説明

表面検査装置および表面検査方法

【課題】フラットディスプレイパネルの基板上に形成された塗布膜の表面形状を短時間で、低コストに検査可能な表面検査装置を提供する。
【解決手段】基板11上に形成された塗布膜12の表面検査装置であって、点光源20と、点光源20から発せられた光の光路に設けられたハーフミラー21と、ハーフミラー21を経由した光を平行光に変換して塗布膜12の表面に照射するとともに塗布膜12の表面からの反射光を集光するように配置されたフレネルレンズ22と、フレネルレンズ22により集光されハーフミラー21により点光源20とは別の光路に導かれた反射光の集光結像された光学像を観察するCCDカメラ26とを有し、フレネルレンズ22より高い剛性を有する補強平板40がフレネルレンズ22に固定されることなくフレネルレンズ22の凹凸面に接して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面検査装置および表面検査方法に関し、特にフラットディスプレイパネル用の基板上に形成された塗布膜の表面検査装置および表面検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ装置やプラズマディスプレイ装置などに用いるフラットディスプレイパネルでは、基板上に形成された塗布膜がパネルを構成する要素部材として各種の目的で使用されている。このような塗布膜の多くには、表面の平坦性、局所的な凹凸の無いこと、膜厚が均一であることなどが要求される。
【0003】
例えば、プラズマディスプレイパネルは、前面基板および背面基板の両ガラス基板を対向配置して放電空間を形成し、両ガラス基板の周囲を封着材で封着し、放電空間に放電ガスを封入することにより構成されている。前面基板上には誘電体層で覆われた複数の電極が形成され、背面基板上には複数の電極および隔壁が形成されるとともに隣接する隔壁間の溝に赤色、緑色、青色に発光する蛍光体層が形成されている。このプラズマディスプレイパネルでは、前面基板上に形成された誘電体層や背面基板上に形成された隔壁は、いずれも高い厚み精度や表面の平坦性を要求される。
【0004】
通常、基板上に形成された塗布膜の塗布状態は、それぞれの基板で微妙に異なる場合があり、塗布膜の性状を検査するときは全数の基板について基板全面の状態を検査できることが求められる。このような検査には、段差計または光学干渉式膜厚測定装置を用いた検査方法がある。この検査方法では、点あるいは微少エリアでの測定評価を積み重ねて基板全面を評価する。
【0005】
また上記のような、点あるいは微少エリアで検査する検査方式以外に、ある面積について一括して面の反射光を解析して反射光の明暗から塗布膜表面の凹凸を検出する検査方式が開示されている(例えば特許文献1参照)。一般に魔鏡と呼ばれる方式がそれである。この方式では、高い平行度を持つ平行光を被評価膜面に照射すると、膜面の凹凸が反射光の方向を変えるために光束密度分布が生じて明暗の差として検出されるという原理が利用されている。この魔鏡方式は非常に検出感度が高く極微小な凹凸も明暗として検出でき、現在主として半導体分野のシリコンウエハーの表面解析に適用されている。この方式は、検出の性能は高いが、非常に高い平行度を持つ平行光を生成するために高い精度の光学レンズが必要とされる。
【特許文献1】特公昭63−19001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、段差計または光学干渉式膜厚測定装置を用いた検査方法では、点あるいは微少エリアでの測定評価を積み重ねて基板全面を評価することになるため、膜厚分布傾向の評価はできるが、局所的な膜厚ムラまで検出しようとすると測定ポイント数を非常に多くとらねばならないことになり、非現実的な検査タクトとなってしまう。例えば、1m×1mの大きさの検査対象領域において10mmφの窪みを見つけるためには、少なくても検査対象領域を100×100の10000ポイント(あるいは領域)に分割して各ポイント(あるいは各領域)について測定を行い、その測定値の比較分析で局所的な膜厚ムラの有無を判定することになる。各ポイントでの測定時間と測定ポイント間の移動時間を合わせて5秒と仮定すると50000秒(約14時間)の検査時間となってしまうものである。したがって、このような検査方法では、検査対象である塗布膜の全面について膜厚の異常な部分、あるいは表面の凹凸部分を現実的な検査時間で検出することは非常に困難である。
【0007】
