説明

薄膜トランジスタ基板、薄膜トランジスタの製造方法、及び表示装置

【課題】マスク枚数及び工程数を削減する薄膜トランジスタ基板を提供する。
【解決手段】本発明に係る薄膜トランジスタ基板は、基板1上に形成された第1の導電層7と、第1の導電層7上に成膜された拡散防止層2と、拡散防止層2上に形成された半導体層3と、半導体層3上に成膜されたゲート絶縁層4と、ゲート絶縁層4上に形成された第2の導電層5と、第2の導電層5上に成膜された層間絶縁層6と、層間絶縁層6上に形成された第3の導電層9と、を有し、第3の導電層9が、層間絶縁層6及びゲート絶縁層4を貫通して半導体層3まで到達し、且つ層間絶縁層6、ゲート絶縁層4、及び拡散防止層2を貫通して、第1の導電層7まで到達することによって、半導体層3と第1の導電層7とが、第3の導電層9を介して接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタ基板、薄膜トランジスタの製造方法、及びそれらを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶表示装置においては、薄膜トランジスタ(Thin Filmed Transistor:以下、TFTと称す)基板を用いたアクティブマトリクス型の表示装置が多く利用されている(特許文献1〜3)。図3を用いて、従来のTFT基板について説明する。図3は、従来のトップゲート型TFT基板の断面構造を示した断面図である。図3に示すTFT基板101は、ガラス基板11の上に拡散防止層として成膜されたSiN(窒化シリコン)膜12を有する。SiN膜12の上に、チャネル領域131、ソース領域132、及びドレイン領域133を有する半導体層13や、半導体層13と同じ材料で形成される下部容量電極13aが、島状に形成される。下部容量電極13aは、TFT22の補助容量領域となる。
【0003】
次に、半導体層13及び下部容量電極13aの上を覆うように、ゲート絶縁層としてSiO(酸化シリコン)膜14が成膜される。SiO膜14を介して、チャネル領域131を覆う部分にゲート電極15が島状に形成される。つまり、ゲート電極15とチャネル領域131との間にはSiO膜14が配置され、ゲート電極15は、SiO膜14を挟んで半導体層13のチャネル領域131の対面に配置されている。即ち、半導体層13のチャネル領域131とゲート電極15とは、SiO膜14を挟んで対向配置される。また、SiO膜14を介して、下部容量電極13aの上部に上部容量電極15aが島状に形成されている。上部容量電極15aとゲート電極15とは、同じ材料で形成されている。
【0004】
次に、ゲート電極15上に、層間絶縁層としてSiO膜16を成膜する。その後、SiO膜14及びSiO膜16に形成されたコンタクトホール20を介して、ソース領域132、ドレイン領域133、及び下部容量電極13aと、配線電極17とが接続する。配線電極17は、ソース領域132と接続してTFT22に表示電圧を供給する。また、配線電極17は、ドレイン領域133と接続して画素電極に表示電圧を印加する等、所定の回路を形成する。
【0005】
次に、配線電極17上に上部絶縁層18が成膜され、上部絶縁層18に形成されたコンタクトホール21を介して画素電極19と配線電極17とが接続する。配線電極17は、ソース領域132及びドレイン領域133と電気的に接続し、外部及び基板上の回路内の画像信号や制御信号を伝達する。以上のように、従来のトップゲート型TFT基板は、TFTや容量等の複数の素子間を接続するための配線電極17はTFT基板101の上層に形成されていた。
【特許文献1】特開2001−217423号公報
【特許文献2】特開2002−26330号公報
【特許文献3】特開平10−178177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、発明者は従来技術には以下の課題があることを見出した。ソース領域132、ドレイン領域133、及び下部容量電極13aと、配線電極17とを接続し、画素電極19へ表示電圧を供給するには、コンタクトホール20、21を形成する必要がある。即ち、コンタクトホールの形成が2工程必要となる。具体的には、ソース領域132、ドレイン領域133、及び下部容量電極13aと、配線電極17との間にコンタクトホール20を形成し、その後、配線電極17と画素電極19との間にコンタクトホール21を形成する。その結果、コンタクトホール形成用のマスクの枚数や工程数が2回分必要であり、製造コスト削減の面で不利であった。
