説明

薄膜形成装置及び薄膜形成方法

【課題】有機ELデバイスを作製する際、大型の成膜対象物の表面に分布が均一な成膜を行うことができる技術を提供する。
【解決手段】真空槽2内に設けられたプラズマCVD装置3と蒸着重合装置4とを備える。プラズマCVD装置3のプラズマ放出器10は、原料ガス供給源3Bから原料ガスがそれぞれ供給され互いの雰囲気が隔離されたガス分岐ユニット61〜64と、ガス分岐ユニット61〜64において拡散された原料ガスのプラズマを形成するプラズマ形成室51とを有する。蒸着重合装置4の蒸気放出器110は、原料モノマー供給源4Bから原料モノマーの蒸気がそれぞれ供給され互いの雰囲気が隔離された複数の蒸気分岐ユニット101A、101Bと、蒸気分岐ユニット101A、101Bにおいて拡散された複数の原料モノマーの蒸気を混合する蒸気混合室151とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機ELデバイスを用いたディスプレイや照明デバイス等を作製する際に有機ELデバイスを封止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELデバイスを製作する際には、有機層及び電極層を大気中の水分等から保護するため、有機層及び電極層を保護膜によって覆うようにしている。
このような保護膜を形成する装置として、従来から、CVD装置が用いられている。
【0003】
図6は、従来の保護膜形成用のCVD装置を示す概略構成図である。
図6に示すように、このCVD装置201は、基板200が配置される真空槽202を有し、この真空槽202内に面状のシャワーヘッド203が設けられている。
このシャワーヘッド203は、真空槽202の外部に設けられた原料ガス供給部204にガス輸送配管205を介して接続されている。
そして、シャワーヘッド203の基板と対向する部分に多数のノズル206が設けられ、これらノズル206から原料ガスを基板に向って放出するように構成されている。
【0004】
しかし、このような従来技術においては、面状のシャワーヘッドを用いているため、各ノズルから放出される原料ガスの量の分布が均一ではなく、成膜時の膜厚にばらつきが生ずるという問題がある。
また、従来技術においては、複数の原料ガスが配管中で混合した後にシャワーヘッドに供給されるため、配管中において原料ガスが反応することがあった。
【0005】
一方、特許文献1、2に係る従来技術では、曲管によって配管が構成されているため、装置が大型化し、コストアップを招くという問題がある。
さらに、これらの従来技術では、クリーニングをすることが困難であるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−79904号公報
【特許文献2】特開平7−90572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、有機ELデバイスを作製する際、大型の成膜対象物の表面に分布が均一な成膜を行うことができる技術を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、プラズマCVDによる成膜の際に原料ガスの混合による反応を防止することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明は、成膜対象物が配置される真空槽と、前記真空槽内においてプラズマCVDによって前記成膜対象物上に薄膜を形成するプラズマCVD装置と、前記真空槽内において蒸着重合によって前記成膜対象物上に薄膜を形成する蒸着重合装置とを備え、前記プラズマCVD装置は、前記真空槽の外部に設けられた複数の原料ガス供給源と、前記成膜対象物に対して相対移動可能に設けられ、前記原料ガス供給源から供給された当該原料ガスを放電させるための電源に接続され、当該原料ガスのプラズマを前記成膜対象物に向って放出するためのプラズマ放出器とを有し、前記プラズマ放出器は、前記原料ガス供給源から前記原料ガスがそれぞれ供給され且つ互いの雰囲気が隔離された複数の原料ガス拡散部と、当該原料ガス拡散部において拡散された原料ガスのプラズマを形成するプラズマ形成室とを有し、前記原料ガス拡散部は、前記原料ガスの導入側から放出側に向って段階的に区分けされた複数の拡散室を有するとともに、当該複数の拡散室は、互いに隣接する拡散室が前記原料ガスが通過可能な連通口を介して接続され、さらに、当該複数の拡散室のうち最終段の拡散室が、前記原料ガスが通過可能な連通口を介してそれぞれ前記プラズマ形成室に接続され、前記プラズマ形成室には、前記成膜対象物の相対移動方向に対して交差する方向に延びるスリット状のプラズマ放出口が設けられるとともに、前記蒸着重合装置は、前記真空槽の外部に設けられた複数の原料モノマー供給源と、前記成膜対象物に対して相対移動可能に設けられ、前記複数の原料モノマー供給源から供給された原料モノマーの蒸気を前記成膜対象物に向って放出するための蒸気放出器を有し、前記蒸気放出器は、前記複数の原料モノマー供給源から当該原料モノマーの蒸気がそれぞれ供給され且つ互いの雰囲気が隔離された複数の原料モノマー拡散部と、当該原料モノマー拡散部において拡散された複数の原料モノマーの蒸気を混合する蒸気混合室とを有し、前記原料モノマー拡散部は、前記原料モノマーの導入側から放出側に向って段階的に区分けされた複数の拡散室を有するとともに、当該複数の拡散室は、互いに隣接する拡散室が前記原料モノマーの蒸気が通過可能な連通口を介して接続され、さらに、当該複数の拡散室のうち最終段の拡散室が、前記原料モノマーの蒸気が通過可能な連通口を介してそれぞれ前記蒸気混合室に接続され、前記蒸気混合室には、前記成膜対象物の相対移動方向に対して交差する方向に延びるスリット状の蒸気放出口が設けられている薄膜形成装置である。
本発明では、前記プラズマCVD装置のプラズマ放出器におけるプラズマ拡散部の複数の拡散室に、互いの雰囲気を隔離するための隔壁部が設けられている場合にも効果的である。
本発明では、前記プラズマCVD装置のプラズマ放出器における原料ガス拡散部の連通口は、前記原料ガスの導入側から放出側に向って数が増加するように構成されている場合にも効果的である。
