説明

薄膜形成装置の洗浄方法、薄膜形成方法及び薄膜形成装置

【課題】装置内部に付着した付着物に対するエッチングレートを高くすることができる薄膜形成装置の洗浄方法等を提供する。
【解決手段】制御部100は、昇温用ヒータ16を制御して反応管2内を所定の温度に加熱した状態で、処理ガス導入管17から反応管2内にフッ素ガスとフッ化水素ガスと塩素ガスとを含むクリーニングガスを供給する。供給されたクリーニングガスは反応管2内で活性化され、薄膜形成装置1の内部に付着した付着物を除去して薄膜形成装置1の内部を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜形成装置の洗浄方法、薄膜形成方法及び薄膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、CVD(Chemical Vapor Deposition)等の処理により、被処理体、例えば、半導体ウエハにシリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の薄膜を形成する薄膜形成処理が行われている。このような薄膜形成処理では、例えば、所定の温度および圧力に設定された反応室内に処理ガスを供給することによって処理ガスに熱反応を起こさせ、この熱反応により生成された反応生成物が半導体ウエハの表面に堆積することにより、半導体ウエハの表面に薄膜が形成される。
【0003】
ところで、薄膜形成処理によって生成される反応生成物は、半導体ウエハの表面だけでなく、熱処理装置の内部にも堆積(付着)してしまう。この反応生成物が熱処理装置内に付着した状態で薄膜形成処理を引き続き行うと、やがて、反応生成物が剥離してパーティクルを発生しやすくなる。また、このパーティクルが半導体ウエハに付着してしまうと、製造される半導体装置の歩留りが低下してしまう。
【0004】
このため、薄膜形成処理を複数回行った後には、反応管をヒータにより所定の温度に加熱し、加熱された反応管内にクリーニングガス、例えば、フッ素ガスとフッ化水素ガスを供給して、熱処理装置内に付着した反応生成物を除去(エッチング)する熱処理装置の洗浄が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−59915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような薄膜形成装置の洗浄においては、装置内部に付着した付着物に対するエッチングレートをさらに高くすることが求められている。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、装置内部に付着した付着物に対するエッチングレートを高くすることができる薄膜形成装置の洗浄方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる薄膜形成装置の洗浄方法は、
薄膜形成装置の反応室内に処理ガスを供給して被処理体に薄膜を形成した後、装置内部に付着した付着物を除去する薄膜形成装置の洗浄方法であって、
所定の温度に加熱された反応室内に、フッ素ガスとフッ化水素ガスと塩素ガスとを含むクリーニングガスを供給することにより、前記付着物を除去して薄膜形成装置の内部を洗浄する洗浄工程を備える、ことを特徴とする。
【0009】
前記洗浄工程では、例えば、前記クリーニングガスを希釈ガスで希釈し、該希釈したクリーニングガスを前記反応室内に供給する。
前記希釈ガスには、例えば、不活性ガスを用いる。
前記被処理体に形成される薄膜は、例えば、シリコン窒化膜である。この場合、前記洗浄工程では、前記被処理体にシリコン窒化膜を形成することにより薄膜形成装置の内部に付着した窒化珪素を、前記クリーニングガスで除去する。
【0010】
本発明の第2の観点にかかる薄膜形成方法は、
被処理体に薄膜を形成する薄膜形成工程と、
本発明の第1の観点にかかる薄膜形成装置の洗浄方法により装置内部に付着した付着物を除去して薄膜形成装置の内部を洗浄する工程と、
を備える、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の観点にかかる薄膜形成装置は、
被処理体が収容された反応室内に処理ガスを供給して被処理体に薄膜を形成する薄膜形成装置であって、
前記反応室内を所定の温度に加熱する加熱手段と、
前記反応室内にフッ素ガスとフッ化水素ガスと塩素ガスとを含むクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給手段と、