【0007】
本発明は、以上の課題を考慮し、コンタクトホール形成工程を統一することにより、マスク枚数及び工程数を削減する薄膜トランジスタ基板、薄膜トランジスタ製造方法、及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、基板と、前記基板上に形成された配線電極を含む第1の導電層と、前記第1の導電層を覆うように成膜された拡散防止層と、前記拡散防止層上に島状に形成され、チャネル領域、ソース領域、及びドレイン領域を備えた半導体層と、前記半導体層を覆うように成膜されたゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層を介して前記チャネル領域の上に形成されたゲート電極を含む第2の導電層と、前記第2の導電層を覆うように成膜された層間絶縁層と、前記層間絶縁層上に島状に形成された画素電極を含む第3の導電層と、を有し、前記第3の導電層が、前記層間絶縁層及び前記ゲート絶縁層を貫通して前記半導体層まで到達し、且つ前記層間絶縁層、前記ゲート絶縁層、及び前記拡散防止層を貫通して、前記第1の導電層まで到達することによって、前記半導体層と前記第1の導電層とが、前記第3の導電層を介して接続されている薄膜トランジスタ基板である。
【0009】
本発明の第2の態様は、基板上に配線電極を含む第1の導電層を形成する工程と、前記第1の導電層を覆うように拡散防止層を成膜する工程と、前記拡散防止層上に、チャネル領域、ソース領域、及びドレイン領域を備えた半導体層を島状に形成する工程と、前記半導体層を覆うようにゲート絶縁層を成膜する工程と、前記ゲート絶縁層を介して前記チャネル領域の上に形成されたゲート電極を含む第2の導電層を島状に形成する工程と、前記第2の導電層を覆うように層間絶縁層を成膜する工程と、前記層間絶縁層及び前記ゲート絶縁層を貫通して前記半導体層まで到達する第1のコンタクトホールと、前記層間絶縁層、前記ゲート絶縁層、及び前記拡散防止層を貫通して前記第1の導電層まで到達する第2のコンタクトホールとを形成する工程と、前記第1のコンタクトホール及び前記第2のコンタクトホールを形成した後、前記層間絶縁層の上に画素電極を含む第3の導電層を形成する工程と、を有する薄膜トランジスタの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、コンタクトホール形成工程を統一することにより、マスク枚数及び工程数を削減する薄膜トランジスタ基板、薄膜トランジスタ製造方法、及び表示装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を説明する。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略および簡略化がなされている。また、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
実施の形態1.
始めに、図1を用いて、本発明に係るTFT基板が適用される表示装置について説明する。図1は、表示装置に用いられるTFT基板の構成を示す正面図である。本発明に係る表示装置は、液晶表示装置を例として説明するが、あくまでも例示的なものであり、有機EL表示装置等の平面型表示装置(フラットパネルディスプレイ)等を用いることも可能である。
【0013】
本発明に係る表示装置は、TFT基板110を有している。TFT基板110は、TFTがアレイ状に配設された基板であり、TFTアレイ基板とも称される。TFT基板110には、表示領域111と表示領域111を囲むように設けられた額縁領域112とが設けられている。この表示領域111には、複数のゲート配線(走査信号線)113と複数のソース配線(表示信号線)114とが形成されている。複数のゲート配線113は平行に設けられている。同様に、複数のソース配線114は平行に設けられている。ゲート配線113とソース配線114とは、互いに交差するように形成されている。ゲート配線113とソース配線114とは直交している。そして、隣接するゲート配線113とソース配線114とで囲まれた領域が画素117となる。従って、TFT基板110では、画素117がマトリクス状に配列される。