本発明では、前記プラズマCVD装置のプラズマ放出器における原料ガス拡散部の複数の連通口は、前記原料ガスの導入側から放出側に向って2n-1個(nは自然数)で増加するように構成されている場合にも効果的である。
本発明では、前記プラズマCVD装置のプラズマ放出器における原料ガス拡散部に、前記原料ガス供給源から供給され拡散される原料ガスを冷却するための冷却手段が設けられている場合にも効果的である。
本発明では、前記プラズマCVD装置のプラズマ放出器に接続可能で且つ当該プラズマ放出器にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給部が前記真空槽の外部に設けられ、当該プラズマ放出器は、バルブの切り換えによって前記原料ガス供給源又は前記クリーニングガス供給源のいずれかに接続されるように構成されている場合にも効果的である。
本発明では、前記蒸着重合装置の蒸気放出器における蒸気拡散部の複数の拡散室に、互いの雰囲気を隔離するための隔壁部が設けられている場合にも効果的である。
本発明では、前記蒸着重合装置の蒸気放出器における蒸気拡散部の連通口は、前記原料モノマーの蒸気の導入側から放出側に向って数が増加するように構成されている場合にも効果的である。
本発明では、前記蒸着重合装置の蒸気放出器における蒸気拡散部の複数の連通口は、前記原料モノマーの蒸気の導入側から放出側に向って2n-1個(nは自然数)で増加するように構成されている場合にも効果的である。
本発明では、前記蒸着重合装置の蒸気放出器における原料モノマー拡散部に、前記原料モノマー供給源から供給され拡散される原料モノマーを加熱するための加熱手段が設けられている場合にも効果的である。
本発明では、前記蒸着重合装置の蒸気放出器に接続可能で且つ当該蒸気放出器にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給部が前記真空槽の外部に設けられ、当該蒸気放出器は、バルブの切り換えによって前記原料モノマー供給部又は前記クリーニングガス供給部のいずれかに接続されるとともに、前記プラズマCVD装置の電源から当該蒸気放出器に対して所定の電力が供給されるように構成されている場合にも効果的である。
一方、本発明は、上述したいずれかの薄膜形成装置を用い、真空中で基板表面に薄膜を形成する方法であって、前記プラズマCVD装置を用い、プラズマCVDによって前記基板上に無機化合物からなる膜を形成する工程と、前記蒸着重合装置を用い、蒸着重合によって前記基板上に高分子化合物からなる膜を形成する工程と、を有する薄膜形成方法である。
【0009】
本発明の場合、プラズマCVD装置において、プラズマ放出器の複数のプラズマ拡散部が、原料ガスの導入側から放出側に向って段階的に区分けされた複数の拡散室をそれぞれ有するとともに、当該複数の拡散室は、互いに隣接する拡散室が原料ガスが通過可能な連通口を介して接続され、さらに、当該複数の拡散室のうち最終段の拡散室が、原料ガスが通過可能な連通口を介してそれぞれプラズマ形成室に接続され、さらに、蒸着重合装置において、蒸気放出器の複数の蒸気拡散部が、原料モノマーの蒸気の導入側から放出側に向って段階的に区分けされた複数の拡散室をそれぞれ有するとともに、当該複数の拡散室は、互いに隣接する拡散室が原料モノマーの蒸気が通過可能な連通口を介して接続され、さらに、当該複数の拡散室のうち最終段の拡散室が、原料モノマーの蒸気が通過可能な連通口を介してそれぞれ蒸気混合室に接続されていることから、プラズマCVD装置においては、複数の原料ガス拡散部において異なる原料ガスを確実に拡散した後に、プラズマ形成室において十分に混合された原料ガスのプラズマを発生させることができ、さらに、蒸着重合装置においては、複数の蒸気拡散部において異なる原料モノマーの蒸気を確実に拡散した後に、蒸気混合室において異なる原料モノマーの蒸気を確実に混合することができる。
その結果、本発明によれば、例えば大型基板に対してプラズマCVD及び蒸着重合によって例えばシリコン系無機化合物からなる薄膜と高分子化合物からなる薄膜を積層形成する場合に当該基板上の各領域における膜厚及び膜質を均一にすることができるので、封止能力の高い有機ELデバイスの保護膜を形成することができる。
また、本発明の場合、プラズマCVD装置のプラズマ放出器の複数のプラズマ拡散部が、複数の原料ガス供給源から原料ガスがそれぞれ供給され且つ互いの雰囲気が隔離されるとともに、蒸着重合装置の蒸気放出器の複数の蒸気拡散部が、複数の原料モノマーの蒸気がそれぞれ供給され且つ互いの雰囲気が隔離されていることから、異なる原料ガスを用いて同時にプラズマCVDによる成膜を行う場合、また異なる原料モノマーを用いて蒸着重合を行う場合において、当該原料ガス同士並びに当該原料モノマーの蒸気が反応することを防止できる。
さらに、本発明によれば、プラズマCVD装置において、成膜対象物の相対移動方向に対して交差する方向に延びるスリット状のプラズマ放出口を設けたプラズマ形成室を有するプラズマ放出器を備えるとともに、蒸着重合装置において、成膜対象物の相対移動方向に対して交差する方向に延びるスリット状の蒸気放出口を設けた蒸気混合室を有する蒸気放出器を備えることから、インライン方式の真空システムに本発明の薄膜形成装置を設けることにより、有機EL装置の保護膜を連続的に形成する量産装置を提供することができる。
本発明において、前記プラズマCVD装置のプラズマ放出器における原料ガス拡散部に、前記原料ガス供給源から供給され拡散される原料ガスを冷却するための冷却手段が設けられている場合には、プラズマ放出器の原料ガス拡散部において異なる原料ガスが混合され拡散される場合であっても、原料ガス同士の化学反応を防止して最適の状態でプラズマを発生させることができる。
本発明において、前記蒸着重合装置の蒸気放出器における原料モノマー拡散部に、前記原料モノマー供給源から供給され拡散される原料モノマーを加熱するための加熱手段が設けられている場合には、蒸気放出器の原料モノマー拡散部内において原料モノマーの蒸気が析出することなく確実に原料モノマーの蒸気を拡散して蒸気混合室に導くことができる。
