説明

表示装置用アレイ基板及び表示装置

【課題】表示品位を改善することが可能な表示装置及び表示装置用アレイ基板を提供する。
【解決手段】 絶縁基板と、前記絶縁基板の上に配置され可視光領域での透過率が0.5以上の下地層、前記下地層より厚い膜厚を有するとともに前記下地層の上に積層された透明材料からなる透明層、及び、前記透明層の上に積層された主配線材料からなる主配線層の積層体によって形成された信号配線と、を備え、前記透明層の膜厚をd(nm)とし、前記透明層の屈折率をnとしたとき、積n×dが400より小さいことを特徴とする表示装置用アレイ基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置用アレイ基板及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置などの各種平面表示装置が開発されている。このような表示装置に適用されるアレイ基板として、例えば、アクティブマトリクス型表示装置に適用されるアレイ基板は、概ね格子状に形成された信号配線、この信号配線に接続されたスイッチング素子、スイッチング素子に接続された画素電極などを備えており、信号配線からの信号に基づきスイッチング素子を介して画素電極に電圧が印加される。
【0003】
表示装置として、例えば、バックライト及び透過型の液晶パネルを備えた液晶表示装置では、信号配線付近において意図せぬ光抜けが発生することがある。その要因は様々であるが、一因として信号配線の裏面で反射されたバックライト光が絶縁基板の表面などで再反射されて液晶に入射することが挙げられる。信号配線の裏面や絶縁基板の表面などで反射された際、反射光の偏光が乱れて意図しない偏光となり、バックライト光を非透過として黒表示させようとしても一部の光が透過してしまうことがある。このため、液晶表示装置の対向基板は、アレイ基板の信号配線の直上付近に信号配線の幅よりも広いブラックマトリックスを設け、信号配線付近の不所望な透過光を遮蔽する必要がある。この場合、ブラックマトリクスで囲まれた透過部の面積(開口率)は低下する。
【0004】
表示装置として、ボトムエミッション型の有機EL素子を備えた有機EL表示装置では、信号配線の裏面で外光が反射され、コントラストの低下を招くおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−116439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態の目的は、表示品位を改善することが可能な表示装置及び表示装置用アレイ基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態によれば、
絶縁基板と、前記絶縁基板の上に配置され可視光領域での透過率が0.5以上の下地層、前記下地層より厚い膜厚を有するとともに前記下地層の上に積層された透明材料からなる透明層、及び、前記透明層の上に積層された主配線材料からなる主配線層の積層体によって形成された信号配線と、を備え、前記透明層の膜厚をd(nm)とし、前記透明層の屈折率をnとしたとき、積n×dが400より小さいことを特徴とする表示装置用アレイ基板が提供される。
【0008】
本実施形態によれば、
絶縁基板と、前記絶縁基板の上に配置され可視光領域での透過率が0.5以上の下地層、前記下地層より厚い膜厚を有するとともに前記下地層の上に積層された透明材料からなる透明層、及び、前記透明層の上に積層された主配線材料からなる主配線層の積層体によって形成された信号配線と、前記信号配線に電気的に接続されたスイッチング素子と、前記スイッチング素子に電気的に接続された画素電極と、を備えたアレイ基板と、前記アレイ基板に対向配置された対向基板と、前記アレイ基板と前記対向基板との間に保持された液晶層と、前記アレイ基板の背面側に配置されたバックライトと、を備え、前記アレイ基板の前記信号配線において、前記透明層の膜厚をd(nm)とし、前記透明層の屈折率をnとしたとき、積n×dが400より小さいことを特徴とする表示装置が提供される。
【0009】
本実施形態によれば、
絶縁基板と、前記絶縁基板の上に配置され可視光領域での透過率が0.5以上の下地層、前記下地層より厚い膜厚を有するとともに前記下地層の上に積層された透明材料からなる透明層、及び、前記透明層の上に積層された主配線材料からなる主配線層の積層体によって形成された信号配線と、前記信号配線に電気的に接続されたスイッチング素子と、前記スイッチング素子に電気的に接続されるとともに前記絶縁基板の背面側に向かって光を出射する有機EL素子と、を備えたアレイ基板と、前記アレイ基板に対向配置された対向基板と、を備え、前記アレイ基板の前記信号配線において、前記透明層の膜厚をd(nm)とし、前記透明層の屈折率をnとしたとき、積n×dが400より小さいことを特徴とする表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施形態における表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、本実施形態の液晶表示装置に適用可能なアレイ基板の構成及び等価回路を概略的に示す図である。