また魔鏡方式を用いた検査方法では、平行光を生成するための光学レンズは、評価対象膜面サイズと同等以上のサイズが必要である。この方式で大面積検査用の検査装置を実現しようとすると高精度に加工した大径の光学レンズが必要になり設備価格が極端に高額になってしまう。このため、魔鏡方式の検査装置は比較的面積が小さく面積当たりの付加価値の高い半導体ウエハーの用途などにしか適用されておらず、大画面のフラットディスプレイパネル用の基板に適用できるような大面積検査用の検査装置は実現されていない。現在、実用化されている魔鏡検査装置としては、一括評価可能範囲が300mmφ程度のものが最大である。
【0008】
この検査装置で、一括評価可能範囲を越える大きな面積を検査するには、被測定範囲を分割して評価し、これを積み重ねて基板全面を評価する必要があり、検査タクトは遅くなるという課題があった。例えば、1m×1mの大きさの検査対象領域において300mmφ視野の評価可能エリアとすると、方形基板での検査では最大でも一度に評価できる面積は200mm×200mm視野が限度であり、5×5=25視野に分割して各視野について解析する必要がある。仮に、視野毎の移動と解析に10秒かかるとすると1枚当たりの検査時間は250秒+各視野間解析時間が必要とされ、さらなる時間短縮が求められていた。また、この装置では高精度加工した光学レンズを使用するため設備価格が非常に高いものになってしまうという課題を有している。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、フラットディスプレイパネルの基板上に形成された塗布膜の表面形状を短時間で、低コストに検査可能な表面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明の表面検査装置は、基板上に形成された塗布膜の表面検査装置であって、点光源と、前記点光源から発せられた光の光路に設けられたハーフミラーと、前記ハーフミラーを経由した前記光を平行光に変換して前記塗布膜の表面に照射するとともに前記塗布膜の表面からの反射光を集光するように配置されたフレネルレンズと、前記フレネルレンズにより集光され前記ハーフミラーにより前記点光源とは別の光路に導かれた前記反射光の集光結像された光学像を観察する観察手段とを有し、前記フレネルレンズより高い剛性を有する補強平板が前記フレネルレンズに固定されることなく前記フレネルレンズの凹凸面に接して設けられたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の表面検査方法は、基板上に溶剤を含む膜材料を塗布して塗布膜を形成した後、前記塗布膜を焼成するまでの間に、本発明の表面検査装置を用いて前記塗布膜の表面検査を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フラットディスプレイパネル用の基板上に形成された塗布膜などの表面形状を短時間かつ低コストで信頼性良く検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態による表面検査装置について、フラットディスプレイパネルの一例であるプラズマディスプレイパネルを例として、その基板上の塗布膜表面を検査対象物表面として検査する場合について図面を用いて説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、プラズマディスプレイパネルの構造を示す斜視図である。プラズマディスプレイパネルは、放電空間を形成するように対向して配置されたガラス製の前面基板1と背面基板2とを備えている。前面基板1上には2つの表示電極3、4から構成された表示電極対が複数配列されており、表示電極3、4を覆うように誘電体層5が形成され、誘電体層5上に酸化マグネシウムからなる保護層6が形成されている。背面基板2上には表示電極3、4と直交する方向に複数のアドレス電極7が形成され、アドレス電極7を覆うように誘電体層8が形成されている。誘電体層8上にはアドレス電極7の間に位置するように隔壁9が形成され、誘電体層8の表面および隔壁9の側面には蛍光体層10が形成されている。放電空間には、例えばネオンとキセノンの混合ガスからなる放電ガスが400〜600Torrの圧力で封入されている。表示電極対を構成する表示電極3および表示電極4の間で表示放電を起こさせたときに発生する紫外線によって、蛍光体層10を発光させてカラー画像を表示している。ここに示した誘電体層5、誘電体層8などは、基板に塗布材料を塗布して塗布膜を形成した後、これを乾燥、焼成して形成する。これら塗布膜は、表面の平坦性、局所的な凹凸のないこと、膜厚が均一であることなどが要求される。本発明の表面検査装置は、これら塗布膜を検査するのに用いられる。
