説明

薄膜形成方法

【課題】大気圧近傍の圧力雰囲気の条件下、プラズマを用いて基板に薄膜を形成する際、電極と基板との間の間隙を従来に比べて広く設定しても、反応ガスが反応してできるパーティクルを抑制することができ、しかも均質な薄膜を安定して形成する。
【解決手段】基板に対して回転中心軸が平行な円筒状の回転電極12に電力を供給することで、この回転電極12と基板Sとの間の間隙にプラズマを生成し、生成したプラズマを用いて、供給された反応ガスGを活性化させて基板Sに薄膜を形成させる際、回転電極12には、周波数が100kHz〜1MHzの高周波電力を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成したプラズマとこのプラズマ生成領域に供給された反応ガスとを用いて、基板に薄膜を形成する薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板に対して薄膜を形成する装置として、比較的大気圧に近い圧力雰囲気中でプラズマを発生させ、このプラズマを用いて、反応容器内で、反応ガスを活性化させて基板上に堆積させることにより薄膜を形成するプラズマCVDが知られている。このプラズマCVDには、平行な1対の電極板間に高周波電力を供給して電極板間にプラズマを発生させる平行平板型の装置が好適に用いられている。
【0003】
これに対して、下記特許文献1では、ドラム状の回転電極に高周波電力又は直流電力を印加することによりプラズマを生成し、この生成したプラズマを用いて、供給された反応ガスを活性化させて基板上に薄膜を形成する装置及び方法が開示されている。これにより、均質な薄膜を高速でかつ大きな面積で形成することができ、従来の平行平板型における大面積の薄膜を形成する際に均質な薄膜を形成することができないという問題を解消するとしている。
【0004】
【特許文献1】特許第3295310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の装置では、回転電極と基板との間の間隙が狭くなった部分(最も狭くなった間隙の長さは1mm以下)にプラズマが発生し、この発生したプラズマを用いて反応ガスを活性化して薄膜を形成するので、薄膜の形成される領域は、回転電極と基板との間の間隙が最も狭くなった部分の近傍に限られる。そのため、基板は、回転電極に対して相対的に移動搬送させながら薄膜を形成しなければならない。基板の移動搬送は、モータ等の駆動手段を介して制御されるが、移動搬送の際の僅かな振動によって回転電極と基板との間の間隙は変動し、この変動によって均質な薄膜が形成されないといった問題がある。また、プラズマを効率よく生成するために、上記間隙を狭くした場合、振動等の僅かな変動により回転電極が基板に接触する不都合も生じる。
【0006】
一方、回転電極と基板との間の間隙を大きくして上記問題や不都合を回避しようとすると、プラズマにより活性化した反応ガスがお互いに反応して生成される微粒子(パーティクル)が大量発生し、基板に形成される薄膜に付着し、凹凸の小さい滑らかな均質な薄膜が形成されない問題が生じる。実際に、回転電極と基板との間の間隙を大きくしても、特許文献1の薄膜形成方法では、この問題に直面し均質な膜を得ることが出来ない。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するために、回転電極と基板との間の間隙を従来に比べて広く設定しても、上記パーティクルの発生を抑制することができ、しかも薄膜の均質化において上記間隙の変動の影響が小さい薄膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、900hPa以上の圧力雰囲気中において、基板に対して回転中心軸が平行な円筒状の回転電極に電力を供給することで、この回転電極と基板との間の間隙にプラズマを生成し、生成したプラズマを用いて、供給された反応ガスの化学反応により基板に薄膜を形成する薄膜形成方法であって、前記回転電極と基板との間の間隙長さは2mm以上であり、前記回転電極には、周波数が100kHz〜1MHzの高周波電力が供給されることを特徴とする薄膜形成方法を提供する。
【0009】
その際、前記周波数は300kHz〜800kHzであることが好ましい。
又、前記回転電極と基板との間の間隙長さは2mm以上であるが、前記回転電極と基板との間の間隙のうち、間隙の最も狭い部分(ギャップともいう)は、3〜7mmであり、好ましくは3〜5mmである。
前記薄膜として、金属酸化膜を形成することが好ましい。その際、前記金属酸化膜は、SiO2、TiO2、ZnO及びSnOの群から選択される1種以上の酸化膜であることが好ましく、より好ましくは、前記金属酸化膜は、SiO2又はTiO2の酸化膜である。