【図3】図3は、図2に示したアレイ基板を適用した液晶表示装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図4】図4は、本実施形態における信号配線での反射低減効果を説明するための図である。
【図5】図5は、本実施形態の有機EL表示装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図6】図6は、各種形態の信号配線に入射した光の反射率のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本実施形態における表示装置1の構成を概略的に示す図である。
【0013】
本実施形態における表示装置1は、いわゆるフラットパネルディスプレイであり、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置などである。すなわち、表示装置1は、表示パネルPNL、この表示パネルPNLに接続された駆動ICチップ2及びフレキシブル配線基板3などを備えている。
【0014】
表示パネルPNLは、第1基板であるアレイ基板ARと、アレイ基板ARに対向して配置された第2基板である対向基板CTと、を備えて構成されている。このような表示パネルPNLは、画像を表示するアクティブエリアACTを備えている。このアクティブエリアACTは、m×n個のマトリクス状に配置された複数の画素PXによって構成されている(但し、m及びnは正の整数である)。
【0015】
次に、表示装置1の一例として、液晶表示装置について説明する。
【0016】
図2は、本実施形態の液晶表示装置に適用可能なアレイ基板ARの構成及び等価回路を概略的に示す図である。
【0017】
アレイ基板ARは、アクティブエリアACTにおいて、信号配線として、n本のゲート配線G(G1〜Gn)、m本のソース配線S(S1〜Sm)などを備えている。また、アレイ基板ARは、図示しないが、他の信号配線として、補助容量線などの各種配線を備えている。
【0018】
図示した例では、ゲート配線Gの各々は、概ね第1方向Xに沿ってそれぞれ延出している。ソース配線Sの各々は、概ね第2方向Yに沿ってそれぞれ延出している。これらのゲート配線G及びソース配線Sは、アクティブエリアACTにおいて格子状をなすように形成されている。
【0019】
各ゲート配線Gは、アクティブエリアACTの外側に引き出され、ゲートドライバGDに接続されている。各ソース配線Sは、アクティブエリアACTの外側に引き出され、ソースドライバSDに接続されている。これらのゲートドライバGD及びソースドライバSDの少なくとも一部は、例えば、アレイ基板ARに形成され、コントローラを内蔵した駆動ICチップ2と接続されている。
【0020】
スイッチング素子SWは、例えば、nチャネル薄膜トランジスタ(TFT)によって構成されている。このスイッチング素子SWは、ゲート配線G及びソース配線Sと電気的に接続されている。このようなスイッチング素子SWは、各画素PXに配置されている。アクティブエリアACTには、m×n個のスイッチング素子SWが形成されている。
【0021】
画素電極PEは、スイッチング素子SWと電気的に接続されている。このような画素電極PEは、各画素PXに配置されている。アクティブエリアACTには、m×n個の画素電極PEが形成されている。
【0022】
なお、図中に破線で示した対向電極CEは、アレイ基板ARに形成される場合もあるし、図示しない対向基板に形成される場合もある。
【0023】
図3は、図2に示したアレイ基板ARを適用した液晶表示装置の構成を概略的に示す断面図である。なお、ここでは、説明に必要な主要部のみを図示している。
【0024】
すなわち、液晶表示装置は、透過型の表示パネルPNLと、バックライトBLとを備えている。アレイ基板ARは、ガラス板やプラスチック基板などの光透過性を有する第1絶縁基板10を用いて形成されている。このアレイ基板ARは、第1絶縁基板10の対向基板CTに対向する側に、スイッチング素子SW、画素電極PEなどを備えている。このようなアレイ基板ARの対向基板CTと対向する表面は図示しない配向膜によって覆われている。
【0025】