【0014】
更に、TFT基板110の額縁領域112には、走査信号駆動回路115と表示信号駆動回路116とが設けられている。ゲート配線113は、表示領域111から額縁領域112まで延設されている。ゲート配線113は、TFT基板110の端部で、走査信号駆動回路115に接続される。ソース配線114も同様に、表示領域111から額縁領域112まで延設されている。ソース配線114は、TFT基板110の端部で、表示信号駆動回路116と接続される。走査信号駆動回路115の近傍には、外部配線118が接続されている。また、表示信号駆動回路116の近傍には、外部配線119が接続されている。外部配線118、119は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)等の配線基板である。
【0015】
外部配線118、119を介して走査信号駆動回路115、及び表示信号駆動回路116に外部からの各種信号が供給される。走査信号駆動回路115は外部からの制御信号に基づいて、ゲート信号(走査信号)をゲート配線113に供給する。このゲート信号によって、ゲート配線113が順次選択されていく。表示信号駆動回路116は外部からの制御信号や、表示データに基づいて表示信号をソース配線114に供給する。これにより、表示データに応じた表示電圧を各画素117に供給することができる。
【0016】
画素117内には、少なくとも1つのTFT120が形成されている。TFT120はソース配線114とゲート配線113の交差点近傍に配置される。例えば、このTFT120が画素電極に表示電圧を供給する。即ち、ゲート配線113からのゲート信号によって、スイッチング素子であるTFT120がオンする。これにより、ソース配線114から、TFT120のドレイン電極に接続された画素電極に表示電圧が印加される。そして、画素電極と対向電極との間に、表示電圧に応じた電界が生じる。なお、TFT基板110の表面には、配向膜(図示せず)が形成されている。
【0017】
更に、液晶表示装置の場合においては、TFT基板110には、対向基板が対向して配置されている。対向基板は、例えば、カラーフィルタ基板であり、視認側に配置される。対向基板には、カラーフィルタ、ブラックマトリクス(BM)、対向電極、及び配向膜等が形成されている。なお、対向電極は、TFT基板110側に配置される場合もある。そして、TFT基板110と対向基板との間に液晶層が狭持される。即ち、TFT基板110と対向基板との間には液晶が注入されている。更に、TFT基板110と対向基板との外側の面には、偏光板、及び位相差板等が設けられる。また、液晶表示パネルの反視認側には、バックライトユニット等が配設される。
【0018】
画素電極と対向電極との間の電界によって、液晶が駆動される。即ち、基板間の液晶の配向方向が変化する。これにより、液晶層を通過する光の偏光状態が変化する。即ち、偏光板を通過して直線偏光となった光は液晶層によって、偏光状態が変化する。具体的には、バックライトユニットからの光は、アレイ基板側の偏光板によって直線偏光になる。そして、この直線偏光が液晶層を通過することによって、偏光状態が変化する。
【0019】
従って、偏光状態によって、対向基板側の偏光板を通過する光量が変化する。即ち、バックライトユニットから液晶表示パネルを透過する透過光のうち、視認側の偏光板を通過する光の光量が変化する。液晶の配向方向は、印加される表示電圧によって変化する。従って、表示電圧を制御することによって、視認側の偏光板を通過する光量を変化させることができる。即ち、画素ごとに表示電圧を変えることによって、所望の画像を表示することができる。
【0020】
本実施形態は、上述した液晶表示装置等の表示装置に適用されるトップゲート型構造のTFT基板を製造した場合について、例示的に説明するものである。TFT基板を用いる表示装置は、液晶表示装置に限らず、有機ELディスプレイ等とすることも可能である。
【0021】