本発明において、前記プラズマCVD装置のプラズマ放出器に接続可能で且つ当該プラズマ放出器にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給源が前記真空槽の外部に設けられ、当該プラズマ放出器は、バルブの切り換えによって前記原料ガス供給源又は前記クリーニングガス供給源のいずれかに接続されるように構成されている場合には、定期的に又は必要に応じて当該プラズマ放出器にクリーニングガスを供給して当該クリーニングガスを放電させることにより、当該プラズマ放出器のクリーニングを行うことができる。
本発明において、前記蒸着重合装置の蒸気放出器に接続可能で且つ当該蒸気放出器にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給源が前記真空槽の外部に設けられ、当該蒸気放出器は、バルブの切り換えによって前記原料モノマー供給源又は前記クリーニングガス供給源のいずれかに接続されるとともに、前記プラズマCVD装置の電源から当該蒸気放出器に対して所定の電力が供給されるように構成されている場合には、定期的に又は必要に応じて当該クリーニングガスを蒸気放出器に供給して放電させることにより、当該蒸気放出器のクリーニングを行うことができる。また、本発明によれば、装置構成要素を増加させることもない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大型基板に対してプラズマCVD及び蒸着重合によって例えばシリコン系無機化合物からなる薄膜と高分子化合物からなる薄膜を積層形成する場合に当該基板上の各領域における膜厚及び膜質を均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る薄膜形成装置の実施の形態の要部構成を示す概略平面図
【図2】同薄膜形成装置のプラズマCVD装置のプラズマ放出器の内部構成を示す断面図
【図3】同薄膜形成装置の蒸着重合装置の蒸気放出器の内部構成を示す断面図
【図4】同薄膜形成装置の要部構成を示す図
【図5】(a):本発明に用いるプラズマCVD装置のプラズマ放出器の他の例を示す概略構成図(b):本発明に用いる蒸着重合装置の蒸気放出器の他の例を示す概略構成図
【図6】従来の保護膜形成用のCVD装置を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る薄膜形成装置の実施の形態の要部構成を示す概略平面図、図2は、同薄膜形成装置のプラズマCVD装置のプラズマ放出器の内部構成を示す断面図、図3は、同薄膜形成装置の蒸着重合装置の蒸気放出器の内部構成を示す断面図である。
図4は、同薄膜形成装置の要部構成を示す図である。
【0013】
以下、上下関係については図2、図3及び図4に示す構成に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に示すように、本実施の形態の薄膜形成装置1は、インライン方式のものであり、図示しない真空排気系に接続された真空槽2を有している。
【0014】
真空槽2内には、図示しない搬送装置が設けられ、マスク5Mに装着された基板5を真空槽2の長手方向即ち矢印X方向又はその反対方向へ直線的に搬送するようになっている。
そして、真空槽2内には、有機EL素子の保護層を形成するためのプラズマCVD装置3と、蒸着重合装置4が設けられている。
【0015】
ここで、プラズマCVD装置3は、真空槽2内に設けられたプラズマ放出器10を有している。
一方、真空槽2の外部には、原料ガス供給源3B及びクリーニングガス供給源3Cが設けられ、このプラズマ放出器10は、バルブの切り換えによって原料ガス供給源3B又はクリーニングガス供給源3Cのいずれかに接続されるようになっている。
【0016】
一方、蒸着重合装置4は、真空槽2内に設けられた蒸気放出器110を有し、この蒸気放出器110は、真空槽2の外部に設けられた原料モノマー供給源4B及びクリーニングガス供給源4Cに接続され、バルブの切り換えによってこれら原料モノマー供給源4B及びクリーニングガス供給源4Cのいずれかに接続されるようになっている。
【0017】
図1、図2及び図4に示すように、本実施の形態のプラズマ放出器10は、細長い例えば箱形形状に形成されている。
プラズマ放出器10は、真空槽2内において基板搬送方向Xに対して交差する方向(本実施の形態では、基板搬送方向Xに対して直交するY方向)に向けて配置されている。
【0018】
プラズマ放出器10は、その下側部分に、例えばステンレス等の導電性を有する金属材料を用いて一体的に構成された複数(本実施の形態では4個)の第1〜第4のガス分岐ユニット(原料ガス拡散部)61〜64を有している。
【0019】
本実施の形態の場合、第1〜第4のガス分岐ユニット61〜64は、同一の構成を有し、互いに雰囲気が隔離されるように構成されている。以下の説明では、第1〜第4のガス分岐ユニット61〜64の対応する部分について同一の符号を付し、主として第1のガス分岐ユニット61について説明し、第2〜第4のガス分岐ユニットについては重複する説明を適宜省略する。
【0020】
第1のガス分岐ユニット61は、例えばプラズマ放出器10内の下部に設けられたガス導入室10Bを有し、このガス導入室10Bに対して例えば高周波電源6から例えば高周波電力を印加するように構成されている。
【0021】
また、第1のガス分岐ユニット61のガス導入室10Bには、供給管7の一方の端部が接続され、この供給管7の他方の端部は、上述した原料ガス供給源3B及びクリーニングガス供給源3Cに接続されている。
【0022】
本実施の形態の場合、供給管7の中腹部分に絶縁性材料からなる接続部7aが設けられており、プラズマCVD装置3のガス導入室10Bが原料ガス供給源3B及びクリーニングガス供給源3Cに対して電気的に絶縁された状態になっている。
【0023】
図4に示すように、原料ガス供給源3Bは、複数(本実施の形態では4個)の第1〜第4の原料ガス供給部60a〜60dを有している。
第1の原料ガス供給部60aは、原料ガスである例えばSiH4ガスを供給するもので、上記供給管7を介して第1のガス分岐ユニット61に接続されている。
第2の原料ガス供給部60bは、原料ガスである例えばNH3ガスを供給するもので、上記供給管7を介して第2のガス分岐ユニット62に接続されている。
第3の原料ガス供給部60cは、放電補助ガスである例えばH2ガスを供給するもので、上記供給管7を介して第3のガス分岐ユニット63に接続されている。
