説明

被処理体の搬送機構及び処理システム

【課題】 高速搬送ができ、しかも、被処理体の位置ずれも生ずることのない被処理体の搬送機構を提供する。
【解決手段】 薄い板状の被処理体Wを搬送するために比較的長い共通搬送エリア6内に設けられた搬送機構40において、前記共通搬送エリアの長手方向に沿って設けられる案内レール42と、前記案内レールに沿って移動可能になされた移動体44Aと、前記移動体に設けられて、前記被処理体の周縁部の下側角部に係合される断面L字状の係合段部82,84を有する複数の被処理体支持支柱80とを備える。これにより、被処理体を上記係合段部により保持することにより、高速搬送ができ、しかも、被処理体の位置ずれが生ずることも防止する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば半導体ウエハ等の被処理体の搬送機構及び処理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、半導体デバイスの製造工程においては、半導体製造装置の真空処理室内に半導体ウエハ等の被処理体を搬入し、減圧雰囲気下で所定の処理を行うが、デバイスを完成するまでにはウエハ上への成膜、エッチング、加熱等の処理が多数回繰り返し行われるのが一般的である。この場合、個々の真空処理装置を別個独立に何ら関係なく設けて、処理内容に応じて個々の真空処理装置間にウエハを搬送し、受け渡すように構成すると、ウエハの搬送、受け渡しの都度、処理装置内或いはこれに連結されるロードロック室内の真空を破ることになり、真空引き操作に多くの時間を要してスループットが低下してしまう。そこで、処理の効率化を図るために例えば多角形状に形成した真空の共通搬送室に複数の真空処理装置をゲートバルブを介して連通・密閉可能に連結してなる、いわゆるクラスタ装置が開発された。このクラスタ装置によれば、ウエハは処理態様に応じて真空処理装置間を移動すれば良く、処理装置内の真空を破ることなくプロセスを一貫的に行うことができ、効率的な処理が可能となる。また、クラスタ装置間は、自動搬送装置(AGV或いはRGV)等で低速で大量に搬送されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、今日のように半導体デバイスの高密度化、高集積化の要求が高まり、且つまた処理の更なる効率化及び成膜種類の増加等の要請により、従来必要とされていた処理装置の数、例えば3個よりももっと多くの数、例えば5個或いはそれ以上の数の処理装置を共通搬送室に連結する必要が生じている。また、少量多品種の半導体デバイスの要求もあり、より多くの種類の処理装置が必要とされている。この場合、従来装置にて用いていた多角形状の真空共通搬送室の直径を大きくしてその周辺部に必要数の真空処理装置を連結することも考えられるが、共通搬送室の直径を大きくすると内部が真空であることからその分、共通搬送室の天井部や底部の強度を大幅に向上しなければならず、容器天井部等の厚みがかなり大きくなって現実的ではない。
【0004】そこで、特開平4−288812号公報、特開平6−349931号公報や特開平8−119409号公報等に開示されているように、横長の共通搬送室を形成してこの側壁全体にカセット室や多数の真空処理室を配置し、搬送室内部に旋回、伸縮可能な搬送アームを通常のリニア移動機構により直線的に移動可能に設けることも提案されている。しかしながら、この場合には、処理装置等の種類が多くなる程、共通搬送室の長さも長くなるが、この水平移動可能な搬送アームはかなりの重量物であることから、これを高速移動させることはかなり困難であり、従来の搬送アームにおいてその最大移動速度はせいぜい1m/秒程度である。これがために、共通搬送室の長さが長くなる程、そのスループットが大幅に低下してしまう、といった問題があった。