図2を用いて、本実施形態に係るトップゲート型TFT基板の一例について説明する。図2は、本実施形態に係るトップゲート型TFT基板の断面構造を示した断面図である。図2に示すTFT基板110は、ガラス基板1、SiN膜2、半導体層3、SiO膜4、ゲート電極5a、上部容量電極5b、SiO膜6、配線電極7a、下部容量電極7b、画素電極9a、接続パターン9b、及びコンタクトホール10a、10bを有している。TFT基板110は、図1に示したTFT基板110と同じものである。また、半導体層3は、チャネル領域31、ソース領域32、及びドレイン領域33によって構成される。また、半導体層3、SiO膜4、及びゲート電極5aによって、TFT8を形成している。
【0022】
TFT基板110では、ガラス基板1の上に配線電極7a及び下部容量電極7bが島状に形成される。配線電極7aと下部容量電極7bとは、第1の導電層7として同じ材料で形成されている。容量下部電極7bは、TFT8の補助容量領域となる。その後、配線電極7a及び下部容量電極7bの上を覆うように、SiN膜2が成膜される。SiN膜2は、半導体層3への不純物拡散を防止する拡散防止層である。その後、SiN膜2の上に、半導体層3が、島状に形成される。半導体層3は、チャネル領域31、ソース領域32、及びドレイン領域33を有している。半導体層3は、配線電極7a及び下部容量電極7bを含む第1の導電層7の上部領域以外の領域に形成されている。
【0023】
その後、半導体層3の上を覆うように、ゲート絶縁層としてSiO膜4が成膜される。SiO膜4を介して、チャネル領域31を覆う部分にゲート電極5aが島状に形成される。つまり、ゲート電極5aとチャネル領域31との間にはSiO膜4が配置され、ゲート電極5aはSiO膜4を挟んで半導体層3のチャネル領域31の対面に配置されている。即ち、半導体層3のチャネル領域31とゲート電極5aとは、SiO膜4を挟んで対向配置される。また、SiN膜2及びSiO膜4を介して、下部容量電極7bの上部に上部容量電極5bが島状に形成されている。上部容量電極5bとゲート電極5aとは、第2の導電層5として同じ材料で形成される。また、ゲート電極5aは図1に示したゲート配線113と接続される。
【0024】
更に、ゲート電極5a及び上部容量電極5b上を覆うように、層間絶縁層としてSiO膜6が成膜される。その後、SiO膜6の上に画素電極9aを含む第3の導電層9が形成される。第3の導電層9には、接続パターン9bも含まれる。そして、半導体層3上に形成されたコンタクトホール10aを介して、第3の導電層9と半導体層3とが接続する。また、配線電極7a及び下部容量電極7b上には、コンタクトホール10bが形成されている。コンタクトホール10bを介して、第3の導電層9と配線電極7aが接続される。これにより、配線電極7aとソース領域32が接続パターン9bを介して接続される。また、コンタクトホール10bを介して、第3の導電層9と下部容量電極7bが接続される。これにより、下部容量電極7bとドレイン領域33が画素電極9aを介して接続される。コンタクトホール10a、10bの内部には、第3の導電層9の材料である導電膜が埋め込まれている。従って、第3の導電層9と半導体層3、並びに第3の導電層9と第1の導電層7とは、コンタクトホール10a、10bによって貫通し、物理的だけでなく電気的にも接続されている。なお、配線電極7aは、図1に示したソース配線114と接続されている。
【0025】
ここで、半導体層3と第3の導電層9との間には、SiN膜2とSiO膜6が成膜されている。即ち、コンタクトホール10aは、第3の導電層9からSiO膜6とSiO膜4を貫通し、半導体層3まで到達している。また、配線電極7a及び下部容量電極7bを含む第1の導電層7と第3の導電層9との間には、SiN膜2、SiO膜4、及びSiO膜6が成膜されている。即ち、コンタクトホール10bは、第3の導電層9からSiO膜6、SiO膜4、及びSiN膜2を貫通し、第1の導電層7まで到達している。
【0026】
本実施形態では、半導体層3において、コンタクトホール10aが形成される領域の上層部には、ゲート電極5a及び上部容量電極5bを含む第2の導電層5が配置されないようにすることが必要である。また、配線電極7a及び下部容量電極7bを含む第1の導電層7において、コンタクトホール10bが形成される領域の上層部には、半導体層3、及び第2の導電層5が配置されないようにすることが必要である。即ち、半導体層3及び第1の導電層7におけるコンタクトホール接続部が、第2の導電層5の形成領域下部からはみ出すように形成される。そして、はみ出した部分にコンタクトホール10a、10bが形成される。
【0027】