第4の原料ガス供給部60dは、原料ガスである例えばN2ガスを供給するもので、上記供給管7を介して第4のガス分岐ユニット64に接続されている。
【0024】
一方、本実施の形態のプラズマ放出器10は、上述したガス導入室10Bの基板5側の部分に、原料ガス拡散室として、複数段(本例では4段)の第1〜第4の拡散室11、21、31、41がこの順序で設けられている。
本実施の形態においては、第1〜第4の拡散室11、21、31、41のうち、第1〜第3の拡散室11、21、31については、それぞれの雰囲気が隔離されるように構成されている。
【0025】
また、以下に説明するように、本実施の形態においては、ガスの導入側から放出側に向って2n-1個(nは自然数)で増加する数の第1〜第5連通口12、22、32、42、52が設けられている。
第1の拡散室11は、ガス導入室10Bより容積が大きくなるように構成され、その底部に設けられた一つの第1連通口12を介してガス導入室10Bに接続されている。
【0026】
この第1連通口12は、第1の拡散室11の天井部分と対向するように、その位置が設定されており、これにより導入されたガスが第1の拡散室11の天井部分に衝突してガスの拡散が促進されるように構成されている(図4においては、理解を容易にするため、第1連通口12及び第2連通口22の位置が重なるように描かれている)。
第1の拡散室11は、その天井部分(第2の拡散室21の底部)に設けられた二つの第2連通口22を介して第2の拡散室21に接続されている。
【0027】
本発明の場合、特に限定されることはないが、ガスの逆流れを生じさせない、即ち圧力勾配を保持する観点からは、第2連通口22のそれぞれの面積の和が、第1連通口21の面積の和より大きくならない(小さくなる)ように設定することが好ましい。
【0028】
更には、ガス流を均等に分配する観点からは、同一段における連通口の面積並びに形状を同一にすること、本実施の形態では第1〜第5連通口12、22、32、42、52の面積並びに形状を同一にすることがより好ましい。
【0029】
また、第2連通口22は、第2の拡散室21の天井部分と対向するように、その位置が設定されており、これにより処理されたガスが第2の拡散室21の天井部分に衝突してガスの拡散が促進されるように構成されている(図4においては、理解を容易にするため、第2連通口22及び第3連通口32の位置が重なるように描かれている)。
【0030】
さらに、本実施の形態においては、二つの隔壁部21aによって第2の拡散室21が二つの領域に仕切られ、各領域の雰囲気が違いに隔離されている。これら隔壁部21aはガスが衝突することによってその拡散を促進するために有効となるものである。
【0031】
なお、本発明の場合、隔壁部21aを設ける位置は特に限定されることはないが、ガスをより均一に拡散させる観点からは、隔壁部21aによって隔離される第2の拡散室21の各領域の容積及びガスの通過速度が等しくなる位置に設けることが好ましい。
第2の拡散室21は、その天井部分(第3の拡散室31の底部)に設けられた四つの第3連通口32を介して第3の拡散室31に接続されている。
【0032】
本発明の場合、特に限定されることはないが、ガスの逆流れを生じさせない、即ち圧力勾配を保持する観点からは、第3連通口32のそれぞれの面積の和が、上述した第2連通口22の面積の和より大きくならない(小さくなる)ように設定することが好ましい。
【0033】
また、第3連通口32は、第3の拡散室31の天井部分と対向するように、その位置が設定されており、これにより導入されたガスが第3の拡散室31の天井部分に衝突してガスの拡散が促進されるように構成されている(図4においては、理解を容易にするため、第3連通口32及び第4連通口42の位置が重なるように描かれている)。
【0034】
また、本実施の形態においては、第3の拡散室31が例えば六つの隔壁部31aによって四つの領域に仕切られ、各領域の雰囲気が違いに隔離されている。これらの隔壁部31aはガスが衝突することによってその拡散を促進するために有効となるものである。
【0035】
なお、本発明の場合、隔壁部31aを設ける位置は特に限定されることはないが、ガスをより均一に拡散させる観点からは、隔壁部31aによって仕切られる第3の拡散室31の各領域の容積及びガスの通過速度が等しくなる位置に設けることが好ましい。
【0036】
さらに、図4に示すように、本実施の形態の場合、第3の拡散室31は、その内部に設けられた一つの隔壁部31Cによって二つの領域31A、31Bに仕切られている。
ここでは、第1のガス分岐ユニット61に対応する部分と、第2のガス分岐ユニット62に対応する部分とが共通する領域31Aとなるとともに、第3のガス分岐ユニット63に対応する部分と、第4のガス分岐ユニット64に対応する部分とが共通する領域31Bとなるように構成されている。
【0037】
さらに、第3の拡散室31の基板5側の部分には、第4の拡散室41が設けられている。
ここで、第3の拡散室31の各領域31A、31Bは、それぞれの天井部分(第4の拡散室41の底部)に設けられた八つの第4連通口42を介して第4の拡散室41に接続されている。
【0038】
本発明の場合、特に限定されることはないが、ガスの逆流れを生じさせない、即ち圧力勾配を保持する観点からは、第4連通口42のそれぞれの面積の和が、上述した第3連通口32の面積の和より大きくならない(小さくなる)ように設定することが好ましい。
【0039】
また、本実施の形態においては、プラズマ放出器10の第3の拡散室31の周囲には、導入されたガス同士の反応を防止する観点から、例えば水等の冷却媒体を循環させるように構成された冷却手段33が設けられている。
【0040】
また、第4連通口42は、第4の拡散室41の天井部分と対向するように、その位置が設定されており、これにより導入されたガスが第4の拡散室41の天井部分に衝突してガスの拡散が促進されるように構成されている。
【0041】
さらに、図2に示すように、本実施の形態においては、第4の拡散室41が七つの隔壁部41aによって八つの領域に仕切られ、各領域の雰囲気が違いに隔離されている。これらの隔壁部41aはガスが衝突することによってその拡散を促進するために有効となるものである。