【0005】また、リニアモータのパワーを大きくして移動速度の高速化を達成したとしても、この種の水平移動可能な搬送アームは、その表面に単に半導体ウエハを載置しているだけであり、急激な加速時及び急激な減速時に搬送アームに載置支持されているウエハ自体に慣性により位置ずれが生じてしまう、といった問題もあった。特に、この種の問題は、ウエハサイズが8インチから12インチへ移行するに従って個々の処理装置自体の寸法も大きくなり、しかも、あるプロセスから他のプロセスへ処理を移る際に、その時の膜厚やエッチング時の穴深さ等も計測検査したい要請もあり、これらの検査装置もシステムに組み込むために上記共通搬送室は益々長くなる傾向にあり、上記した問題点の解決が強く望まれている。本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、高速搬送ができ、しかも、被処理体の位置ずれも生ずることのない被処理体の搬送機構及び処理システムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、薄い板状の被処理体を搬送するために比較的長い共通搬送エリア内に設けられた搬送機構において、前記共通搬送エリアの長手方向に沿って設けられる案内レールと、前記案内レールに沿って移動可能になされた移動体と、前記移動体に設けられて、前記被処理体の周縁部の下側角部に係合される断面L字状の係合段部を有する複数の被処理体支持支柱とを備えたことを特徴とする被処理体の搬送機構である。これにより、搬送アーム部を設けていないので、移動体自体が軽量化して高速移動が可能であり、しかも、被処理体は被処理体支持支柱の係合段部に係合された状態で保持されているので、急激な加速及び急激な減速を行っても、保持されている被処理体に位置ずれが生ずることはなく、しかも、スループットも向上させることが可能となる。
【0007】例えば、請求項2に規定するように、前記係合段部は、前記被処理体支持支柱に上下に所定の間隔を隔てて複数設けられている。これにより、例えば2つの係合段部を設けている場合には、一方の係合段部に被処理体を保持させて、他方の係合段部を空状態にして所定の搬送位置まで移動すれば、被処理体の置き換え、或いは入れ換えを行うことが可能となる。また、例えば請求項3に規定するように、前記係合段部の上部には、前記被処理体を前記係合段部に落とし込めるためにテーパ状になされたテーパ滑落面が形成されている。
【0008】これによれば、被処理体を搬送機構で搬送する際に、搬送機構への移載時に被処理体に位置ずれが生じても、この被処理体の周縁部はテーパ滑落面に当接してこれを滑り落ちるようになり、この結果、被処理体を係合段部に確実に落とし込めてこれを保持することが可能となる。また、例えば請求項4に規定するように、前記移動体へは非接触給電機構を用いて電力が供給されるようにしてもよい。これによれば、移動体は給電線コードを引きずることなく移動できるので、更に、高速移動が可能となる。この場合、例えば請求項5に規定するように、前記非接触給電機構は、前記案内レールに沿って設けられた給電用高周波発振アンテナ部材と、前記アンテナ部材に対して非接触で近接させた状態で前記移動体に設けられた電力受信部とよりなる。
【0009】また、例えば請求項6に規定するように、前記移動体には、光通信により移動指令信号を受けるための光通信部が設けられるようにしてもよい。これによれば、通信用のケーブルを用いることなく移動体は移動できるので、また更に、高速移動が可能となる。請求項7に係る発明は、上記搬送機構を用いた処理システムであり、すなわち、薄い板状の被処理体に所定の処理を施す処理システムにおいて、比較的長い共通搬送エリアと、前記共通搬送エリアに連設されて前記被処理体を複数枚収容可能なカセット容器を載置するカセットステーションと、前記共通搬送エリアに連設されて前記被処理体に対して所定の処理を施す処理装置と、前記共通搬送エリア内に設けられて前記被処理体を搬送する搬送機構と、前記搬送機構に対して前記被処理体を移載する移載アーム機構とを備え、前記搬送機構は、前記共通搬送エリアの長手方向に沿って設けられる案内レールと、前記案内レールに沿って移動可能になされた移動体と、前記移動体に設けられて、前記被処理体の周縁部の下側角部に係合される断面L字状の係合段部を有する複数の被処理体支持支柱とを有することを特徴とする被処理体の処理システムである。