以上のように、本実施形態に係るトップゲート型TFT基板110は、TFTや容量等の複数の素子間を接続するための配線電極7aを含む第1の導電層7が、TFT8より下層に形成されていることに特徴を有している。更に具体的に説明すると、配線電極7aを含む第1の導電層7は、TFT8の下層領域以外に形成され、且つ第1の導電層7の素子間接続領域は、ゲート電極5a及び上部容量電極5bを含む第2の導電層5の下層領域以外に形成されている。
【0028】
次に、図2を用いて、本実施形態に係るTFT基板110の製造方法の一例を説明する。始めに、例えば光透過性のガラスによって形成されたガラス基板1を純水又は酸を用いて洗浄する。TFT基板110に使用される基板は、ガラス基板1に限らず、ポリカーボネートやアクリル等のプラスチックを用いることも可能である。また、SUS(ステンレス:Stainless Used Steel)等の金属基板であっても、その上に絶縁保護層を形成することで基板材料として使用することもできる。
【0029】
次に、ガラス基板1上に、配線電極7a及び下部容量電極7bを含む第1の導電層7を形成する。第1の導電層7をTFT基板110の下層部分に形成することは、本実施形態の中核的な特徴である。配線電極7a及び下部容量電極7bを含む第1の導電層7は、同一工程で形成されており、例えば厚み300nmのAl(アルミニウム)膜である。なお、第1の導電層7は、Alに限らず、電気抵抗の低い材料を用いることが好適である。また、TFT基板110に用いられる全ての導電性電極膜の中で、最も比抵抗の低い材料となっていることが望ましい。
【0030】
第1の導電層7には、例えばAg(銀)、Cu(銅)、AlCu(アルミニウム銅)、AlSiCu(アルミニウムシリコン銅)、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、及びW(タングステン)等の単層膜を用いることができる。また、Mo/Alのように、上述した単層膜を複数積層した材料を用いることも可能である。
【0031】
配線電極7a及び下部容量電極7bを含む第1の導電層7の形成では、上述した材料がスパッタリング法等の方法によって成膜される。その後、フォトレジスト工程を用いて、配線電極7a及び下部容量電極7b等を島状に形成する。具体的には、第1の導電層7の上に塗布したフォトレジストをベークし、フォトレジストが所定のパターン形状にマスキングされ、露光処理される。次に、例えば有機アルカリ系の現像液でフォトレジストが現像され、パターニングされる。更に、例えばリン酸及び硝酸の混合溶液を用いて第1の導電層7をウェットエッチングすることにより、配線電極7a及び下部容量電極7bが所望のパターン形状に形成される。ソース配線114を同時に形成してもよい。そして、フォトレジストをガラス基板1上から除去し、フォトレジストが除去されたガラス基板1を洗浄する。
【0032】
なお、配線電極7a及び下部容量電極7bを含む第1の導電層7の端部の断面形状は、順テーパー形状であることが望ましい。それにより、第1の導電層7上の積層構造のカバレッジが良好になるという効果が得られる。更に、配線電極7a及び下部容量電極7bを含む第1の導電層7端部のテーパー角度は、10°〜60°であることが望ましい。
【0033】
なお、本実施形態では、第1の導電層7がTFT8より下層に形成されていることが重要であり、その形成方法や膜厚を限定するものではない。従って、上記に示す配線電極7a及び下部容量電極7bの形成方法は、例示的に示されたものであり、TFTの製造に係る当業者が考えうる他の方法を適用することが可能である。このことは、配線電極7a及び下部容量電極7bの形成に限らず、以降に示すTFT基板110を構成する他の要素の形成についても同様である。
【0034】
次に、第1の導電層7が形成されたガラス基板1上に、拡散防止層としてSiN層2を成膜する。SiN層2には、例えば化学気相成膜(CVD)法により200nmのSiNを成膜する。SiN層2は、ガラス基板1とその上部の素子間との絶縁、及びガラス基板1からの不純物の拡散を防止する。また、SiN層2の上部に形成する半導体層3との界面準位密度を抑え、TFT8の性能を安定化する。なお、拡散防止層としては、SiNに限らず、SiO等を用いることも可能である。
【0035】