薄膜形成装置の各部を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記加熱手段を制御して反応室内を所定の温度に加熱した状態で、当該反応室内にクリーニングガスを供給して該クリーニングガスを活性化させ、該活性化したクリーニングガスにより前記付着物を除去して薄膜形成装置の内部を洗浄するように前記クリーニングガス供給手段を制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装置内部に付着した付着物に対するエッチングレートを高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の熱処理装置を示す図である。
【図2】図1の制御部の構成を示す図である。
【図3】シリコン窒化膜の形成方法を説明する図である。
【図4】シリコン窒化膜に対するエッチングレートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の薄膜形成装置の洗浄方法、薄膜形成方法及び薄膜形成装置について説明する。本実施の形態では、本発明の薄膜形成装置に図1に示すバッチ式の縦型熱処理装置を用い、半導体ウエハにシリコン窒化膜を形成する場合を例に本発明を説明する。
【0015】
図1に示すように、熱処理装置1は、反応室を形成する反応管2を備えている。反応管2は、例えば、長手方向が垂直方向に向けられた略円筒状に形成されている。反応管2は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。
【0016】
反応管2の上端には、上端側に向かって縮径するように略円錐状に形成された頂部3が設けられている。頂部3の中央には反応管2内のガスを排気するための排気口4が設けられ、排気口4には排気管5が気密に接続されている。排気管5には、図示しないバルブ、後述する真空ポンプ127などの圧力調整機構が設けられ、反応管2内を所望の圧力(真空度)に制御する。
【0017】
反応管2の下方には、蓋体6が配置されている。蓋体6は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。また、蓋体6は、後述するボートエレベータ128により上下動可能に構成されている。そして、ボートエレベータ128により蓋体6が上昇すると、反応管2の下方側(炉口部分)が閉鎖され、ボートエレベータ128により蓋体6が下降すると、反応管2の下方側(炉口部分)が開口される。
【0018】
蓋体6の上部には、保温筒7が設けられている。保温筒7は、反応管2の炉口部分からの放熱による反応管2内の温度低下を防止する抵抗発熱体からなる平面状のヒータ8と、このヒータ8を蓋体6の上面から所定の高さに支持する筒状の支持体9とから主に構成されている。
【0019】
また、保温筒7の上方には、回転テーブル10が設けられている。回転テーブル10は、被処理体、例えば、半導体ウエハWを収容するウエハボート11を回転可能に載置する載置台として機能する。具体的には、回転テーブル10の下部には回転支柱12が設けられ、回転支柱12はヒータ8の中央部を貫通して回転テーブル10を回転させる回転機構13に接続されている。回転機構13は図示しないモータと、蓋体6の下面側から上面側に気密状態で貫通導入された回転軸14を備える回転導入部15とから主に構成されている。回転軸14は回転テーブル10の回転支柱12に連結され、モータの回転力を回転支柱12を介して回転テーブル10に伝える。このため、回転機構13のモータにより回転軸14が回転すると、回転軸14の回転力が回転支柱12に伝えられて回転テーブル10が回転する。
【0020】
回転テーブル10上には、ウエハボート11が載置されている。ウエハボート11は、半導体ウエハWを垂直方向に所定の間隔をおいて複数枚収容可能に構成されている。このため、回転テーブル10を回転させるとウエハボート11が回転し、この回転により、ウエハボート11内に収容された半導体ウエハWが回転する。ウエハボート11は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。
【0021】
また、反応管2の周囲には、反応管2を取り囲むように、例えば、抵抗発熱体からなる昇温用ヒータ16が設けられている。この昇温用ヒータ16により反応管2の内部が所定の温度に加熱され、この結果、半導体ウエハWが所定の温度に加熱される。
【0022】
