説明

薄膜トランジスタおよび表示装置用電極基板の製造方法

【課題】ボトムコンタクト構造で、かつセルフアラインのTAOS TFTを、大掛かりな設備投資や成膜装置の設置場所の確保を要することなく量産することができる製造方法、およびこのTAOS TFTを用いた表示装置用電極基板の製造方法を得る。
【解決手段】ゲート電極12、ソース電極14およびドレイン電極15上に形成された第1、第2TAOS層16、17に窒素プラズマを照射するステップと、第1、第2TAOS層16、17を窒素雰囲気中でアニールするステップと、第1、第2TAOS層16、17上に、ゲート電極12をマスクとしたガラス基板11側からの露光により樹脂絶縁膜である島状絶縁膜18を形成するステップと、ガラス基板11の全面に、島状絶縁膜18をマスクとして、島状絶縁膜18側からプラズマを照射するステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、透明アモルファス酸化物半導体(TAOS:Transparent Amorphous Oxide Semiconductor)を用いた薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)、およびこの薄膜トランジスタ(TFT)を用いた表示装置用電極基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薄膜トランジスタ(TFT)として、B/C型と呼ばれるボトムゲートかつトップコンタクト構造のものが広く用いられている。また、近年、TFTの半導体層として、透明アモルファス酸化物半導体(TAOS)を用いるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、TAOSをTFTに用いるに際して、半導体層を従来のアモルファスシリコン(a−Si:amorphous Silicon)からTAOSに置き換えることを念頭に開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−150900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
従来のトップコンタクト構造のTFTにおいて、半導体層としてTAOSを用いる場合には、ソース電極およびドレイン電極となる金属層がTAOS層の直上に位置することとなる。また、TAOS材料の中で製品化が有力視されるIGZO(In、GaおよびZnを含む酸化物)は、酸やアルカリに対する耐薬液性が低く、プラズマダメージを受けやすい。
【0005】
そのため、ソース電極およびドレイン電極のパターニングに際して、耐薬液性が低いTAOSは、プロセスダメージを受けやすい。すなわち、プロセスに対するマージンが小さいので、TFT特性の低下や歩留まりの低下を生じやすい。そこで、TAOSを用いたTFT(TAOS TFT)は、ソース電極およびドレイン電極がパターニングされた後に、TAOS層が形成されるボトムコンタクト構造とすることが望ましい。
【0006】
また、従来のa−Siを用いたTFT(a−Si TFT)は、合わせズレによるTFTの寄生容量の変動を抑制するために、合わせズレによる影響が小さくなるよう、「U」字形状に構成されている。しかしながら、TAOS TFTは、a−Si TFTの10倍以上の移動度を有するので、「U」字形状にすると、TFTのサイズが要求値を超えることとなる。
【0007】
もし、TFTが要求サイズよりも大きくなると、TFTの寄生容量による画質への影響が急激に大きくなるので、TFTを「U」字形状にすることはできない。そのため、TAOS TFTは、合わせズレによる寄生容量の変動が生じやすいストレート形状をとらざるを得ず、必然的に従来のa−Si TFTよりも合わせズレによる画質の低下が生じやすい。
【0008】
さらに、従来のトップコンタクト構造のTFTにTAOSを用いた場合には、ソース電極およびドレイン電極をゲートに対して位置合わせすることにより、合わせズレマージンの分だけTFTの寄生容量が大きくなり、かつ合わせズレに応じて表示画面内の寄生容量の大きさが不均一となる。
【0009】
ここで、液晶表示装置において、開口率や画質を向上させるために、TFTの寄生容量を低減する方法として、紫外線による裏面露光を用いたi/s型のセルフアライン(自己整合型)TFTがある。そのため、寄生容量を低減して開口率や画質を向上させるために、TAOS TFTは、セルフアラインとすることが望ましい。