次に、チャネル領域31、ソース領域32、及びドレイン領域33を有す半導体層3を島状に形成する。始めに、半導体層3の材料がガラス基板1上に、例えば50nmで成膜される。半導体層3の材料としては、アモルファスシリコン膜やマイクロクリスタルシリコンが使用可能であるが、性能を向上させるためにはより高品質なポリシリコン膜を用いることが望ましい。但し、ポリシリコン膜を直接基板にCVD法で形成するには、600℃以上の熱処理が必要となるため、通常の安価なガラス基板に形成することが困難である。従って、プラズマCVD法等の低温CVD法によって、まずアモルファスシリコン膜をガラス基板1に形成し、レーザーアニーリングによってポリシリコン化する工程を用いることが望ましい。その後、フォトレジスト工程やドライエッチング等を用いて、半導体層3を所望の形状に形成する。
【0036】
次に、半導体層3の上に、ゲート絶縁層としてSiO膜4を、例えば100nmで成膜する。SiO膜4は、半導体層3との界面準位密度を抑える効果を有している。また、ガラス基板1の材料であるガラスの熱歪を考慮すると低温CVD法による成膜が望ましい。なお、SiO膜4をシリコン酸化膜以外の材料によって形成すること、及び低温CVD法以外のTFT製造手段によって形成することももちろん可能である。
【0037】
次に、SiO膜4の上にゲート電極5a及び上部容量電極5bを含む第2の導電層5を島状に形成する。ゲート電極5a及び上部容量電極5bを含む第2の導電層5は、同一工程で形成されている。同時にゲート配線113を形成してもよい。例えば、厚み200nmのMo膜等をスパッタリング法により成膜し、第2の導電層5とする。次に、第2の導電層5としてのMo膜をフォトレジスト工程やエッチング工程により所定形状に加工する。Mo膜のエッチングは、例えばリン酸及び硝酸の混合溶液を用いて、ウェットエッチングすることが望ましい。
【0038】
ゲート電極5a及び上部容量電極5bの形成後、ゲート電極5aをマスクに用いて、半導体層3のソース領域32及びドレイン領域33に、例えばリン(P)或いはボロン(B)等の不純物を導入する。これにより、半導体層3に、高濃度不純物領域が形成される。導入法としては、イオン注入法やイオンドーピング法を用いて行うことができる。以上の工程を経て、TFT8が完成する。
【0039】
次に、ゲート電極5a及び上部容量電極5bを含む第2の導電層5の上に、層間絶縁層としてSiO膜6を、例えば500nmで成膜する。SiO膜6は、TFT8や容量と、画素電極9aとの絶縁を確保する層間絶縁層である。なお、ガラス基板1の材料であるガラスの熱歪を考慮すると低温CVD法による成膜が望ましい。また、SiO膜4をシリコン酸化膜以外の材料によって形成すること、及び低温CVD法以外のTFT製造手段によって形成することももちろん可能である。
【0040】
次に、コンタクトホール10a、10bの形成工程について説明する。本実施形態では、コンタクトホール10aとコンタクトホール10bとが同じ工程で形成されることが特徴的である。
【0041】
コンタクトホール10aは、画素電極9aを含む第3の導電層9と、ソース領域32及びドレイン領域33(半導体層3)とを物理的及び電気的に接続するために形成される。ここで、コンタクトホール10aは、SiO膜4とSiO膜6を貫通することにより、第3の導電層9と半導体層3とをダイレクトに接続することができる。一方、コンタクトホール10bは、画素電極9aを含む第3の導電層9と、配線電極7a及び下部容量電極7bを含む第1の導電層7とを物理的及び電気的に接続するために形成される。ここで、コンタクトホール10bは、SiN膜2、SiO膜4、及びSiO膜6を貫通することにより、第3の導電層9と第1の導電層7をダイレクトに接続することができる。
【0042】
コンタクトホール10aとコンタクトホール10bの形成領域には、ゲート電極5a及び上部容量電極5bを含む第2の導電層5が形成されていないことが必要である。即ち、配線電極7a及び下部容量電極7bを含む第1の導電層7は、TFT8の下層領域以外に形成され、且つ第1の導電層7のコンタクトホール形成領域は、第2の導電層5の下層領域以外に形成されている。
【0043】