ここに示したスイッチング素子SWは、トップゲート型の薄膜トランジスタである。スイッチング素子SWの半導体層SCは、第1絶縁基板10の上に配置されている。この半導体層SCは、例えば、ポリシリコンなどによって形成されている。このような半導体層SCは、第1絶縁膜11によって覆われている。また、第1絶縁膜11は、第1絶縁基板10の上にも配置されている。なお、第1絶縁基板10と半導体層SCとの間に、絶縁膜としてアンダーコート層を配置しても良い。
【0026】
スイッチング素子SWのゲート電極WGは、第1絶縁膜11の上に配置され、半導体層SCの直上に位置している。このゲート電極WGは、図示を省略したゲート配線と電気的に接続されている。このようなゲート電極WGは、第2絶縁膜12によって覆われている。また、第2絶縁膜12は、第1絶縁膜11の上にも配置されている。
【0027】
スイッチング素子SWのソース電極WS及びドレイン電極WDは、第2絶縁膜12の上に配置されている。これらのソース電極WS及びドレイン電極WDは、それぞれ第1絶縁膜11及び第2絶縁膜12を貫通するコンタクトホールを介して半導体層SCにコンタクトしている。ソース電極WSは、ソース配線Sと電気的に接続されている。これらのソース電極WS及びドレイン電極WDは、第3絶縁膜13によって覆われている。また、第3絶縁膜13は、第2絶縁膜12の上にも配置されている。
【0028】
画素電極PEは、第3絶縁膜13の上に配置されている。この画素電極PEは、第3絶縁膜13を貫通するコンタクトホールを介してドレイン電極WDに電気的に接続されている。この画素電極PEは、例えば、インジウム・ティン・オキサイド(ITO)やインジウム・ジンク・オキサイド(IZO)などの光透過性を有する酸化物導電材料によって形成されている。このような画素電極PEは、図示しない配向膜によって覆われている。
【0029】
一方、対向基板CTは、ガラス板やプラスチック基板などの光透過性を有する第2絶縁基板30を用いて形成されている。この対向基板CTは、第2絶縁基板30のアレイ基板ARに対向する側に、ブラックマトリクス31などを備えている。このような対向基板CTのアレイ基板ARと対向する表面は図示しない配向膜によって覆われている。
【0030】
ブラックマトリクス31は、第2絶縁基板30の上において、ゲート配線、ソース配線、スイッチング素子SWなどの配線部の直上に位置するように配置されている。このようなブラックマトリクス31は、例えば、黒色に着色された樹脂材料やクロム(Cr)などの遮光性の金属材料によって形成されている。
【0031】
上述したようなアレイ基板ARと対向基板CTとは、それぞれの配向膜が向かい合うように配置されている。このとき、アレイ基板ARと対向基板CTとの間には、図示しない柱状スペーサなどにより所定のセルギャップが形成される。アレイ基板ARと対向基板CTとは、所定のセルギャップが形成された状態で図示しないシール材によって貼り合わせられている。液晶層LQは、アレイ基板ARと対向基板CTとの間に形成されたセルギャップに保持されている。
【0032】
アレイ基板ARの外面、つまり、アレイ基板ARを構成する第1絶縁基板10の外面には、偏光板を含む第1光学素子OD1が接着剤などにより貼付されている。また、対向基板CTの外面、つまり、対向基板CTを構成する第2絶縁基板30の外面には、偏光板を含む第2光学素子OD2が接着剤などにより貼付されている。
【0033】
バックライトBLは、アレイ基板ARの背面側に配置されている。このようなバックライトBLとしては、種々の形態が適用可能であり、また、光源として発光ダイオード(LED)を利用したものや冷陰極管(CCFL)を利用したものなどのいずれでも適用可能であり、詳細な構造については説明を省略する。
【0034】
図3では、アレイ基板ARに形成される信号配線として、ソース配線Sが図示されている。このソース配線Sは、ソース電極WS及びドレイン電極WDと同様に、第2絶縁膜12の上に配置され、第3絶縁膜13によって覆われている。
【0035】
このようなソース配線Sは、少なくとも、下地層M1、透明層M2、及び、主配線層M3を含んでいる。図示した例では、ソース配線Sは、3層の積層体によって形成されているが、4層以上の積層体であっても良い。例えば、透明層M2と主配線層M3との間に、両者との密着性が良好な密着層が介在していても良い。
【0036】
下地層M1は、第2絶縁膜12の上に形成されている。この下地層M1は、可視光領域(例えば、400nmから800nmまでの波長範囲)での透過率が0.5以上となるように形成されている。つまり、下地層M1は、通過する光の半分以上が透過するような半透過層である。
【0037】
このような下地層M1は、信号配線の一部をなすため、導電層であることが望ましいが、絶縁層であっても良い。例えば、この下地層M1は、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、もしくは、これらのいずれかを主成分として含む合金ないしはシリサイドによって形成されている。