【0010】
しかしながら、TAOS TFTをボトムコンタクト構造とした場合には、ソース電極およびドレイン電極となる金属層が遮光性を有するので、TFTをセルフアラインとすることができない。また、TAOS TFTを裏面露光によるセルフアラインとした場合には、ソース電極およびドレイン電極となる金属層をゲート電極と重なるように配置することができない。
【0011】
つまり、TAOS TFTにおいて、ボトムコンタクト構造と裏面露光によるセルフアラインとは、ソース電極およびドレイン電極となる金属層が遮光性を有するので、互いに整合せず、実現することができない。そこで、ボトムコンタクト構造で、かつセルフアラインのTAOS TFTを得るために、以下のような方法が考えられる。
【0012】
すなわち、まず、基板上にゲート電極を形成し、ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上に、ゲート電極と重ならないようにソース電極およびドレイン電極をそれぞれ形成し、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極上に、ゲート電極を跨いでソース電極とドレイン電極とを繋ぐようにTAOS層を形成する。
【0013】
続いて、TAOS層上に、ゲート電極をマスクとした基板側からの露光により島状絶縁膜を形成し、基板の全面に、島状絶縁膜をマスクとして、島状絶縁膜側からプラズマを照射する。これにより、TAOS層のプラズマが照射された領域(島状絶縁膜によってマスクされていない領域)が低抵抗化され、TAOS層がソース領域、ドレイン領域およびチャネル領域に区分される。そのため、ボトムコンタクト構造で、かつセルフアラインのTAOS TFTが得られる。
【0014】
このとき、島状絶縁膜の材料として、従来からチャネル保護膜として用いられてきた酸化シリコン系または窒化シリコン系のSiNx、SiOxまたはSiOxNyが考えられる。なお、酸化シリコン系または窒化シリコン系のSiNx、SiOxまたはSiOxNyを島状絶縁膜の材料として用いる場合には、成膜装置としてCVDやスパッタが用いられる。
【0015】
そのため、従来のa−Si TFTのLCD(Liquid Crystal Display)製造ラインにおいて、スループットを下げることなく島状絶縁膜を有するTAOS TFTを量産するためには、CVDやスパッタを追加するための大掛かりな設備投資や成膜装置の設置場所の確保が必要となる。そこで、設備投資等の問題を解消するために、島状絶縁膜の材料として、塗布成膜可能な樹脂製材料を用いることが望ましい。
【0016】
ここで、樹脂絶縁膜のポストベーク温度は、材料によって異なるものの、およそ150〜250℃の範囲にある。この温度は、TAOS層の抵抗値をチャネル領域にふさわしい値にするために実行されるアニールの温度よりも遙かに低い。例えばTAOS層がIGZOである場合、アニール温度は、300℃程度以上の温度となる。そのため、TAOS層のアニールを実行した後に、樹脂絶縁膜である島状絶縁膜を成膜する必要がある。
【0017】
しかしながら、アニール後のTAOS層を再び樹脂絶縁膜のポストベーク温度まで加熱すると、TAOS層の抵抗値が2桁程度低下する。そのため、製造されたTAOS TFTがノーマリーオン(normally−ON)となるデプレション(depletion)モードとなり、電荷保持型のLCDの画素TFTとして用いることができないという問題がある。
【0018】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ボトムコンタクト構造で、かつセルフアラインのTAOS TFTを、大掛かりな設備投資や成膜装置の設置場所の確保を要することなく量産することができる製造方法、およびこのTAOS