コンタクトホール10a、10bの形成部分には、フォトレジスト工程によってレジストが除去される。そして、ドライエッチングによって、SiO膜6及びSiO膜4をエッチングする。更に、同じレジストやSiO膜6及びSiO膜4をエッチングした開口部を用いて、SiN膜2をドライエッチングする。なお、このエッチングにおいてはコンタクトホール10aの底に半導体層3が露出しているので、SiN膜2と半導体層3とで選択性を有するエッチング条件を設定するとよい。
【0044】
以上のような方法により、第3の導電層9と半導体層3との接続、並びに第3の導電層9と第1の導電層7とを接続するためのコンタクトホールの形成を同一の工程で実施することが可能となる。
【0045】
コンタクトホール10a、10bの形成後、第3の導電層9を形成する。第3の導電層9は、例えば厚さ100nmのITO(Indium Thin Oxide)膜で成膜される。その際、コンタクトホール10a、10b内にも導電材料であるITO膜が埋め込まれる。従って、第3の導電層9を形成するITO膜と、ソース電極32、ドレイン電極33、及び第1の導電層7とが、物理的及び電気的に接続する。最後に、フォトレジスト工程、及びドライエッチング工程またはウェットエッチング工程によって画素電極9aが所望の形状に形成される。なお、画素電極9aとしては、ITO膜に限らず、IZO膜やITZO膜のような他の透明導電性を有した膜であってもよい。また、外光を利用する反射型表示装置に適用する場合には、アルミや銀等の光反射性に優れた材料であってもよい。有機EL表示装置に用いる場合は、画素電極9a上に自発光材料や対向電極を積層してもよい。
【0046】
以上のように、本実施形態は、TFTや容量等の複数の素子間を接続するための配線電極7aを含む第1の導電層7が、TFT8より下層に形成されている。従って、従来技術のように、配線電極17を介して画素電極19と半導体層13及び下部容量電極13aとが接続しない(図3参照)。即ち、画素電極9aからダイレクトに半導体層3や下部容量電極7bと接続することが可能となる。従って、第3の導電層9と半導体層3(ソース領域32、ドレイン領域33)とを接続するコンタクトクトホール10aと、及び第3の導電層9と第1の導電層7とを接続するコンタクトホール10bとを同じ工程で形成することが可能である。即ち、コンタクトホール10a、10bの形成に必要なフォトレジスト工程、ドライエッチング工程が各々1工程となる。従って、従来2回分必要であったコンタクトホール形成工程が1回となることにより、マスク枚数及び工程数が削減され、製造コストが低減する効果が得られる。
【0047】
また、本実施形態によれば、従来のように配線電極17と画素電極19とを絶縁する上部絶縁層18が必要なくなる(図3参照)。その結果、上部絶縁層18を形成する製造コストを削減することができる。
【0048】
また、配線電極7a及び下部容量電極7bを含む第1の導電層7は、比抵抗の低い材料で形成されているため、膜厚が可能な限り薄くなる。従って、下地段差によるカバレッジ不良やエッチング残渣等のプロセスリスクを回避する効果も得られる。また、第1の導電層7の端部は10°〜60°の順テーパー形状となっているため、更に、SiN膜2以降の積層膜のカバレッジが良くなる。
【0049】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲において、上記の実施形態の各要素を、当業者であれば容易に考えうる内容に変更、追加、変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係るTFT基板を示す断面図である。
【図2】表示装置を示す平面図である。
【図3】従来技術に係るTFT基板を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 ガラス基板、 2 SiN膜、
3 半導体層、 3a 下部容量電極、
31 チャネル領域、 32 ソース領域、 33 ドレイン領域、
4 SiO膜、 5 第2の導電層
5a ゲート電極、 5b 上部容量電極、
6 SiO膜、 7 第1の導電層、
7a 配線電極、 7b 下部容量電極、
8 TFT、 9 第3の導電層、
9a 画素電極、 9b 接続パターン
10a、10b コンタクトホール、
11 ガラス基板、 12 SiN膜、
13 半導体層、 13a 下部容量電極、
131 チャネル領域、 132 ソース領域、 133 ドレイン領域、
14 SiO膜、