【0042】
なお、本発明の場合、隔壁部41aを設ける位置は特に限定されることはないが、ガスをより均一に拡散させる観点からは、隔壁部41aによって仕切られる第4の拡散室41の各領域の容積及びガスの通過速度が等しくなる位置に設けることが好ましい。
さらに、第4の拡散室41の基板5側の部分には、シールド部材50が設けられている。
【0043】
このシールド部材50は、第4の拡散室41の上方の空間を覆うように構成され、これによりこの空間即ちプラズマ形成室51において第5連通口52を通過したガスのプラズマが形成されるようになっている。
ここで、プラズマ形成室51は、第4の拡散室41の天井部分(プラズマ形成室51の底部)に設けられた16個の第5連通口52を介して第4の拡散室41に接続されている。
【0044】
本発明の場合、特に限定されることはないが、ガス逆流れを生じさせない、即ち圧力勾配を保持する観点からは、第5連通口52のそれぞれの面積の和が、上述した第4連通口42の面積の和より大きくならない(小さくなる)ように設定することが好ましい。
【0045】
シールド部材50は、例えばステンレス等の導電性の材料からなり、接地されている。そして、このシールド部材50は、絶縁部54を介してプラズマ放出器10に取り付けられており、プラズマ放出器10は電気的にフローティング状態になっている。
【0046】
シールド部材50の基板5に対向する部分には、基板搬送方向であるX方向と直交する方向(Y方向)に延びるスリット(プラズマ放出口)53が設けられている。このスリット53は、基板5の幅と同等の長さに形成されている。
【0047】
次に、本実施の形態における蒸着重合装置4について説明する。
図1、図3及び図4に示すように、本実施の形態の蒸着重合装置4の蒸気放出器110は、細長い例えば箱形形状に形成されている。
蒸気放出器110は、真空槽2内において基板搬送方向Xに対して交差する方向(本実施の形態では、基板搬送方向Xに対して直交するY方向)に向けて配置されている。
【0048】
蒸気放出器110は、その下側部分に、例えばステンレス等の導電性を有する金属材料を用いて一体的に構成された複数(本実施の形態では2個)の第1及び第2の蒸気分岐ユニット(原料モノマー拡散部)101A、101Bを有している。
【0049】
本実施の形態の場合、第1及び第2の蒸気分岐ユニット101A、101Bは、同一の構成を有し、互いに雰囲気が隔離されるように構成されている。以下の説明では、第1及び第2の蒸気分岐ユニット101A、101Bの対応する部分について同一の符号を付し、主として第1の蒸気分岐ユニット101Aについて説明し、第2の蒸気分岐ユニット101Bについては重複する説明を適宜省略する。
【0050】
また、上述したプラズマCVD装置3について説明した対応部分については同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
第1の蒸気分岐ユニット101Aは、例えば蒸気放出器110内の下部に設けられた蒸気導入室110Bを有し、この蒸気導入室110Bに対し、切換スイッチ6Sを切り換えることにより、上述した高周波電源6から例えば高周波電力を印加するように構成されている。
【0051】
また、第1及び第2の蒸気分岐ユニット101A、101Bの蒸気導入室110Bには、上述した供給管7の一方の端部がそれぞれ接続され、この供給管7の他方の端部は、上述した原料モノマー供給源4Bの第1及び第2の原料モノマー供給部100A、100B、並びにクリーニングガス供給源4Cに接続されている。
【0052】
本発明において蒸着重合に用いる原料モノマーとしては得に限定されることはないが、装置構成を簡素化する観点からは、2種類の原料モノマーとして、MDI、MDAを用い、蒸着重合膜として、ポリ尿素膜を形成することが好ましい。
【0053】
一方、本実施の形態の蒸気放出器110は、上述した蒸気導入室110Bの基板5側の部分に、蒸気拡散室として、複数段(本例では4段)の第1〜第4の拡散室111、121、131、141がこの順序で設けられている。
また、本実施の形態においては、蒸気の導入側から放出側に向って2n-1個(nは自然数)で増加する数の第1〜第5連通口112、122、132、142、152が設けられている。
【0054】
蒸気放出器110の第1〜第4の拡散室111、121、131、141並びに第1〜第5連通口112、122、132、142、152は、上述したプラズマ放出器10の第1〜第4の拡散室11、21、31、41並びに第1〜第5連通口12、22、32、42、52に対応するもので、それぞれ同一の構成を有し、同一の条件で設けられている。
【0055】
また、蒸気放出器110の第1及び第2の蒸気分岐ユニット101A、101Bの周囲には、第1及び第2の蒸気分岐ユニット101A、101Bを加熱して、内部を通過する原料モノマーの蒸気を壁部に付着させないようにするためのヒータ(加熱手段)120が設けられている。
【0056】
そして、第4の拡散室141の基板5側の部分には、プラズマCVD装置3のシールド部材50に対応するシールド部材150が、第4の拡散室141の上方の空間を覆うように設けられ、これによりこの空間即ち蒸気混合室151において第5連通口152を通過したそれぞれ原料モノマーの蒸気が混合されるようになっている。
【0057】
このシールド部材150は、接地されるとともに、絶縁部154を介して蒸気放出器110に取り付けられており、蒸気放出器110は電気的にフローティング状態になっている。
また、シールド部材150の基板5に対向する部分には、基板搬送方向であるX方向と直交する方向(Y方向)に延びるスリット(蒸気放出口)153が設けられている。このスリット153は、基板5の幅と同等の長さに形成されている。
さらに、シールド部材150のスリット153の上方には、スリット153から放出される原料モノマーの蒸気の量を検出するための膜厚センサ156が設けられている。
【0058】
このような構成を有する本実施の形態において基板5上に保護膜を形成する場合には、真空槽2内を所定の圧力にした状態で、原料ガス供給源3Bから供給管7を介して原料ガス及び放電補助ガスをプラズマCVD装置3のガス導入室10B内に導入する。