また、薄膜の形成される基板は、例えば透明性を有するガラス板が挙げられるが、これに限定されるものではない。
また、前記薄膜形成方法では、前記基板を前記回転電極に対して回転中心軸と略垂直方向に移動搬送しながら、前記基板に薄膜を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、回転電極に周波数が100kHz〜1MHzの高周波電力を供給することにより、従来の13.56MHzや60MHz等のより周波数が高い高周波電力に比べて生成するプラズマ密度が低下する。このため、回転電極と基板との間の間隙を従来に比べて広く設定した場合でも、プラズマにより活性化した反応ガスがお互いに反応して生成される大量のパーティクルの発生を抑制することができる。その結果、基板上に凹凸が少なく均質な薄膜を形成することができる。また、回転電極に周波数が100kHz〜1MHzの高周波電力を供給することにより、回転電極と基板との間の間隙を従来に比べて広く設定した場合でも、プラズマ中で活性化された反応種が気相で消費されずに基板に到達できるため、パーティクルの発生が抑制される。このため、回転電極と基板との間の間隙を従来に比べて広く設定した場合でも、凹凸が少なく均質な薄膜を形成することができる。
また、回転電極と基板との間の間隙が2mm以上あるので、回転炉や搬送ベルトで移送する場合でも、基板と回転電極との接触を防ぐことができると共に、従来の13.56MHzや60MHz等のより周波数が高い高周波電力に比べて放電電圧が高くなるので、回転電極と基板の間において間隔が広い部分での放電が発生可能となることで、プラズマの生成領域は広がり、かつ、成膜速度は従来の同じ間隔の成膜速度に比べて高いので、薄膜を安定して短時間に形成することができる。これにより、大面積かつ均質な薄膜の形成を、従来に比べてより高速かつ安定的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付の図面に示す実施形態に基づいて、本発明の薄膜形成方法を詳細に説明する。
【0012】
図1(a)は、本発明の薄膜形成方法を実施する薄膜形成装置10の概略模式図であり、図1(b)は、薄膜形成装置10を側面から見た模式図である。
薄膜形成装置10は、圧力が900hPa以上で大気圧に近い圧力雰囲気中でプラズマを生成し、このプラズマを利用して供給された反応ガスGを活性化させて、基板Sに薄膜を形成する、いわゆるプラズマCVD装置である。薄膜形成装置10は、回転電極12、基板移動搬送装置14及び高周波電源16を主に有して構成される。
【0013】
回転電極12は、基板に対して平行な回転中心軸を備える表面が滑らかな金属製円筒状回転体で構成されている。回転電極12は、図示されない駆動モータに接続されて、例えば2m/秒〜50m/秒の周速度で回転する。
回転電極12を回転させるのは、大気圧に近い圧力雰囲気中で反応ガスGをプラズマ生成領域Rに積極的に取り込み、反応ガスGを効率よく活性化させるためである。大気圧に近い圧力雰囲気においてプラズマを生成させるには基板と電極との間の間隙を狭くしなければ安定した放電を行うことができないが、一方、基板と電極との間の間隙を狭くすると、薄膜の原料となる反応ガスが効率よく供給されない。このため、回転電極12の回転により反応ガスを引きずって粘性流をつくり、電極と基板との間の間隙に有効に反応ガスを供給するように回転電極12を用いる。特に、短時間で薄膜を形成するためには、成膜速度を向上させることが必要であり、この成膜速度の向上のためには、反応ガスを効率よく供給することが望まれる。
【0014】
回転電極12と基板Sとの間の間隙の長さは2〜7mmであり、回転電極12と基板Sとの間の最も狭くなった部分の長さは、好ましくは3〜7mmである。間隙の長さを7mm超とすると、成膜速度の低下や、安定したプラズマを得られにくいという傾向がある。より好ましくは3〜5mmである。従来の成膜方法(上記特許文献1の成膜方法)では、最も狭くなった部分の間隙の長さは0.01〜1mmであるのに対し、本発明では2mm以上である点で大きく異なる。
【0015】
プラズマの生成のための放電ガスとしては例えばHeガスが用いられ、回転電極12と基板Sとの間の間隙に供給される。また、反応ガスGとしては、例えばSiO2薄膜を基板S上に形成する場合、TEOS(テトラエトキシシラン;正珪酸四エチル)を原料ガスとして用い、またO2を酸化ガスとして用いる。この場合、例えば、TEOSの分圧を8hPa(=6Torr)、O2の分圧を16hPa(=12Torr)とし、さらに放電ガスであるHeと合わせた全圧を1013hPa(=760Torr)とする。なお、圧力調整が容易で装置構成が容易になるという観点からは、全圧で1100hPa以下が良い。