【0010】この場合、例えば請求項8に規定するように、前記共通搬送エリアには、前記被処理体の検査を行う検査装置が連設されるようにしてもよい。また、例えば請求項9に規定するように、前記共通搬送エリアには、前記被処理体の位置決めを行う位置決め装置が設けられているようにしてもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に、本発明にかかる被処理体の搬送機構及び処理システムの一実施例を添付図面に基いて詳述する。図1は本発明に係る被処理体の搬送機構を有する処理システムの平面図、図2は図1に示す搬送機構を示す斜視図、図3は図1に示す搬送機構の側面図、図4は搬送機構の被処理体支持支柱を示す斜視図、図5は被処理体を保持した搬送機構を示す概略平面図、図6は光通信の形態を説明する説明図、図7は係合段部に被処理体を載置する時の状態を示す図、図8は被処理体がテーパ滑落面を滑って係合段部に保持される時の状態を示す図である。
【0012】図示するようにこの処理システム2は、アルミニウム等により形成された断面矩形の比較的長い箱状の共通搬送室4を有しており、この内部は共通搬送エリア6として構成されて窒素ガスや清浄空気に満たされている。この共通搬送室4の長手方向は、例えば10m以上の長さに設定されており、その長手方向に沿った側壁には、各種の処理装置8A、8B、8C、8D、8E、8F及び検査装置10がそれぞれ所定の間隔を隔てて連設されている。具体的には、上記各処理装置8A〜8Fは、窒素ガス等の不活性ガスの供給及び真空排気が可能になされたロードロック室12A〜12Fをそれぞれ有しており、各ロードロック室12A〜12Fはそれぞれゲートバルブ14A〜14Fを介して上記共通搬送室4に連設されて、共通搬送エリア6と連通及び遮断が可能になされている。そして、各ロードロック室12A〜12F内には被処理体である半導体ウエハを一時的に載置して保持するための例えば上下2段のバッファ台16A〜16Fやこのバッファ台16A〜16F上のウエハを後述する処理室との間で移載する屈曲及び旋回可能になされた移載アーム18A〜18Fがそれぞれ設けられる。そして、処理装置8Fを除いて各処理装置8A〜8Eの各ロードロック室12A〜12Eには、半導体ウエハに対して実際に所定の処理を行うための処理室20A〜20Eがそれぞれゲートバルブ22A〜22Eを介して連設されている。
【0013】これに対して、処理装置8Fは、それ自体で複数、図示例では3つの処理室20F〜20Hを有する、いわゆるクラスタ装置として構成されており、この各処理室20F〜20Hは真空引き可能になされたトランスファチャンバ24にそれぞれゲートバルブ22F〜22Hを介して連設されている。そして、このトランスファチャンバ24は、ゲートバルブ22Iを介して上記ロードロック室12Fに接続される。また、このトランスファチャンバ24内には、上記ロードロック室12Fとトランスファチャンバ24に連設された各処理室20F〜20Hとの間でウエハの移載を行うために、屈伸及び旋回等が可能になされた移載アーム18Gが設けられる。上記各処理室20A〜20Hとしては、CVD処理、プラズマエッチング処理、酸化拡散処理、アニール処理等を必要に応じてできるものを適宜組み合わせて用いることができる。また、上記処理装置8A〜8Eのいずれかが洗浄装置や露光装置等のように大気圧中で使用する装置である場合には、その処理室はロードロック室を介することなく共通搬送室4に連通状態で接続されるか、又は大気圧雰囲気であるバッファ室を介して共通搬送室4に接続される。
【0014】また、検査装置10は、上記共通搬送室4に連通状態で接続されており、この検査装置10としては、例えばウエハ上に堆積された膜の厚さを測定する膜厚測定機やエッチングにより形成したホールの深さを測定する深さ測定機や半導体素子の動作を検査するプローバ等を用いることができる。この場合、ウエハを真空中で測定する必要がある場合には、この前段に前述したようなロードロック室を設けるようにする。尚、図示例では、処理装置8C、8D間が大きく離間されており、必要に応じてこれらの間にも他の処理装置を増設することができる。