【0038】
このような材料によって形成された下地層M1は、きわめて薄い薄膜である。この膜厚T1は、下地層M1を形成する材料が光吸収性を有していても、下地層M1が半透過層として機能するように設定される。一例として、下地層M1は、8nmの膜厚T1のモリブデンによって形成されている。なお、この下地層M1は、基板上の略全面に形成される第2絶縁膜12などのような薄膜とは相違し、信号配線のパターンに対応した形状に形成されたものである。
【0039】
また、第2絶縁膜12の上に信号配線を形成するに際して、この下地層M1は、第2絶縁膜12との相性が良好な材料によって形成されており、第2絶縁膜12に密着する密着層として機能する。
【0040】
透明層M2は、下地層M1の上に積層されている。この透明層M2は、可視光領域の光を透過可能である。このような透明層M2は、信号配線の一部をなすため、導電層であることが望ましいが、絶縁層であっても良い。例えば、この透明層M2は、透明な材料、例えば、インジウム・ティン・オキサイド(ITO)やインジウム・ジンク・オキサイド(IZO)などの光透過性を有する酸化物導電材料によって形成されている。
【0041】
このような透明層M2は、下地層M1の膜厚T1より厚い膜厚dを有している。一例として、透明層M2は、40nmの膜厚dのITOによって形成されている。この透明層M2の膜厚dは、透明層M2を形成する材料の屈折率などによって異なる。本実施形態においては、透明層M2の膜厚をd(nm)とし、透明層M2の屈折率をnとしたとき、積n×dが400より小さい。
【0042】
主配線層M3は、透明層M2の上に積層されている。このような主配線層M3は、信号配線の主要部をなすため、下地層M1や透明層M2の材料よりも低抵抗な主配線材料からなる導電層である。すなわち、主配線層M3は、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)もしくは、これらのいずれかを主成分として含む合金によって形成されている。
【0043】
このような主配線層M3は、例えば、透明層M2の膜厚dより厚い膜厚T3を有している。この主配線層M3の膜厚については、配線抵抗などを考慮して設定される。一例として、この主配線層M3は、500nmの膜厚T3の銀(Ag)によって形成されている。
【0044】
なお、図3では図示を省略したが、アレイ基板ARに形成される他の信号配線、例えば、ゲート配線や補助容量線などについても、上記のソース配線Sと同様に、少なくとも、下地層M1、透明層M2、及び、主配線層M3を含んだ構成を適用することが可能である。
【0045】
一方で、ソース配線Sと同一工程で形成可能なソース電極WS及びドレイン電極WDについては、主として主配線層M3と同一材料によって形成されている。これらのソース電極WS及びドレイン電極WDは、半導体層SCとコンタクトするため、これらを形成する材料によっては半導体層SCとの間で成分の相互拡散が生じ、スイッチング素子SWの性能を劣化させるおそれがある。このため、ソース電極WS及びドレイン電極WDと半導体層SCとの間には、下地層M1と同一材料によって形成された拡散防止層が介在していても良い。
【0046】
図4は、本実施形態における信号配線での反射低減効果を説明するための図である。図中の左側は、密着層である下地層M1と、この下地層M1の上に積層された主配線材料からなる主配線層M3との2層積層体によって構成された信号配線Aを示している。図中の右側は、密着層及び半透過層である下地層M1と、この下地層M1の上に積層された透明材料からなる透明層M2と、この透明層M2の上に積層された主配線材料からなる主配線層M3との3層積層体によって構成された信号配線Bを示している。
【0047】
信号配線Aにバックライト光などの光が照射された場合には、その光のほとんどは下地層M1の底面(あるいは、第2絶縁膜12と下地層M1との界面)で裏面側に反射され、一部の光は下地層M1の中に入射して減衰する。このような信号配線Aで裏面側に反射された光は、表示上の不具合(黒表示の際の光漏れなど)の原因となりうる。
【0048】
これに対して、本実施形態に相当する信号配線Bでは、下地層M1の膜厚T1が10nm前後と極薄いため、信号配線Bに向けて照射された光は、下地層M1を透過し、さらに透明層M2の中に入射する。透明層M2の内部に入射した光は、主配線層M3の底面(あるいは、透明層M2と主配線層M3との界面)で反射される。透明層M2を挟んで対向する下地層M1及び主配線層M3は、光学キャビティを形成している。
【0049】
このため、一旦透明層M2に入射した光のほとんどは信号配線Bの内部に閉じ込められる。すなわち、λ=2・n・d(但し、nは透明層M2を形成する材料の屈折率であり、dは透明層M2の膜厚である)の関係を満たす波長以外の光は、信号配線Bの外側に放射されることがない。