反応管2の下端近傍の側壁には、複数の処理ガス導入管17が挿通(接続)されている。なお、図1では処理ガス導入管17を1つだけ描いている。処理ガス導入管17には、図示しない処理ガス供給源が接続されており、処理ガス供給源から処理ガス導入管17を介して所望量の処理ガスが反応管2内に供給される。このような処理ガスとしては、成膜用ガス、クリーニングガス等がある。
【0023】
成膜用ガスは、半導体ウエハWに薄膜を形成するためのガスであり、形成する薄膜の種類に応じて所望のガスが用いられている。本実施の形態では、半導体ウエハ10上にシリコン窒化膜を形成することから、処理ガスとして、ヘキサクロロジシラン(SiCl)とアンモニア(NH)とを含むガスが用いられる。
【0024】
クリーニングガスは、熱処理装置1の内部に付着した付着物を除去するためのガスであり、フッ素(F)ガスとフッ化水素(HF)ガスと塩素(Cl)ガスとを含むガスが用いられている。本実施の形態では、後述するように、フッ素ガスとフッ化水素ガスと塩素ガスと窒素(N)ガスとを含むガスが用いられている。
【0025】
反応管2の下端近傍の側面には、パージガス供給管18が挿通されている。パージガス供給管18には、図示しないパージガス供給源が接続されており、パージガス供給源からパージガス供給管18を介して所望量のパージガス、例えば、窒素(N)が反応管2内に供給される。
【0026】
また、熱処理装置1は、装置各部の制御を行う制御部100を備えている。図2に制御部100の構成を示す。図2に示すように、制御部100には、操作パネル121、温度センサ(群)122、圧力計(群)123、ヒータコントローラ124、MFC制御部125、バルブ制御部126、真空ポンプ127、ボートエレベータ128等が接続されている。
【0027】
操作パネル121は、表示画面と操作ボタンとを備え、オペレータの操作指示を制御部100に伝え、また、制御部100からの様々な情報を表示画面に表示する。
【0028】
温度センサ(群)122は、反応管2内部の各ゾーンに設けられたT/C(サーモカップル)温度、又は、昇温用ヒータ16に設けられた各ゾーンのT/C温度、排気管5内部の温度等を測定し、その測定値を制御部100に通知する。
圧力計(群)123は、反応管2内、排気管5内等の各部の圧力を測定し、その測定値を制御部100に通知する。
【0029】
ヒータコントローラ124は、ヒータ8、及び、昇温用ヒータ16を個別に制御するためのものであり、制御部100からの指示に応答して、これらに通電してこれらを加熱し、また、これらの消費電力を個別に測定して、制御部100に通知する。
【0030】
MFC制御部125は、処理ガス導入管17、及び、パージガス供給管18に設けられた図示しないマスフローコントローラ(MFC)を制御して、これらに流れるガスの流量を制御部100から指示された量にするとともに、実際に流れたガスの流量を測定して、制御部100に通知する。
【0031】
バルブ制御部126は、各管に配置されたバルブの開度を制御部100から指示された値に制御する。真空ポンプ127は、排気管5に接続され、反応管2内のガスを排気する。
【0032】
ボートエレベータ128は、蓋体6を上昇させることにより、回転テーブル10上に載置されたウエハボート11(半導体ウエハW)を反応管2内にロードし、蓋体6を下降させることにより、回転テーブル10上に載置されたウエハボート11(半導体ウエハW)を反応管2内からアンロードする。
【0033】
制御部100は、レシピ記憶部111と、ROM112と、RAM113と、I/Oポート114と、CPU115と、これらを相互に接続するバス116とから構成されている。
【0034】
レシピ記憶部111には、セットアップ用レシピと複数のプロセス用レシピとが記憶されている。熱処理装置1の製造当初は、セットアップ用レシピのみが格納される。セットアップ用レシピは、各熱処理装置に応じた熱モデル等を生成する際に実行されるものである。プロセス用レシピは、ユーザが実際に行う熱処理(プロセス)毎に用意されるレシピであり、例えば、反応管2への半導体ウエハWのロードから、処理済みのウエハWをアンロードするまでの、各部の温度の変化、反応管2内の圧力変化、処理ガスの供給の開始及び停止のタイミングと供給量などを規定する。
【0035】
ROM112は、EEPROM、フラッシュメモリ、ハードディスクなどから構成され、CPU115の動作プログラム等を記憶する記録媒体である。
RAM113は、CPU115のワークエリアなどとして機能する。
【0036】
I/Oポート114は、操作パネル121、温度センサ122、圧力計123、ヒータコントローラ124、MFC制御部125、バルブ制御部126、真空ポンプ127、ボートエレベータ128等に接続され、データや信号の入出力を制御する。