【0015】一方、共通搬送室4の長手方向の一方の側壁には、開閉可能になされたゲートドア30を介してカセットステーション34が連設されており、このカセットステーション34上にカセット容器32を載置して待機させるようになっている。このカセット容器32内には、複数枚、例えば25枚の半導体ウエハWを多段に、密閉状態で、或いは開放状態で載置できるようになっている。そして、この共通搬送室4内に、本発明の特徴とする搬送機構40が設けられており、半導体ウエハWを上記カセットステーション34や各処理装置8A〜8Fや検査装置10等に対して搬送し得るようになっている。具体的には、この搬送機構40は、この共通搬送エリア6の長手方向に沿って形成された案内レール42と、この案内レール42に沿って移動可能になされた2つの移動体44A、44Bとにより主に構成される。尚、この移動体は1つ或いは3個以上設けてもよく、また、両移動体44A、44B及びこれ付属する部材の物理的構造は全く同様に構成されているので、移動体及びこれに付属する部材の構成については、以後、一方の移動体44Aを例にとって説明する。
【0016】まず、図2にも示すように、上記案内レール42は、共通搬送室4内の略中央にその長手方向に沿って起立させて配置固定したレール基台46の側壁に、上下2本平行に固定して設けられている。そして、この案内レール42に、スライド軸受48を介して上記移動体44A(44B)が摺動移動可能に取り付けられる。また、上記2本の案内レール42間には、これに沿ってリニアモータの固定子50が設けられると共に、これに対向する部分の移動体44Aには可動子52が設けられており、この固定子50と可動子52とでリニアモータ54を構成してこの移動体44Aの推進力を得るようになっている。
【0017】更に、この移動体44Aには、上記固定子50へ電力を供給するための非接触給電機構56が設けられており、給電コードの引き回しを不要としている。具体的には、上記非接触給電機構56は、上記案内レール42に沿って設けられた給電用高周波発振アンテナ部材58と、上記移動体44Aにこのアンテナ部材58に非接触で近接させて対向させて配置した電力受信部60とよりなる。そして、上記アンテナ部材58に、例えば10KHz程度の高周波を流すことにより発振させた電力を上記電力受信部60にて受信することにより、リニアモータ54の可動子52で使用する電力や後述する移動体44Aの制御部76A等で使用する電力を得るようになっている。また、この移動体44Aには、移動指令信号を外部より受けるための光通信部62Aが設けられる。具体的には、上記光通信部62Aと上記電力受信部60との間には、通信用レーザ光を通すためのレーザ通過路64A(図2参照)が形成されており、図1及び図6R>6にも示すように共通搬送室4の長手方向の一方の側壁に、移動指令信号により変調された通信用レーザ光LAを発射するレーザ発信部66が設けられており、この通信用レーザ光LAを上記案内レール42に沿って発射してこれを上記レーザ通過路64Aに通すようになっている。
【0018】そして、図6にも示すように、この通信用レーザ光LAは、両移動体44A、44Bの各レーザ通過路64A、64Bを貫くように通過し、そして、各レーザ通過路64A、64Bには、略半分の光を反射して残りの半分の光を透過させるハーフミラー68A、68Bがそれぞれ設けられており、この反射レーザ光を各光通信部62A、62Bの受光素子70A、70Bにて受けるようになっている。また、上記共通搬送室4の長手方向の他方の側壁には、モニタ部72が設けられており、このモニタ用受光素子74で上記通信用レーザ光LAを受けてこのモニタを行うようになっている。この光通信では、上記移動体44Aと44Bを区別するために、例えば両移動体44Aと44Bのアドレスを変えるようにして通信用レーザ光LAを発射している。そして、両移動体44Aと44Bには、それぞれの移動動作をコントロールするための例えばマイクロコンピュータ等よりなる制御部76A、76Bが設けられているのは勿論である。尚、上記光通信に替えて、上記給電用高周波発振アンテナ部材58に、これに流す高周波とは周波数の異なる通信用の信号を重畳して、これを各移動体44Aと44B側で受信するようにしてもよい。
【0019】図1及び図2に戻って、このように構成された移動体44A(44B)の上部に、半導体ウエハWの周縁部と係合してこれを保持するために本発明の特徴とする複数本の被処理体支持支柱80が設けられる。具体的には、本実施例では上記被処理体支持支柱80は移動体44Aの上部に当間隔で正方形状に4本起立させて設けており、この4本の支持支柱80でウエハWの周縁部を支持してこれを搬送し得るようになっている。すなわち、上記4本の支持支柱80は、全て同じ形状に構成されており、その内の1本の支持支柱80を図4に拡大して示している。この各支持支柱80の内側には、上下に複数段、図示例では上下2段に所定の間隔を隔てて断面L字状の係合段部82、84が形成されている。この係合段部82、84は、半導体ウエハWの周縁部と略同じ曲率で円弧形状になされており、図5にも示すようにウエハWの周縁部の下側角部を、上記断面L字状の係合段部82、84に係合させて、これを4点支持で保持し得るようになっている(図7参照)。