【0050】
本実施形態では、上記の通り、透明層M2の膜厚d及び屈折率nは、2・n・d<800(nm)の関係、つまり、n・dが400より小さい関係を満たすように設定されている。このため、800nmより小さい波長の可視光は、信号配線Bの内部に入射した後に再び信号配線Bの外側に出射することができない。したがって、信号配線Bでの反射光を低減することが可能となり、このような反射光に起因した表示上の不具合を抑制することが可能となる。これにより、表示装置の表示品位を改善することが可能となる。
【0051】
また、信号配線Bでの反射光を低減することが可能となるため、信号配線B付近での不所望な光抜けを抑制することができ、ブラックマトリクス31の幅を狭くすることが可能となり、ブラックマトリクス31で囲まれた透過部の面積(開口率)を向上することが可能となる。
【0052】
次に、表示装置1の他の例として、有機EL表示装置について説明する。
【0053】
図5は、本実施形態の有機EL表示装置の構成を概略的に示す断面図である。なお、ここでは、説明に必要な主要部のみを図示している。ここに示した有機EL表示装置は、図3に示したアレイ基板ARを適用した構成したものである。但し、アレイ基板ARがボトムエミッションタイプの有機EL素子OLEDを備えている点で、図3に示した例とは相違している。なお、図3に示した例と同一構成については同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0054】
すなわち、有機EL素子OLEDは、画素電極PEと、画素電極PEの上に配置された有機発光層ORGと、有機発光層ORGの上に配置された対向電極CEとによって構成されている。ボトムエミッションタイプの有機EL素子OLEDは、有機発光層ORGで発生した光を第1絶縁基板10の背面側に向けて出射する。
【0055】
このような有機EL表示装置においても、アレイ基板ARは、図示したソース配線Sの他に、ゲート配線、電源線などの各種信号配線を備えている。このような信号配線の少なくとも一部は、上記のような下地層M1、透明層M2、及び、主配線層M3を含んでいる。ボトムエミッションタイプの有機EL素子OLEDを備えた構成の場合、アレイ基板ARの裏面、つまり、第1絶縁基板10の背面が表示面となる。
【0056】
このような表示面には外光が入射する。第1絶縁基板10の上に形成された信号配線が図4のAで示したような構成である場合、表示面に入射した外光が信号配線Aで反射され、コントラスト比の低下を招くおそれがある。一方で、本実施形態の信号配線Bを適用した場合には、表示面に入射した外光が信号配線Bの内部に閉じ込められ、不所望な反射を低減することが可能となる。一般的に、外光の反射を防止するために、表示面に円偏光板が付加されるが、本実施形態の構成によれば、円偏光板などの付加物を必要とすることなく、外光反射を低減することが可能となる。
【0057】
図6は、各種形態の信号配線に入射した光の反射率のシミュレーション結果を示す図である。ここでは、信号配線の垂直下方から下地層M1に向かって入射した可視光領域(400nm〜800nm)の光の反射率を計算によって示した。
【0058】
比較例1に相当する(A)においては、下地層M1としてモリブデン(Mo)を50nmの膜厚T1で形成し、この下地層M1に積層された主配線層M3として銀(Ag)を500nmの膜厚T3で形成した。下地層M1に向かって入射した光はほぼ下地層M1のみで反射され、下地層M1を形成するモリブデン(Mo)の反射率になっている。
【0059】
比較例2に相当する(B)においては、下地層M1としてモリブデン(Mo)を8nmの膜厚T1で形成し、この下地層M1に積層された主配線層M3として銀(Ag)を500nmの膜厚T3で形成した。この比較例2では、下地層M1が半透過層として機能する点で比較例1とは相違している。このため、一部の光が下地層M1を透過し、主配線層M3との界面まで到達するため、反射率が変化する。
【0060】
本実施形態に相当する(C)においては、下地層M1としてモリブデン(Mo)を8nmの膜厚T1で形成し、この下地層M1に積層された透明層M2としてITOを40nmの膜厚dで形成し、この透明層M2に積層された主配線層M3として銀(Ag)を500nmの膜厚T3で形成した。
【0061】
この本実施形態では、下地層M1と主配線層M3との間に透明層M2が配置された点で比較例2とは相違している。このような構成によれば、下地層M1を透過した光は透明層M2に到達し、干渉が発生し可視光領域の反射率が(A)で示した比較例1の構成に比べて1/2以下に低減されることが確認された。
【0062】