【0016】
基板移動搬送装置14は、基板Sに薄膜を形成するために回転電極12に対して基板Sの位置を相対的に移動させる装置である。具体的に、図示されない駆動モータ等に接続された回転ローラによって基板Sを、一定の移動速度で移動搬送する。なお、成膜中に基板Sを移動搬送すると、移動に伴って基板Sの位置が振動等により上下方向に微妙に変動し、回転電極12と基板Sとの間の間隙が変動する。これにより、従来の方法では、成膜速度に影響を与える。しかし、本発明の薄膜形成方法では、後述するように、上記間隙を2〜7mm、好ましくは間隙の最も狭い部分の長さを3〜7mmとし、より好ましくは3〜5mmの範囲に設定することで、後述する供給電力の周波数と相俟って間隙の長さの変動による成膜速度の影響を小さく抑え、均質な薄膜の形成に寄与する。
基板移動搬送装置14の移動機構は、回転ローラのほか、無端ベルトを用いた移動機構であってもよく、本発明において移動機構は特に制限されない。
【0017】
高周波電源16は、回転電極12に回転電極12の回転中心軸を介して高周波電力を供給するものである。高周波電力の周波数は100kHz〜1MHzである。
従来の成膜方法(上記特許文献1)では、13.56MHz以上、好ましくは150MHz以上であるのに対し、本発明では、100kHz〜1MHzを周波数の範囲とする。このように周波数の範囲が従来の薄膜形成方法と異なるのは、上述したように、回転電極12と基板Sとの間の間隙は2mm以上であり、この間隙の長さに適した周波数を設定するためである。周波数を100kHz〜1MHzとすることで、後述するようにパーティクルの発生を抑制することができ、滑らかな薄膜を形成することができる。
【0018】
周波数の下限を100KHzとするのは、大気圧付近の圧力雰囲気では、間隙2mm以上において安定した放電が生じないためである。また、周波数の上限を1MHzとするのは、間隙2mm以上において気相反応により発生したパーティクルによる薄膜形成の阻害(凹凸の大きい薄膜の形成や成膜速度の低下)を防ぐためである。
【0019】
従来、13.56MHz以上の周波数の高周波電力が供給されて生成したプラズマ領域に反応ガスが供給され、プラズマエネルギにより反応ガスが活性化して、基板表面に薄膜が形成されるが、上記間隙を拡大することにより、基板表面に反応ガスが到達する前に反応ガスが二次的な反応を起こして気相中で粒子として成長し、大量のパーティクルの発生を引き起こしていた。しかし、本発明のように、高周波電力の周波数を100kHz〜1MHzとすることにより、生成されるプラズマ密度を抑制し、プラズマエネルギによる二次的な反応を抑制し、大量のパーティクルの生成を抑制する。パーティクルのない良質の膜が得られると言う点から高周波電力の周波数は、300kHz〜800kHzが好ましい。
【0020】
本発明は、以上のように、円筒状の回転電極の回転速度を利用して反応ガスをプラズマ生成領域に引き込み成膜を行うものである。
【実施例】
【0021】
〔実験1〕
本発明における薄膜形成方法及び従来の薄膜形成方法を用いて薄膜を形成した。
基板Sとしてガラス基板を用い、SiO2膜をガラス基板に形成させた。回転電極12の直径は100mmであり、回転電極の回転数は2500rpmとした。
高周波電力の周波数は、本発明の薄膜形成方法では400kHzを用い、一方従来の薄膜形成方法では13.56MHzを用いた。
プラズマ生成のためにHeを、図1(a)、(b)に示す装置を囲む反応容器室内に放電ガスとして取り込むとともに、原料ガスGとしてTEOSを反応容器内に取り込んだ。さらに、酸化ガスとしてO2を反応容器内に取り込んだ。反応容器内における原料ガスの分圧を8hPa(=6Torr)とし、酸化ガスとしてO2の分圧を16hPa(=12Torr)とし、放電ガスであるHeと合わせて全圧を1013hPa(=760Torr)とした。基板Sの移動搬送速度は3.3mm/秒、または0mm/秒(停止)とした。
周波数400kHzの高周波電力の場合、300Wの電力を供給し、周波数13.56MHzの場合、800Wの電力を供給した。
【0022】
図2は、回転電極12と基板Sとの間の間隙のうち、最も間隙の狭い部分の長さ(ギャップ)と、このとき成膜された薄膜のヘイズ率との関係を示すグラフである。
