説明

複合部材及びその製造方法

【課題】半導体デバイスのヒートスプレッダーに適しており、表面性状に優れる複合部材、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム基合金からなる金属マトリクス中に炭化珪素からなる粒子が分散された複合素材(CIP成型体)11を用意し、アルミニウム基合金からなる筒状材12内に挿入する。複合素材を収納した筒状材12(ビュレット10)を押し出して、被覆層21を具える被覆素材20を形成する。この押出は、焼結も兼ねる。この被覆素材20を圧延して、Al-SiC複合材料からなる基材の表面にアルミニウム基合金からなる表面層を具える複合部材を製造する。複合部材は、塑性加工が施されてなる表面層を具えることで、表面性状に優れる。表面層の表面粗さRaは、1.5μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスのヒートスプレッダーなどに利用される複合部材、及びその製造方法に関するものである。特に、表面性状に優れる複合部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスでは、銅やアルミニウムといった金属からなる板片を半導体素子のヒートスプレッダー(放熱部材)に利用している。パソコンなどで利用される半導体素子100のヒートスプレッダー200として、図3(I)に示すような中央部に凹部201を具える板状のものがある。凹部201は、エッチングやコイニング加工などで形成される。ヒートスプレッダー200は、図3(II)に示すようにプラスチックといった絶縁材料からなる基板110上に搭載された素子100を凹部201内に収納するように基板110に配置され、接着剤111で固定される。素子100と凹部201との間には、熱伝導性に優れる樹脂112などを介在させる。
【0003】
ヒートスプレッダーは、熱伝導性に優れることに加えて、半導体素子などと熱膨張係数が近いことが望まれる。このような要求に対応したヒートスプレッダーとして、アルミニウム(Al)といった金属マトリクス中に炭化珪素(SiC)といったセラミックス粒子を分散させた複合材料からなるものが提案されている(特許文献1,2参照)。Al-SiC複合材料の製造方法には、金属粉末とセラミックス粒子とを混合して成型した成型体を焼結する焼結法や、金属溶湯とセラミックス粒子とを混合した混合溶湯を鋳造する溶製法(特許文献2参照)がある。
【0004】
【特許文献1】特開2002-235126号公報
【特許文献2】特開2003-234445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の製造方法で製造した複合材料は、表面性状が良くないものができることがある。
【0006】
溶製法は、ボイド(空隙、気孔)といった内部欠陥が少なく、かつセラミックス粒子を均一的に分散させ易いことから、焼結法に比較して熱特性に優れる複合材料が得られる。しかし、溶製法により得られた複合材料は、その表面に鋳造に起因すると考えられる縞模様ができることがある。縞模様を有する複合材料は、商品価値が低く、これを不良品として選別することで、生産性の低下を招く。
【0007】
一方、焼結法により得られた複合材料であっても、焼結後に圧延を施すことで、ボイドを低減できる。そこで、本発明者らは、焼結法により得られた複合材料を検討したところ、上述のような縞模様ができないものの、SiC粒子に起因すると考えられる模様や色むらが生じることがあるとの知見を得た。また、焼結法により得られた複合材料は、エッチングにより凹部を形成すると、マトリクスから生じたと考えられる粉状のもの(異物)が付着して、色むらが生じたり、所望の形状を精度良く形成できず、表面性状が劣化することがある。
【0008】
そこで、本発明の目的の一つは、表面性状に優れる複合部材を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記複合部材を生産性よく製造することができる複合部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
表面性状の向上には、複合材料の表面に化粧層を設けることが効果的である。そこで、本発明製造方法は、複合材料の表面に金属製の表面層を設けることを規定する。具体的には、本発明複合部材の製造方法は以下の工程を具える。
【0010】
1. アルミニウム基合金からなる金属マトリクス中に、炭化珪素からなる粒子が分散された複合素材を用意する工程。
2. 上記複合素材の表面の少なくとも一部に、アルミニウム基合金からなり、表面粗さRaが1.5μm以下である表面層を形成する工程。
【0011】
上記表面層を形成するには、例えば、アルミニウム基合金からなるプレ部材と複合素材とを一体に塑性加工することが挙げられる。特に、上記複合素材の表面の少なくとも一部に、アルミニウム基合金からなるプレ部材を用いて被覆層を形成し、この被覆層を具える被覆素材に圧延を施すことが挙げられる。この手法では、圧延された被覆層が表面層を構成する。なお、圧延が施される被覆素材は、被覆層と複合素材とが一体化されているものとする。
【0012】