【0020】ここで図7を参照して、ウエハWの直径を12インチ(=300mm)とした場合、ウエハWの厚さH1は0.7〜0.8mm程度、各係合段部82、84の高さH2は2〜3mm程度、適正に中心位置に載置されたウエハWの外周面と、各係合段部82、84の側面82A、84Aとの間の距離H3は0.25〜0.5mm程度、上下の係合段部82、84間の距離H4は20mm程度にそれぞれ設定されている。従って、ウエハWの搬送時に、この係合段部82、84の側面82A、84AにてウエハWの外周側面をブロックすることにより、この位置ずれを防止するようになっている。そして、上下の各係合段部82、84の上部には、位置ずれ状態で移送されてきた半導体ウエハWを滑らせて落とし込めるために、上方外側方向へすり鉢状に拡径されてテーパ状になされたテーパ滑落面86、88がそれぞれ形成されており、位置ずれのウエハをこのテーパ滑落面86上を滑落させて各係合段部82、84にて適正に支持させるようになっている。
【0021】この場合、各テーパ滑落面86、88の傾斜角度θ(図7参照)は、ウエハを効果的に滑落させるために例えば20度〜30度の範囲に設定するのがよい。また、上側の係合段部82と下側の係合段部84のテーパ滑落面88との間には、ウエハWの周縁部を支持支柱80に対して干渉乃至衝突させることなく通過させるためのウエハ挿通切れ込み90(図4及び図7参照)が支持支柱80の両端側に形成されている。このウエハ挿通切れ込み90の幅H5は、10mm程度に設定されている。また、下側の係合段部84の下方には、後述する移載アーム機構のフォークを抜くための遊び空間92が形成されている。そして、図1に戻って、カセットステーション34の近傍の共通搬送エリア6内には、ウエハWを保持して回転させる回転台94と、このウエハWの周縁部の位置目印、すなわちオリエンテーションフラットやノッチを検出するための光学式のラインセンサ等を含む光学検出器96とよりなる位置決め装置98が設けられており、ウエハWの位置決めを行うようになっている。尚、この位置決め装置98は、共通搬送室4の側壁に連設するようにしてもよい。
【0022】そして、上記案内レール42と、上記カセットステーション34、検査装置10及びほとんどのロードロック室12A〜12Fとの間には、屈伸、旋回及び上下動可能になされた移載アーム機構100〜112が設けられており、各移載アーム機構100〜112の先端に設けた2股状のフォーク100A〜112AによりウエハWの下面を保持してこれを移載するようになっている。ここで、図示例では2つのロードロック12Bと12Cに対しては共通に使用するために、他の移載アーム機構とは異なって変則的に動作する1つの移載アーム機構106を設けている。また、各ロードロック室内に設けた移載アームによって搬送機構40上に保持されているウエハWを移載できる場合には、それに対応する共通搬送エリア6内の移載アーム機構を設けなくてもよい。
【0023】次に、以上のように構成された本実施例の動作について説明する。まず、未処理のウエハWをカセット容器32に収容した状態で、このカセット容器32をカセットステーション34上に載置し、このゲートドア30を開く。そして、このゲートドア30の直前に位置する移載アーム機構100を駆動してこのフォーク100Aで未処理の半導体ウエハWを保持し、これを隣の位置決め装置98の回転台94上に載置して回転させることによって光学検出器96にてウエハWの周縁部を検出し、このウエハの位置決めを行う。この位置決め後のウエハは、再びこの移載アーム機構100によって適正な状態で保持され、このウエハWを搬送機構40の移動体44Aの上部に設けた支持支柱80のいずれか一方の係合段部82或いは84に保持させる。この場合、他方の係合段部82或いは84は空状態にして、処理済みのウエハと置き換え、或いは入れ替えが可能な状態としておくのが好ましい。