TFTを用いた表示装置用電極基板の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明に係るTFTの製造方法は、基板上にゲート電極を形成するステップと、ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成するステップと、ゲート絶縁膜上に、ゲート電極と重ならないようにソース電極およびドレイン電極をそれぞれ形成するステップと、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極上に、ゲート電極を跨いでソース電極とドレイン電極とを繋ぐように透明アモルファス酸化物半導体層を形成するステップと、透明アモルファス酸化物半導体層に窒素プラズマを照射するステップと、透明アモルファス酸化物半導体層を窒素雰囲気中でアニールするステップと、透明アモルファス酸化物半導体層上に、ゲート電極をマスクとした基板側からの露光により樹脂絶縁膜である島状絶縁膜を形成するステップと、基板の全面に、島状絶縁膜をマスクとして、島状絶縁膜側からプラズマを照射するステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明に係るTFTの製造方法によれば、透明アモルファス酸化物半導体層を形成した後、透明アモルファス酸化物半導体層に窒素プラズマを照射し、続いて透明アモルファス酸化物半導体層を窒素雰囲気中でアニールしている。これにより、透明アモルファス酸化物半導体層の抵抗値が上昇し、アニール後の透明アモルファス酸化物半導体層を再び島状絶縁膜のポストベーク温度まで加熱した場合に、透明アモルファス酸化物半導体層の抵抗値をチャネル領域にふさわしい値にすることができる。
そのため、ボトムコンタクト構造で、かつセルフアラインのTAOS TFTを、大掛かりな設備投資や成膜装置の設置場所の確保を要することなく量産することができる製造方法、およびこのTAOS TFTを用いた表示装置用電極基板の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1に係るTAOS TFTの構成を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るTAOS TFTのTAOS層の抵抗値を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明に係るTFTおよび表示装置用電極基板の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。
【0023】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るTAOS TFT10の構成を示す断面図である。図1において、TAOS TFT10は、ガラス基板11と、ゲート電極12と、ゲート絶縁膜13と、ソース電極14と、ドレイン電極15と、第1TAOS層16(透明アモルファス酸化物半導体層)と、第2TAOS層17(透明アモルファス酸化物半導体層)と、島状絶縁膜18と、樹脂絶縁膜19とを備えている。
【0024】
ゲート電極12は、ガラス基板11上に形成されている。なお、基板は、ガラス基板11に限定されず、透明で、かつ絶縁性を有していればよい。ゲート絶縁膜13は、ゲート電極12上に形成されている。ソース電極14およびドレイン電極15は、ゲート絶縁膜13上に、ゲート電極12と重ならないようにそれぞれ形成されている。
【0025】
第1TAOS層16は、ゲート電極12、ソース電極14およびドレイン電極15上に、ゲート電極12を跨いでソース電極14とドレイン電極15とを繋ぐように形成されたTAOS層である。ここで、第1TAOS層16および第2TAOS層17は、材料として、上述したIn、GaおよびZnを含む酸化物であるIGZOを用いている。
【0026】
第2TAOS層17は、第1TAOS層16に積層して連続的に形成され、かつゲート電極12、ソース電極14およびドレイン電極15上に、ゲート電極12を跨いでソース電極14とドレイン電極15とを繋ぐように形成されたTAOS層である。ここで、第2TAOS層17は、第1TAOS層16とは異なる成膜条件(後述する)によって形成され、第1TAOS層16および第2TAOS層17は、積層構造を構成している。
【0027】
島状絶縁膜18は、第2TAOS層17上に、ゲート電極12をマスクとしたガラス基板11側からの露光(裏面露光)により形成された絶縁膜である。樹脂絶縁膜19は、第2TAOS層17および島状絶縁膜18上に形成されている。
【0028】
ここで、第1TAOS層16および第2TAOS層17の、島状絶縁膜18と重ならない領域の抵抗値は、後述するプラズマ処理により、島状絶縁膜18と重なる領域の抵抗値よりも低抵抗化されている。具体的には、第1TAOS層16は、ソースとして機能するソース領域16a、ドレインとして機能するドレイン領域16bおよびチャネル領域16cを含む。