上記製造方法により、複合材料からなる基材表面に表面層を具える本発明複合部材が得られる。具体的には、本発明複合部材は、アルミニウム基合金からなる金属マトリクス中に炭化珪素からなる粒子が分散された複合材料で構成される基材と、この基材の表面の少なくとも一部を覆う表面層とを具える。この表面層は、アルミニウム基合金からなり、表面粗さRaが1.5μm以下である。
【0013】
本発明複合部材の基材は、金属マトリクス中にセラミックス粒子を含有する構成である。特に、金属マトリクス及びセラミックス粒子はそれぞれ、熱膨張係数が小さく、熱伝導性が高いアルミニウム基合金及び炭化珪素である。従って、本発明複合部材は、熱伝導性に優れ、半導体素子などとの熱膨張係数の適合性にも優れることから、半導体デバイスのヒートスプレッダーに好適に利用することができる。また、本発明複合部材は、金属マトリクスがアルミニウム基合金であるため、軽量である。そして、本発明複合部材は、表面粗さが小さい表面層を具えることから、表面性状に優れる。本発明製造方法によれば、表面性状の劣化による不良品を低減し、上記表面性状に優れる本発明複合部材を製造することができる。以下、本発明をより詳細に説明する。
【0014】
[製造方法]
<複合素材の準備>
上記平滑な表面層を具える本発明複合部材を製造するには、まず、アルミニウム基合金からなる金属マトリクス中に炭化珪素からなる粒子が分散された複合素材を用意する。複合素材の製造には、溶製法、焼結法、含浸法のいずれも利用できる。
【0015】
溶製法は、溶融又は半溶融状態の金属マトリクスの溶湯にセラミックス粒子を添加し、好ましくは真空雰囲気で撹拌し、所定の温度に調節した混合溶湯を鋳型に注湯して複合素材を作製する方法である。鋳型の温度を高めたり、加圧注入すると、混合溶湯を鋳型に充填し易い。また、溶製法は、基材中に晶析出物を存在させることができる。晶析出物は、セラミック粒子と同様に熱膨張係数の低減に利用できる。そのため、溶製法により得られた複合素材は、セラミックス粒子の含有量を低減できる。晶析出物は、混合溶湯の冷却速度を速く(急冷)して、最大粒径が小さくなるようにすることが好ましい。溶製法を利用すると、内部欠陥が少なく、熱特性のばらつきが小さい複合素材(引いては基材)を製造することができる。
【0016】
焼結法は、金属マトリクスの粉末とセラミックス粒子の粉末とを混合して、CIP(静水圧プレス)やHIP(熱間静水圧プレス)などで成型し、この成型体を焼結することで複合素材を作製する方法である。焼結法を利用すると、鋳造に起因する縞模様が生じない。焼結法により得られた複合素材は、ボイドといった内部欠陥が残存し易いが、圧延といった塑性加工を施すことで、内部欠陥を低減して、熱特性のばらつきが小さい基材が得られる。
【0017】
含浸法は、セラミックス粒子の粉末を鋳型に充填し、所定の温度に調節した溶融状態の金属マトリクスの溶湯を真空雰囲気やAr雰囲気などで上記鋳型に流し込み、セラミックス粒子粉末に溶湯をしみ込ませることで複合素材を作製する方法である。溶湯の温度を高めたり、溶湯を加圧注入したり、溶湯中に所定の元素(例えば、Si)を添加すると、溶湯を粒子間に含浸させ易い。また、含浸法も上記溶製法と同様に基材中に晶析出物を存在させることができる。なお、含浸法は溶製法と同様に鋳型に溶湯を流し込むため、含浸法により製造された複合素材は、外観不良が生じる可能性がある。これに対し、本発明複合部材は、表面層を具えることで、表面性状を向上できる。
【0018】
その他、複合素材は、焼結前の成型体、例えば、CIP成型体やHIP成型体を利用してもよい。これらCIP成型体やHIP成型体は、溶製法で行う高温での混合、焼結法で行う焼結、含浸法で行う溶湯の含浸が不要であり、製造が容易である。
【0019】
<表面層の形成>
上記複合素材にアルミニウム基合金からなる表面層を形成する。表面層の形成は、例えば、押出や圧延、クラッド圧延、ホットプレスといった塑性加工、めっき、蒸着、ロウ付け、ハンダ付けなど種々の方法が利用できる。
【0020】
具体的には、複合素材表面の所望の箇所に、アルミニウム基合金をめっきや蒸着することで表面層を形成できる。このとき、めっき条件や蒸着条件といった成膜条件を制御することにより、表面層の表面粗さRaを1.5μm以下に簡単に調整することができる。
【0021】
或いは、複合素材表面の所望の箇所に、アルミニウム基合金板をロウ付け、ハンダ付けすることで表面層を形成できる。このとき、上記アルミニウム基合金板として、研磨などで表面粗さRaを1.5μm以下にしたものを用いたり、上記アルミニウム基合金板を複合素材に接合した後研磨したり、接合した後に圧延などの塑性加工を施すことで、表面粗さRaが1.5μm以下となるようにしてもよい。
【0022】
或いは、アルミニウム基合金からなる筒状のプレ部材を複合素材と同時に押出したり、アルミニウム基合金からなるシート状のプレ部材を複合素材に載せて圧延やホットプレスをしたりすることで、表面層を形成できる。このとき、塑性加工時の加工度などの押出条件や圧延条件といった塑性加工条件を制御したり、塑性加工後に研磨などの表面処理を行ったりすることで、表面層(塑性加工を受けたプレ部材)の表面粗さRaが1.5μm以下となるようにしてもよい。例えば、圧延により表面層を形成する場合、加熱温度:150℃以上、Cを圧延前の複合素材とプレ部材との合計断面積、C0を圧延後の圧延材の断面積とするとき、加工度ln(C/C0):0.1以上が好ましく、加熱温度:200℃以上660℃以下、加工度ln(C/C0):0.2以上がより好ましい。ホットプレスにより表面層を形成する場合、加熱温度:150℃以上、加圧:3kg/mm2以上が好ましく、加熱温度:200℃以上660℃以下、加圧:4kg/mm2以上がより好ましい。なお、溶製法又は含浸法により形成された複合素材は、焼結法により形成された複合素材に比較してエッチング性に優れる。しかし、溶製法又は含浸法により形成された複合素材であっても、焼結法により形成された複合素材と同様に表面の荒れが生じる。従って、表面層を具えることで、表面性状に優れる複合部材とすることができる。