15 ゲート電極、 15a 上部容量電極、
16 SiO膜、 17 配線電極、
18 上部絶縁層、 19 画素電極、
20、21 コンタクトホール、
101 TFT基板、
110 TFT基板、 111 表示領域、
112 額縁領域、 113 ゲート配線、
114 ソース配線、 115 走査信号駆動回路、
116 表示信号駆動回路、 117 画素、
118、119 外部配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された配線電極を含む第1の導電層と、
前記第1の導電層を覆うように成膜された拡散防止層と、
前記拡散防止層上に島状に形成され、チャネル領域、ソース領域、及びドレイン領域を備えた半導体層と、
前記半導体層を覆うように成膜されたゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層を介して前記チャネル領域の上に形成されたゲート電極を含む第2の導電層と、
前記第2の導電層を覆うように成膜された層間絶縁層と、
前記層間絶縁層上に島状に形成された画素電極を含む第3の導電層と、を有し、
前記第3の導電層が、前記層間絶縁層及び前記ゲート絶縁層を貫通して前記半導体層まで到達し、且つ前記層間絶縁層、前記ゲート絶縁層、及び前記拡散防止層を貫通して、前記第1の導電層まで到達することによって、前記半導体層と前記第1の導電層とが、前記第3の導電層を介して接続されている薄膜トランジスタ基板。
【請求項2】
前記第1のコンタクトホールと前記第2のコンタクトホールは、一回のエッチング工程によって形成されている請求項1に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項3】
前記第1の導電層は、前記半導体層、前記第2の導電層、及び前記第3の導電層よりも比抵抗の小さい材料である請求項1又は2に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項4】
前記第1の導電層は、Ag、Cu、AlCu、AlSiCu、Mo、Ti、又はWからなる単層膜、或いは前記単層膜を複数積層した積層膜である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項5】
前記第1の導電層の端部形状は、順テーパー形状である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項6】
前記第1の導電層の端部のテーパー角度は、10度から60度である請求項5に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項7】
前記ゲート電極と接続されるゲート配線と、前記配線電極と接続されるソース配線とが互いに交差するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ基板を用いた表示装置。
【請求項9】
基板上に配線電極を含む第1の導電層を形成する工程と、
前記第1の導電層を覆うように拡散防止層を成膜する工程と、
前記拡散防止層上に、チャネル領域、ソース領域、及びドレイン領域を備えた半導体層を島状に形成する工程と、
前記半導体層を覆うようにゲート絶縁層を成膜する工程と、
前記ゲート絶縁層を介して前記チャネル領域の上に形成されたゲート電極を含む第2の導電層を島状に形成する工程と、
前記第2の導電層を覆うように層間絶縁層を成膜する工程と、
前記層間絶縁層及び前記ゲート絶縁層を貫通して前記半導体層まで到達する第1のコンタクトホールと、前記層間絶縁層、前記ゲート絶縁層、及び前記拡散防止層を貫通して前記第1の導電層まで到達する第2のコンタクトホールとを形成する工程と、
前記第1のコンタクトホール及び前記第2のコンタクトホールを形成した後、前記層間絶縁層の上に画素電極を含む第3の導電層を形成する工程と、を有する薄膜トランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−40234(P2008−40234A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215693(P2006−215693)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】