【0029】
なお、第2TAOS層17は、後述するように、O2の含有量が大きいので、プラズマ処理によってもなお絶縁性を有し、ソース領域16aを保護するソース保護領域17a、ドレイン領域16bを保護するドレイン保護領域17bおよびチャネル領域16cを保護するチャネル保護領域17cを含む。
【0030】
このとき、第1TAOS層16および第2TAOS層17のチャネル領域16cおよびチャネル保護領域17cは、後述するように、ゲート電極12に対してセルフアラインとなり、ソース領域16aおよびソース保護領域17aとドレイン領域16bおよびドレイン保護領域17bとの間に形成されている。
【0031】
なお、TAOS TFT10を用いた表示装置用電極基板は、TAOS TFT10に加えて、ガラス基板11上に形成された複数本の走査信号線(図示せず)と、絶縁膜(図示せず)を介して複数本の走査信号線と交差するように形成された複数本の表示信号線(図示せず)と、複数の走査信号線と複数の表示信号線との各交差領域に形成された複数のTAOS TFT10と電気的に接続された複数の表示画素電極(図示せず)とをさらに備えて構成される。
【0032】
また、この表示装置用電極基板において、ゲート電極12は、走査信号線の一部または延在部から構成され、ソース電極14およびドレイン電極15は、表示信号線と同一工程によって形成されている。
【0033】
続いて、TAOS TFT10の製造方法を、手順に沿って説明する。
まず、ガラス基板11上にゲート電極12を形成する。ここで、ゲート電極12は、例えばスパッタリングによって形成された金属層をパターニングすることによって形成される。続いて、ゲート電極12上に、ゲート絶縁膜13を形成する。ここで、ゲート絶縁膜13は、例えばCVDによって形成される。
【0034】
次に、ゲート絶縁膜13上に、ゲート電極12と重ならないようにソース電極14およびドレイン電極15を形成する。ここで、ソース電極14およびドレイン電極15は、例えばスパッタリングによって形成された金属層をパターニングすることによって形成される。
【0035】
続いて、ゲート電極12、ソース電極14およびドレイン電極15上に、ゲート電極12を跨いでソース電極14とドレイン電極15とを繋ぐように、第1TAOS層16を形成する。ここで、第1TAOS層16は、少なくともArおよびO2を含む混合ガスを用いて、スパッタリングにより形成される。
【0036】
次に、第1TAOS層16に積層して連続的に、かつゲート電極12、ソース電極14およびドレイン電極15上に、ゲート電極12を跨いでソース電極14とドレイン電極15とを繋ぐように、第2TAOS層17を形成する。ここで、第2TAOS層17は、少なくともArおよびO2を含む混合ガスを用いて、スパッタリングにより形成される。
【0037】
このとき、第1TAOS層16は、例えば混合ガスの流量に対するO2の流量比1%で成膜され、第2TAOS層17は、例えば混合ガスの流量に対するO2の流量比33%で成膜される。
【0038】
続いて、第1TAOS層16および第2TAOS層17に窒素(N2)プラズマを照射する。このとき、窒素プラズマの照射条件は、例えば背圧=20Pa、Power=100W、N2流量=50sccm、照射時間=60sとする。なお、窒素プラズマの照射条件は、このものに限定されず、異なる条件であってもよい。
【0039】
次に、第1TAOS層16および第2TAOS層17を窒素(N2)雰囲気中で(N2を流しながら)アニールする。このとき、窒素アニール条件は、温度=350℃、N2流量=5l/m、アニール時間=3hとする。なお、窒素アニール条件は、このものに限定されず、異なる条件であってもよい。
【0040】
ここで、第1TAOS層16および第2TAOS層17に対する窒素プラズマ照射および窒素アニールは、後述する島状絶縁膜18のポストベークによって、第1TAOS層16および第2TAOS層17の抵抗値が2桁程度低下することを補償するために、第1TAOS層16および第2TAOS層17の抵抗値を2桁程度上昇させることを目的として実行されるものである。
【0041】
一般に、TAOS層の抵抗率はキャリア密度によって決まり、キャリア密度は酸素空孔密度によって決まる。ここで、TAOS層はイオン性結晶なので、アニールの熱による酸素の離脱と、熱酸化による酸素の取り込みとのバランスによって酸素空孔密度が決まる。