【0023】
或いは、上記筒状のプレ部材を複合素材と同時に押し出して、被覆層(押出加工を受けたプレ部材)を具える被覆素材を作製し、この被覆素材を更に圧延することで、表面層(圧延を受けた被覆層)を形成してもよい。複合素材と被覆層が一体となった被覆素材に圧延といった塑性加工を施すと、表面粗さRaが1.5μm以下の表面層を具える複合部材を簡単に形成することができる。特に、焼結法で製造した複合素材を用いて複合部材を製造する場合は、押出工程に加えて圧延工程を含むと、基材の内部欠陥を低減することができて好ましい。
【0024】
プレ部材や被覆層の厚さは、特に限定しない。プレ部材や被覆層は、押出やホットプレス、圧延、研磨などを施すことで厚さが減少して最終的に表面層を形成する。従って、プレ部材や被覆層の厚さは、所望の表面層の厚さに応じて加工度や研磨量などを制御して適宜調整するとよい。
【0025】
プレ部材と複合素材とを一体に塑性加工することにより、プレ部材から被覆層又は表面層を形成すると同時に、複合素材と被覆層又は表面層との接合も行える。このとき、複合素材と被覆層又は表面層とは、塑性加工により圧接されており、両者の間には、接着剤などが存在しない。押出により被覆層又は表面層を形成する場合、複合素材の表面を広範囲に亘って一度に被覆層又は表面層を形成できる。例えば、直方体状の被覆素材又は複合部材を作製する場合、上記押出では、連続する四面に同時に被覆層又は表面層を形成できるという利点がある。また、押出により被覆層を形成する場合、加工度を大きくし易く、押出の加工度を高くすることで後工程の圧延の回数(パス数)を低減できるという利点がある。めっきやクラッド圧延、ホットプレス、ロウ付け、ハンダ付けなどは、複合素材の一面に被覆層又は表面層を形成可能であり、また対向する二面に対して一度に被覆層又は表面層を形成することも可能である。
【0026】
《押出及び圧延の双方を利用した表面層の形成》
押出により被覆層を形成し、更に圧延を施して表面層を形成する場合において、この被覆層を形成するには、被覆層のプレ部材となる所望の厚さの筒状材をアルミニウム基合金で作製し、この筒状材内に上記複合素材を挿入し、複合素材を具える筒状材を押し出すとよい。押出は、冷間でもよいし、押出部材を加熱した状態で行ってもよい。複合素材を成型体とする場合、押出部材を所定の温度に加熱することで、焼結を兼ねることができる。押出の総加工度は、後工程の圧延よりも大きいことが好ましい。具体的には、Aを押出前の複合素材を具える筒状材の断面積、Bを圧延前の押出材の断面積とするとき、押出の総加工度ln(A/B)は、1.1以上が好ましく、より好ましくは、1.5以上である。
【0027】
上記被覆素材に施す圧延は、所望の厚さの複合部材が得られるように1パスあたりの加工度、及び総加工度を適宜選択する。特に、被覆層を押出で形成する場合、Aを押出前の複合素材を具える筒状材の断面積、A0を圧延後の圧延材の断面積とするとき、押出及び圧延の総加工度ln(A/A0)=2以上とする、好ましくは、Bを圧延前の押出材の断面積とするとき、圧延の総加工度ln(B/A0)=2以上とすると、複合素材が焼結法からなるものであっても内部欠陥を低減することができ、熱特性を向上したり、エッチング性を向上することができる。より好ましくは、ln(A/A0):4.0以上、ln(B/A0):2.5以上である。
【0028】
上記圧延は、冷間でもよいし、圧延ロールを加熱した状態で行ってもよい。複合素材を成型体とする場合、圧延ロールを所定の温度に加熱することで、焼結を兼ねることができる。
【0029】
[複合部材]
<基材>
《金属マトリクス》
金属マトリクスを構成する金属は、熱特性に優れ(熱膨張係数α(×10-6/K):23,熱伝導率κ(W/m・K):237)、軽量なアルミニウム(Al)を主成分とするアルミニウム基合金とする(アルミニウム基合金の熱膨張係数α(×10-6/K):20〜25,熱伝導率κ(W/m・K):120〜250)。ここでは、アルミニウム基合金は、Alを50質量%超含有するものとする。即ち、添加元素と残部がAl及び不純物からなるアルミニウム合金の他、99.9質量%以上がAlであり、残部が不純物からなる工業用純アルミニウムを含む。アルミニウム合金の添加元素は、例えば、Si,Mg,Ti,Cu,及びFeから選択される1種以上の元素が挙げられる。アルミニウム合金の具体的な組成は、例えば、以下が挙げられる。
【0030】
1.質量%でSiを5〜40%,Niを1〜20%,Mgを0.01〜5%含有し、残部がAl及び不純物。例えば、Al-20%Si-9%Ni-0.6%Mg(質量%)が挙げられる。
2.質量%で、Siを2〜20%,Mgを0.01〜5%,Tiを0.01〜5%含有し、残部がAl及び不純物。例えば、Al-9%Si-0.6%Mg-0.15%Ti(質量%)が挙げられる。