【0024】このようにして、係合段部82或いは84に保持されたウエハWは、この移動体44Aに設けたリニアモータ54の可動子52とレール基台46に設けた固定子50とを駆動させることにより、移動体44Aを案内レール42に沿って所望する位置まで高速で移動させ、所望する処理を行う処理装置8A〜8Fの内のいずれかの処理装置、例えば8Aの前で停止させる。そして、このウエハWを対応する移載アーム機構104で、移動体44A上から受け取り、これを予め圧力調整されているロードロック室12A内のバッファ台16A上へ移載する。そして、以後、このウエハWに対して、処理室20A内で所定の処理を施す。このようにして、1つの処理装置8Aでの処理が終了したならば、前述したと同様な方法で移載アーム機構102を駆動し、上記処理済みのウエハWを搬送機構40に戻す。そして、このウエハを次に処理すべき処理装置まで高速移動させ、以下同様にして必要な処理を順次行って行く。また、必要であれば、成膜の厚さやエッチングした穴の深さを検査装置10にて測定する。
【0025】また、クラスタ化されている処理装置8においては、この各処理室20F〜02Hにて必要な処理がウエハに対して順次行われる。また、カセット容器32と搬送機構40との間でウエハWの受け渡しを行う場合には、カセットステーション34側に位置する移動体44Aを用いるが、それ以外の場合には、プロセスのスケジュールに合わせて2つの移動体44A、44Bの内のどちらの移動体を用いてもよいし、両移動体44A、44Bは互いに干渉しない範囲で個別に制御されている。ここで、各移動体44A、44Bとの間でウエハWを移載する時の状況について図7及び図8も参照して説明する。図7及び図8では代表として移載アーム機構104を用いて一方の移動体44Aとの間でウエハWを移載する場合を示している。
【0026】まず、図7において、移動体44Aの上段の係合段部82にウエハWを載置する場合には、この係合段部82の上方にて実線で示す位置に、移載アーム機構104のフォーク104A上に保持したウエハWを水平移動させることによってここに位置させ、このフォーク104Aをそのまま降下させることにより一点鎖線で示すようにウエハWの周縁部を4つの係合段部82に嵌装させてここに支持させる。尚、フォーク104Aは、この係合段部82より更に僅かに降下させて引き抜けばよい。そして、係合段部82に支持されているこのウエハWをフォーク104Aで取りに行く場合には、上記と逆の操作を行えばよい。また、移動体44Aの下段の係合段部84にウエハWを載置する場合には、この係合段部84と上段の係合段部82との間に、図7中にて一点鎖線で示すように、移載アーム機構104のフォーク104A上に保持したウエハWを水平移動させることによってここに位置させ、このフォーク104Aをそのまま降下させることにより実線で示すようにウエハWの周縁部を4つの係合段部84に嵌装させてここに支持させる。尚、フォーク104Aは、この係合段部84より更に僅かに降下させて遊び空間92に位置させた後に引き抜けばよい。ここで、両係合段部82、84間にウエハWを位置させる時、水平移動されるウエハWの周縁部は、両係合段部82、84間に途中まで形成されたウエハ挿入切れ込み90を通るので、これが衝突することはない。そして、係合段部84に支持されているこのウエハWをフォーク104Aで取りに行く場合には、上記と逆の操作を行えばよい。
【0027】また、この4つの係合段部82、84は、4方向に対して全て対称に設けられているので、この4方向のどちらかでも上述のようにウエハWの移載が可能である。上述したように、係合段部82或いは84に保持されたウエハWは、その外周面と各係合段部82、84の側面82A、84Aとの間の距離H3が0.25〜0.5mm程度なので、例えば5m/秒程度の高速移動を行うために急激な加速、或いは急激な減速を行ってウエハWが横滑りしても、その横滑りは上記側面82A、84Aによりブロックされて停止するので、ウエハWは許容量以上の位置ずれを生ずることはない。