【0037】
CPU(Central Processing Unit)115は、制御部100の中枢を構成し、ROM112に記憶された制御プログラムを実行し、操作パネル121からの指示に従って、レシピ記憶部111に記憶されているレシピ(プロセス用レシピ)に沿って、熱処理装置1の動作を制御する。すなわち、CPU115は、温度センサ(群)122、圧力計(群)123、MFC制御部125等に反応管2内、処理ガス導入管17内、及び、排気管5内の各部の温度、圧力、流量等を測定させ、この測定データに基づいて、ヒータコントローラ124、MFC制御部125、バルブ制御部126、真空ポンプ127等に制御信号等を出力し、上記各部がプロセス用レシピに従うように制御する。
バス116は、各部の間で情報を伝達する。
【0038】
次に、以上のように構成された熱処理装置1の洗浄方法を含む薄膜形成方法について説明する。本発明の薄膜形成方法は、被処理体に薄膜を形成する薄膜形成ステップと、本発明の薄膜形成装置の洗浄方法である、薄膜形成装置の内部に付着した付着物を洗浄する洗浄ステップとを備えている。本実施の形態では、半導体ウエハ10上にシリコン窒化膜を形成する薄膜形成ステップと、薄膜形成ステップにより熱処理装置1の内部に付着した窒化珪素を除去(洗浄)する洗浄ステップとを有する場合を例に、図3に示すレシピを参照して、本発明の薄膜形成装置の洗浄方法及び薄膜形成方法について説明する。なお、以下の説明において、熱処理装置1を構成する各部の動作は、制御部100(CPU115)により制御されている。
【0039】
まず、成膜ステップについて説明する。
まず、被処理体としての半導体ウエハWを反応管2内に収容(ロード)するロードステップを実行する。具体的には、ボートエレベータ128により蓋体6が下降された状態で、図3(c)に示すように、パージガス供給管18から反応管2内に所定量の窒素を供給するとともに、昇温用ヒータ16により反応管2内を所定のロード温度に設定する。
【0040】
次に、シリコン窒化膜を形成する半導体ウエハWが収容されているウエハボート11を蓋体6(回転テーブル10)上に載置する。そして、ボートエレベータ128により蓋体6を上昇させ、半導体ウエハW(ウエハボート11)を反応管2内にロードする(ロード工程)。
【0041】
次に、パージガス供給管18から反応管2内に、図3(c)に示すように、所定量の窒素を供給し、反応管2内を所定の圧力、例えば、図3(b)に示すように、66.5Pa(0.5Torr)に設定する。また、昇温用ヒータ16により反応管2内を所定の温度、例えば、図3(a)に示すように、600℃に設定する。そして、この減圧及び加熱操作を、反応管2が所定の圧力及び温度で安定するまで行う(安定化工程)。
【0042】
反応管2内が所定の圧力及び温度で安定すると、パージガス供給管18からの窒素ガスの供給を停止する。そして、処理ガス導入管17から処理ガスとしてのヘキサクロロジシラン(SiCl)を所定量、例えば、0.1slm、アンモニア(NH)を所定量、例えば、1slmを反応管2内に導入する。
【0043】
反応管2内に導入されたヘキサクロロジシラン及びアンモニアは、反応管2内の熱により熱分解反応が起こり、半導体ウエハWの表面に窒化珪素(Si)が堆積される。これにより、半導体ウエハWの表面にシリコン窒化膜(Si膜)が形成される(成膜工程)。
【0044】
半導体ウエハWの表面に所定厚のシリコン窒化膜が形成されると、処理ガス導入管17からのヘキサクロロジシラン及びアンモニアの供給を停止する。また、パージガス供給管18からの窒素の供給を停止する。そして、反応管2内のガスを排出するとともに、例えば、図3(c)に示すように、パージガス供給管18から反応管2内に所定量の窒素を供給して反応管2内のガスを反応管2外に排出する(パージ、Vacuum工程)。なお、反応管2内のガスを確実に排出するために、反応管2内のガスの排出及び窒素ガスの供給を複数回繰り返すことが好ましい。
【0045】
最後に、パージガス供給管18から所定量の窒素ガスを供給して、反応管2内を常圧に戻した後、ボートエレベータ128により蓋体6を下降させ、ウエハボート10(半導体ウエハW)を反応管2からアンロードする(アンロード工程)。
【0046】
以上のような薄膜形成ステップを複数回行うと、薄膜形成ステップによって生成される窒化珪素が、半導体ウエハWの表面だけでなく、反応管2内や各種の治具等にも堆積(付着)する。このため、薄膜形成ステップを所定回数行った後、熱処理装置1の内部に付着した窒化珪素を除去する洗浄ステップが行われる。洗浄ステップは、熱処理装置1(反応管2)内に、フッ素ガス(F)と、フッ化水素(HF)ガスと、塩素(Cl)ガスと、希釈ガスとしての窒素ガス(N)とを含むクリーニングガスを供給することにより行われる。以下、熱処理装置1の洗浄処理について説明する。