3.質量%で、Siを10〜30%,Cuを0.5〜10%,Mgを0.01〜5%,Feを0.01〜5%含有し、残部がAl及び不純物。例えば、Al-15%Si-4.2%Cu-0.6%Mg-0.3%Fe(質量%)が挙げられる。
【0031】
《セラミックス粒子》
金属マトリクス中に分散されるセラミックス粒子は、主として炭化珪素(SiC)からなる粒子とする。SiC粒子のみでもよいし、SiC粒子に加えて、その他のセラミックス粒子、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3),窒化珪素(Si3N4),硼化チタン(TiB2),酸化珪素(SiO2),酸化ベリリウム(BeO),及び窒化アルミニウム(AlN)から選択される1種以上の粒子を、表面層を除く基材全体に対して合計で5〜30質量%含んでいてもよい。
【0032】
基材中のSiC粒子の含有量は、表面層を除く基材全体を100質量%とするとき、15質量%以上70質量%以下が好ましい。SiC粒子に加えて他のセラミックス粒子を含有する場合、SiC粒子及びセラミックス粒子の合計含有量が15〜70質量%を満たすことが好ましい。15質量%以上であると、複合部材の熱膨張係数が小さくなり易く、半導体素子などと整合し易くなり、70質量%以下であると、熱伝導性が低下し難く、また圧延といった塑性加工を行う場合、塑性加工性の低下も抑制できる。基材(複合素材)を溶製法で形成する場合、SiC粒子の含有量は、55質量%以下、特に45質量%以下が好ましい。55質量%超では、混合溶湯の粘度が上昇して撹拌し難くなり、基材中にボイドが存在したり、十分に撹拌できず、金属マトリクス中のSiC粒子の分散が不均一になる恐れがある。ボイドの存在やSiC粒子の偏在は、複合部材の熱特性の劣化や反りなどの変形を招く恐れがある。基材(複合素材)を含浸法で形成する場合、SiC粒子の含有量は、70質量%以下、特に65質量%以下が好ましい。70質量%超では、十分に含浸できず、ボイドが存在する恐れがある。
【0033】
SiC粒子の含有量は、上記範囲において所望の熱特性が得られるように適宜調整する。好ましくは、表面層を含む複合部材の熱伝導率κが120W/m・K以上、熱膨張係数αが6×10-6/K以上20×10-6/K以下(6ppm/K以上20ppm/K以下)となるように調整する。より好ましくは、熱伝導率κが130W/m・K以上、熱膨張係数αが8×10-6/K以上18×10-6/K以下を満たすことである。基材中のSiC粒子の含有量は、例えば、ICP発光分光分析により測定できる。具体的には、酸などで基材のうちセラミックス以外を溶かし、溶かした溶液をサンプルとしてICP発光分光分析を行う。
【0034】
基材中のSiC粒子の平均粒径は、原料に用いた粒子と概ね同等の大きさになる。好ましい大きさは、10μm以上100μm以下、特に、15μm以上60μm以下である。100μm以下であると、圧延といった塑性加工を行う場合、塑性加工性が低下し難い。また、基材を溶製法で形成する場合、10μm以上100μm以下であると、金属マトリクス中にSiC粒子を均一的に分散させ易い。基材中のSiC粒子の平均粒径は、例えば、断面を顕微鏡観察し、この観察像を画像解析して、断面に存在する粒子の直径を測定し、その平均をとることで求められる。
【0035】
<表面層>
上記基材の表面の少なくとも一部に表面層を具える。基材表面の全面に亘って表面層を具えていてもよい。例えば、基材が板状である場合、少なくとも片側の面の一部に、又はこの面の全体に及ぶように表面層を具えていてもよいし、両側の面のそれぞれ一部に又はこれらの面の全体に及ぶように表面層を具えてもよいし、側面も含む複数の面のそれぞれ一部に又はこれらの面の全体に及ぶように表面層を具えていてもよい。
【0036】
表面層は、金属で構成される。特に、上記金属マトリクスを構成する金属と同種の金属、或いは主成分が同じ金属で表面層が構成されていると、熱特性が同程度になるため好ましい。従って、表面層は、アルミニウム基合金からなるものとする。表面層を構成するアルミニウム基合金は、上述した金属マトリクスと同様のものが挙げられ、金属マトリクス及び表面層の双方が同種のアルミニウム基合金でもよいし、組成が異なっていてもよい。例えば、双方をアルミニウム合金とする場合、添加元素が異なっていてもよいし、同じでもよい。
【0037】
表面層は、表面が平滑であり、表面粗さRaが1.5μm以下である。本発明者らは、種々検討した結果、表面層の表面粗さRaが1.5μm以下であれば、表面に縞模様や色むらが確認されず、表面状態が良好であり、外観不良による不良品を発生させない、との知見を得た。そこで、表面層の表面粗さを上記範囲とする。
【0038】