【0059】
その後、ガス導入室10Bのガスは、上述した第1〜第4の拡散室11、21,31、41の第1〜第4連通口12、22、32、42を通過して拡散された後、第5連通口52を介してプラズマ形成室51内に導入されて混合される。
そして、高周波電源6からプラズマCVD装置3に対して所定の電力を印加することにより、プラズマCVD装置3のプラズマ形成室51内においてガスを放電させてプラズマ化する。
【0060】
その後、このプラズマが、プラズマ形成室51のスリット53から基板5に向って放出される。ここで、基板5をX方向に移動させることにより、基板5全表面に例えばSiNXのCVD成膜が行われる。
【0061】
一方、蒸着重合装置4においては、原料モノマー供給源4Bから供給管7を介して原料モノマーの蒸気を、蒸着重合装置4の蒸気導入室110B内に導入する。
蒸気導入室110B内に導入された原料モノマーの蒸気は、上述した第1〜第4の拡散室111、121、131、141の第1〜第4連通口112、122、132、142を通過して拡散された後、第5連通口152を介して蒸気混合室151内に導入され、この蒸気混合室151内において、原料モノマーの蒸気が混合される。
【0062】
その後、時間の経過に伴い十分に混合された原料モノマーの蒸気が、蒸気混合室151のスリット153から基板5に向って放出される。ここで、基板5をX方向に移動させることにより、基板5全表面に例えばポリ尿素の蒸着重合膜が形成される。
【0063】
そして、基板5をX方向あるいは−X方向に移動し、上述したSiNXのCVD成膜とポリ尿素膜の蒸着重合を繰り返すことにより、例えば有機EL素子が形成された基板5上に、SiNX膜とポリ尿素膜が繰り返し積層された保護膜を形成する。なお、封止能力をより高くする観点からは、SiNX膜を最上面とすることが好ましい。
【0064】
以上述べたように本実施の形態においては、プラズマCVD装置3においては、プラズマ放出器10の第1〜第4のガス分岐ユニット61〜64が、原料ガスの導入側から放出側に向って段階的に区分けされた第1〜第4の拡散室11、21、31、41をそれぞれ有するとともに、これら第1〜第4の拡散室11、21、31、41は、互いに隣接する拡散室が原料ガスが通過可能な第1〜第4連通口12、22、32、42を介して接続され、さらに、最終段の第4の拡散室41が、第5連通口52を介してそれぞれプラズマ形成室51に接続され、一方、蒸着重合装置4においては、蒸気放出器110の第1及び第2の蒸気分岐ユニット101A、101Bが、原料モノマーの蒸気の導入側から放出側に向って段階的に区分けされた第1〜第4の拡散室111、121、131、141をそれぞれ有するとともに、これら第1〜第4の拡散室111、121、131、141は、互いに隣接する拡散室が原料モノマーの蒸気が通過可能な第1〜第4連通口112、122、132、142を介して接続され、さらに、最終段の第4の拡散室141が、第5連通口152を介してそれぞれ蒸気混合室151に接続されていることから、プラズマCVD装置3においては、第1〜第4のガス分岐ユニット61〜64の第1〜第4の拡散室11、21、31、41において異なる原料ガスを確実に拡散した後に、プラズマ形成室51において十分に混合された原料ガスのプラズマを発生させて放出することができ、さらに、蒸着重合装置4においては、第1及び第2の蒸気分岐ユニット101A、101Bの第1〜第4の拡散室111、121、131、141において異なる原料モノマーの蒸気を確実に拡散した後に、蒸気混合室151において異なる原料モノマーの蒸気を確実に混合して放出することができる。
【0065】
その結果、本実施の形態によれば、例えば大型基板に対してプラズマCVD及び蒸着重合によって例えばシリコン系無機化合物からなる薄膜と高分子化合物からなる薄膜を積層形成する場合に当該基板上の各領域における膜厚及び膜質を均一にすることができるので、封止能力の高い有機ELデバイスの保護膜を形成することができる。
【0066】
また、本実施の形態では、プラズマCVD装置3のプラズマ放出器10の第1〜第4のガス分岐ユニット61〜64が、第1〜第4の原料ガス供給部60a〜60dから原料ガスがそれぞれ供給され且つ互いの雰囲気が隔離されるとともに、蒸着重合装置4の蒸気放出器110の第1〜第4の拡散室111、121、131、141が、複数の原料モノマーの蒸気がそれぞれ供給され且つ互いの雰囲気が隔離されていることから、異なる原料ガスを用いて同時にプラズマCVDによる成膜を行う場合、また異なる原料モノマーを用いて蒸着重合による蒸着重合を行う場合において、当該原料ガス同士並びに当該原料モノマーの蒸気の反応を防止することができる。
【0067】
さらに、本実施の形態によれば、プラズマCVD装置3において、基板5の相対移動方向に対して直交する方向に延びるスリット53を設けたプラズマ形成室51を有するプラズマ放出器10を備えるとともに、蒸着重合装置4において、基板5の相対移動方向に対して直交する方向に延びるスリット153を設けた蒸気混合室151を有する蒸気放出器110を備えることから、インライン方式の真空システムにおいて、有機EL装置の保護膜を連続的に形成する量産装置を提供することができる。
【0068】
さらにまた、本実施の形態では、プラズマCVD装置3のプラズマ放出器10の第3の拡散室31の周囲に、原料ガスを冷却するための冷却手段33が設けられていることから、プラズマ放出器10の第1〜第4のガス分岐ユニット61〜64において異なる原料ガスが混合され拡散される場合であっても、原料ガス同士の化学反応を防止して最適の状態でプラズマを発生させることができる。
【0069】
さらにまた、本実施の形態では、蒸着重合装置4の蒸気放出器110における第1及び第2の蒸気分岐ユニット101A、101Bに、原料モノマーを加熱するためのヒータ120が設けられていることから、第1及び第2の蒸気分岐ユニット101A、101B内において原料モノマーの蒸気が析出することなく確実に原料モノマーの蒸気を拡散して蒸気混合室151に導くことができる。
【0070】
