囲で一辺の長さが形成される多角形状や、そのような範囲の径を有する円形状、あるいは楕円形状等であってもよい。
【0064】
また、上記実施の形態等では、本開示の電子素子の一例としてボトムゲート,トップコンタクト構造の有機TFTを挙げたが、電子素子としてはTFTに限らず、導電膜のパターン形成を要するアクティブ素子であればよい。また、TFTの構造についても上述のものに限定されず、有機半導体以外の半導体、例えば無機半導体や酸化物半導体を用いたものであってもよい。さらに、ボトムゲート,ボトムコンタクト構造であってもよいし、トップゲート構造(ボトムコンタクト,トップコンタクトいずれでもよい)であってもよい。
【0065】
更に、上記実施の形態等では、本開示の電子素子における導電膜の一例として、TFTのソース電極およびドレイン電極を挙げたが、導電膜として、TFTにおける他の電極や配線を本開示の蒸着用マスクにより形成するようにしてもよい。但し、本開示の蒸着用マスクは、微細スケールを有する導電膜の形成に好適である。
【0066】
尚、本開示は、以下の(1)〜(20)に記載したような構成であってもよい。
(1)1または複数の第1開口部を有する基板と、前記基板の第1主面側に設けられると共に、各第1開口部と連通する1または複数の第2開口部を有する高分子膜とを備えた蒸着用マスク。
(2)前記高分子膜の膜厚は前記基板の厚みよりも小さい上記(1)に記載の蒸着用マスク。
(3)前記高分子膜の膜厚は20μm以下である上記(1)または(2)に記載の蒸着用マス ク。
(4)前記第2開口部の開口形状は、前記高分子膜の膜厚に応じた微細形状を有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の蒸着用マスク。
(5)前記第2開口部が複数設けられ、複数の第2開口部は、各開口形状が線形状を有すると共にその延在方向と略直交する方向に沿って並列して設けられている上記(1)〜(4)のいずれかに記載の蒸着用マスク。
(6)前記第2開口部が複数設けられ、複数の第2開口部の各開口形状は、少なくとも一部に櫛歯形状を有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載の蒸着用マスク。
(7)前記高分子膜上に、感光性樹脂層が設けられている上記(1)〜(6)のいずれかに記載の蒸着用マスク。
(8)前記基板の第2主面側に、感光性樹脂層が設けられている上記(1)〜(7)のいずれかに記載の蒸着用マスク。
(9)前記第1開口部および前記第2開口部がそれぞれ複数設けられ、前記第1開口部と前記第2開口部とが1対1対応で互いに対向して設けられている上記(1)〜(8)のいずれかに記載の蒸着用マスク。
(10)前記第2開口部が複数設けられ、1つの第1開口部に2つ以上の第2開口部が対向して設けられている上記(1)〜(9)のいずれかに記載の蒸着用マスク。
(11)前記第1開口部の断面形状は、前記基板の第2主面側よりも第1主面側においてより大きな幅を有する上記(1)〜(10)のいずれかに記載の蒸着用マスク。
(12)基板上の選択的な領域に導電膜を備え、前記導電膜は、その裾野部分が前記基板側に向かってより緩やかな勾配となるように傾斜している電子素子。
(13)前記導電膜は、トランジスタのソース電極およびドレイン電極である上記(12)に記載の電子素子。
(14)前記基板側から順にゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体層および保護膜をこの順に備え、前記保護膜上に、前記導電膜としての前記ソース電極および前記ドレイン電極が設けられ、かつ前記ソース電極および前記ドレイン電極の一部または全部は20μm以下の幅で設けられている上記(13)のいずれかに記載の電子素子。
(15)前記ソース電極および前記ドレイン電極はそれぞれ櫛歯形状を有する上記(13)または(14)に記載の電子素子。
(16)有機薄膜トランジスタである上記(12)〜(15)のいずれかにに記載の電子素子。
(17)基板に1または複数の第1開口部を形成する工程と、基板の第1主面側に、前記第1開口部と連通する1または複数の第2開口部を有する高分子膜を形成する工程とを含む蒸着用マスクの製造方法。
(18)前記基板の第1主面側に高分子膜を成膜した後、この高分子膜上に感光性樹脂層をパターン形成して、前記感光性樹脂層をマスクとしたエッチングにより前記高分子膜に前記第2開口部を形成し、前記基板の第2主面側に他の感光性樹脂層をパターン形成して、前記他の感光性樹脂層をマスクとしたエッチングにより前記基板に前記第1開口部を形成する上記(17)に記載の蒸着用マスクの製造方法。
(19)前記基板の第1主面側に高分子膜を成膜した後、この高分子膜上に感光性樹脂層をパターン形成して、前記感光性樹脂層をマスクとしたエッチングにより前記高分子膜に前記第2開口部を形成した後、前記第2開口部を有する高分子膜をマスクとしたエッチングにより前記基板に前記第1開口部を形成する上記(17)または(18)に記載の蒸着用マスクの製造方法。