表面層の厚さは、上述のようにプレ部材の厚さや被覆層の厚さ、成膜時間、被覆層に施す塑性加工時の加工度や研磨量などを調整することで変化させることができ、所望の厚さとなるように適宜選択する。好ましくは、表面層を具える複合部材全体の熱伝導率κが120W/m・K以上、熱膨張係数αが6×10-6/K以上20×10-6/K以下となるように表面層の厚さを調整する。表面層は、主として表面性状を向上するための化粧層として機能させることから、薄くても構わない。ここで、パワーデバイスに利用されるヒートスプレッダーは、収納スペースが比較的大きいことから、ある程度厚くてもよく、表面層を厚くしてもよい。一方、パソコンやサーバなどに利用されるヒートスプレッダーは、収納スペースが比較的小さく、薄いことが望まれるため、表面層も薄い方がよい。具体的には、300μm以下、特に100μm以下が好ましい。圧延といった塑性加工を行って表面層を形成する場合、300μm超の厚い表面層の形成も、300μm以下、特に100μm以下、例えば、10〜80μmという非常に薄い表面層の形成も容易に行える。なお、表面層は、厚いほど、放熱性を高められる。また、表面層が厚い場合、表面層を基材に一体化した後(例えば、圧延後)に表面層に切削加工などによりフィン部を形成すると、放熱性をより高められる。
【0039】
<形状>
本発明製造方法は、圧延(クラッド圧延を含む)や押出を行うことで、連続した長尺な板材を製造可能である。また、得られた長尺な板材は、切断することで、任意の形状及び大きさの小さな板片を作製することができる。もちろん、板状の複合素材及びアルミニウム基合金板などを用いて、所望の大きさの板状の複合部材を作製することもできる。本発明複合部材を半導体デバイスのヒートスプレッダーとする場合、矩形状の板片が好ましく、この場合の表面層を含めた本発明複合部材の厚さは、0.8〜10mmが好ましい。更に、本発明複合部材は、凹部を具えた形状とすることもできる。凹部は、半導体素子を収納可能な大きさを有するようにする。
【0040】
<用途>
本発明複合部材は、半導体デバイスのヒートスプレッダーに好適に利用することができる。圧延材などの表面層を作製した部材をそのままヒートスプレッダーに利用してもよいし、上述のように表面層形成後(例えば、圧延後)、フィン部を設けたり、凹部を形成してもよい。凹部の形成は、エッチングが好適に利用できる。凹部を具える本発明複合部材は、パソコンなどの半導体デバイスのヒートスプレッダーに好適である。
【発明の効果】
【0041】
本発明複合部材は、表面性状に優れる。本発明複合部材の製造方法は、このような本発明複合部材を生産性よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
(試験例1)
アルミニウム基合金からなるマトリクス中に炭化珪素からなる粒子が分散された複合材料を作製し、表面性状を調べた。
【0043】
<実施例1-1>
JIS規定:1050の純アルミニウムの粉末と、SiC粉末(♯600(平均粒径:20μm))とを用意し、V字ミキサーにて1時間混合した後、加圧成型し、直径:φ175mm×長さ:300mmの円柱状のCIP成型体(複合素材)を作製した。SiC粉末は、複合素材を100質量%とするとき、27質量%となるように用意した。CIP条件は、420℃×5時間とした。
【0044】
被覆層を形成するプレ部材として、JIS規定:1050の純アルミニウムからなる有底円筒状材(内寸;直径:φ175mm×長さ:300mm、厚さ:2mm)を用意し、この筒状材内に上記CIP成型体を挿入する。このCIP成型体を収納した筒状材を間接押出法により押し出して、複合素材と被覆層とが一体となった被覆素材を作製する。
【0045】
図1は、間接押出法を説明する説明図であり、(I)は概略構成図、(II)は、ダイス部分の拡大図である。図1(I)に示すように複合素材(CIP成型体)11を収納した筒状材12(以下、この一体化物をビュレット10と呼ぶ)をコンテナ50内に配置する。筒状材12の底部12bが押出方向前方、複合素材11の端面が押出方向後方となるようにコンテナ50内にビュレット10を配置する。そして、底部12bに接するようにダイス51をコンテナ50内に配置し、ダイス51をダイステム52で支持する。この状態で、ビュレット10とコンテナ50とを一体にダイス側に移動させる。ビュレット10は、主ラム53でダイス側に押圧する(移動速度:1mm/sec)。すると、ダイステム52で支持されたダイス51の孔51hから、筒状材12を構成していた純アルミニウムからなる被覆層21を具える被覆素材20が押し出される。この試験では、断面矩形状(90mm×25.5mm)の被覆素材を作製した。
【0046】
上記押出は、コンテナ50を460℃、ダイス51を450℃に加熱した状態で行い、複合素材であるCIP成型体の焼結を兼ねるようにした。
【0047】
なお、筒状材12と同種の材料からなる板材を用意して、この板材を筒状材12の開口部に溶接などで接合し、筒状材12を封止してもよい。このとき、複合素材11の外周面全面が筒状材12及び接合した板材で覆われる。また、ダイス51の孔51hは、ビュレット導入側をテーパ状としており、この形状に合わせて筒状材12の底部12bもテーパ状に加工しておくと、孔51hにビュレットを導入し易い。
【0048】
厚さ:25.5mmの断面矩形状の被覆素材を厚さが1.25mmとなるまで圧延する。この試験では、圧延は、冷間で複数パス行った。押圧及び圧延の総加工度は、押出前のビュレットの断面積をA、圧延後の厚さ1.25mmの圧延材の断面積をA0とするとき、ln(A/A0)≒5.37(≧2)である。また、圧延の総加工度は、圧延前の押出材の断面積をBとするとき、ln(B/A0)≒3.0(≧2)である。
【0049】