さらにまた、本実施の形態では、プラズマCVD装置3のプラズマ放出器10に接続可能で且つプラズマ放出器10にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給源3Cが真空槽2の外部に設けられ、このプラズマ放出器10は、バルブの切り換えによって原料ガス供給源3B又はクリーニングガス供給源3Cのいずれかに接続されるように構成されていることから、定期的に又は必要に応じてプラズマ放出器10にクリーニングガスを供給してクリーニングガスを放電させることにより、プラズマ放出器10のクリーニングを行うことができる。
【0071】
加えて、本実施の形態によれば、蒸着重合装置4の蒸気放出器110に接続可能で且つ当該蒸気放出器110にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給源4Cが真空槽2の外部に設けられ、この蒸気放出器110は、バルブの切り換えによって原料モノマー供給源4B又はクリーニングガス供給源4Cのいずれかに接続されるとともに、プラズマCVD装置3の高周波電源6から蒸気放出器110に対して所定の電力が供給されるように構成されていることから、定期的に又は必要に応じてクリーニングガスを蒸気放出器110に供給して放電させることにより、蒸気放出器110のクリーニングを行うことができる。また、本発明によれば、装置構成要素を増加させることもない。
【0072】
図5(a)(b)は、本発明に用いるプラズマCVD装置のプラズマ放出器並びに蒸着重合装置の蒸気放出器の他の例を示す概略構成図であり、以下、上記実施の形態と対応する部分には、同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0073】
図5(a)に示すように、本例のプラズマ放出器15は、第1〜第4の拡散室11、21、31、41において、隔壁部を設けないものであり、その他の構成は上述したプラズマ放出器10と同一の構成を有している。
本例のプラズマ放出器15によれば、より構成が簡素でコストを抑えることができる。
【0074】
ただし、原料ガスをより均一に拡散及び混合を行う観点からは、上記実施の形態のように、プラズマ放出器10の第1〜第4の拡散室11、21、31、41に隔壁部を設けることが好ましい。その他の構成及び作用効果については上述の実施の形態と同一であるのでその詳細な説明を省略する。
【0075】
一方、図5(b)に示すように、本例の蒸気放出器115は、第1〜第4の拡散室111、121、131、141において、隔壁部を設けないものであり、その他の構成は上述した蒸気放出器110と同一の構成を有している。
本例の蒸気放出器115によれば、より構成が簡素でコストを抑えることができる。
【0076】
ただし、原料モノマーの蒸気をより均一に拡散及び混合を行う観点からは、上記実施の形態のように、蒸気放出器110の第1〜第4の拡散室111、121、131、141に隔壁部を設けることが好ましい。その他の構成及び作用効果については上述の実施の形態と同一であるのでその詳細な説明を省略する。
【0077】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、上記実施の形態においては、プラズマCVD装置のプラズマ放出器の原料ガス拡散室並びに蒸着重合装置の蒸気放出器の蒸気拡散室を四段設ける場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、複数であれば、当該原料ガス拡散室並びに当該蒸気拡散室の段数は任意に設定することができる。
【0078】
また、プラズマCVD装置において、原料ガス拡散室及びプラズマ形成室に設ける連通口の数は上記実施の形態のものには限られず、適宜変更することができる。
ただし、原料ガスを確実に拡散する観点からは、プラズマ形成室の底部に8個以上の連通口を設けることが好ましい。
【0079】
一方、蒸着重合装置において、蒸気拡散室及び蒸気混合室に設ける連通口の数は上記実施の形態のものには限られず、適宜変更することができる。
ただし、原料モノマーの蒸気を確実に拡散する観点からは、蒸気混合室の底部に8個以上の連通口を設けることが好ましい。
【0080】
さらに、上記実施の形態ではプラズマCVD装置のプラズマ放出器の原料ガス拡散部並びに蒸着重合装置の蒸気拡散室に隔壁部を設けることによって複数の領域を設けるようにしたが、本発明はこれに限られず、ボックス状の部材を用いて各領域を個別に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…薄膜形成装置
2…真空槽
3…プラズマCVD装置
3B…原料ガス供給源
4…蒸着重合装置
4B…原料モノマー供給源
10…プラズマ放出器
10B…ガス導入室
11…第1の拡散室
12…第1連通口
21…第2の拡散室
21a…隔壁部
22…第2連通口
31…第3の拡散室
31a…隔壁部
32…第3連通口
41…第4の拡散室
41a…隔壁部
42…第4連通口
50…シールド部材
51…プラズマ形成室
52…第5連通口
53…スリット(プラズマ放出口)
110…蒸気放出器
110B…蒸気導入室
111…第1の拡散室
112…第1連通口
121…第2の拡散室
121a…隔壁部
122…第2連通口
131…第3の拡散室
131a…隔壁部
132…第3連通口
141…第4の拡散室
141a…隔壁部
142…第4連通口
150…シールド部材
151…蒸気混合室
152…第5連通口
153…スリット(蒸気放出口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜対象物が配置される真空槽と、
前記真空槽内においてプラズマCVDによって前記成膜対象物上に薄膜を形成するプラズマCVD装置と、
前記真空槽内において蒸着重合によって前記成膜対象物上に薄膜を形成する蒸着重合装置とを備え、
前記プラズマCVD装置は、
前記真空槽の外部に設けられた複数の原料ガス供給源と、
前記成膜対象物に対して相対移動可能に設けられ、前記原料ガス供給源から供給された当該原料ガスを放電させるための電源に接続され、当該原料ガスのプラズマを前記成膜対象物に向って放出するためのプラズマ放出器とを有し、
前記プラズマ放出器は、前記原料ガス供給源から前記原料ガスがそれぞれ供給され且つ互いの雰囲気が隔離された複数の原料ガス拡散部と、当該原料ガス拡散部において拡散された原料ガスのプラズマを形成するプラズマ形成室とを有し、