なお、反射率の観点からは、透明層M2としては屈折率の低い材料によって形成されることが望ましい。例えば、SiOは屈折率がITOよりも低い。しかしながら、SiOのような絶縁材料を用いると信号配線に容量が形成される。このため、信号配線のインピーダンスが増大するのを防止するために、本実施形態ではITOを透明膜として用いた。容量が問題とならないDCないし低周波に用いる用途では、透明層M2として、酸化シリコン(SiO)などの絶縁性の膜を用いることも可能である。
【0063】
以上説明したように、本実施形態によれば、表示品位を改善することが可能な表示装置及び表示装置用アレイ基板を提供することができる。
【0064】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1…表示装置
PNL…表示パネル
AR…アレイ基板 CT…対向基板
G…ゲート配線 S…ソース配線
SW…スイッチング素子 PE…画素電極 CE…対向電極
BL…バックライト
M1…下地層 M2…透明層 M3…主配線層
OLED…有機EL素子 ORG…有機発光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板の上に配置され可視光領域での透過率が0.5以上の下地層、前記下地層より厚い膜厚を有するとともに前記下地層の上に積層された透明材料からなる透明層、及び、前記透明層の上に積層された主配線材料からなる主配線層の積層体によって形成された信号配線と、を備え、
前記透明層の膜厚をd(nm)とし、前記透明層の屈折率をnとしたとき、積n×dが400より小さいことを特徴とする表示装置用アレイ基板。
【請求項2】
前記下地層は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、もしくは、これらのいずれかを主成分として含む合金ないしはシリサイドによって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置用アレイ基板。
【請求項3】
前記透明層は、インジウム・ティン・オキサイド(ITO)、または、インジウム・ジンク・オキサイド(IZO)によって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置用アレイ基板。
【請求項4】
前記主配線層は、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)もしくは、これらのいずれかを主成分として含む合金によって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置用アレイ基板。
【請求項5】
絶縁基板と、前記絶縁基板の上に配置され可視光領域での透過率が0.5以上の下地層、前記下地層より厚い膜厚を有するとともに前記下地層の上に積層された透明材料からなる透明層、及び、前記透明層の上に積層された主配線材料からなる主配線層の積層体によって形成された信号配線と、前記信号配線に電気的に接続されたスイッチング素子と、前記スイッチング素子に電気的に接続された画素電極と、を備えたアレイ基板と、
前記アレイ基板に対向配置された対向基板と、
前記アレイ基板と前記対向基板との間に保持された液晶層と、
前記アレイ基板の背面側に配置されたバックライトと、を備え、
前記アレイ基板の前記信号配線において、前記透明層の膜厚をd(nm)とし、前記透明層の屈折率をnとしたとき、積n×dが400より小さいことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
絶縁基板と、前記絶縁基板の上に配置され可視光領域での透過率が0.5以上の下地層、前記下地層より厚い膜厚を有するとともに前記下地層の上に積層された透明材料からなる透明層、及び、前記透明層の上に積層された主配線材料からなる主配線層の積層体によって形成された信号配線と、前記信号配線に電気的に接続されたスイッチング素子と、前記スイッチング素子に電気的に接続されるとともに前記絶縁基板の背面側に向かって光を出射する有機EL素子と、を備えたアレイ基板と、
前記アレイ基板に対向配置された対向基板と、を備え、
前記アレイ基板の前記信号配線において、前記透明層の膜厚をd(nm)とし、前記透明層の屈折率をnとしたとき、積n×dが400より小さいことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−159767(P2012−159767A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20535(P2011−20535)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(302020207)株式会社ジャパンディスプレイセントラル (2,170)
【Fターム(参考)】