【0015】
図2は本発明の第1の実施の形態における表面検査装置の概略を示す図であり、基板11上に形成された塗布膜12を検査するときの状態を示している。まず基本的な光束の状態と検査の原理を説明する。
【0016】
点光源20は、図示していないがピンホール板にハロゲンランプを照射する構成となっている。この場合はピンホールの位置が点光源20の位置となる。点光源20から発せられた光は、その光路上に設けられたハーフミラー21により曲げられ、平行光生成用のフレネルレンズ22によって平行光23に変換され、塗布膜12に照射される。塗布膜12からの反射光24は再びフレネルレンズ22によって集光され、ハーフミラー21を直進して結像レンズ25によって観察手段であるCCDカメラ26に結像される。本実施の形態では結像レンズ25を用いているが、結像レンズ25を用いずにフレネルレンズ22によって反射光24をCCDカメラ26に直接結像させるようにしてもよい。
【0017】
フレネルレンズ22は、凹凸が形成された凹凸面を有するとともにその凹凸面の反対側の表面が平らな面(平面)となっており、フレネルレンズ22を大面積かつ低コストで実現する場合、レンズ材料として光学樹脂材料、例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート)のような透明光学アクリル材料を用いることになる。フレネルレンズ22は凹凸面が塗布膜12に向くように水平に配置され、フレネルレンズ22の凹凸面側には、剛性の高い溶剤隔離用の透明な平板(補強平板)40がフレネルレンズ22と接する構成で水平に配置されている。ここで、フレネルレンズ22の周辺部にはフレネルレンズ押さえ枠部材41を載せており、これによりフレネルレンズ22は平板40に押し付けられて形状が平板40の形状に沿うように規制される。フレネルレンズ22は、平板40と接着されていることはなく、またフレネルレンズ押さえ枠部材41によって平板40に取り付けられた状態でもない。すなわちフレネルレンズ22は平板40に固定された状態ではないので、温度や湿度など環境条件の変化によってフレネルレンズ22の反りや膨張が発生する場合でも、フレネルレンズ22はフレネルレンズ押さえ枠部材41によって平板40に沿った形状を保つことができる。
【0018】
また、点光源20、ハーフミラー21、フレネルレンズ22、結像レンズ25、CCDカメラ26、平板40、フレネルレンズ押さえ枠部材41は筐体42の内部に収納されており、筐体42の下側部分には開口部が設けられている。その開口部周囲の筐体部分である光学部支持枠42aに平板40が設置されており、開口部は平板40によって塞がれた状態である。また、光学部支持枠42a上に設けた位置決め部材43は平板40の周囲に設けられており、位置決め部材43により平板40が位置決めされている。なお平板40は、光学部支持枠42aに固定されていてもよく、固定されず光学部支持枠42a上に単に載せられた状態であってもよいが、平板40が光学部支持枠42aに密着した状態が好ましい。このような構成により、フレネルレンズ22が収納された筐体42の内部には塗布膜12から発生する溶剤の蒸気が入り込みにくくなっている。すなわち、この表面検査装置は、塗布膜12に含まれる溶剤の蒸気がフレネルレンズ22に接触することを抑制する接触抑制構造を有している。
【0019】
ここで塗布膜12に凹部12aがある場合、平行光23は凹部12aで反射されると光路24aを通る収束光になり、収束面27に収束する。同様に塗布膜12に凸部12bがある場合、平行光23は凸部12bで反射されると疑似収束面28から発せられたような光路24bを通る拡散光となる。このような反射光24、24a、24bを、結像レンズ25を通してCCDカメラ26で撮像し光束分布密度を解析する。
【0020】
図3は、反射光24をCCDカメラ26で撮像したときの撮像画像を模式的に表した図である。収束面27を結像レンズ25によってCCDカメラ26上に結像すると、凹部12aの位置では反射光24aが収束して光束密度が高く明るくなり、凸部12bの位置では反射光24bが拡散し光束密度が低く暗くなるので、図3(a)に示すような撮像画像となる。すなわち図3(a)において、破線30aで囲まれたA領域では周囲の領域に比べて明るくかつA領域の中心へ行くほど明るくなる画像が得られ、凹部12aが存在していることを表している。また、破線30bで囲まれたB領域では周囲の領域に比べて暗くかつB領域の中心へ行くほど暗くなる画像が得られ、凸部12bが存在していることを表している。