(20)蒸着用マスクを用いて導電膜を形成する工程を少なくとも含み、前記蒸着用マスクとして、1または複数の第1開口部を有する基板と、前記基板の第1主面側に設けられると共に、各第1開口部と連通する1または複数の第2開口部を有する高分子膜とを備えたものを用いる電子素子の製造方法。
【符号の説明】
【0067】
10…蒸着用マスク、11A,11A1〜11A4…開口部(蒸着源側)、11B,11B1〜11B4…開口部(被蒸着膜側)、110…基板、111,113…フォトレジスト膜、112…高分子膜、1…TFT、13…基板、12…ゲート電極、14…ゲート絶縁膜、15…半導体層、16A…ソース電極、16B…ドレイン電極、17…保護膜、18A,18B…配線層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の第1開口部を有する基板と、
前記基板の第1主面側に設けられると共に、各第1開口部と連通する1または複数の第2開口部を有する高分子膜と
を備えた蒸着用マスク。
【請求項2】
前記高分子膜の膜厚は前記基板の厚みよりも小さい
請求項1に記載の蒸着用マスク。
【請求項3】
前記高分子膜の膜厚は20μm以下である
請求項2に記載の蒸着用マスク。
【請求項4】
前記第2開口部の開口形状は、前記高分子膜の膜厚に応じた微細形状を有する
請求項3に記載の蒸着用マスク。
【請求項5】
前記第2開口部が複数設けられ、
複数の第2開口部は、各開口形状が線形状を有すると共にその延在方向と略直交する方向に沿って並列して設けられている
請求項4に記載の蒸着用マスク。
【請求項6】
前記第2開口部が複数設けられ、
複数の第2開口部の各開口形状は、少なくとも一部に櫛歯形状を有する
請求項4に記載の蒸着用マスク。
【請求項7】
前記高分子膜上に、感光性樹脂層が設けられている
請求項1に記載の蒸着用マスク。
【請求項8】
前記基板の第2主面側に、感光性樹脂層が設けられている
請求項1に記載の蒸着用マスク。
【請求項9】
前記第1開口部および前記第2開口部がそれぞれ複数設けられ、
前記第1開口部と前記第2開口部とが1対1対応で互いに対向して設けられている
請求項1に記載の蒸着用マスク。
【請求項10】
前記第2開口部が複数設けられ、
1つの第1開口部に2つ以上の第2開口部が対向して設けられている
請求項1に記載の蒸着用マスク。
【請求項11】
前記第1開口部の断面形状は、前記基板の第2主面側よりも第1主面側においてより大きな幅を有する
請求項1に記載の蒸着用マスク。
【請求項12】
基板上の選択的な領域に導電膜を備え、
前記導電膜は、その裾野部分が前記基板側に向かってより緩やかな勾配となるように傾斜している
電子素子。
【請求項13】
前記導電膜は、トランジスタのソース電極およびドレイン電極である
請求項12に記載の電子素子。
【請求項14】
前記基板側から順にゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体層および保護膜をこの順に備え、
前記保護膜上に、前記導電膜としての前記ソース電極および前記ドレイン電極が設けられ、かつ
前記ソース電極および前記ドレイン電極の一部または全部は20μm以下の幅で設けられている
請求項13に記載の電子素子。
【請求項15】
前記ソース電極および前記ドレイン電極はそれぞれ櫛歯形状を有する
請求項14に記載の電子素子。
【請求項16】
有機薄膜トランジスタである
請求項12に記載の電子素子。
【請求項17】
基板に1または複数の第1開口部を形成する工程と、
基板の第1主面側に、前記第1開口部と連通する1または複数の第2開口部を有する高分子膜を形成する工程と
を含む蒸着用マスクの製造方法。
【請求項18】
前記基板の第1主面側に高分子膜を成膜した後、この高分子膜上に感光性樹脂層をパターン形成して、前記感光性樹脂層をマスクとしたエッチングにより前記高分子膜に前記第2開口部を形成し、
前記基板の第2主面側に他の感光性樹脂層をパターン形成して、前記他の感光性樹脂層をマスクとしたエッチングにより前記基板に前記第1開口部を形成する
請求項17に記載の蒸着用マスクの製造方法。
【請求項19】
前記基板の第1主面側に高分子膜を成膜した後、この高分子膜上に感光性樹脂層をパターン形成して、前記感光性樹脂層をマスクとしたエッチングにより前記高分子膜に前記第2開口部を形成した後、
前記第2開口部を有する高分子膜をマスクとしたエッチングにより前記基板に前記第1開口部を形成する
請求項17に記載の蒸着用マスクの製造方法。
【請求項20】
蒸着用マスクを用いて導電膜を形成する工程を少なくとも含み、
前記蒸着用マスクとして、
1または複数の第1開口部を有する基板と、
前記基板の第1主面側に設けられると共に、各第1開口部と連通する1または複数の第2開口部を有する高分子膜と
を備えたものを用いる
電子素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−21165(P2013−21165A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153872(P2011−153872)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】