上記工程により、純アルミニウムからなるマトリクス中にSiC粒子が分散されたAl-SiC複合材料(SiC粒子の平均粒径:20μm、含有量:27質量%(複合材料を100質量%とする))からなる基材の表面に、純アルミニウムからなる表面層(厚さ:約10μm)を具える長尺な板状の複合部材が得られる。得られた複合部材を正方形状(一辺:40mm)に切断して試験片とする。得られた試験片は、正方形状の二面の全体に亘って表面層を具える。このような試験片を複数用意する。上記表面層の厚さは、試験片の切断面の全域を測定した平均値である。
【0050】
<比較例1-1 溶製法>
JIS規定:1050の純アルミニウムのインゴットを大気中において電気炉で溶解し、純アルミニウム溶湯を作製した。るつぼと撹拌羽根とを有し、真空引きが可能な複合炉に、上記溶湯を移槽した後、溶湯表面に形成された酸化膜を除去し、炉内を真空引きした。この状態で撹拌羽根を回転して溶湯を撹拌し、溶湯の撹拌が安定したことを確認した後、平均粒径20μmのSiC粒子を添加して更に撹拌して混合溶湯を作製した。SiC粒子は、混合溶湯を100質量%とするとき、23質量%となるように溶湯に添加した。この混合溶湯を鋳型に加圧注湯して、直方体状の複合素材を作製した(90mm×厚さ5mm、長さ300mm)。この厚さ:5mmの複合素材を厚さが1.25mmになるまで圧延する。圧延は、冷間で複数パス行った。複合素材に施した圧延の総加工度は、圧延前の複合素材の断面積をX、圧延後の厚さ:1.25mmの圧延材の断面積をA0とするとき、ln(X/A0)≒1.39(<2)である。
【0051】
上記工程により、純アルミニウムからなるマトリクス中にSiC粒子が分散されたAl-SiC複合材料(SiC粒子の平均粒径:20μm、含有量:23質量%(複合材料を100質量%とする))が得られる。この複合材料は、表面層を具えていない。得られた複合材料を正方形状(一辺:40mm)に切断して試験片とし、このような試験片を複数用意する。
【0052】
<比較例1-2 焼結法>
JIS規定:1050の純アルミニウムの粉末と、SiC粉末(♯600)とを用意し、V字ミキサーにて1時間混合した後、加圧成型し90mm×厚さ7mm、長さ180mmの直方体状のCIP成型体を作製した。SiC粉末は、複合材料を100質量%とするとき、27質量%となるように用意した。CIP条件は、成型圧3ton/cm2とした。得られたCIP成型体をN2雰囲気にて620℃×4時間加熱焼結して、焼結体を作製した。この厚さ:7mmの焼結体を厚さが1.25mmになるまで圧延する。圧延は、冷間で複数パス行った。焼結体に施した圧延の総加工度は、圧延前の焼結体の断面積をY、圧延後の厚さ:1.25mmの圧延材の断面積をA0とするとき、ln(Y/A0)≒1.72(<2)である。
【0053】
上記工程により、純アルミニウムからなるマトリクス中にSiC粒子が分散されたAl-SiC複合材料(SiC粒子の平均粒径:20μm、含有量:27質量%(複合材料を100質量%とする))が得られる。この複合材料は、表面層を具えていない。得られた複合材料を正方形状(一辺:40mm)に切断して試験片とし、このような試験片を複数用意する。
【0054】
<表面性状>
[目視確認]
実施例1-1及び比較例1-1,1-2の各試験片に対して、正方形状の面の外観を目視で確認した。すると、比較例1-1の試験片の中には、鋳造に起因すると考えられる縞模様を有する試験片があった。比較例1-2の試験片の中には、SiC粒子の影響と考えられる模様や色むらがある試験片があった。これに対し、実施例1-1の試験片はいずれも、模様や色むらが無く、表面性状に優れていた。
【0055】
[表面粗さ]
実施例1-1及び比較例1-1,1-2の各試験片に対して、正方形状の面の表面粗さRa(算術平均粗さ)を測定した(単位はμm)。その結果を表1に示す。ここでは、実施例1-1及び比較例1-1,1-2のそれぞれについて作製した複数の試験片のうち、三つを任意に選出して、それぞれ表面粗さを測定した。測定は、市販の測定器を用いて行った。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示すように実施例1-1の試験片は、いずれも表面粗さRaが1.5μm以下と小さく、表面性状が優れていることがわかる。
【0058】
[エッチング状態]
実施例1-1及び比較例1-1,1-2の各試験片に対して、正方形状の一方の面に部分的にエッチングを行って凹部を形成し、凹部の状態を調べた。図2は、凹部の一部の断面を示す顕微鏡写真であり、(I)は、実施例1-1、(II)は、比較例1-1、(III)は、比較例1-2を示す。図2において、白い部分(明るい部分)は、金属マトリクス、白い部分中の灰色の部分(暗い部分)は、SiC粒子を示し、写真の一角側の黒い部分(暗い部分)は、背景を示す。図2(III)において、黒い部分中の灰色の部分(比較的明るい部分)は、製造中に生じた粉状のものを示す。
【0059】
図2(III)に示すように、比較例1-2の試験片は、表面に粉状のものが付着し、外観が非常に悪い。この原因は、圧延を行ったものの、ボイドが十分に低減できず、エッチングの薬品が均一的に染み込まないことで、エッチングにばらつきが生じたためであると考えられる。また、黒い粉状のものが付着することで、寸法精度が悪く、所定の寸法精度を満たしていない。
【0060】