【0021】
また、疑似収束面28を結像レンズ25によってCCDカメラ26上に結像すると、凸部12bの位置では反射光24bが疑似収束し光束密度が高く明るくなり、凹部12aの位置では反射光24aが拡散して光束密度が低く暗くなるので、図3(b)に示すような撮像画像となる。すなわち図3(b)において、破線31aで囲まれたA領域では周囲の領域に比べて暗くかつA領域の中心へ行くほど暗くなる画像が得られ、凹部12aが存在していることを表している。また、破線31bで囲まれたB領域では周囲の領域に比べて明るくかつB領域の中心へ行くほど明るくなる画像が得られ、凸部12bが存在していることを表している。
【0022】
結像位置を変えるには、結像レンズ25やCCDカメラ26の位置を光軸方向に適宜ずらせばよい。このように任意の位置の光束分布をCCDカメラ26に結像し、得られる画像の明暗状況を解析することによって塗布膜12の表面形状を検査でき、特に検査の難しい局所的な表面の凹凸形状を検査できる。
【0023】
次に一例として、プラズマディスプレイパネルの前面基板1上に設けられた誘電体層5について検査する場合について説明する。プラズマディスプレイパネルの製造工程において、誘電体層5は次のようにして形成される。すなわち、ガラス等の誘電体材料、バインダおよび溶剤を含んだ誘電体ペースト(膜材料)を、前面基板1上に形成した表示電極3、4を覆うように塗布することにより誘電体材料膜(塗布膜)を形成し、その後、誘電体材料膜を昇温して乾燥させると溶剤が揮発し、誘電体材料の粒子間はバインダによって結着される。続いて温度を上げればバインダが除去され、さらに高温にして焼成することで誘電体材料が焼結して誘電体層5が形成される。
【0024】
このようにして形成された誘電体層5の表面の表面粗さは比較的粗くなっている。誘電体材料膜の成分に有機成分が多い場合、乾燥した後に熱処理(焼成)すると誘電体材料膜中の有機成分が焼失するために表面粗さが粗くなる。そこで、この表面粗さが粗くなる前の状態、すなわち、誘電体ペーストを塗布して乾燥した後、焼成するまでの間に誘電体材料膜の表面形状の検査を行う。このとき、正反射光の強い状態で検査することになるため、誘電体材料膜の表面形状の検査を精度よく行うことができる。また、誘電体ペーストの塗布後、乾燥するまでの間に検査してもよい。この場合にも正反射光の強い状態で検査することになるため、誘電体材料膜の表面形状の検査を精度よく行うことができる。すなわち、前面基板1上に溶剤を含む誘電体ペーストを塗布して誘電体材料膜を形成した後、その誘電体材料膜を焼成するまでの間に誘電体材料膜の表面形状の検査を行うことで、その検査を精度よく行うことができる。
【0025】
上記のように、本発明の一実施の形態による表面検査装置は、塗布膜12を乾燥する前の正反射率の高い状態で検査することで特に良好な凹凸検出性能を発揮できるものであるが、塗布膜12を乾燥する前の正反射率の高い状態で塗布膜12を検査する場合には、乾燥前の塗布膜12から揮発する溶剤が検査用光学系に接することになる。溶剤としてはテルピネオールやBCA(ブチルカルビトールアセテート)が用いられる。フレネルレンズ22は通常、アクリル樹脂などを成型して製作するが、これら樹脂が溶剤の蒸気に長期間さらされるとフレネルレンズ22の表面に曇りを生じたりフレネルレンズ22が変形したりすることがある。曇りや変形が生じると、均一な平行光を作り出せなくなり塗布膜12の表面の検査性能に重大な障害を生じることになる。
【0026】
しかしながら、本実施の形態における表面検査装置では、塗布膜12から発生する溶剤の蒸気がフレネルレンズ22に接触するのを抑制する構造となっているので、フレネルレンズ22に曇りや変形が生じることを抑制することができる。このため、塗布膜12の表面の検査性能の低下を防ぐことができる。
【0027】
また、塗布膜12を乾燥する前に検査する場合には、乾燥前の塗布膜12が偏って形状が変わることを避けるため、検査する基板11を水平に置いた状態で検査することが望ましい。このとき、平行光生成用のフレネルレンズ22も水平に配置することになるが、そのフレネルレンズ22が薄く大きいサイズであると自重によってフレネルレンズ22が撓み、正常に平行光を生成することができず塗布膜12の表面検査が正常にできなくなってしまう場合がある。