【0028】また、図8に示すように、例えば係合段部82にウエハWを載置する際に、万一、このウエハWに位置ずれが生じていた場合には、その位置ずれ方向に位置するウエハの周縁部が係合段部82の上部に設けたテーパ滑落面86と接触してここを滑り落ちるように移動するので、結果的に、このウエハWは位置ずれが修正されて適正な位置状態となるので、ウエハWの位置ずれを修正してこれを係合段部82により支持することができる。また、従来装置のように、移動体にアーム機構を設けていないので、その分、全体の重量を軽減でき、上述したようにウエハの位置ずれを生ずることなくウエハの高速移動を行うことが可能となる。更には、リニアモータ54への給電は、図2にも示すように給電用高周波発振アンテナ部材58と電力受信部60とよりなる非接触給電機構56を用いて行っているので、従来装置のような給電コードによる制限がなくなり、移動体を更に高速で、且つ長距離な移動を行うことが可能となる。
【0029】図9は本発明の搬送機構の変形例を示す側面図であるが、移動体44Aの各被処理体支持支柱80の更に上方に、所定の間隔を隔てて平板状の天井板122を支持バー120で支持させるようにして設けるようにしてもよい。これによれば、落下してくるパーティクル等をこの天井板122により受けることができるので、この移動体44Aに保持されているウエハをパーティクルの付着から保護することが可能となる。また、ここでは1つの移動体に上下2段の係合段部を設けた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、これを1段だけ或いは3段以上設けるようにしてもよい。更には、搬送されるウエハサイズも12インチに限定されず、6インチ、或いは8インチサイズのウエハにも適用することができる。また、ここでは共通搬送エリア6を共通搬送室4により形成された空間として規定したが、これに限定されず、共通搬送室4を設けないで、周囲が開放された空間を共通搬送エリア6としてここで被処理体を搬送するようにしてもよい。尚、以上の各実施例においては、被処理体として半導体ウエハを処理する場合について説明したがこれに限定されず、例えばLCD基板、ガラス基板等を処理する場合にも適用し得るのは勿論である。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように本発明の被処理体の搬送機構及び処理システムによれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。請求項1、7、8、9に係る発明によれば、搬送アーム部を設けていないので、移動体自体が軽量化して高速移動が可能であり、しかも、被処理体は被処理体支持支柱の係合段部に係合された状態で保持されているので、急激な加速及び急激な減速を行っても、保持されている被処理体に位置ずれが生ずることはなく、しかも、スループットも向上させることができる。請求項2に係る発明によれば、例えば2つの係合段部を設けている場合には、一方の係合段部に被処理体を保持させて、他方の係合段部を空状態にして所定の搬送位置まで移動すれば、被処理体の置き換え、或いは入れ換えを行うことができる。請求項3に係る発明によれば、被処理体を搬送機構で搬送する際に、搬送機構への移載時に被処理体に位置ずれが生じても、この被処理体の周縁部はテーパ滑落面に当接してこれを滑り落ちるようになり、この結果、被処理体を係合段部に確実に落とし込めてこれを保持することができる。請求項4、5に係る発明によれば、移動体は給電線コードを引きずることなく移動できるので、更に、高速で、且つ長距離な移動ができる。請求項6に係る発明によれば、通信用のケーブルを用いることなく移動体は移動できるので、また更に、高速で、且つ長距離な移動ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る被処理体の搬送機構を有する処理システムの平面図である。
【図2】図1に示す搬送機構を示す斜視図である。
【図3】図1に示す搬送機構の側面図である。
【図4】搬送機構の被処理体支持支柱を示す斜視図である。
【図5】被処理体を保持した搬送機構を示す概略平面図である。
【図6】光通信の形態を説明する説明図である。
【図7】係合段部に被処理体を載置する時の状態を示す図である。
【図8】被処理体がテーパ滑落面を滑って係合段部に保持される時の状態を示す図である。
【図9】本発明の搬送機構の変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