【0042】
そのため、TAOS層の抵抗値を大きくするためには、イオン結合よりも結合力の強い共有結合をする窒素をTAOS層中に取り込ませることが効果的である。また、実験により、窒素アニールだけではTAOS層の抵抗値の上昇量が小さく、窒素アニール前にTAOS層に窒素プラズマを照射することで、TAOS層の抵抗値をより上昇させることができることを発見した。
【0043】
続いて、第2TAOS層17上に、ゲート電極12をマスクとしたガラス基板11側からの露光(裏面露光)により、島状絶縁膜18を形成する。ここで、島状絶縁膜18の材料として、塗布成膜可能な樹脂製材料が用いられる。なお、島状絶縁膜18は、塗布成膜後に150〜250℃でポストベークされる。
【0044】
次に、ガラス基板11の全面に、島状絶縁膜18をマスクとして、島状絶縁膜18側からプラズマを照射する。このとき、O2、N2、CF4、CHF3、Arのうち、少なくとも1つを含むガスを電離させたプラズマがガラス基板11に照射される。ここで、第1TAOS層16および第2TAOS層17にプラズマが照射されると、TAOS層(IGZO)中の酸素原子が叩き出されて酸素空孔が増加し、性質が導体側に近付く。
【0045】
これにより、第1TAOS層16および第2TAOS層17のソース領域16aおよびソース保護領域17aとドレイン領域16bおよびドレイン保護領域17bとが低抵抗化され、ソース領域16aおよびドレイン領域16bが電極として使用できる程度の導電率となる。続いて、第2TAOS層17および島状絶縁膜18上に、樹脂製材料により、樹脂絶縁膜19を形成する。
【0046】
なお、TAOS TFT10を用いた表示装置用電極基板の製造方法は、TAOS TFT10の製造方法に加えて、以下の手順を備えている。すなわち、ガラス基板11上に複数本の走査信号線(図示せず)を形成する手順と、絶縁膜(図示せず)を介して複数本の走査信号線と交差するように複数本の表示信号線(図示せず)を形成する手順と、複数の走査信号線と複数の表示信号線との各交差領域に形成された複数のTAOS TFT10と電気的に接続されるように複数の表示画素電極(図示せず)を形成する手順とをさらに備えている。
【0047】
また、この表示装置用電極基板の製造方法において、ゲート電極12は、複数本の走査信号線を形成する手順において同時に形成され、ソース電極14およびドレイン電極15は、複数本の表示信号線を形成する手順においてそれぞれ同時に形成される。
【0048】
ここで、TAOS TFT10の第1TAOS層16における窒素プラズマ照射および窒素アニール後の抵抗値を、図2に示す。図2において、左から2番目の点(N2プラズマ)が窒素プラズマ照射後の抵抗値を示し、3番目の点(350℃/3H with N2)が窒素アニール後の抵抗値を示している。
【0049】
図2より、窒素プラズマ照射および窒素アニール後の第1TAOS層16の抵抗値が、窒素プラズマ照射および窒素アニール前と比較して、2桁程度上昇していることが分かる。なお、窒素プラズマ照射により抵抗値が一旦下がるが、窒素プラズマ照射を実行せずに窒素アニールを実行した場合よりも、窒素アニール後の抵抗値が高くなる。
【0050】
上述したように、この実施の形態1では、装置価格が高額なため、スループットを律速する原因となりやすいCVDやスパッタを用いることなく、塗布成膜可能な樹脂絶縁膜を島状絶縁膜18として用いることが可能である。この結果、従来のa−Si TFTのLCD製造ラインにおいて、a−Si TFTの製造工程にない島状絶縁膜18の形成工程を有するTAOS TFTの量産を、CVDやスパッタを追加導入するための大掛かりな設備投資を伴うことなく容易に行うことができる。
【0051】
以上のように、実施の形態1に係るTFTによれば、透明アモルファス酸化物半導体層を形成した後、透明アモルファス酸化物半導体層に窒素プラズマを照射し、続いて透明アモルファス酸化物半導体層を窒素雰囲気中でアニールしている。これにより、透明アモルファス酸化物半導体層の抵抗値が上昇し、アニール後の透明アモルファス酸化物半導体層を再び島状絶縁膜のポストベーク温度まで加熱した場合に、透明アモルファス酸化物半導体層の抵抗値をチャネル領域にふさわしい値にすることができる。