【0028】
しかしながら、本実施の形態では、フレネルレンズ22の凹凸面に接するように平板40を配置し、フレネルレンズ押さえ枠部材41でレンズ周辺まで平板40に沿うようにしている。平板40はフレネルレンズ22よりも高い剛性を有しており、これにより、撓みのようなフレネルレンズ22の変形を抑制可能な構成を実現している。また、フレネルレンズ22の凹凸面と平板40の表面(平らな面)とが接するようになっており、フレネルレンズ22と平板40とが平面同士で接することがないため干渉光によるムラも発生することはない。したがって、フレネルレンズ22を平板40に軽く押し付けるようにするだけで良好な平行光を均一に生成することができ、塗布膜12の表面検査を精度よく行うことができる。なお平板40としては、フレネルレンズ22を水平に配置して検査を行う場合、フレネルレンズ22の撓みが塗布膜12の表面検査を正常に行える範囲内に抑制できる剛性を有するものを使用すればよい。
【0029】
(第2の実施の形態)
図4は本発明の第2の実施の形態における表面検査装置の概略を示す図であり、基板11上に形成された塗布膜12を検査するときの状態を示している。図4において図2と同じ構成要素については同じ符号を用いている。第2の実施の形態における表面検査装置では、第1の実施の形態に比べてフレネルレンズへの溶剤成分の影響をさらに抑制できる構成としている。なお、第2の実施の形態における表面検査装置は、第1の実施の形態と同様に筐体42を有する構成であるが、筐体42の図示は省略している。
【0030】
図4に示すように、透明な平板40と透明な平板44とを所定の間隔をあけて平行に配置し、それらの周囲を封止部材45で封止して容器を構成しており、その容器内にはフレネルレンズ押さえ枠部材41およびフレネルレンズ22が設けられている。フレネルレンズ押さえ枠部材41によりフレネルレンズ22の周辺部を平板40に押し付けることで、フレネルレンズ22が平板40の形状に沿うように規制されており、フレネルレンズ22の反りが抑制されている。また、フレネルレンズ22の凹凸面側が平板40に接するように構成している。この構成により、塗布膜12から発生する溶剤の蒸気からフレネルレンズ22を完全に隔離することができ、フレネルレンズ22の溶剤成分による変質や変形を防ぐことができる。また、平板40はフレネルレンズ22よりも高い剛性を有しており、フレネルレンズ22は均一な平行光23を生成することができる。なお、第1の実施の形態と同様にフレネルレンズ22は平板40に固定された状態ではない。また、封止部材45は、塗布膜12から発生する溶剤の蒸気によって変質等の影響を受けることのない耐溶剤性材料を用いている。
【0031】
第1の実施の形態で用いる平板40および第2の実施の形態で用いる平板40、平板44は、塗布膜12に含有される溶剤に溶解膨潤されない材料(耐溶解膨潤の材料)によって構成され、その材料の例としては、光学的に透明でかつ化学的な安定性が高い石英などがあるが、ガラス材がこれら特性を満たす上に入手も容易で価格的にも安く最も適している。
【0032】
また、第1および第2の実施の形態では、塗布膜12と平行光生成用光学系に用いられるフレネルレンズ22との間に、平板40を配置した構成としている。この場合、平板40と空気との界面で界面反射が発生する。この界面反射光は、平行光の一部を平板40の表面で反射して観察光学系へと導くことになり、塗布膜12の表面からの反射光の集光コントラストを悪くする要因となり得る。これを解決するために、塗布膜12とフレネルレンズ22との間に配置した、平板40の上面および下面に反射防止コーティングを施している。すなわち、平板40の表面のうち、少なくともフレネルレンズ22に対面した表面およびそれと反対側の表面に反射防止コーティングを施している。この反射防止コーティングを施していることにより、平板40の表面での反射光が低減され観察光学系で観察される反射光の明暗コントラストが改善される。平板40に施す反射防止コーティングは、平板40の上面または下面のうち一方の面のみに施した場合でも効果は得られるが、両方の面に施す方がはるかに大きな効果が得られる。
【0033】