【0047】
まず、ボートエレベータ128により蓋体6が下降された状態で、図3(c)に示すように、パージガス供給管18から反応管2内に所定量の窒素を供給するとともに、昇温用ヒータ16により反応管2内を所定のロード温度に設定する。
【0048】
次に、半導体ウエハWが収容されていないウエハボート11を蓋体6(回転テーブル10)上に載置する。そして、ボートエレベータ128により蓋体6を上昇させ、ウエハボート11を反応管2内にロードする(ロード工程)。
【0049】
次に、パージガス供給管18から反応管2内に、図3(c)に示すように、所定量の窒素を供給し、反応管2内を所定の圧力、例えば、図3(b)に示すように、53200Pa(400Torr)に設定する。また、昇温用ヒータ16により反応管2内を所定の温度、例えば、図3(a)に示すように、300℃に設定する。そして、この減圧及び加熱操作を、反応管2が所定の圧力及び温度で安定するまで行う(安定化工程)。
【0050】
ここで、反応管2内の圧力は1330Pa〜80000Pa(10Torr〜600Torr)にすることが好ましい。反応管2内の圧力が1330Paより低いと窒化珪素(付着物)に対するエッチッグレートが低くなるおそれがあり、80000Paより高いと石英に対するエッチッグレートが高くなり選択比が低くなるおそれがあるためである。反応管2内の圧力は13300Pa〜53200Pa(100Torr〜400Torr)にすることがさらに好ましい。
【0051】
反応管2内の温度は、200℃〜600℃にすることが好ましい。反応管2内の温度が200℃より低いと窒化珪素(付着物)に対するエッチッグレートが低くなるおそれがあり、600℃より高いと石英に対するエッチッグレートが高くなり選択比が低くなるおそれがあるためである。反応管2内の温度は、250℃〜400℃にすることがさらに好ましい。
【0052】
反応管2内が所定の圧力及び温度で安定すると、パージガス供給管18からの窒素ガスの供給を停止する。そして、処理ガス導入管17からクリーニングガスとしてのフッ素ガスを所定量、例えば、図3(f)に示すように、2slm、フッ化水素ガスを所定量、例えば、図3(g)に示すように、0.1slm、塩素ガスを所定量、例えば、図3(h)に示すように、0.1slm、窒素ガスを所定量、例えば、図3(c)に示すように、8slm、反応管2内に導入する。
【0053】
反応管2内に導入されたクリーニングガスは、反応管2内の熱により熱分解反応が起こり、クリーニングガス中のフッ素ガスが活性化、すなわち、反応性を有するフリーな原子を多数有した状態になる。さらに、クリーニングガスには、フッ化水素及び塩素ガスが含まれているので、フッ素ガスの活性化が促進される。そして、活性化されたフッ素ガスを含むクリーニングガスが、反応管2内に供給されることにより、反応管2、排気口4、排気管5等の内壁、ウエハボート10、保温筒7等の各種の治具の熱処理装置1の内部に付着した窒化珪素に接触し、窒化珪素がエッチングされる。これにより、熱処理装置1の内部に付着した窒化珪素が除去される(洗浄工程)。
【0054】
熱処理装置1の内部に付着した窒化珪素が除去されると、処理ガス導入管17からのクリーニングガスの供給を停止する。そして、反応管2内のガスを排出するとともに、例えば、図3(c)に示すように、パージガス供給管18から反応管2内に所定量の窒素を供給して反応管2内のガスを反応管2外に排出する(パージ、Vacuum工程)。
【0055】
最後に、パージガス供給管18から所定量の窒素ガスを供給して、反応管2内を常圧に戻した後、ボートエレベータ128により蓋体6を下降させ、ウエハボート10(半導体ウエハW)を反応管2からアンロードする(アンロード工程)。そして、半導体ウエハWが収容されたウエハボート10を蓋体67上に載置し、再び、薄膜形成ステップを実行することにより、熱処理装置1の内部に窒化珪素が付着していない状態で、半導体ウエハW上にシリコン窒化膜を形成することが可能になる。
【0056】
次に、本実施の形態の効果を確認するため、クリーニングガスのエッチングレートを求めた。本例では、石英からなる試験片、SiCからなる試験片、石英片上に3μmのシリコン窒化膜を形成した試験片の3種類の試験片をウエハボート10内に収容し、ウエハボート10を反応管2内に収容した後、クリーニングガスを反応管2内に供給して、各試験片に洗浄処理を施し、各試験片に対するエッチングレートを求めた。