一方、比較例1-1の試験片は、図2(II)に示すように精度よくエッチングができており、比較例1-2のように黒い粉状のものの付着もない。これは、溶製法を行うことでボイドが少なく、薬品が均一的に染み込んでエッチングが均一的にできたためであると考えられる。しかし、比較例1-1の試験片は、上述のように縞模様が生じる場合がある。
【0061】
これに対し、実施例1-1の試験片は、図2(I)に示すように精度よくエッチングができており、比較例1-2のように黒い粉状のものが付着しておらず、かつ、上述のように縞模様や色むらなどもなく、表面性状に非常に優れる。これは、押出及び圧延の双方を行うことで、ボイドを十分に低減し、薬品が均一的に染み込んで十分にエッチングできたためであると考えられる。
【0062】
なお、各試験片において正方形状の面以外の面(実施例1-1では、純アルミニウムからなる表面層で覆われていない面(基材が見える面))の角部には、アンダーカットが確認できた。比較例1-2の試験片は、アンダーカット部分にも粉状のものが付着していたが、実施例1-1の試験片には付着が見られなかった。
【0063】
[熱特性]
実施例1-1の試験片の熱膨張係数及び熱伝導率を測定した。測定は、試験片の厚さ方向に沿って、即ち、表面層と基材とを合わせた平均的な値となるように行った。その結果、熱膨張係数αが15×10-6/K、熱伝導率κは、150W/m・Kであった。このような熱特性を有する実施例1-1の試験片は、半導体デバイスのヒートスプレッダーに好適に利用することができると期待される。特に、凹部に半導体素子を収納することが望まれる半導体デバイスのヒートスプレッダーに好適に利用することができると期待される。
【0064】
(試験例2)
押出条件、圧延条件、SiCの含有量、SiCの平均粒径、表面層の厚さを変化させた試料を作製し、表面性状や熱特性を調べた。
【0065】
実施例1-1と同様の原料(但し、SiC粉末の平均粒径や添加量は表2に示すものに変更)を用いて、実施例1-1と同様の条件で、種々の大きさの複合素材を焼結法により作製した。この複合素材と、実施例1-1で用いたプレ部材と同様のプレ部材(但し、寸法は、複合素材の大きさ、表面層の厚さに応じて適宜変更)とでビュレットを作製し、このビュレットを実施例1-1と同様の間接押出法により押出して、被覆素材を作製した。押出は、表2に示す加工度で行った。得られた被覆素材に表2で示す加工度で圧延を行い、長尺な板状の複合部材を得た。この複合部材を適宜切断して試験片とした。各試料No.2-1,2-2,2-4〜2-8について、このような試験片を複数用意した。
【0066】
試料No.2-3は、含浸法で作製した複合素材に圧延により表面層を形成した試料である。具体的には、直方体状の成形型のキャビティ(50mm×厚さ7mm、長さ:150mm)に、表2に示す粒径のSiC粒子を充填し、この成形型に、JIS規定:1050の純アルミニウムのインゴットを大気中において電気炉で溶解して作製した純アルミニウム溶湯を含浸させて、複合素材を作製した。JIS規定:1050の純アルミニウムからなる板材(50mm×厚さ1mm、長さ:15mm)を用意し、この厚さ:7mmの複合素材と上記板材とでクラッド圧延を行い、長尺な板状の複合部材を得た。この複合部材を適宜切断して試験片とした。
【0067】
試料No.2-9は、試料No.2-1,2-2,2-4〜2-8と同様にして焼結法で作製した複合素材に、表2に示す加工度で押出及び圧延を施して作製した、表面層を有していない試料である。
【0068】
なお、表2の押出の加工度は、押圧前のビュレットの断面積をA、圧延前の押出材の断面積、又は複合素材と純アルミニウム板材との合計の断面積(試料No.2-3)をBとするとき、ln(A/B)を示し、圧延の加工度は、圧延後の圧延材の断面積をA0とするとき、ln(B/A0)を示し、総合加工度は、ln(A/A0)を示す(試料No.2-3はln(A/A0)=ln(B/A0))。
【0069】
得られた各試料に対して、試験例1と同様にして表面粗さRa、熱膨張係数α(ppm/K)、熱伝導率κ(W/m・K)を測定した。その結果を表2に示す。また、得られた各試料に対して、試験例1と同様にしてエッチングを行い、凹部の状態を観察して評価した。その結果を表2に示す。エッチングの評価は、黒い粉状のものの付着が無いものを○、付着があるものを×とした。なお、得られた各試料のSiCの含有量及び平均粒径は、表2に示す値と同程度であった。
【0070】
【表2】

【0071】
表2に示すように、表面層を具える試料は、表面粗さRaが1.5μm以下であり、表面性状が優れていることがわかる。但し、押出及び圧延の総加工度が小さいと、エッチング状態が悪くなった。この理由は、複合素材に焼結材を用いる場合、加工度が小さいと原料のアルミニウム粉末同士が十分に結合をしないことから、エッチング液の染込みが局所的に発生し易くなるためであると考えられる。
【0072】
また、表2から、SiCの含有量により熱特性が変化することが分かる。更に、SiCの含有量が同程度でも粒径によって熱特性が変化することが分かる。この理由は、SiCが小さ過ぎたり大き過ぎると、複合材料中にSiCが均一的に分散できなかったり、ボイドが生じたためであると考えられる。また、SiCが大き過ぎると、圧延時に割れが多く生じて、生産性の低下を招くと考えられる。
【0073】