また、第2の実施の形態において、フレネルレンズ22のハーフミラー21に対面する側に配置された平板44の表面に反射防止コーティングを施してもよい。すなわち、平板44の表面のうち、少なくともフレネルレンズ22に対面した表面およびそれと反対側の表面に反射防止コーティングを施すことにより、平板44からの反射光も低減されて、観察光学系で観察される反射光の明暗コントラストをさらに改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、基板上に形成された塗布膜などの表面形状の局所的な凹凸異常を速いタクトでかつ低コストで検出することができ、本発明の表面検査装置はフラットディスプレイパネルなど特に大面積の塗布膜の検査に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】プラズマディスプレイパネルの構造を示す斜視図
【図2】本発明の第1の実施の形態における表面検査装置の概略を示す図
【図3】(a)、(b)はCCDカメラによる撮像画像を模式的に示す図
【図4】本発明の第2の実施の形態における表面検査装置の概略を示す図
【符号の説明】
【0036】
11 基板
12 塗布膜
20 点光源
21 ハーフミラー
22 フレネルレンズ
23 平行光
24 反射光
25 結像レンズ
26 CCDカメラ
27 収束面
28 疑似収束面
40 平板(補強平板)
41 フレネルレンズ押さえ枠部材
42 筐体
42a 光学部支持枠
44 平板
45 封止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された塗布膜の表面検査装置であって、点光源と、前記点光源から発せられた光の光路に設けられたハーフミラーと、前記ハーフミラーを経由した前記光を平行光に変換して前記塗布膜の表面に照射するとともに前記塗布膜の表面からの反射光を集光するように配置されたフレネルレンズと、前記フレネルレンズにより集光され前記ハーフミラーにより前記点光源とは別の光路に導かれた前記反射光の集光結像された光学像を観察する観察手段とを有し、前記フレネルレンズより高い剛性を有する補強平板が前記フレネルレンズに固定されることなく前記フレネルレンズの凹凸面に接して設けられたことを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
前記塗布膜は溶剤を含んでおり、前記溶剤の蒸気が前記フレネルレンズに接触することを抑制する接触抑制構造を有することを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記フレネルレンズおよび前記補強平板は開口部を有する筐体内に設けられ、前記補強平板が前記開口部を塞ぐように配置されることにより前記接触抑制構造を構成し、前記補強平板は前記溶剤に対して耐溶解膨潤の材料からなることを特徴とする請求項2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記フレネルレンズの平らな面の側に、その平らな面から離して平板を配置し、前記フレネルレンズを取り囲むように前記平板と前記補強平板の周囲を封止することにより前記接触抑制構造を構成し、前記平板および前記補強平板は前記溶剤に対して耐溶解膨潤の材料からなることを特徴とする請求項2に記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記補強平板の表面のうち、少なくとも前記フレネルレンズに対面した表面およびそれと反対側の表面に反射防止コーティングを施したことを特徴とする請求項3に記載の表面検査装置。
【請求項6】
前記補強平板および前記平板の表面のうち、少なくとも前記フレネルレンズに対面した表面およびそれと反対側の表面に反射防止コーティングを施したことを特徴とする請求項4に記載の表面検査装置。
【請求項7】
基板上に溶剤を含む膜材料を塗布して塗布膜を形成した後、前記塗布膜を焼成するまでの間に、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の表面検査装置を用いて前記塗布膜の表面検査を行うことを特徴とする表面検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−155575(P2007−155575A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352994(P2005−352994)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】