図2に示すグラフから判るように、ギャップ1〜5mmの範囲において、400kHzの高周波電力では、形成された薄膜のヘイズ率が略0%である。これより、形成された薄膜は表面が滑らかであり、上記パーティクルが薄膜に付着されていないことがわかる。一方、13.56MHzの高周波電力では、ギャップ1〜4mmで薄膜が形成されたが、ギャップ5mmでは薄膜は形成されなかった。又、ギャップが大きくなる程ヘイズ率が大きくなる。これより、基板表面に反応ガスが到達する前に二次的な反応を起こして気相中でパーティクルを生成し、基板に形成された薄膜上に付着し、薄膜表面が凹凸形状になると、考えることができる。
なお、本実験では形成された薄膜表面の凹凸形状の指標としてヘイズ率を用い、このヘイズ率を計測して評価した。測定対象面の凹凸による光の拡散を利用したヘイズ率は、全光線透過率に対する拡散透過率の比率を%表示したものである。詳しくは、JIS K 7136、K 7361に規定されている。
【0023】
図3(a)は、高周波電力400kHz、ギャップ5mmのときに基板Sに形成された薄膜の表面状態を撮影したSEM撮影画像であり、図3(b)は、高周波電力13.56MHz、ギャップ3mmのときに基板Sに形成された薄膜の表面状態を撮影したSEM撮影画像である。
図3(b)に示す薄膜の表面凹凸は、図3(a)に示す薄膜の表面凹凸に比べて大きく、図3(b)に示す薄膜の表面には大量のパーティクルが成膜中に堆積して凹凸形状を成していることがわかる。
【0024】
このように、供給される高周波電力の周波数を100kHz〜1MHzとすることで、パーティクルのない均質な薄膜を形成することができる。
【0025】
図4は、回転電極12と基板Sとの間のギャップと、このときの成膜速度との関係を示すグラフである。
図4に示す成膜速度の単位(nm・m/分)は、1分あたりの基板Sの移動搬送速度(m/分)とそのとき成膜される薄膜の厚さ(nm)の積を意味している。
【0026】
図4によると、周波数400kHz及び13.56MHzともに、ギャップが大きくなる程成膜速度は低下するが、ギャップによる成膜速度の低下は周波数400kHzの方が周波数13.56MHzに比べて小さく、ギャップの影響を受けにくいことがわかる。このため、ギャップ1〜7mmにおいて周波数400kHzの方が周波数13.56MHzに比べて成膜速度が高い(成膜速度の向上)。周波数400kHzの方が周波数13.56MHzに比べて成膜速度が高いのは、周波数400kHzの方が、活性化された反応ガスの分子が二次反応により途中でパーティクルになる割合が小さく効率よく基板S上に薄膜を形成するためである。
【0027】
このように、供給される高周波電力の周波数を100kHz〜1MHzとすることで、成膜速度の向上及びギャップの変動に対する成膜速度の安定性を実現する。
【0028】
図5(a)は、周波数400kHzにおける成膜速度の分布を示すグラフであり、(b)は、周波数13.56MHzにおける成膜速度の分布を示すグラフである。
グラフにおける横軸は、回転電極12に対する基板S上の位置を示し、回転電極12と基板Sとの間の間隙の最も狭くなっている位置を0として、回転電極12の回転方向上流側の位置を正とし、下流側の位置を負としている。図5(a)、(b)では、基板Sの移動搬送速度を静止した状態であり、基板Sは接地板Tに載置されており、回転電極12に対して静止している。
この場合においても、先と同様に、反応容器内における原料ガスTEOSの分圧を8hPa(=6Torr)とし、酸化ガスO2の分圧を16hPa(=12Torr)とし、放電ガスであるHeと合わせて全圧を1013hPa(=760Torr)とし、SiO2膜をガラス基板に形成した。
図5(a)は、高周波電力の周波数が400kHzの条件における成膜速度の分布を、ギャップ1〜5mmの別に表し、図5(b)は、高周波電力の周波数が13.56MHzの条件における成膜速度の分布を、ギャップ1〜4mmの別に表している。また、図5(a),(b)の各位置における成膜速度を積分した値が、概ね図4の成膜速度に相当するものである。
【0029】
図5(a)から判るように、周波数400kHzにおける成膜速度の分布はブロードな幅広形状を成し、かつギャップの大小に対して略不変の一定の分布形状を成す。一方、図5(b)から判るように、周波数13.56MHzにおける成膜速度の分布は急峻な形状を成し、かつギャップの大小に対して成膜速度のピークレベルが大きく変わる(ギャップが大きくなる程、成膜速度が小さくなる)。これは、周波数400kHzでは十分な幅広のプラズマ生成領域Rができ、ブロードな幅広形状の成膜速度の分布が得られることを意味する。しかも、ギャップが変動してもプラズマ生成領域Rの変化は少なく、ギャップが変動しても成膜速度の変化が少ないと考えられる。
この結果、基板Sが成膜中に移動搬送され、この移動搬送時の振動等によりギャップが変動しても、周波数400kHzでは成膜速度がギャップに対して略一定となるので、形成される薄膜の厚さも略一定のものができる。このように周波数400kHzにおける成膜速度はギャップの変動に対して安定している(成膜速度の安定性)。