なお、試料No.2-1に用いた焼結法で作製した複合素材に代えて、試験例1の比較例1-1を参照して溶製法により作製した複合素材、及び試験例2の試料No.2-3を参照して含浸法により作製した複合素材を用いて、同様に押出及び圧延により複合部材を作製したところ、試料No.2-1と同様の結果が得られた。また、試料No.2-3で用いた含浸法で作製した複合素材に代えて、試験例1の比較例1-1を参照して溶製法により作製した複合素材を用いて(但し、SiC粒子の添加量は27質量%に変更)、同様にクラッド圧延により複合部材を作製したところ、試料No.2-3と同様の結果が得られた。
【0074】
上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、1.金属マトリクスや表面層にアルミニウム合金を利用する、2.金属マトリクスと表面層とを構成する金属の組成を異ならせる、3.SiC粒子以外のセラミックス粒子を添加する、4.ホットプレスやめっき、蒸着などで表面層を形成する、ことなどができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明複合部材は、種々の半導体デバイスのヒートスプレッダーに好適に利用することができる。また、本発明複合部材の製造方法は、上記本発明複合部材の製造に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】間接押出法を説明する説明図であり、(I)は、概略構成図、(II)は、ダイス部分の拡大図である。
【図2】エッチングで形成した凹部の一部の断面を示す顕微鏡写真であって、(I)は、実施例1-1、(II)は、溶製法で作製した比較例1-1、(II)は、焼結法で作製した比較例1-2を示す。
【図3】(I)は、凹部を具えるヒートスプレッダーの外観を模式的に示す斜視図、(II)は、凹部を具えるヒートスプレッダーと半導体素子との配置状態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0077】
10 ビュレット 11 複合素材 12 筒状材 12b 底部 20 被覆素材
21 被覆層 50 コンテナ 51 ダイス 51h 孔 52 ダイステム
53 主ラム 100 半導体素子 110 基板 111 接着剤 112 樹脂
200 ヒートスプレッダー 201 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム基合金からなる金属マトリクス中に炭化珪素からなる粒子が分散された複合材料からなる基材と、
前記基材の表面の少なくとも一部を覆う表面層とを具え、
前記表面層は、
アルミニウム基合金からなり、
表面粗さRaが1.5μm以下であることを特徴とする複合部材。
【請求項2】
前記表面層の厚さは、300μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の複合部材。
【請求項3】
前記炭化珪素からなる粒子の含有量は、基材全体を100質量%とするとき、15質量%以上70質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合部材。
【請求項4】
前記炭化珪素からなる粒子の平均粒径は、10μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合部材。
【請求項5】
前記複合部材は、エッチングにより形成された凹部を具えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合部材。
【請求項6】
アルミニウム基合金からなる金属マトリクス中に炭化珪素からなる粒子が分散された複合素材を用意する工程と、
前記複合素材の表面の少なくとも一部に、アルミニウム基合金からなり、表面粗さRaが1.5μm以下である表面層を形成する工程とを具えることを特徴とする複合部材の製造方法。
【請求項7】
前記表面層は、アルミニウム基合金からなるプレ部材と複合素材とを一体に塑性加工することで形成することを特徴とする請求項6に記載の複合部材の製造方法。
【請求項8】
前記表面層は、前記複合素材の表面の少なくとも一部に、アルミニウム基合金からなるプレ部材を用いて被覆層を形成し、この被覆層を具える被覆素材に圧延を施すことで形成することを特徴とする請求項7に記載の複合部材の製造方法。
【請求項9】
前記プレ部材は、アルミニウム基合金からなる筒状材であり、
前記被覆層は、前記筒状材内に複合素材を挿入し、複合素材を具える筒状材を押し出すことで形成することを特徴とする請求項8に記載の複合部材の製造方法。
【請求項10】
Aを押出前の複合素材を具える筒状材の断面積、A0を圧延後の圧延材の断面積とするとき、前記押出及び圧延の総加工度ln(A/A0)が2以上であることを特徴とする請求項9に記載の複合部材の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−290136(P2009−290136A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143689(P2008−143689)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000220103)株式会社アライドマテリアル (192)
【Fターム(参考)】