前記原料ガス拡散部は、前記原料ガスの導入側から放出側に向って段階的に区分けされた複数の拡散室を有するとともに、当該複数の拡散室は、互いに隣接する拡散室が前記原料ガスが通過可能な連通口を介して接続され、さらに、当該複数の拡散室のうち最終段の拡散室が、前記原料ガスが通過可能な連通口を介してそれぞれ前記プラズマ形成室に接続され、
前記プラズマ形成室には、前記成膜対象物の相対移動方向に対して交差する方向に延びるスリット状のプラズマ放出口が設けられるとともに、
前記蒸着重合装置は、
前記真空槽の外部に設けられた複数の原料モノマー供給源と、
前記成膜対象物に対して相対移動可能に設けられ、前記複数の原料モノマー供給源から供給された原料モノマーの蒸気を前記成膜対象物に向って放出するための蒸気放出器を有し、
前記蒸気放出器は、前記複数の原料モノマー供給源から当該原料モノマーの蒸気がそれぞれ供給され且つ互いの雰囲気が隔離された複数の原料モノマー拡散部と、当該原料モノマー拡散部において拡散された複数の原料モノマーの蒸気を混合する蒸気混合室とを有し、
前記原料モノマー拡散部は、前記原料モノマーの導入側から放出側に向って段階的に区分けされた複数の拡散室を有するとともに、当該複数の拡散室は、互いに隣接する拡散室が前記原料モノマーの蒸気が通過可能な連通口を介して接続され、さらに、当該複数の拡散室のうち最終段の拡散室が、前記原料モノマーの蒸気が通過可能な連通口を介してそれぞれ前記蒸気混合室に接続され、
前記蒸気混合室には、前記成膜対象物の相対移動方向に対して交差する方向に延びるスリット状の蒸気放出口が設けられている薄膜形成装置。
【請求項2】
前記プラズマCVD装置のプラズマ放出器におけるプラズマ拡散部の複数の拡散室に、互いの雰囲気を隔離するための隔壁部が設けられている請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項3】
前記プラズマCVD装置のプラズマ放出器における原料ガス拡散部の連通口は、前記原料ガスの導入側から放出側に向って数が増加するように構成されている請求項1又は2のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
【請求項4】
前記プラズマCVD装置のプラズマ放出器における原料ガス拡散部の複数の連通口は、前記原料ガスの導入側から放出側に向って2n-1個(nは自然数)で増加するように構成されている請求項1乃至3のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
【請求項5】
前記プラズマCVD装置のプラズマ放出器における原料ガス拡散部に、前記原料ガス供給源から供給され拡散される原料ガスを冷却するための冷却手段が設けられている請求項1乃至4のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
【請求項6】
前記プラズマCVD装置のプラズマ放出器に接続可能で且つ当該プラズマ放出器にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給部が前記真空槽の外部に設けられ、当該プラズマ放出器は、バルブの切り換えによって前記原料ガス供給源又は前記クリーニングガス供給源のいずれかに接続されるように構成されている請求項1乃至5のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
【請求項7】
前記蒸着重合装置の蒸気放出器における蒸気拡散部の複数の拡散室に、互いの雰囲気を隔離するための隔壁部が設けられている請求項1乃至6のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
【請求項8】
前記蒸着重合装置の蒸気放出器における蒸気拡散部の連通口は、前記原料モノマーの蒸気の導入側から放出側に向って数が増加するように構成されている請求項1乃至7のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
【請求項9】
前記蒸着重合装置の蒸気放出器における蒸気拡散部の複数の連通口は、前記原料モノマーの蒸気の導入側から放出側に向って2n-1個(nは自然数)で増加するように構成されている請求項1乃至8のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
【請求項10】
前記蒸着重合装置の蒸気放出器における原料モノマー拡散部に、前記原料モノマー供給源から供給され拡散される原料モノマーを加熱するための加熱手段が設けられている請求項1乃至9のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
【請求項11】
前記蒸着重合装置の蒸気放出器に接続可能で且つ当該蒸気放出器にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給部が前記真空槽の外部に設けられ、当該蒸気放出器は、バルブの切り換えによって前記原料モノマー供給部又は前記クリーニングガス供給部のいずれかに接続されるとともに、前記プラズマCVD装置の電源から当該蒸気放出器に対して所定の電力が供給されるように構成されている請求項1乃至10のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の薄膜形成装置を用い、真空中で基板表面に薄膜を形成する方法であって、
前記プラズマCVD装置を用い、プラズマCVDによって前記基板上に無機化合物からなる膜を形成する工程と、
前記蒸着重合装置を用い、蒸着重合によって前記基板上に高分子化合物からなる膜を形成する工程と、を有する薄膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−36484(P2012−36484A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180058(P2010−180058)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】