2 処理システム
4 共通搬送室
6 共通搬送エリア
8A〜8F 処理装置
10A 検査装置
20A〜20H 処理室
32 カセット容器
34 カセットステーション
40 搬送機構
42 案内レール
44A,44B 移動体
46 レール基台
54 リニアモータ
56 非接触給電機構
58 給電用高周波発振アンテナ部材
60 電力受信部
62A 光通信部
80 被処理体支持支柱
82,84 係合段部
86,88 テーパ滑落面
90 ウエハ挿通切れ込み
98 位置決め装置
100〜112 移動アーム機構
100A〜112A フォーク
W 半導体ウエハ(被処理体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 薄い板状の被処理体を搬送するために比較的長い共通搬送エリア内に設けられた搬送機構において、前記共通搬送エリアの長手方向に沿って設けられる案内レールと、前記案内レールに沿って移動可能になされた移動体と、前記移動体に設けられて、前記被処理体の周縁部の下側角部に係合される断面L字状の係合段部を有する複数の被処理体支持支柱とを備えたことを特徴とする被処理体の搬送機構。
【請求項2】 前記係合段部は、前記被処理体支持支柱に上下に所定の間隔を隔てて複数設けられることを特徴とする請求項1記載の被処理体の搬送機構。
【請求項3】 前記係合段部の上部には、前記被処理体を前記係合段部に落とし込めるためにテーパ状になされたテーパ滑落面が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の被処理体の搬送機構。
【請求項4】 前記移動体へは非接触給電機構を用いて電力が供給されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の被処理体の搬送機構。
【請求項5】 前記非接触給電機構は、前記案内レールに沿って設けられた給電用高周波発振アンテナ部材と、前記アンテナ部材に対して非接触で近接させた状態で前記移動体に設けられた電力受信部とよりなることを特徴とする請求項4記載の被処理体の搬送機構。
【請求項6】 前記移動体には、光通信により移動指令信号を受けるための光通信部が設けられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の被処理体の搬送機構。
【請求項7】 薄い板状の被処理体に所定の処理を施す処理システムにおいて、比較的長い共通搬送エリアと、前記共通搬送エリアに連設されて前記被処理体を複数枚収容可能なカセット容器を載置するカセットステーションと、前記共通搬送エリアに連設されて前記被処理体に対して所定の処理を施す処理装置と、前記共通搬送エリア内に設けられて前記被処理体を搬送する搬送機構と、前記搬送機構に対して前記被処理体を移載する移載アーム機構とを備え、前記搬送機構は、前記共通搬送エリアの長手方向に沿って設けられる案内レールと、前記案内レールに沿って移動可能になされた移動体と、前記移動体に設けられて、前記被処理体の周縁部の下側角部に係合される断面L字状の係合段部を有する複数の被処理体支持支柱とを有することを特徴とする被処理体の処理システム。
【請求項8】 前記共通搬送エリアには、前記被処理体の検査を行う検査装置が連設されることを特徴とする請求項7記載の被処理体の処理システム。
【請求項9】 前記共通搬送エリアには、前記被処理体の位置決めを行う位置決め装置が設けられていることを特徴とする請求項7または8記載の被処理体の処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2002−134587(P2002−134587A)
【公開日】平成14年5月10日(2002.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−327287(P2000−327287)
【出願日】平成12年10月26日(2000.10.26)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(000002059)神鋼電機株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】