【0057】
実施例1では、前述の実施の形態の洗浄ステップと同様に、フッ素ガスを2slm、フッ化水素ガスを0.1slm、塩素ガスを0.1slm、窒素ガスを8slmからなるクリーニングガスを用いた。比較例1では、フッ素ガスを2slm、窒素ガスを8slmからなるクリーニングガスを用い、比較例2では、フッ素ガスを2slm、フッ化水素ガスを0.1slm、窒素ガスを8slmからなるクリーニングガスを用いた。
【0058】
エッチングレートは、クリーニング前後で試料片の重量を測定し、クリーニングによる重量変化から算出した。この測定では、前述の実施の形態の洗浄ステップと同様に、反応管2内の温度を300℃、反応管2内の圧力を53200Pa(400Torr)に設定した。結果を図4に示す。
【0059】
図4に示すように、実施例1及び比較例1から、フッ素ガスに、フッ化水素ガス及び塩素ガスを含ませることにより、反応管2の温度を上げることなく、窒化珪素に対するエッチングレートを9倍にできることが確認できた。また、実施例1及び比較例2から、フッ素ガス及びフッ化水素ガスに、塩素ガスを含ませることにより、反応管2の温度を上げることなく、窒化珪素に対するエッチングレートを3倍にできることが確認できた。このように、熱処理装置1の装置内部の付着物を除去する薄膜形成装置の洗浄において、フッ素ガスとフッ化水素ガスと塩素ガスとを含むクリーニングガスを用いることにより、窒化珪素に対するエッチングレートを大きく向上できることが確認できた。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態によれば、クリーニングガスにフッ素ガスとフッ化水素ガスと塩素ガスとを含むクリーニングガスを用いることにより、窒化珪素に対するエッチングレートを大きく向上させることができる。
【0061】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な他の実施の形態について説明する。
【0062】
本実施の形態では、熱処理装置1の内部に付着した窒化珪素を除去する場合を例に本発明を説明したが、熱処理装置1の内部に付着する付着物は窒化珪素に限定されるものではなく、例えば、酸化珪素、ポリシリコン、酸化チタン、酸化タンタル、シリカ、シリコンゲルマニウム(SiGe)、BSTO(BaSrTiO)、STO(SrTiO)であってもよい。また、このような付着物は、反応生成物に限定されるものではなく、反応副生成物、例えば、塩化アンモニウムであってもよい。
【0063】
本実施の形態では、クリーニングガスに希釈ガスとしての窒素ガスを含む場合を例に本発明を説明したが、クリーニングガスに希釈ガスを含まなくてもよい。ただし、希釈ガスを含ませることにより洗浄処理時間の設定が容易になることから、クリーニングガスに希釈ガスを含ませることが好ましい。希釈ガスとしては、不活性ガスであることが好ましく、窒素ガスの他に、例えば、ヘリウムガス(He)、ネオンガス(Ne)、アルゴンガス(Ar)が適用できる。
【0064】
本実施の形態では、洗浄工程において、反応管2内の温度を300℃、圧力を53200Pa(400Torr)に設定した場合を例に本発明を説明したが、反応管2内の温度及び圧力は、これに限定されるものではない。また、クリーニング(洗浄ステップ)の頻度は、数回の薄膜形成ステップ毎に行ってもよいが、例えば、1回の薄膜形成ステップ毎に行ってもよい。1回の薄膜形成ステップ毎にクリーニングを行うと、石英やSiC等から構成される装置内部の材料の寿命をさらに延命することができる。
【0065】
上記実施の形態では、薄膜形成装置として、単管構造のバッチ式熱処理装置の場合を例に本発明を説明したが、例えば、反応管2が内管と外管とから構成された二重管構造のバッチ式縦型熱処理装置に本発明を適用することも可能である。また、枚葉式の熱処理装置に本発明を適用することも可能である。また、被処理体は半導体ウエハWに限定されるものではなく、例えば、LCD用のガラス基板等にも適用することができる。
【0066】
本発明の実施の形態にかかる制御部100は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、汎用コンピュータに、上述の処理を実行するためのプログラムを格納した記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROMなど)から当該プログラムをインストールすることにより、上述の処理を実行する制御部100を構成することができる。
【0067】