【0030】
なお、本発明で形成される薄膜の種類は特に制限されないが、金属酸化膜であることが好ましく、例えば、ガラス基板に、SiO2、TiO2、ZnO及びSnOの群から選択される1種類以上の金属酸化膜である。より好ましくは、ガラス基板に形成するSiO又はTiOの金属酸化膜であることが好ましい。
また、原料ガスは、TEOSの他に、金属アルコキシド、アルキル化金属、金属錯体等の有機金属化合物や金属ハロンゲン化物等を用いることができる。例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、ジブチル錫ジアセテート、亜鉛アセチルアセトナート等を好適に用いることができる。
【0031】
〔実験2〕
実験1と同様に周波数、ギャップを下記表1の様に変化させて成膜を行い、薄膜表面の凹凸を表す指標としてヘイズ率を測定し、薄膜を判定した。ヘイズ率1%未満を◎、ヘイズ率2%以下を○と記載し、ヘイズ2%超のものは評価を×と記載した。結果を表1に示す。
【表1】

【0032】
本発明の実施例である例5〜12の結果からわかるように、周波数100kHz〜1MHzの範囲、かつギャップが2〜7mmの範囲において、いずれもヘイズ率は2%以下で凹凸の少ない滑らかな薄膜が得られた。さらに例7〜10の結果では、周波数300kHz〜800kHzの範囲、かつギャップが2〜7mmの範囲において、ヘイズ率1%未満の良好な膜が得られた。これに対して、例1〜3及び例13は、ヘイズ率が2%を越し、表面凹凸の大きい不均質な薄膜となった。また、例4及び例14では安定した放電が生じなかった。
以上の結果より、本発明の方法により形成される薄膜は凹凸の少ない滑らかな薄膜であることがわかる。
【0033】
以上、本発明の薄膜形成方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態や実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)は、本発明の薄膜形成方法を実施する薄膜形成装置の概略模式図であり、(b)は、薄膜形成装置の側面から見た模式図である。
【図2】回転電極と基板との間のギャップと、このとき成膜された薄膜のヘイズ率との関係を示すグラフである。
【図3】(a)は、高周波電力400kHz、ギャップ5mmのときに基板に形成された薄膜の表面状態を撮影したSEM撮影画像であり、(b)は、高周波電力13.56MHz、ギャップ3mmのときに基板に形成された薄膜の表面状態を撮影したSEM撮影画像である。
【図4】回転電極と基板との間のギャップと、このときの成膜速度との関係を示すグラフである。
【図5】(a)は周波数400kHzにおける成膜速度の分布を示すグラフであり、(b)は13.56MHzにおける成膜速度の分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0035】
10 薄膜形成装置
12 回転電極
14 基板移動搬送装置
16 高周波電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
900hPa以上の圧力雰囲気中において、基板に対して回転中心軸が平行な円筒状の回転電極に電力を供給することで、この回転電極と基板との間の間隙にプラズマを生成し、生成したプラズマを用いて、供給された反応ガスの化学反応により基板に薄膜を形成する薄膜形成方法であって、
前記回転電極と基板との間の間隙長さは2mm以上7mm以下であり、
前記回転電極には、周波数が100kHz〜1MHzの高周波電力が供給されることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項2】
前記薄膜として、金属酸化膜を形成する請求項1に記載の薄膜形成方法。
【請求項3】
前記金属酸化膜は、SiO2、TiO2、ZnO及びSnOの群から選択される1種以上の酸化膜である請求項2に記載の薄膜形成方法。
【請求項4】
前記基板を前記回転電極に対して回転中心軸と略垂直方向に移動搬送しながら、前記基板に薄膜を形成する請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−79233(P2009−79233A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167922(P2006−167922)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】