そのため、ボトムコンタクト構造で、かつセルフアラインのTAOS TFTを、大掛かりな設備投資や成膜装置の設置場所の確保を要することなく量産することができる製造方法、およびこのTAOS TFTを用いた表示装置用電極基板の製造方法を得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
11 ガラス基板、12 ゲート電極、13 ゲート絶縁膜、14 ソース電極、15 ドレイン電極、16 第1TAOS層、16a ソース領域、16b ドレイン領域、16c チャネル領域、17 第2TAOS層、17a ソース保護領域、17b ドレイン保護領域、17c チャネル保護領域、18 島状絶縁膜、19 樹脂絶縁膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にゲート電極を形成するステップと、
前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成するステップと、
前記ゲート絶縁膜上に、前記ゲート電極と重ならないようにソース電極およびドレイン電極をそれぞれ形成するステップと、
前記ゲート電極、前記ソース電極および前記ドレイン電極上に、前記ゲート電極を跨いで前記ソース電極と前記ドレイン電極とを繋ぐように透明アモルファス酸化物半導体層を形成するステップと、
前記透明アモルファス酸化物半導体層に窒素プラズマを照射するステップと、
前記透明アモルファス酸化物半導体層を窒素雰囲気中でアニールするステップと、
前記透明アモルファス酸化物半導体層上に、前記ゲート電極をマスクとした前記基板側からの露光により樹脂絶縁膜である島状絶縁膜を形成するステップと、
前記基板の全面に、前記島状絶縁膜をマスクとして、前記島状絶縁膜側からプラズマを照射するステップと、
を備えたことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項2】
前記透明アモルファス酸化物半導体層を形成するステップは、
成膜条件の互いに異なる2つ以上の透明アモルファス酸化物半導体層を連続的に成膜して積層構造を形成するステップを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記透明アモルファス酸化物半導体層を形成するステップは、
少なくともArおよびO2を含む混合ガスを用いて、スパッタリングにより透明アモルファス酸化物半導体層を成膜するステップであり、
前記積層構造の最下層の成膜時には、前記混合ガスの流量に対するO2の流量比を5%以下とし、
前記積層構造の最上層の成膜時には、前記混合ガスの流量に対するO2の流量比を20%以上とする
ことを特徴とする請求項2に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項4】
前記プラズマを照射するステップは、
2、N2、CF4、CHF3、Arのうち、少なくとも1つを含むガスを電離させたプラズマを照射する
ことを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法を用いた表示装置用電極基板の製造方法であって、
透明な絶縁性の前記基板上に複数本の走査信号線を形成するステップと、
絶縁膜を介して前記複数本の走査信号線と交差するように複数本の表示信号線を形成するステップと、
前記複数の走査信号線と前記複数の表示信号線との各交差領域に形成された複数の前記薄膜トランジスタと電気的に接続されるように複数の表示画素電極を形成するステップと、をさらに備え、
前記ゲート電極を形成するステップと、前記複数本の走査信号線を形成するステップとは、同一ステップであり、
前記ソース電極およびドレイン電極をそれぞれ形成するステップと、前記複数本の表示信号線を形成するステップとは、同一ステップである
ことを特徴とする表示装置用電極基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−114246(P2012−114246A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262031(P2010−262031)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(501426046)エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド (732)
【Fターム(参考)】