そして、これらのプログラムを供給するための手段は任意である。上述のように所定の記録媒体を介して供給できる他、例えば、通信回線、通信ネットワーク、通信システムなどを介して供給してもよい。この場合、例えば、通信ネットワークの掲示板(BBS)に当該プログラムを掲示し、これをネットワークを介して搬送波に重畳して提供してもよい。そして、このように提供されたプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の処理を実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、装置内部に付着した付着物を除去、洗浄する薄膜形成装置の洗浄に有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 熱処理装置
2 反応管
3 頂部
4 排気口
5 排気管
6 蓋体
7 保温筒
8 ヒータ
9 支持体
10 回転テーブル
11 ウエハボート
12 回転支柱
13 回転機構
14 回転軸
15 回転導入部
16 昇温用ヒータ
17 処理ガス導入管
18 パージガス供給管
100 制御部
111 レシピ記憶部
112 ROM
113 RAM
114 I/Oポート
115 CPU
116 バス
121 操作パネル
122 温度センサ
123 圧力計
124 ヒータコントローラ
125 MFC制御部
126 バルブ制御部
127 真空ポンプ
128 ボートエレベータ
W 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜形成装置の反応室内に処理ガスを供給して被処理体に薄膜を形成した後、装置内部に付着した付着物を除去する薄膜形成装置の洗浄方法であって、
所定の温度に加熱された反応室内に、フッ素ガスとフッ化水素ガスと塩素ガスとを含むクリーニングガスを供給することにより、前記付着物を除去して薄膜形成装置の内部を洗浄する洗浄工程を備える、ことを特徴とする薄膜形成装置の洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄工程では、前記クリーニングガスを希釈ガスで希釈し、該希釈したクリーニングガスを前記反応室内に供給する、ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成装置の洗浄方法。
【請求項3】
前記希釈ガスに不活性ガスを用いる、ことを特徴とする請求項2に記載の薄膜形成装置の洗浄方法。
【請求項4】
前記被処理体に形成される薄膜はシリコン窒化膜であり、
前記洗浄工程では、前記被処理体にシリコン窒化膜を形成することにより薄膜形成装置の内部に付着した窒化珪素を、前記クリーニングガスで除去する、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の薄膜形成装置の洗浄方法。
【請求項5】
被処理体に薄膜を形成する薄膜形成工程と、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薄膜形成装置の洗浄方法により装置内部に付着した付着物を除去して薄膜形成装置の内部を洗浄する工程と、
を備える、ことを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項6】
被処理体が収容された反応室内に処理ガスを供給して被処理体に薄膜を形成する薄膜形成装置であって、
前記反応室内を所定の温度に加熱する加熱手段と、
前記反応室内にフッ素ガスとフッ化水素ガスと塩素ガスとを含むクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給手段と、
薄膜形成装置の各部を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記加熱手段を制御して反応室内を所定の温度に加熱した状態で、当該反応室内にクリーニングガスを供給して該クリーニングガスを活性化させ、該活性化したクリーニングガスにより前記付着物を除去して薄膜形成装置の内部を洗浄するように前記クリーニングガス供給手段を制御する、ことを特徴とする薄膜形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−209412(P2012−209412A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73590(P2011−73590)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】